JP3806791B2 - 化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物半導体単結晶の製造方法に関し、例えば化合物半導体の原料融液を冷却して垂直方向に単結晶を成長させる垂直グラジェントフリージング(以下、VGFとする。)法や垂直ブリッジマン(以下、VBとする。)法に適用して有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、化合物半導体単結晶インゴットを製造するにあたって、液体封止チョクラルスキー(LEC)法もしくは水平ブリッジマン(HB)法が工業的に用いられている。LEC法には、大口径で断面形状が円形のウエハーが得られる、液体封止剤(B2 03 )を使用しているため高純度の結晶が得られるなどの長所がある反面、結晶成長方向の温度勾配が大きいため結晶中の転位密度が高くなり、その結晶を用いて作製したFET(電界効果トランジスタ)等の電子デバイスの電気的な特性が劣化してしまうという短所がある。一方、HB法には、結晶成長方向の温度勾配が小さいため低転位密度の結晶が得られるという長所がある反面、るつぼ内で化合物半導体の原料融液を固化させるため大口径化が困難である、得られたウエハーの断面形状はかまぼこ形になってしまうなどの短所がある。
【0003】
そこで、LEC法とHB法のそれぞれの長所を併せ持つ単結晶製造方法として、垂直グラジェントフリージング(VGF)法や垂直ブリッジマン(VB)法が提案されている。これらVGF法やVB法は、円筒形のるつほを使用するため円形のウエハーが得られる、結晶成長方向の温度勾配が小さいため低転位密度の結晶が容易に得られるという長所を有する。しかし、VGF法及びVB法においては、炉内のわずかな温度変動の影響あるいはるつほ壁の凹凸や異物の影響を受けやすく、双晶や多結晶が発生しやすいという欠点がある。
【0004】
それらの欠点のうち、炉内の温度変動の影響については、近年の温調技術の発展により解消されてきている。また、るつぼ壁からの多結晶の発生についても、液体封止剤(B2 O3 )の使用により防止できるようになった。
【0005】
しかしながら、双晶の発生に対しては未だ有効な防止策は提案されていない。特に、結晶の直胴部よりも、結晶育成開始点から直胴部に至るまでの結晶増径部における双晶発生の確率が高く、単結晶製造の歩留りを低下させる主な原因となっている。
【0006】
GaAsやInPやGaPのような閃亜鉛鉱型構造の化合物半導体単結晶を種結晶を用いて育成する場合、種結晶から直胴部へ至る増径部の角度と双晶の発生確率との間には密接な関係があることがわかっている。すなわち、(100)方位の結晶を育成する場合、増径部に(111)ファセット面が現れ、このファセット面から双晶が発生する。このことは、本発明者らの行った実験でも確認されている。すなわち、本発明者らが結晶育成を行ったところ、双晶の発生した結晶では、全ての双晶がファセット成長に沿って発生していた。
【0007】
(111)ファセットは(100)方位と54.7°の角度をなす。従って、一般には、(111)ファセット面が現れるのを防ぐために、増径部の角度を[90°−54.7°]すなわち35.3°以下としている。しかし、増径部の角度を小さくすると、得られた結晶は増径部の長いものとなってしまい、ウエハーの収率が低下し生産性が悪い。そこで、増径部の角度を40°〜50°程度にするという試みもなされているが、双晶の発生抑止という点では十分な効果が得られていない。
【0008】
また、特開平5−194073号公報には、増径部の角度が80°〜100°となるようなるつぼを用いるとともに、種結晶近傍の領域を局所的に過冷却状態にして略水平な方向に結晶を成長させ、さらに結晶を上凸状をなすように成長させた後、原料融液を5℃/cm〜15℃/cmの温度勾配下で冷却して固化させるようにした結晶製造方法が開示されている。この製造方法では、5℃/cm〜15℃/cmの温度勾配を保持しつつ原料融液を冷却するために、ヒートシンクに冷却媒体用の配管を設け、その配管内に冷却用媒体を流してヒートシンクの放熱性を高めるようにしている。なお、特開平5−194073号公報によれば、温度勾配が5℃/cm未満では、原料融液の等温面が融液側に凸状態になるように融液の温度分布を制御し難く、単結晶が成長し難いとされている。また、温度勾配が15℃/cmを超えると急激に固化してしまい、デンドライトが生じて多結晶化しやすいとされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−194073号公報に開示された結晶製造方法には、次のような問題があることが本発明者らにより明らかとされた。すなわち、特開平5−194073号では、原料融液の等温面が融液側に凸状態になるように融液の温度分布を制御するために、冷却時の温度勾配を5℃/cm以上にしなければならないとしている。しかし、温度勾配が5℃/cm以上では原料融液中の対流による温度ゆらぎは十分に小さくならず、双晶や多結晶が発生しやすい。すなわち、十分に満足できる程度に双晶や多結晶の発生を抑制することができない。また、ヒートシンク内に冷却媒体用の配管を設置するため、多大なコストがかかるという欠点もあった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、結晶増径部にて双晶が発生するのを防いで高い歩留まりで化合物半導体単結晶、特にGaAsやInP等のように閃亜鉛鉱型構造の化合物半導体単結晶をVGF法やVB法により製造することができる単結晶製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、略平坦な底面形状のるつぼを用いて結晶成長を行うことによって、双晶の発生確率の高い増径部を形成することなく結晶を成長させることができると考えた。また、原料融液から結晶を上凸状に成長させずに平坦状に成長させることにより、原料融液中の温度勾配を5℃/cm未満にでき、温度ゆらぎを小さくすることができると考えた。さらに、育成結晶の、結晶肩部から直胴部へ移行する部分の曲率半径が大きいと、その部分の結晶成長に要する時間が長くなって発生するファセット数も増え、従って双晶が発生し易くなるので、結晶肩部から直胴部へ移行する部分の曲率半径を所定範囲内の値とすることが有効であると考えた。
【0012】
本発明は、上記着眼に基づきなされたもので、底部中央に種結晶の設置部を有するるつぼの該種結晶設置部内に種結晶を設置し、該るつぼ内に化合物半導体の原料及び封止剤を入れ、そのるつぼを気密容器内に封入した後、該気密容器を縦型の加熱炉内に設置して前記原料及び前記封止剤をヒータにより加熱融解し、得られた原料融液を下側から徐々に冷却して前記種結晶から上方に向かって固化させることにより化合物半導体、特に閃亜鉛鉱型構造の化合物半導体の単結晶を成長させるにあたって、前記るつぼとして、その底面がその中心に向かって徐々に低くなるように垂直方向に対して80°以上90°未満の所定角度をなして傾斜したるつぼを用いるとともに、結晶成長時に少なくともその傾斜したるつぼ底部分の結晶成長方向の温度勾配を1℃/cm以上5℃/cm未満、好ましくは2℃/cm以上4.5℃/cm以下、より好ましくは3℃/cm以上4℃/cm以下となるように制御するものである。また、本発明は、前記るつぼの底面と側面との境界部分、すなわち育成結晶の、結晶肩部から直胴部への移行部分に相当する角部の曲率半径を0mm以上10mm以下とするものである。
【0013】
それによって、増径部を形成することなく原料融液から結晶が平坦状に成長する。また、原料融液を冷却して固化させる際の温度勾配が小さいため、温度ゆらぎが小さくなる。また、育成結晶の、結晶肩部から直胴部への移行部分の結晶成長時間が短くなり、ファセットの発生が抑制され、双晶の発生が防止される。本発明者らの研究によれば、原料及び封止剤を封入した気密容器の、るつぼ底に対応する箇所の外側に接して設けた熱電対により温度ゆらぎを測定した結果、温度ゆらぎは±0.1℃以下であるのが適当である。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施に使用されるるつぼが示されている。また、図2には、本発明をVGF法に適用した際に使用される結晶成長炉の概略が示されている。
【0015】
本発明に係る単結晶製造方法では、図1に示すように、るつぼ1の底部中央に種結晶設置部1aが設けられ、かつるつぼ1の底面1bがその中心に向かって徐々に低くなるように垂直方向に対して80°以上90°未満の所定角度αをなして傾斜するように形成されてなるるつぼ1を用いる。るつぼ1の底面1aの角度αが80°以上90°未満である理由は、80°未満では増径部分の温度勾配がつき易く、その結果温度ゆらぎが大きくなって、双晶が発生するためであり、90°以上では増径部分で他粒界が成長し、多結晶となるからである。
【0016】
また、るつぼ1は、その底面1bと側面1cとの境界部分、すなわち育成結晶の、結晶肩部から直胴部への移行部分に相当する角部1dの曲率半径が0mm以上10mm以下となっているものである。るつぼ1の、底面1bと側面1cとの間の角部1dの曲率半径が0mm以上10mm以下である理由は、本発明者らの検討結果によれば、その曲率半径が10mmよりも大きいと、双晶の発生確率が増大してしまい、好ましくないからである。また、その曲率半径の下限については、曲率半径が小さいほどファセットの発生を防止することができるので、曲率半径0mm、すなわち角部1dが曲面になっていなくてもよい。
【0017】
そして、図2に示すように、るつぼ1の種結晶設置部1a内に種結晶2を入れ、るつぼ1内に化合物半導体の原料3と封止剤4を入れる。気密容器5の蒸気圧制御部(リザーバ)5a内に蒸気圧制御用の元素6を入れ、さらに気密容器5の結晶育成部5b内のサセプタ7上にそのるつぼ1を設置し、気密容器5内を真空排気してキャップ5cにより封止する。蒸気圧制御用元素6は、成長させる単結晶の構成元素のうち揮発し易い元素よりなる単体もしくは化合物である。
【0018】
その気密容器5を縦型加熱炉8内の所定位置に設置し、ヒータ9により加熱して原料3及び封止剤4を融解させる。特に限定しないが、ヒータ9として例えば少なくとも結晶育成部用ヒータ9A、種結晶部用ヒータ9B及び蒸気圧制御部用ヒータ9Cからなる円筒状の3段構成のヒータを用いるとよい。
【0019】
それら各ヒータ9A,9B,9Cの各出力を調整して、種結晶2側から原料融液3の上方に向かって徐々に高温となるような所定の温度勾配を維持しつつ徐々に原料融液3を下部から融点以下の温度に冷却することにより単結晶10を上方に向かって成長させる。その際、気密容器5内の蒸気圧は、蒸気圧制御部用ヒータ9Cの出力調整により適当な圧力に保たれる。
【0020】
ここで、冷却時の温度勾配については、少なくともるつぼ1の傾斜した底部分、すなわち結晶育成開始時点の種結晶2と原料融液3との固液界面から結晶の直胴部の育成が開始されるまでの領域(図1参照、同図のDの領域)における温度勾配が、1℃/cm以上5℃/cm未満、好ましくは2℃/cm以上4.5℃/cm以下、より好ましくは3℃/cm以上4℃/cm以下となるのが適当である。その理由は、温度勾配が1℃/cm未満では雰囲気温度の影響を受け易くなるからであり、5℃/cm以上では温度ゆらぎが大きくなるからである。また、温度勾配が2℃/cm〜4.5℃/cmであれば、適正な育成速度と単結晶化率が得られるという利点が有り、さらに温度勾配が3℃/cm〜4℃/cmであれば、より好ましい。
【0021】
また、気密容器5の、るつぼ底に対応する箇所の外側に熱電対11を接して設け、その熱電対11により温度ゆらぎを測定して温度ゆらぎが所定範囲内の大きさになっていることを確認する。なお、その測定した温度ゆらぎが所定範囲内の大きさになるように各ヒータ9A,9B,9Cの出力を調整するようにしてもよい。温度ゆらぎの許容範囲については、予備実験等により求めておく。図2に示す構成でもって予備実験を行った結果、温度ゆらぎの許容範囲は±0.1℃以下であることがわかった。その理由は、温度ゆらぎがその許容範囲を逸脱すると、双晶や多結晶が発生しやすくなるからである。
【0022】
上記実施形態によれば、るつぼ1の底面1bがその中心に向かって徐々に低くなるように垂直方向に対して80°以上90°未満の所定角度αをなして傾斜しているとともに、底面1bと側面1cとの間の角部1dの曲率半径が0mm以上10mm以下であるようなるつぼ1を用い、少なくともその傾斜したるつぼ底部分(前記領域D)の結晶成長方向の温度勾配が1℃/cm以上5℃/cm未満、好ましくは2℃/cm以上4.5℃/cm以下、より好ましくは3℃/cm以上4℃/cm以下となるように制御しながら原料融液3を徐々に冷却してVGF法により化合物半導体単結晶を成長させるようにしたため、結晶10の増径部が形成されずにまず原料融液3から結晶10がるつぼ1の底面1bに沿って平坦状に成長した後、固液界面が平坦状をなしたままさらに結晶10が上方に向かって成長する。従って、結晶増径部がないため、得られた単結晶インゴットからのウエハーの収率が高く生産性がよい。また、原料融液3の固化時の温度勾配が小さく、温度ゆらぎが小さいのに加えて、結晶肩部から直胴部ヘ移行する際のファセットの発生が抑制されるので、双晶や多結晶の発生が抑制され、高い歩留まりで単結晶が得られる。
【0023】
さらに、加熱炉8は冷却媒体用の配管等が不要であるため、従来の加熱炉をそのまま使うことができるので、コストの増加を招くことなく、双晶や多結晶のない高品質の単結晶が高歩留まりで得られる。
【0024】
なお、上記実施の形態においては本発明をVGF法に適用した場合について説明したが、本発明はVB法にも適用可能である。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の特徴とするところを明らかとする。なお、本発明は、以下の各実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
るつぼとして、直径が約3インチで厚さが3mmの図1に示す形状のpBN製るつぼ1を用いた。また、垂直方向に対してるつぼ1の底面1bがなす角度αを87℃とした。また、るつぼ1の、底面1bと側面1cとの間の角部1dの曲率半径を4mmとした。
【0027】
るつぼ1の種結晶設置部1aにGaAs単結晶よりなる種結晶2を入れ、さらにるつぼ1内に原料3として約3kgのGaAs多結晶と封止剤4として適量のB2 O3 を入れた。続いて、気密容器5である石英アンプルの蒸気圧制御部5aに蒸気圧制御用元素6として8gの砒素を入れ、原料3及び封止剤4を入れたるつぼ1を石英アンプル内のサセプタ7上に設置した後、キャップ5cにより真空封止した。そして、気密容器5を図2に示すように3段ヒータ構成の縦型加熱炉8内に設置した。なお、原料3としてGaAs多結晶を用いる代わりに、るつぼ1内にGaとAsを入れてそれらを直接合成させるようにしてもよい。
【0028】
結晶育成部用ヒータ9A及び種結晶部用ヒータ9Bにより、種結晶2の上端と原料3が1238℃〜1255℃の温度となるようにるつぼ1を加熱して原料3及び封止剤4を融解させるとともに、蒸気圧制御部用ヒータ9Cにより蒸気圧制御部5aを605℃となるように加熱した。また、るつぼ1の傾斜した底部分すなわち結晶育成開始時点の種結晶2と原料融液3との固液界面から結晶の直胴部の育成が開始されるまでの領域Dにおける温度勾配が3.5℃/cmとなるようにした。この時の熱電対11により測定した温度ゆらぎは±0.06℃であった。
【0029】
この状態で、結晶の育成速度が毎時2mmとなるように加熱炉8の設定温度を連続的に下げて結晶の育成を開始した。結晶育成開始から約30時間経過した時点で原料融液3はすべて固化した。その後、加熱炉8全体を毎時100℃の降温速度で冷却し、室温近くまで冷えた時点で加熱炉8内から気密容器5を取り出し、気密容器5を壊して結晶を取り出した。得られた結晶は直径約3インチで全長約12cmの結晶方位(100)のGaAs単結晶であり、その結晶性を調べたところ双晶や多結晶は全く発生していなかった。また、この単結晶インゴットを切断して転位密度を調ぺたところ、結晶のどの領域においても転位密度は1000cm-2以下であった。
【0030】
上記実施例と同一の条件でGaAsの単結晶成長を20回行ったところ、そのうち18回については、双晶や多結晶のない単結晶が得られた。
【0031】
(実施例2)
るつぼ1の、底面1bと側面1cとの間の角部1dの曲率半径を10mmとした以外は、上記実施例1と同じ条件で、GaAsの単結晶成長を5回行った。その結果、4回の結晶成長については、双晶や多結晶のない単結晶が得られた。上記実施例1よりも曲率半径を少し大きくした(4mmを10mmとした)ところ、単結晶の歩留りが少し低下したが、後述する比較例よりも歩留りが良かった。
【0032】
なお、GaAs以外にもInPやGaPなどの閃亜鉛鉱型構造の化合物半導体をVGF法やVB法により製造する場合にも本発明は有効である。
【0033】
(比較例1)
垂直方向に対してるつぼの底面のなす角度αが30°であるようなpBN製のるつぼを用い、上記実施例1と同様にして、GaAs単結晶の製造を行った。なお、るつぼ底の角度α以外の条件は上記実施例1と同じであった。得られた結晶には種結晶から直胴部に至るまでの結晶増径部に双晶が発生しており、方位が変わってしまったため、その結晶を半導体基板用の結晶として使用することは不可能であった。同一の条件でGaAsの単結晶成長を5回行ったところ、得られた5本の結晶のうち2本は単結晶であったが、3本の結晶には双晶が発生しており使用不可能であった。
【0034】
(比較例2)
上記実施例1と同じるつぼ1を使用し、るつぼ1の傾斜した底部分(前記領域D)の温度勾配を15℃/cmに設定して、上記実施例1と同様にしてGaAs単結晶の製造を行った。なお、るつぼ1の底部分の温度勾配以外の条件は上記実施例と同じであった。結晶成長時の温度ゆらぎを熱電対11により測定したところ、±0.3℃であった。得られた結晶にはその増径部に多結晶が発生しており、その結晶を半導体基板用の結晶として使用することは不可能であった。同一の条件でGaAsの単結晶成長を5回行ったところ、得られた5本の結晶のうち単結晶であったのは1本だけであり、他の4本の結晶には多結晶が発生しており使用不可能であった。また、1本だけ得られた単結晶のGaAs結晶を切断して転位密度を調べたところ、結晶のどの領域においても転位密度は5000cm-2を超えていた。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、るつぼ底部の種結晶設置部内に種結晶を設置し、そのるつぼ内に化合物半導体の原料及び封止剤を入れ、そのるつぼを気密容器内に封入した後、該気密容器を縦型の加熱炉内に設置して前記原料及び前記封止剤をヒータにより加熱融解し、得られた原料融液を下側から徐々に冷却して前記種結晶から上方に向かって固化させることにより化合物半導体の単結晶を成長させるにあたって、前記るつぼとして、その底面がその中心に向かって徐々に低くなるように垂直方向に対して80°以上90°未満の所定角度をなして傾斜したるつぼを用いるとともに、結晶成長時に少なくともその傾斜したるつぼ底部分の結晶成長方向の温度勾配を1℃/cm以上5℃/cm未満となるように制御して結晶成長を行うようにしたため、結晶の増径部が形成されずに結晶育成開始後すぐに直胴部の育成が開始されるので、得られた単結晶インゴットからのウエハーの収率が高く生産性がよい。また、原料融液の固化時の温度勾配が小さく、温度ゆらぎが小さいため、双晶及び多結晶の発生が抑制され、高い歩留まりで単結晶が得られる。さらに、加熱炉は冷却媒体用の配管等が不要であるため、従来の加熱炉をそのまま使うことができるので、コストの増加を招くことなく、高品質の単結晶が高歩留まりで得られる。
【0036】
また、本発明によれば、前記るつぼの底面と側面との境界部分の曲率半径が0mm以上10mm以下であるため、育成結晶の、結晶肩部から直胴部への移行部分の結晶成長時間が短くなり、ファセットの発生が抑制され、双晶の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用されるるつぼの一例の断面図である。
【図2】本発明をVGF法に適用した際に使用される結晶成長炉の概略図である。
【符号の説明】
1 るつぼ
1a 種結晶設置部
1b るつぼの底面
1c るつぼの側面
1d るつぼの角部
2 種結晶
3 原料
4 封止剤
5 気密容器
8 加熱炉(結晶成長炉)
9 ヒータ
10 単結晶
Claims (5)
- 底部中央に種結晶の設置部を有するるつぼの該種結晶設置部内に種結晶を設置し、該るつぼ内に化合物半導体の原料及び封止剤を入れ、そのるつぼを気密容器内に封入した後、該気密容器を縦型の加熱炉内に設置して前記原料及び前記封止剤をヒータにより加熱融解し、得られた原料融液を下側から徐々に冷却して前記種結晶から上方に向かって固化させることにより化合物半導体の単結晶を成長させるにあたって、前記るつぼとして、その底面がその中心に向かって徐々に低くなるように垂直方向に対して80°以上90°未満の所定角度をなして傾斜したるつぼを用いるとともに、結晶成長時に少なくともその傾斜したるつぼ底部分の結晶成長方向の温度勾配を1℃/cm以上5℃/cm未満となるように制御することを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。
- 前記るつぼの底面と側面との境界部分の曲率半径は0mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
- 好ましくは、前記るつぼ底部分の結晶成長方向の温度勾配を2℃/cm以上4.5℃/cm以下となるように制御することを特徴とする請求項1または2記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
- より好ましくは、前記るつぼ底部分の結晶成長方向の温度勾配を3℃/cm以上4℃/cm以下となるように制御することを特徴とする請求項1または2記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
- 閃亜鉛鉱型構造の化合物半導体単結晶を成長させることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の化合物半導体単結晶の製造方法。
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