JP3948333B2 - セラミック離型用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサー用のセラミックシートを製造する際に用いられるセラミックシート成形用の離型フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、粘着ラベル、粘着テープなどの台紙として一般的に広く用いられている。
【0003】
近年、携帯電話をはじめととする通信機器の急激な普及にともない、積層セラミックコンデンサーの需要が拡大してきている。積層セラミックコンデンサーは、一時的に電気を蓄える特性を使い電流を安定させる目的で電子回路に不可欠な部材であり、通信機器をはじめとする電子機器には数多くの積層セラミックコンデンサーが用いられている。
【0004】
積層セラミックコンデンサー用のセラミックシートを製造する際に、工程用キャリアフィルムとして、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格などの点より、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン系皮膜を設けた離型フィルムが一般的に用いられてきている。このようなシリコーン系皮膜を有する離型フィルムは、例えば、特開昭60−141553号公報、特開平3−231812号公報、特公平4−59207号公報、特公平6−2393号公報に開示されている。
【0005】
前記セラミックシートは、チタン酸バリウム、アルミナなどのセラミック粉末を分散させた水系または有機系溶媒に、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの高分子バインダーと、可塑剤、分散剤とを加えたものを高速ミキサーやボールミルにより混合分散させ、次いでセラミックスラリーを離型フィルムの離型層面にドクターブレード法により、数百μm〜数十μmの厚さに塗布・乾燥させた後、離型フィルムから剥離して巻き取ることにより一般に製造されている。
【0006】
近年、積層セラミックコンデンサーの小型・高容量化のために、セラミックシート層の厚さをより薄膜化し、かつ多層に積層することが要望されている。セラミックシート層の厚みは、従来の7〜10μm程度から、現在では3〜5μm程度まで薄くなってきており、さらに1〜2μm程度の厚みのものも開発されてきている。また、数年後には1μm未満の厚みにまで、セラミックシートの薄膜化が進むと予想されている。
【0007】
このためには、1μm程度の非常に薄いセラミックシートを欠陥が無いように形成することが求められている。この要求を満たすため、セラミックシートと離型フィルムの剥離強度を小さくするだけでは不十分であり、平滑な離型層面が要求されている。また、離型フィルム上に形成されたセラミック層の欠点を透過光によって検出するために、一般に全光線透過率の高いフィルムが要求されている。
【0008】
つまり、離型フィルムは基材フィルムの表面粗さが大きいと、必要量の離型剤をその突起部に塗布することができず、結果として離型剤本来の離型性を引き出すことができない。また、この離型フィルムをロール状に巻いて保管しておいた場合、使用時に巻き出した際、反離型層面の突起によって離型層が局部的に剥がれ、セラミックシートの加工性に著しい悪影響を与えることが問題となっていた。
【0009】
さらに、この離型フィルムの表面の突起はセラミックシートに凹状に転写され、この凹状に転写された部分が、セラミックシートの形状欠陥になるという問題が生じていた。
【0010】
特に、近年のようにセラミックシートの厚みの極薄化が進むと、上記の問題はより顕在化してきている。
【0011】
このような問題を解消するためには、基材フィルム中に粒子を含まず、平滑にすることが望ましいが、粒子を含まない基材フィルムは摩擦係数が大きくロール状に巻くことが困難であり、さらに巻き出した時に大きな静電気が発生し埃が付着しやすくなると言う問題が発生する。
【0012】
すなわち、厚さ1μm以下のセラミックシートの成形に際しても、セラミックシートの欠陥率が小さく、透明性に優れ、かつ、巻き取り性にも優れ、巻き出し時の静電気発生が小さいセラミック離型用フィルムを得ることは極めて困難であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、離型層面が平滑で表面突起が極めて少なく、全光線透過率が高く、巻き取り性にも優れ、かつ巻き出し時の静電気発生が小さい、セラミックシート製造用離型フィルムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、少なくとも2層以上の積層構造からなる二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材とし、片面に離型層を有するポリエステルフィルムであって、該基材フィルムの少なくとも片面側(A面)の最外層(A層)に粒子を含有し、該粒子の平均粒径d(μm)と該最外層の層厚さt(μm)との関係が0.5≦t/d≦15であり、最外層(A層)の厚みが1〜10μmであり、該最外層側のフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102〜1×104個/mm2であり、かつ、反対面(B面)の最外層(B層)は、実質的に粒子を含有しておらず、最外層(B層)のフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102個/mm2以下であり、B面側に離型層を有することを特徴とするセラミック離型用ポリエステルフィルムを提供する。
【0016】
好ましい具体例では、前記セラミック離型用ポリエステルフィルムの全光線透過率は88%以上である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック離型用ポリエステルフィルム(以下、離型フィルムという)は、少なくとも2層以上の積層構造からなる二軸配向積層ポリエステルフィルム(以下、基材フィルムという)の片面に離型層を設けてなるポリエステルフィルムである。
【0018】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0019】
基材フィルムに共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリト酸、ピロメリト酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p−キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150〜20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の重量比率は20重量%未満である。20重量%以上では、フィルム強度、透明性、耐熱性が劣る傾向がある。
【0020】
また、基材フィルムの製造に用いる樹脂ペレットの固有粘度は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gより低いと、耐引き裂き性向上効果が悪化する傾向がある。一方、固有粘度が0.70dl/gより大きいと、濾圧上昇が大きくなり、下記で述べる高精度濾過が困難となる傾向がある。
【0021】
基材フィルムは、少なくとも2層以上の積層構造を有し、離型層面(B面)に対し反対側(A面)の最外層には無機粒子を含有し、離型層面側(B面)の基材フィルムの最外層は極力平滑であることが好ましい。
【0022】
基材フィルムが3層以上の積層体の場合、中間層には全光線透過率を大幅に低下させない程度の粒子が含有していても構わない。ただし、大きさが20μmを越すような異物は、両最外層に大きな突起を形成させる原因になるので除去する必要がある。
【0023】
基材フィルムの少なくとも片面側(A面)の最外層(A層)は粒子を含有しており、該粒子の平均粒径d(nm)と該最外層の層厚さt(nm)との関係は0.5≦t/d≦15になるように調整される。t/dが0.5より小さいと、基材フィルムは摩擦係数が大きく、ロール状に巻くことが困難であり、さらに巻き出した時に、大きな静電気が発生し、埃が付着しやすくなるという問題が発生する。t/dが15より大きいと、この離型フィルムをロール状に巻いて保管しておいた場合、使用時に巻き出した際、離型層に対向する面の突起によって離型層が局部的に剥がれ、セラミックシートの加工性に著しい悪影響を与えることが問題となる。また、全光線透過率が低下し、離型フィルム上に形成されたセラミック層の欠点を透過光によって検出する場合の精度が低下する。
【0024】
離型層を有する面(B面)に対し反対側(A面)となる、粒子を含有する最外層(A層)の厚みは、全光線透過率や突起数の範囲を維持する範囲内で、1〜10μmとする。
【0025】
基材フィルムの離型層を設ける側(B面)の最外層(B層)には、実質的には粒子を含有させない。「実質的に粒子を含有しない」とは、蛍光X線分析で粒子を定量する際、検出限界以下となる粒子含有量を意味する。平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102個/mm2を越える場合、離型層を形成する必要量の離型剤をその突起部に塗布することができず、結果として離型剤本来の離型性を引き出すことができない。この離型層の表面の突起は、セラミックシートに凹状に転写され、この凹状に転写された部分がセラミックシートの形状欠陥となるという問題が発生する。
【0026】
基材フィルムの最外層または中間層に含有させる粒子の種類としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、アルミナなどの無機粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の離型フィルムの全光線透過率は88.0%以上が好ましい。全光線透過率が88.0%より小さいと、セラミックシートの欠点検査時において、微小な欠点が検出されにくく、好ましくない。
【0028】
このため、最外層の粒子の含有量は、全光線透過率の前記範囲を維持できれば、特に制限されないが、巻き取り性、耐キズ性を確保しつつ高い全光線透過率を得るためには、例えば、平均粒径2.5μmの凝集体粒子を用いる場合には、基材フィルムに対して、100〜600ppm、特に200〜300ppm含有させることが好ましく、例えば、平均粒径0.6μmの粒子を用いる場合には、基材フィルムに対して、1000〜1000ppmが好ましい。
【0029】
基材フィルムに粒子を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0030】
なかでも、本発明の製造方法、すなわち、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
【0031】
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらに表面の突起数を少なくすることができる。
【0032】
また、基材フィルムは、本発明で規定される全光線透過率や突起数の範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
【0033】
本発明の離型フィルムにおいて、離型層は、基材フィルムの最外層のフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102個/mm2以下の面(B面)に設ける。離型層を有する面と反対側の面(A面)には、必要に応じて帯電防止層などを設けてもよい。
【0034】
離型層を形成する離型剤の成分は、特に限定されることはなく、公知の材料を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、硬化性シリコーン樹脂、アルキッド樹脂が挙げられるが、軽い剥離強度を得るには、硬化性シリコーン樹脂が最も好ましい。
【0035】
離型剤に硬化性シリコーン樹脂を用いる場合、その種類としては、例えば、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型が挙げられるが、いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0036】
離型剤に用いる硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256;ダウ・コーニング・アジア(株)製のDKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210;東芝シリコーン(株)製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
離型層の形成方法は、特に限定されないが、離型剤を調製し、これを基材フィルム上に塗布、乾燥、熱処理する方法が好ましい。離型剤は、まず、帯電防止剤、ポリオレフィン樹脂、必要に応じて架橋剤などを溶媒に加え、溶液または分散液として調製する。
【0038】
離型層の厚さは、塗工性の面から、0.01〜1μmが好ましい。離型層の厚みが0.01μm未満であると、塗工性の点で安定性に欠ける傾向があり、均一な塗膜を得るのが困難となることがある。一方、離型層の厚みが1μmを超えると、フィルム巻取り性が不十分となる傾向がある。
【0039】
基材フィルムに離型剤を塗布する方法としては、バーコート、リバースロールコート、グラビアコート、ロッドコート、エアドクターコート、ドクターブレードコートなどの従来より公知の塗工方式を用いることができる。
【0040】
本発明の離型フィルムの厚みは、好ましくは12〜100μm、より好ましくは25〜50μmである。厚みが12μm未満では、寸法安定性が低下し、セラミック層形成工程において支障をきたす傾向がある。一方、厚みが100μmを超えるとコスト高となる傾向がある。
【0041】
以上のような本発明の離型フィルムは、本発明の製造方法により好ましく製造することができる。すなわち、本発明の製造方法は、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程と、その基材フィルムの片面に離型層を形成する離型層形成工程とを包含する。各工程の条件や使用材料などは、すでに説明した通りである。
【0042】
次に、本発明の離型フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)のペレットを基材フィルムの原料とした例、すなわちセラミック離型用PETフィルムについて詳しく説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0043】
上記の方法で得られたPETのペレットを所定の割合で混合し、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。すなわち、2または3台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成する。
【0044】
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるので、好ましい。
【0045】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で重要な工程である。
【0046】
より具体的には、上記のように、易滑性付与を目的とした粒子を含有するPETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き、160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0047】
得られた二軸配向PETフィルムに、上記にように、離型剤を塗布、乾燥、熱処理することにより、セラミック離型用PETフィルムが得られる。
【0048】
本発明の離型フィルムは、セラミックシートを製造する際に、キャリアフィルムとして用いられるものである。一般に、積層セラミックコンデンサーなどに用いられるセラミックシートは、チタン酸バリウム、アルミナなどのセラミック粉末を分散させた水系または有機系溶媒に、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの高分子バインダと、可塑剤、分散剤とを加えたものを、高速ミキサーやボールミルにより混合分散させ、得られたセラミックスラリーをキャリアフィルム上に、ドクターブレード法により、1μm〜数十μmの厚さに塗布し、これを乾燥させて巻き取ることにより製造される。
【0049】
【実施例】
本発明を以下の実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。本発明における特性値の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
【0050】
(1)離型フィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数
3次元形状測定装置(マイクロマップ社製、TYPE550)を用い、waveモード、対物レンズ倍率が50倍の条件下、測定面積0.16mm×0.124mmを測定場所を変え、50カ所について測定し、その等高線図からフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数を読み取り、1mm2当りに換算し求めた。
【0051】
(2)全光線透過率
ヘイズメーター(東京電色工業社製、モデルTC−H3DP)を用いて測定した。
【0052】
(3)巻き出し帯電
実施例および比較例で得た離型フィルムロールを20℃で50%RHの雰囲気下で速度55m/分で巻き出し、このロールの巻き出し接線の帯電圧をフィルムロールから20mm位置からデジタル静電電位測定器(春日電気社製、KSD0103)を用いて測定した。これを以下の基準で判定した。
○:帯電圧の絶対値が5kV以下
×:帯電圧の絶対値が5.1kV以上
【0053】
(4)セラミックシートのピンホール
溶媒(トルエン)、セラミック原料(BaTiO3、富士チタン製)、結合剤、可塑剤などを混合し、ペースト状にした後、ボールミルで分散させ、セラミックスラリーを得た。離型フィルムの離型層の表面にドクターブレード法にて、上記セラミック厚みが乾燥時1μmとなるようにコートし、100℃の雰囲気温度のオーブン中に5分間で乾燥し、セラミックシートを得た。このシート10cm2の面積の範囲にシートの反対面から光をあて、ピンホールの発生状況を観察し、下記基準により評価した。
×:ピンホールが多数あり。
△:ピンホールはほとんどなし。
○:ピンホールなし。
【0054】
実施例1
(炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の調製)光透過型粒度分布測定装置(島津製作所製、SA−CP3)で測定した平均粒子径が0.6μmの炭酸カルシウム粒子(丸尾カルシウム社製)をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを得た。
炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレート(a)を次の方法で得た。エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4重量部およびエチレングリコールを64.4重量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部および酢酸マグネシウム4水和物を0.088重量部、トリエチルアミンを0.16重量部添加した。次いで、加圧昇温を行い、ゲージ圧3.5kgf/cm2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.040重量部を添加した。
さらに、260℃に昇温し、リン酸トリメチルを添加した15分後に、上記炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対し、10000ppmとなるよう添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロンフィルター(日本精線(株)製)で濾過処理を行い、固有粘度が0.62dl/gの炭酸カルシウム粒子を含有するポリエチレンテレフタレートマスターペレット(a)を得た。
【0055】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(b)の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。
次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8重量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。
次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。
上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.620dl/gのポリエステルペレット(b)を得た。
【0056】
(ポリエステルフィルムの製造)
上記のマスターペレット(a)を、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)で所定割合にて希釈し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機1に、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)を押出機2にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、矩形積層部を備えた2層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化させて、未延伸フィルムを形成した。
この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.3倍に延伸し、次いで、この一軸フィルムをステンタを用いて幅方向に4.0倍延伸し、210℃にて5秒間熱処理し、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の厚み5μm、実質粒子を含有しない層(B層)の厚み33μmの積層フィルムを得た。この時の炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の粒子含有量は5000ppmとした。
次いで、紫外線カチオン硬化型シリコーンレジン(東芝シリコン社製、UV9315)を溶剤(ノルマルヘキサン)中に樹脂固形分濃度が2重量%となるように分散させ、シリコーンレジン100重量部に対し、1重量部のビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを硬化触媒として添加し、シリコーン樹脂を含む塗布液を作成した。上記シリコーン樹脂を含む塗布液を積層フィルムのB層の表面に、ワイヤーバーを用いて、塗布液を塗布し、100℃×30秒で乾燥後、紫外線照射装置で紫外線照射(300mj/cm2)し、セラミック離型用ポリエステルフィルム(シリコーン離型層の乾燥後塗布量0.10g/m2)を得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0057】
実施例2
(シリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレートペレット(c)の調製)
光透過型粒度分布測定装置(島津製作所製,SA−CP3)で測定した平均粒子径が2.5μmのシリカ粒子(富士シリシア社製)をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを得た。シリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレート(c)を次の方法で得た。
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4重量部およびエチレングリコールを64.4重量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部および酢酸マグネシウム4水和物を0.088重量部、トリエチルアミンを0.16重量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.040重量部を添加した。
さらに、260℃に昇温し、リン酸トリメチルを添加した15分後に、上記シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対して、10000ppmとなるよう添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロンフィルター(日本精線(株)製)で濾過処理を行い、固有粘度が0.62dl/gのシリカ粒子を含有するポリエチレンテレフタレートマスターペレット(c)を得た。
上記のマスターペレット(c)を、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)で所定割合にて希釈し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機1に、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)を押出機2にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、矩形積層部を備えた2層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.3倍に延伸した。この一軸フィルムをステンタを用いて幅方向に4.0倍延伸し、210℃にて5秒間熱処理し、シリカ粒子を含有する層(A)の厚み5μm、実質粒子を含有しない層(B層)の厚み33μmの積層フィルムを得た。この時のシリカ粒子を含有する層(A)の粒子含有量は500ppmとした。次いで、この積層フィルムのB層上に実施例1と同様の方法で離型層を形成しセラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0058】
実施例3
炭酸カルシウム粒子の平均粒子径を0.4μm、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の粒子含有量を1000ppmとした以外は実施例1と同様の方法で、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の厚み5μm、実質粒子を含有しない層の厚み33μmのセラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0059】
参考例1
B層を形成するのに、実施例1で用いたマスターペレット(a)を、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)で所定割合にて希釈し、炭酸カルシウム粒子含有量100ppmとした以外は実施例1と同様の方法で、セラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0060】
実施例4
実施例1で用いたマスターペレット(a)を、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)で所定割合にて希釈し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機1、押出機2に、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(b)を押出機3にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この3種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、矩形積層部を備えた3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化させて、未延伸フィルムを形成した。
この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.3倍に延伸した。この一軸フィルムをステンタを用いて幅方向に4.0倍延伸し、210℃にて5秒間熱処理し、炭酸カルシウム粒子を含有する最外層(A)の厚み5μm、実質粒子を含有しない最外層(B層)の厚み5μm、炭酸カルシウム粒子を含有する中間層(C)28μmの積層フィルムを得た。この時の炭酸カルシウム粒子を含有する最外層(A)の粒子含有量は5000ppm、炭酸カルシウム粒子を含有する中間層(C)の粒子含有量は100ppmとした。
次いで、実施例1と同様の方法で離型層を形成しセラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0061】
比較例1
シリカ粒子を含有する層(A)の粒子含有量を5000ppmとした以外は実施例2と同様の方法で、シリカ粒子を含有する層(A)の厚み5μm、実質粒子を含有しない層の厚み33μmのセラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0062】
比較例2
炭酸カルシウム粒子の平均粒子径を10μm、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の粒子含有量を500ppm、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の厚み3μm、実質粒子を含有しない層の厚み35μmとした以外は実施例1と同様の方法で、セラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0063】
比較例3
炭酸カルシウム粒子の平均粒子径を0.4μm、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の粒子含有量を500ppm、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A)の厚みを8μmに、実質粒子を含有しない層の厚みを30μmとした以外は実施例1と同様の方法で、セラミック離型用ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
本発明のセラミック離型用フィルムは、厚みの薄いセラミックシートの場合においても、貫通したピンホールになりにくく、透明性に優れるので、積層セラミックコンデンサー用などのセラミックシートの検査性に優れ、かつ巻き出し帯電が小さく、加工時の埃付着が低減できるので、セラミックシート、特に超薄膜セラミックシートの製造に好適である。
Claims (2)
- 少なくとも2層以上の積層構造からなる二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材とし、片面に離型層を有するポリエステルフィルムであって、該基材フィルムの少なくとも片面側(A面)の最外層(A層)に粒子を含有し、該粒子の平均粒径d(μm)と該最外層の層厚さt(μm)との関係が0.5≦t/d≦15であり、最外層(A層)の厚みが1〜10μmであり、該最外層側のフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102〜1×104個/mm2であり、かつ、反対面(B面)の最外層(B層)は、実質的に粒子を含有しておらず、最外層(B層)のフィルム表面の平均高さに対する10nm以上の高さの突起の個数が5×102個/mm2以下であり、B面側に離型層を有することを特徴とするセラミック離型用ポリエステルフィルム。
- 全光線透過率が88%以上であることを特徴とする請求項1記載のセラミック離型用ポリエステルフィルム。
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