JP4042314B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵補助力を発生する油圧アクチュエータに作用する油圧を、車両の運転条件と操舵抵抗とに応じて制御するパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポンプからの圧油によって作動する油圧アクチュエータにより操舵補助力を発生する油圧パワーステアリング装置においては、操舵抵抗が増大すると操舵補助力が増加するように、その油圧アクチュエータに作用する油圧を制御弁により制御している。
【0003】
さらに、車両の高速走行時における安定性と低速走行時における旋回性を向上するため、高速走行時において操舵補助力を低減し、低速走行時において操舵補助力を増大している。そのため、その制御弁は操舵抵抗に応じて開度が変化する複数の絞り部を有するものとされ、その複数の絞り部は第1の組と第2の組とに組分けされ、その第1の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗よりも、第2の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗が大きくされ、そのポンプから第2の組に属する絞り部を介してタンクに至る圧油流路に、運転条件に応じて開度が変化する可変絞り部が設けられている。その可変絞り部の開度を高速走行時に大きくすることで、操舵抵抗が大きくなっても第2の組に属する絞り部を介して圧油がタンクに還流するので、操舵補助力は増大せず高速走行時の安定性を向上できる。その可変絞り部の開度を低速走行時に小さくし、あるいは閉じることで、操舵抵抗が小さくても第2の組に属する絞り部を介して圧油がタンクに還流することはなく、操舵補助力を増大して低速走行時の旋回性を向上できる。
【0004】
また、制御弁における絞り部の操舵抵抗に対する開度変化割合を一様とし、上記のような可変絞り部を設けることなく、ポンプの回転数を車両の運転条件に応じて変化させることで、高速走行時に圧油供給量を減少させて走行安定性を向上し、低速走行時に圧油供給量を増加させることで旋回性の向上を図るパワーステアリング装置がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の可変絞り部を設けたパワーステアリング装置においては、操舵時に油圧アクチュエータに圧油を吐出するポンプは定流量タイプのものが多い。また、ポンプを駆動するエンジンの回転数に応じて吐出流量が変化するようにドルーピンブポンプが使用される場合もあるが、その吐出流量の変化幅はそれ程大きくはない。そのため、高速走行時でも制御弁にはある程度以上の流量の圧油が供給される。そうすると、高速走行時において、操舵抵抗がそれ程大きくないのに油圧アクチュエータに作用する圧油が増大するため、制御弁の絞り部の開度変化に応じて油圧アクチュエータに作用する油圧を制御可能な範囲が狭くなる。そのため、高速走行時における操舵フィーリングの向上が妨げられていた。
【0006】
また、上記従来のポンプの回転数を車両の運転条件に応じて変化させるパワーステアリング装置においては、運転条件の変化に対するポンプの圧油吐出流量の変化の応答遅れが、直接に操舵補助力の変化の応答性に影響し、その応答性を低下させるので、必要な操舵補助力が得られなかったり、必要以上の操舵補助力が作用して操舵フィーリングが低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することのできるパワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のパワーステアリング装置は、モータにより駆動されるポンプからの圧油によって作動する操舵補助力発生用油圧アクチュエータと、その油圧アクチュエータに作用する油圧の制御弁とを備え、その制御弁は、操舵抵抗に応じて開度が変化する複数の絞り部を有し、各絞り部の開度変化に応じた操舵補助力を付与できるように、その制御弁を介して前記アクチュエータが前記ポンプとタンクに接続され、その複数の絞り部は第1の組と第2の組とに組分けされ、その第1の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗よりも、第2の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗が大きくされ、そのポンプから第2の組に属する絞り部を介してタンクに至る圧油流路に、車両の運転条件に応じて開度が変化する可変絞り部が設けられ、前記ポンプの圧油吐出流量が車両の運転条件に応じて変化するように前記モータを制御する手段が設けられ、操舵時において、前記可変絞り部の開度は車速が増加する程に大きくなり、且つ、前記ポンプの圧油吐出流量は車速が増加する程に低減されることを特徴とする。
本発明の構成によれば、ポンプの駆動用モータを制御することで、車両の運転条件に応じてポンプの圧油吐出流量を変化させることができる。これにより、高速走行時において制御弁に供給される圧油流量を低減し、制御弁の絞り部の開度変化に応じて油圧アクチュエータに作用する油圧を制御可能な範囲を拡げることができる。しかも、その油圧アクチュエータに作用する油圧の制御を、高速走行時においても制御弁の絞り部の開度変化により行うことができるので、運転条件の変化に対するポンプの圧油吐出流量の変化の応答遅れが、操舵補助力の変化の応答性を低下させるのを防止できる。これにより、高速走行時に確実に制御弁に供給される圧油流量を低減し、制御弁の絞り部の開度変化に応じて油圧アクチュエータに作用する油圧を制御可能な範囲を拡げることができる。
【0010】
前記ポンプの圧油吐出流量は、操舵速度が増加する程に増大されるのが好ましい。
これにより、油圧アクチュエータに供給される圧油流量を素早い操舵を行う時に増大し、ゆったりした操舵を行う時に低減することができる。通常、素早い操舵は据え切りや低速走行での旋回時に行われ、ゆったりした操舵は高速走行時に行われることから、車両の走行状態に応じた操舵補助力を付与できる。また、高速走行時に素早い操舵を行った場合に、油圧アクチュエータに供給される圧油流量を低減することで、過大な操舵補助力が作用するのを防止し、車両挙動が不安定になるのを防止できる。この場合、車速センサと、舵角センサと、前記車速センサと前記舵角センサとが接続される制御装置とを備え、前記制御装置に、前記車速センサにより検出される車速と、前記舵角センサにより検出されるステアリングホイールの回転角度の単位時間当たり変化量である操舵速度と、前記モータの回転数との関係が記憶され、前記記憶された関係に従って前記モータが前記制御装置により制御されるのが好ましい。
【0011】
その制御弁は、筒状の第1バルブ部材と、この第1バルブ部材に操舵抵抗に応じて相対回転可能に挿入される第2バルブ部材とを有し、その第1バルブ部材の内周と第2バルブ部材の外周とに、複数の軸方向溝が互いに周方向の間隔をおいて形成され、その第1バルブ部材の軸方向溝の軸方向に沿う縁と、第2バルブ部材の軸方向溝の軸方向に沿う縁との間が、両バルブ部材の相対回転角度に応じて開度が変化することにより前記絞り部を構成し、その軸方向溝として、前記油圧アクチュエータの右操舵補助力発生用油室に接続される右操舵用溝と、その油圧アクチュエータの左操舵補助力発生用油室に接続される左操舵用溝と、前記ポンプに接続される圧油供給用溝と、前記タンクに接続される第1圧油排出用溝と、そのタンクに前記可変絞り部を介して接続される第2圧油排出用溝とを有し、その圧油供給用溝の数は少なくとも2つとされ、その軸方向溝として少なくとも2つの連絡用溝を含み、その右操舵用溝と左操舵用溝の間に第1圧油排出用溝が配置され、その連絡用溝の間に第2圧油排出用溝が配置され、右操舵用溝と連絡用溝との間および左操舵用溝と連絡用溝との間に圧油供給用溝が配置され、その左右操舵用溝と第1圧油排出用溝との間の絞り部と左右操舵用溝と圧油供給用溝との間の絞り部とが前記第1の組に属し、圧油供給用溝と連絡用溝との間の絞り部と連絡用溝と第2圧油排出用溝との間の絞り部とが前記第2の組に属するものとされ、その第2の組に属する絞り部の閉鎖角度が第1の組に属する絞り部の閉鎖角度よりも大きくされ、その第2の組に、互いに閉鎖角度が異なる2種類の絞り部が属し、その第2の組に属する絞り部とタンクとの間の油路に前記可変絞り部が配置されているのが好ましい。
これにより、操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できない領域を小さくでき、より操舵フィーリングの向上を図ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に示す本発明の実施形態の車両のラックピニオン式油圧パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール(図示省略)に連結される入力シャフト2と、この入力シャフト2にトーションバー6を介し連結される出力シャフト3を備えている。そのトーションバー6は、ピン4により入力シャフト2に連結され、セレーション5により出力シャフト3に連結されている。その入力シャフト2は、ベアリング8を介しバルブハウジング7により支持され、また、ブッシュ12を介し出力シャフト3により支持されている。その出力シャフト3はベアリング10、11を介しラックハウジング9により支持されている。その出力シャフト3にピニオン15が形成され、このピニオン15に噛み合うラック16に操舵用車輪(図示省略)が連結される。これにより、操舵による入力シャフト2の回転は、トーションバー6を介してピニオン15に伝達され、このピニオン15の回転によりラック16は車両幅方向に移動し、このラック16の移動により車両の操舵がなされる。なお、入出力シャフト2、3とハウジング7との間にはオイルシール42、43が介在する。また、ラック16を支持するサポートヨーク40がバネ41の弾力によりラック16に押し付けられている。
【0013】
操舵補助力発生用油圧アクチュエータとして油圧シリンダ20が設けられている。この油圧シリンダ20は、ラックハウジング9により構成されるシリンダチューブと、ラック16に一体化されるピストン21を備え、電動モータ72により駆動されるポンプ70からの圧油によって作動する。
【0014】
そのポンプ70の圧油吐出流量が運転条件に応じて変化するように、そのモータ72を制御する制御装置81が設けられている。すなわち、その制御装置81に車速センサ82と舵角センサ83とが接続される。その車速センサ82により検出される車速と、舵角センサ83により検出されるステアリングホイールの回転角度の単位時間当たり変化量である操舵速度とが運転条件として求められる。その運転条件に応じたモータ72の制御により、そのポンプ70の圧油吐出流量は車速が増加する程に低減され、操舵速度が増加する程に増大される。図9におけるハッチングを施した領域は、その制御装置81により制御されるモータ72の回転数と車速と操舵速度との関係一例を示し、この関係を制御装置81は記憶し、その関係に従ってモータ72を制御する。本実施形態では、そのポンプ70はギヤポンプとされているが、モータ72の制御量に応じて圧油吐出量を変化させるものであればよく、例えばベーンポンプであってもよい。
【0015】
その油圧シリンダ20におけるピストン21により仕切られる油室22、23に操舵抵抗に応じて圧油を供給するため、その油圧シリンダ20に作用する油圧を制御するロータリー式油圧制御弁30が設けられている。その制御弁30は、バルブハウジング7に相対回転可能に挿入される筒状の第1バルブ部材31と、この第1バルブ部材31に同軸中心に相対回転可能に挿入される第2バルブ部材32とを備える。その第1バルブ部材31は出力シャフト3にピン29により同行回転するよう連結されている。その第2バルブ部材32は入力シャフト2と一体的に成形され、入力シャフト2の外周部により第2バルブ部材32が構成され、第2バルブ部材32は入力シャフト2と同行回転する。よって、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32は、操舵抵抗に応じ前記トーションバー6がねじれることで同軸中心に弾性的に相対回転する。
【0016】
そのバルブハウジング7に、ポンプ70に接続される入口ポート34と、前記油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に接続される第1ポート37と、左操舵補助力発生用油室23に接続される第2ポート38と、直接にタンク71に接続される第1出口ポート36と、後述の運転条件に応じて開度が変化する可変絞り弁60の可変絞り部67を介しタンク71に接続される第2出口ポート61とが設けられている。各ポート34、36、37、38、61は、その第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との内外周間の流路を介し互いに接続されている。
【0017】
すなわち、図3、図4に示すように、第1バルブ部材31の内周に軸方向溝50a、50b、50cが、周方向に等間隔をおいた12箇所に形成されている。また、第2バルブ部材32の外周に軸方向溝51a、51b、51cが、周方向に等間隔をおいた12箇所に形成されている。図4は実線により第2バルブ部材32の展開図を示し、鎖線により第1バルブ部材31に形成された軸方向溝50a、50b、50cを示す。第1バルブ部材31に形成された軸方向溝50a、50b、50cの間に第2バルブ部材32に形成された軸方向溝51a、51b、51cが位置する。
【0018】
その第1バルブ部材31の溝は、3つの右操舵用溝50aと、3つの左操舵用溝50bと、6つの連絡用溝50cとを構成する。その右操舵用溝50aは、第1バルブ部材31に形成された流路53と第1ポート37とを介し油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。その左操舵用溝50bは、第1バルブ部材31に形成された流路54と第2ポート38とを介し油圧シリンダ20の左操舵補助力発生用油室23に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。
【0019】
その第2バルブ部材32の溝は、6つの圧油供給用溝51aと、3つの第1圧油排出用溝51bと、3つの第2圧油排出用溝51cとを構成する。その圧油供給用溝51aは、第1バルブ部材31に形成された圧油供給路55と入口ポート34とを介しポンプ70に接続され、互いに周方向に60°離れて配置される。その第1圧油排出用溝51bは、入力シャフト2に形成された流路52aから入力シャフト2とトーションバー6との間を通り、入力シャフト2に形成された流路52b(図1参照)と第1出口ポート36とを介しタンク71に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。その第2圧油排出用溝51cは、第1バルブ部材31に形成された流路59と第2出口ポート61とを介し可変絞り弁60に接続され、互いに周方向に120°離れて配置される。
【0020】
各第1圧油排出用溝51bは右操舵用溝50aと左操舵用溝50bの間に配置され、各第2圧油排出用溝51cは連絡用溝50cの間に配置され、右操舵用溝50aと連絡用溝50cとの間および左操舵用溝50bと連絡用溝50cとの間に圧油供給用溝51aは配置される。
【0021】
その第1バルブ部材31に形成された軸方向溝50a、50b、50cの軸方向に沿う縁と第2バルブ部材32に形成された軸方向溝51a、51b、51cの軸方向に沿う縁との間が、複数の絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を構成する。これにより、各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′はポンプ70とタンク71と油圧シリンダ20とを接続する油路27に配置され、操舵抵抗に応じて開度が変化する。
【0022】
図5に示すように、その第2バルブ部材32に形成された溝51a、51b、51cの軸方向に沿う縁は面取り部とされている。各面取り部の周方向幅は、各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を全閉するのに要する両バルブ部材の相対回転角度である閉鎖角度に応じて定められている。すなわち、その圧油供給用溝51aと連絡用溝50cとの間の絞り部A′、C′における圧油供給用溝51aの軸方向に沿う縁(図3において□で囲む)の面取り部の周方向幅をW、連絡用溝50cと第2圧油排出用溝51cとの間の絞り部B′、D′における第2圧油排出用溝51cの軸方向に沿う縁(図3において△で囲む)の面取り部の周方向幅をW′、その他の絞り部A、B、C、Dにおける第2バルブ部材32に形成された溝の軸方向に沿う縁(図3において○で囲む)の面取り部の周方向幅をW″として、図4、図5に示すように、W>W′>W″とされている。操舵抵抗のない状態(図4、図5の状態)から各絞り部A、A′、B、B′、C、C′、D、D′を全閉するのに要する両バルブ部材31、32の相対回転角度(すなわち閉鎖角度)を互いに比較すると、絞り部A′、C′の閉鎖角度θrは絞り部B′、D′の閉鎖角度θsよりも大きく、両閉鎖角度θr、θsは、他の各絞り部A、B、C、Dの閉鎖角度θtよりも大きい。これにより、第1バルブ部材31と第2バルブ部材32との間の各絞り部は、複数の絞り部A、B、C、Dからなる第1の組と、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dよりも閉鎖角度の大きな複数の絞り部A′、B′、C′、D′からなる第2の組とに組分けされる。すなわち、その第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが閉鎖される時の操舵抵抗よりも、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′が閉鎖される時の操舵抵抗が大きくなる。また、第2の組に属する絞り部は、絞り部B′、D′と、この絞り部B′、D′よりも閉鎖角度の大きな絞り部A′、C′の2種類とされる。
【0023】
その入力シャフト2と出力シャフト3は、路面から操舵用車輪を介し伝達される操舵抵抗によるトーションバー6のねじれによって相対回転する。その相対回転により第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とが相対回転することで、各絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の流路面積すなわち開度が変化する。各絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度変化に応じた操舵補助力を付与できるように、制御弁30を介して油圧シリンダ20がポンプ70とタンク71に接続され、油圧シリンダ20が操舵抵抗に応じた操舵補助力を発生する。
【0024】
すなわち、図4は操舵が行なわれていない状態を示し、両バルブ部材31、32の間の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′は全て開かれ、入口ポート34と各出口ポート36、61とは弁間流路27を介し連通し、ポンプ70から制御バルブ30に流入する油はタンク71に還流し、操舵補助力は発生しない。
【0025】
この状態から右方へ操舵することによって生じる操舵抵抗により両バルブ部材31、32が相対回転すると、図3に示すように、絞り部A、A′の開度が大きくなり、絞り部B、B′の開度が小さくなり、絞り部C、C′の開度が小さくなり、絞り部D、D′の開度が大きくなる。これにより、図中矢印で示す圧油の流れにより油圧シリンダ20の右操舵補助力発生用油室22に操舵抵抗に応じた圧力の圧油が供給され、また、左操舵補助力発生用油室23からタンク71に油が還流し、車両の右方への操向補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
【0026】
左方へ操舵すると第1バルブ部材31と第2バルブ部材32とが右方に操舵した場合と逆方向に相対回転し、絞り部A、A′の開度が小さくなり、絞り部B、B′の開度が大きくなり、絞り部C、C′の開度が大きくなり、絞り部D、D′の開度が小さくなるので、車両の左方への操舵補助力が油圧シリンダ20からラック16に作用する。
【0027】
図1、図6に示すように、その第2出口ポート61に連通する可変絞り弁60は、バルブハウジング7に接続される第2バルブハウジング7′と、この第2バルブハウジング7′に形成された挿入孔66に軸方向(図1、図6において上下方向)に移動可能に挿入されたスプール62と、そのスプール62にねじ合わされるネジ部材64とを有する。その挿入孔66の一端はプラグ68により閉鎖され、他端はカバー94′により閉鎖されている。そのスプール62とプラグ68との間に圧縮コイルバネ90が配置されている。そのネジ部材64にステッピングモータ80が接続され、そのステッピングモータ80に上記制御装置81が接続される。その制御装置81は上記車速センサ82により検出される車速に応じてステッピングモータ80を制御する。すなわち、高速になるとネジ部材64は一方向に回転してスプール62は図中上方に変位し、低速になるとネジ部材64は他方向に回転してスプール62は図中下方に変位する。
【0028】
そのスプール62の外周に周溝62aが形成され、その挿入孔66の内周に周溝66aが形成され、両周溝62a、66aの間が可変絞り部67とされている。すなわち可変絞り部67は、ポンプ70から第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′を介してタンク71に至る圧油流路の中で、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′とタンク71との間の油路に設けられている。これにより図2に示す油圧回路が構成され、可変絞り部67の開度は、高速になってスプール62が図中上方に変位すると大きくなり、低速になってスプール62が下方に変位すると小さくなる。すなわち可変絞り部67の開度は車両の運転条件である車速に応じて変化し、車速が増加する程に大きくなる。
【0029】
その挿入孔66の内周の周溝66aと第2出口ポート61とを連通する連絡流路58が、スプール62の径方向外方において第2バルブハウジング7′に形成されている。そのスプール62の外周の周溝62aとスプール62の通孔62dとを連通する径方向孔62cがスプール62に形成されている。そのスプール62の通孔62dは、その挿入孔66におけるスプール62の下方空間に連絡する。そのスプール62の下方空間と第1出口ポート36とを連通する連絡流路76が、スプール62の径方向外方においてバルブハウジング7と第2バルブハウジング7′とに亘り形成されている。
【0030】
これにより、ポンプ70から供給される圧油は、前記弁間流路27および第2出口ポート61から連絡流路58に導かれ、この連絡流路58から可変絞り部67に至り、この可変絞り部67から連絡流路76、第1出口ポート36を介しタンク71に至る。なお、スプール62には通孔62dと平行にドレン流路62hが形成され、スプール62の上方空間と下方空間とを接続する。
【0031】
その可変絞り部67の開度に対応する流路面積の最大値は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の開度に対応する流路面積の最大値(両バルブ部材31、32の相対回転角が大きくなる程に流路面積が小さくなる特性における最大値である。すなわち、右操舵時は絞り部B′、C′の合計流路面積の最大値をいい、左操舵時は絞り部A′、D′の合計流路面積の最大値をいう。以下「流路面積の最大値」という場合は同旨)以上、若しくは絞り機能を奏さなくなるまで大きくされている。その可変絞り部67の流路面積の最小値は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の最小値(両バルブ部材31、32の相対回転角が大きくなる程に流路面積が小さくなる特性における最小値である。すなわち、右操舵時は絞り部B′、C′の合計流路面積の最小値をいい、左操舵時は絞り部A′、D′の合計流路面積の最小値をいい、全閉状態を含む。以下「流路面積の最小値」という場合は同旨)以下とされる。
【0032】
図7において、実線Xは両バルブ部材31、32の相対回転角に対する第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの開度に対応する流路面積の変化特性(その相対回転角が大きくなる程に流路面積が小さくなる特性である。この場合、右操舵時は絞り部B、Cの合計流路面積の変化特性をいい、左操舵時は絞り部A、Dの合計流路面積の変化特性をいう。以下「流路面積の変化特性」という場合は同旨)を示す。1点鎖線Uは、その相対回転角に対する第2の組に属する絞り部A′、C′の流路面積の変化特性を示す。1点鎖線Vは、その相対回転角に対する第2の組に属する絞り部B′、D′の流路面積の変化特性を示す。実線Yは、その絞り部A′、C′の流路面積の変化特性と絞り部B′、D′の流路面積の変化特性を合成した特性を示す。破線Rは可変絞り部67の中速走行時における流路面積を示す。
【0033】
低速走行時においては、スプール62は図1、図6において下方に変位し、このスプール62の変位により可変絞り部67は全閉状態になる。よって、油圧シリンダ20に作用する油圧は、第1の組の絞り部A、B、C、Dの流路面積の変化特性線Xに応じ制御される。この場合、図8において実線αで示すように、操舵抵抗に対応する操舵トルクが小さく、両バルブ部材31、32の相対回転角が小さくても、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの開度は小さいので、操舵トルクの変化に対して油圧変化が少ない領域を小さくし、操舵の高応答性を満足させて旋回性能を向上できる。
【0034】
高速走行時においては、スプール62は図1、図6において上方に変位し、このスプール62の変位によって可変絞り部67の流路面積は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の最大値以上になる。よって、油圧シリンダ20に作用する油圧は、第2の組の絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の変化特性線Y及び第1の組の絞り部A、B、C、Dの流路面積の変化特性線Xの合成特性に応じ制御される。この場合、図8において実線βで示すように、操舵トルクが大きく、両バルブ部材31、32の相対回転角が大きくても、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の開度は大きいので、操舵トルクの変化に対して油圧変化が少ない領域を大きくし、高速走行時における走行安定性を満足させることができる。
【0035】
中速走行時においては、スプール62の変位により可変絞り部67の流路面積は、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の最小値よりも大きく最大値よりも小さくなる。これにより、図7に示すように、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの流路面積が最小値(本実施形態では全閉状態)になるまでの間(図7において両バルブ部材の相対回転角がθaになるまでの間)は、その第1の組に属する絞り部A、B、C、Dの流路面積の変化特性線Xに可変絞り部67の流路面積の特性線Rを合成した特性に応じて、油圧シリンダ20に作用する油圧が制御される。第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になった時点から、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積が可変絞り部67の流路面積よりも小さくなるまでの間(図7において両バルブ部材の相対回転角がθaとθbとの間)では、可変絞り部67の流路面積により定まる一定値になり、油圧シリンダ20に作用する油圧は操舵抵抗に応じて制御できない。しかる後に、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積が可変絞り部67の流路面積よりも小さくなると、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の変化特性線Yに応じた操舵補助力が付与される。この場合、図8において実線γで示すように、操舵トルクの変化に対する油圧変化は、低速走行時と高速走行時の中間の特性を示す。
【0036】
その第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になった後に、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積が可変絞り部67の流路面積よりも小さくなるまでの間(θa〜θbの間)は、その第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′が全閉状態になる点と、第1の組に属する絞り部A、B、C、Dが全閉状態になる点との差(θc−θa)を小さくすることなく、小さくされている。すなわち、絞り部B′、D′が絞り部A′、C′と同様に図7において1点鎖線Uで示す相対回転角に対する流路面積変化特性を有すると仮定すると、相対回転角に対する第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積の変化特性は、図7において2点鎖線Mで示すものになる。そうすると、第2の組に属する絞り部A′、B′、C′、D′の流路面積が可変絞り部67の流路面積よりも小さくなるまでの間(両バルブ部材の相対回転角がθaとθdとの間)は大きくなるので、操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できない領域が大きくなる。これに対し、上記実施形態では、絞り部B′、D′の閉鎖角度θsは絞り部A′、C′の閉鎖角度θrよりも小さいので、中速走行時において操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できない領域を小さくできる。しかも、絞り部B′、D′が全閉状態になる点(図7において両バルブ部材の相対回転角がθeの点)では、絞り部A′、C′は未だ閉じていないので、操舵補助力を操舵抵抗に応じ制御できる領域は小さくなることはない。よって、より操舵フィーリングの向上を図ることができる。
【0037】
上記構成によれば、ポンプ70の駆動用モータ72を制御することで、車速と操舵速度に応じてポンプ70の圧油吐出流量を変化させることができる。すなわち、高速走行時において制御弁30に供給される圧油流量を低減し、制御弁30の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度変化に応じて油圧シリンダ20に作用する油圧を制御可能な範囲を拡げることができる。例えば、そのポンプ70の圧油吐出流量が従来のように一定であったり変化幅が小さいと、操舵トルクと油圧の関係は図8における一点鎖線β′で示すものとなり、油圧が急激に立ち上がる時点の操舵トルクが小さくなる。すなわち、制御弁30の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度変化に対応する操舵トルクの変化がそれ程大きくなくても、油圧シリンダ20に作用する油圧を制御できなくなる。これに対して上記実施形態によれば、図8において一点鎖線βで示すように、油圧が急激に立ち上がる時点の操舵トルクが大きくなる。すなわち、制御弁30の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度変化に対応する操舵トルクの変化に応じて、油圧シリンダ20に作用する油圧を微妙に制御できる範囲が広くなる。これにより、高速走行時において操舵抵抗に応じた操舵補助力を付与できる範囲が広くなり、操舵フィーリングを向上できる。しかも、その油圧シリンダ20に作用する油圧の制御を、高速走行時においても制御弁30の絞り部A、B、C、D、A′、B′、C′、D′の開度変化により行うことができるので、車速と操舵速度の変化に対するポンプ70の圧油吐出流量の変化の応答遅れが、操舵補助力の変化の応答性を低下させるのを防止できる。
さらに、ポンプ70の圧油吐出流量を操舵速度が増加する程に増大させることで、油圧シリンダ20に供給される圧油流量を素早い操舵を行う時に増大し、ゆったりした操舵を行う時に低減することができる。通常、素早い操舵は据え切りや低速走行での旋回時に行われ、ゆったりした操舵は高速走行時に行われることから、車両の走行状態に応じた操舵補助力を付与できる。また、高速走行時に素早い操舵を行った場合に、油圧シリンダ20に供給される圧油流量を低減することで、過大な操舵補助力が作用するのを防止し、車両挙動が不安定になるのを防止できる。
【0038】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では可変絞り部の開度制御に際して車速を運転条件とし、車速が増加する程に開度を大きくしたが、その運転条件を舵角とし、舵角が小さいる程に開度を大きくしてもよい。また、ポンプ70の圧油吐出流量を車速と操舵速度とに基づき制御したが、車速のみに基づき制御するようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の高速走行時における安定性と低速走行時における旋回性を向上できるだけでなく、高速走行時における操舵フィーリングの向上を図ることができるパワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の縦断面図
【図2】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の油圧回路を示す図
【図3】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における制御弁の横断面構造の説明図
【図4】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の制御弁の展開図
【図5】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の制御弁の部分拡大図
【図6】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置の可変絞り弁の縦断面図
【図7】本発明の実施形態の油圧パワーステアリング装置における制御弁の絞り部の開度とバルブ部材の相対回転角との関係を示す図
【図8】油圧パワーステアリング装置における操舵トルクと油圧との関係を示す図
【図9】本発明の実施形態のモータの回転数と車速と操舵速度との関係一例を示す図
【符号の説明】
20 油圧シリンダ
30 制御弁
31 第1バルブ部材
32 第2バルブ部材
50a、50b、50c、51a、51b、51c 軸方向溝
67 可変絞り部
70 ポンプ
71 タンク
72 モータ
81 制御装置
A、B、C、D 第1の組に属する絞り部
A′、B′、C′、D′ 第2の組に属する絞り部
Claims (4)
- モータにより駆動されるポンプからの圧油によって作動する操舵補助力発生用油圧アクチュエータと、その油圧アクチュエータに作用する油圧の制御弁とを備え、
その制御弁は、操舵抵抗に応じて開度が変化する複数の絞り部を有し、
各絞り部の開度変化に応じた操舵補助力を付与できるように、その制御弁を介して前記アクチュエータが前記ポンプとタンクに接続され、
その複数の絞り部は第1の組と第2の組とに組分けされ、
その第1の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗よりも、第2の組に属する絞り部が閉鎖される時の操舵抵抗が大きくされ、
そのポンプから第2の組に属する絞り部を介してタンクに至る圧油流路に、車両の運転条件に応じて開度が変化する可変絞り部が設けられ、
前記ポンプの圧油吐出流量が車両の運転条件に応じて変化するように前記モータを制御する手段が設けられ、
操舵時において、前記可変絞り部の開度は車速が増加する程に大きくなり、且つ、前記ポンプの圧油吐出流量は車速が増加する程に低減されるパワーステアリング装置。 - 前記ポンプの圧油吐出流量は、操舵速度が増加する程に増大される請求項1に記載のパワーステアリング装置。
- 車速センサと、
舵角センサと、
前記車速センサと前記舵角センサとが接続される制御装置とを備え、
前記制御装置に、前記車速センサにより検出される車速と、前記舵角センサにより検出されるステアリングホイールの回転角度の単位時間当たり変化量である操舵速度と、前記モータの回転数との関係が記憶され、
前記記憶された関係に従って前記モータが前記制御装置により制御される請求項2に記載のパワーステアリング装置。 - その制御弁は、筒状の第1バルブ部材と、この第1バルブ部材に操舵抵抗に応じて相対回転可能に挿入される第2バルブ部材とを有し、
その第1バルブ部材の内周と第2バルブ部材の外周とに、複数の軸方向溝が互いに周方向の間隔をおいて形成され、
その第1バルブ部材の軸方向溝の軸方向に沿う縁と、第2バルブ部材の軸方向溝の軸方向に沿う縁との間が、両バルブ部材の相対回転角度に応じて開度が変化することにより前記絞り部を構成し、
その軸方向溝として、前記油圧アクチュエータの右操舵補助力発生用油室に接続される右操舵用溝と、その油圧アクチュエータの左操舵補助力発生用油室に接続される左操舵用溝と、前記ポンプに接続される圧油供給用溝と、前記タンクに接続される第1圧油排出用溝と、そのタンクに前記可変絞り部を介して接続される第2圧油排出用溝とを有し、
その圧油供給用溝の数は少なくとも2つとされ、
その軸方向溝として少なくとも2つの連絡用溝を含み、
その右操舵用溝と左操舵用溝の間に第1圧油排出用溝が配置され、その連絡用溝の間に第2圧油排出用溝が配置され、右操舵用溝と連絡用溝との間および左操舵用溝と連絡用溝との間に圧油供給用溝が配置され、
その左右操舵用溝と第1圧油排出用溝との間の絞り部と左右操舵用溝と圧油供給用溝との間の絞り部とが前記第1の組に属し、圧油供給用溝と連絡用溝との間の絞り部と連絡用溝と第2圧油排出用溝との間の絞り部とが前記第2の組に属するものとされ、
その第2の組に属する絞り部の閉鎖角度が第1の組に属する絞り部の閉鎖角度よりも大きくされ、
その第2の組に、互いに閉鎖角度が異なる2種類の絞り部が属し、
その第2の組に属する絞り部とタンクとの間の油路に前記可変絞り部が配置されている請求項1〜3の中の何れかに記載のパワーステアリング装置。
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