JP3798689B2 - 発泡性清酒及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、発泡性清酒及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、麹由来の不快な香り及び味がなく、フルーティで、サッパリ感のある低アルコールの発泡性清酒及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、清酒の需要が減少傾向にある。
この需要減少の理由の一つとして、実際に飲まれる段階での清酒のアルコール濃度が高すぎることが指摘されている。清酒のアルコール濃度は16%前後であり、清酒は通常水等で割ることなく飲まれるので、飲用時におけるアルコール濃度も16%前後である。これに対し、例えばウイスキーや焼酎は、そのアルコール濃度は清酒よりも高いが、通常水等で割って飲まれるので、飲用時におけるアルコール濃度は一般に10%前後であって、清酒のそれより低い。
【0003】
清酒において、単にアルコール濃度を14〜15%以下に低下させると、味の調和がくずれ、水っぽくなり、著しく嗜好性が低下する。したがって前記理由に対応させて単に清酒のアルコール濃度を下げるだけでは、清酒の需要増大には繋がらないと考えられる。
【0004】
清酒の需要減少の他の理由として、清酒特有の、麹に由来する香味が近年の嗜好に適合しないことが指摘されている。すなわち近年の消費者層、特に女性層や若年層においては、酒類に対してもライトな、ソフトな風味、例えばフルーティで、サッパリ感のある風味が好まれるが、清酒の麹由来の前記香味は、このような近年好まれる風味ではない。
【0005】
このような事情から、近年の嗜好性に合った清酒、特に清涼感を持たせた低アルコール発泡性清酒の製造方法の開発が盛んに行われるようになった。
【0006】
このような製造方法としては、例えば、従来の清酒製造において行われる並行複発酵ではなく、単行発酵により低アルコール発泡性清酒を製造する方法(特開平8−238084号公報参照)、及び多酸存在下で糖化と発酵とを行う低アルコール発泡性清酒の製造方法(特開2000−189148号公報参照)等が開示されている。
【0007】
しかしこれらの製造方法によって得られる低アルコール発泡性清酒は、従来の清酒に比べれば口当たりがよく、飲みやすくなっているが、サッパリ感及びフルーティ感が不充分であり、未だ近年の嗜好性に適合した清酒であるとは言えず、清酒の需要増大を促し得るものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、従来の発泡性清酒及びその製造方法が有する前記欠点を解消することである。すなわちこの発明の目的は、麹由来の不快な香り及び味がなく、フルーティで、サッパリ感のある低アルコールの発泡性清酒及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためのこの発明は、米に米麹を添加して糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させることにより得られた発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、12〜22℃で3〜6日間容器内発酵を行った後、その容器内発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を行うことを特徴とする発泡性清酒の製造方法であり、米に米麹を添加して糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させることにより得られた発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、12〜22℃で3〜6日間容器内発酵を行った後、その容器内発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を行うことにより製造され、かつアルコール濃度が6〜8%であり、日本酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.5であり、炭酸ガス圧力が2.5〜4.0炭酸ガスボリュームであることを特徴とする発泡性清酒である。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明は、米に米麹を添加して糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させる発泡性清酒の製造方法である。
【0011】
以下、前記製造方法を詳説する。
【0012】
(1)糖化
常法に従って蒸し米及び米麹を製造する。この蒸し米及び米麹に水を添加し、糖化を行い、糖化液を製造する。
【0013】
前記糖化に使用する蒸し米、米麹及び水の量は、発酵を行うことのできる糖化液を得ることができれば時に制限はなく、例えば蒸し米100重量部に対して、米麹40〜60重量部、水200〜250重量部とすることができる。
【0014】
糖化温度は、発酵を行うことのできる糖化液を得ることができれば特に制限はないが、53〜55℃であることが好ましい。糖化温度がこの範囲内であると、糖化酵素の働きを最適ならしめ、雑味のない糖化液を得ることができるという利点がある。
【0015】
糖化時間は、発酵を行うことのできる糖化液を得ることができれば時に制限はないが、20時間以内、特に12〜16時間であることが好ましい。糖化時間がこの範囲内であると、米のデンプンをほぼ100%糖化させることができ、かつ麹由来の好まれざる香味が発生しにくいという利点がある。
【0016】
前記糖化液は、ボーメが12〜14であると、発酵が良好に行われ、風味のよい発泡性清酒が製造しやすくなる点で好ましい。
【0017】
また前記糖化においては、この発明の目的が達成される限りにおいて、糖化を促進させるために、デンプン分解酵素剤、例えばアミラーゼを米麹とともに使用することもできる。
【0018】
(2)漉し処理
前記糖化操作の終了後、前記糖化操作により得られた糖化液に対して、直ちに漉し処理を行う。
ここで行う漉し処理は、例えば清酒醪用圧濾機を用いて行うことができる。 このような条件で前記糖化液に対して漉し処理を行うと、前記糖化で使用した米麹が濾別され、清澄糖化液を速やかにかつ高収率で得ることができる。なおここでいう「清澄」とは、白濁ではないことを意味する。したがって前記清澄糖化液は、白濁でなければ、例えば多少の浮遊物又は沈殿物を含有していてもかまわない。前記清澄糖化液は、例えば430nmにおける吸光度が0.1以下である。
【0019】
この発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、糖化酵素を失活させるために前記糖化液又は清澄糖化液に加熱処理を行ってもよく、またそのような加熱処理を行わなくてもよい。
【0020】
この発明に係る発泡性清酒においては、前記糖化操作の終了後、前記漉し操作を行う前に前記糖化液に、酸度が3〜4になるように、乳酸を添加する。このように乳酸添加を行うと、野生酵母、カビ及びバクテリア等の繁殖を抑制することができ、製造管理が容易になる。また乳酸添加の前又は後に65〜70℃で加熱殺菌を行ってもよい。
【0021】
(3)発酵
前記漉し処理により得られた清澄糖化液を冷却し、それに酵母を添加して、密閉タンク内で発酵を行う。
【0022】
前記酵母の種類としては、発酵が好適に行われる限り特に制限はなく、例えば吟醸清酒用酵母を使用することができる。
【0023】
前記密閉タンクとしては、発泡性清酒を製造することができれば特に制限はなく、公知の密閉タンクを使用することができる。
【0024】
前記発酵は、図1に示したように、第I〜III段階の三段階に分けて行われる。
前記発酵の第I段階では、10〜22℃で6〜10日間発酵が行われる。
この温度範囲で発酵を行うと、エタノールの生産が好適に進行するとともに、発泡性清酒にとって好ましい香気成分、例えば脂肪酸エステル及び高級アルコールが好適に生成される。前記温度範囲よりも発酵温度が高いと、エタノールの生産量が増大するが、前記の好ましい香気成分の生産量が減少するので好ましくない。前記温度範囲よりも発酵温度が低いと、エタノール生産に時間がかかり過ぎるとともに、好ましい香気成分の生産量も少なくなるので好ましくない。
【0025】
発酵日数が前記日数であると、必要充分な量のエタノールを生産することができる。発酵日数が前記日数より短いと、発酵液中のエタノール量が不足し、発酵日数が前記日数より長いと、発酵液中のエタノール量が過大になるので好ましくない。
【0026】
前記発酵の第I段階では、発酵中に発生された炭酸ガスは、その一部が発酵液中に溶け込む。
【0027】
前記発酵の第I段階終了時点の発酵液は、例えば、アルコール濃度が4.5〜5.5%であり、日本酒度が−75〜−90であり、酸度が3.5〜4.5であり、炭酸ガス圧力が1〜2炭酸ガスボリューム(Volumes of CO2 Gas Dissolved
in Water)である。
【0028】
前記発酵の第II段階では、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させて発酵を行う。
【0029】
このように発酵温度を低下させるのは、炭酸ガスを発酵液に溶け込ませるためであり、また酵母や米デンプン由来の固形分を沈殿させるためである。温度を低下させた後の発酵温度を前記範囲内にするのは、この温度範囲であれば前記目的を好適に達成することができるからである。温度低下後の発酵温度が前記範囲より高いと、炭酸ガスの発酵液への溶け込みが悪く、かつ酵母等の沈降が遅いので好ましくなく、温度低下後の発酵温度が前記範囲より低いと、発酵がほとんど停止するので好ましくない。
【0030】
発酵温度を2〜3日間かけて低下させるのは、除々に温度を低下させることにより酵母の発酵活性を維持することができるからである。温度低下期間が、前記日数より短いと、急激な温度の低下によって酵母の発酵活性が弱くなるので好ましくなく、前記日数より長いと、酵母や米デンプン由来の固形分の沈降が遅れるので好ましくない。
【0031】
前記発酵の第II段階終了時点の発酵液は、例えば、アルコール濃度が5.0〜6.0%であり、日本酒度が−70〜−85であり、酸度が3.8〜4.8であり、炭酸ガス圧力が1.5〜2.5炭酸ガスボリュームである。
【0032】
前記発酵の第II段階における降温速度は、前記要件を満たす限り特に制限はなく、例えば0.2〜0.4℃/hとすることができる。また前記降温速度は、一定である必要はなく、第II段階の期間中に変化してもよい。
【0033】
第III段階では、第II段階終了時点の温度1〜3℃で3〜6日間発酵が行われる。
【0034】
このように第II段階終了時点の温度で3〜6日間発酵を行うのは、発酵に使用した酵母に起因するオリを沈降させるためであり、また炭酸ガスを発酵液へ溶け込ませ、かつ脂肪酸エステル及び高級アルコール生産を行わせるためである。第III段階の発酵期間が前記期間より短いと、炭酸ガスの発酵液への溶け込みが悪く、脂肪酸エステル等の生産量が少なくなるので好ましくなく、前記期間より長いと、アルコール濃度が高くなりすぎるので好ましくない。
【0035】
前記発酵の第III段階終了時点の発酵液は、例えば、アルコール濃度が5.5〜7.5%であり、日本酒度が−65〜−80であり、酸度が4.0〜5.0であり、炭酸ガス圧力が2.0〜3.5炭酸ガスボリュームである。
【0036】
(4)発泡性清酒
前記第I〜III段階から成る発酵により得られた発酵液は、この発酵液の好適な性質を損なわない適宜の方法により発泡性清酒にされる。前記方法としては、例えば、前記発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器、例えば瓶に詰め、瓶内発酵を行った後、その瓶内発酵液の入った瓶を温湯に漬けて殺菌を行う方法(以下「第1の方法」という)及び前記発酵液を漉して得られた漉し発酵液を瓶詰めし、直ちにその漉し発酵液の入った瓶を温湯に漬けて殺菌を行う方法(以下「第2の方法」という)を挙げることができる。前記発酵液からは、例えば前記第1の方法又は第2の方法のいずれの方法を採用するにしても、透明度が高く、いわゆる濁り酒ではない発泡性清酒を得ることができる。
【0037】
前記第1の方法は、瓶内発酵を行う方法である。瓶内発酵を行うのは、炭酸ガス圧力をさらに高めるためである。
【0038】
前記第1の方法に使用する前記発酵液としては、アルコール濃度が5.5〜6.5%であり、日本酒度が−65〜−80であり、酸度が4.0〜5.0であり、炭酸ガス圧力が1.0〜2.5炭酸ガスボリュームである発酵液が好適である。このような発酵液であると、最終製品において各成分バランスが最も優れるように瓶内発酵を制御することが容易であるという利点がある。
【0039】
前記第1の方法においては、まず前記発酵液に漉し処理を施す。この漉し処理は、例えば酒袋を用いて漉すことにより行うことができる。
【0040】
前記漉し処理により得られた漉し発酵液は、瓶詰めにされ、密封される。この状態で、瓶内発酵が行われる。前記瓶内発酵の温度は、12〜22℃であることが好ましい。前記瓶内発酵温度が前記範囲内であると、アルコール濃度、日本酒度及び酸度が目標値となるように制御することが容易であるという利点がある。前記瓶内発酵の時間は、3〜6日であることが好ましい。前記瓶内発酵時間が前記範囲内であると、炭酸ガス圧力が目標値となるように制御することが容易であるという利点がある。
【0041】
前記瓶内発酵によって得られた瓶内発酵液の入った瓶を温湯に漬けて殺菌を行い、発酵を終了させる。前記殺菌条件としては、例えば60〜70℃で3〜15分間とすることができる。
【0042】
以上により、第1の方法によって発泡性清酒が製造される。前記第1の方法によって製造された発泡性清酒は、フルーティ感に優れ、炭酸ガス圧力が高いことにより、清涼感及びサッパリ感がとりわけ優れるという特徴がある。
【0043】
前記第1の方法によって製造された発泡性清酒は、例えばアルコール濃度が6.0〜8.0%であり、日本酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.5であり、炭酸ガス圧力が3.0〜4.0炭酸ガスボリュームである。
【0044】
前記第2の方法は、瓶内発酵を行わない方法である。
前記第2の方法に使用する前記発酵液としては、アルコール濃度が6.0〜7.5%であり、日本酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.0であり、炭酸ガス圧力が3.0〜3.5炭酸ガスボリュームである発酵液が好適である。このような発酵液であると、成分バランスに優れ、かつ瓶詰め後も適度な炭酸ガス圧力を維持することができるという利点がある。
【0045】
前記第2の方法においては、まず前記発酵液に漉し処理を施す。この漉し処理は、前記第1の方法における漉し処理と同様である。
【0046】
前記漉し処理により得られた漉し発酵液は、瓶詰めされ、密封され、直ちにその漉し発酵液の入った瓶を温湯に漬けて殺菌を行う。前記殺菌の条件は、前記第1の方法における殺菌の条件と同様である。
【0047】
以上により、第2の方法によって発泡性清酒が製造される。前記第2の方法によって製造された発泡性清酒は、フルーティ感及びサッパリ感に優れているという特徴がある。
【0048】
前記第2の方法によって製造された発泡性清酒は、例えばアルコール濃度が6.0〜7.5%であり、日本酒度が−65〜−75であり、酸度が4.5〜5.0であり、炭酸ガス圧力が2.5〜3.0炭酸ガスボリュームである。
(5)作用
この発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、糖化と発酵とを並行して行う並行複発酵形式ではなく、まず糖化を単独で行い、糖化終了後に発酵を開始する単行複発酵形式を採用する。
【0049】
従来の清酒製造において通常採用される並行複発酵においては、米麹が糖化及び発酵の長期間、例えば20〜30日間にわたり清酒原液中に存在し続けるので、その期間中に米麹の有する様々な香味物質が多量に放出される結果、並行複発酵によって得られる清酒には、一般に嫌われる香りの原因となる米麹由来の香味物質が多量に含まれる。この米麹由来の嫌われる香りとしては、例えば飲酒後の呼気などが有するいわゆる熟し臭や、火入れ後に時間の経過とともに発生される老香などがある。
【0050】
これに対しこの発明に係る発泡性清酒の製造方法が採用する単行複発酵では、糖化終了後直ちに米麹が清酒原液から除去されるので、清酒原液における米麹の存在時間を大幅に短縮することができ、その結果並行複発酵の場合に比較して、清酒に含まれる、嫌われる香りの原因となる米麹由来の香味物質の量を大幅に減少させることができる。
【0051】
このためこの発明に係る発泡性清酒の製造方法のよって製造される発泡性清酒は、従来の清酒に特有の、前記米麹に由来する香りが、飲酒者が気にならないほど少ない。
【0052】
また単行複発酵を採用すると、米と麹及び酵母との接触時間が短いので、製造される発泡性清酒の品質に対して、麹及び酵母の寄与する割合が小さくなり、原料として使用する米が寄与する割合が大きくなる。つまり単行複発酵では、原料米の品質の良否が発泡性清酒の品質に大きく関与し、原料米の品質が良いほど、香味等の品質の優れた発泡性清酒を得ることができるという効果がある。
【0053】
さらにこの発明に係る発泡性清酒の製造方法は、前記単行複発酵を前記のような特定の条件の下で行うことにより、従来の単行複発酵により製造された発泡性清酒にない好ましい風味を有する発泡性清酒を製造することができる。
【0054】
すなわち、この発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、糖化液に漉し処理を施して清澄糖化液を得て、この清澄糖化液を用いて発酵を行う。このような清澄糖化液を発酵することにより製造した発泡性清酒は、白濁状の糖化液を発酵することにより製造した発泡性清酒に比較して、雑味が少なく、サッパリ感に優れるという好ましい特徴がある。
【0055】
また、この発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、前記第I〜III段階から成る発酵を行う。このような前記第I〜III段階から成る発酵を行うことにより製造した発泡性清酒は、このような前記第I〜III段階から成る発酵以外の発酵を行うことにより製造した発泡性清酒に比較して、脂肪酸エステル及び高級アルコール等の好ましい香気成分が多く含まれることにより、フルーティ感に優れるという好ましい特徴がある。
【0056】
前記発酵液から例えば前記第1の方法又は第2の方法により得られる発泡性清酒は、現代の嗜好に適合した、フルーティで、サッパリ感のある、従来にない香味を有する低アルコールの発泡性清酒である。
【0057】
【実施例】
(実施例1)
▲1▼糖化
蒸し米380kg、米麹160kg及び糖化酵素剤380gに水972lを添加し、常法に従い、55℃で16時間糖化を行い、糖化液を製造した。この糖化液のボーメは15.0であった。この糖化液に乳酸3740mlを添加してよく攪拌し、品温を35℃に低下させた。この乳酸添加糖化液の体積は、1645lであった。
【0058】
▲2▼漉し処理
前記乳酸添加糖化液を、直ちに圧濾機を用いて一昼夜かけて漉した。得られた漉し糖化液の体積は1100lであり、ボーメは15であり、酸度は2.7であった。
【0059】
この漉し糖化液は、清澄糖化液であり、430nmにおける吸光度が0.04であった。
【0060】
▲3▼密閉タンク内発酵
前記漉し糖化液に水及び乳酸を添加し、体積1269l、ボーメ13.2、酸度3.1に調整した後、培養酵母9lを添加して、密閉タンク内で発酵を行った。最初の6日間は20℃で発酵を行った。その後2日間かけて品温を2℃に低下させながら発酵を行った。その後3日間2℃で発酵を行った。すなわち前記第I段階を6日間、第II段階を2日間、第III段階を3日間とした。この密閉タンク内発酵の過程を表1に示した。なお「品温」は、その日の終了時点の品温を示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003798689
【0062】
▲4▼瓶内発酵
前記密閉タンク内発酵で得られた発酵液を酒袋にて漉し、得られた漉し発酵液を180ml容の瓶に詰め、密封し、瓶内発酵を5日間行った。この瓶内発酵の過程を表2に示した。なお「品温」は、その日の終了時点の品温を示す。
瓶内発酵終了後、前記瓶内発酵によって得られた瓶内発酵液の入った瓶を温湯に漬けて65℃で5分間殺菌を行った。
以上により発泡性清酒が得られた。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0063】
【表2】
Figure 0003798689
【0064】
(比較例1)
実施例1における「▲1▼糖化」と同様にして乳酸添加糖化液を製造し、これを直ちに網目の大きさが0.5mm×0.5mmのステンレス網して漉した。得られた漉し糖化液の体積は1230lであり、ボーメは15.5であり、酸度は2.7であった。この漉し糖化液は、白濁した外観上濁り酒様の液体、すなわち白濁糖化液であった。
【0065】
以下実施例1における「▲3▼密閉タンク内発酵」及び「▲4▼瓶内発酵」と同様の操作を行い、発泡性清酒を得た。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0066】
(比較例2)
実施例1における「▲1▼糖化」及び「▲2▼漉し処理」と同様にして漉し糖化液を製造し、この漉し糖化液に実施例1における「▲3▼密閉タンク内発酵」で示したように水及び乳酸を添加した後、得られた液に培養酵母9lを添加して、密閉タンク内で20℃にて8日間発酵を行った。
以下実施例1における「▲4▼瓶内発酵」と同様の操作を行い、発泡性清酒を得た。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0067】
(比較例3)
蒸し米380kg、米麹160kg、培養酵母9l及び糖化酵素剤380gに水972lを添加し、常法に従い、密閉タンク内で10℃にて14日間糖化及び発酵を行った。得られたもろみを圧搾機にかけて、清澄な漉し発酵液を得た。 以下実施例1における「▲4▼瓶内発酵」と同様の操作を行い、発泡性清酒を得た。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0068】
【表3】
Figure 0003798689
【0069】
(官能評価)
前記実施例及び比較例により得られた各発泡性清酒に対して官能評価試験を10人のパネラーにより実施した。評価項目は、香り、味、フルーティ感、サッパリ感及び総合評価の5項目とした。評価基準は以下の通りとし、前記評価項目ごとに、10人のパネラーにより得られた評価値から平均評価値を算出した。その結果を表4に示した。
【0070】
官能 評価値
優れている 1
どちらともいえない 2
劣っている 3
【0071】
【表4】
Figure 0003798689
【0072】
表4の結果からわかるように、この発明に係る発泡性清酒の製造方法により製造された発泡性清酒は、この発明に係る発泡性清酒の製造方法以外の方法により製造された発泡性清酒に比較して、品質評価が圧倒的に高い。このことは、この発明に係る発泡性清酒の製造方法が、米、米麹及び水を用いた清酒の製造方法でありながら、その製造工程の初期段階において単行複発酵を行うことにより麹由来の味成分を除去し、また高温発酵と低温発酵とを組み合わせた発酵形式を採ることにより好適な香味成分の生産量を高めること等により、得られる発泡性清酒の品質が飛躍的に向上することをよく表している。
【0073】
【発明の効果】
この発明に係る発泡性清酒の製造方法は、単行複発酵を採用するので、清酒特有の嫌われる香りの原因となる米麹由来の香味物質の量を大幅に減少させることができる。
【0074】
さらにこの発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、清澄糖化液を用いて、前記第I〜III発酵から成る発酵を行うことにより、フルーティで、サッパリ感のある、従来にない香味を有する低アルコールの発泡性清酒を製造することができる。
【0075】
この発明に係る発泡性清酒の製造方法により製造された発泡性清酒は、現代の嗜好に適合した発泡性清酒である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明に係る発泡性清酒の製造方法が採用する発酵条件を示した図である。

Claims (2)

  1. 米に米麹を添加して糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させることにより得られた発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、12〜22℃で3〜6日間容器内発酵を行った後、その容器内発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を行うことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
  2. 米に米麹を添加して糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させることにより得られた発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、12〜22℃で3〜6日間容器内発酵を行った後、その容器内発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を行うことにより製造され、かつアルコール濃度が6〜8%であり、日本酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.5であり、炭酸ガス圧力が2.5〜4.0炭酸ガスボリュームであることを特徴とする発泡性清酒。
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