JP3842851B2 - インジウムの精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、純度99.99%程度の市販金属インジウムから真空蒸留精製により純度99.9999%(6N)以上の高純度インジウムを製造する方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にインジウムはセン亜鉛鉱中に少量産出するので亜鉛を製錬するときの煤煙あるいは亜鉛電解などの中間工程から微量成分として回収されるほか、近年化合物半導体廃棄物から精製インジウムとして回収されるようになった。これらの原料インジウムからの精製方法には電解精製の他、真空下で蒸留する減圧精製あるいはゾーン精製法が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記電解精製あるいは減圧精製によって得られる金属インジウムの純度は99.99%程度であり、不純物として含有されるSi、Fe、Cu、Ga、Pb等はいずれも0.5ppm 以上含まれており、一方、化合物半導体廃棄物からの精製には大掛かりな装置と時間をかけて分離、回収しなければならないという問題があった。
【0004】
更にゾーン精製法の場合においても、精製後の切断加工の必要性と汚染の危険があることから精製時の処理量の制約や精製収率の低下が避けられない上、また得られた精製インジウムをインゴットにする場合には鋳造時の不純物混入による汚染の問題があった。
【0005】
したがって本発明の目的は、従来の技術ではインジウムとの完全分離が困難であった珪素、鉄、鉛などを分離できる新規な精製手段を開発することによって、純度99.9999%以上の高純度インジウムを直接インゴット状で製造できる製造方法と製造装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、外筒と内筒からなる2重の石英筒で封体した内部に原料インジウムが装入される原料るつぼとこれに連接して設けられる回収鋳型を配置して真空蒸留を行い、蒸発したインジウムを石英筒面に凝縮させ、これを回収鋳型に回収するようにすれば、従来よりも簡素な構造でしかも精製から鋳造までを一回の連続工程で処理できる上、汚染が少ないので、含有する不純物が1ppm 未満の純度99.9999%以上の高純度インジウムが得られることを見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、原料インジウムを真空蒸留してインジウムを精製する方法において、電気炉内で原料るつぼと回収鋳型を耐熱材からなる内筒と外筒の二重の筒内に封体し、該原料るつぼに装入された原料インジウムを温度1100℃〜1500℃、真空度1×10-3〜1×10-6Torrで真空蒸留することにより、蒸発させたインジウムを該原料るつぼ上の前記内筒の表面に接触させて凝縮させ該原料るつぼ下方の該回収鋳型に回収してインゴットとし、さらに前記凝縮後のガスを該回収鋳型の下方で冷却して固化することを特徴とするインジウムの精製方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の高純度インジウムの製造装置は、一例として図1の概略断面図に示す構造とすることができる。すなわち、電気炉1内に配置された石英製外筒3内を真空排気装置2により真空排気を行えるよう、上記外筒3内に原料るつぼ5、回収鋳型6、回収鋳型中央部に設けた吸入台9、冷却トラップ8および水冷フランジ7を脱着可能に連接し、更に原料るつぼ上面に位置する石英製内筒4を設けて外筒3とともに2重構造となって封体されるようになっている。
【0009】
この場合、原料インジウム(純度99.99%程度)を原料るつぼ5に適量入れ、電気炉で1000℃以上、好ましくは1100℃〜1500℃の温度範囲にするとともに、真空度を1×10-3Torr以下、好ましくは1×10-3〜1×10-6Torrの範囲に制御すると、原料るつぼ内の原料インジウムが融解・蒸発し、上部の石英製内筒4との間に落下してるつぼ底部に連接する回収鋳型6の中に回収される。
【0010】
原料インジウム中に含有される不純物のうち、インジウムより蒸気圧の低いアルミニウム、珪素、鉄、ニッケル、銅、ガリウムは原料るつぼ5内に残留し、逆に蒸気圧の高いリン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、亜鉛、ヒ素、カドミウム、鉛は凝縮することなく気体状で真空排気装置2によってるつぼ底部に設けられた吸入台9の吸入孔を通って冷却トラップ8内に吸収され水冷フランジ7の働きにより冷却されて固化する。
【0011】
本発明においては、予め回収用の鋳型の形状を精製後の次工程で用いる鋳型の形状にしてあるため、従来法のように精製されたインジウムを再度鋳造する必要なく、このため汚染の少ない製品を、製造、鋳造の工程を区別することなく一回の処理で製造できる。
【0012】
このようにして得られた高純度インジウムをグロー放電質量分析機で分析したところ、珪素、塩素、カルシウム、ガリウム、鉛がそれぞれ0.05ppm 未満であり、リン、アルミニウム、硫黄、カリウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ヒ素、カドミウムがそれぞれ0.01ppm 未満で、かつガス成分以外の不純物が1ppm 未満の値を示していた。
【0013】
したがって、本発明においては測定対象元素をP、Al、Si、S、Cl、K、Ca、Fe、Ni、Cu、Zn、As、Cd、Ga、Pbとし、グロー放電質量分析装置により定量分析を行い、得られた不純物含量の総和を100%から差し引いて得られる数値が99.9999%以上の場合をもって純度99.9999%以上の高純度インジウムと定義した。
【0014】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0015】
【実施例1】
図1の高純度インジウム製造装置の断面図を参照して以下説明する。先ず、純度99.99%の金属インジウム100gを原料るつぼ5に入れ、回収鋳型6中央部に設置した吸入台9上に固定した後、電気炉1内に装入した。
【0016】
この場合、原料るつぼ5と回収鋳型6の上面には石英製の外筒3と内筒4が設けられ、真空排気装置2によって内筒4内部の空気が吸入台上部に設けられた吸入孔(図示せず)を通して吸い出され、内筒4の内部が真空状態となる構造である。
【0017】
次いで内筒4内の真空度を1×10-4Torrとするとともに、炉温を1100℃一定で1時間精製したところ、原料中のインジウムはいったん蒸発した後原料るつぼ5上の内筒4面に接触して次第に凝縮し始め、粒状になって原料るつぼ5の底部に接して設けた回収鋳型6に落下した。この粒状インジウム85gを回収した。
【0018】
一方、インジウムより蒸気圧の高いものはガス状のまま排気装置で吸引され、吸入台9の上部に設けられた吸入孔を通過した冷却トラップ8上で固化した。この固化物を分析したところ、その主成分はインジウムで、りん、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、亜鉛、ヒ素、カドミウム、鉛などいずれも蒸気圧の高い物質が含まれていた。また、原料るつぼ内に残っている金属を分析したところその主成分はインジウムで珪素、銅、ガリウムなどの蒸気圧の低い物質が原料より多く含まれていた。いずれも分析結果を表1に示した。
【0019】
【表1】
Figure 0003842851
【0020】
【実施例2】
純度99.99%の金属インジウム100gを原料るつぼ5に入れて、真空度1×10-5Torr、加熱温度を1200℃として実施例1と同様に精製を行い、精製インジウム90gを得た。精製品の分析結果を表1に併せて示した。
【0021】
【比較例】
比較のため、純度99.99%の金属インジウム(市販品)の品位を表1に併せて示した。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法に基づく製造装置によれば、原料るつぼで溶解したインジウムはいったん蒸発して内筒面に接触して凝縮し、るつぼに連接する回収鋳型に回収されてインゴットを形成するので、従来必要とされていた蒸留後の鋳造や後処理等の複雑な工程が省略され、簡易な構造の製造装置を用いることにより、精製から鋳造までの一連の工程を汚染の危険が少ない一回の処理で行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高純度インジウムの製造装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 電気炉
2 真空排気装置
3 石英製外筒
4 石英製内筒
5 原料るつぼ
6 回収鋳型
7 水冷フランジ
8 冷却トラップ
9 吸入台

Claims (1)

  1. 原料インジウムを真空蒸留してインジウムを精製する方法において、電気炉内で原料るつぼと回収鋳型を耐熱材からなる内筒と外筒の二重の筒内に封体し、該原料るつぼに装入された原料インジウムを温度1100℃〜1500℃、真空度1×10-3〜1×10-6Torrで真空蒸留することにより、蒸発させたインジウムを該原料るつぼ上の前記内筒の表面に接触させて凝縮させ該原料るつぼ下方の該回収鋳型に回収してインゴットとし、さらに前記凝縮後のガスを該回収鋳型の下方で冷却して固化することを特徴とするインジウムの精製方法。
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