JP3791643B2 - 有軌道台車システム - Google Patents
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Description
【発明の利用分野】
この発明は自動倉庫等に用いる有軌道台車システムの改良に関し、特に同じ軌道に複数の台車を投入する有軌道台車システムでの台車の衝突防止に関する。
【0002】
【従来技術】
自動倉庫等では、1つの軌道に複数の台車を投入するシステムがある。この場合台車間の衝突を防止する必要があり、例えば軌道に各台車の専用領域を設けて、台車が文字通りに衝突しないようにすることが知られている。しかしこの手法では倉庫の運用効率が低下する。また台車間の距離を常に監視し、充分な余裕を持って台車を制動することにより衝突を防止することも考えられる。しかしこの手法では、制動開始距離を常に大きめにせねばならず、やはり台車の運用効率が低下する。
【0003】
【発明の課題】
この発明の課題は、台車の衝突を防止しながら、台車の運用効率を高く維持することにあり、特に目的地が干渉する2台の台車を衝突防止のために停止させた場合、走行を再開出来ないという問題を解消することにある。
【0004】
【発明の構成】
この発明は、同一の軌道に2台の台車を配設して制御装置の制御により、高速とそれよりも低速の他の速度の少なくとも2種類の速度で、往復動させるようにしたシステムであって、前記軌道の一端を一方の台車のホームポジション、他端を他方の台車のホームポジションとし、かつ各台車のホームポジションから軌道の中央よりもホームポジション寄りの点までの軌道を制限ゾーンとし、制限ゾーンと制限ゾーンとの間の軌道を干渉ゾーンとするように、前記軌道を分割し、さらに台車間の車間距離が短縮する方向の運動を前進、車間距離が増加する方向の運動を後退とし、前記各台車に台車間距離を検出するセンサと制動制御部とを設けると共に、前記制動制御部で、各台車がともに干渉ゾーン内の目的地に向けて前記制御装置の制御下で高速で前進中の場合、制動開始距離L1で制動を開始して停止し、これ以外の場合、前記制動開始距離L1よりも短い制動開始距離で制動を開始するようにし、ここに、制動開始距離L1は、2台の台車が共に高速から減速を開始した際に正面衝突を防止するための制動開始距離とし、かつ前記制動開始距離L1よりも台車間距離が短くなったため第1及び第2の台車が停止した場合、一方の台車が干渉ゾーン外に退出した後に他方の台車が目的地へ向けて走行し、さらに前記他方の台車が目的地で停止した後に前記一方の台車が干渉ゾーン内の目的地へ向けて、前記より短い制動開始距離で衝突を防止しながら走行するようにしたことを特徴とする。
【0005】
ここに有軌道台車システムとしては、実施例に示す自動倉庫でのクレーンを用いた搬送システムの他に、例えば天井走行車や地上走行車を用いた搬送システム等でも良い。台車間の距離は、台車の制御装置で原点からの累積走行距離等により演算した推定値ではなく、実際にセンサで測定した値を用いる。また制動開始距離は台車の減速を開始する距離で、自己や相手方の走行状況としては、現在地や速度と前進,停止,後進の種別、目的地等を用いる。このうち前進,停止,後進の種別は正負の符号付きの速度と同義であり、速度が高速,中速,低速のように段階的にしか変化せず速度の種類が限られている場合、高速/中速/低速の種別を速度として用いても良い。
【0006】
【発明の作用と効果】
この発明では、同一の軌道を制限ゾーンとその間の干渉ゾーンに分割し、衝突の危険性を干渉ゾーン内等に限定する。また2台の台車が共に干渉ゾーン内の目的地へ向けて制御装置の制御下で前進中の場合、制動開始距離L1で制動を開始させて停止させ、正面衝突を防止する。それ以外の場合、より短い制動開始距離で制動を開始する。
【0007】
2台の台車が共に干渉ゾーン内の目的地へ向けて制御装置の制御下に高速で前進中で、制動開始距離L1で制動を開始して停止した場合、台車の走行を再開すると目的地が干渉するため再度制動が働く。そこで一方の台車を干渉ゾーンから退出させ、他方の台車を干渉ゾーン内の目的地へ走行させて、他方の台車が停止した後に、一方の台車を干渉ゾーン内の目的地へ走行させる。この場合、他方の台車は停止中か後退中なので、より短い制動開始距離で衝突を防止できる。
【0008】
なおこの明細書では、前進,後進の種別を、車間距離が短縮する方向への運動を前進、車間距離が増加する方向への運動を後退として定める。
【0009】
【実施例】
図1〜図3に実施例を示す。実施例はスタッカークレーン2,3を2台、1つの軌道4に投入した自動倉庫を例にするが、スタッカークレーンの台数は3台以上でも良く、スタッカークレーン以外の台車でもよい。また常時は軌道に沿って同じ方向に周回運動するように、複数の台車を投入した有軌道台車システムがある。このようなシステムで、軌道の修理時や複数の軌道間のあい路等で、台車を同じ軌道に沿って対面交通させるためにこの発明を適用しても良い。
【0010】
図1において、スタッカークレーン(以下「クレーン」)2,3は同じ軌道4上を往復走行し、軌道4にはドッグ5が配置されて、クレーン2,3を制動する。なおドッグ5は設けなくても良い。また軌道4の両端には各クレーン2,3毎のホームポジション6,6があり、両側には棚7,8が配設されて、ホームポジション6,6の付近に入出庫ステーション9〜12が設けてある。入出庫ステーション9〜12は入庫専用や出庫専用に区分けしても良く、配置は両端とは限らない。
【0011】
13,14は制御端末で、端末13はクレーン2を、端末14はクレーン3を制御する。15はクレーン制御装置で、端末13,14からの指令や図示しない上位コンピュータからの指令でクレーン2,3を動作させて、物品を棚7,8とステーション9〜12の間で搬送する。
【0012】
クレーン2,3の走行領域は、ノーマルゾーン(軌道の中央と自己のホームポジションの間)と、制限ゾーン(軌道中央よりもホームポジション寄りの点とホームポジションの間)の2種類である。そして制限ゾーン間の間が干渉ゾーンで、衝突の可能性があるのは、主として両クレーン2,3が共に干渉ゾーンに有る場合である。なお実施例では、クレーン2,3の走行領域は最大限でもノーマルゾーンに限られ、干渉ゾーンの全域を走行できるものではない。
【0013】
これ以外に特別の走行領域の割当として、一方のクレーンの故障やその他の能力低下時に、故障側のクレーンの走行領域を制限ゾーンに限定し、他方のクレーンの走行領域をノーマルゾーン+干渉ゾーンの全域とする。
【0014】
図2に、クレーン2,3間の距離の検出を示す。各クレーン2,3には前後に距離センサ16,17が設けてあり、距離センサ16で相互の距離を測定する。また距離センサ17とホームポジション6,6の付近に設けた反射板18,18を用いて、ホームポジションからの位置を測定する。距離センサ16,17には、例えば光センサや超音波センサを用い、反射光の強度や超音波パルスの発射後の反射音の受信までの時間等から距離を測定する。クレーン2,3の位置はセンサ17により制御装置15で既知であるが、万一の衝突を防止するためセンサ16を制御装置15と独立させ、クレーン間距離を実測する。距離センサ17はドッグ5と同様に、クレーン2,3の万一のオーバーランを防止する役割も果たし、ドッグ5を廃止してもよく、あるいは距離センサ17を用いないでも良い。
【0015】
クレーン2,3は相手方の走行状況を知る必要があり、この通信は制御装置15から独立させ、LEDやレーザダイオード等の発光部19とこの光を受光するための光電センサ20で、クレーン間通信を行う。クレーン間通信を行う通信手段は、発光部19と光電センサ20に限られず、クレーン間通信を可能とするものであればどのようなものでも良い。発光部19を用いた通信は1ビット直列通信で、自己の目的地、オート(速度は高速モードで、クレーンは制御装置15でコントロール)、マニュアル(速度は中速か低速で、クレーンは作業者が直接制御)のモード、中速/低速の種別、前進中,後退中,停止中の運動方向を通信する。目的地としては棚番号を指定するか、ノーマルゾーンか制限ゾーンかのゾーンの種別を通信する。速度は高,中,低の3種類しかなく、オートとマニュアルの中速または低速の2ビットで表現でき、前後進の状況も2ビットで表現できる。このため1ビット直列通信でも、相手方クレーンの状況を知ることができる。
【0016】
クレーン2,3には制動制御部21,21が有り、これらはドッグ5からの停止命令、距離センサ17で求めた位置、距離センサ16で求めた相手方クレーンからの距離、クレーン間通信で通知された相手方クレーンの走行状況、及び自己の走行状況から制動の要否を決定する。制動制御部21は制動開始条件を定めた表を持ち、この表は自己及び相手方の走行状況に応じた制動開始距離を記載した表である。
【0017】
実施例での制動制御を図3に示す。L1〜L4は制動開始距離で、L1は自機及び相手機が共に高速モードから減速を開始した際に正面衝突を防止するための制動開始距離である。L2は停止している相手機に対して高速モードから制動を開始して追突を防止するための制動開始距離である。L3は自機及び相手機共にマニュアル中速運転時に正面衝突を防止するため制動開始距離である。L4は自機か相手機かの一方が低速で他方が停止〜中速の場合に正面衝突を防止するための制動開始距離である。これらの制動開始距離の値自体は、クレーン2,3の速度、ブレーキ性能等に応じて定めれば良い。
【0018】
干渉ゾーンでクレーン2,3が正面衝突するのを防止するために制動開始距離L1が用意され、クレーン2,3が共にオートモード(A)で、これは目的地が共に干渉ゾーン(Z)内で、かつ共に前進(F)の場合の距離である。これ以外の条件では、クレーン2,3が高速で正面衝突することは考えられない。例えば目的地の一方が干渉ゾーン内、他方が干渉ゾーン外とする。この場合考慮する必要があるのは、両クレーンとも現在位置が干渉ゾーン内と、一方の現在位置が干渉ゾーン内で他方が制限ゾーン内の2つである。両クレーンの現在位置が共に干渉ゾーン内の場合、目的地が干渉ゾーン外のクレーンは後退中で、正面衝突は起こりえず、制動距離はより短いL2で良い。また一方の現在地が干渉ゾーン内で他方が制限ゾーンの場合、2つのクレーン2,3が最近接した時点で少なくとも一方のクレーンは停止しているはずである。このため制動開始距離は、停止しているクレーンに対して高速モードから制動して衝突を防止するための距離L2でよい。またクレーン2,3の一方が後退あるいは停止中の場合、干渉ゾーン内でクレーン間距離がL1以下に減少しても正面衝突は起こりえず、停止しているクレーンへの追突防止用の距離L2で充分である。
【0019】
高速モード(A)でクレーン間距離がL2以下の場合、無制限に停止の制動が加わる。この場合の条件は自機がオートモードで前進中であることで、信頼性の向上のため、相手方の状況は加味しない。ここで自機が待機中で停止の場合、相手機の近接に応じて後退し、衝突防止のフェイルセイフとする。また自機が後退中の場合、相手機の近接に対して後退を続行すれば良い。
【0020】
これ以外に共にマニュアルの場合、(一方でもオートの場合は、制動開始距離L2を適用)、共に中速でかつ前進中の場合、制動開始距離L3で制動する。これ以外の場合、即ち共にマニュアルで一方が低速、もしくは一方が停止または後退中の場合、最も短い制動開始距離L4を適用する。
【0021】
制動後の処置で問題になるのは、目的地が共に干渉ゾーン内で共にオートモードで停止させた場合(距離L1)である。ここで停止後に同時に復旧させると、目的地が干渉しあっていることから再度制動が働いてしまう。そこでこの場合は、一方のクレーン(ここでは1号機のクレーン2)を後退させ、干渉ゾーンから退出させる。次に好ましくは1号機が干渉ゾーンから退出するのを待って、2号機をジョブに復帰させて干渉ゾーン内での作業を行わせ、この間1号機を待機させてからジョブに復帰させる。1号機の待機時間は例えば2号機の停止までとし、この後の処理は制動開始距離L2での衝突の防止に委ねられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の有軌道台車システムの平面図とスタッカークレーンへのアクセスエリアの割当を示す図
【図2】 実施例でのスタッカークレーン間の通信を示す図
【図3】 実施例の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
2,3 スタッカークレーン
4 軌道
6,6 ホームポジション
7,8 棚
9〜12 入出庫ステーション
13,14 制御端末
15 クレーン制御装置
16,17 距離センサ
18 反射板
19 発光部
20 光電センサ
21 制動制御部
Claims (1)
- 同一の軌道に2台の台車を配設して制御装置の制御により、高速とそれよりも低速の他の速度の少なくとも2種類の速度で、往復動させるようにしたシステムであって、
前記軌道の一端を一方の台車のホームポジション、他端を他方の台車のホームポジションとし、かつ各台車のホームポジションから軌道の中央よりもホームポジション寄りの点までの軌道を制限ゾーンとし、制限ゾーンと制限ゾーンとの間の軌道を干渉ゾーンとするように、前記軌道を分割し、
さらに台車間の車間距離が短縮する方向の運動を前進、車間距離が増加する方向の運動を後退とし、
前記各台車に台車間距離を検出するセンサと制動制御部とを設けると共に、前記制動制御部で、各台車がともに干渉ゾーン内の目的地に向けて前記制御装置の制御下で高速で前進中の場合、制動開始距離L1で制動を開始して停止し、これ以外の場合、前記制動開始距離L1よりも短い制動開始距離で制動を開始するようにし、
ここに、制動開始距離L1は、2台の台車が共に高速から減速を開始した際に正面衝突を防止するための制動開始距離とし、
かつ前記制動開始距離L1よりも台車間距離が短くなったため第1及び第2の台車が停止した場合、一方の台車が干渉ゾーン外に退出した後に他方の台車が目的地へ向けて走行し、さらに前記他方の台車が目的地で停止した後に前記一方の台車が干渉ゾーン内の目的地へ向けて、前記より短い制動開始距離で衝突を防止しながら走行するようにしたことを特徴とする、有軌道台車システム。
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