JP3797185B2 - 剥離性積層フィルムおよびそれを用いたセラミックグリーンシート用工程フィルム - Google Patents

剥離性積層フィルムおよびそれを用いたセラミックグリーンシート用工程フィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は剥離性積層フィルムに関するものであり、詳しくは加工工程において剥離性が必要となる工程用フィルムとして好適な剥離性積層フィルムに関するものである。さらに詳しくはセラミックグリーンシート用に好適に使用でき、使用済みの工程フィルムからポリエステルフィルムを容易に分離回収できる剥離性積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりポリエステルフィルムの表面に硬化性シリコーン樹脂膜などの離型層を設けた離型フィルムが、セラミックコンデンサー、セラミック基板、ドライフィルムレジストなどの電子部品製造用工程フィルムとして用いられている。
【0003】
とりわけポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とした離型フィルムは耐熱性、寸法安定性、平滑性、透明性、機械強度等に優れることから、例えば、セラミック積層コンデンサーやセラミック多層基板製造工程において、セラミックグリーンシート成形用工程フィルムとして大量に使用されている。
【0004】
このような工程フィルムは、該工程フィルム上に形成されたグリーンシートを剥離してセラミック積層体を作成した後は、工程フィルム上に残存したセラミック残渣とともに廃棄されるのが通常である。
【0005】
しかしながら、昨今の環境問題の高まりから、使用後の工程フィルムの再利用方法を構築することが求められている。
【0006】
ところが、セラミックが残存する工程フィルムをそのまま回収して使用しようとした場合、例えば、使用後の工程フィルムを再溶融してフィルムを製膜しようとした場合は、異物等を取り除く濾過工程でフィルターがセラミックによって目詰まりを起こし、結果として炉圧が上昇し、高精度な濾過ができなくなる。
【0007】
また、仮に濾過工程の問題が解決されたとしても、工程フィルム表面の硬化性シリコーン樹脂成分がポリエチレンテレフタレートに混入するため、溶融粘度の低下による機械物性の低下や製膜安定性の低下を招き、表面粗大突起や粗大欠点の発生、着色、押出時の異臭の発生等を抑制することが困難であり、実用的なフィルムとして再生することができない。
【0008】
また、他の用途、例えば杭やプランターなどの射出成形品、ブロー成型品などの比較的原料樹脂の純度が低くても適用可能な成形品として再生しようとした場合も、フィルムの場合と同様に着色や発泡、強度低下等の発生が避けられず、容易に再利用できないのが現状である。
【0009】
そこで、使用後の工程フィルムから、残存するセラミックや硬化性シリコーン樹脂膜を何らかの方法で除去し、フィルムとして再生することが考えられるが、現在考えられているいずれの方法によっても非常に多くの労力、コストが避けられず、またこれらの不純物を完全には除去できないため、実用化されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、上記の問題点を解決し、工程フィルムとして使用した後には、不要部分を容易に剥離して、純度の高いポリエステルフィルムのみを効率よく回収して、再生原料とすることができる剥離性積層フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の剥離性積層フィルムは、ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてなるポリエステル基材フィルムのポリエステル(A)層上にポリビニルアルコール層が形成されてなる積層フィルムであって、該ポリビニルアルコール層とポリエステル基材フィルムとの剥離強度が0.5mN/cm以上30mN/cm以下であることを特徴とす積層フィルムおよびそれを用いたセラミックグリーンシート用工程フィルムである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり工程フィルムとして使用した後に、容易にポリエステル基材フィルムのみを分離回収することができる工程フィルムについて鋭意検討した結果、ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてなるポリエステル基材フィルムのポリエステル(A)層上にポリビニルアルコール層が形成されてなる積層フィルムであって、該ポリビニルアルコール層とポリエステル基材フィルムとの剥離強度が0.5mN/cm以上30mN/cm以下であることを特徴とす積層フィルムとすることにより、かかる課題を一挙に解決できることを究明したものである。
【0013】
本発明の剥離性積層フィルムは、ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてなるポリエステル基材フィルムのポリエステル(A)層上にポリビニルアルコール層が形成されてなる積層フィルムであって、該ポリビニルアルコール層とポリエステル基材フィルムとの剥離強度が0.5mN/cm以上30mN/cm以下であることが肝要である。該剥離強度は好ましくは0.5mN/cm以上20mN/cm、より好ましくは0.5mN/cm以上10mN/cm以下である。剥離強度が0.5mN/cm未満であると、積層フィルムを巻き取る工程でポリビニルアルコール層が部分的に剥離したり、また、セラミックスラリーを塗布する工程でポリビニルアルコール層が部分的に剥離して、塗布むらが発生したりする恐れがあるので好ましくない。また、剥離強度が30mN/cmを越えると、ポリビニルアルコール層を剥離する工程で破れが発生したり、セラミックグリーンシートと一体で剥離する場合にしわが発生したり破れたりするので好ましくない。剥離強度を本発明の範囲とすることによってのみ、ポリビニルアルコール層がスムースに剥離でき、セラミックグリーンシートとの一体での剥離も可能となり、工程フィルムとして使用した後に、ポリビニルアルコール層およびその上のセラミック残渣を容易に分離することができ、クリーンなポリエステル基材フィルムのみを回収することができるものである。
【0014】
本発明におけるポリエステル基材フィルムを構成するポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とするポリエステルが好ましく使用される。
【0015】
かかるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸を用いることができ、芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等を用いることができる。また、脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。
【0016】
これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらにはヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0017】
また、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2′ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールが好ましく用いられる。これらのグリコール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0018】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、フィルムの成形性、取扱い性の向上を目的として、上記ポリエステルに、トリメリット酸、トリメシン酸、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多官能化合物やp−オキシ安息香酸等のオキシジカルボン酸等を共重合してもよい。
【0019】
本発明のポリエステルとして好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートとエチレンテレフタレートとの共重合体、ブチレンテレフタレートとヘキサメチレンテレフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体、エチレンテレフタレートとエチレン−2,6−ナフタレートとの共重合体およびこれらのブレンド物等を用いることができる。
【0020】
本発明におけるポリエステル基材フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、強度、剛性の点から10〜200μmが好ましく用いられる。
【0021】
本発明において、ポリビニルアルコール層の剥離強度を本発明の範囲内にするには、ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてポリエステル基材フィルムを形成し、該ポリエステル層(A)のワックス化合物の含有量を調整することによって達成することができる。ポリエステル層(A)にワックス化合物を含有していないかまたはその含有量が少な過ぎると、ポリビニルアルコール層との剥離力が強くなり過ぎる。また逆に、ワックス化合物の含有量が多すぎるとポリビニルアルコール層の剥離力が弱くなり過ぎる。
【0022】
本発明において、ワックス化合物としては、例えば、脂肪族カルボン酸化合物と脂肪族アルコール化合物とのエステル化合物や、脂肪族カルボン酸化合物と脂肪族アミン化合物とのアミド化合物などが使用でき、好ましくはワックスを構成する総炭素数が30〜120の化合物が好ましく、より好ましくは40〜100である。この様な化合物としては、例えば、ステアリルステアレート、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ペンタエリスリトールフルエステル、ベヘニルベヘネート、パルチルミリステート、ステアリルトリグリセリドといった脂肪族エステル等からなる合成あるいは天然ワックス等がポリエステルとの相溶性の点から好ましく用いられる。特に、ポリビニルアルコール層の剥離性の点から、カルナウバワックスを添加することが好ましく、中でも精製カルナウバワックスを使用することが好ましい。フィルム中におけるワックス化合物の添加量は、0.1〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜1重量%、特に好ましくは0.3〜0.8重量%である。
【0023】
本発明におけるポリエステルにワックス化合物を添加含有する方法は特に限定されないが、ワックス化合物の分散性を向上させ安定した性能を発現させる点やフィルムを製膜する工程での汚れを抑制する点から下記の様な重合工程で添加する方法が好ましい。
(1)ポリエステル重合時にワックス化合物を添加する方法。
(2)ワックス化合物を多量に添加したマスターポリマー(ワックスマスターポリエステル)を重合によって製造し、ワックス化合物を含有しないもしくは、少量含有するポリエステル(希釈ポリエステル)とを所定量混合し、混練する方法。
【0024】
なお、本発明において、ワックス化合物としてカルナウバワックスを添加したポリエステルを存在させる場合には、特にゲルマニウム触媒を使用して重合することが分散性の向上の点から特に好ましく、ゲルマニウム元素を1〜200ppm含有していることが好ましく、より好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは20〜80ppmである。また(2)の方法でフィルムを得る場合、カルナウバワックスマスターポリマーは上述の通りゲルマニウム触媒を使用することが好ましいが、希釈ポリエステルはゲルマニウム触媒に限定されるものではない。従って、ワックスをポリマー中に添加する調整方法やマスターポリマーを使用する方法や複合等のフィルム構成に依存するが、ゲルマニウム元素はフィルム中に0.1〜200ppm含有することが好ましく、より好ましくは1〜200ppm、一層好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは20〜80ppmである。
【0025】
本発明のポリエステル基材フィルムの構成としては、もちろん単層(A層のみ)であってもよいが、A/Bの2層、A/B/AあるいはA/B/Cの3層、さらには3層より多層の積層構成であってもよく、積層厚み比も任意に設定することができるが、好ましくはA/Bの2層である。
【0026】
A/Bの2層構成の場合、少なくともA層には、上記のワックスが含有されてなることが肝要である。A層にワックスを特定量含有したものとすることにより、その上に形成したポリビニルアルコール層の剥離強度を本発明の範囲とすることができるのである。
【0027】
本発明におけるポリエステル基材フィルムを2層以上で構成する場合、ワックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)の厚さは任意に設定できるが、複合製膜での積層均一性の点から、ポリエステル層(A)/ポリエステル基材フィルムの厚さ比として、0.5/100〜99.5/100の範囲とするのが好ましく、より好ましくは1/100〜99/100、特に好ましくは2/100〜98/100である。
【0028】
本発明におけるポリエステル基材フィルムは、強度、剛性、寸法安定性、表面平滑性等の点から二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0029】
二軸延伸フィルムの製造方法としては、例えば、各ポリエステル原料を乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化して未延伸シートを得る。延伸方式としては、同時二軸または逐次二軸延伸のいずれでもよいが、該未延伸シートをフイルムの長手方向および幅方向に延伸、熱処理して、目的とする厚さのフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としては、それぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。
【0030】
また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度は、ポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜150℃が好ましい。
【0031】
更に、二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また、熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行なうことが好ましい。熱処理は、フイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行っても良い。
【0032】
ポリエステル基材フィルムを2層以上で構成する場合には、上記ポリエステル原料を2台以上の押出機に供給し、2層以上のマニホールド、合流ブロックを用いて、ポリエステル層(A)が最表層になるように積層し、スリット状口金からシート状に溶融押出しした後、上記の二軸延伸法により、製造することができる。
【0033】
本発明におけるポリビニルアルコール層を形成するポリビニルアルコールの鹸化度は特に限定されないが、塗工性の点から好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは75〜99.9モル%、特に好ましくは80〜95モル%である。また、ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されないが、膜強度の点から好ましくは100以上、より好ましくは300〜40000、特に好ましくは500〜5000である。
【0034】
また、本発明では、ポリビニルアルコール層の厚さを変更したり、ポリビニルアルコール層に界面活性剤やワックスを添加することによっても剥離力を調整することができる。
【0035】
本発明におけるポリビニルアルコール層の厚さは、剥離性および強度の点から好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは0.1〜5μmである。
【0036】
本発明において、ポリビニルアルコール層を形成する方法としては特に限定されないが、ポリビニルアルコール水溶液をバーコート、グラビアコート、リバースロールコート、ドクターブレードコート等従来公知の方法で塗布した後、乾燥することによって形成できる。塗布は、オフコートであってもよいし、ポリエステル基材フィルムの製造工程で、例えば二軸延伸ポリエステルフィルムの製造工程で、延伸前、または延伸後にインラインコートしてもよい。この場合、ポリビニルアルコールを塗布する直前に、ポリエステル層(A)の表面に空気、その他のガス雰囲気中でコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0037】
ポリビニルアルコールを塗布する場合、ポリビニルアルコール水溶液の濃度は任意に設定できるが、塗布の均一性の点から、1〜20重量%であるのが好ましく、より好ましくは1〜15重量%であり、特に好ましくは1〜10重量%である。
【0038】
本発明のポリビニルアルコール層には、本発明の効果を損なわない範囲で、他のポリマーを併用してもよい。併用するポリマーは、水溶性または水分散性であるのが好ましく、中でも水溶性または水分散性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系樹脂の少なくとも1種からなるものが好ましい。併用するポリマーの混合割合は50重量%未満であるのが好ましい。
【0039】
本発明のポリビニルアルコール層には耐水性、耐有機溶剤性を高めるために架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、アリジリン化合物等を用いることができる。架橋剤の添加量はポリビニルアルコール固形分に対して1〜30重量%であるのが好ましい。
【0040】
本発明におけるポリビニルアルコール層には、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核剤、顔料、可塑剤、末端封鎖剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤、界面活性剤等を配合することができる。中でも、基材フィルムのポリエステル層(A)とポリビニルアルコール層との濡れ性を向上するために、界面活性剤を添加するのが好ましい。
【0041】
界面活性剤としては特に制限はなく、カルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型等の非イオン系界面活性剤等を用いることができ、中でも非イオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0042】
また、本発明のポリビニルアルコール層には濡れ性と剥離性を向上する目的で、ワックスを添加してもよい。ワックスとしては、水に溶解、乳化または懸濁する石油系ワックスまたは植物性ワックス、およびその混合物が好ましく用いられる。石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス等を用いることができる。また、植物性ワックスとしてはカルナウバワックス、キャンデラワックス、木ロウ、オリキューリーワックス、さとうきびロウ等を用いることができる。
【0043】
上記の界面活性剤やワックスは、どちらか1種のみ用いてもよく、2種を併用してもよい。この場合、ワックスの添加量はポリビニルアルコール固形分100重量部に対して1〜30重量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜20重量部の範囲である。また、界面活性剤の添加量はポリビニルアルコール水溶液100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜2重量部の範囲である。
【0044】
本発明のポリビニルアルコール層は、目的に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性を付与する方法としては、特に制限はされないが、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、アルミナ、ジルコニア、スピネル、湿式あるいは乾式シリカなどの無機粒子、アクリル酸系ポリマー類、ポリスチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合する方法、界面活性剤を塗布する方法等を採用することができる。かかる粒子の配合量としては、ポリマー100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。また、配合する粒子の平均径としては、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜2μmである。このような粒子は、種類、平均径の異なる複数の併用であってもよい。
【0045】
本発明の剥離性積層フィルムには必要に応じてポリビニルアルコール層表面に硬化型シリコーン樹脂を塗布してもよい。シリコーン硬化型樹脂としては、付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例として、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等を用いることができる。
【0046】
硬化型シリコーン樹脂を塗布する方法としては、バーコート、リバースロールコート、グラビアコート、ロッドコート、エアドクターコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。硬化型シリコーン樹脂の厚みは、塗工性、離型性の点から0.01〜2μmの範囲であるが好ましい。
【0047】
本発明は、上述したように、ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてなるポリエステル基材フィルムの該ポリエステル層(A)の上にポリビニルアルコール層を形成し、該ポリビニルアルコール層の剥離強度を特定した剥離性積層フィルムとしたので、該積層フィルムのポリビニルアルコール層表面に、セラミックグリーンシートの成形や硬化型シリコーン被膜形成などの、いかなる表面処理、表面加工がなされた後においても、基材フィルムとポリビニルアルコール層との界面で容易に剥離することができ、基材フィルム部分のみを簡単に分離回収することが可能となる。また、このようにして回収された基材フィルムは、セラミック残渣やシリコーン樹脂膜などの不純物を含まないので、純度の高い再生原料としてリサイクルできる。
【0048】
特に、本発明の剥離性積層フィルムを積層セラミックコンデンサーなどのグリーンシート製造用工程フィルムとして用いる場合には、ポリビニルアルコール層上に直接セラミックグリーンシートを形成し、基材フィルムと該ポリビニルアルコール層の間で剥離して、ポリビニルアルコール層付きセラミックグリーンシートを得ることが出来る。このポリビニルアルコール層付きセラミックグリーンシートは、有機物であるポリビニルアルコール層がセラミック焼成工程で分解気化するので、従来の積層セラミック部品の製造工程に全く付加工程を加えることなく、基材フィルム部分のみを分離回収でき、さらに、従来必須とされていた基材フィルム上へのシリコーン硬化膜の形成を不要とすることができる。さらに、ポリビニルアルコール層付きセラミックグリーンシートを用いれば、ポリビニルアルコール層がセラミックグリーンシートの補強材の役目を果たすため、極薄グリーンシートの搬送や積層などのハンドリング性が著しく向上するという利点がある。
【0049】
また、セラミックの焼成処理など500℃以上の高温処理が行われない用途、あるいは焼成処理が行われる場合でもシリコーン硬化膜の特性が必要な場合においては、従来の離型フィルムと同様に、ポリビニルアルコール層の上面に硬化性シリコーン樹脂膜を形成して離型フィルムとすることもできる。この場合にも、使用済の離型フィルムから基材フィルムのみを分離しようとする際に、不純物となっていた種々の表面残渣、たとえばセラミック成分や硬化性シリコーン樹脂膜、表面加工残渣等は、ポリビニルアルコール層ごと剥離除去することによって、容易にかつ完全に基材フィルムから除去することができる。
【0050】
[特性の評価方法]
(1)積層フィルムの剥離強度
厚さ2mmの表面平滑なアクリル板に、積層フィルムの基材フィルム面を両面テープで貼り付け、ポリビニルアルコール層表面にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製No.31B、幅19mm)を貼り付けて、粘着テープの一端をテンシロン引張試験機(東洋測器(株)UTMIII)で、速度100mm/minで180度方向に引張り、基材フィルムとポリビニルアルコール層間の剥離力を測定した。剥離強度(mN/cm)は、S−Sカーブの立ち上がり部分を除いた剥離長さ50mm以上の平均剥離力(T)から、次式により算出し、サンプル数5個の平均値を採用した。
【0051】
剥離強度=T/W (mN/cm)
T:平均剥離力 (mN)
W:サンプル幅 (1.9cm)
(2)セラミックグリーンシートの塗布性および剥離性
積層フィルムのポリビニルアルコール層の上面に、スクリーン印刷機でセラミックスラリーを塗布して乾燥し、10cm×10cm、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。該グリーンシート上に、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製No.31B、幅19mm)を貼り付けて、幅19mm、長さ100mmの短冊状サンプルを切り出し、セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で、基材フィルムから剥離した。塗布状態および剥離状態を目視観察し、以下のように判定した。
<塗布性>
セラミックスラリーがむらなく、均一に塗布できたものを○、塗布むらが発生したものを×とした。
<剥離性>
セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で、しわやクラックを生じることなく容易に剥離できたものを○、セラミックグリーンシートにしわやクラックが発生したものを×とした。
(3)ポリエステル基材フィルムの回収性
上記のサンプルを用いて、セラミックグリーンシートとポリビニルアルコール層とを一体で基材フィルムから剥離した後、基材フィルムの表面を目視観察して、以下のように判定した。
【0052】
基材フィルムの表面にセラミック残渣が全くなく、クリーンな基材フィルムが回収できたものを○、基材フィルムの表面にセラミック残渣が少しでも残存したものを×とした。
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
【0053】
実施例1
(ポリエステル基材フィルムの作製)
ポリエステルとして、凝集シリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを190℃で2時間熱処理した後、エステル化反応終了後にスラリーを添加し、重縮合反応を行ない、カルナウバワックスを0.5重量%添加したポリエチレンテレフタレートのチップAを製造した。本チップを所定量計量後、180℃3時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、Tダイ口金から吐出後、静電印加しながら25℃の鏡面冷却ドラムにて冷却固化してカルナウバワックスス0.5重量%含有する未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをロール式延伸機に導き、85℃の予熱ロールで予熱した後、温度95℃の周速差のあるロール間で長手方向に3.3倍に延伸し、一旦室温まで冷却した後、テンター式横延伸機に送り込み、温度95℃で幅方向に3.5倍に延伸した。さらにテンターの熱処理ゾーンで200℃の雰囲気下で、リラックス5%、5秒間の熱処理を施して、厚さ40μmのポリエステルフィルムを作製した。
(ポリビニルアルコール層の形成)
上記フィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、ポリビニルアルコール10重量%水溶液(日本合成化学工業(株)“ゴーセノール”GH−17、鹸化度:86.5〜89%)に界面活性剤(エアープロダクツジャパン(株)“サーフィノール”504)を0.5重量部添加して、バーコーター(番手6)で塗布し、熱風オーブン中で120℃×5分間加熱して、厚さ1μmのポリビニルアルコール層を形成した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は2mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層上面に、下記組成のセラミックスラリーをスクリーン印刷機で塗布し、熱風オーブン中で85℃×10分乾燥して厚さ10μmのグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
《セラミックスラリー組成》
チタン酸バリウム粉体(平均粒径1.1μm,焼結密度5.84) 90重量部
結合剤(ポリビニルブチラール樹脂:重合度200〜700,粘度:10〜30cps) 10重量部
可塑剤(フタル酸ジオクチル) 1重量部
トルエン/MEK混合溶媒(1:1の配合比率) 50重量部
次いで、上記セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で容易に剥離できた。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察した結果、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
【0054】
評価結果は表1に示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【表1】
Figure 0003797185
【0055】
実施例2
(ポリエステル基材フィルムの作製)
実施例1において、カルナウバワックスを添加しないで、ポリエチレンテレフタレートのチップBを製造した。
【0056】
実施例1で作製したチップA、および上記のチップBをそれぞれ所定量計量後、180℃3時間真空乾燥して、チップAを押出機I(A層)に、チップBを押出機II(B層)に供給し、2層のマニホールドを通過させた後にT型口金から吐出し、静電印加しながら25℃の鏡面冷却ドラムにて冷却固化してA層/B層の2層構成の未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをロール式延伸機に導き、85℃の予熱ロールで予熱した後、温度95℃の周速差のあるロール間で長手方向に3.3倍に延伸し、一旦室温まで冷却した後、テンター式横延伸機に送り込み、温度95℃で幅方向に3.5倍に延伸した。さらにテンターの熱処理ゾーンで200℃の雰囲気下で、リラックス5%、5秒間の熱処理を施して、厚さ40μm(A層2μm/B層38μm)のポリエステルフィルムを作製した。
(ポリビニルアルコール層の形成)
上記フィルムのA層面に、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール層を形成した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は3mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
【0057】
次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で容易に剥離できた。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察した結果、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【0058】
実施例3
(積層フィルムの作製)
実施例2において、チップAのカルナウバワックスの添加量を1.0重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを作製した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は0.8mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
【0059】
次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で容易に剥離できた。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察した結果、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【0060】
実施例4
(積層フィルムの作製)
実施例2において、チップAのカルナウバワックスの添加量を0.1重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを作製した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は10mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
【0061】
次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で容易に剥離できた。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察した結果、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【0062】
実施例5
(積層フィルムの作製)
実施例2において、ポリビニルアルコール10重量%に代えて、下記組成の10重量%水溶液を塗布したこと以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを作製した。
【0063】
ポリビニルアルコール(GH−17) 80重量部
ワックス(広栄化学(株) “KEK−T”) 20重量部
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は8mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
【0064】
次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、セラミックグリーンシートがポリビニルアルコール層と一体で容易に剥離できた。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察した結果、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【0065】
実施例6
(硬化型シリコーン樹脂膜の形成)
実施例2で作製した積層フィルムの、ポリビニルアルコール層の表面にバーコーター(番手6)で下記組成の硬化型シリコーン樹脂を塗布し、熱風オーブン中で90℃×1分加熱硬化した。
《硬化型シリコーン樹脂組成》
シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製LTC300B) 100重量部
硬化剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SRX−212) 0.8重量部
溶剤(トルエン) 499.2重量部
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
上記硬化型シリコーン樹脂膜の上面に実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーはむらなく、均一に塗布できた。
【0066】
該セラミックグリーンシートを剥離したところ、硬化型シリコーン樹脂膜との界面で該セラミックグリーンシートを容易に剥離することができた。
(基材フィルムの回収性)
上記のセラミックグリーンシート剥離後の積層フィルムから、硬化型シリコーン樹脂膜と一体になったポリビニルアルコール層を剥離し、基材フィルムの表面を観察したところ、セラミック残渣は全く残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、剥離性積層フィルムは、ポリビニルアルコール層が容易に剥離でき、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用しても塗布性と剥離性に優れ、使用後もクリーンな基材フィルムを容易に回収できた。
【0067】
比較例1
(積層フィルムの作製)
実施例1において、カルナウバワックスを添加しないで、ポリエチレンテレフタレートのチップBを製造し、該チップBを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は47mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーがむらなく、均一に塗布できた。次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、ポリビニルアルコール層の剥離性が不十分で、セラミックグリーンシートにクラックが発生した。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察したところ、セラミック残渣が斑点状に付着、残存していた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、この比較例の積層フィルムはポリビニルアルコール層が剥離しにくいため、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用後の基材フィルム表面にセラミック残渣が残存し、回収性に劣っていた。
【0068】
比較例2
(積層フィルム)
実施例2において、カルナウバワックスの添加量を0.05重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを作製した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は33mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、厚さ10μmのセラミックグリーンシートを形成した。セラミックスラリーがむらなく、均一に塗布できた。次いで、該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したところ、ポリビニルアルコール層の剥離性が不十分で、セラミックグリーンシートにクラックが発生した。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察したところ、セラミック残渣が斑点状に付着、残存していた。
評価結果は表1に併せて示すとおり、この比較例の積層フィルムはポリビニルアルコール層が剥離しにくいため、セラミックグリーンシート用工程フィルムとして使用後の基材フィルム表面にセラミック残渣が残存し、回収性に劣っていた。
【0069】
比較例3
(積層フィルムの作製)
実施例2において、カルナウバワックスの添加量を2.5重量%としたこと以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを作製した。
(剥離強度)
上記積層フィルムのポリビニルアルコール層の剥離強度を測定したところ、強度は0.3mN/cmであった。
(セラミックグリーンシートの塗布性と剥離性)
実施例1と同様にして、スクリーン印刷機でセラミックスラリーを塗布して乾燥したところ、ポリビニルアルコール層が部分的に基材フィルムから浮き上がって塗布むらが発生した。該セラミックグリーンシートをポリビニルアルコール層と一体で基材フィルムから剥離したが、グリーンシートにしわが発生した。
(基材フィルムの回収性)
上記剥離後の基材フィルム表面を観察したところ、セラミック残渣は残存しておらず、クリーンな基材フィルムが回収できた。
【0070】
評価結果を表1に併せて示す。この比較例は、セラミックグリーンシートの塗布性に劣るものであった。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステル基材フィルム面に形成されたポリビニルアルコール層が容易に剥離できるので、例えばセラミックコンデンサーなどのグリーンシート製造用工程フィルムとして使用した後、該フィルムを廃棄することなく、基材フィルムのみを容易に回収できる。また、回収された基材フィルムは、セラミック残渣などの不純物を含まないので、純度の高い再生原料としてリサイクルできる。
【0072】
また、本発明の剥離性積層フィルムを積層セラミックコンデンサーなどのグリーンシート製造用工程フィルムとして用いる場合には、ポリビニルアルコール層上に直接セラミックグリーンシートを形成した後、ポリビニルアルコールとグリーンシートを一体で剥離することが出来る。このポリビニルアルコール層付きセラミックグリーンシートは、有機物であるポリビニルアルコール層がセラミック焼成工程で分解気化するので、従来の積層セラミック部品の製造工程に全く付加工程を加えることなく、基材フィルム部分のみを分離回収でき、さらに、従来必須とされていた基材フィルム上へのシリコーン硬化膜の形成を不要とすることができる。
【0073】
また、ポリビニルアルコール層の上面に硬化性シリコーン樹脂膜を形成したフィルムを、従来と同様、シリコーン樹脂膜を形成した工程フィルムとして使用することも可能であり、その場合にも、使用後のフィルムから、シリコーン樹脂膜とポリビニルアルコール層とを一体で剥離することにより、クリーンな基材フィルムのみを回収することができる。
【0074】
さらに、ポリビニルアルコール層付きセラミックグリーンシートを用いれば、ポリビニルアルコール層がセラミックグリーンシートの補強材の役目を果たすため、極薄グリーンシートの搬送や積層などの取扱い性が著しく向上するという利点もある。
【0075】
本発明の剥離性積層フィルムは、上記の効果を奏するので、セラミックグリーンシート用工程フィルムとしてだけでなく、貼付薬保護シート、粘着ラベルや粘着テープ等の台紙、あるいは成形樹脂表面保護シート、液晶ディスプレイに用いられる偏光板や位相差板等の液晶表示板保護シート、包装用フィルム等、多くの用途に応用することができる。

Claims (8)

  1. ックス化合物を含有してなるポリエステル層(A)を用いてなるポリエステル基材フィルムのポリエステル(A)層上にポリビニルアルコール層が形成されてなる積層フィルムであって、該ポリビニルアルコール層とポリエステル基材フィルムとの剥離強度が0.5mN/cm以上30mN/cm以下であることを特徴とす積層フィルム。
  2. 前記ポリビニルアルコール層とポリエステル基材フィルムとの剥離強度が0.5mN/cm以上10mN/cm以下である請求項1に記載積層フィルム。
  3. 前記ワックス化合物が、カルナウバワックスであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載積層フィルム。
  4. 前記ポリビニルアルコール層の厚さが0.1〜20μmである請求項1〜3のいずれかに記載積層フィルム。
  5. 前記ポリビニルアルコール層に界面活性剤が含有されてなる請求項1〜4のいずれかに記載積層フィルム。
  6. 前記ポリビニルアルコール層にワックスが含有されてなる請求項1〜5のいずれかに記載積層フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムを用いたセラミックグリーンシート用工程フィルム。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルムのポリビニルアルコール層表面に、硬化型シリコーン樹脂膜が形成されていることを特徴とするセラミックグリーンシート用工程フィルム。
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