JP3847486B2 - 可変絞り弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプールの軸方向変位に伴い開度が変化する絞り部を備える可変絞り弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば油圧パワーステアリング装置においては、車速等の運転条件に応じて開度が変化する絞り部を有する可変絞り弁を用い、運転条件に応じて操舵補助力発生用油圧アクチュエータに作用する油圧を制御している。
【0003】
その可変絞り弁は、ハウジングと、そのハウジングに形成された挿入孔に軸方向変位可能に挿入されるスプールとを備える。その挿入孔の内周に、そのスプールの外周に対向する第1の周溝が形成され、そのスプールの外周に第2の周溝が形成されている。その第2の周溝の一方の外周縁は、他方の外周縁に近接するに従い小径となるテーパー面とされ、その第2の周溝の一方の外周縁と、前記第1の周溝の一方の内周縁との間が、圧油の絞り部とされている。その絞り部の開度は、車両の運転条件に応じて制御されるアクチュエータによりスプールを軸方向変位させることで変化する。
【0004】
その第1の周溝に連なるように圧油の流入路を形成し、その第2の周溝に連なるように圧油の流出路を形成した場合、その絞り部におけるキャビテーション気泡発生量が増大するため、圧油の流動に伴う音が増大する。そこで、その第1の周溝に連なるように圧油の流出路を形成し、その第2の周溝に連なるように圧油の流入路を形成することで、その絞り部において油圧が徐々に低下するようにし、キャビテーション気泡の発生を抑制して圧油流動音を低減している(特開平10−318382号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の構成では、前記絞り部における圧油の流れに基づく運動量変化により発生する流体力により、その絞り部の閉鎖方向への軸方向力がスプールに作用する。その絞り部の開度が小さくなって流体力が大きくなると、そのスプールを軸方向変位させるアクチュエータの出力トルクが不足し、そのスプールの軸方向変位が阻害される場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することのできる可変絞り弁を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の可変絞り弁は、ハウジングと、そのハウジングに形成された挿入孔に軸方向変位可能に挿入されるスプールとを備える。その挿入孔の内周に、そのスプールの外周に対向する第1の周溝が形成され、そのスプールの外周に第2の周溝が形成される。その第2の周溝の一方の外周縁は、他方の外周縁に近接するに従い小径となるテーパー面とされ、その第2の周溝の一方の外周縁と、前記第1の周溝の一方の内周縁との間が、圧油の絞り部とされる。その第1の周溝に連なる圧油の流出路が形成され、その第2の周溝に連なる圧油の流入路が形成される。その絞り部の開度は、そのスプールの軸方向変位により変化する。
【0009】
本件発明の特徴は、前記絞り部におけるスプールの軸方向に対する圧油の進行方向角度を、その絞り部の出口に向かうに従い次第に大きくする流動方向変更部が、前記テーパー面の下流側に連なってスプールの外周に形成され、前記スプールの軸方向に対する前記テーパー面の傾斜角度は一定とされ、前記流動方向変更部は、前記スプールの軸方向に対する傾斜角度が次第に大きくなる環状段差面により構成されている点にある。
この構成によれば、その絞り部における圧油のスプールの軸方向に対する進行方向角度を出口に向かうに従い次第に大きくすることで、その絞り部における圧油の流れに基づく運動量変化により発生するスプールの変位を阻害する流体力を抑制できる。さらに、その流動方向変更部は絞り部を構成するテーパー面の下流側に位置し、その圧油の進行方向角度を次第に変化させるので、絞り部における圧油の進行方向を流速に影響を与えることなく円滑に変更でき、絞り特性そのものが影響を受けることはない。
【0010】
本発明の可変絞り弁における絞り部の開度は車両の運転条件に応じて変化するものとされ、その絞り部の開度の変化により、その車両の油圧パワーステアリング装置の操舵補助力発生用油圧アクチュエータに作用する油圧を制御するのが好ましい。これにより、スプールの円滑な変位を確保して操舵フィーリングの低下を防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図9を参照して本発明の比較例を説明する。
図1に示す本発明の比較例のラックピニオン式油圧パワーステアリング装置1は、車両のハンドル(図示省略)に連結される入力軸2と、この入力軸2にトーションバー6を介し連結される出力軸3を備えている。そのトーションバー6は、ピン4により入力軸2に連結され、セレーション5により出力軸3に連結されている。その入力軸2は、ベアリング8を介しバルブハウジング7により支持され、また、ブッシュ12を介して出力軸3により支持されている。その出力軸3はベアリング10、11を介してラックハウジング9により支持されている。その出力軸3にピニオン15が形成され、このピニオン15に噛み合うラック16に操舵用車輪(図示省略)が連結される。これにより、操舵による入力軸2の回転は、トーションバー6を介してピニオン15に伝達され、このピニオン15の回転によりラック16は車両幅方向に移動し、このラック16の移動により車両の操舵がなされる。なお、入出力軸2、3とハウジング7との間にはオイルシール42、43が介在する。また、ラック16を支持するサポートヨーク40がバネ41の弾力によりラック16に押し付けられている。
【0012】
操舵補助力発生用油圧アクチュエータとして油圧シリンダ20が設けられている。この油圧シリンダ20は、ラックハウジング9により構成されるシリンダチューブと、ラック16に一体化されるピストン21を備えている。そのピストン21により仕切られる油室22、23に操舵抵抗に応じて圧油を供給するため、ロータリー式油圧制御弁30が設けられている。
【0013】
その制御弁30は、バルブハウジング7に相対回転可能に挿入される筒状の第1バルブ部材31と、この第1バルブ部材31に同軸中心に相対回転可能に挿入される第2バルブ部材32とを備える。その第1バルブ部材31は出力軸3にピン29を介して同行回転するよう連結されている。その第2バルブ部材32は入力軸2の外周部と一体的に成形され、入力軸2と同行回転する。よって、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32は、操舵抵抗に応じて前記トーションバー6がねじれることで同軸中心に相対回転する。
【0014】
そのバルブハウジング7に、ポンプ70に接続される入口ポート34と、前記油圧シリンダ20の一方の油室22に接続される第1ポート37と、他方の油室23に接続される第2ポート38と、直接にタンク71に接続される第1出口ポート36と、後述の可変絞り弁60を介してタンク71に接続される第2出口ポート61とが設けられている。各ポート34、36、37、38、61は、その第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との内外周間の流路を介して互いに接続されている。
【0015】
すなわち、図3、図4に示すように、第1バルブ部材31の内周に溝50a、50b、50cが、周方向に等間隔をおいた12箇所に形成されている。また、第2バルブ部材32の外周に溝51a、51b、51cが、周方向に等間隔をおいた12箇所に形成されている。図4は実線により第2バルブ部材32の展開図を示し、鎖線により第1バルブ部材31に形成された溝50a、50b、50cを示す。第1バルブ部材31に形成された溝50a、50b、50cの間に第2バルブ部材32に形成された溝51a、51b、51cが位置する。
【0016】
その第1バルブ部材31に形成された溝は、3つの右操舵用溝50aと、3つの左操舵用溝50bと、6つの連絡用溝50cとを構成する。その右操舵用溝50aは、第1バルブ部材31に形成された流路53と第1ポート37とを介し油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。その左操舵用溝50bは、第1バルブ部材31に形成された流路54と第2ポート38とを介し油圧シリンダ20の左操舵補助力発生用油室23に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。
【0017】
その第2バルブ部材32に形成された溝は、6つの圧油供給用溝51aと、3つの第1圧油排出用溝51bと、3つの第2圧油排出用溝51cとを構成する。その圧油供給用溝51aは、第1バルブ部材31に形成された圧油供給路55と入口ポート34とを介しポンプ70に接続され、互いに周方向に60°離れて配置される。その第1圧油排出用溝51bは、入力軸2に形成された流路52aから入力軸2とトーションバー6との間を通り、入力軸2に形成された流路52b(図1参照)と第1出口ポート36とを介しタンク71に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。その第2圧油排出用溝51cは、第1バルブ部材31に形成された流路59と第2出口ポート61とを介し可変絞り弁60に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。
【0018】
各第1圧油排出用溝51bは右操舵用溝50aと左操舵用溝50bの間に配置され、各第2圧油排出用溝51cは連絡用溝50cの間に配置され、右操舵用溝50aと連絡用溝50cとの間および左操舵用溝50bと連絡用溝50cとの間に圧油供給用溝51aは配置される。その第1バルブ部材31に形成された溝50a、50b、50cの軸方向に沿う縁と第2バルブ部材32に形成された溝51a、51b、51cの軸方向に沿う縁との間が絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を構成する。これにより、各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′はポンプ70とタンク71と油圧シリンダ20とを接続する油路27に配置されている。
【0019】
図5に示すように、その第2バルブ部材32に形成された溝51a、51b、51cの軸方向に沿う縁は面取り部とされている。その圧油供給用溝51aと連絡用溝50cとの間の絞り部A′、C′における圧油供給用溝51aの軸方向に沿う縁(図3において□で囲む)の面取り部の幅をW、連絡用溝50cと第2圧油排出用溝51cとの間の絞り部B′、D′における第2圧油排出用溝51cの軸方向に沿う縁(図3において△で囲む)の面取り部の幅をW′、その他の第2バルブ部材32に形成された溝の軸方向に沿う縁(図3において○で囲む)の面取り部の幅をW″として、図4、図5に示すように、W>W′>W″とされている。操舵抵抗のない状態(図4、図5の状態)から各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を全閉するのに要する両バルブ部材31、32の相対回転角度(すなわち閉鎖角度)を互いに比較すると、絞り部A′、C′の閉鎖角度θrは絞り部B′、D′の閉鎖角度θsよりも大きく、両閉鎖角度θr、θsは、他の各絞り部A、B、C、Dの閉鎖角度θtよりも大きい。これにより、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との間の各絞り部は、複数の絞り部A、B、C、Dからなる第1の組と、第1の組に属する各絞り部A、B、C、Dよりも閉鎖角度の大きな複数の絞り部A′、B′、C′、D′からなる第2の組とに組分けされ、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′を閉鎖するのに要する操舵抵抗は第1の組に属する絞り部A、B、C、Dを閉鎖するのに要する操舵抵抗よりも大きくされる。また、第2の組に属する絞り部は、絞り部B′、D′と、この絞り部B′、D′よりも閉鎖角度の大きな絞り部A′、C′の2種類とされる。
【0020】
その入力軸2と出力軸3は、路面から車輪を介して伝達される操舵抵抗によるトーションバー6のねじれによって相対回転する。その相対回転により第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とが相対回転することで、各絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の流路面積すなわち開度が変化する。すなわち、操舵抵抗に応じて複数の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度が変化する。その開度変化に応じて油圧シリンダ20に作用する油圧が変更されることで、操舵抵抗に応じた操舵補助力が発生する。
【0021】
図4は操舵が行なわれていない状態を示し、両バルブ部材31、32の間の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′は全て開かれ、入口ポート34と各出口ポート36、61とは弁間流路27を介し連通し、ポンプ70から制御バルブ30に流入する油はタンク71に還流し、操舵補助力は発生しない。
この状態から右方へ操舵することによって生じる操舵抵抗により両バルブ部材31、32が相対回転すると、図3に示すように、絞り部A、A′の開度が大きくなり、絞り部B、B′の開度が小さくなり、絞り部C、C′の開度が小さくなり、絞り部D、D′の開度が大きくなる。これにより、図中矢印で示す圧油の流れにより油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に操舵抵抗に応じた圧力の圧油が供給され、また、左操舵補助力発生用油室23からタンク71に油が還流し、車両の右方への操向補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
左方へ操舵すると第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とが右方に操舵した場合と逆方向に相対回転し、絞り部A、A′の開度が小さくなり、絞り部B、B′の開度が大きくなり、絞り部C、C′の開度が大きくなり、絞り部D、D′の開度が小さくなるので、車両の左方への操舵補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
【0022】
図1、図8に示すように、上記可変絞り弁60は、バルブハウジング7に着脱可能な第2バルブハウジング7′と、この第2バルブハウジング7′に形成された挿入孔66に軸方向(図1、図8において上下方向)に移動可能に挿入されたスプール62と、そのスプール62にねじ合わされるネジ部材64とを備える。そのスプール62の中心とネジ部材64の中心とは、そのスプール62の回り止めのために偏心される。
【0023】
その挿入孔66の一端はプラグ68により閉鎖され、他端はカバー94′により閉鎖されている。そのスプール62とプラグ68との間に、スプール62のがたつき防止用の圧縮コイルバネ90が配置されている。そのネジ部材64にステッピングモータ80が接続され、そのステッピングモータ80にコントローラ(図示省略)が接続される。そのコントローラは車速センサ(図示省略)に接続され、そのステッピングモータ80を車速に応じ制御する。すなわち、高速になるとネジ部材64は一方向に回転してスプール62は図中上方に変位し、低速になるとネジ部材64は他方向に回転してスプール62は図中下方に変位する。これにより、後述の絞り部67の開度は車両の運転条件である車速に応じて変化する。その絞り部67の開度の変化により、上記油圧シリンダ20に作用する油圧が制御される。
【0024】
図8、図9の(1)、(2)に示すように、その挿入孔66の内周に、スプール62の外周に対向する第1の周溝66aが形成される。そのスプール62の外周に第2の周溝62aが形成される。その第2の周溝62aの一方の外周縁62a′、すなわちスプール62のランド端部は面取りされることで、他方の外周縁62a″に近接するに従い小径となるテーパー面とされている。その第2の周溝62aの一方の外周縁62a′と、第1の周溝66aの一方の内周縁66a′との間が、圧油の絞り部67とされる。その絞り部67の開度は、そのスプール62の軸方向変位により変化する。本比較例では、その絞り部67の開度は、車速が高速になってスプール62が図中上方に変位すると大きくなり、低速になってスプール62が下方に変位すると小さくなる。
【0025】
その第1の周溝66aに連なる圧油の流出路76が、バルブハウジング7と第2バルブハウジング7′に亘り形成されている。その流出路76は上記第1出口ポート36に接続される。その第2の周溝62aに連なる圧油の流入路58が第2バルブハウジング7′に形成されている。その流入路58は上記第2出口ポート61に接続される。これにより、ポンプ70から供給される圧油は、上記制御弁30の第2出口ポート61から流入路58を介して第2の周溝62aに至り、この第2の周溝62aから絞り部67を介して第1の周溝66aに至り、この第1の周溝66aから流出路76、上記第1出口ポート36を介してタンク71に至る。なお、そのスプール62にドレン通路75が、そのスプール62の一端面に対向する挿入孔66の内部空間85、そのスプール62の他端面に対向する挿入孔66の内部空間86、および、その第1の周溝66aに連なるように形成されている。
【0026】
その絞り部67を構成するテーパー面を通過した圧油の、スプール62の軸方向への流れを阻止する阻止部62bが、そのスプール62の外周に形成されている。本比較例では、そのテーパー面よりも下流における上記第1の周溝66aに対向する位置で、そのスプール62の外周円筒面に環状の段差が形成され、その段差が阻止部62bを構成する。図9において一点鎖線矢印で示す圧油の流れを、その阻止部62bにより阻止することにより、そのスプール62は反動で絞り部67の開き方向に変位しようとするので、そのスプール62に絞り部67の開き方向の軸方向力が作用する。その絞り部67の開度が小さくなると、阻止部62bにより阻止される圧油の流れは噴流状になるのでその軸方向力は大きくなり、その絞り部67が全閉または大きくなると、その軸方向力は零または小さくなる。
【0027】
その絞り部67の開度の最大値は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の最大値(両バルブ部材31、32の相対回転角が大きくなる程に開度が小さくなる特性における最大値である。すなわち、右操舵時は絞り部B′、C′の合計開度の最大値をいい、左操舵時は絞り部A′、D′の合計開度の最大値をいう。以下「合計開度の最大値」という場合は同旨)以上、若しくは絞り機能を奏さなくなるまで大きくされている。その絞り部67の開度の最小値は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の最小値(両バルブ部材31、32の相対回転角が大きくなる程に開度が小さくなる特性における最小値である。すなわち、右操舵時は絞り部B′、C′の合計開度の最小値をいい、左操舵時は絞り部A′、D′の合計開度の最小値をいい、全閉状態を含む。以下「合計開度の最小値」という場合は同旨)以下とされる。
これにより、図2に示す油圧回路が構成され、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′とタンク71との間の油路の開度が、車速に応じた可変絞り弁60の作動により変化する。すなわち、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dにより制御される圧油流量の、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′により制御される圧油流量に対する割合が、可変絞り弁60の作動により変化する。
【0028】
図7において、実線Xは、両バルブ部材31、32の相対回転角に対する第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの開度の変化特性を示す。1点鎖線Uは、その相対回転角に対する第2の組に属する連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′、D′の開度の変化特性を示す。1点鎖線Vは、その相対回転角に対する第2の組に属する圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′、C′の開度の変化特性を示す。実線Yは、その相対回転角に対する第2の組に属する全ての絞り部A′、B′、C′、D′の開度の合成した変化特性を示す。なお、図7における各開度の変化特性は、その相対回転角が大きくなる程に小さくなることから明らかなように、右操舵時は絞り部B、B′、C、C′の変化特性を示し、左操舵時は絞り部A、A′、D、D′の変化特性を示している。破線Rは、可変絞り弁60により設定される可変絞り弁自身の絞り部67の中速走行時における開度を示す。
【0029】
上記パワーステアリング装置1によれば、車両の低速走行時においては、スプール62は図1、図8において下方に変位し、このスプール62の変位により可変絞り弁60の絞り部67は全閉状態になる。よって、油圧シリンダ20に作用する油圧は、第1の組の絞り部A、B、C、Dの開度の変化特性線Xに応じ制御される。この場合、図6において一点鎖線で示すように、操舵入力トルクが小さく、両バルブ部材31、32の相対回転角が小さくても、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの開度を小さくし、操舵補助力を発生させる油圧の増加割合を大きくし、低速走行時における操舵の高応答性を満足させることができる。
【0030】
高速走行時においては、スプール62は図1、図8において上方に変位し、このスプール62の変位によって可変絞り弁60の絞り部67の開度は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の最大値以上になる。よって、油圧シリンダ20に作用する油圧は、第2の組の絞り部A′、B′、C′、D′の開度の変化特性線Y及び第1の組の絞り部A、B、C、Dの開度の変化特性線Xの合成特性に応じ制御される。この場合、図6において実線で示すように、操舵入力トルクを大きくし、両バルブ部材31、32の相対回転角を大きくしない限り、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の開度は小さくなることなく大きく保持され、操舵補助力を発生させる油圧の増加割合は小さいので、高速走行時における操舵の安定性を満足させることができる。
【0031】
中速走行時においては、スプール62の変位により可変絞り弁60の絞り部67の開度は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の最小値よりも大きく最大値よりも小さくなる。これにより、図7に示すように、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの合計開度が最小値(本比較例では全閉状態)になるまでの間(図7において両バルブ部材の相対回転角がθaになるまでの間)は、その第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの合計開度の変化特性線Xに絞り部67の開度の特性線Rを合成した特性に応じた操舵補助力が付与される。第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になった時点から、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度が可変絞り弁60の絞り部67の開度よりも小さくなるまでの間(図7において両バルブ部材の相対回転角がθaとθbとの間)では、操舵補助力は絞り部67の開度により定まる一定値になる。しかる後に、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度が可変絞り弁60の絞り部67の開度よりも小さくなると、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の変化特性線Yに応じた操舵補助力が付与される。
【0032】
その第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になった後に、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度が可変絞り弁60の絞り部67の開度よりも小さくなるまでの間(θa〜θbの間)は、その第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′が全閉状態になる点と、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になる点との差(θc−θa)を小さくすることなく、小さくされている。すなわち、仮に、第2の組に属する圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′、C′が、連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′、D′と同様に図中1点鎖線Uで示す相対回転角に対する開度変化特性を有すると仮定すると、相対回転角に対する第2の組に属する全ての絞り部A′、B′、C′、D′の合計開度の合成変化特性は、図7において2点鎖線Mで示すものになる。そうすると、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の開度が、可変絞り弁60の自身の絞り部67の開度よりも小さくなるまでの間(両バルブ部材の相対回転角がθaとθdとの間)は大きくなるので、図6において2点鎖線で示すように、操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できない領域Lが大きくなる。これに対し、上記比較例では、第2の組に属する圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′、C′の閉鎖角度θsは、連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′、D′の閉鎖角度θrよりも小さいので、中速走行時において操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できない領域を小さくできる。しかも、圧油供給用凹部51aと連絡用凹部50cとの間の絞り部A′、C′が全閉状態になる点(図7において両バルブ部材の相対回転角がθeの点)では、連絡用凹部50cと第2圧油排出用凹部51cとの間の絞り部B′、D′は未だ閉じていないので、操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できる領域は小さくなることはない。
【0033】
上記構成の可変絞り弁60によれば、圧油は第2の周溝62aから絞り部67を介して第1の周溝66aに至る。その第2の周溝62aの一方の外周縁62a′は、他方の周縁62a″に近接するに従い小径となるテーパー面とされている。そのため、その絞り部67の流路面積は下流に向かうに従い小さくなる。よって、絞り部67の開度が小さい場合でも、その絞り部67において圧油の圧力は徐々に低下する。これにより、その圧油内でのキャビテーション気泡の発生を抑制し、圧油の流動に伴う音を低減できる。
そして、スプール62に形成された阻止部62bによる圧油の流れの阻止により、そのスプール62に絞り部67bの開き方向(図1、8、9において上方向)の軸方向力が作用し、そのスプール62は反動で絞り部67bの開き方向に変位しようとする。これにより、その絞り部67bにおける圧油の流れに基づきスプール62に作用する絞り部67bの閉鎖方向(図1、8、9において下方向)の流体力を打ち消す補償力を発生することができる。よって、そのスプール62を駆動するステッピングモータ80の出力トルク不足が生じるのを防止できる。しかも、その流体力の大きさと補償力の大きさは共に絞り部67における圧油の運動量に対応することから、その流体力の大きさに応じた補償力を発生させてスプール62の変位が阻害されるのを確実に防止することができる。また、その流体力の大きさが小さい時は補償力も小さくなるので、その補償力によりスプール62の変位が阻害されることもない。さらに、その圧油の流れは絞り部67bを構成するテーパー面を通過した後に阻止されるので、圧油の絞り特性そのものが影響を受けることはない。これにより、スプール62の円滑な変位を確保して操舵フィーリングの低下を防止できる。
【0034】
以下、図10を参照して本発明の実施形態を説明する。上記比較例と同一部分は同一符号で示し、相違点を説明する。本実施形態においては、比較例の阻止部62bに代えて、絞り部67におけるスプール62の軸方向に対する圧油の進行方向角度を、その絞り部67の出口に向かうに従い次第に大きくする流動方向変更部62cが、その絞り部67を構成するテーパー面の下流側に連なってスプール62の外周に形成されている。図10においては一点鎖線矢印により圧油の流れを示す。本実施形態では、その絞り部67を構成するテーパー面のスプール62の軸方向に対する傾斜角度θaに比べて、そのスプール62の軸方向に対する傾斜角度が次第に大きくなる環状段差面が、その流動方向変更部62cを構成する。
【0035】
その圧油の粘度をρ、絞り部67の出口での圧油流量をQ、絞り部67での圧油流速をV、絞り部67でのスプール62の軸方向に対する圧油の進行方向角度をφとすると、その絞り部67における圧油の流れに基づく運動量変化によりスプール62に作用する絞り部67の閉鎖方向への軸方向流体力Fは次式により近似的に表される。
F=ρQVcosφ
【0036】
すなわち、その絞り部67でのスプール62の軸方向に対する圧油の進行方向角度φが90度に近い程に、その流体力Fを低減できる。よって、上記実施形態によれば、その絞り部67における圧油のスプール62の軸方向に対する進行方向角度を出口に向かうに従い次第に大きくすることで、そのスプール62の軸方向変位を阻害する流体力を抑制できる。これにより、そのスプール62を駆動するステッピングモータ80の出力トルク不足によりスプール62の変位が阻害されるのを防止することができる。さらに、その流動方向変更部62cは絞り部67を構成するテーパー面の下流側に位置し、その圧油の進行方向角度を次第に変化させるので、絞り部67における圧油の進行方向を流速に影響を与えることなく円滑に変更でき、圧油の絞り特性そのものが影響を受けることはない。他は比較例と同様である。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態ではスプールを車速に応じて変位させたが、舵角等の他の運転条件に応じて変位させてもよい。本発明の可変絞り弁を油圧パワーステアリング装置以外の油圧機器の油圧回路において使用してもよい。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、絞り部における圧油の流動音を低減するに場合に、スプールの変位が流体力により阻害されて制御不能になるのを、絞り特性に影響を与えることなく防止できる可変絞り弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の縦断面図
【図2】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の油圧回路を示す図
【図3】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における制御弁の横断面構造の説明図
【図4】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における制御弁の展開図
【図5】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の制御弁の要部の拡大図
【図6】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における入力トルクと油圧との関係及び両バルブ部材の相対回転角と油圧との関係を示す図
【図7】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における制御弁の絞り部の開度とバルブ部材の相対回転角との関係を示す図
【図8】本発明の比較例の油圧パワーステアリング装置の可変絞り弁の縦断面図
【図9】本発明の比較例の油圧パワーステアリング装置の可変絞り弁の(1)は要部の断面図、(2)は要部の部分拡大断面図
【図10】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の可変絞り弁の(1)は要部の断面図、(2)は要部の部分拡大断面図
【符号の説明】
1 油圧パワーステアリング装置
7′ 第2バルブハウジング
58 流入路
60 可変絞り弁
62 スプール
62a 第2の周溝
62a″ 外周縁
62b 阻止部
62c 流動方向変更部
66 挿入孔
66a 第1の周溝
66a′ 内周縁
67 絞り部
76 流出路
Claims (2)
- ハウジングと、
そのハウジングに形成された挿入孔に軸方向変位可能に挿入されるスプールとを備え、
その挿入孔の内周に、そのスプールの外周に対向する第1の周溝が形成され、
そのスプールの外周に第2の周溝が形成され、
その第2の周溝の一方の外周縁は、他方の外周縁に近接するに従い小径となるテーパー面とされ、
その第2の周溝の一方の外周縁と、前記第1の周溝の一方の内周縁との間が、圧油の絞り部とされ、
その第1の周溝に連なる圧油の流出路が形成され、
その第2の周溝に連なる圧油の流入路が形成され、
その絞り部の開度は、そのスプールの軸方向変位により変化する可変絞り弁において、
前記絞り部におけるスプールの軸方向に対する圧油の進行方向角度を、その絞り部の出口に向かうに従い次第に大きくする流動方向変更部が、前記テーパー面の下流側に連なってスプールの外周に形成され、
前記スプールの軸方向に対する前記テーパー面の傾斜角度は一定とされ、
前記流動方向変更部は、前記スプールの軸方向に対する傾斜角度が次第に大きくなる環状段差面により構成されていることを特徴とする可変絞り弁。 - その絞り部の開度は車両の運転条件に応じて変化するものとされ、その絞り部の開度の変化により、その車両の油圧パワーステアリング装置の操舵補助力発生用油圧アクチュエータに作用する油圧が制御される請求項1に記載の可変絞り弁。
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