JP3812881B2 - 赤外線検出素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーモパイル型の赤外線検出素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、赤外線検出素子には、サーモパイル型、焦電型およびボロメータ型がある。例えば、サーモパイル型赤外線検出素子としては、図2および図3に示すようなものがある。
【0003】
図2および図3に示すサーモパイル型赤外線検出素子S1,S2は、シリコン(Si)製基板101の上面に、ダイアフラム102を設けると共に、ダイアフラム102の上面に、p型ポリシリコン110とn型ポリシリコン111とをアルミニウム(Al)配線112で交互に接続して、一対の熱電対113を構成している。この熱電対113は、基板101側を冷接点とし且つ熱吸収領域105側を温接点とした状態で並列に配置してあると共に、複数電気的に直列に連結してサーモパイルを形成している。そして、サーモパイルを配置したダイアフラム102上に、層間絶縁層103を介して熱吸収領域105を設けた構成になっている。このとき、熱吸収領域105は、素子の中央に配置してある。ここで、赤外線検出素子S1,S2の熱起電圧は、熱吸収領域105と基板101の間の温度差によって決まる。この温度差は、熱吸収領域105の端から基板101の空洞106A,106Bの端までの熱抵抗の大きさに依存する。
【0004】
基板101に形成した空洞106A,106Bは、熱電対113の冷接点側と温接点側とを熱的に分離するためのものである。図2に示す赤外線検出素子S1では、基板101の裏面側からシリコンの異方性エッチングを行うことにより、素子の外周側を枠状に残した状態にして空洞106Aを形成しており、他方、図3に示す赤外線検出素子S2では、ダイアフラム102の四隅にエッチング用開口孔107を形成したうえで、シリコンの異方性エッチングを行うことにより、ダイアフラム102下で基板101の上側に開口する四角錐形の空洞106Bを形成していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したような従来の赤外線検出素子S1,S2において、素子の外周を枠状に残して空洞106Aを形成するもの(図2)では、基板101中の必要以上の体積をエッチングしなければならないので、その作業時間すなわちエッチング液にさらされる時間が長くなり、これにより層間絶縁層103等の保護被膜がダメージを受けることになる。また、当該素子の出力を高めるためには、熱吸収エネルギを大きくすること、すなわち大面積化を図ることが必要となる。しかし、大面積の素子の構造強度をダイアフラム102のみで支えることは難しい。このため、ダイアフラム102の厚さを増すことや、各層の応力を緩和する手段などを用いて素子を作製することが試みられたが、これらの手段を用いても素子の構造強度を充分に確保するのは困難であり、また、ダイアフラム102の厚さを増すと、素子の感度が低下するという問題もあった。
【0006】
さらに、ダイアフラム102の四隅にエッチング用開口孔107を形成して空洞106Bを形成するもの(図3)では、シリコン製基板101の上面のほんの一部をエッチング除去するため、素子の構造強度の大半を基板101で支えることが可能であり、素子の構造強度の面では問題が少ないが、エッチング用開口孔107の大きさが制限されると共に、そのエッチング用開口孔107間の距離が基板101の厚さにより制限され、エッチング用開口孔107の位置が基板101の外周寄りに制限されることから、基板101の厚さより大きい寸法の素子には適用することが難しく、熱吸収エネルギを大きくする高出力素子の実現が困難であった。
【0007】
すなわち、従来の赤外線検出素子S1,S2では、出力を高めるために大面積化を図ることが困難であるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、大面積で高出力のサーモパイル型赤外線検出素子を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる赤外線検出素子は、請求項1として、シリコン製基板に、同シリコン製基板に形成した概略凹状の空洞を介して熱的絶縁材料から成る熱分離構造のダイアフラムを設けると共に、ダイアフラム上に赤外線検出部である多数の熱電対を設け、その上に層間絶縁層を介して矩形の熱吸収領域を形成して、熱吸収領域の周囲に沿って熱吸収領域側を温接点とし且つ基板側を冷接点とした多数の熱電対を配置した状態にし、熱電対の温接点から冷接点までの長さが、矩形の熱吸収領域の一辺の長さよりも小さく、熱吸収領域及び該熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域には、空洞形成のための複数のエッチング用開口孔をそれぞれ有し、熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域では、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対の間で且つ温接点側と冷接点側との間の適宜部位に、エッチング用開口孔が位置している構成とし、請求項2として、熱吸収領域に複数のエッチング用開口孔を等間隔で有する構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0010】
なお、当該素子の製造においては、エッチング用開口孔を通してシリコン製基板の異方性エッチングを行うことで基板に空洞を形成し、エッチングの時間により空洞の深さを制御する。また、熱吸収領域に複数のエッチング用開口孔を等間隔で有する構成においては、例えば、形成しようとする空洞の大きさとそのエッチング時間に応じて、エッチング用開口孔の大きさや間隔を適宜設定すれば良い。ここで、複数のエッチング用開口孔は、等間隔にすることでエッチングを最適にし得ることとなるが、設定するエッチング時間に余裕があれば、必ずしも等間隔にする必要はない。さらに、基板上にダイアフラムを設けた構成においては、基板とダイアフラムとの間に例えばポリマーまたはポリシリコンから成る犠牲層を適宜の厚さに設けることが可能であり、当該素子の製造においては、犠牲層に等方性エッチングを施した後、シリコン製基板に異方性エッチングを施して空洞を形成することができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わる赤外線検出素子によれば、熱吸収領域の周囲に沿って多数の熱電対を配置すると共に、熱電対の温接点から冷接点までの長さが、矩形の熱吸収領域の一辺の長さよりも小さい赤外線検出素子において、熱吸収領域及び該熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域に、エッチング用開口孔をそれぞれ設けると共に、熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域では、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対の間で且つ温接点側と冷接点側との間の適宜部位に、エッチング用開口孔を配置したことから、このエッチング用開口孔を通してシリコン製基板に異方性エッチングを施し、基板に熱吸収領域側に開口する概略凹状の空洞を形成し得ることとなり、基板の厚さよりも寸法の大きい大面積の赤外線検出素子を作成することが可能となり、熱吸収領域の大きさに左右されることなくサーモパイルの冷接点と温接点とを熱的に分離するための基板の空洞を短時間で形成することができると共に、エッチングの時間の短縮化に伴って層間絶縁層等の保護被膜にダメージを与える恐れを解消することができる。また、基板の底部を残して空洞が形成されるので、基板により充分な構造強度を確保することができ、これに伴ってダイアフラムの厚さを薄いものとすることができるので、赤外線検出の感度を高めることができる。そして、熱吸収領域を大きく確保して入射される赤外線エネルギ量を増大させることができるので、大面積で高出力の赤外線検出素子を実現することができ、例えば1×1mm以上の大面積で高出力の赤外線検出素子を実現することができる。
さらに、当該赤外線検出素子によれば、熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域において、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対の間で且つ温接点側と冷接点側との間の適宜部位にもエッチング用開口孔を設けることにより、空洞の大きさを熱電対の冷接点と温接点とを熱的に分離し得る充分な大きさにすることができると共に、熱吸収領域から基板側への熱の逃げを減少させ、冷接点と温接点との距離を長くすることができ、赤外線検出素子の感度を高めることができる。
さらに、当該赤外線検出素子は、サーモパイル型赤外線検出素子p型ポリシリコンとn型ポリシリコンの熱電対を用いるため、CMOSプロセスと両立でき、シリコン製基板内に大面積のサーモパイル型赤外線検出部と回路部を構成することができる。これにより、シリコンチップ上に回路と赤外線検出部の両機能が搭載され、1チップ化の赤外線検出素子を利用するシステムへの適用が可能となり、赤外線検出素子を利用するシステムの小型・軽量化が可能になる。また、シリコンのバッジ処理により、回路ボードも含めた価格の低減化も可能である。
【0013】
本発明の請求項2に係わる赤外線検出素子によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、等間隔で複数のエッチング用開口孔を有することから、その製造において空洞の形状的分布を均一にすることができると共に、エッチング用開口孔の大きさや間隔、エッチング時間を設定することで空洞の大きさを自在に最適化することができる。
【0016】
【実施例】
図1に示す赤外線検出素子Sは、一実施例として挙げたサーモパイル型赤外線検出素子であり、シリコン(Si)製基板1の上面に、熱的絶縁材料から成る熱分離構造のダイアフラムとして、窒化珪素(Si3N4)から成るダイアフラム2を設けると共に、ダイアフラム2の上面に、複数の層間絶縁層3a,3bとともに赤外線検出部として従来既知の多数の熱電対4を配置し、最上の層間絶縁層3aの上面に、赤外線吸収材料を形成して熱吸収領域(熱吸収膜)5を形成した構成になっている。なお、赤外線吸収材料として金黒を用いる場合には、最上の層間絶縁層3a,3bの上に、アモルファス・シリコンなどの金黒との相互拡散性の良い材料の層を配置しても良い。このとき、熱吸収領域5は、図1に示す如く矩形であって、素子の中央に配置してあり、多数の熱電対4は、基板1側を冷接点4aとし且つ熱吸収領域1側を温接点4bとした状態で並列に配置してあると共に、複数電気的に直列に連結してある。
これにより、赤外線検出素子Sは、図1から明らかなように、中央の熱吸収領域5の周囲に沿って多数の熱電対4を配置した状態になっており、熱電対4の温接点4bから冷接点4aまでの長さ(熱吸収領域5から基板1に至る熱伝導方向の長さ)が、矩形の熱吸収領域5の一辺の長さ(熱伝導方向に対してその幅に相当する長さ)よりも充分に小さいものとなっている。また、この実施例では、基板1とダイアフラム2との間に、ポリマーまたはポリシリコンから成る犠牲層6を介装してエッチングを容易にしている。
【0017】
基板1のダイアフラム2下には、熱吸収領域5側(上側)に開口して熱電対4の冷接点4a側と温接点4b側とを熱的に分離するための概略凹状の空洞7が形成してある。熱吸収領域5は、当該素子Sの中央に配置され、熱電対の温接点4bにかぶさるように形成されている。多数の熱電対4は、ダイアフラム2上に配置してあるが、素子Sの外周部と熱吸収領域5との間に掛け渡された状態となり、空洞7によって冷接点4a側と温接点4b側とが熱的に分離されている。
【0018】
上記の赤外線検出素子Sを製造するには、ダイアフラム2の四隅に、例えば熱電対4の両接点4a,4b間の距離程度の直径を有する比較的大きいエッチング用開口孔8を形成すると共に、熱吸収領域5に、その表面から層間絶縁層3a,3bおよびダイアフラム2を通して基板1に至る多数のエッチング用開口孔9を等間隔で形成し、さらに、ダイアフラム2に、熱吸収領域5を矩形状に囲む熱電対4が配置された領域にエッチング用開口孔9を形成する、すなわち、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対4の間で且つ温接点4b側と冷接点4a側との間の適宜部位にエッチング用開口孔9を形成する。これらのエッチング用開口孔8,9は、ドライエッチングやプラズマ加工などにより形成することができる。また、熱吸収領域5におけるエッチング用開口孔9の総面積は、熱吸収領域5の面積に比べて非常に小さく、熱吸収領域5の熱吸収作用への影響はきわめて小さい。
【0019】
熱吸収領域5および該熱吸収領域5を矩形状に囲む熱電対4が配置された領域に形成したエッチング用開口孔9は、形成しようとする空洞7の深さとそのエッチング時間に応じて大きさや間隔が設定される。より具体的には、例えば、エッチング用開口孔9の直径が20μmで、間隔が200μm前後としたとき、ダイアフラム2の直下が空洞7となった時点で空洞7の深さは140μmになる。これは、犠牲層6のエッチングレートが2μm/minのとき、約60分実施した場合である。
【0020】
そして、この実施例の赤外線検出素子は、その製造において、上記の如くエッチング用開口孔8,9を形成したのち、エッチング用開口孔8,9からエッチング液を流入させることにより犠牲層6に等方性エッチングを行う。
【0021】
次に、同じくエッチング用開口孔8,9からエッチング液を流入させることにより、シリコン製基板1の結晶方位に添った異方性エッチングを行う。上記の等方性エッチングと異方性エッチングは同時に進行される。このとき、犠牲層6により、基板1の素子外周側への異方性エッチングの進行を阻止している。したがって、空洞7が必要以上に広がることは無い。
【0022】
そして、予め設定したエッチング時間が経過したところで、エッチング液を排出することにより、図1(b)に示すように、上側に開口して底部が凹凸を成す空洞7が形成される。
【0023】
このように、上記実施例の赤外線検出素子では、ダイアフラム2の四隅に形成したエッチング用開口孔8に加えて、熱吸収領域5および該熱吸収領域5を矩形状に囲む熱電対4が配置された領域に形成したエッチング用開口孔9を通してシリコン製基板1に異方性エッチングを施すことにより、熱吸収領域5の大きさに左右されることなく熱電対4の冷接点4aと温接点4bとを熱的に分離するための空洞7が短時間で形成されることとなり、エッチングの時間が短縮されるので、ダイアフラム2や層間絶縁層3a,3bといった保護被膜にダメージを与えることもなく、また、基板1の底部を残して空洞7を形成するので構造強度も充分なものとなり、大面積の素子Sであっても、ダイアフラム2が撓んで空洞7の底部に接触するスティッキング現象を生じることもない。さらに、熱吸収領域5に複数のエッチング用開口孔9を等間隔で形成したので、空洞7の底部の凹凸形状の分布が均一なものとなり、構造強度の確保にも寄与し得る。これにより、例えば1×1mm以上の大面積で高出力の赤外線検出素子Sを実現することができる。
【0024】
また、赤外線検出素子Sは、製造後の構造的特徴としては、ダイアフラム2上の熱吸収領域5を矩形状に囲む熱電対4が配置された領域において、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対4の間で且つ温接点4b側と冷接点4a側との間の適宜部位にもエッチング用開口孔9を形成したので、空洞7の大きさが熱電対4の冷接点4aと温接点4bとを熱的に分離し得る充分な大きさになると共に、ダイヤフラム2において、熱吸収領域5から基板1側への熱の逃げを減少させ、冷接点4aと温接点4bとの距離を長くすることができ、赤外線検出素子Sの感度を向上させることができる。
【0025】
なお、本発明に係わる赤外線検出素子は、その詳細な構成が上記実施例のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外線検出素子の一実施例を説明する平面図(a)および断面図(b)である。
【図2】従来における赤外線検出素子の一例を説明する平面図(a)および断面図(b)である。
【図3】従来における赤外線検出素子の他の例を説明する平面図(a)および断面図(b)である。
【符号の説明】
S 赤外線検出素子
1 基板
2 ダイアフラム
3a 3b 層間絶縁層
4 熱電対(赤外線検出部)
4a 冷接点
4b 温接点
5 熱吸収領域
9 エッチング用開口孔
Claims (2)
- シリコン製基板に、同シリコン製基板に形成した概略凹状の空洞を介して熱的絶縁材料から成る熱分離構造のダイアフラムを設けると共に、ダイアフラム上に赤外線検出部である多数の熱電対を設け、その上に層間絶縁層を介して矩形の熱吸収領域を形成して、熱吸収領域の周囲に沿って熱吸収領域側を温接点とし且つ基板側を冷接点とした多数の熱電対を配置した状態にし、熱電対の温接点から冷接点までの長さが、矩形の熱吸収領域の一辺の長さよりも小さく、熱吸収領域及び該熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域には、空洞形成のための複数のエッチング用開口孔をそれぞれ有し、熱吸収領域を矩形状に囲む熱電対が配置された領域では、その矩形の各辺における互いに隣接する熱電対の間で且つ温接点側と冷接点側との間の適宜部位に、エッチング用開口孔が位置していることを特徴とする赤外線検出素子。
- 熱吸収領域に複数のエッチング用開口孔を等間隔で有することを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出素子。
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