JP3918547B2 - セラミックシート製造用離型フィルムの製造方法及びフィルム積層体の製造方法 - Google Patents

セラミックシート製造用離型フィルムの製造方法及びフィルム積層体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱張力下における寸法変化率の小さいセラミックシート製造用の離型フィルムに関し、より詳細には、例えば積層セラミックコンデンサ用セラミックシートを製造する際のキャリアフィルムとして用いたときに、積層セラミックコンデンサにおける内部電極の位置ずれを可及的に抑制し得ると共に、セラミックシートの剥離性や離型層面の平滑性に優れた離型フィルムと、該フィルムにセラミックシート層を積層したフィルム積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば積層セラミックコンデンサ用などのセラミックシートを製造する際には、キャリアフィルムとして離型フィルムが使用される。セラミックシートは、離型層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム等のキャリアフィルムの上に、内部電極となる金属膜を蒸着等によって形成した後、セラミック粉体とバインダー等を溶媒に分散させたスラリーをリバースロール法などによって塗布し、溶媒を加熱乾燥除去した後、キャリアフィルムを剥離除去することによって製造される。
【0003】
この様にして製造された金属膜・セラミック一体化シートを所望の寸法で積層し、熱プレスしてから矩形状に切断することによりチップ状の積層体とされる。そして積層セラミックコンデンサは、該チップ状の積層体を焼成し、当該焼成体における所定の表面に外部電極を形成することによって製造される。
【0004】
しかし近年、積層セラミックコンデンサなどの分野においては、回路部品が高密度化してくるにつれてコンデンサに対する小型化及び高性能化の要望はますます高まっており、こうした要望に応えるには、セラミックシート層の厚みを薄くし、内部電極をさらに多層化する必要が生じてくる。ところが、セラミックシート層の厚みを薄くしたり積層枚数を増やすと、内部電極の位置ずれ、セラミックシート層の剥離不良やピンホール欠陥などが生じ易くなる。
【0005】
セラミックシートを製造する際に用いるキャリアフィルムの熱変形の問題については、例えば特開2000-343663号公報には、120℃における1.47MPa応力下での寸法変化率の絶対値を、長手方向および幅方向ともに0.3%以下に抑えた離型フィルムが提案されている。ところがセラミックシートは、通常100℃付近で1.47MPa以上の張力下で製造されるため、上記の如くフィルム長手方向と幅方向の熱収縮率を抑えたフィルムを使用するだけでは、積み重ね時に内部電極の位置ずれを生じることがあり、その解決が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、内部電極の位置ずれを確実に抑えることができ、しかも、セラミックシートの剥離性や、離型層面の平滑性に優れた積層セラミックコンデンサ用セラミックシート製造用の離型フィルムを提供すると共に、該フィルムにセラミックシート層を積層したフィルム積層体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、離型フィルムの長手方向と幅方向の寸法変化率の差を狭い範囲内に収めることが、より高い張力下においても、積層セラミックコンデンサにおける内部電極の位置ずれを抑制する上で極めて重要になることを見出し、こうした知見を基に本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明に係る第1の構成は、ポリエステルフィルムの片面に離型層が形成されたセラミックシート製造用離型フィルムの製造方法であって、ポリエステルフィルムに離型層形成剤を塗布する工程と、前記離型層形成剤が塗布されたポリエステルフィルムを、該フィルムの下方及び上方から空気流を吹き付けながら水平方向に走行させつつ加熱して前記離型層を乾燥する工程と、前記離型層が乾燥されたポリエステルフィルムを、30℃以上、かつ前記乾燥する工程の乾燥温度未満の冷却ロールを用いて冷却する工程と、さらに室温まで冷却する工程とを含んで構成され、前記フィルムの下方及び上方から空気流を吹き付ける際の吹き付け口の間隔を、下方及び上方共にフィルム長手方向に50cm以下とし、前記離型層を乾燥する際の張力を0.6MPa以上4.0MPa以下とし、かつ前記冷却ロールを用いて冷却する際の冷却速度を30℃/秒以下とし、得られたセラミックシート製造用離型フィルム長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間熱処理した時の寸法変化率が、下記式(1)および式(2)を同時に満たし、且つ、該フィルムの離型層側の表面粗さが15nm以下であることを特徴とするセラミックシート製造用離型フィルムの製造方法に要旨を有している。
|ΔLTD−ΔLMD|≦0.8……(1)
−0.6≦ΔLMD≦0.6………(2)
[式中、ΔLMDはフィルム長手方向の寸法変化率(%)、ΔLTDはフィルム幅方向の寸法変化率(%)を表わす]
【0009】
また本発明に係る第2の構成は、請求項1に記載のセラミックシート製造用離型フィルムの離型層上に金属膜を形成する工程と、前記工程で形成した金属膜の上に、セラミック粉体とバインダーとを含むスラリーを塗布・加熱乾燥して、セラミックシート層を形成する工程とを含み、前記セラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと、前記離型フィルムのセラミックシート層形成面側離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が下記式(3)を満たすことを特徴とするフィルム積層体の製造方法に要旨を有している。
|A−B|<20gf/μm2………(3)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る離型フィルムおよびフィルム積層体の各構成要素について詳細に説明していく。
【0011】
本発明の離型フィルムは、少なくとも片面に離型層が形成されたポリエステルフィルムによって構成される。該ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、若しくはこれらを主成分とするポリエステル系共重合体よりなるフィルムが挙げられるが、これらの中でも2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、力学的性質、耐熱性、透明性、価格等の点から特に好適である。
【0012】
ポリエステル系共重合体を用いる場合、ジカルボン酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が用いられる。
【0013】
本発明で基材フィルムを構成するポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル系共重合体を使用する際の共重合成分の好ましい共重合比率は20質量%以下であり、20質量%を超えると、フィルムの強度や透明性、耐熱性が低下傾向を示す様になる。
【0014】
また、本発明においてポリエステルフィルムの製造に使用するポリエステル系樹脂は、0.4g/dlの濃度でパラクロロフェノール/テトラクロロエタン=6/4混合溶媒に溶解させ、30℃で測定したときの固有粘度が、0.45〜0.70dl/gの範囲のものが好ましい。樹脂ペレットの固有粘度が0.45dl/g未満のものでは、フィルムの耐引裂き性が悪くなる傾向があり、一方、固有粘度が0.70dl/gを超えると、溶融樹脂を濾過する際の圧力上昇が大きくなり高精度濾過が困難になる傾向が生じてくるからである。
【0015】
本発明で用いる上記ポリエステル樹脂には、滑剤微粒子を添加してポリエステルフィルムの製造時もしくは加工時の作業性(滑り性)を高めることが好ましい。ここで使用する粒子としては任意のものを選べるが、好ましい無機粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが、また好ましい耐熱性有機粒子としては、例えばシリコーン樹脂粒子や架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルフィルムに上記微粒子を含有させる方法も特に制限されず、例えば、ポリエステルを製造する任意の段階で添加することができ、例えばエステル化の段階、或いはエステル交換反応の終了後、重縮合反応開始前の段階で、該粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を使用し、エチレングリコールや水などに滑剤微粒子を分散させたスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、或いは、乾燥した粒子とポリエステル原料とを混練押出機を用いてブレンドする方法などを採用することもできる。
【0017】
中でも特に好ましいのは、ポリエステル原料の一部となるモノマー中に滑剤微粒子を均一分散させておき、これを、エステル化反応の前もしくはエステル化反応中に添加する方法である。この方法によれば、モノマー液が低粘度であるため、微粒子を均一に微分散し得るばかりでなく、必要に応じて行われるスラリーの高精度な濾過も容易に行えるので好ましい。特に、エステル化反応前における低温状態の原料の一部に添加することが好ましい。また、微粒子を予め含有させたポリエステルを製造しておき、該粒子含有ポリエステル樹脂ペレットと粒子未含有の樹脂ペレットとを混練押出しする方法(マスターバッチ法)を採用することも可能である。
【0018】
ポリエステル樹脂中に含有させる滑剤微粒子の量は特に制限されないが、本発明に係る離型フィルムの離型層表面を極力平滑にし、特に該表面の三次元表面平均粗さを15nm以下にするには、ポリエステル樹脂フィルム中の含有率で0.5質量%以下、特に0.3質量%以下の範囲に抑えるのがよい。
【0019】
本発明の離型フィルムは、前述の如く長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間処理したときの寸法変化率が、前記式(1)、(2)を同時に満たすものでなければならない。その理由は、離型フィルムをセラミックシート製造用のキャリアフィルムとして使用する際に、セラミック粉体とバインダー等を溶媒に分散させたスラリーをキャリアフィルム上に塗布してから、溶媒の加熱乾燥除去を行う場合、大抵の場合は長手方向に4.7MPa前後の張力をかけ、100℃前後の温度で乾燥することが多く、この張力、温度下でフィルムの寸法が安定していることが重要となるからである。
【0020】
即ち本発明の離型フィルムは、長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間熱処理したときの長手方向の寸法変化率が、-0.6%以上、0.6%以下でなければならず、より好ましくは-0.3%以上、0.3%以下、さらに好ましくは-0.15%以上、0.15%以下とするのがよい。寸法変化率が負の値(マイナス)を示すものは、熱処理時に伸びることを意味する。長手方向の寸法変化率が上記範囲を外れると、セラミックスラリーをフィルム上に塗布し溶媒を加熱乾燥除去する際に、離型フィルムが変形し易く、均一な厚みで平滑な表面のセラミックシートが得られ難くなる。
【0021】
本発明の離型フィルムにおいては、上記長手方向の寸法変化率が最も重要となるが、更に好ましくは、同様に長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間熱処理した時の幅方向の寸法変化率も-0.6%以上、0.6%以下、より好ましくは-0.3%以上、0.3%以下とすることが望ましい。この場合も、寸法変化率が負の値(マイナス)を示すものは、同様に熱処理時に伸びることを意味する。幅方向の寸法変化率がこの範囲を外れると、前記長手方向の寸法変化率ほどではないにしても、セラミックスラリーをフィルム上に塗布してから溶媒の加熱乾燥除去を行う際に、同様に離型フィルムが変形し易くなって均一な厚みで平滑な表面のセラミックシートが得られ難くなる傾向が生じてくる。
【0022】
この様に、フィルム長手方向およびフィルム幅方向の寸法変化率が夫々小さいものでは、セラミック積層体における内部電極の位置ずれは生じないように思えるが、そうでない場合も生じ得る。
【0023】
例えば、フィルム自体の熱収縮による寸法変化に比べて、フィルム長手方向にかかる張力による寸法変化が小さい場合、フィルム長手方向の寸法変化率は正の値(収縮)を示すが、フィルム幅方向には張力が負荷されていないので、寸法変化率は通常正の値(収縮)を示す。この場合、幅方向と長手方向の寸法変化率が等しければ、内部電極はフィルム幅方向と長手方向に同じ距離を移動する(等比変形)だけであるから、セラミック積層体としても、内部電極の位置ずれは生じ難い。しかし逆に、幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きい場合は、内部電極の幅方向と長手方向への移動距離が異なる(歪む)ため、セラミック積層体としたときに内部電極が位置ずれを生じ易くなる。
【0024】
従って内部電極の位置ずれを抑えるには、フィルム長手方向およびフィルム幅方向の個々の寸法変化率のみならず、幅方向と長手方向の寸法変化率の差を小さくすることが重要となる。即ち本発明の離型フィルムは、長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間熱処理した時の、フィルム幅方向の寸法変化率とフィルム長手方向の寸法変化率との差の絶対値が0.8%以下でなければならず、より好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.2%以下、最も好ましいのは0%である。寸法変化率の差の絶対値が0.8%を超えるものでは、セラミック積層体としたときの内部電極の位置ずれが生じ易くなる。
【0025】
尚、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きくなる部分は、離型フィルムの基材たるポリエステルフィルムを製造する際の幅方向両側端部である。そして基材フィルムの幅方向の両側端に近い部分で幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きくなる現象は、フィルム化の際の条件設定である程度低減できるが、完全になくすことはできず、本発明で定める前記範囲の寸法変化率は、何らかの後処理なしには得られ難い。そこで、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差を小さくするには、追って詳述する如く、例えば離型層の乾燥を空気浮上搬送式で行う方法などを採用することが望ましい。
【0026】
次に、本発明に係る離型フィルムの基材となるポリエステルフィルムの製法について説明する。
【0027】
まず、易滑性付与を目的として滑剤微粒子を含有せしめたポリエステル樹脂ペレットを十分に真空乾燥してから押出し機へ供給し、例えば280℃程度の温度でシート状に溶融押出しし、冷却固化することによって未延伸ポリエステルシートを製造する。溶融押出しに当たっては、溶融樹脂の温度が例えば約280℃に保たれる任意の位置で高精度濾過を行い、樹脂中に含まれる異物を除去することが好ましい。
【0028】
得られた未延伸シートを、例えば80〜120℃程度に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムとし、更に、フィルムの両側端部をクリップで把持して例えば80〜180℃程度に加熱された熱風ゾーンへ導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸することによって2軸配向ポリエステルフィルムとし、引き続いて、例えば160〜240℃で1〜60秒間の熱固定処理を行って結晶配向を完了させる。この熱固定処理の途中で、必要により幅方向及び/又は長手方向に1〜12%の弛緩処理を施すことも有効である。得られる長尺のフィルムをロール状に巻き取り、所望サイズにスリットする。
【0029】
また、必要によっては2層構造以上のポリエステルフィルムとすることも可能である。従って、離型層が形成される面をI層、その反対面をII層、これら以外の面をIII層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、I/II、あるいは、I/III/II等の構成が挙げられる。これらの積層フィルムは公知の方法、例えば、
▲1▼滑剤粒子が含まれていないフィルムI層に、粒子を含むポリエステル樹脂溶液を塗布し、乾燥させてフィルムII層を形成させる方法、
▲2▼滑粒子が含まれていないフィルムI層を構成するポリエステルと、粒子を含有するフィルムII層を形成するポリエステルを別々の押出し機を用いて可塑化し、これらを一組の共通ダイに導いて積層しキャストする共押出し法、などによって製造できる。
【0030】
製膜条件は特に限定されないが、フィルム両側端部において幅方向と長手方向の寸法変化率の差が極力小さく、且つ平面性の良くなる条件を選ぶことが好ましい。これらを全て満足することは困難であるが、比較的好ましい条件は次の通りである。
【0031】
まず好ましい縦延伸倍率は2.5倍以上、4.0倍以下、より好ましくは3.0倍以上、3.6倍以下である。縦延伸倍率が2.5倍未満では平面性が悪くなる傾向があり、一方、縦延伸倍率が4.0倍を超えると縦方向の配向が過度に強くなり、熱固定処理時の加熱によってフィルム両端部における幅方向と長手方向の寸法変化率が大きくなる傾向が生じてくる。横延伸の好ましい倍率は3倍以上、5倍以下、より好ましくは3.6倍以上、5.0倍以下である。横延伸倍率が3.0倍未満では平面性が悪くなり、5.0倍を超えると延伸時に破断を起こし易くなる。
【0032】
熱固定処理の温度は170℃以上、240℃以下が好ましい。該温度が170℃未満では、離型層形成剤を塗布してから乾燥処理する際に、皺などが発生して平面性が悪化し易く、逆に240℃を超えて過度に高温になると、フィルムの透明性が低下するので好ましくない。熱固定処理に際し、把持具のガイドレールを先窄まり状にして弛緩処理すると、寸法変化率、特に幅方向の寸法変化率をより小さくすることができるので好ましい。このときの幅方向弛緩率は1〜5%が好ましく、1%未満では弛緩効果が少なく、5%以上では平面性が悪化する。
【0033】
本発明で用いるポリエステルフィルムの好ましいフィルム幅は特に制限されないが、好ましくは200mm以上、6000mm以下である。
【0034】
本発明で用いるポリエステルフィルムの長手方向の熱収縮率は、0.3%以上、1.5%以下が好まく、より好ましくは、0.8%以上、1.3%以下である。一方、フィルム幅方向の熱収縮率は、0.5%以下であることが好ましい。これらの範囲を外れると、離型層の乾燥後におけるフィルム幅方向と長手方向との寸法変化率の差の絶対値が0.8%を超えることがあるので好ましくない。
【0035】
本発明の離型フィルムは、上記の様にして製膜したポリエステルフィルムに、離型層形成剤を塗布し乾燥することによって得られる。
【0036】
離型層の構成成分は特に限定されず公知の材料を使用できるが、好ましいのはポリオレフィン系樹脂、硬化性シリコーン樹脂、アルキッド樹脂であり、中でも軽い剥離強度を得るうえで特に好ましいのは硬化性シリコーン樹脂である。
【0037】
離型層構成樹脂として硬化性シリコーン樹脂を用いる場合、その種類には、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型などがあるが、いずれのタイプのものでも使用できる。
【0038】
離型層構成樹脂として使用される硬化性シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製の商品名「KS−774」、「KS−775」、「KS−778」、「KS−779H」、「KS−856」、「X−62−2422」、「X−62−2461」、「KNS−305」、「KNS−3000」、「X−62−1256」など;ダウ・コーニング・アジア(株)製の商品名「DKQ3−202」、「DKQ3−203」、「DKQ3−204」、「DKQ3−205」、「DKQ3−210」;東芝シリコーン(株)製の商品名「YSR−3022」、「TPR−6700」、「TPR−6720」、「TPR−6721」等が挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明において、離型層の乾燥硬化後の質量は、0.02g/m2以上、0.2g/m2以下が好ましい。離型層が0.02g/m2未満では剥離性能が不足気味になり、逆に離型層が0.2g/m2を超えて過度に厚くなると、硬化時間が長くなって生産性が損なわれる。
【0040】
ポリエステルフィルムに離型層形成剤を塗布する方法としては、バーコート、リバースロールコート、グラビアコート、ロッドコート、エアドクターコート、ドクターブレードコート等、公知の塗布方式を任意に選択して適用できる。
【0041】
離型層はポリエステルフィルムの片面のみに設けることが好ましい。また、片面のみに離型層を設ける場合は、その反対面に、必要に応じて帯電防止層などを設けることも有効である。
【0042】
離型層形成剤を塗布した後の乾燥法として、好ましいのは空気浮上搬送式の乾燥処理法である。この方法を採用すれば、ポリエステルフィルムとしてロール巻の両側端部近辺のフィルムを使用した場合でも、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率を本発明の規定範囲に収め易くなる。
【0043】
即ち空気浮上搬送式とは、フィルムに対して下方及び上方から空気流を交互に吹き付け、フィルムを緩やかな正弦曲線状に浮上させながら水平方向に走行させ、その間に加熱して離型層を乾燥する方式であり、この方式には、離型層を乾燥させる際にロール等がフィルムに接触しないという利点がある。この方法以外のロール搬送方式もあるが、乾燥中にフィルムがロールに接触し、フィルム表面に傷が付くことがあるので好ましくない。
【0044】
離型層を乾燥する際の張力は、0.6MPa以上、4.0MPa以下が好ましく、より好ましくは1.0MPa以上、3.0MPa以下である。この範囲を外れると、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きくなる傾向が生じてくる。
【0045】
乾燥ゾーンの長さは1m以上、50m以下が好ましく、1m未満では乾燥時間が短すぎて離型層の乾燥硬化が不十分になることがあり、逆に50mを超えて乾燥ゾーン長さが過度に長くなると、フィルムが蛇行し易くなって平面性が劣化し易くなる。フィルム搬送時の速度は1m/秒以上とするのがよく、これ未満では生産性が悪くなる。
【0046】
離型層の好ましい乾燥時間は10秒以上、60秒以下、好ましくは12秒以上、20秒以下である。10秒未満では離型層の乾燥硬化が不十分になることがあり、逆に60秒を超えて過度に長くすると、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きくなるため好ましくない。
【0047】
離型層を乾燥する際の好ましい温度は80℃以上、200℃以下、より好ましくは90℃以上、170℃以下であり、80℃未満では100℃での寸法変化率を小さくすることが難しく、200℃を超えると平面性が悪化し易く、且つフィルムが白化する恐れも生じてくる。
【0048】
乾燥時に空気流を下方及び上方から交互にフィルムに吹き付ける際の吹付け口の取付け間隔は、下方及び上方共にフィルム長手方向に50cm以下とするのがよく、より好ましくは40cm以下である。この間隔が50cmを超えると、乾燥時のフィルム幅方向及び長手方向に温度分布が生じ易くなり、寸法変化率の差が大きくなり易い。しかも搬送中のフィルムが弛み易くなり、傷などを発生する原因となる。
【0049】
乾燥時における空気流の風速は、10m/秒以上、30m/秒以下が好ましい。10m/秒未満では乾燥が不十分になり易く、30m/秒を超えると平面性が悪化し易い。
【0050】
乾燥後の冷却法は、30℃以上、乾燥温度未満の冷却ロールを用いて一旦冷却してから室温まで冷却することが好ましい。冷却ロールを用いることにより、フィルム幅方向および長手方向に渡ってより均一に冷却することが可能となる。冷却ロールの温度が上記範囲を外れると平面性が悪くなる他、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差も大きくなるので好ましくない。
【0051】
離型層の乾燥後、上記冷却ロールで冷却する際のフィルムの好ましい冷却速度は30℃/秒以下、より好ましくは25℃/秒以下である。冷却速度が30℃/秒を超えるとフィルムの平面性が悪化する傾向が表れ、フィルム幅方向と長手方向の寸法変化率の差が大きくなるので好ましくない。
【0052】
なお冷却速度は、空気浮上搬送式乾燥装置を出る時のフィルム温度をT1、冷却ロールを通過する時のフィルム温度をT2とし、乾燥装置を出てから冷却ロールを通過するまでの所要時間をt秒とすると、(T1−T2)/tで表される。なおフィルム温度は、赤外線式温度計の如く非接触式の温度計を用いて測定することが好ましい。
【0053】
本発明に係る離型フィルムの厚みは12μm以上、100μm以下が好ましく、厚みが12μm未満では強度、特に腰が弱くなってセラミックシートの成型性が悪くなり、一方、厚みが100μmを超えて過度に厚くなると、離型フィルムとして使用した後の廃棄量が増加するので不経済となる。
【0054】
本発明に係る離型フィルムの長手方向の熱収縮率は、0.1%以上、1.3%以下が好ましく、より好ましくは、0.5%以上、1.0%以下である。また、離型フィルムの幅方向熱収縮率は0.2%以下であることが好ましい。これら好適要件を外れる場合、フィルム幅方向と長手方向との寸法変化率の差の絶対値が0.8%を超える恐れが生じてくる。
【0055】
本発明に係る離型フィルムにおける離型層の表面粗さは、15nm以下でなければならず、表面粗さが15nmを超えると、セラミックシートに後述するピンホール欠陥が生じ易くなる。より好ましい表面粗さは13nm以下である。
【0056】
また、本発明のフィルム積層体は、上記離型フィルム上にセラミックシート層を積層してなるものであるが、該セラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと、前記離型フィルムのセラミックシート層形成面側離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が、下記式(3)で示される範囲であることが必要とされる。
|A−B|≦20(gf/μm2)……(3)
|A−B|のより好ましい値は10以下、更に好ましくは5以下である。
【0057】
この要件を外れると、セラミックシート層を離型フィルムから剥離してセラミックシートを製造する際の剥離性が悪化し、例えば積層セラミックコンデンサ用の薄層セラミックシートを連続生産する際に、剥離工程でセラミックシートが破れたり剥離不良を起こし、歩留りが低下するばかりでなく生産性も低下するからである。
【0058】
本発明のフィルム積層体においては、上記ダイナミック硬度AとBとの差の絶対値を上記範囲に設定することで、セラミックシート層を離型フィルムから剥離してセラミックシートを製造する際の剥離力が小さく抑えられ、剥離が容易になるばかりでなく、セラミックシートの破損も可及的に抑えることができる。
【0059】
該フィルム積層体を製造する方法としては、前記離型フィルム上に内部電極となる金属膜を蒸着等によって形成した後、セラミック粉体とバインダー等を溶媒に分散させたスラリーをリバースロール法などによって塗布し、例えば80〜120℃程度の温度で加熱乾燥してからロール状に巻き取ればよい。
【0060】
かくして得られるフィルム積層体からキャリアフィルムを剥離除去し、得られる金属膜・セラミック一体化シートを所望の寸法で積層し、熱プレスしてから矩形状に切断することによりチップ状の積層体とし、該チップ状の積層体を焼成してから当該焼成体における所定の表面に外部電極を形成すると、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0061】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例に限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記実施例における種々の物性値および特性は、下記の方法で測定されたものであり、且つ定義される。
【0062】
(1)粒子の平均粒径
粒子をエチレングリコール中に高速撹拌によって十分に分散させ、得られたスラリー中の粒度分布を、光透過型遠心沈降式粒度分布測定機(島津製作所社製、商品名「SA−CP3型」)を用いて測定し、この分布における積算50%の値を読み取って平均粒径とする。
【0063】
(2)ポリエステルフィルムの熱収縮率
離型層を塗布する前段階のポリエステルフィルムのフィルム長手方向に幅10mm、長さ250mmのサンプルを切り出し、200mm間隔で印をつけ、この間隔aを正確に測定する。次いで、該サンプルを150℃に保ったオーブンに無荷重で30分間保持した後、オーブンから取り出して室温まで冷却し、前記印の間隔bを正確に測定する。測定された上記間隔a,bから、下記式によって長手方向の熱収縮率(HSMD)を求める。
【0064】
また、フィルム幅方向に幅10mm、長さ250mmのサンプルを切り出し、200mm間隔で印をつけて、この間隔cを正確に測定する。次いで、該サンプルを150℃に保ったオーブン内に入れ無荷重で30分間保持した後、オーブンから取り出し、室温まで冷却してから、前記印の間隔dを正確に測定する。測定された上記間隔c,dから、下記式により幅方向の熱収縮率(HSTD)を求める。なお測定は3回行い、平均値を小数第3位の桁で四捨五入し少数第2位の桁で表わす。
HSMD=100×(a−b)/a……(4)
HSTD=100×(c−d)/c……(5)
【0065】
(3)離型フィルムの熱収縮率
離型層形成剤を塗布し乾燥処理して得た離型フィルムを用いた以外は、前記(2)と同様にして長手方向および幅方向の熱収縮率を求めた。
【0066】
(4)寸法変化率
離型フィルムの長手方向に10cm、幅方向に10cmの正方形のフィルム試料を切出し、長手方向に5cm(LMD0)、幅方向(長手方向に対して直行方向)に5cm(LTD0)の標線を記入する。この試料片の長手方向に4.7MPaの荷重をかけた状態で、100℃に保ったオーブン中で5分間保持する。次いでオーブンから取り出した後、荷重を取り外し、室温まで冷却してから長手方向の標線の寸法(LMD)と幅方向の標線の寸法(LTD)を測定し、下記式により、フィルム長手方向の寸法変化率(ΔLMD)とフィルム幅方向の寸法変化率(ΔLTD)を求める。なお測定は3回行い、平均値を小数第3位の桁で四捨五入し、小数第2位の桁で表わす。
ΔLMD=(LMD0−LMD)×100/LMD0(%)……(6)
ΔLTD=(LTD0−LTD)×100/LTD0(%)……(7)
寸法変化率の差の絶対値は、|ΔLTD−ΔLMD|で表される。
【0067】
(5)積み重ね時の位置ずれ
実際のセラミックスラリーの塗布と内部電極の印刷は行わず、離型フィルムを用いたモデル試験を行う。セラミックシート成型時の加熱張力下で、本発明離型フィルムの特性を維持すれば、実際の積み重ね時における位置ずれについても、この試験と同様の結果が期待できる。
【0068】
フィルム長手方向に10cm、幅方向に10cmの試料を採取し、試料の中央部に長手方向に5cm間隔、幅方向に5cm間隔で位置合わせ用の印を付け、フィルム長手方向に4.7MPaの荷重をかけた状態で、100℃に保ったオーブン中で5分間保持(模擬加熱乾燥)した後、荷重を取り外してから室温まで冷却する。この試験をフィルム幅方向に亘って10回行った後、試験した10枚を積み重ね、位置合わせ用の印の最大ずれを拡大して測定する。この位置ずれが400μm未満であるものは良好(○)、400μm以上であるものは、実際のセラミックシート成型後の積み重ねにおける位置ずれが大きく、不良(×)とした。
【0069】
(6)ダイナミック硬度の測定
ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製、商品名「DUH−201−202」)を使用し、荷重2gfの三角錐を試料のセラミックシート面あるいは離型層面に押し付け、2秒保持した後のダイナミック硬度を下記式(8)により求めた。
負荷時のダイナミック硬さ=α×P÷D2……(8)
ここで、Pは荷重(gf)、Dは圧子の試料への侵入量(μm)、αは圧子形状による定数(115°三角錐)であり、37.838である。
【0070】
なお、測定は10回行って平均値を求めた。離型フィルムの離型層面におけるダイナミック硬度の測定は、セラミックシート層を設ける前の離型フィルムに対して行ってもよいし、セラミックシート層を設けた後にセラミックシート層を剥離した離型フィルムに対して行ってもよい。
【0071】
(7)セラミックシートの剥離性
離型フィルムの離型層面にセラミックシート層を積層したフィルム積層体を5cm幅にカットし、セラミックシート層面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、商品名「ニット−31B」)を貼り、ピール法(剥離速度500mm/分でT型剥離)によりセラミックシート層を離型フィルムから剥離し、剥離後のセラミックシート全面を目視観察したときのセラミックシートの欠点を下記の基準で評価した。なお試験は5回行い、○であれば合格とした。
○:セラミックシートの破損が5回の試験で全く起らなかった場合。
△:5回の試験で1回でもセラミックシートの一部が破損した場合。
×:5回の試験で1回でもセラミックシートが完全に破れた場合。
【0072】
(8)表面粗さ(三次元平均表面粗さ:SRa)
離型フィルムの離型層表面を触針式三次元表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名「SE−3AK」)を使用し、針の半径2μm、荷重30mg、針のスピード0.1mm/秒の条件で、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたって測定し、2μm間隔で500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(株式会社小坂研究所製、商品名「TDA−21」)に取り込む。これと同様の操作を、フィルムの幅方向に2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmに渡って行い、解析装置にデータを取り込む。その後、解析装置を用いて三次元平均表面粗さSRaを求めた。
【0073】
(9)セラミックシートのピンホール評価
離型フィルムの離型層面にセラミックシート層を積層したフィルム積層体に、10cm2の範囲でセラミックシート層の反対面から光を当ててピンホールの発生状況を観察し、下記基準で評価した。
○:ピンホール多数あり、△:ピンホール殆どなし、×:ピンホールなし。
【0074】
実施例1
エチレングリコールに炭酸カルシウム粒子を添加し、ホモジェッターで5時間以上混合することによって、平均粒子径0.6μmの炭酸カルシウム粒子が分散したエチレングリコールスラリーを得た。スラリー濃度は140g/リットルであった。
【0075】
次に、炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレートを次の方法で製造した。即ちエステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸:86.4質量部とエチレングリコール:64.4質量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモン:0.03質量部と酢酸マグネシウム4水和物:0.088質量部、トリエチルアミン:0.16質量部を添加した。次いで加圧昇温し、ゲージ圧0.34MPa、温度240℃の条件でエステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻してから、リン酸トリメチル0.040質量部を添加した後、260℃に昇温した。
【0076】
リン酸トリメチルを添加してから15分後に、前記で得た炭酸カルシウム粒子を含むエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対し0.1質量%となるよう添加した。
【0077】
15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移し、減圧下に280℃で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロンフィルター[日本精線(株)製]で濾過し、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。
【0078】
このポリエチレンテレフタレートを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)してから押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出しし、表面温度を30℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸ポリエステルフィルムを得た。この溶融押出し工程で、溶融樹脂中の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。
【0079】
次にこの未延伸フィルムを、加熱されたロール群と赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差を設けたロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。引き続いて、フィルムの両側端部をクリップで把持して135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍延伸した。その後、215℃で熱処理し、この間に幅方向に2.7%弛緩してからフィルム巻き取り工程へ搬送し、厚さ31μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
この二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向中央部を使用し、付加型シリコーン系化合物(東芝シリコーン社製、商品名「TPR−6721」)のトルエン溶液(固形分濃度3質量%)にPt触媒(東芝シリコーン社製、商品名「CM670」)を「TPR−6721」の固形分100質量部に対し1質量部を加えた塗液を塗布量(wet)6g/m2で塗布し、下方及び上方の空気流吹き出し口の取付け間隔がそれぞれ38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力2.0MPa、温度160℃で16秒間加熱して離型層を乾燥させ、離型層の乾燥硬化後の質量が0.02g/m2の離型フィルムを得た。乾燥後、フィルムを50℃の冷却ロールを用いて20℃/秒の速度で冷却した後、ロール状に巻き取った。
【0081】
また、溶媒(トルエン/エタノール=50/50:質量比)中にセラミック原料(平均一次粒子径が0.6μmのBaTiO3、富士チタン社製)100質量部を混合し、分散メディアである粒径1.5mmのジルコニアビーズ(充填量:スラリーに対し200質量%)と共にボールミルで24時間分散した。次いで、バインダー(ポリビニルブチラール、積水化学工業社製)10質量部と可塑剤(ポリエチレングリコール)を、セラミック粉体とバインダーの総量に対し2質量%混合し、ボールミルで24時間分散し、さらにフィルター(孔径3μm)で濾過してペースト状のセラミックスラリーを得た。
【0082】
前記で得た離型フィルムロールを巻き出し、上記セラミックスラリーを乾燥後の厚みが10μmとなるように、ドクターブレードを用いて離型フィルムの離型層面に塗布し、100℃で5分間乾燥してセラミックシート層(セラミック粒子/バインダーの質量比:100/10)を形成し、得られたフィルム積層体をロール状に巻き取った。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0083】
実施例2
実施例1において、フィルム幅方向の側端部のフィルムを用い、表1に示す条件で離型層を乾燥処理した以外は、実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0084】
比較例1
実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを、加熱されたロール群と赤外線ヒーターで90℃に加熱し、その後周速差を設けたロール群でフィルム長手方向に3.4倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。引き続いてフィルムの両側端部をクリップで把持して135℃に加熱された熱風ゾーンに導き、その後幅方向に4.0倍延伸した。次いで、220℃で熱処理し、この間に幅方向に3.0%弛緩し、フィルム温度が50℃になったところで、フィルム幅方向の両側端部でフィルムをカットしてクリップから切り離し、フィルム巻き取り工程に搬送し、厚さ31μmの二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
【0085】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムロールの幅方向中央部のフィルムを用い、下方及び上方の空気流吹き出し口の取付け間隔がそれぞれ76cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、表1に示す条件で離型層を乾燥し冷却した以外は前記実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0086】
比較例2
前記実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを、加熱されたロール群と赤外線ヒーターで90℃に加熱し、その後周速差を設けたロール群でフィルム長手方向に3.4倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。引き続いてフィルムの両側端部をクリップで把持して135℃の熱風ゾーンに導き、その後幅方向に4.0倍延伸した。その後220℃で熱処理し、この間に幅方向に3.0%弛緩した後、フィルム温度が140℃になったところで、フィルム幅方向の両側端部でフィルムをカットしてクリップから切り離し、フィルム速度に対し1%遅い速度でフィルムを巻き取り工程へ搬送し、厚さ31μmの二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
【0087】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムロールの幅方向中央部のフィルムを使用し、下方及び上方の空気流吹き出し口の取付け間隔がそれぞれ76cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、表1に示す条件で離型層の乾燥と冷却を行った以外は、前記実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0088】
比較例3
上記比較例2と同様にして得た二軸延伸ポリエステルフィルムロールの幅方向中央部のフィルムを使用し、下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔がそれぞれ76cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、表1に示す条件で離型層の乾燥と冷却を行った以外は、前記実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0089】
比較例4
前記実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを、加熱されたロール群と赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群でフィルム長手方向に3.4倍延伸して一軸配向ポリエステルフィルムを得た。引き続いて、フィルムの両側端部をクリップで把持して135℃の熱風ゾーンに導き、その後幅方向に4.1倍に延伸した。その後234℃で熱処理し、この間に幅方向に4.2%弛緩してからフィルム巻き取り工程へ搬送し、厚さ31μmの二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
【0090】
得られた二軸延伸ポリエステルフィルムロールの幅方向中央部のフィルムを使用し、下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔がそれぞれ76cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、表1に示す条件で離型層の乾燥と冷却を行った以外は、実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0091】
比較例5
前記実施例1において、炭酸カルシウムに代えて、平均粒径2.5μmのシリカ粒子をポリエステル対し0.03質量%となるように添加した以外は、前記実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0092】
比較例6
前記実施例1において、炭酸カルシウムに代えて、平均粒径2.5μmのシリカ粒子をポリエステル対し0.03質量%となるように添加した以外は、前記実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
【0093】
この二軸延伸ポリエステルフィルムロールの幅方向中央部のフィルムを使用し、離型層の乾燥硬化後の質量が0.5g/m2となるように塗布した以外は、前記実施例1と同様にしてフィルム積層体を得た。該フィルム積層体の評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
Figure 0003918547
【0095】
表1からも明らかなように、本発明の離型フィルムは、加熱張力下における寸法安定性、セラミックシート剥離性、離型層面の平滑性のいずれにおいても優れており、特に積層セラミックコンデンサ用セラミックシート製造用キャリアフィルムとして優れたものである。
【0096】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、加熱張力下における寸法安定性が良好で、セラミックシート製造用キャリアフィルムとして用いた場合、セラミックシート積み重ね時における内部電極の位置ずれを可及的に抑制し得るほか、セラミックシートの剥離性や離型層面の平滑性に優れた離型フィルムを提供すると共に、該フィルムを使用することにより、たとえば積層セラミックコンデンサ用セラミックシート製造用として優れた性能のフィルム積層体を提供し得ることになった。

Claims (2)

  1. ポリエステルフィルムの片面に離型層が形成されたセラミックシート製造用離型フィルムの製造方法であって、
    ポリエステルフィルムに離型層形成剤を塗布する工程と、
    前記離型層形成剤が塗布されたポリエステルフィルムを、該フィルムの下方及び上方から空気流を吹き付けながら水平方向に走行させつつ加熱して前記離型層を乾燥する工程と、
    前記離型層が乾燥されたポリエステルフィルムを、30℃以上、かつ前記乾燥する工程の乾燥温度未満の冷却ロールを用いて冷却する工程と、
    さらに室温まで冷却する工程とを含んで構成され、
    前記フィルムの下方及び上方から空気流を吹き付ける際の吹き付け口の間隔を、下方及び上方共にフィルム長手方向に50cm以下とし、前記離型層を乾燥する際の張力を0.6MPa以上4.0MPa以下とし、かつ前記冷却ロールを用いて冷却する際の冷却速度を30℃/秒以下とし、
    得られたセラミックシート製造用離型フィルム長手方向に4.7MPaの張力をかけた状態で100℃×5分間熱処理した時の寸法変化率が、下記式(1)および式(2)を同時に満たし、且つ、該フィルムの離型層側の表面粗さが15nm以下であることを特徴とするセラミックシート製造用離型フィルムの製造方法。
    |ΔLTD−ΔLMD|≦0.8……(1)
    −0.6≦ΔLMD≦0.6………(2)
    [式中、ΔLMDはフィルム長手方向の寸法変化率(%)、ΔLTDはフィルム幅方向の寸法変化率(%)を表わす]
  2. 請求項1に記載のセラミックシート製造用離型フィルムの離型層上に金属膜を形成する工程と、
    前記工程で形成した金属膜の上に、セラミック粉体とバインダーとを含むスラリーを塗布・加熱乾燥して、セラミックシート層を形成する工程とを含み、
    前記セラミックシート層表面のダイナミック硬度Aと、前記離型フィルムのセラミックシート層形成面側離型層表面のダイナミック硬度Bとの差の絶対値が下記式(3)を満たすことを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
    |A−B|<20gf/μm2………(3)
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