JP3832784B2 - 電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置 - Google Patents

電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置に関するものであり、詳しくは、浸漬塗布槽に塗布液を循環供給する塗布液の循環系において気泡の混入がなく、塗布ムラの発生を有効に防止し得る電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドラム状の電子写真感光体は、円筒状基体の表面に感光体材料の塗膜を形成して製造され、塗膜の形成には、感光体材料としての塗布液を収容し且つ基体が浸漬される浸漬塗布槽を備えた塗布装置が使用される。塗布装置による処理は、浸漬塗布槽において塗布液をオーバーフローさせつつ、塗布液に基体を略垂直に浸漬した後、略垂直に引き上げることによって基体の表面に感光体材料の塗膜を形成する。斯かる浸漬塗布法は、塗布液の組成を均一に保持することが出来るため、広く採用されている方法である。
【0003】
上記の浸漬塗布法においては、感光塗膜の平滑性を向上させるため、基体表面の塗布ムラを防止することが重要な課題である。塗布ムラの発生原因の一つとしては、浸漬塗布槽に塗布液を循環供給する塗布液の循環系における気泡の混入が挙げられる。塗布液に気泡が混入するメカニズムは次の通りである。
【0004】
すなわち、上記の塗布装置において、浸漬塗布槽本体からその外周側の樋部材にオバーフローした塗布液は、立ち下げられた配管を介して塗布液調製槽(液溜槽)に収容された後、塗布液調製槽において再調製される。その際、塗布液調製槽に至る上記の配管においては、基体の浸漬と引上げに伴うオバーフロー量の変動から、空気が進入し且つ進入した空気が塗布液と共に塗布液調製槽に送り込まれる。その結果、浸漬塗布槽に供給される塗布液には気泡が混入すると言う問題が生じる。
【0005】
そこで、上記の様な空気の混入を防止する手段として、塗布液調製槽に至る配管の後段に気液分離管を設置する技術が提案されている。斯かる気液分離管は、上端が塗布液調製槽の上部空間に接続され且つ下端が塗布液調製槽の液中に接続された垂直な管であり、上記の配管中の塗布液に混入した空気(気泡)を比重差で分離する構造を備えている(実開平2−147271号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、感光体材料としての塗布液は、比較的粘度が高いため、混入した空気が分離し難いと言う性質がある。しかも、上述の様に、浸漬塗布槽におけるオーバーフロー量が変動するため、オーバーフロー量が増加したタイミングにおいて、一旦塗布液中に混入した空気は、気液分離管で十分に分離されずに塗布液調製槽に送り込まれると言う実情がある。殊に、積層型の電子写真感光体に使用される高粘度の電荷輸送用の塗布液は、上記の様な分離操作が困難である。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、浸漬塗布槽に塗布液を循環供給する塗布液の循環系において気泡の混入がなく、塗布ムラの発生を有効に防止し得る電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置は、浸漬塗布法によって円筒状基体の表面に感光体材料の塗布液を塗布する塗布装置であって、円筒状基体に塗布液を塗布する浸漬塗布槽と、塗布液を調製する塗布液調製槽と、前記浸漬塗布槽と前記塗布液調製槽の間で塗布液を循環させる塗布液の循環装置とから主として構成され、前記浸漬塗布槽は、オーバーフロー状態で塗布液を収容し且つ円筒状基体が浸漬させられる浸漬槽本体と、当該浸漬槽本体の上部外周側に付設され且つオバーフローした塗布液を受ける樋部材とから成り、前記塗布液の循環装置は、一端が前記樋部材に接続され且つ他端が前記塗布液調製槽に接続された塗布液返流用の配管と、当該塗布液返流用の配管に介装された遮断弁と、前記樋部材に滞留した塗布液の液面高さを検出する液面検出手段と、当該液面検出手段によって検出された液面高さに基づいて前記遮断弁を開閉操作する制御手段とを含み、前記制御手段は、前記樋部材において、前記塗布液返流用の配管の開口部が露出しない状態に塗布液の液面を一定の範囲に保持すべく前記遮断弁を開閉する機能を備え、かつ、前記液面検出手段が、樋部材の中に配置されたフロートと、当該フロートの浮上高さを検出するセンサーとから構成されていることを特徴としている。
【0009】
上記の浸漬塗布装置において、上記の特定の制御手段は、遮断弁を開閉操作することによって塗布液返流用の配管の流量を調整し、樋部材に取り付けられた前記配管の開口部を常に塗布液中に位置させ、その結果、前記配管に空気が進入するのを防止する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の浸漬塗布装置における主要な構成部材を示す系統図であり、一部を縦断面で示した図である。図2は、浸漬塗布槽の樋部材における液面検出手段の一態様を示す部分的な縦断面図である。図3は、浸漬塗布槽の樋部材における液面検出手段の他の態様を示す部分的な縦断面図である。以下、実施形態の説明においては、浸漬塗布装置を「塗布装置」、円筒状基体を「基体」とそれぞれ略記する。
【0011】
本発明の塗布装置は、図1に示す様に、浸漬塗布法によって基体(W)の表面に感光体材料の塗布液を塗布する電子写真感光体製造用の塗布装置であり、基体(W)に塗布液を塗布する浸漬塗布槽(1)と、塗布液を調製する塗布液調製槽(2)と、浸漬塗布槽(1)と塗布液調製槽(2)の間で塗布液を循環させるポンプ(3)や配管類を含む塗布液の循環装置とから主として構成される。
【0012】
本発明において、基体(W)とは、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、フエノール樹脂などの高分子材料、または、硬質紙などの材料によって15〜200mm程度の外径で200〜1000mm程度の長さに作製された従来公知の円筒状基体を言う。なお、基体(W)の表面が絶縁体材料によって構成される場合には、導電物質の含浸、金属箔の積層、金属の蒸着などよって導電処理される。
【0013】
塗布液は、感光体材料と1種以上の溶媒から成る公知の塗布液である。単層型電子写真感光体を製造する場合の感光体材料の塗布液は、電荷発生物質、電荷輸送物質、結着剤樹脂および溶媒を混合して調製される。また、積層型電子写真感光体を製造する場合の感光体材料の塗布液は、前記電荷発生物質、結着剤樹脂および溶媒からなる電荷発生層用の塗布液と、前記電荷輸送物質、結着剤樹脂および塗布溶媒からなる電荷輸送層用の塗布液とが別々に調製される。
【0014】
電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルー、ジエナスグリーンB等のアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アルゴールイエロー、ピレンキノン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、インドフアーストオレンジトナー等のビスベンゾイミダゾール顔料、銅フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩、アズレニウム塩が挙げられる。
【0015】
電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にアントラセン、ピレン、フエナントレン、コロネン等の多芳香族化合物またはインドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール等の含窒素環式化合物の骨格を有する化合物、その他、ヒドラゾン化合物など正孔輸送物質が挙げられる。
【0016】
結着剤樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル類、スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、ポリエステル、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、ポリサルホン等が挙げられる。また、溶媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン等、揮発性が高く且つその蒸気の密度が空気よりも大きい溶剤が好適に用いられる。
【0017】
塗布液中の各成分の濃度は、公知の技術に従って適宜に設定される。固形分の濃度は、主として、形成すべき層の膜厚に応じて決定されるが、単層型電子写真感光体を製造する際の塗布液の場合、および、積層型電子写真感光体を製造する際の電荷輸送層用の塗布液の場合、40重量%以下、好ましくは10〜35重量%以下に調製される。これらの塗布液の場合、その粘度は、50〜350cps、好ましくは70〜250cpsとされ、その乾燥膜厚は、15〜40μmとされる。また、積層型電子写真感光体を製造する際の電荷発生層用の塗布液の場合、固形分濃度は15重量%以下、好ましくは1〜10重量%に調製される。そして、電荷発生層用の塗布液の粘度は、1〜5cpsとされ、その乾燥膜厚は、0.1〜1μmとされる。
【0018】
本発明の塗布装置において、浸漬塗布槽(1)としては、塗布液をオーバーフローさせつつ処理する構造の塗布槽が使用される。すなわち、浸漬塗布槽(1)は、オーバーフロー状態で塗布液を収容し且つ基体(W)が浸漬させられる浸漬槽本体(10)と、浸漬槽本体(10)の上部外周側に付設され且つオバーフローした塗布液を受ける樋部材(11)とから成る。
【0019】
浸漬槽本体(10)は、上端が開放され且つ下端側から塗布液が供給される構造を備えており、浸漬槽本体(10)の下端には、塗布液を供給する配管(分岐配管)(54)が接続される。基体(W)を収容する浸漬槽本体(10)の胴部は、塗布液の部分的な滞留をなくすため、略円筒状に形成され且つ底部が逆円錐状に形成される。浸漬槽本体(10)は、単独で設けられてもよいが、効率的に運転するため、通常は並列的に複数基設置される。
【0020】
樋部材(11)は、例えば、短軸の有底円筒状に形成され、かつ、その底面から浸漬槽本体(10)の上部が突出した状態に構成される。樋部材(11)には、浸漬槽本体(10)からオーバーフローした塗布液を塗布液調製槽(2)に戻すため、後述する塗布液返流用の配管(以下、単に「配管」と言う。)(55)の一端が接続される。また、樋部材(11)の上部には、基体(W)の浸漬および引上げに伴って伸縮する可橈性のフード(12)が付設され、斯かるフード(12)は、塗布液中の溶媒の気化を低減すると供に、基体(W)の表面に塗布された塗布液の乾燥速度を調整する。
【0021】
また、フード(12)の内側には、浸漬塗布槽(1)に対して上方から基体(W)を垂直に且つ昇降可能に吊持するため、チャック機構を備えた所謂ロボットハンド等の保持装置(6)が設けられる。保持装置(6)は、例えば、基体(W)の上端から挿入される垂直な昇降軸と、当該昇降軸に付設された拘持部材としての風船体とから構成され、基体(W)に昇降軸を挿入し、加圧空気によって基体(W)の径方向に風船体を膨張させることにより、基体(W)をその内周面から拘持する装置である。なお、上記の拘持部材としては、昇降軸の軸線方向に圧縮されて径方向に拡大する発泡ゴム等の弾性材料で構成された部材などが挙げられる。
【0022】
塗布液調製槽(2)は、浸漬塗布槽(1)でオーバーフローした塗布液を収容して再調製し、かつ、浸漬塗布槽(1)に対して常に十分な量の塗布液を供給するために設けられる。塗布液調製槽(2)の内部は、浸漬塗布槽(1)から流出した塗布液を所定の組成に混合調製して貯留するため、樋部材(11)の底部と略同一高さに設定された仕切壁によって混合槽(21)と貯留槽(22)とに分割される。
【0023】
混合槽(21)には、樋部材(11)にオーバーフローした塗布液を導入するため、上記の配管(55)の他端が接続され、また、希釈用の溶媒や補充用の塗布液を供給するための配管(57)が挿入される。更に、混合槽(21)には、塗布液を均一に撹拌混合するための撹拌翼(23)が設けられる。そして、貯留槽(22)には、上記の仕切壁を越えて流入した調製済みの塗布液を浸漬塗布槽(1)側へ供給するための配管(51)が接続される。
【0024】
塗布液の循環装置は、塗布液調製槽(2)と浸漬塗布槽(1)の間の配管(51,52,54,55)及び循環ポンプ(3)から主として構成される。配管(51)は、塗布液調製槽(2)の貯留槽(22)から伸長されて循環ポンプ(3)の吸入側に接続される。循環ポンプ(3)の吐出側から伸長された配管(52)は、フィルター(4)及び上記の分岐配管(54)を介して浸漬槽本体(10)に接続される。
【0025】
また、上記の配管(55)は、樋部材(11)から伸長されて塗布液調製槽(2)の混合槽(21)に他端が接続される。そして、配管(55)には、当該配管によって戻される塗布液の流量を制御するため、後述する遮断弁(8)が介装される。なお、図中の符号(55c)は、樋部材(11)の底部に開口する配管(55)の一端側の開口部を示す。また、循環ポンプ(3)としては、回転を制御し得るポンプが好適であり、具体的には、例えば、東興産業社製のアイベックス・MOGポンプ(商品名)等の定量式ロータリーポンプが使用される。
【0026】
上記の塗布液の循環装置において、循環ポンプ(3)は、配管(51)を通じ、塗布液調製槽(2)の貯留槽(22)から塗布液を吸入し、配管(52)、フィルター(4)及び分岐配管(54)を通じ、浸漬塗布槽(1)の各浸漬槽本体(10)に塗布液を供給する。そして、各浸漬槽本体(10)に連続供給された塗布液は、浸漬槽本体(10)から樋部材(11)にオーバーフローした後、配管(55)を介し、再び塗布液調製槽(2)の混合槽(21)に戻される。
【0027】
本発明の塗布装置においては、上記の配管(55)における空気の混入を防止するため、塗布液の循環装置には、上記の様な循環ポンプ(3)や配管類などの他、樋部材(11)に滞留した塗布液の液面高さを検出する液面検出手段(7)と、液面検出手段(7)によって検出された液面高さに基づいて遮断弁(8)を開閉操作する制御手段(9)とが含まれる。
【0028】
液面検出手段(7)は、樋部材(11)の中に配置されたフロート(70)と、フロート(70)の浮上高さを検出するセンサー(71)とから構成される。センサー(71)としては、誤作動なくフロート(70)を検出し得る限り、電磁誘導型、光反射型などの適宜のセンサーを利用できる。斯かる液面検出手段(7)により、樋部材(11)における塗布液の液面の上下限を検出する。なお、液面検出手段としては、フロートとセンサーが一体化されたもの、例えば、一対の近接スイッチが上下に内装された支軸に対し、マグネットが埋設されたドーナツ状の一対のフロートを上下に揺動自在に配置して成る所謂フロートスイッチを使用してもよい。
【0029】
遮断弁(8)は、配管(55)における塗布液の流量を規制し、樋部材(11)の液面を制御するために設けられる。遮断弁(8)としては、防爆型の電磁弁やエアー作動弁が使用される。斯かる遮断弁(8)は、流量調整が可能な構造のものでもよいが、簡単な制御を行うため、通常は開閉弁で十分である。
【0030】
制御手段(9)は、浸漬塗布槽(1)や塗布液調製槽(2)に付随する機器類や循環ポンプ(3)を含む装置全体を一括制御するために別途設けられたプログラムコントローラー等の制御装置である。そして、斯かる制御手段(9)は、樋部材(11)において、配管(55)の開口部が露出しない状態に塗布液の液面を一定の範囲に保持すべく遮断弁(8)を開閉する機能を備えていることが必要である。
【0031】
次に、本発明の塗布装置における塗布操作について説明する。本発明の塗布装置においては、通常、上記の様に、循環装置によって浸漬塗布槽(1)と塗布液調製槽(2)の間で塗布液を一定量で循環させておく。そして、先ず、保持装置(6)を降下させ、保持した基体(W)を浸漬槽本体(10)の塗布液に浸漬させる。その際、浸漬槽本体(10)から樋部材(11)への塗布液のオーバーフロー量は、基体(W)の浸漬操作に伴って一時的に増加し、浸漬操作の終了と共に定常状態に復帰する。
【0032】
基体(W)の略全体を塗布液に浸漬させた後、浸漬槽本体(10)から塗布液をオーバーフローさせつつ、保持装置(6)を上昇させることにより、基体(W)を浸漬槽本体(10)から引き上げる。その際、浸漬槽本体(10)から樋部材(11)への塗布液のオーバーフロー量は、基体(W)の引上げ操作に伴って一時的に減少し、引上げ操作の終了と共に定常状態に復帰する。
【0033】
上記の様な塗布操作においては、一般的には、基体(W)の浸漬、基体(W)の引上げに伴って浸漬槽本体(10)から樋部材(11)への塗布液のオーバーフロー量が増減する。その場合、本発明の塗布装置において、液面検出手段(7)は、樋部材(11)における塗布液の液面を検出し、塗布液の液面が下限に達した際、特定の制御手段(9)は、センサー(71)の検出信号に基づき、遮断弁(8)を閉止し、配管(55)の開口部が露出しない状態に塗布液の液面を保持する。また、樋部材(11)における塗布液の液面が上限に達した場合には、遮断弁(8)を開放する。
【0034】
すなわち、制御手段(9)は、液面検出手段(7)の検出信号に基づき、遮断弁(8)を操作して塗布液返流用の配管(55)の流量を調整し、樋部材(11)における塗布液の液面を一定の範囲に保持する。そして、オーバーフロー量が少ない場合でも、樋部材(11)に取り付けられた配管(55)の開口部(55c)を常に塗布液中に位置させ、配管(55)に空気が進入するのを防止する。従って、本発明の塗布装置においては、塗布液調製槽(2)に空気(気泡)が送り込まれることがなく、浸漬塗布槽(1)の塗布液に気泡の混入がないため、基体(W)表面の塗布ムラを有効に防止でき、好適な塗膜を形成できる。
【0035】
上記の様に、本発明の塗布装置においては、配管(55)の塗布液の流れを規制することにより、配管(55)の開口部(55c)を露出させない様に樋部材(11)の液面を制御するものであるが、図2又は図3に示す様に、液面検出手段(7)において、配管(55)の開口部(55c)に対する開度調整機能を備えることにより応答性を一層高めることが出来かつ空気の混入を一層確実に防止できる。
【0036】
図2に示す液面検出手段(7)は、フロート(70)によって配管(55)の開口部(55c)を開閉する構造を備えている。すなわち、フロート(70)として球形のフロートが使用され、斯かるフロート(70)は、上部に突出するバー(72)がガイドで支持されることにより上下方向に揺動自在に浮遊させられ、かつ、バー(72)は、樋部材(11)側に上下に回動自在に支持された支持バー(73)の一端に枢支される。斯かるフロート(70)は、樋部材(11)における塗布液の液面が低下した際に配管(55)の開口部(55c)を封止する。そして、フロート(70)の浮上高さを検出するセンサー(71)は、支持バー(73)の他端に付設された被検出部(74)の高さを検出する。
【0037】
すなわち、配管(55)の開口部(55c)は、液面検出手段(7)のフロート(70)によって開閉可能に構成され、そして、斯かる態様において、制御手段(9)は、液面検出手段(7)のセンサー(71)の検出信号に基づき、開口部(55c)がフロート(70)によって閉じられた際に遮断弁(8)を閉止し、開口部(55c)がフロート(70)によって開かれた際に遮断弁(8)を開放する機能を備えている。
【0038】
従って、図2に示す態様の塗布装置においては、遮断弁(8)の開閉操作と共に、配管(55)の開口部(55c)を開閉できるため、樋部材(11)の液面に応じて迅速な応答が得られ、かつ、仮に、樋部材(11)に塗布液が無くなった場合でも、開口部(55c)を封止できるため、配管(55)への空気の進入を一層確実に防止できる。
【0039】
図3に示す液面検出手段(7)は、フロート(70)によって配管(55)の開口部(55c)における開度を調整する構造を備えている。具体的には、フロート(70)としては、ガイドで支持されることにより上下方向に揺動自在に浮遊させられる筒状のフロートが使用される。一方、配管(55)の開口部(55c)には、例えば円盤状のダンパー(77)が回動自在に設けられ、斯かるダンパー(77)の上部から伸長された連接バー(76)の端部がフロート(70)の下端側に枢支される。
【0040】
フロート(70)は、樋部材(11)における塗布液の液面が低下した際、その浮上高さが低下することにより、連接バー(76)を介してダンパー(77)を回動させ、配管(55)の開口部(55c)の開度を絞る。そして、フロート(70)の浮上高さを検出するセンサー(71)は、フロート(70)の上端に付設された被検出部としての指示バー(75)の高さを検出する。
【0041】
すなわち、配管(55)の開口部(55c)は、液面検出手段(7)のフロート(70)に連動して回動するダンパー(77)によって開度を調整可能に構成され、かつ、ダンパー(77)は、フロート(70)の上昇によって開口部(55c)の開度を大きくし、フロート(70)の下降によって開口部(55c)の開度を小さくする構造を備え、そして、斯かる態様において、制御手段(9)は、液面検出手段(7)のセンサー(71)の検出信号に基づき、開口部(55c)がフロート(70)によって開度を小さくなされた際に遮断弁(8)を閉止し、開口部(55c)がフロート(70)によって開度を大きくなされた際に遮断弁(8)を開放する機能を備えている。
【0042】
従って、図3に示す態様の塗布装置においては、遮断弁(8)開閉操作と共に、配管(55)の開口部(55c)の開度を調整できるため、上記の態様と同様に、樋部材(11)の液面に応じて迅速な応答が得られ、かつ、樋部材(11)における塗布液の急激な変動を防止でき、配管(55)への空気の進入を一層確実に防止できる。
【0043】
更に、本発明の塗布装置においては、樋部材(11)における塗布液の液面を一層安定させるため、遮断弁(8)の操作に加え、循環ポンプ(3)の流量を制御することも出来る。検出された液面高さに基づいて循環ポンプ(3)の回転を制御した場合には、樋部材(11)における液面変動がより少なくなるため、空気の混入をより確実に防止できる。そして、本発明の塗布装置は、気泡の除去が難しい高粘度の電荷輸送用の塗布液に一層好適に使用し得る。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明に係る電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置によれば、塗布液返流用の配管の開口部を露出させない様に樋部材における塗布液の液面を制御するため、塗布液調製槽に空気が送り込まれることがない。従って、浸漬塗布槽の塗布液に気泡の混入がなく、円筒状基体の表面の塗布ムラを有効に防止でき、好適な塗膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浸漬塗布装置における主要な構成部材を示す系統図
【図2】浸漬塗布槽の樋部材における液面検出手段の一態様を示す部分的な縦断面図
【図3】浸漬塗布槽の樋部材における液面検出手段の他の態様を示す部分的な縦断面図
【符号の説明】
1 :浸漬塗布槽
10 :浸漬槽本体
11 :樋部材
2 :塗布液調製槽
3 :ポンプ
55 :塗布液返流用の配管
55c:塗布液返流用の配管の開口部
7 :液面検出手段
70 :フロート
71 :センサー
77 :ダンパー
8 :遮断弁
9 :制御手段
W :円筒状基体

Claims (4)

  1. 浸漬塗布法によって円筒状基体の表面に感光体材料の塗布液を塗布する塗布装置であって、円筒状基体に塗布液を塗布する浸漬塗布槽と、塗布液を調製する塗布液調製槽と、前記浸漬塗布槽と前記塗布液調製槽の間で塗布液を循環させる塗布液の循環装置とから主として構成され、前記浸漬塗布槽は、オーバーフロー状態で塗布液を収容し且つ円筒状基体が浸漬させられる浸漬槽本体と、当該浸漬槽本体の上部外周側に付設され且つオバーフローした塗布液を受ける樋部材とから成り、前記塗布液の循環装置は、一端が前記樋部材に接続され且つ他端が前記塗布液調製槽に接続された塗布液返流用の配管と、当該塗布液返流用の配管に介装された遮断弁と、前記樋部材に滞留した塗布液の液面高さを検出する液面検出手段と、当該液面検出手段によって検出された液面高さに基づいて前記遮断弁を開閉操作する制御手段とを含み、前記制御手段は、前記樋部材において、前記塗布液返流用の配管の開口部が露出しない状態に塗布液の液面を一定の範囲に保持すべく前記遮断弁を開閉する機能を備え、かつ、前記液面検出手段が、樋部材の中に配置されたフロートと、当該フロートの浮上高さを検出するセンサーとから構成されていることを特徴とする電子写真感光体製造用の浸漬塗布装置。
  2. 塗布液返流用の配管の開口部は、液面検出手段のフロートによって開閉可能に構成され、制御手段は、液面検出手段のセンサーの検出信号に基づき、前記開口部が前記フロートによって閉じられた際に遮断弁を閉止し、前記開口部が前記フロートによって開かれた際に前記遮断弁を開放する機能を備えている請求項1に記載の浸漬塗布装置。
  3. 塗布液返流用の配管の開口部は、液面検出手段のフロートに連動して回動するダンパーによって開度を調整可能に構成され、かつ、前記ダンパーは、前記フロートの上昇によって前記開口部の開度を大きくし、前記フロートの下降によって前記開口部の開度を小さくする構造を備え、制御手段は、液面検出手段のセンサーの検出信号に基づき、前記開口部が前記フロートによって開度を小さくなされた際に遮断弁を閉止し、前記開口部が前記フロートによって開度を大きくなされた際に前記遮断弁を開放する機能を備えている請求項1に記載の浸漬塗布装置。
  4. 塗布液が電荷輸送用の塗布液である請求項1〜の何れかに記載の浸漬塗布装置。
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