JP2003189841A - 発泡性清酒及びその製造方法 - Google Patents

発泡性清酒及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 麹由来の不快な香り及び味がな
く、フルーティで、サッパリ感のある低アルコールの発
泡性清酒及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】 米に米麹を添加して糖化して得ら
れた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に
酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜22で6〜1
0日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃
まで漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵さ
せることを特徴とする発泡性清酒の製造方法及び発泡性
清酒。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、発泡性清酒及び
その製造方法に関し、さらに詳しくは、麹由来の不快な
香り及び味がなく、フルーティで、サッパリ感のある低
アルコールの発泡性清酒及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、清酒の需要が減少傾向にある。こ
の需要減少の理由の一つとして、実際に飲まれる段階で
の清酒のアルコール濃度が高すぎることが指摘されてい
る。清酒のアルコール濃度は16%前後であり、清酒は
通常水等で割ることなく飲まれるので、飲用時における
アルコール濃度も16%前後である。これに対し、例え
ばウイスキーや焼酎は、そのアルコール濃度は清酒より
も高いが、通常水等で割って飲まれるので、飲用時にお
けるアルコール濃度は一般に10%前後であって、清酒
のそれより低い。
【0003】清酒において、単にアルコール濃度を14
〜15%以下に低下させると、味の調和がくずれ、水っ
ぽくなり、著しく嗜好性が低下する。したがって前記理
由に対応させて単に清酒のアルコール濃度を下げるだけ
では、清酒の需要増大には繋がらないと考えられる。
【0004】清酒の需要減少の他の理由として、清酒特
有の、麹に由来する香味が近年の嗜好に適合しないこと
が指摘されている。すなわち近年の消費者層、特に女性
層や若年層においては、酒類に対してもライトな、ソフ
トな風味、例えばフルーティで、サッパリ感のある風味
が好まれるが、清酒の麹由来の前記香味は、このような
近年好まれる風味ではない。
【0005】このような事情から、近年の嗜好性に合っ
た清酒、特に清涼感を持たせた低アルコール発泡性清酒
の製造方法の開発が盛んに行われるようになった。
【0006】このような製造方法としては、例えば、従
来の清酒製造において行われる並行複発酵ではなく、単
行発酵により低アルコール発泡性清酒を製造する方法
(特開平8−238084号公報参照)、及び多酸存在
下で糖化と発酵とを行う低アルコール発泡性清酒の製造
方法(特開2000−189148号公報参照)等が開
示されている。
【0007】しかしこれらの製造方法によって得られる
低アルコール発泡性清酒は、従来の清酒に比べれば口当
たりがよく、飲みやすくなっているが、サッパリ感及び
フルーティ感が不充分であり、未だ近年の嗜好性に適合
した清酒であるとは言えず、清酒の需要増大を促し得る
ものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、従来の発
泡性清酒及びその製造方法が有する前記欠点を解消する
ことである。すなわちこの発明の目的は、麹由来の不快
な香り及び味がなく、フルーティで、サッパリ感のある
低アルコールの発泡性清酒及びその製造方法を提供する
ことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
のこの発明は、米に米麹を添加して糖化して得られた糖
化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を
添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日
間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで
漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させる
ことを特徴とする発泡性清酒の製造方法であり、前記の
発酵により得られた発酵液を漉して得られた漉し発酵液
を容器に詰め、12〜22℃で3〜6日間容器内発酵を
行った後、その容器内発酵液の入った容器を温湯に漬け
て殺菌を行うことを特徴とする発泡性清酒の製造方法で
あり、前記の発酵により得られた発酵液を漉して得られ
た漉し発酵液を容器に詰め、直ちにその漉し発酵液の入
った容器を温湯に漬けて殺菌を行うことを特徴とする発
泡性清酒の製造方法であり、また、アルコール濃度が6
〜8%であり、日本酒度が−60〜−75であり、酸度
が4.5〜5.5であり、炭酸ガス圧力が2.5〜4.
0炭酸ガスボリュームであることを特徴とする発泡性清
酒である。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明は、米に米麹を添加して
糖化して得られた糖化液を漉して清澄糖化液を得、その
清澄糖化液に酵母を添加して、密閉タンク内で、10〜
22℃で6〜10日間発酵させ、2〜3日間かけて発酵
温度を1〜3℃まで漸次低下させ、さらにその温度で3
〜6日間発酵させる発泡性清酒の製造方法である。
【0011】以下、前記製造方法を詳説する。
【0012】(1)糖化 常法に従って蒸し米及び米麹を製造する。この蒸し米及
び米麹に水を添加し、糖化を行い、糖化液を製造する。
【0013】前記糖化に使用する蒸し米、米麹及び水の
量は、発酵を行うことのできる糖化液を得ることができ
れば時に制限はなく、例えば蒸し米100重量部に対し
て、米麹40〜60重量部、水200〜250重量部と
することができる。
【0014】糖化温度は、発酵を行うことのできる糖化
液を得ることができれば特に制限はないが、53〜55
℃であることが好ましい。糖化温度がこの範囲内である
と、糖化酵素の働きを最適ならしめ、雑味のない糖化液
を得ることができるという利点がある。
【0015】糖化時間は、発酵を行うことのできる糖化
液を得ることができれば時に制限はないが、20時間以
内、特に12〜16時間であることが好ましい。糖化時
間がこの範囲内であると、米のデンプンをほぼ100%
糖化させることができ、かつ麹由来の好まれざる香味が
発生しにくいという利点がある。
【0016】前記糖化液は、ボーメが12〜14である
と、発酵が良好に行われ、風味のよい発泡性清酒が製造
しやすくなる点で好ましい。
【0017】また前記糖化においては、この発明の目的
が達成される限りにおいて、糖化を促進させるために、
デンプン分解酵素剤、例えばアミラーゼを米麹とともに
使用することもできる。
【0018】(2)漉し処理 前記糖化操作の終了後、前記糖化操作により得られた糖
化液に対して、直ちに漉し処理を行う。ここで行う漉し
処理は、例えば清酒醪用圧濾機を用いて行うことができ
る。このような条件で前記糖化液に対して漉し処理を行
うと、前記糖化で使用した米麹が濾別され、清澄糖化液
を速やかにかつ高収率で得ることができる。なおここで
いう「清澄」とは、白濁ではないことを意味する。した
がって前記清澄糖化液は、白濁でなければ、例えば多少
の浮遊物又は沈殿物を含有していてもかまわない。前記
清澄糖化液は、例えば430nmにおける吸光度が0.
1以下である。
【0019】この発明に係る発泡性清酒の製造方法にお
いては、糖化酵素を失活させるために前記糖化液又は清
澄糖化液に加熱処理を行ってもよく、またそのような加
熱処理を行わなくてもよい。
【0020】この発明に係る発泡性清酒においては、前
記糖化操作の終了後、前記漉し操作を行う前に前記糖化
液に、酸度が3〜4になるように、乳酸を添加する。こ
のように乳酸添加を行うと、野生酵母、カビ及びバクテ
リア等の繁殖を抑制することができ、製造管理が容易に
なる。また乳酸添加の前又は後に65〜70℃で加熱殺
菌を行ってもよい。
【0021】(3)発酵 前記漉し処理により得られた清澄糖化液を冷却し、それ
に酵母を添加して、密閉タンク内で発酵を行う。
【0022】前記酵母の種類としては、発酵が好適に行
われる限り特に制限はなく、例えば吟醸清酒用酵母を使
用することができる。
【0023】前記密閉タンクとしては、発泡性清酒を製
造することができれば特に制限はなく、公知の密閉タン
クを使用することができる。
【0024】前記発酵は、図1に示したように、第I〜
III段階の三段階に分けて行われる。前記発酵の第I段
階では、10〜22℃で6〜10日間発酵が行われる。
この温度範囲で発酵を行うと、エタノールの生産が好適
に進行するとともに、発泡性清酒にとって好ましい香気
成分、例えば脂肪酸エステル及び高級アルコールが好適
に生成される。前記温度範囲よりも発酵温度が高いと、
エタノールの生産量が増大するが、前記の好ましい香気
成分の生産量が減少するので好ましくない。前記温度範
囲よりも発酵温度が低いと、エタノール生産に時間がか
かり過ぎるとともに、好ましい香気成分の生産量も少な
くなるので好ましくない。
【0025】発酵日数が前記日数であると、必要充分な
量のエタノールを生産することができる。発酵日数が前
記日数より短いと、発酵液中のエタノール量が不足し、
発酵日数が前記日数より長いと、発酵液中のエタノール
量が過大になるので好ましくない。
【0026】前記発酵の第I段階では、発酵中に発生さ
れた炭酸ガスは、その一部が発酵液中に溶け込む。
【0027】前記発酵の第I段階終了時点の発酵液は、
例えば、アルコール濃度が4.5〜5.5%であり、日
本酒度が−75〜−90であり、酸度が3.5〜4.5
であり、炭酸ガス圧力が1〜2炭酸ガスボリューム(Vo
lumes of CO2 Gas Dissolvedin Water)である。
【0028】前記発酵の第II段階では、2〜3日間かけ
て発酵温度を1〜3℃まで漸次低下させて発酵を行う。
【0029】このように発酵温度を低下させるのは、炭
酸ガスを発酵液に溶け込ませるためであり、また酵母や
米デンプン由来の固形分を沈殿させるためである。温度
を低下させた後の発酵温度を前記範囲内にするのは、こ
の温度範囲であれば前記目的を好適に達成することがで
きるからである。温度低下後の発酵温度が前記範囲より
高いと、炭酸ガスの発光液への溶け込みが悪く、かつ酵
母等の沈降が遅いので好ましくなく、温度低下後の発酵
温度が前記範囲より低いと、発酵がほとんど停止するの
で好ましくない。
【0030】発酵温度を2〜3日間かけて低下させるの
は、除々に温度を低下させることにより酵母の発酵活性
を維持することができるからである。温度低下期間が、
前記日数より短いと、急激な温度の低下によって酵母の
発酵活性が弱くなるので好ましくなく、前記日数より長
いと、酵母や米デンプン由来の固形分の沈降が遅れるの
で好ましくない。
【0031】前記発酵の第II段階終了時点の発酵液は、
例えば、アルコール濃度が5.0〜6.0%であり、日
本酒度が−70〜−85であり、酸度が3.8〜4.8
であり、炭酸ガス圧力が1.5〜2.5炭酸ガスボリュ
ームである。
【0032】前記発酵の第II段階における降温速度は、
前記要件を満たす限り特に制限はなく、例えば0.2〜
0.4℃/hとすることができる。また前記降温速度
は、一定である必要はなく、第II段階の期間中に変化し
てもよい。
【0033】第III段階では、第II段階終了時点の温度
1〜3℃で3〜6日間発酵が行われる。
【0034】このように第II段階終了時点の温度で3〜
6日間発酵を行うのは、発酵に使用した酵母に起因する
オリを沈降させるためであり、また炭酸ガスを発酵液へ
溶け込ませ、かつ脂肪酸エステル及び高級アルコール生
産を行わせるためである。第III段階の発酵期間が前記
期間より短いと、炭酸ガスの発酵液への溶け込みが悪
く、脂肪酸エステル等の生産量が少なくなるので好まし
くなく、前記期間より長いと、アルコール濃度が高くな
りすぎるので好ましくない。
【0035】前記発酵の第III段階終了時点の発酵液
は、例えば、アルコール濃度が5.5〜7.5%であ
り、日本酒度が−65〜−80であり、酸度が4.0〜
5.0であり、炭酸ガス圧力が2.0〜3.5炭酸ガス
ボリュームである。
【0036】(4)発泡性清酒 前記第I〜III段階から成る発酵により得られた発酵液
は、この発酵液の好適な性質を損なわない適宜の方法に
より発泡性清酒にされる。前記方法としては、例えば、
前記発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器、例えば
瓶に詰め、瓶内発酵を行った後、その瓶内発酵液の入っ
た瓶を温湯に漬けて殺菌を行う方法(以下「第1の方
法」という)及び前記発酵液を漉して得られた漉し発酵
液を瓶詰めし、直ちにその漉し発酵液の入った瓶を温湯
に漬けて殺菌を行う方法(以下「第2の方法」という)
を挙げることができる。前記発酵液からは、例えば前記
第1の方法又は第2の方法のいずれの方法を採用するに
しても、透明度が高く、いわゆる濁り酒ではない発泡性
清酒を得ることができる。
【0037】前記第1の方法は、瓶内発酵を行う方法で
ある。瓶内発酵を行うのは、炭酸ガス圧力をさらに高め
るためである。
【0038】前記第1の方法に使用する前記発酵液とし
ては、アルコール濃度が5.5〜6.5%であり、日本
酒度が−65〜−80であり、酸度が4.0〜5.0で
あり、炭酸ガス圧力が1.0〜2.5炭酸ガスボリュー
ムである発酵液が好適である。このような発酵液である
と、最終製品において各成分バランスが最も優れるよう
に瓶内発酵を制御することが容易であるという利点があ
る。
【0039】前記第1の方法においては、まず前記発酵
液に漉し処理を施す。この漉し処理は、例えば酒袋を用
いて漉すことにより行うことができる。
【0040】前記漉し処理により得られた漉し発酵液
は、瓶詰めにされ、密封される。この状態で、瓶内発酵
が行われる。前記瓶内発酵の温度は、12〜22℃であ
ることが好ましい。前記瓶内発酵温度が前記範囲内であ
ると、アルコール濃度、日本酒度及び酸度が目標値とな
るように制御することが容易であるという利点がある。
前記瓶内発酵の時間は、3〜6日であることが好まし
い。前記瓶内発酵時間が前記範囲内であると、炭酸ガス
圧力が目標値となるように制御することが容易であると
いう利点がある。
【0041】前記瓶内発酵によって得られた瓶内発酵液
の入った瓶を温湯に漬けて殺菌を行い、発酵を終了させ
る。前記殺菌条件としては、例えば60〜70℃で3〜
15分間とすることができる。
【0042】以上により、第1の方法によって発泡性清
酒が製造される。前記第1の方法によって製造された発
泡性清酒は、フルーティ感に優れ、炭酸ガス圧力が高い
ことにより、清涼感及びサッパリ感がとりわけ優れると
いう特徴がある。
【0043】前記第1の方法によって製造された発泡性
清酒は、例えばアルコール濃度が6.0〜8.0%であ
り、日本酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜
5.5であり、炭酸ガス圧力が3.0〜4.0炭酸ガス
ボリュームである。
【0044】前記第2の方法は、瓶内発酵を行わない方
法である。前記第2の方法に使用する前記発酵液として
は、アルコール濃度が6.0〜7.5%であり、日本酒
度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.0であ
り、炭酸ガス圧力が3.0〜3.5炭酸ガスボリューム
である発酵液が好適である。このような発酵液である
と、成分バランスに優れ、かつ瓶詰め後も適度な炭酸ガ
ス圧力を維持することができるという利点がある。
【0045】前記第2の方法においては、まず前記発酵
液に漉し処理を施す。この漉し処理は、前記第1の方法
における漉し処理と同様である。
【0046】前記漉し処理により得られた漉し発酵液
は、瓶詰めされ、密封され、直ちにその漉し発酵液の入
った瓶を温湯に漬けて殺菌を行う。前記殺菌の条件は、
前記第1の方法における殺菌の条件と同様である。
【0047】以上により、第2の方法によって発泡性清
酒が製造される。前記第2の方法によって製造された発
泡性清酒は、フルーティ感及びサッパリ感に優れている
という特徴がある。
【0048】前記第2の方法によって製造された発泡性
清酒は、例えばアルコール濃度が6.0〜7.5%であ
り、日本酒度が−65〜−75であり、酸度が4.5〜
5.0であり、炭酸ガス圧力が2.5〜3.0炭酸ガス
ボリュームである。 (5)作用 この発明に係る発泡性清酒の製造方法においては、糖化
と発酵とを並行して行う並行複発酵形式ではなく、まず
糖化を単独で行い、糖化終了後に発酵を開始する単行複
発酵形式を採用する。
【0049】従来の清酒製造において通常採用される並
行複発酵においては、米麹が糖化及び発酵の長期間、例
えば20〜30日間にわたり清酒原液中に存在し続ける
ので、その期間中に米麹の有する様々な香味物質が多量
に放出される結果、並行複発酵によって得られる清酒に
は、一般に嫌われる香りの原因となる米麹由来の香味物
質が多量に含まれる。この米麹由来の嫌われる香りとし
ては、例えば飲酒後の呼気などが有するいわゆる熟し臭
や、火入れ後に時間の経過とともに発生される老香など
がある。
【0050】これに対しこの発明に係る発泡性清酒の製
造方法が採用する単行複発酵では、糖化終了後直ちに米
麹が清酒原液から除去されるので、清酒原液における米
麹の存在時間を大幅に短縮することができ、その結果並
行複発酵の場合に比較して、清酒に含まれる、嫌われる
香りの原因となる米麹由来の香味物質の量を大幅に減少
させることができる。
【0051】このためこの発明に係る発泡性清酒の製造
方法のよって製造される発泡性清酒は、従来の清酒に特
有の、前記米麹に由来する香りが、飲酒者が気にならな
いほど少ない。
【0052】また単行複発酵を採用すると、米と麹及び
酵母との接触時間が短いので、製造される発泡性清酒の
品質に対して、麹及び酵母の寄与する割合が小さくな
り、原料として使用する米が寄与する割合が大きくな
る。つまり単行複発酵では、原料米の品質の良否が発泡
性清酒の品質に大きく関与し、原料米の品質が良いほ
ど、香味等の品質の優れた発泡性清酒を得ることができ
るという効果がある。
【0053】さらにこの発明に係る発泡性清酒の製造方
法は、前記単行複発酵を前記のような特定の条件の下で
行うことにより、従来の単行複発酵により製造された発
泡性清酒にない好ましい風味を有する発泡性清酒を製造
することができる。
【0054】すなわち、この発明に係る発泡性清酒の製
造方法においては、糖化液に漉し処理を施して清澄糖化
液を得て、この清澄糖化液を用いて発酵を行う。このよ
うな清澄糖化液を発酵することにより製造した発泡性清
酒は、白濁状の糖化液を発酵することにより製造した発
泡性清酒に比較して、雑味が少なく、サッパリ感に優れ
るという好ましい特徴がある。
【0055】また、この発明に係る発泡性清酒の製造方
法においては、前記第I〜III段階から成る発酵を行
う。このような前記第I〜III段階から成る発酵を行う
ことにより製造した発泡性清酒は、このような前記第I
〜III段階から成る発酵以外の発酵を行うことにより製
造した発泡性清酒に比較して、脂肪酸エステル及び高級
アルコール等の好ましい香気成分が多く含まれることに
より、フルーティ感に優れるという好ましい特徴があ
る。
【0056】前記発酵液から例えば前記第1の方法又は
第2の方法により得られる発泡性清酒は、現代の嗜好に
適合した、フルーティで、サッパリ感のある、従来にな
い香味を有する低アルコールの発泡性清酒である。
【0057】
【実施例】(実施例1) 糖化 蒸し米380kg、米麹160kg及び糖化酵素剤38
0gに水972lを添加し、常法に従い、55℃で16
時間糖化を行い、糖化液を製造した。この糖化液のボー
メは15.0であった。この糖化液に乳酸3740ml
を添加してよく攪拌し、品温を35℃に低下させた。こ
の乳酸添加糖化液の体積は、1645lであった。
【0058】漉し処理 前記乳酸添加糖化液を、直ちに圧濾機を用いて一昼夜か
けて漉した。得られた漉し糖化液の体積は1100lで
あり、ボーメは15であり、酸度は2.7であった。
【0059】この漉し糖化液は、清澄糖化液であり、4
30nmにおける吸光度が0.04であった。
【0060】密閉タンク内発酵 前記漉し糖化液に水及び乳酸を添加し、体積1269
l、ボーメ13.2、酸度3.1に調整した後、培養酵
母9lを添加して、密閉タンク内で発酵を行った。最初
の6日間は20℃で発酵を行った。その後2日間かけて
品温を2℃に低下させながら発酵を行った。その後3日
間2℃で発酵を行った。すなわち前記第I段階を6日
間、第II段階を2日間、第III段階を3日間とした。こ
の密閉タンク内発酵の過程を表1に示した。なお「品
温」は、その日の終了時点の品温を示す。
【0061】
【表1】
【0062】瓶内発酵 前記密閉タンク内発酵で得られた発酵液を酒袋にて漉
し、得られた漉し発酵液を180ml容の瓶に詰め、密
封し、瓶内発酵を5日間行った。この瓶内発酵の過程を
表2に示した。なお「品温」は、その日の終了時点の品
温を示す。瓶内発酵終了後、前記瓶内発酵によって得ら
れた瓶内発酵液の入った瓶を温湯に漬けて65℃で5分
間殺菌を行った。以上により発泡性清酒が得られた。こ
の発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0063】
【表2】
【0064】(比較例1)実施例1における「糖化」
と同様にして乳酸添加糖化液を製造し、これを直ちに網
目の大きさが0.5mm×0.5mmのステンレス網し
て漉した。得られた漉し糖化液の体積は1230lであ
り、ボーメは15.5であり、酸度は2.7であった。
この漉し糖化液は、白濁した外観上濁り酒様の液体、す
なわち白濁糖化液であった。
【0065】以下実施例1における「密閉タンク内発
酵」及び「瓶内発酵」と同様の操作を行い、発泡性清
酒を得た。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0066】(比較例2)実施例1における「糖化」
及び「漉し処理」と同様にして漉し糖化液を製造し、
この漉し糖化液に実施例1における「密閉タンク内発
酵」で示したように水及び乳酸を添加した後、得られた
液に培養酵母9lを添加して、密閉タンク内で20℃に
て8日間発酵を行った。以下実施例1における「瓶内
発酵」と同様の操作を行い、発泡性清酒を得た。この発
泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0067】(比較例3)蒸し米380kg、米麹16
0kg、培養酵母9l及び糖化酵素剤380gに水97
2lを添加し、常法に従い、密閉タンク内で10℃にて
14日間糖化及び発酵を行った。得られたもろみを圧搾
機にかけて、清澄な漉し発酵液を得た。以下実施例1に
おける「瓶内発酵」と同様の操作を行い、発泡性清酒
を得た。この発泡性清酒の諸性質を表3に示した。
【0068】
【表3】
【0069】(官能評価)前記実施例及び比較例により
得られた各発泡性清酒に対して官能評価試験を10人の
パネラーにより実施した。評価項目は、香り、味、フル
ーティ感、サッパリ感及び総合評価の5項目とした。評
価基準は以下の通りとし、前記評価項目ごとに、10人
のパネラーにより得られた評価値から平均評価値を算出
した。その結果を表4に示した。
【0070】 官能 評価値 優れている 1 どちらともいえない 2 劣っている 3
【0071】
【表4】
【0072】表4の結果からわかるように、この発明に
係る発泡性清酒の製造方法により製造された発泡性清酒
は、この発明に係る発泡性清酒の製造方法以外の方法に
より製造された発泡性清酒に比較して、品質評価が圧倒
的に高い。このことは、この発明に係る発泡性清酒の製
造方法が、米、米麹及び水を用いた清酒の製造方法であ
りながら、その製造工程の初期段階において単行複発酵
を行うことにより麹由来の味成分を除去し、また高温発
酵と低温発酵とを組み合わせた発酵形式を採ることによ
り好適な香味成分の生産量を高めること等により、得ら
れる発泡性清酒の品質が飛躍的に向上することをよく表
している。
【0073】
【発明の効果】この発明に係る発泡性清酒の製造方法
は、単行複発酵を採用するので、清酒特有の嫌われる香
りの原因となる米麹由来の香味物質の量を大幅に減少さ
せることができる。
【0074】さらにこの発明に係る発泡性清酒の製造方
法においては、清澄糖化液を用いて、前記第I〜III発酵
から成る発酵を行うことにより、フルーティで、サッパ
リ感のある、従来にない香味を有する低アルコールの発
泡性清酒を製造することができる。
【0075】この発明に係る発泡性清酒の製造方法によ
り製造された発泡性清酒は、現代の嗜好に適合した発泡
性清酒である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明に係る発泡性清酒の製造方法
が採用する発酵条件を示した図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 米に米麹を添加して糖化して得られた糖
    化液を漉して清澄糖化液を得、その清澄糖化液に酵母を
    添加して、密閉タンク内で、10〜22℃で6〜10日
    間発酵させ、2〜3日間かけて発酵温度を1〜3℃まで
    漸次低下させ、さらにその温度で3〜6日間発酵させる
    ことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載された発酵により得られ
    た発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、1
    2〜22℃で3〜6日間容器内発酵を行った後、その容
    器内発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を行うこと
    を特徴とする発泡性清酒の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載された発酵により得られ
    た発酵液を漉して得られた漉し発酵液を容器に詰め、直
    ちにその漉し発酵液の入った容器を温湯に漬けて殺菌を
    行うことを特徴とする発泡性清酒の製造方法。
  4. 【請求項4】 アルコール濃度が6〜8%であり、日本
    酒度が−60〜−75であり、酸度が4.5〜5.5で
    あり、炭酸ガス圧力が2.5〜4.0炭酸ガスボリュー
    ムであることを特徴とする発泡性清酒。
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