JP3828073B2 - 積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサ - Google Patents

積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサに用いる誘電体組成物及びこれを用いて製造した積層セラミックコンデンサに関するものであり、より詳しくは、低温焼成が可能で高誘電率を有する誘電体組成物及びこれを用いた積層セラミックコンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサの高容量化と小型化の要求に応じて、高誘電率を有する超薄型積層セラミックコンデンサを具現せしめる誘電体組成物の開発必要性が浮かび上がっている。
Y5V温度特性規格を有する積層セラミックコンデンサに用いる高誘電率誘電体組成物は、通常高容量でありながら温度変化による静電容量変化率が重要でない回路に主に用いられてきた。
【0003】
Y5V用積層セラミックコンデンサに用いる高誘電率誘電体組成物の一例が日本特許公開公報2000−243652号に提示されている。
前記日本特許公開公報2000−243652号には下記化1のように表される誘電体組成物が提示されている。
【0004】
【化1】
[(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O2+m]1−α−β+(1/3Mn)α+(R)β+aM+b(V)+c(NiO)
(式中、1.00≦m≦1.02、0.001≦x≦0.05、0.05≦y≦0.2、0.001≦α≦0.015、0.001≦β≦0.015、0.01≦a≦0.5、0≦b≦0.1、0≦c≦0.2、MはBaO−Al−SiO系ガラス、RはYもしくはDyである。)
【0005】
前記誘電体組成物は、Y5V使用温度範囲において安定した静電容量を有し、比較的高い誘電率を有するが、焼結温度が1300〜1350℃と高くNi電極の途絶が起こり結晶粒の寸法が大きくなるので超高容量及び超薄型コンデンサへ適用する際充分な信頼性及び容量などの具現に限界があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温焼成が可能で高誘電率を有する積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、低温焼成が可能で高誘電率を有する積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物を用いることにより、絶縁耐圧特性に優れ焼成後亀裂と電極途絶の起こり難い高容量積層セラミックコンデンサを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の一見地によると、母材の(BaCa1−x)(TiZr1−y)O(式中、0.7≦x≦1、0.75≦y≦0.9、0.998≦m≦1.006)と、母材の重量を基準にして、0.8重量%以下のMnOと、0.8重量%以下のYと、0〜0.1重量%のVと、1.0重量%以下の焼結助剤のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)と、から成る積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の見地によると、前記本発明の誘電体組成物から成るセラミック層とニッケルから成る内部電極層を有する積層セラミックコンデンサを提供する。
【0009】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、母材の(BaCa1−x(TiZr1−y)O(式中、0.7≦x≦1、0.75≦y≦0.9、0.998≦m≦1.006)と、特定の副成分と、そして焼結助剤とを適切に配合し低温焼成可能で誘電率の高い積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物に関するものである。
【0010】
本発明の誘電体組成物は低温焼成が可能で誘電率が高いので、コンデンサに適用すると低温焼成によりNi電極の途絶及び亀裂性が減少し、従って強度及び信頼性の優れた超薄型超高容量コンデンサの製作に適用できるのである。
本発明の誘電体組成物は、(BaCa1−x)(TiZr1−y)O(式中、0.7≦x≦1、0.75≦y≦0.9、0.998≦m≦1.006)を母材とする。
【0011】
前記母材においてx、y及びmの値は誘電率、結晶粒成長及び絶縁抵抗特性を考慮して選定されるもので、これらの範囲を外れる場合には誘電率が低下し、結晶粒が異常成長し、絶縁抵抗が減少する。
好ましくは、0.99≦x≦1、0.80≦y≦0.84、1.001≦m≦1.004で設定する方がよい。
【0012】
本発明の誘電体組成物は、前記母材に母材の重量を基準にして、副成分として0.8重量%以下のMnOと、0.8重量%以下のYと、0〜0.1重量%のVと、焼結助剤として1.0重量%以下のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)とを配合して成る。
前記MnO、Y、及びVは副成分として誘電率を向上させるべく添加する成分であり、あまり多すぎると誘電率がむしろ落ち絶縁抵抗が減少する。
【0013】
とりわけ前記Vは必要に応じて添加するもので、ドナーの作用を働き誘電率を向上させるばかりでなく焼結を促進させ焼結温度を下げる役目も果たす。前記副成分の役目を考慮して、MnO添加量は0.8重量%以下、好ましくは0.05〜0.8重量%、Y添加量は0.8重量%以下、好ましくは0.05〜0.8重量%、V添加量は0〜0.1重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%に設定する。
【0014】
前記焼結助剤のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)は焼成温度を下げるべく添加する成分であり、その添加量は母材の重量を基準にして1.0重量%以下、好ましくは0.1〜0.5重量%に設定される。
前記焼結助剤の添加量が母材の重量を基準にして1.0重量%を超えると、焼結助剤の過多添加により結晶粒が過成長してしまい焼結密度が低下しガラス相の析出により誘電率が減少するので、その添加量は最大1.0重量%に制限することが好ましく、その添加量を0.1〜0.5重量%に設定する場合より高い誘電率を得ることができる。
【0015】
前記焼結助剤は、ガラス相またはガラス相を一部含む結晶相または結晶相から成る。本発明の誘電体組成物は誘電率が15000以上で、1000〜1200℃において焼結可能である。したがって、本発明の誘電体組成物をセラミック層とし且つニッケルを内部電極層とする超薄型、超高容量積層セラミックコンデンサを製作できるようになる。
【0016】
本発明の誘電体組成物がセラミック層に適用された積層セラミックコンデンサは、−25℃〜+85℃のY5V積層セラミックコンデンサ使用温度範囲内において静電容量変化率+22%〜−82%であるY5V積層セラミックコンデンサの要求事項を充たすのである。
【0017】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの誘電体組成物を製造する方法について説明する。
本発明の積層セラミックコンデンサの誘電体組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、当技術分野において実施されるものであれば如何なるものでも使用可能である。
【0018】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物を製造する方法における好ましき一例について説明する。
本発明の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物は、母材原料を粉砕混合した後か焼し母材原料粉末を製造する。
母材の(BaCa1−x)(TiZr1−y)O(式中、0.7≦x≦1、0.75≦y≦0.9、0.998≦m≦1.006)(以下、「BCTZ」という)を粉砕及び混合する際には、ボールミルもしくはビーズミルを用いて平均粒径が0.3〜0.8μm程度となるようにするのが好ましい。
【0019】
前記母材混合粉末のか焼工程は、混合粉末を2〜5℃/minの昇温速度で昇温させ1100〜1160℃において1〜3時間保ちながら行うことが好ましい。
そして、か焼粉末のA/B比は蛍光X線分析器(XRF)を用いた定量分析により制御することができる。
前記のように製造された母材原料粉末に、副成分のMnO、Y、及びVと焼結助剤を混合した後成形し、焼成することにより本発明の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物が製造される。
【0020】
前記焼結助剤はその粒径が2μm以下、好ましくは1〜1.5μmになるよう粉砕して前記母材に添加することが好ましい。前記焼結助剤を、その粒度が2μm以下の微粉として添加することにより、高誘電率と均一な特性 ( 焼成後異常粒成長が起こらない ) を有する誘電体組成物が得られる。前記焼結助剤の粒径が2μmを超過すると、焼結途中局部溶融された焼結助剤のガラス相が偏析し、母材が異常粒成長を起こして誘電率が減少するとともに、さらにガラス相析出が増加して焼結体表面にガラス成分が偏析される場合があり好ましくない。
【0021】
前記焼結助剤は、ガラス相もしくはガラス相を一部含んだ結晶相の形で添加されることができ、焼結助剤をガラス相で添加する方が結晶相の形で添加する場合より焼結後に結晶粒を制御し易く(結晶粒の寸法2〜3μm)、超高容量、超薄型積層セラミックコンデンサの製造に適している。
前記焼成にあたっての焼成温度は1000〜1200℃に設定することが好ましく、焼成雰囲気は0.5〜2.0%の水素含有雰囲気が良く、焼成時間は1〜3時間ほどが好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明についてより詳しく説明する。以上に説明した本発明は、上述した実施形態及び下記する実施例により限定されるものではなく、添付した請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内において多様な形態の置換、変形及び変更が可能であることは当技術分野において通常の知識を有する者にとっては明らかである。
【0023】
実施例1
BCTZ(x:0.99、y:0.83、及びm:1.0025)母材に、副成分のMnO、Y、V、及び焼結助剤のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)を下記表1の添加量で添加混合した後、下記表1の焼成温度において2時間焼成し誘電体組成物を製造した。
即ち、前記各副原料らはジルコニアボールと共にエタンオールを溶媒に湿式混合し、平均粒度0.4〜0.7μmとなるよう1次粉砕して用いた。
そして、前記Li−Si系焼結助剤は平均粒度1.0〜1.5μmとなるようにして用いた。
【0024】
母材に前記のように別途準備した各副原料らと焼結助剤を混合した混合原料を乾燥させた後、有機溶媒、バインダー(PVBバインダー)及び分散剤のRE610(Ferro社製)をジルコニアボールと共に24時間ボールミルで混合し、こうして得たスラリーを200メッシュの布で濾過してから、24時間エージングさせた後20μmに成形し1mm厚になるよう積層したものを140℃において1分間加圧着した。さらに85℃1000kgfの荷重で15分間CIP(Cool Isostatic Press)を施した後切断して誘電特性測定用の標準試片を得た。各試片は200〜350℃において熱処理し結合剤を焼却した後、トンネル炉及びチューブ炉を用いて1.5%の水素含有焼成温度雰囲気下で下記表1の焼成温度において2時間焼結してから、誘電率、誘電損失、絶縁抵抗を測定した。その結果は下記表1に示すとおりである。
前記電気的特性は当技術分野において通常用いられる方法により測定されたものである。
【0025】
【表1】
Figure 0003828073
【0026】
前記表1から判るように、Vの添加及び無添加に応じて結晶粒成長度合いの差が生じ、これにより誘電率に変化が表れる。
本発明においてVはドナーとしての役目を果たすばかりでなく焼結を促進する作用も働く。
さらに、焼結助剤の添加量が増加するほど焼結密度の減少と共に誘電率が低下する傾向を示す。
【0027】
実施例2
BCTZ(x:0.99、y:0.83、及びm:1.0025)母材に、副成分のMnO、Y、V、及び焼結助剤のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)を下記表2の添加量で添加混合した後、下記表2の焼成温度において2時間焼成し誘電体組成物を製造した。
前記焼結助剤の粒度は下記表2のように変化させた。
前記のように焼成された試片らに対して誘電率、誘電損失、絶縁抵抗及び結晶粒の寸法を測定した。その結果は下記表2に示すとおりである。
【0028】
【表2】
Figure 0003828073
【0029】
前記表2から判るように、試片29と32の場合(*)異常粒成長が発生し、焼結助剤の粒度が1.0μmの場合に最も高い誘電率と異常粒成長の少ない均一な微細構造が得られた。
【0030】
実施例3
4〜7μm成形シートに、Ni電極と下記表3のように組成された誘電体組成物から成る積層体を形成し、還元性雰囲気で1000〜1100℃において低温同時焼成した後、Cu外部電極を塗布し700〜800℃において熱処理を施し積層セラミックコンデンサを製造した。
誘電体組成物の母材は実施例1と同一なものを用いた。
前記のように製造したセラミックコンデンサの容量、誘電損失及び絶縁抵抗を測定した。その結果は下記表3のとおりである。
【0031】
【表3】
Figure 0003828073
【0032】
前記表3から判るように、試片35及び38は容量(CP)、DF(誘電損失)、絶縁抵抗が優れ、従って05F105ZRNに適用可能である。
前記05F105ZRNは成形厚さ4μm、積層数90層の誘電体層とNi内部電極層の積層体とから成っており、容量は1.0μF以上、DFは18%以下、絶縁抵抗は1E8Ω以上との制限基準を有するものである。
また、試片36及び39は1F225ZQNに適用可能なことがわかる。
【0033】
前記1F225ZQNは成形厚さ6μm、積層数100層の誘電体層と内部電極層との積層体から成っており、容量は2.2μF以上、DFは16%以下、絶縁抵抗は5E7Ω以上の制限基準を有するものである。
また、試片37及び40は21F106ZQNに適用可能なことがわかる。
【0034】
前記21F106ZQNは5.5μm、積層数200層の誘電体層と内部電極層との積層体から成っており、容量は10μF以上、DFは16%以下、絶縁抵抗は1E7Ω以上の制限基準を有するものである。
一方、前記表3を見ると、焼結温度の低い場合にもNi内部電極の途絶が少ないので結晶粒はやや小さくなろうとも優れた容量を得られることがわかる。
さらに、焼結温度が低いほど内部電極間の収縮率の差が減少するのでセラミックボディの強度が高まり内部亀裂が少なくなった。
【0035】
一方、日本特許公開公報2000-243652号に提示されている1350℃の高温において焼結する誘電体組成物を用いて1005(1.0mm×0.5mm)寸法の超薄型、超小型機種の積層セラミックコンデンサを製作する場合、成形厚さの減少により電極層と誘電体積層体の厚さがほぼ類似になりショート(short)不良が頻発し、絶縁耐圧特性の低下及び高温焼成による電極途絶により容量具現が困難である。
これとは違って、本発明の誘電体組成物を適用する場合には、焼結後誘電体層が2〜3μmと薄い超薄型製品に適用することができ、高誘電率、低温焼成による優れた製品信頼性及び電気的特性を示す。
【0036】
【発明の効果】
本発明の誘電体組成物は、従来の誘電体組成物に比して100〜300℃の低い温度において低温焼成可能で、緻密な微細組織を有することから誘電率が高く、また結晶粒の寸法を2〜3μmに制御できるので、超薄型積層セラミックコンデンサ機種に適用可能で絶縁耐圧の優れた積層セラミックコンデンサの製造を可能とさせる。
【0037】
さらに、本発明は、 低温同時焼成においてNi電極とNi内部電極とのミスマッチング(mismaching)が減ることにより電極途絶が減少し、セラミックボディの強度、信頼性、絶縁耐圧及び容量の優れた積層セラミックコンデンサを製造せしめる効果を奏する。
とりわけ、本発明は、超薄型超容量の積層セラミックコンデンサ機種の製造に適用できる効果を奏するものである。

Claims (5)

  1. 母材の(BaCa1−x(TiZr1−y)O(式中、0.7≦x≦1、0.75≦y≦0.9、0.998≦m≦1.006)と、母材の重量を基準にして、0.05〜0.8重量%のMnO と、0.8重量%以下のYと、0.03〜0.1重量%のV と、1.0重量%以下の焼結助剤のzLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)と、から成る積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物。
  2. 前記誘電体組成物は誘電率が15000以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物。
  3. 前記誘電体組成物は1000〜1200℃において焼成可能であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物。
  4. 前記zLiO−2(1−z)SiO(0.2≦z≦0.9)のガラス成分は2μm以下に1次粉砕した後、前記母材に添加されることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ用誘電体組成物。
  5. 請求項1ないし4中いずれか一項に記載の誘電体組成物から成るセラミック層とニッケルから成る内部電極層とを有する積層セラミックコンデンサ。
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