JP3777359B2 - 精密スリーブ型レセプタクル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光トランシーバ・モジュール等の光送受信器の部品に用いられる精密スリーブ型レセプタクルに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いたデータ通信において、双方向通信用モジュールとして光トランシーバ・モジュールが用いられている。光トランシーバ・モジュールは、発光素子や受光素子を備え、光ファイバと接続する為に、光ファイバーケーブル端部に設けられた光コネクタが嵌合する光レセプタクルが設けられている。
【0003】
例えばこのような光レセプタクルとして、図4(a)に、光学素子のLD(レーザダイオード)100の出力光を光ファイバ側のSCコネクタ101に光結合させるための光レセプタクル102の構造を示す(特許文献1参照)。
【0004】
図4(a)に示す光レセプタクル102は、LD100及び集光レンズ103等を備える光学素子ユニットと、相手方の光ファイバ側の光コネクタ101のフェルールと嵌合し保持する円筒状のジルコニア製スリーブ104と、該スリーブ104を保持する中空筒状のスリーブホルダ105と、これらを覆う金属製カバー106とから構成される。またスリーブ104の内部にはジルコニア製スタブフェルール107が固定されている。
【0005】
このような光レセプタクルでは、ジルコニア製スリーブがスリーブホルダ内に装着された部品が、レセプタクルとして用いられる。このレセプタクルには、(i)円筒状の精密スリーブ(剛体スリーブと呼ばれることもある)を使ったものや、(ii)円筒状に割りが入った弾性スリーブ(割りスリーブと呼ばれることもある)を使ったもの等がある(特許文献2参照)。
【0006】
図4(a)に示す光レセプタクルは、精密スリーブを使ったレセプタクルを備えるものである。図4(b)、(c)は、同図(a)のレセプタクルを示すものであり、同図(b)は圧入前の斜視図であり、同図(c)は圧入後の断面図である。このレセプタクル110は、図4(b)に示すように、円筒状のジルコニア製スリーブ104が、中空筒状の金属ホルダ105の内部に圧入されて保持されて構成されている。
【0007】
また図4(c)に示すように、ジルコニア製スリーブ104の外径とスリーブホルダ105の筒状空間の内径は略同一に形成されている。図4(c)に示す如き精密スリーブを用いたレセプタクルは、割りスリーブを用いたレセプタクルと比較して、wiggle試験に対して、非常に有効であり、光変動が安定する。なお、wiggle試験とは、レセプタクルモジュールにコネクタを挿入し、コネクタを左右上下に動かした時(曲げた時)の光変動を見る試験である。
【0008】
【特許文献1】
特開2001-66468号公報(図5)
【特許文献2】
特開平10-332988号公報(段落番号0002〜0004)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ジルコニア製スリーブ104の内部には、光レセプタクルとして使用される際に、図4(a)に示すようにスタブフェルール107や、光コネクタ101のフェルールが嵌合することになる。しかしながら精密スリーブを使ったレセプタクルは、スリーブホルダ105にジルコニア製スリーブ104を圧入した際に、ホルダからの圧力によりスリーブ104の内径が小さくなる為、そのままではスタブフェルールやコネクタのフェルール等が入り難くなってしまう。
【0010】
そのため、圧入後のレセプタクル110は、ジルコニア製スリーブ104の内部を1個ずつ研磨して、小さくなった穴の内径を所定の大きさに戻す作業が必要になる。しかし穴の研磨作業は、作業工程が増えると共に、製品の歩留りが大きくなり、製品のコストを上昇させてしまうという問題がある。
【0011】
なお精密スリーブの代りに割りスリーブを使用した場合には、スリーブを圧入する必要がないから、そのような問題は発生しない。しかし割りスリーブを使用したレセプタクルは、前記したように、精密スリーブを使用したレセプタクルと比較してwiggle試験を行うと光変動が低下するという問題がある。
【0012】
また、割りのない精密スリーブを用いる際に、スリーブホルダの内径よりもスリーブの外径を少し小さくして、スリーブホルダに圧入せずに接着剤でスリーブホルダ内に固定する手段が考えられる。この場合には、スリーブの内径が変化することはない。しかし、レセプタクルの使用条件である、マイナス40℃〜プラス85℃程度の環境中で、接着剤が経時変化により軟化或いは硬化する虞がある。そうすると、スリーブの中心軸がズレて正常な光の伝搬が妨げられてしまい性能低下を引起こす。また、接着剤がはみ出して光の経路に付着したり、使用中に接着剤中からガスが放出されることもある。このような点から、レセプタクルにおいて接着剤を使用することは、信頼性が低いという問題がある。
【0013】
本発明は上記従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、性能が優れ、信頼性の高い精密スリーブを使用したレセプタクルにおいて、製造が容易であり製造コストも安価であるレセプタクルを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光コネクタのフェルールが嵌合し該フェルールを保持する為の円筒状空間を有する精密スリーブが、中空筒状の内部空間が設けられたスリーブホルダに圧入されて中空筒状の内部空間内に固定保持されている精密スリーブ型レセプタクルにおいて、スリーブホルダの中空筒状の内部空間を、精密スリーブの外径よりも大きく形成された内径拡大部と、精密スリーブの外径とほぼ同じ大きさに形成されたスリーブ保持部とから構成するとともに、精密スリーブの円筒状空間を、フェルール外径に対応した内径を有する通常内径部と、それよりも大径の内径を有する拡大内径部とから構成し、スリーブの拡大内径部側がスリーブホルダのスリーブ保持部側となるようにスリーブがスリーブホルダに圧入保持されており、かつスリーブの拡大内径部の長さが少なくとも、スリーブがスリーブ保持部と接触する部分の長さであるように設けられていることを特徴とする精密スリーブ型レセプタクルを要旨とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の精密スリーブ型レセプタクル(以下、単にレセプタクルと略記する)の一実施態様を示す断面図である。本発明のレセクタプル1は、中空筒状の内部空間が設けられたスリーブホルダ2に、割りのない筒状に形成されたジルコニア製の精密スリーブ3が、圧入することで挿入されて固定保持されてなる精密スリーブ型レセプタクルである。
【0016】
図2は図1のレセプタクルの断面図である。本発明レセプタクル1に用いられるスリーブホルダ2は、図1及び図2に示すように、中空筒状の内部空間を有しているが、その内部空間の直径が精密スリーブ3の外径よりも大きく形成された内径拡大部21と、精密スリーブ3の外形とほぼ同じ大きさに形成されたスリーブ保持部22とから構成されている。
【0017】
スリーブホルダ2は、SUS等の金属、プラスチック成形品その他の材料が用いられる。SUS金属は溶接が可能であり、耐久性等も優れているといった利点がある。また精密スリーブ3は、ジルコニアセラミックス、SUS等の金属等から形成することができる。一般に、光ファイバケーブル先端のフェルールはジルコニアセラミックス製なので、該フェルールが嵌合する精密スリーブ3もジルコニアセラミックスから形成すると相性が良く、またジルコニアセラミックスは寸法精度の点においても優れている。
【0018】
また図2に示すように、スリーブホルダ2の精密スリーブ3を保持する為の筒状の内部空間は、精密スリーブ3の圧入側が開口部として形成され、他方が光源からの光路以外は壁面として形成された底部として形成された筒状凹部の形状を有する。このスリーブホルダ2において、内径拡大部21は開口部側にL2の長さに設けられ、底部24側にスリーブ保持部22がL5(L3+L4)の長さに設けられている。また、この筒状凹部の長さ(全長:図2においてL1で示す)は、精密スリーブ3の長さP1(図3参照)よりも、長さL4の分だけ大きく形成されている。
【0019】
図3は図1の精密スリーブ3の断面図である。図1及び図3に示す精密スリーブ3は、外側が長手方向に亘り外径が均一な大きさの段差のない円筒状に形成されている。精密スリーブ3の全長は、スリーブホルダ2の開口部23側と面一になるように圧入された場合、精密スリーブ3の全長P1がスリーブホルダ2の筒状凹部の長さL1よりも長さL4だけ短く形成されている。その結果、精密スリーブ3の圧入後は、筒状凹部の底面部24側との間に空間が形成される。
【0020】
また精密スリーブ3の内部は、光コネクタのフェルール或いはスタブフェルール等が嵌合し、該フェルール等を保持する為の円筒状空間として形成されている。この空間は、図1及び図3に示すように、通常内径部31及び拡大内径部32から構成されている。
【0021】
通常内径部31の内径は精密スリーブ3内に嵌合する光コネクタのフェルール或いはスタブフェルール(特に図示しない)等の外径に対応する設計値の内径を有する。精密スリーブ3の内部に嵌合されるフェルールとして、例えば2.5mm、1.25mmのものが規格品として流通している。精密スリーブ3の内径は、このようなフェルールの大きさに応じた設計値に形成することができる。例えば、上記フェルールに対応した内径の設計値としては、2.5mm(内径)+1μ〜-0μ(公差)又は1.25mm+1μ〜-0μといった数値が挙げられる。
【0022】
精密スリーブ3の通常内径部31は、スリーブホルダ2の開口部23側に設けられ、開口部23端部からP2の長さに形成されている。図1に示すように、このスリーブ3の通常内径部31の長さP2は、スリーブホルダ2の内径拡大部21の長さL1よりも若干短く形成されている。なお、この通常内径部31の長さP2は、スリーブホルダ2の内径拡大部21の長さL1と同じに形成してもよい。通常内径部31におけるスリーブホルダ2の内径拡大部21の部分に対応する部分は、精密スリーブ3の外部がスリーブホルダ2と接触しない部分である。すなわち、通常内径部31は、スリーブホルダ2と接触しないから、内部の穴が小さくなることはない。
【0023】
拡大内径部32は精密スリーブ3のスリーブ保持部22と対応する部分に形成される。スリーブ保持部22の部分に対応する部分とは、少なくともスリーブ保持部22と精密スリーブ3とが接触する部分を言う。拡大内径部32の内径は、通常内径部31の設計値に対して、スリーブホルダ2への圧入後にスリーブ保持部との接触により圧力が加わり収縮し内径が小さくなる分だけ、大きく形成すれば良い。この収縮量は、スリーブホルダの材質等によっても異なる。例えば金属製のスリーブホルダにジルコニアセラミックス製の精密スリーブを圧入する際、内径が2.50mm、又は1.25mmに形成した場合、圧入後のスリーブ保持部に対応する部分の精密スリーブでは、内径が数μm小さくなる。
【0024】
精密スリーブ3の拡大内径部32は、スリーブホルダ2のスリーブ保持部22に対応して、スリーブホルダ2の底面部24側となるように形成され、拡大内径部32の長さP3は、少なくとも精密スリーブ圧入後に外側がスリーブ保持部22に接触する部分がカバーされる長さである。図1及び図3に示す態様の精密スリーブ3において拡大内径部32の長さP3は、精密スリーブ3がスリーブ保持部22に接触する部分の長さよりも若干長く形成されている。このように、拡大内径部22の長さが、少なくともスリーブ保持部22との接触部がカバーされるように形成することで、確実に内径の収縮をカバーすることができる。
【0025】
スリーブホルダ2において、スリーブ保持部22の長さ(L5)は、少なくとも精密スリーブ3を確実に保持可能な長さが必要である。具体的なスリーブ保持部22の長さ(L5)として、精密スリーブ3の長さ(P1)の10%以上〜50%以下であることが好ましい。10%未満では十分な保持ができない虞があり、又50%を超えると圧入による収縮を受ける部分が大きくなってしまい、結合精度が低下する。またスリーブ保持部22の長さ(L5)は、0.80〜1.50mm以上に形成するのが好ましい。
【0026】
一般に精密スリーブ3は、長さ(P1)が4.00〜5.00mm程度に形成される。この場合、スリーブ保持部22の長さ(L5)は、0.80〜1.50mm程度に形成するのが最適である。
【0027】
本発明レセプタは、双方向通信(特に画像を含む)向けデータ通信用の回線に用いられる光送受信機のレセプタクル部品として最適に利用することができる。
【0028】
【実施例】
本発明レセプタクルの一実施例を示す。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
ジルコニアセラミックス製の精密スリーブを、外径が直径1.70mm、図3に示す全長(P1)を4.00mm、通常内径部31の内径を1.25mm、その長さ(P2)を3.00mm、拡大内径部32の内径を1.35mm、その長さ(P3)を1.00mmに成型した。SUS製のスリーブホルダを、図2に示す内径拡大部21の内径を1.80mm、その長さ(L2)を3.20mm、スリーブ保持部22の内径を1.70mm、その長さ(L5)を1.00mmに形成した。上記ジルコニア製精密スリーブを上記SUS製スリーブホルダに圧入してレセプタクルを得た。
【0029】
【発明の効果】
本発明は、精密スリーブを使用するレセプタクルであるから、割りスリーブを使用したレセプタクルと比較して光変動等に対し優れた特性を有すると共に、また接着剤等を使用しない為に、信頼性が高い精密スリーブ型レセプタクルが得られる。
【0030】
更に本発明は、スリーブホルダの中空筒状の内部空間を、精密スリーブの外径よりも大きく形成された内径拡大部と、精密スリーブの外径とほぼ同じ大きさに形成されたスリーブ保持部とから構成したことにより、精密スリーブをスリーブホルダに圧入する際に、内径拡大部では精密スリーブをスムーズに挿入することが出来るとともに、スリーブ保持部において確実に精密スリーブが保持される為に、製造が容易である。
【0031】
しかも、内径拡大部では精密スリーブがスリーブホルダに圧迫されることがないので、内径拡大部に対応する部分の精密スリーブの収縮が防止出来る為に、その部分の再研磨等の作業が不要となり、製造コストも安価であるレセプタクルが得られる。
【0032】
また本発明の精密スリーブ型レセプタクルにおいて、精密スリーブがスリーブホルダのスリーブ保持部に対応する部分の内径を大きく形成した場合、圧入後にスリーブ保持部に接触する部分の精密スリーブが収縮したとしても、精密スリーブのスリーブ保持部に対応する部分は、拡大内径部として形成されている為に、設計値に近い状態に維持することができ、更に製造が容易であるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明レセプタクルの一実施態様を示す断面図である。
【図2】 図1のスリーブホルダの断面図である。
【図3】 図1の精密スリーブの断面図である。
【図4】 (a)は従来の光レセプタクルの1例を示す断面図であり、(b)は(a)のレセクタプルの分解斜視図であり、(c)は(a)のレセプタクルの断面図である。
【符号の説明】
1 レセプタクル
2 スリーブホルダ
3 精密スリーブ
21 スリーブホルダの内径拡大部
22 スリーブホルダのスリーブ保持部
31 精密スリーブの通常内径部
32 精密スリーブの拡大内径部
Claims (1)
- 光コネクタのフェルールが嵌合し該フェルールを保持する為の円筒状空間を有する精密スリーブが、中空筒状の内部空間が設けられたスリーブホルダに圧入されて中空筒状の内部空間内に固定保持されている精密スリーブ型レセプタクルにおいて、スリーブホルダの中空筒状の内部空間を、精密スリーブの外径よりも大きく形成された内径拡大部と、精密スリーブの外径とほぼ同じ大きさに形成されたスリーブ保持部とから構成するとともに、精密スリーブの円筒状空間を、フェルール外径に対応した内径を有する通常内径部と、それよりも大径の内径を有する拡大内径部とから構成し、スリーブの拡大内径部側がスリーブホルダのスリーブ保持部側となるようにスリーブがスリーブホルダに圧入保持されており、かつスリーブの拡大内径部の長さが少なくとも、スリーブがスリーブ保持部と接触する部分の長さであるように設けられていることを特徴とする精密スリーブ型レセプタクル。
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