JP3788240B2 - 車両用追従走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自車両前方の追従制御対象車両に追従して走行制御を行うようにした車両用追従走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用追従走行制御装置としては、例えば特開2000−43611号公報に記載されたものが知られている。
この従来例には、低速の定速走行状態から高速の定速走行状態へ向かって移行するときには、実車速から目標車速への加速度を大きくして実車速を目標車速に素早く且つスムーズに変化させる一方、高車速の定速走行状態で目標車車速を変えたときには、加速度を小さくして車速の微妙な設定を容易にするようにした車両用定速走行装置が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車両用追従走行制御装置にあっては、加速開始時の車速に応じて目標加速度を決定しているので、例えば運転者が設定した設定車速より低い車速で先行車に追従走行している場合に、先行車が隣接車線に車線変更するか又は自車両が隣接車線に車線変更することにより、先行車を認識しない状態となって、設定車速まで加速する時に、加速開始車速が低いときには、大きな加速度が設定されることにより、実車速を素早く変化させることはできるが、高車速域に近づいても大きな加速度状態を維持するので、運転者の走行感覚に合わせることができず、運転者に違和感を与えるという未解決の課題がある。
【0004】
これに対して、運転者に違和感を与えない加速度を設定して、加速開始時の車速にかかわらず設定加速度で加速を行うようにした場合には、加速度が一定であることにより、運転者に違和感を与えることはないが、加速開始車速によって設定車速までの到達時間が変化することから、加速開始車速が低いときには設定車速までの到達時間が長くなり、応答特性が悪いと感じられるという未解決の課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、運転者に違和感を与えることなく高応答特性の加速性能を得ることができる車両用追従走行制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る車両用追従走行制御装置は、自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始時の初期加速度を高く設定し、自車速の増加に伴い加速度を徐々に低くするように構成されていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に係る車両用追従走行制御装置は、自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始時の自車速が高くなるほど、加速開始時の初期加速度を小さい値に設定するように構成されていることを特徴としている。
【0008】
さらにまた、請求項4に係る車両用追従走行制御装置は、自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始車速と設定車速との偏差が小さいほど加速開始時の加速度を小さい値に設定するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
なおさらに、請求項5に係る車線追従制御装置は、請求項1乃至4の何れか1つの発明において、前記加速度制御手段は、加速度変化率を制限する加速度変化率制限手段を有し、該加速度変化率制限手段は車速が高いほど加速度変化が小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となって加速状態に移行する際に、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定することにより、初期加速度が大きくなり、後期加速度が小さくなり、運転者の走行感覚に応じた加速度変化を行うことができるという効果が得られる。
【0011】
また、初期加速時の初期加速度を高く設定し、自車速の増加に伴い加速度を徐々に低くするので、加速度変化が円滑となり運転者に違和感を与えることなく確実に防止することができるという効果が得られる。
さらに、請求項2に係る発明によれば、加速開始時の自車速が高くなるほど、加速開始時の初期加速度を小さい値に設定するので、運転者の加速感覚に応じた加速開始加速度を得ることができるという効果が得られる。
【0012】
さらにまた、請求項3に係る発明によれば、加速開始時の初期加速度を追従制御状態の加速度の最大値以上の値に設定するので、例えば追従制御対象車両に追従制御している状態で自車両が車線変更して追い越しを行う場合に、運転者の意図する大きな初期加速度を得ることができ、追い越し走行を容易に行うことができるという効果が得られる。
【0013】
なおさらに、請求項4に係る発明によれば、加速開始車速と設定車速との偏差が小さいほど加速開始時の初期加速度を小さい値に設定するので、請求項5と同様に、設定車速に近づくほど初期加速度が小さい値となり、運転者の走行感覚に応じた加速制御をより正確に行うことができるという効果が得られる。
【0014】
また、請求項6に係る発明によれば、加速度変化率制限手段で車速が高いほど加速度変化が小さくなるように加速度変化率を制限するので、車速が増加するに応じて加速度変化率が小さく抑制され、設定車速に近づくほど加速度変化率が小さくなり、運転者の走行感覚に応じた加速制御を正確に行うことができるという効果が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明を後輪駆動車に適用した場合の第1の実施形態を示す概略構成図であり、図中、1FL,1FRは従動輪としての前輪、1RL,1RRは駆動輪としての後輪であって、後輪1RL,1RRは、エンジン2の駆動力が自動変速機3、プロペラシャフト4、最終減速装置5及び車軸6を介して伝達されて回転駆動される。
【0016】
前輪1FL,1FR及び後輪1RL,1RRには、夫々制動力を発生する例えばディスクブレーキで構成されるブレーキアクチュエータ7が設けられていると共に、これらブレーキアクチュエータ7の制動油圧が制動制御装置8によって制御される。
ここで、制動制御装置8は、図示しないブレーキペダルの踏込みに応じて制動油圧を発生すると共に、後述する追従制御用コントローラ20からの制動圧指令値PBRに応じて制動油圧を発生し、これをブレーキアクチュエータ7に出力するように構成されている。
【0017】
また、エンジン2には、その出力を制御するエンジン出力制御装置11が設けられている。このエンジン出力制御装置11では、図示しないアクセルペダルの踏込量及び後述する追従制御用コントローラ20からのスロットル開度指令値θ* に応じてエンジン2に設けられたスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ12を制御するように構成されている。また、自動変速機3の出力側に配設された出力軸の回転速度を検出することにより、自車速Vsを検出する車速センサ13が配設されている。
【0018】
一方、車両の前方側の車体下部には、先行車両との間の車間距離Dを検出する車間距離検出手段としてのレーザ光を放射して先行車両からの反射光を受光するレーダ方式の構成を有する車間距離センサ14が設けられている。
そして、車速センサ13から出力される自車速Vsと車間距離センサ14から出力される車間距離Dとが追従制御用コントローラ20に入力され、この追従制御用コントローラ20によって、先行車両を捕捉しているときに車間距離を目標車間距離に制御し、先行車両を捕捉していないときに自車速VS を運転者が設定した設定車速VSET に制御する制動圧指令値PBR及び目標スロットル開度θ* を制動制御装置8及びエンジン出力制御装置11に出力する。
【0019】
この追従制御用コントローラ20は、図2に示す追従走行制御処理を実行する。
この追従走行制御処理は、先ず、ステップS1で車間距離センサ14で検出した車間距離Dを読込み、次いでステップS2に移行して、読込んだ車間距離Dが予め設定した先行車を捕捉していないと判断するための閾値Lsを超えているか否かを判定することにより、先行車捕捉状態であるか否かを判定し、D≦Dsであるときには先行車捕捉状態であると判断してステップS3に移行する。
【0020】
このステップS3では、車間距離Dと目標車間距離D* とに基づいて目標車速V* を算出し、算出した目標車速V* と車速センサ13で検出した自車速Vsとが一致するように制動圧指令値PBR及びスロットル開度指令値θR を算出し、算出した制動圧指令値PBR及びスロットル開度指令値θR を、夫々制動制御装置8及びエンジン出力制御装置11に出力して、ブレーキアクチュエータ7及びスロットルアクチュエータ12を制御する追従走行制御処理を実行してから前記ステップS1に戻る。
【0021】
一方、ステップS2の判定結果が先行車を捕捉していないときにはステップS4に移行して、車速センサ13で検出した自車速Vsを読込み、次いでステップS5に移行して、読込んだ自車速Vsが運転者が設定した設定車速VSET の近傍(VSET ±β)に到達したか否かを判定し、自車速Vsが設定車速VSET の近傍に達したときには、ステップS6に移行する。
【0022】
このステップS6では、後述する加速制御中であるか否かを表す加速制御状態フラグFを加速制御中ではないことを表す“0”にリセットしてからステップS7に移行し、自車速Vsを設定車速VSET に維持するように制動圧指令値PBR及びスロットル開度指令値θR を算出し、算出した制動圧指令値PBR及びスロットル開度指令値θR を、夫々制動制御装置8及びエンジン出力制御装置11に出力して、ブレーキアクチュエータ7及びスロットルアクチュエータ12を制御する定速走行制御処理を行ってから前記ステップS1に戻る。
【0023】
また、前記ステップS5の判定結果が、自車速VsがVSET −βより低いときには、加速制御状態であるものと判断してステップS8に移行し、加速制御状態フラグFが“1”にセットされているか否かを判定する。
このとき、加速制御状態フラグFが“0”にリセットされているときには加速開始状態であるものと判断してステップS9に移行して、このときの自車速Vsをもとに図3に示す加速度算出マップを参照して初期加速度αsを算出すると共に、特性線Liを選択する。
【0024】
ここで、図3の加速度算出マップは、横軸に自車速Vsをとり、縦軸に加速度αをとった特性線図として設定され、自車速Vsが増加するに応じて加速度変化が小さくなるように設定された複数の特性線L1〜L4が設定されている。そして、各特性線L1〜L4で設定される加速度の最大値である初期加速度αs1 〜αs4 は特性線L1から特性線L4に至るに従い徐々に小さくなるように設定されていると共に、各初期加速度αs1 〜αs4 の値が追従走行制御処理における加速度制限値と同じかこれより大きな値となるように設定されている。さらに、各特性線L1〜L4は、初期加速度αs1 〜αs4 に接続する急峻な購買で初期加速度αs1 〜αs4 の半分程度まで加速度を急減させる直線部LA と、この直線部LA より勾配が緩やかな直線部LB と、この直線部LB よりさらに勾配が緩やかな直線部LC と、加速度が一定となる直線部LD とで折れ線状に構成され、特性線L1の直線部LA が特性曲線L2〜L4の直線部LA の勾配より大きな勾配に設定されている。
【0025】
次いで、ステップS10に移行して、加速制御状態フラグFを“1”にセットしてからステップS12に移行する。
さらに、前記ステップS8で加速制御状態フラグFが“1”にセットされていると判定されたときにはステップS11に移行して、自車速Vsをもとに前述したステップS9で選択された特性線Liに従って加速度αを算出してからステップS12に移行する。
【0026】
ステップS12では、ステップS9又はステップS11で設定された加速度αs又はαを加速度指令値αR とし、この加速度指令値αR に応じたスロットル開度指令値θR を算出し、次いでステップS13に移行して、算出したスロットル開度指令値θR をエンジン出力制御装置11に出力し、このエンジン出力制御装置11でスロットルアクチュエータ12を制御して、加速制御を行ってからステップS14に移行する。
【0027】
このステップS14では、前述したステップS2と同様に車間距離センサ14で先行車を捕捉しているか否かを判定し、先行車を捕捉していない状態を継続するときには前記ステップS4に戻り、先行車を捕捉する状態となったときには前記ステップS1に戻る。
この図2の処理が動力制御手段に対応し、このうちステップS4,S5,S8〜S15の処理が加速度制御手段に対応している。
【0028】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、自車両が追従制御対象車となる先行車に追従して走行している状態では、車間距離センサ14で検出される車間距離Dが閾値Dsより小さい値となるので、車間距離Dを目標車間距離D* に一致させるようにブレーキアクチュエータ7又はスロットルアクチュエータ12によって駆動力を制御する追従走行制御処理を行う(ステップS3)。
【0029】
この追従走行制御状態から、先行車が隣接車線に車線変更するか右折又は左折することにより、先行車を捕捉しない状態となると、そのときの自車速Vsが運転者が設定した設定車速VSET に近い車速であるときにはステップS5からステップS6に移行して、加速制御状態フラグFを“0”にリセットしてからステップS7に移行して、定速走行制御処理を行って、自車速Vsを設定車速VSET に維持する。
【0030】
一方、図4に示すように、先行車に例えば設定車速VSET の1/3程度の設定車速Vs1 で追従走行している状態から、先行車が隣接車線に車線変更するか、自車両が例えば追い越し車線に車線変更することにより、先行車を捕捉しない状態となった場合には、そのときの自車速Vsが設定車速VSET から所定値βを減算した値VSET −βより大分低いVs1 であるので、加速が必要であると判断してステップS8に移行する。このとき、加速制御状態フラグFが“0”にリセットされているので、自車速Vsをもとに図3の加速度算出マップを参照して例えば初期加速度αs2 を算出すると共に、初期加速度αs2 に接続する特性線L2を選択する(ステップS9)。
【0031】
次いで、加速制御状態フラグFを“1”にセットしてから(ステップS10)、初期加速度αsj に応じたスロットル開度指令値θR を算出し(ステップS12)、算出したスロットル開度指令値θR をエンジン出力制御装置11に出力し(ステップS13)、このエンジン出力制御装置11でスロットルアクチュエータ12を駆動して図4で実線図示のように、時点t1で初期加速度αs2 に応じた加速度で加速制御を開始する。
【0032】
このとき、初期加速度αs2 が前述したように追従走行制御処理における加速度制限値と等しいか又は大きな値に設定されていることにより、自車両が追い越し車線に車線変更したときに、大きな加速度を得ることができ、応答特性を高めて追い越しを容易に行うことができる。
次いで、ステップS4に戻って、ステップS5を経てステップS8に移行し、加速制御状態フラグFが“1”にセットされているので、ステップS11に移行する。この状態では、大きな初期加速度αs2 で加速が開始されて自車速Vsが比較的大きな増加率で増加することになり、これに応じて加速度αが特性線L2の直線部LA に沿って徐々に自車速Vsの増加に伴って徐々に一定変化率で低下される。
【0033】
そして、さらに時点t2で自車速Vsが設定車速Vs2 を超えて特性線L2の直線部LB に沿う状態となると、自車速Vsの増加に対する加速度αの低下量が減少することにより、自車速Vsの増加率が緩やかとなり、さらに時点t3で自車速Vsが設定車速Vs3 を超えて特性線L2の直線部LC に沿う状態となると、自車速Vsの増加に対する加速度αの低下量がさらに減少することにより、自車速Vsの増加量がより緩やかとなる。
【0034】
その後、時点t4 で、自車速Vsが設定車速Vs4 に達すると、加速度αが最小値に固定されることにより、自車速Vsの増加率が最小となり、時点t5で設定車速VSET 近傍に達すると、ステップS5からステップS6に移行して、加速制御状態フラグFが“0”にリセットされ、次いでステップS7に移行して、自車速Vsが設定車速VSET を維持する定速走行制御処理を行う。
【0035】
一方、先行車に例えば設定車速VSET の2/3程度の車速VsH で走行している状態から自車両又は先行車が隣接車線に車線変更することにより、先行車を捕捉しない状態となった場合も、図5で実線図示のように、前述した車速Vs1 で加速を開始した場合に近い初期加速度αs4 で加速を開始し、その後自車速Vsの増加に応じて加速度αが減少することにより、自車速Vsの増加が徐々に緩やかになってから設定車速VSET に達する。
【0036】
このように、上記第1の実施形態によると、初期加速度αs1 〜αs4 がこれより後の後期加速度より大きい値に設定され、自車速Vsの増加に応じて順次加速度αの減少率が小さい方向に変更されるので、図4及び図5に示すように、加速開始時に高加速度で加速し、自車速Vsが設定車速VSET に近づくにつれて加速度αが低下して自車速Vsが緩やかに目標車速VSET に達することになり、運転者の走行感覚に応じた加速性能を発揮することができる。
【0037】
因みに、従来例のように、加速開始車速に応じて加速度を設定する場合には、図4及び図5で破線図示のように、加速開始車速が小さいときには大きな加速度が設定され、加速開始車速が大きいときには小さな加速度が設定されるので、特に図4に示すように加速開始車速が小さいときに高加速度を維持したまま設定車速VSET に達することから運転者の走行感覚から外れて違和感を与えることになる。また、加速開始車速にかかわらず加速度を一定値に設定する場合には、図4及び図5で一点鎖線図示のように、常に一定加速度となることから運転者が応答特性に物足りなさを感じる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態を図6及び図7について説明する。
この第2の実施形態では、自車速Vsが所定値以上となったときに、自車速Vsの増加に応じて加速度制限値を低下させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、追従制御用コントローラ20で実行する追従制御処理が、図6に示すように、前述した第1の実施形態における図2の処理において、ステップS10及びS11とステップS12との間に、自車速Vsをもとに図7に示す加速度変化率制限値算出マップを参照して加速度変化率制限値Δαを算出し、算出した加速度変化率制限値Δαを前回の加速度指令値αR (i-1) に加算して加速度制限値αL (=αR (i-1) +Δα)を算出するステップS21と、ステップS9又はS11で設定した加速度αが加速度制限値αL より小さいか否かを判定し、α<αL であるときに前記ステップS12に移行するステップS22と、このステップS22での判定結果がα≧αL であるときに加速度αを加速度制限値αL に制限するステップS23とが設けられていることを除いては図2と同様の処理を行い、図2との対応処理には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0039】
ここで、図7の加速度変化率制限値算出マップは、横軸に自車速Vsをとり、縦軸に加速度変化率制限値Δαをとった特性線図として構成され、加速度変化率制限値Δαが自車速Vsが“0”から比較的高車速VsH までの間は加速度算出マップで設定される初期加速度αs1 〜αs4 より少し大きい値の一定値に設定され、自車速Vsが高車速VsH より増加すると、自車速Vsの増加に応じて加速度変化率制限値Δαが直線的に減少するように設定されている。
【0040】
この図6の処理が動力制御手段に対応し、このうちステップS4,S5,S8〜S15,S21〜S23の処理が加速度制御手段に対応し、ステップS21〜S23の処理が加速度変化率制限手段に対応している。
この第2の実施形態によると、自車速Vsが高車速VsH 以下である場合には、加速度制限値αL が前回の加速度指令値αR (i-1) に図3の加速度算出マップで算出される初期加速度αs1 〜αs4 より大きい値に設定された加速度変化率制限値Δαを加算した値となることにより、前述した第1の実施形態と全く同様の加速制御が行われるが、自車速Vsが高車速VsH を超える状態となると、加速度変化率制限値Δαが自車速Vsの増加に伴って徐々に減少されるので、自車速Vsが高くなるほど加速度制限値αL も前回の加速度指令値αR (i-1) に近づき、これに応じてステップS9又はS11で設定される加速度αが制限される。
【0041】
このため、自車速が高くなるほど加速度変化が小さく抑制されるので、急激な加速度変化を確実に抑制して、運転者の走行感覚により合わせた加速制御を行うことができる。
なお、上記第2の実施形態においては、加速度変化率制限値算出マップで自車速Vsが高車速VsH を超えると自車速Vsの増加に応じて加速度変化率制限値Δαを直線的に減少させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステップ状に減少させたり、円弧状に減少させるようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態を図8及び図9について説明する。
この第3の実施形態では、加速開始時の自車速Vsと設定車速VSET との車速偏差に応じて加速度を設定するようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、追従制御用コントローラ20で実行する追従制御処理が、図8に示すように、前述した第1の実施形態における図2の処理において、前記ステップS9及びS10間に運転者が設定した設定車速VSET から加速開始時の車速Vsを減算して車速偏差ΔV(=VSET −Vs)を算出するステップS31と、算出した車速偏差ΔVをもとに図9に示す加速度ゲイン算出マップを参照して加速度ゲインKG を算出するステップS32とが介挿され、さらにステップS10及びS11とステップS12との間に設定された加速度αに加速度ゲインKG を乗算して加速度指令値αR (=KG ・α)を算出するステップS33が介挿されていることを除いては図2と同様の処理を行い、図2との対応処理には同一ステップ番号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0043】
ここで、図9の加速度ゲイン算出マップは、横軸に車速偏差ΔVをとり、縦軸に加速度ゲインKG をとった特性線図で構成されて、車速偏差ΔVが“0”であるときに加速度ゲインKG が“0”に設定され、これから車速偏差ΔVが増加するに伴って加速度ゲインKG が増加して、車速偏差ΔVが設定値ΔVsに達したときに加速度ゲインKG が“1”となり、その後車速偏差ΔVの増加にかかわらず加速度ゲインKG が“1”を維持するように設定されている。
【0044】
この図8の処理が動力制御手段に対応し、このうちステップS4,S5,S8〜S15,S31〜S33の処理が加速度制御手段に対応している。
この第3の実施形態によると、先行車に追従して追従走行している状態から先行車又は自車両が隣接車線に車線変更することにより、車間距離センサ14で先行車を捕捉しない状態となったときに、図8の処理でステップS1,S2,S4,S5,S8を経てステップS9に移行して、前述した第1及び第2の実施形態と同様に初期加速度αsi (i=1〜4)を設定すると共に、特性線Liを選択し、次いで、運転者が設定した選定車速VSET から初期加速時の車速Vsを減算して車速偏差ΔVを算出し(ステップS31)、算出した車速偏差ΔVをもとに加速度ゲイン算出マップを参照して加速度ゲインKG を算出する(ステップS32)。
【0045】
そして、算出した加速度ゲインKG に加速度αを乗じて加速度指令値αR を算出し(ステップS33)、算出した加速度指令値αR に対応するスロットル開度指令値θR を算出してスロットルアクチュエータ12を制御する。
したがって、加速開始時の設定車速VSET から自車速Vsを減算した車速偏差ΔVが設定値ΔVs以上であるときには加速度ゲインKG が“1”に設定されるので、前述した第1及び第2の実施形態と同様にそのときの自車速Vsに基づいて大きな初期加速度αsi が設定され、この初期加速度αsi にに“1”の加速度ゲインKG を乗算して加速度指令値αR が設定されるので、この加速度指令値αR に応じたスロットル開度指令値θR が算出されてスロットルアクチュエータ12が制御される。
【0046】
このため、大きな初期加速度αsi での加速制御が開始され、その後特性線Liに沿って加速度αが低下することにより、自車速Vsの増加量が前述した図4に示すように徐々に低下される。
一方、加速開始時の車速偏差ΔVが設定値ΔVsより小さい場合には、ステップS32で加速度ゲイン算出マップを参照して算出される加速度ゲインKG が“1”より小さい値となり、この加速度ゲインKG が加速度算出マップを参照して算出される加速度αに乗算されて加速度指令値αR が算出されるので、初期加速度αsi 及びその後に算出される加速度αが抑制された状態となる。
【0047】
このため、前述した第1の実施形態のように加速度算出マップの特性線L2〜L4を同一形状に設定した場合でも、車速偏差ΔVが設定値ΔVsより小さい場合には、車速偏差ΔVが小さくなるに応じて加速度ゲインKG も小さい値となり、加速度指令値αR が小さい値に抑制されることにより、加速開始時の車速偏差ΔVに応じた加速制御が行われ、運転者の走行感覚に正確に合わせた加速制御を行うことができる。
【0048】
なお、上記第3の実施形態においても、加速度ゲイン算出マップで加速度ゲインKG を車速偏差ΔVの増加に応じて線形に増加する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、特性線を運転者の走行感覚に合わせて曲線状に設定するようにしてもよく。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、図3の加速度算出マップを参照して自車速Vsに基づいて加速度αを算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、常時設定車速VSET と自車速Vsとの車速偏差ΔVを算出し、算出した車速偏差ΔVをもとに車速偏差ΔVと加速度αとの関係を表す図10の加速度算出マップを用いて加速度αを算出するようにしてもよい。
【0049】
さらに、上記第1〜第3の実施形態においては、追従走行制御処理で車間距離D及び目標車間距離D* の偏差に応じた目標車速V* を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、目標車間距離D* と車間距離Dとの偏差に基づいて目標加減速度GL * を算出し、この目標加減速度GL * に基づいて駆動力を制御するようにしてもよい。
【0050】
さらにまた、上記実施形態においては、車間距離センサ14としてレーザレーダを使用した場合について説明したが、これに限定されるものてはなく、ミリ波レーダ等の他の測距装置を適用することができる。
なおさらに、上記実施形態においては、追従制御用コントローラ20でソフトウェアによる演算処理を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、関数発生器、比較器、演算器等を組み合わせて構成した電子回路でなるハードウェアを適用して構成するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、ブレーキアクチュエータとしてディスクブレーキ7を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ドラムブレーキ等の他のアクチュエータを適用することができることは勿論、制動圧以外に電気的に制御されるブレーキアクチュエータを適用することもでき、この場合には、制動圧指令値PBRに代えて、目標電流等の指令値を演算し、これを指令値に基づいてブレーキアクチュエータを制御する制動制御装置8に出力するようにすればよい。
【0052】
さらに、上記第1〜第3の実施形態においては、後輪駆動車に本発明を適用した場合について説明したが、前輪駆動車に本発明を適用することもでき、また回転駆動源としてエンジン2を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータを適用することもでき、さらには、エンジンと電動モータとを使用するハイブリッド仕様車にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の追従制御用コントローラで実行する追従走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】自車速と加速度との関係を表す加速度算出マップを示す特性線図である。
【図4】第1の実施形態における加速開始車速が低い状態での動作の説明に供するタイムチャートである。
【図5】第1の実施形態における加速開始車速が高い状態での動作の説明に供するタイムチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態における追従走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における自車速と加速度制限値との関係を表す加速度制限値算出マップを示す特性線図である。
【図8】本発明の第3の実施形態をにおける追従走行制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施形態における車速偏差と加速度ゲインとの関係を表す加速度ゲイン算出マップを示す特性線図である。
【図10】車速偏差と加速度との関係を表す加速度算出マップを示す特性線図である。
【符号の説明】
2 エンジン
3 自動変速機
7 ブレーキアクチュエータ
8 制動制御装置
11 エンジン出力制御装置
12 スロットルアクチュエータ
13 車速センサ
14 車間距離センサ
20 追従制御用コントローラ
Claims (5)
- 自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始時の初期加速度を高く設定し、自車速の増加に伴い加速度を徐々に低くするように構成されていることを特徴とする車両用追従走行制御装置。
- 自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始時の自車速が高くなるほど、加速開始時の初期加速度を小さい値に設定するように構成されていることを特徴とする車両用追従走行制御装置。
- 自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始時の初期加速度を追従制御状態の加速度の最大値以上の値に設定するように構成されていることを特徴とする車両用追従走行制御装置。
- 自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両前方の追従制御対象車両との車間距離を検出する車間距離検出手段と、該車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出しているときに車間距離が目標車間距離を維持するように、前記車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出していないときに設定車速を維持するように夫々駆動力及び制動力の何れかを制御する動力制御手段とを備えた車両用追従走行制御装置において、前記動力制御手段は、車間距離検出手段で追従制御対象車両を検出している状態から検出しない状態となったときに、初期加速時の加速度を後期加速度に比較して大きく設定する加速度制御手段を備え、該加速度制御手段は、加速開始車速と設定車速との偏差が小さいほど加速開始時の加速度を小さい値に設定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用追従走行制御装置。
- 前記加速度制御手段は、加速度変化率を制限する加速度変化率制限手段を有し、該加速度変化率制限手段は車速が高いほど加速度変化が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用追従走行制御装置。
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