JP3700888B2 - 感光体材料の塗布液の補充方法 - Google Patents
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Description
本発明は、感光体材料の塗布液の補充方法に関し、詳しくは、電子写真感光体用のドラムに感光体材料の塗布液を塗布する浸漬塗布装置内の塗布液の濃度およびホールド量を随時、所定の範囲に保持することが出来る感光体材料の塗布液の補充方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドラムの外周面に感光塗膜を形成してなる電子写真感光体の製造に際し、感光塗膜の形成工程では、感光体材料の塗布液中にドラムを浸漬する浸漬塗布法が一般に採用されている。この浸漬塗布法において、感光体材料の塗布液は、浸漬塗布装置の浸漬槽に貯留され且つその上部からオーバフローすることにより液面が一定に保持される。そして、ドラムは、略垂直な姿勢に吊持されて塗布液中に微速度で所定深さまで浸漬され、その後、微速度で塗布液中から引上げられる。
【0003】
前述の浸漬塗布法においては、浸漬槽からオーバフローした塗布液は受けトイにより撹拌調整タンク内に移送され、供給ポンプにより再び浸漬槽内に還流される。この場合、塗布操作の繰り返しに伴い、浸漬塗布装置内の塗布液のホールド量は漸次減少し、また、塗布液の濃度および粘度は溶剤の蒸発に伴い漸次上昇する。そこで、従来は、浸漬塗布装置内の塗布液のホールド量が減少すると塗布液を補充し、塗布液の粘度が上昇すると溶剤を補充していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、塗布液のホールド量の減少および粘度の上昇に対して、塗布液および溶剤を別々に補充する方法においては、塗布液の温度、粘度が安定するまでに約30〜60分の待ち時間を要し、その間、浸漬塗布装置の稼働を停止しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、電子写真感光体用のドラムに感光体材料の塗布液を塗布する浸漬塗布装置内の塗布液の濃度およびホールド量を随時、所定の範囲に保持することが出来る感光体材料の塗布液の補充方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成する手段として、本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法は、感光体材料の塗布液中に電子写真感光体用のドラムを浸漬して当該ドラムの外周面に感光塗膜を形成する浸漬塗布装置内の塗布液の補充方法であって、ドラムに形成される感光塗膜の面積をS(cm2)、感光塗膜の厚みをt(μm)、1回分のドラムの処理本数をn、1回分の処理で蒸発する塗布液中の溶剤の蒸発量をc(cm3)、塗布液の濃度をa(wt%)としたとき、x=[1/{(1/a)+(100c/Stn)}]±0.5の一般式により表される濃度x(wt%)の塗布液を補充液として、装置内の塗布液の粘度およびホールド量が一定になる様に浸漬塗布装置に補充することを特徴とする。
【0007】
前記の補充方法は、電荷輸送物質を含有する感光体材料の塗布液の補充方法として好適である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法の実施形態を説明する。図1は本発明の補充方法を適用する浸漬塗布装置の系統図である。
【0009】
本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法は、例えば、図1に示す浸漬塗布装置(1)により感光体材料の塗布液(L)中に電子写真感光体のドラム(D)を浸漬し、ドラム(D)の外周面に感光塗膜(F)を形成する工程に適用される。
【0010】
塗布液(L)は、感光体材料と溶剤から成る公知の塗布液である。単層型電子写真感光体の製造に使用する塗布液は、電荷発生物質、電荷輸送物質、結着剤樹脂および溶剤を混合して調製される。また、積層型電子写真感光体の製造に使用する塗布液は、電荷発生物質、結着剤樹脂および溶剤からなる電荷発生層用の塗布液と、電荷輸送物質、結着剤樹脂および溶剤からなる電荷輸送層用の塗布液とに別々に調製される。
【0011】
前記の電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルー、ジエナスグリーンB等のアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アルゴールイエロー、ピレンキノン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、インドフアーストオレンジトナー等のビスベンゾイミダゾール顔料、銅フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩、アズレニウム塩が挙げられる。
【0012】
電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にアントラセン、ピレン、フエナントレン、コロネン等の多芳香族化合物またはインドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール等の含窒素環式化合物の骨格を有する化合物、その他、ヒドラゾン化合物など正孔輸送物質が挙げられる。
【0013】
結着剤樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル類、スチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、ポリエステル、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、ポリサルホン等、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セルロースエステル類などが挙げられる。
【0014】
溶剤としては、揮発性が高い溶剤が好適に用いられる。例えば、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、2,4−ペンタジオン、アニソール、3−オキソブタン酸メチル、モノクロルベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセルソルブアセテート等が挙げられる。
【0015】
塗布液(L)中の各成分の濃度は、公知の技術に従って適宜に設定される。固形分の濃度は、主として、形成すべき層の膜厚に応じて決定されるが、単層型電子写真感光体の製造に使用する塗布液の場合、および、積層型電子写真感光体を製造する際の電荷輸送層用の塗布液の場合、40重量%以下、好ましくは10〜35重量%以下に調製される。これらの塗布液の場合、その粘度は、50〜350cps、好ましくは70〜250cpsとされ、その乾燥膜厚は、15〜40μmとされる。また、積層型電子写真感光体を製造する際の電荷発生層用の塗布液の場合、固形分濃度は15重量%以下、好ましくは1〜10重量%に調製される。そして、電荷発生層用の塗布液の粘度は、1〜5cpsとされ、その乾燥膜厚は、0.1〜1μmとされる。
【0016】
本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法は、積層型電子写真感光体を製造する場合、電荷輸送物質を含んだ比較的粘度が高い電荷輸送層用の塗布液(L)、所謂、CT塗布液の補充方法に適用するのが好ましい。
【0017】
前記ドラム(D)は、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、フエノール樹脂などの高分子材料、または、硬質紙などの材料によって15〜200mm程度の外径で200〜1000mm程度の長さに作製される。なお、ドラム(D)の表面が絶縁体材料によって構成される場合には、導電物質の含浸、金属箔の積層、金属の蒸着などよって導電処理される。
【0018】
浸漬塗布装置(1)は、感光体材料の塗布液(L)がオーバフローする浸漬槽(2)と、ドラム(D)を内側から拘持して昇降することにより、浸漬槽(2)内の塗布液(L)中にドラム(D)を浸漬させるチャック装置(3)と、浸漬槽(2)の上部に連設されることにより、浸漬槽(2)からオーバフローする塗布液(L)を回収する回収槽(4)と、回収槽(4)内の塗布液(L)が管路(5)を介して移送される塗布液(L)の撹拌調整タンク(6)とを備えている。
【0019】
撹拌調整タンク(6)は、前記管路(5)が接続された撹拌槽(6A)と、撹拌槽(6A)からオーバフローした塗布液(L)を貯留する貯留槽(6B)とに内部が区画され、撹拌槽(6A)内には撹拌翼(6C)および塗布液(L)の補充パイプ(7)が設置されている。そして、貯留槽(6B)は、ポンプ(8)及びフィルタ(9)が途中に介設された管路(10)を介して前記浸漬槽(2)の底部に連通されている。なお、回収槽(4)には、チャック装置(3)の昇降に伴い上下に伸縮するフード(11)が付設されている。
【0020】
斯かる浸漬塗布装置(1)においては、貯留槽(6B)内に貯留された感光体材料の塗布液(L)は、ポンプ(8)の作動により浸漬槽(2)内に還流される。還流された塗布液(L)は、浸漬槽(2)の上部からオーバフローすることにより、液面が一定に保持される。一方、ドラム(D)は、チャック装置(3)により略垂直な姿勢に吊持されて100〜1000mm/分程度の速度で昇降される。この昇降に伴い、ドラム(D)は、浸漬槽(2)内の塗布液(L)中に所定深さまで浸漬されて引上げられ、外周面に感光塗膜(F)が形成される。そして、斯かる塗布操作の繰り返しに伴い、貯留槽(6B)内に貯留された塗布液(L)の量が減少し、粘度が上昇すると、本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法により、補充液が補充パイプ(7)を介して撹拌槽(6A)内に補充される。
【0021】
本発明に係る感光体材料の塗布液の補充方法は、ドラム(D)に形成される感光塗膜(F)の面積をS(cm2)、感光塗膜(F)の厚みをt(μm)、1回分のドラム(D)の処理本数をn、1回分の処理で蒸発する塗布液(L)中の溶剤の蒸発量をc(cm3)、塗布液(L)の濃度をa(wt%)としたとき、x=[1/{(1/a)+(100c/Stn)}]±0.5の一般式により表される濃度x(wt%)の塗布液(L)を補充液として浸漬塗布装置(1)に補充することを特徴とする。
【0022】
ホールド量が減少し、粘度が上昇した浸漬塗布装置(1)内の塗布液(L)に補充液を補充して粘度を一定値まで低下させる場合、補充液の濃度が高いと、塗布液(L)の粘度低下が遅くなる。このため、補充液の補充量が多くなり、その結果、塗布液(L)のホールド量は所定値より多くなる。反対に、補充液の濃度が低いと、塗布液(L)の粘度低下が速くなる。このため、補充液の補充量が少なくなり、その結果、塗布液(L)のホールド量は所定値より少なくなる。従って、補充液の濃度には、塗布液(L)のホールド量が所定値となる様な最適値が存在する。
【0023】
前記の関係は、塗布液(L)のホールド量の増減量をy(cm3)、補充液の濃度をx(wt%)、塗布液(L)の濃度をa(wt%)、塗布液(L)の消費量をb(cm3)、溶剤の蒸発量をc(cm3)としたとき、塗布液(L)の密度を1(g/cm3)とすると、y={(b+c)x−ab}/(a−x)の式で表すことが出来る。従って、塗布液(L)のホールド量が所定値となる様な補充液の最適な濃度xは、前式のyの値が0となる様な値として演算することが出来る。
【0024】
また、塗布液(L)の消費量bは、ドラム(D)に形成される感光塗膜(F)の面積をS(cm2)、感光塗膜(F)の厚みをt(μm)、塗布液(L)に浸漬されるドラム(D)の1回分の処理本数をnとしたとき、b=Stn/100aで表される。そこで、前式のyの値が0となり且つbの条件を満足する補充液の最適な濃度xは、塗布液(L)および感光塗膜(F)の密度を1(g/cm3)とすると、x=1/{(1/a)+(100c/Stn)}の基本式によって得られる。
【0025】
前述した本発明の感光体材料の塗布液の補充方法における一般式x=[1/{(1/a)+(100c/Stn)}]±0.5は、基本式x=1/{(1/a)+(100c/Stn)}に±0.5(wt%)の誤差を含めたものである。この誤差分は、塗布液(L)および感光塗膜(F)の密度を1(g/cm3)としたこと、また、溶剤の蒸発量cには変動があることから必要となる。なお、塗布液(L)の密度は濃度aの関数であり、塗布液(L)の組成によって異なる。一方、溶剤の蒸発量cは、温度等の塗布環境条件により変動し、また、空調設備能力によっては天候や季節によっても微妙に変動することがある。また、溶剤は常に蒸発を続けているため、浸漬塗布装置(1)が種々の要因により停止し、あるいは、塗布操作のサイクルタイムが変動した場合にも、溶剤の蒸発量cは変動する。
【0026】
最終的に補充液の濃度xの最適値を求めるには、塗布操作のサイクルを繰り返し、後述する方法により補充液を補充し、塗布液(L)のホールド量の増減量yを測定し、濃度xを補正する操作を繰り返せばよい。具体的には、塗布液(L)のホールド量yが増加する場合には補充液の濃度xを小さく(薄く)し、ホールド量yが減少する場合には補充液の濃度xを大きく(濃く)する。そして、補充液の濃度xの変化幅を徐々に小さくすることにより、最適な補充液の濃度xを求めることが出来る。その最適な濃度x値は、前述した一般式x=[1/{(1/a)+(100c/Stn)}]±0.5の範囲に入り、塗布液(L)の濃度およびホールド量を所定の範囲に保持することが出来る。
【0027】
最適な濃度xに調整された補充液は、塗布液(L)の粘度(濃度)が一定になる様に補充し、または、貯留槽(6B)内の塗布液(L)の液面が略一定になる様に補充し、あるいは、塗布操作の1サイクル毎に塗布液(L)の消費量分づつ補充することが出来る。電子写真感光体用のドラム(D)では、感光塗膜(F)の膜厚が感光特性に対して非常に大きな影響を及ぼすため、塗布液(L)の粘度を一定に保持して膜厚を一定に保つことが重要である。従って、最適濃度xに調整された補充液は、塗布液(L)の粘度が一定になる様に補充するのが最良である。
【0028】
塗布液(L)の粘度(濃度)が一定になる様に補充液を補充する場合には、貯留槽(6B)内の液面下にキャピラリー式、振動式、回転式、ピストン式等の適宜の粘度計を設置しておく。粘度計としては、塗布液(L)が、所謂、CT塗布液である場合、測定範囲、精度等の関係からピストン式が適している。そして、補充パイプ(7)へ補充液を圧送するポンプの運転を前記粘度計の検出信号に基づく時間比例PID等の制御方法によって制御する。この場合、溶剤の蒸発量cは環境の変化により変動し、補充液の最適濃度xも変動するため、貯留槽(6B)内の塗布液(L)の量は増減する可能性がある。そこで、貯留槽(6B)には液面計を設置し、塗布液(L)の増加または減少時には警報を発生する様に構成するのが好ましい。
【0029】
また、貯留槽(6B)内の塗布液(L)の液面が略一定になる様に補充液を補充する場合には、貯留槽(6B)内に液面センサ等を設置し、その検出信号に応じて補充パイプ(7)へ補充液を圧送するポンプの運転を制御する。この場合、液面センサは、塗布液(L)の液面が大幅に変動した場合に警報を発生する様に構成するのが好ましい。
【0030】
なお、塗布液(L)の粘度は温度によって変動するため、撹拌槽(6A)や貯留槽(6B)には温調コイルやジャケット等を装備して塗布液(L)の液温を一定に保持するのが好ましい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、感光体材料の塗布液中に電子写真感光体のドラムを浸漬して当該ドラムの外周面に感光塗膜を形成する工程において、当該工程のライン特性に応じた所定濃度x(wt%)の塗布液を補充液として浸漬塗布装置に補充することにより、塗布液の濃度およびホールド量を随時、所定の範囲に保持することが出来、ドラムの感光塗膜の形成ラインを連続運転することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補充方法を適用する浸漬塗布装置の系統図である。
【符号の説明】
1 :浸漬塗布装置
2 :浸漬槽
3 :チャック装置
4 :回収槽
5 :管路
6 :撹拌調整タンク
6A:撹拌槽
6B:貯留槽
6C:撹拌翼
7 :補充パイプ
8 :ポンプ
9 :フィルタ
10 :管路
11 :フード
D :ドラム
F :感光塗膜
L :塗布液
Claims (2)
- 感光体材料の塗布液中に電子写真感光体用のドラムを浸漬して当該ドラムの外周面に感光塗膜を形成する浸漬塗布装置内の塗布液の補充方法であって、ドラムに形成される感光塗膜の面積をS(cm2)、感光塗膜の厚みをt(μm)、1回分のドラムの処理本数をn、1回分の処理で蒸発する塗布液中の溶剤の蒸発量をc(cm3)、塗布液の濃度をa(wt%)としたとき、x=[1/{(1/a)+(100c/Stn)}]±0.5の一般式により表される濃度x(wt%)の塗布液を補充液として、装置内の塗布液の粘度およびホールド量が一定になる様に浸漬塗布装置に補充することを特徴とする感光体材料の塗布液の補充方法。
- 感光体材料の塗布液が電荷輸送物質を含有している請求項1に記載の感光体材料の塗布液の補充方法。
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JP35615096A JP3700888B2 (ja) | 1996-12-25 | 1996-12-25 | 感光体材料の塗布液の補充方法 |
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