JP3781650B2 - 画像定着方法及び画像定着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写やファクシミリ、プリンター等に用いられている電子写真を用いた画像形成方法及び画像形成装置に関するものであり、特に省エネルギー化のために有用な画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から地球環境の保全のために、省資源及び省エネルギーの要求が高まっている。
電子写真においても省エネルギーのために消費電力を押さえる動きが活発化しており、特に電力消費の激しい定着の分野で低温度定着化が進んでいる。低温度定着を実現するためには当然トナーの軟化点あるいは融点を下げざるを得ず、トナーに使用されている熱可塑性の樹脂の特性として、軟化点あるいは融点が下がると必然的に溶融粘度が下がるという性質がある。この性質は、熱可塑性の樹脂の軟化点あるいは融点は樹脂の分子量、分子量分布、結晶化度、架橋度、分子間力等によって決まり、同一構造の樹脂の軟化点あるいは融点を下げるためには、このうち分子量、架橋度を下げるか、分子量分布を狭くせざるを得ない。このうち、分子量分布は樹脂の保存性の限界から下限が決まってくるので、分子量自体を下げると必然的に狭くなってしまう。一般に、分子量を下げると分子鎖は短くなるために絡み合いが緩くなり溶融粘度は下がる。また、分子量分布が狭くなっても、やはり分子鎖の絡み合いが緩くなり溶融粘度は下がる。更に、分子間の架橋度を下げるとそれぞれの分子が動きやすくなるために溶融粘度は下がる。このような溶融粘度が下がった状態のトナーであっても、特公昭51―29825公報に開示されているような方法でオフセットなく定着できるようになった。
【0003】
また、これらの方法を応用したものに特許第2516886号公報記載の技術がある。これは、特公昭51―29825公報記載の技術における発熱体を線状発熱体とし、パルス状の通電をすることが構成要件となっており、待機時間短縮のための余熱の不要性や機内への余分な熱の放出を抑える形となっている。
【0004】
但し、画一的なパルス状の通電加熱では、画像先端部分における温度が、発熱体やその支持体あるいはプラテンローラが冷えているので低くなる。また、逆に画像後端部では発熱体や支持体があるいはプラテンローラが蓄熱するために高くなり、先端後端で定着温度に差が発生してしまう。
その場合の対応としては、画像先端部分の温度設定を高くして定着不良を起こさないようにし、後端部分の温度上昇に対しては、トナーの所謂ゴム域幅を広げて対応することになる。
しかし、省エネルギーのためにトナーの融点を下げるとゴム域幅を充分にとるのは非常に難しく、ホットオフセットが発生しやすくなり、あるいはホットオフセットが発生しないまでもトナーの溶融粘度が下がり過ぎるために画像に光沢が発生しやすくなってしまう。
しかも、最初から温度を高めに設定するのでは、せっかくの省エネルギーの手段も効果が低下してしまい、更なる省エネルギーの技術が切望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記従来技術に鑑みて、更なる省エネルギーの達成とオフセット等を起こさない安定性を実現したトナー画像定着方法及び画像定着装置を提供することにする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の(1)「軟化点が50〜160℃であり、粘度が軟化点以上の温度で10〜10 13 〔センチポイズ〕であるトナーを定着する、線状発熱体と、これに懸架された無端ベルトと、前記発熱体にパルス通電を制御するための通電制御手段と、該通電手段によるパルス通電を通電するための通電手段と、画像を有する被定着物を前記無端ベルトと共働して挟持する加圧体とを含み、前記被定着物中の画像が、前記発熱体により前記無端ベルトを介して加熱され、その後冷却工程を経て前記画像を有する被定着物が前記無端ベルトから分離される定着装置であって、前記通電制御手段は、1枚の被定着物中の前記画像の定着過程の加熱開始時から加熱終了時にかけて、前記発熱体への単位時間当たりの通電パルス幅あるいは通電パルス数を減少させ、かつ、前記画像を有する被定着物の後端が前記発熱体位置の通過を終了する前に、前記画像の発熱体位置の通過を終了するとともに通電を停止して、トナーを完全溶融状態としないものであることを特徴とする画像定着装置」、(2)「前記通電制御手段は、定着器がトナーを溶融定着し得る温度でないときは、前記被定着物中の画像の最先端部が前記発熱体位置に到達する以前に、前記発熱体に1パルス以上印加し、定着器がトナーを溶融定着し得る温度であるときは、前記被定着物中の画像の最先端部が前記発熱体位置に到達するまで、前記発熱体に通電しないことを特徴とする前記第(1)項に記載の画像定着装置」により達成される。
【0008】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明においては、画像を有する被定着物が、線状発熱体と、これに懸架された無端ベルトと、前記発熱体にパルス通電するための通電手段と、画像を有する被定着物を前記無端ベルトと共働して挟持する加圧体とを含む画像定着システムであり、前記被定着物中の画像が前記発熱体により前記無端ベルトを介して加熱され、その後冷却工程を経て前記被定着物が前記無端ベルトから分離される画像の定着システムであって、前記画像は、結着剤の主成分が樹脂であるトナーを用いて形成されたものであり、該トナーの軟化点あるいは融点が50〜160℃であり、粘度が軟化点あるいは融点以上の温度で10〜1013〔センチポイズ〕であることを特徴とするトナー画像の定着システムで、前記発熱体への通電パルス幅を、1枚の被定着物中の前記画像の定着過程中で変化させるか、前記発熱体への単位時間当たりの通電パルス数を、1枚の被定着物中の前記画像の定着過程中で変化させることによりこれらの問題を解決することに成功した。
【0009】
トナー画像の定着は、一般的にトナー画像を加圧下にトナーの溶融成分、特にバインダ樹脂を加熱して、支持体に融着させることにより行なわれる。支持体への良好な融着のためにはトナー画像をより強く加圧することが好ましく、そのためには、支持体上にトナー画像を有する被定着物がMD(通紙方向)で稜線状の極く細い加熱された加圧体により次々に連続して押されることが望ましい。本明細書における「線状発熱体」は、このような稜線状の極く細い加熱された加圧体を意味し、例えばニクロム線のような発熱体を意味するものではない。このような発熱体は、抵抗加熱、誘導加熱、高周波振動加熱、レーザ加熱等の公知の適宜手段により加熱することができる。また、印加する通電パルスの形状は、方形波、三角波、正弦波等どのような形状を呈していても良く、また、パルス間は完全にオフ状態にする必要もない。
【0010】
即ち、1枚の被定着物中の画像領域の定着開始から定着終了にかけて、通電パルス幅あるいは通電パルス数を減少させることで、1枚の被定着物中の画像領域において定着開始から定着終了にかけて徐々に通電エネルギーを下げることにより、発熱体の表面温度があまり上昇しないようにすることで、トナーにかかる温度がほぼ一定になるようにすることにより、ホットオフセットの発生や異常な光沢の発生を防ぐことができる。
【0011】
実際には、定着開始時と定着終了時の通電量の比が、MD(通紙方向)で420mmの長さを有するとき(前記被定着物がJIS P 0138によるA3サイズの長辺方向に給排紙されたとき)の換算で、10:9.5〜10:1であれば、本発明のように安定した定着が行なわれることが判明し、使用条件の変動を考えると好ましくは10:8〜10:2、さらに好ましくは10:8〜10:3、更にもっと好ましくは10:7〜10:4であれば良く、従来の方法に比べて遥かに省エネルギーを実現しているといえる。なお、通電量(電力量)の下げ方は連続的であっても、あるいは階段状であっても良く、除々に下がれば良い。但し、これらような設定に関しても多少のばらつきや使用条件による変動があるので、本発明のように加熱後の冷却工程も必要となる。
【0012】
一般に、トナーの定着は所謂「樹脂のゴム域状態」においてなされる。トナーにかかる温度が上昇するにつれて、トナー樹脂の軟化がはじまり、樹脂の粘度が下がって行く。但し、ここで云う「ゴム域状態」は、高分子材料変形のため力を加えた後に力を抜いた場合の弾性復元力ではなく、むしろ、材料の示す応力減少因(クリープ因)である。従来の定着ローラシステムにおけるトナーは、軟化から完全溶融状態までの所謂ゴム域の範囲内では樹脂の粘度が非常に高いので自己凝集力が高く、定着ローラにトナーの一部が付着するオフセットの発生は殆ど起こらない。しかし、完全溶融状態になると樹脂の粘度低下が著しく自己凝集力の低下が起こり、定着ローラに一部トナーが付着するという現象が起こる。
【0013】
一般に熱可塑性樹脂を加熱すると軟化点までは固体であり、軟化点を超えると柔らかになり粘性を呈し、これを更に加熱し、融点を超えるともっと柔らかくなり粘い液体状態になるが、このときの軟化点から融点までの温度の幅や、軟化点から融点までの粘性及び融点以上の粘性は、樹脂の分子量、分子量分布、結晶化度、架橋度、分子間力等により異なる。従って、実際に軟化点から融点までの間に10〜1013センチポイズの溶融粘度を呈するものであれば、本発明においては軟化点以上の温度から使用できるし、当然融点以上の温度でも使用できる。したがって、ここで云う「ゴム域状態」は、高分子材料変形のため力を加えた後に力を抜いた場合の弾性復元力ではなく、むしろ、材料の示す応力減少因(クリープ因)となるものである。
【0014】
トナーの溶融粘度が低いということは、当然ゴム域状態における粘度低下の傾きも著しく、このようなトナーの系において、一般的な従来の熱ローラ定着方式ではローラ表面にシリコンオイル等を塗布する以外の方法では、ホットオフセットの問題により使用できない。なお、オイル等の塗布の方法もあまり粘度が下がると効果がなく、また、オイル塗布の方法はコストが高いものになりユーザーの不利益となる。
【0015】
したがって、実際の熱ローラタイプの定着においては、トナーのゴム域範囲内における粘度範囲で定着を行なうが、特公昭51−29825公報に記載のように熱の印加直後、定着部材から引き剥がさずにトナーの冷却後部材より引き剥がすという方法をとれば、トナーが冷却固化した後に引き剥がすので溶融時にトナーの粘度が下がっていても、定着部材にトナーが付着するということはないので、従来に比べ、非常に余裕度が高いものであるといえる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明における加熱冷却の構成を有する画像定着装置の1例を示す。図1の装置例においては、抵抗又は誘導発熱体(H1)と、この発熱体(H1)を内部に有し加熱定着ローラを兼ねるガイドローラ(G3)とガイドローラ(G1)とガイドローラ(G2)とに懸架された無端ベルト(B)と、発熱体(H1)にパルス通電するための通電制御手段(A1)と、画像(P1)を支持体(P2)上に有する被定着物(P3)を無端ベルト(B)と共働して挟持する加圧体(P4)とを含む。この例における加圧体(P4)は、加圧ローラ(G4)とガイドローラ(G5)の間に懸架された搬送ベルト(Cv)から構成されている。
【0017】
ガイドローラ(G1)とガイドローラ(G2)のうちいずれが駆動ローラで他方がローラであってもよく、また、いずれかが冷却のためのローラであってもよいが、この例においては図中矢印符号で示される無端ベルト(B)の通常の時計針回動方向即ち被定着物(P3)が左から右へ搬送される点で、ガイドローラ(G2)が被定着物(P3)中の画像(P1)冷却のためのローラとなっている。図1の装置おいては、冷却手段を兼ねるガイドローラ(G2)は充分な冷却表面積を採るために、定着ローラを兼ねるガイドローラ(G3)及び駆動ローラを兼ねるガイドローラ(G1)よりも大径なものとなっている。本発明においては、この定着装置にガイドローラ(G2)以外の、又はガイドローラ(G2)に代わる他の冷却手段を設けてもよい。被定着物(P3)中の画像(P1)は、発熱体(H1)により無端ベルト(B)を介して加熱され、その後、冷却手段としてのガイドローラ(G2)による冷却工程を経て画像(P2)を有する被定着物(P3)が無端ベルト(B)から分離される。
【0018】
この例の定着装置における制御系は、図示されてない通電スイッチ手段を含むヒータ即ち発熱体(H1)の加熱用の通電制御手段(A1)と、駆動ローラを兼ねるガイドローラ(G1)の駆動用のパルスモータ(M)の回転制御のための制御手段(A2)とを有し、これら制御手段(A1)及び(A2)は、被定着物(P3)中の画像(P1)の位置をモニタするためのセンサ(S)からの画像信号を受診しRAM(B2)及びROM(B3)に接続するコントローラ(B1)により制御され、電源(A3)からの通電量を調節する。また、加熱定着ローラを兼ねるガイドローラ(G3)には、温度センサ、例えばサーミスタ(SM)が配置され、サーミスタ(SM)からの出力信号は、制御手段(A1)に送信されて、その中の図示されてない通電スイッチ手段の切換操作のために用いられる。トナー像の定着のための通電加熱においては、必ずしもパルス通電である必要はなく、例えば被制御量としての電圧及び/又は電流量がアナログ量であってもこのようなアナログ被制御量を制御するため、制御信号としてデジタル信号を用いることは不可能ではないが、ここでは制御量のみでなく、被制御量としての通電量自体をもパルス通電量として用いる。このような制御系の利点は、饒舌を尽くすまでもなく、当業者にとって明らかである。
【0019】
図2は、このような通電制御手段(A1)のヒータ(H1)に対する通電パルスとヒータ(H1)の温度変化の1例を示す。まず、前記画像位置検出センサ(S)の出力信号を基準にした通電タイミングに合わせて、被定着物(P3)中の画像(P1)が加熱定着ローラを兼ねるガイドローラ(G3)に到達する前にヒータ(H1)に、通電パルスの通電周期(C)又は/及びパルス当りの通電時間(P)が多くされて、高通電モードで通電されると、図中の実線グラフで示されるように、ヒータ(H1)は急速に立上り加熱される。ヒータ(H1)には1パルス以上印加される。ヒータ(H1)は被定着物(P3)中の画像(P1)が到達したときには図中の1点鎖線グラフで示されるように、トナー画像を溶融定着し得る温度になっているので、後は連続した一定の通電パルスタイミング及び通電パルス幅をヒータ(H1)し、その後、位置検出センサ(S)の出力信号が支持体(P2)上に画像をモニタしなくなり出力信号がローレベルになった時点を基準にした遮断通電遮断タイミングに合わせて、通電制御手段(A1)はヒータ(H1)への通電を停止する。通電が停止されてもヒータ(H1)は、暫くは温度が充分高いので僅か残余の画像の定着は未だ実行される。
【0020】
図3は、ヒータ(H1)に通電パルスを印加する通電制御手段(A1)を、コントローラ(B1)により制御するための制御系の1例を示すブロック図である。RAM(ランダムアクセスメモリ)(B2)にはコントローラ(B1)に接続するセンサ(S)、ROM(リードオンリーメモリ)(B3)、制御手段(A1)及び(A2)をシーケンス制御するためのシーケンスプログラムを呼出及び更新可能に格納し、また、インバータ回路(A12)の出力としての温度センサ(SM)のレベル信号とキュードライバ部(A11)のパルス信号との間のインターフェース用プログラムを呼出及び更新可能に格納する。
【0021】
一連の通電パルスのパルス数をNn、通電周期をCn、通電時間をPnとすると、これらのデータ(Nn、Cn、Pn)は予めROM(リードオンリーメモリ)(B3)に呼出可能に格納されており、ROM(B3)にコントローラ(B1)からアドレス信号が与えられることによってデータ(Nn、Cn、Pn)が読み出され、レジスタ部(B4)、データラッチ部(B5)へ順次送られる。このレジスタ部(B4)、データラッチ部(B5)は、前記コントローラ(B1)により制御され、データNnはNパルスカウンタ部(B6)へ送られ、データ(Cn、Pn)は通電時間作成カウンタ部(B7)へ送られる。
【0022】
この通電時間作成カウンタ部(B7)は、データ(Cj、Pk)により1パルス分の通電時間を決定し、その出力データを通電制御手段(A1)のキュードライバ部(A11)に入力する。このキュードライバ部(A11)は、通電時間データに応じた順序で所要の通電パルスを出力してヒータ(H1)を駆動する。同時に、前記Nパルスカウンタ部(B7)は、通電パルスの出力数をカウントし、データNiだけカウントした時点で前記コントローラ(B1)へ信号を送る。
【0023】
これにより、前記コントローラ(B1)は次のサイクルのアドレス信号を出力すると共に前記レジスタ部(B4)、データラッチ部(B5)を制御する。例えば、本発明においてはCn=10msで一定とし、温度立上げ時にはP0=9ms、N0=30とし、恒温制御時にはP1=2ms、N1=213〜215とすることができる。なお、各モードでの通電時間、パルス数は、予め収集されたデータに基づき設定されている。
【0024】
したがって、このような通電制御手段(A1)は、1枚の被定着物(B3)中の各画像(B1)の定着過程中で変化可能なものである。また、図中では、ヒータ(H1)の通電制御手段(A1)は、通電パルスの通電周期(C)の密度が高くパルス当りの通電時間(P)が多い通電モードと、次の定常通電モードが表わされているが、このような1枚の被定着物(B3)中の全画像について、発熱体としてのヒータ(H1)は、熱遮断性に優れているときには、その発熱温度が経時と共に段々上昇するので、定着過程の加熱開始時から加熱終了時にかけて、発熱体としてのヒータ(H1)への単位時間当たりの通電パルス幅あるいは通電パルス数を減少させることが望ましい。
【0025】
したがって、本発明における通電制御手段(A1)は、被定着物(P3)中の画像(P1)の最先端部が発熱体即ちヒータ(H1)の位置に到達するまで、発熱体(H1)に通電せず、かつまた、通電制御手段(A1)は、画像(P1)を有する支持体(2)の後端が発熱体位置の通過を終了する前であっても、画像(P1)の発熱体位置の通過を終了するとともに通電を停止するように構成することが好ましい。
【0026】
図4には、先に説明した本発明の定着装置例に関連し、該装置における前記通電微調整手段により制御されるヒータ(H1)のための通電開始、停止及び切換手段としての制御回路の一例が示されている。この例においては、トランジスタ(TR11)とトランジスタ(TR12)とでヒータ(H1)のための自走マルチバイブレータを形成し、(TR11)と(TR12)とを交互に導通させ、トランスの1次側コイル(L11)への交番入力に対応する高電圧の2次誘導出力を2次側コイル(L21)に得、これを、負荷(R1)として抵抗(R1)と(R11)を有するヒータ(H1)の電源とすることにより、パルス通電加熱の際の通電開始、停止及び切換手段を行なうものであり、また、この自走マルチバイブレータ回路の制御を、トランジスタ(TR1)と抵抗(Rx)と図1における温度センサのサーミスタ(SM)とで構成され、該自走マルチバイブレータ回路の負荷変動に対して負の入出力関係が成立する帰還回路により行なう。
【0027】
この自走マルチバイブレータは、1方のトランジスタ例えば(TR11)が導通するとトランスの1次側コイル(L11)が通電し、その結果、2次側コイル(L21)には若干時間を置いて2次誘導出力を得てこれをヒータ源とすると同時にこの2次出力により、コイル(L11)にはまた若干時間を経て発生する3次誘導出力を得て、この時間を置いて得られた3次出力を今度は他方のトランジスタ(TR12)に帰還してこれを導通させることによりトランジスタ(TR12)の場合にもトランジスタ(TR11)の場合と同様の動作をさせ、以下交互にこの動作を繰り返させて、マルチバイブレータとするものである。コンデンサ(C1)は、回路中のコイル(L11)と共働して両トランジスタの導通時定数(即ちパルス通電頻度)を定めるためのものであり、また、この回路の電源には無論整流器(D)からの直流成分が充てられる。
【0028】
したがって、この自走マルチバイブレータは、本発明の定着装置におけるヒータ(H1)の加熱上限温度及び下限温度を決めるものであり、結果的に、前記制御手段(A1)による図2中の温度制御範囲を決めるものである。プッシュプル型のスイッチ(SW)は、ヒータ(H1)を高発熱量(R1+R2)と低発熱量(R2のみ)に切換えることができるようになっている。
【0029】
さらに、回路素子をサ−ジ電圧から保護するための従来公知の手段を組み合わせることができ、例えば、整流器(D)のための抵抗(R3)部分には突然の過電圧流から整流器(D)を保護するため、ツェナー破壊電圧に達すると導通するツェナーダイオードを抵抗(R3)+整流器(D)に並列配置することにより、過電流バイパス路を設けることができる。この回路装置の場合には、パルス出力であるという利点だけでなく、ダイオードと抵抗からなるような一般的な高時定数の逆起電力吸収回路を含まないという利点がある。
【0030】
図5に示されるように、むろん、ヒータ(H1)を、例えば高温(R11+R22)、中温(R11+R32)、低温(R11のみ)の3段階の温度に切り換えるようにすることができ、さらに、例えば5段階の温度に切り換えるようにすることができる。
【0031】
図6には、本発明の定着装置に関連し、ヒータ(H1)のための通電開始、停止及び切換手段としての制御回路の他の一例が示されている。この場合も、ヒータ(H1)の負荷(R1)は、低温加熱の場合は(R11)のみで、高温加熱の場合は(R11+R12)として示され、また、温度切換手段(7)は電気スイッチ(SW)として示されている。この図の例において、ヒータ(H1)のラインの通電量開閉及び切換手段は、通電回路制御器(CR)とトランジスタ(TR)とにより構成され、通電回路制御器(CR)は、継電器の電磁コイル(MC)を作動させ継電器を開閉しうる電磁開閉器(X)から成り、トランジスタ(TR)は、この電磁開閉器(X)を駆動するためにサーミスタ(SM)のような温度センサを経た出力を増幅する。出力信号が温度センサ(SM)を経てトランジスタ(TR)のベ−ス電極に入るとこのトランジスタ(TR)は導通して電磁開閉器(X)を励磁する。この例におけるダイオード(D)と抵抗(Rx2)からなる回路は、電磁開閉器(X)が遮断されたときに発生する逆起電力を吸収して回路を保護する。また、整流器(D)は、通電回路制御器(CR)とトランジスタ(TR)とにより構成される通電量調整手段の電源である。
【0032】
図7には、本発明の定着装置の別の1例が示される。図1の装置においては無端ベルト(B)は加圧ローラ(G4)とガイドローラ(G5)の間に懸架されているが、図7に示される例の定着装置のように、搬送ベルト(Cv)を発熱体(H1)を内部に有する定着ローラ(G3)と加圧ローラ(G4)でニップし、ローラ(G4)のフリクションで被定着物(P3)搬送してもよい。図7の装置おいては、冷却手段を兼ねるガイドローラ(G1)は、充分な冷却表面積を採るために、加圧ローラ(G4)よりも大径なものとなっている。
【0033】
【実施例】
以下、実施例で説明する。
本発明においては、被制御量としての通電量はパルス波形であるが、このようなパルス通電がヒータ(H1)に印加されると、定着に直接作用する発熱体としての加熱定着ローラ(G3)においてはヒータ(H1)からの発熱量が多重拡散され、ローラ(G3)からの発熱量出力チャートは、図8のようにパルスの出力を積分してひとつの波形として扱った積分波形になる。
(実施例1)
図8は、本発明の1例におけるヒータ(H1)の印加されるパルス出力とガイドローラ(G1)の熱分布の関係を示す図であり、図9は、ガイドローラ(G1)の積分波形の熱分布の関係を示す図であり、図10は、本発明における発熱体(ヒータ)が棒状の場合の、ガイドローラ(G1)の前記図9の積分波形の熱分布に与える各画像(I)、(II)、(III)、(IV)の影響を示し、本発明が、画像を通紙してどの程度省エネルギー化ができるかを示した図である。
図9は、実際に画像を通紙してどの程度省エネルギー化ができるかを示し、図中、(I)、(II)、(III)、(IV)は、用紙が線状発熱体上を通過したときのパルス積分値と定着ローラの温度変化の様子を表わしている。
図10中、▲1▼〜▲5▼は用紙中の画像を表わしている。図9中、(I)、(II)、(III)、(IV)は、用紙が線状発熱体上を通過したときのパルス積分値と定着ローラの温度変化の様子を表わしている。
(I)、(II)はパルス幅、密度共に一定の値であり、時間と共に定着ローラの温度は上昇している。これに対して(III)、(IV)パルス幅、またはパルス密度を可変にした場合、パルスの積分値は時間と共に減少しているが、温度は最初オーバーシュートがあるものの、蓄熱があるためにほぼ一定温度を示している。
消費エネルギーは、パルスの積分値に対応するので図9中符号Qの分だけ省エネルギーが達成できたことになり、本発明による省エネルギー効果は明白であるといえる。
【0034】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により、更なる省エネルギーの達成とオフセット等を起こさない安定性を実現したトナー画像定着方法及び画像定着装置が提供されるという極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における加熱冷却の構成を有する画像定着装置の1例を示す。
【図2】本発明における加熱通電制御手段の発熱体に対する通電パルスと発熱体の温度変化の1例を示す。
【図3】本発明における加熱通電制御手段を、コントローラにより制御するための制御系の1例を示すブロック図である。
【図4】本発明における加熱通電制御手段により制御される発熱体のための通電開始、停止及び切換手段としての制御回路の一例を示す。
【図5】本発明における発熱体の高温、中温、低温の3段階の温度に切り換えを示す図である。
【図6】本発明における発熱体のための通電開始、停止及び切換手段としての制御回路の他の一例を示す。
【図7】本発明における画像定着装置の他の1例を示す。
【図8】本発明におけるヒータ(H1)の印加されるパルス出力とガイドローラ(G1)の熱分布の関係を示す図である。
【図9】ガイドローラ(G1)の積分波形の熱分布の関係を示す図である。
【図10】本発明における発熱体(ヒータ)が棒状の場合の、ガイドローラ(G1)の積分波形の熱分布に与える各画像(I)、(II)、(III)、(IV)の影響を示し、本発明が、画像を通紙してどの程度省エネルギー化ができるかを示した図である。
【符号の説明】
A1 通電制御手段
A11 キュードライバ部
A12 インバータ回路
A2 モータ制御手段
A3 電源
B 無端ベルト
B1 コントローラ
B1 コントローラ
B1 コントローラ
B2 RAM
B3 ROM
B4 レジスタ部
B5 データラッチ部
B6 Nパルスカウンタ部
B7 通電時間作成カウンタ部
C 通電周期
C1 コンデンサ
CR 通電回路制御器
Cv 搬送ベルト
D 全波整流器
G1 ガイドローラ(駆動ローラ)
G2 ガイドローラ
G3 ガイドローラ(定着ローラ)
G4 加圧ローラ
G5 ガイドローラ
H1 発熱体
L11 1次側コイル
L21 2次側コイル
M 駆動モータ
MC 電磁コイル
N 通電パルス数
P 通電時間
P1 画像
P2 支持体
P3 被定着物
P4 加圧体
Q 省エネルギー量
R1 抵抗
R11 抵抗
R3 抵抗
Rx 抵抗
Rx2 抵抗
S 画像位置センサ
SM サーミスタ
SW 電源スイッチ
TR トランジスタ
TR1 トランジスタ
TR11 トランジスタ
TR12 トランジスタ
X 電磁開閉器
Claims (2)
- 軟化点が50〜160℃であり、粘度が軟化点以上の温度で10〜10 13 〔センチポイズ〕であるトナーを定着する、線状発熱体と、これに懸架された無端ベルトと、前記発熱体にパルス通電を制御するための通電制御手段と、該通電手段によるパルス通電を通電するための通電手段と、画像を有する被定着物を前記無端ベルトと共働して挟持する加圧体とを含み、前記被定着物中の画像が、前記発熱体により前記無端ベルトを介して加熱され、その後冷却工程を経て前記画像を有する被定着物が前記無端ベルトから分離される定着装置であって、前記通電制御手段は、1枚の被定着物中の前記画像の定着過程の加熱開始時から加熱終了時にかけて、前記発熱体への単位時間当たりの通電パルス幅あるいは通電パルス数を減少させ、かつ、前記画像を有する被定着物の後端が前記発熱体位置の通過を終了する前に、前記画像の発熱体位置の通過を終了するとともに通電を停止して、トナーを完全溶融状態としないものであることを特徴とする画像定着装置。
- 前記通電制御手段は、定着器がトナーを溶融定着し得る温度でないときは、前記被定着物中の画像の最先端部が前記発熱体位置に到達する以前に、前記発熱体に1パルス以上印加し、定着器がトナーを溶融定着し得る温度であるときは、前記被定着物中の画像の最先端部が前記発熱体位置に到達するまで、前記発熱体に通電しないことを特徴とする請求項1に記載の画像定着装置。
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