JP3175662B2 - 熱型赤外線検出素子の製造方法 - Google Patents

熱型赤外線検出素子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷却を必要としない
熱型赤外線検出素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤外線検出器は半導体等のバンド構造を
利用した量子型と、熱による材料物性値(抵抗、誘電率
等)の変化を利用した熱型に大きく分けられる。前者は
高感度ではあるが動作原理上冷却を必要としている。そ
れに対し後者は、特に冷却を必要としていないため非冷
却型とも呼ばれ、製作コストや維持コストの面で量子型
に比べ有利な点が多く、近年注目されている。
【0003】熱型赤外線検出素子には、ボロメータ型、
焦電型及び熱電対型があり、いずれも検出素子の感度を
高くするため一般には熱分離構造、いわゆるダイアフラ
ム構造を有している。このなかでも比較的特性に優れて
いるボロメータ型の赤外線検出素子を例にとって説明す
る。
【0004】この素子のダイアフラム構造は図6に示す
ように、キャビティ10、熱電材料としてのボロメータ
薄膜7、支持膜6、保護膜8及び赤外吸収膜9よりなる
熱電変換部分1とそれらを支える梁3とからなってい
る。ダイアフラム構造は、基板上に犠牲層を堆積し、さ
らに支持膜6、ボロメータ薄膜7、保護膜8、赤外吸収
膜9を堆積し、各層を所望の形状にドライエッチング等
でパターニングし熱電変換部1の周りに犠牲層を露出さ
せ、最後に熱電変換部1の周りからエッチングにより犠
牲層を除去することにより形成される。犠牲層が除去さ
れたキャビティ10の部分は完全に空隙になっており、
熱電変換部1を梁3で吊っている構造となっている。ボ
ロメータ薄膜7の相対する2辺は電極4と接触してお
り、これらの電極は梁3を経由して信号処理回路に接続
され、赤外線を吸収することで生じたボロメータの抵抗
変化を電気信号として取り出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これまでの熱型赤外線
検出器は、10μm帯近傍の赤外画像化を目的として主
に開発されてきた経緯より、各素子を2次元に配列した
構造が主であった。従ってダイアフラム構造はキャビテ
ィ10の幅が1〜1.5μm、熱電変換部が30〜50
μm□程度であるのが適当であった。これらの赤外線検
出素子の特性は、各層の材料や厚さ、熱電変換部の大き
さ、梁の長さや太さ等による熱容量、熱コンダクタンス
と熱電材料の特性(ボロメータの場合は抵抗温度係数)
で決まり、広範な用途を考えると熱電変換部の大きさは
これまでの30〜50μm□程度のみならず300μm
□以上の大きさの素子も将来的には十分必要とされる。
しかしながら、現状の構造では熱電変換部1の周りから
犠牲層がエッチングできる領域すなわち熱電変換部の大
きさは、エッチャントが十分浸みわたる領域を考えると
50μm□程度が限界であり、それ以上大きな熱電変換部
をもつダイアフラム構造は構造的な問題より従来の方法
で製作することは困難であった。従ってその応用範囲は
極限られ、専ら熱電変換部の小さい用途にのみ適用され
ていた。
【0006】本発明の目的は、300μm□以上の大き
な熱電変換部をも製作が可能な構造をもつ熱型赤外線検
出素子の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】 本発明の熱型赤外線
検出素子の製造方法は、犠牲層の上に少なくとも支持
膜、熱電材料、保護膜を順次成膜した後に、梁を形成す
るためのダイアフラム周囲のスリットパターンを形成
し、これと同時にダイアフラム中に、前記熱電材料を貫
通する貫通孔形成のパターンを形成する第1の工程と、
前記ダイアフラム周囲のスリットパターン、及び前記ダ
イアフラム中の貫通孔形成のパターンを通して前記犠牲
層をエッチングにより除去する第2の工程を含むことを
特徴とするものである。熱電材料としてはボロメータ薄
膜が最も好適に用いられる。
【0008】この貫通孔の形状はスリット状、正方形
状、円形等があるが、スリット状貫通孔2の長さ方向が
ボロメータ薄膜中を流れる電流と同じ方向であるように
することで、スリット形成による抵抗値の変化を抑える
ことができ、また正方形状や円形状にすることによって
ダイアフラム中に入る歪を均等に分散することができ
る。
【0009】このような熱型赤外線検出素子は、犠牲層
の上に支持膜、熱電材料、保護膜を成膜した後に、梁を
形成するためのダイアフラム周囲のスリットパターンを
形成するのと同時にダイアフラム中の貫通孔形成のパタ
ーンを形成し、前記ダイアフラム周囲のスリットパター
ン、及びダイアフラム中の貫通孔形成のパターンを通し
前記犠牲層をエッチングにより除去することにより容易
に製造することが可能である。
【0010】つまり、本発明では、ダイアフラム構造と
なる部分に貫通孔を設けることにより、犠牲層をエッチ
ングする際に、熱電変換部の周囲のスリットのみなら
ず、その上部からもエッチャントを浸み込ませることが
できる。従って比較的大きな熱電変換部でもその下層の
犠牲層をエッチングすることが可能となり、大きなダイ
アフラム構造を形成することができる。その結果、熱容
量等を含むデバイス設計の自由度が増し特性の向上やデ
バイス適用範囲の拡大を図ることも可能となる。さら
に、本発明の熱型赤外線検出素子の製造方法を用いれ
ば、梁を形成するためのダイアフラム周囲のスリットパ
ターンを形成するのと同時にダイアフラム中の貫通孔形
成のパターンを形成し、前記ダイアフラム周囲のスリッ
トパターン、及びダイアフラム中の貫通孔形成のパター
ンを通し前記犠牲層をエッチングにより除去するため
に、従来とほぼ同様なプロセスで素子を製作することが
できる。この際、貫通孔のピッチを50〜100μmと
することによって熱電変換部の下層の犠牲層を比較的短
時間で均一に除去することができるという効果が得られ
る。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の熱型赤外線検出素子の構
造、製造方法、動作について図1、図2、図3を用い具
体的に説明する。ここでの実施例は、熱電材料としてボ
ロメータ薄膜を用いた場合について示す。図1は本発明
の熱型赤外線検出素子を上から見た図である。熱電変換
部1を4本の梁3で吊っている形状である。図3はA−
A’の断面図で、熱電変換部が空中にに浮き、熱的に分
離されている様子を示している。また本実施例では、熱
電変換部1の大きさを300μm□とし、貫通孔2の大
きさを幅4μm、長さ50μmとした。スリットの横方
向のピッチは50μmで図1に示すように配置した。梁
3は幅30μmで長さ50μmである。電極4は熱電変
換部を構成しているボロメータ材料の上辺と下辺で接し
電気的なコンタクトがとられ、熱のよる抵抗変化を外部
に取り出すことができる。電流は上下方向に流れ、スリ
ット状の貫通孔2はそれと同じ方向を向いている。
【0012】次に図2、図3を用いて本実施例の製造方
法について述べる。図2は犠牲層5をエッチングする前
の素子断面図、図3は犠牲層5をエッチングした後の素
子断面図である。シリコン基板等の上に犠牲層5を1.
3μm形成する。次に支持膜6を3000Å、ボロメー
タ薄膜7を1000Å堆積し、ボロメータ薄膜7のみ3
00μm□にパターン加工する。更に電極4をボロメー
タ薄膜7と接するようにリフトオフ等でパターン形成
し、全面に保護膜8を堆積する。次に300μm□のボ
ロメータ薄膜7に目合わせして赤外吸収膜9を形成す
る。ここでは犠牲層5としてポリシリコン、支持膜6、
保護膜8としてシリコン窒化膜、ボロメータ薄膜7とし
て酸化バナジウム、赤外吸収膜9として窒化チタンを用
いた。次に熱電変換部1の外側を梁3の部分を残して犠
牲層5の上までドライエッチング(イオンミリング)に
より除去する。またそれと同時に貫通孔2も形成する
(図2)。最後に犠牲層エッチング用のエッチャントに
浸す。ここではエッチャントとしてヒドラジンを用い
た。エッチング液は熱電変換部1の脇のみならず上部か
らも貫通孔2を通して浸み込み、犠牲層5をエッチング
により完全に除去することができる。これにより素子は
完成する。ここではスリット状の貫通孔2の大きさを幅
4μm、長さ50μmとしたが、これは一例であり、特
性に大きな影響を与えずプロセスが比較的行ない易い大
きさであればよく、幅4〜15μm、長さ10〜50μ
mの範囲が適当である。
【0013】次に動作について簡単に説明する。赤外線
がダイアフラム構造の上面より入射すると、赤外吸収膜
9、キャビティ10の効果により熱電変換部1の温度が
上昇する。この温度上昇は熱電変換部1を構成している
各層の材料や厚さ、熱電変換部1の大きさ等で決まる熱
容量で貯えられ、梁の長さや太さ等の形状やそれらを構
成している材料によって決まる熱コンダクタンスにより
放出される。これらのバランスにより得られた温度変化
を熱電変換部1で電気信号に変え、電極4より取り出す
ことができる。ボロメータの場合は上述した電気信号は
抵抗の変化として得られるが、本実施例のようにスリッ
ト状の貫通孔2の方向を電流の流れる方向と同じにして
いるためスリット形成による抵抗の著しい減少といった
影響もほとんどない。このように赤外線検出素子の応答
速度や感度等の主な特性はこれらの熱容量と熱コンダク
タンスでほぼ決まり、本発明を用いればこれらの自由度
は拡大し、本実施例のように従来に比べ熱容量の非常に
大きな300μm□の熱電変換部をもつ素子でも十分製
作可能で設計どおりの特性が得られる。またノイズ特
性、特に非冷却型赤外線素子の場合に問題となる1/f
ノイズに関しては、素子の大きさが大きい程ノイズは小
さい傾向にあるため、本発明のように大きな熱電変換部
をもつ赤外線検出素子では十分な低ノイズ化が図れる。
【0014】図4、図5はそれぞれ貫通孔2の形状が正
方形の場合と円形の場合を示したものである。ダイアフ
ラムの大きさは前述のものと同様300μm□で、正方
形の一辺は10μm、また円の直径は10μmとした。
また図4、図5とも貫通孔2のピッチは100μmであ
る。これらは前述したスリット状の貫通孔に比べエッチ
ャントがしみ込む領域は小さいが、貫通孔形成によるダ
イアフラム中の歪の影響は小さく強度的に優っている特
徴がある。
【0015】本発明の実施例では、支持膜6や保護膜8
はシリコン窒化膜、ボロメータ薄膜7は酸化バナジウ
ム、また犠牲層5はポリシリコンを用いそのエッチャン
トとしてはヒドラジンを用いているが、特にこれに限定
されるわけではない。
【0016】また本実施例では、ボロメータ型の赤外線
検出素子について述べたが、大きなダイアフラム構造を
形成するという観点に立てば、焦電型や熱電対型にも適
用可能なことは言うまでもない。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明を用いれば
熱型赤外線検出素子の設計の自由度は拡大し、従来と同
様な方法で300μm□以上の大きなダイアフラム構造
の熱電変換部をもつ熱型赤外線検出素子の製作が十分可
能となり、熱型赤外線検出素子の応用を広範なものとす
ることができる。さらに基本的な特性は設計の自由度が
拡大したことにより高性能化を図ることもでき、大きな
ダイアフラムを用いたことによって十分な低ノイズ化も
期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱型赤外線検出素子を上から見た図で
貫通孔の形状がスリット状の実施例である。
【図2】犠牲層をエッチングする前の素子断面図であ
る。
【図3】犠牲層をエッチングした後の素子断面図であ
る。
【図4】貫通孔の形状が正方形の場合の実施例である。
【図5】貫通孔の形状が円形の場合の実施例である。
【図6】従来例を示す図である。
【符号の説明】
1 熱電変換部 2 貫通孔 3 梁 4 電極 5 犠牲層 6 支持膜 7 ボロメータ薄膜 8 保護膜 9 赤外吸収膜 10 キャビティ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01J 1/00 - 1/60 G01J 5/00 - 5/62 H01L 29/84 H01L 35/00 - 37/04 H01L 31/14 - 31/18 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 犠牲層の上に少なくとも支持膜、熱電
    材料、保護膜を順次成膜した後に、梁を形成するための
    ダイアフラム周囲のスリットパターンを形成し、これと
    同時にダイアフラム中に、前記熱電材料を貫通する貫通
    孔形成のパターンを形成する第1の工程と、前記ダイア
    フラム周囲のスリットパターン、及び前記ダイアフラム
    中の貫通孔形成のパターンを通して前記犠牲層をエッチ
    ングにより除去する第2の工程を含むことを特徴とする
    熱型赤外線検出素子の製造方法。
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