JP3773221B2 - 吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸及び織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,吸水性と吸放湿性に優れ,インナー,中衣,シャツ,ブラウス,スポーツウエア等の衣料素材に好適な交絡混繊糸とこの交絡混繊糸を主体とする織編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維,特にポリエステル繊維は,木綿,麻,ウール,絹等の天然繊維と比べて強力,耐摩耗性,寸法安定性,ウオッシュアンドウエア性,速乾性等の点で優れており,衣料用素材として広く使用されている。
しかし,ポリエステル繊維は,一般に天然繊維の有する優れた吸水性能や吸湿性能を有しておらず,着用時の発汗によりムレ,ベタツキ等が生じ,天然繊維よりも快適性の点で劣っている。
【0003】
上記問題を解決するために,従来よりポリエステル繊維に吸水性を付与する試みがなされている。例えば,V字,U字及び1個以上の凹部を有する異型断面糸を用いたり,あるいは上記異型断面糸に吸水加工剤を併用する方法(特開昭54−131045号公報,特開昭52−148218号公報,特開昭53−106848号公報,特開昭55−122074号公報)等が知られている。これらの方法では,ある程度の吸水性能を付与することは可能であるが,天然繊維の持つ吸湿性能は有しておらず,天然繊維に比べて着心地の点で劣っていた。
【0004】
上記の問題を解決するために,ポリエステル繊維に吸水性と吸湿性の両性能を付与する試みも種々なされている。例えば,後加工によってポリエステル繊維に吸水性と吸湿性を付与する方法として,ラジカル開始剤や電子線を用いてビニルカルボン酸をグラフト重合する方法(特開平4−146271号公報,特開平4−272272号公報)が知られているが,この方法は,加工処理によって繊維の強力が低下する,風合が硬くなる,付与した吸水性や吸湿性の耐久性が悪いといった種々の問題を有していた。
【0005】
また,原糸製造段階でポリアルキレングリコールをポリエステルに配合した複合繊維(特公昭39−5214号公報),繊維表面から中空部まで貫通する貫通溝を有する繊維形成性ポリマーよりなる中空繊維(特公昭60-37203号公報),有機スルホン酸化合物を均一に分散させたポリエステル繊維をアルカリ処理した微多孔性繊維(特開昭60−167969号公報)等が提案されている。
しかし,これらの繊維は,いずれも吸湿性のレベルが低く,また吸水性と吸放湿性の両性能を同時に十分なレベルで満たすものではなかった。
【0006】
これらの問題を解消するために,10%以上の吸湿性能を有する樹脂を芯部,ポリエステルを鞘部として構成された芯鞘型複合繊維(特開平2-99612号公報)が提案されている。しかしながら,この繊維は, 原糸製造段階で十分な吸水性と吸放湿性を有するものの,染色加工時,特に減量加工時に繊維の鞘部が破損して, 芯成分である吸湿性樹脂が溶出してしまい,織編物の状態では所期の吸水性と吸放湿性が得られないという問題があった。
このように,ポリエステル繊維に十分なレベルの吸水性と吸放湿性を付与することは非常に難しく,未だ実用化された例は認められない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,上記の問題を解決し,ポリエステル繊維の触感と基本性能を有しながら,高度の吸水性と吸放湿性とを備えた交絡混繊糸と, この交絡混繊糸を主体とした織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は,上記の課題を解決するために,次の構成を有するものである。
(1) 非水溶性ポリエチレンオキシド変性物又は前記変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分より構成された芯鞘型複合糸Aと,下記式(1)で示される吸水率比が1.5以上であるポリエステル異型断面糸Bとが交絡した混繊糸であって,混繊糸における芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとの混合重量比a/bが20/80〜80/20であり,かつ芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率がポリエステル異型断面糸Bより大きいことを特徴とする吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸。
吸水率比=X/Y (1)
ただし,Xはポリエステル異型断面糸Bの吸水率(%),Yはポリエステル異型断面糸Bと同繊度,同フイラメント数のポリエステル丸断面糸の吸水率(%)であり,吸水率(%)は, 糸条を筒編し,常法により精練,染色を施した編地を試料として用い, ラローズ法(JIS L−1907 5.3)により測定した1分後の値である。
(2) ポリエステル異型断面糸Bの乾熱収縮率が2%以下である上記(1) 記載の吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸。
(3) 前記(1) 又は(2) 記載の交絡混繊糸を主体とする吸水性と吸放湿性に優れた織編物。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下,本発明について詳細に説明する。
本発明では,交絡混繊糸に高度の吸水性と吸放湿性を付与するために,交絡混繊糸を構成する一方の糸条として,非水溶性ポリエチレンオキシド変性物又はこの変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分と, ポリアミドからなる鞘成分で構成された芯鞘型複合糸Aを用いる必要がある。
【0010】
本発明でいう非水溶性ポリエチレンオキシド変性物とは,水溶性ポリエチレンオキシド(その特性が大きく損なわれない範囲で,プロピレンオキシド,ブチレンオキシド等の共重合成分を含有したものも含む。)を適当な架橋剤を用いて架橋処理したもので,吸水,吸湿性を有し,かつ 300℃以下の温度で溶融加工が可能なものをいう。
架橋剤としては,アルデヒド,ジアルデヒド,ジアミン,ジイソシアネート,ビスエポキシ化合物等が用いられ,架橋処理によって着色したり,ポリエチレンオキシドが有している吸水,吸湿性能を著しく低下させないものを選定して使用すればよい。
このような非水溶性ポリエチレンオキシド変性物は,例えば,住友精化工業株式会社から「アクアコーク」の商品名で市販されている。
【0011】
本発明で芯成分の一部に用いたり,鞘成分として用いるポリアミドとしては,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11,ナイロン12,ナイロンMXD(ポリメタキシリレンアジパミド)等のホモポリマー及びこれらを主体とする共重合体もしくは混合物が好ましい。
【0012】
本発明では,芯成分として非水溶性ポリエチレンオキシド変性物を単独で用いることもできるし,この変性物と上述のポリアミドを混合して用いることもできる。混合物として用いる場合には,両者を予め溶融混合してマスターチップ化したものを用いてもよい。
【0013】
芯鞘型複合糸Aにおける非水溶性ポリエチレンオキシド変性物の含有率は,使用するポリアミドの種類や芯成分と鞘成分の複合比により得られる繊維の吸放湿性が異なるため,本発明では特に限定されるものではないが,一般には芯鞘型複合糸Aの0.5〜60重量%の範囲にあることが好ましい。非水溶性ポリエチレンオキシド変性物の含有率が0.5重量%未満では,目的とする吸放湿性が得られない場合があり,含有率が60重量%を超えると,製糸性に問題が生じるおそれがあるので好ましくない。
【0014】
本発明の交絡混繊糸に用いる芯鞘型複合糸Aは,常法に従って製造することができる。ここで,芯鞘成分の複合比は,使用するポリマーや要求される性能の度合いにより異なるが,重量比で15/85〜85/15の範囲にあることが好ましい。これよりも芯成分の割合が少ないと,吸放湿性に劣り,逆に芯成分が多くなりすぎると,製糸性に問題が生じる場合があり,好ましくない。
【0015】
次に,上述の芯鞘型複合糸Aと交絡混繊するポリエステル異型断面糸Bとしては,前記式(1)で示される吸水率比が1.5以上であることが必要である。ここで,吸水率比が1.5より小さい場合には,前述の芯鞘型複合糸Aと交絡混繊した際の吸水性能が, ポリエステル丸断面糸と芯鞘型複合糸Aとの混繊糸の吸水性能とほとんど差異がなくなり,本発明の目的とする高度の吸水性が得られないので好ましくない。
本発明で使用するポリエステル異型断面糸Bの断面形状については,前記式(1)を満足するものであれば特に制限はないが,一般には,トリローバルやヘキサローバル等の断面形状のポリエステル糸では(1)式を満足するものが少なく好ましくない。前記(1)式を満足するポリエステル異型断面糸の一例としては,例えばU型,V型,L型,W型及び特開昭63-50576号公報に記載の九葉型等が挙げられる。
【0016】
上述のポリエステル異型断面糸のポリマー成分としては,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のホモポリマー及びこれらを主体とし,イソフタル酸,5−ナトリウムスルホイソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,アジピン酸等のジカルボン酸成分や他種のグリコール成分との共重合体や, 上記ポリエステルの混合物が好ましく用いられる。
【0017】
上述の芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとを交絡混繊する方法としては,エアージェットノズルやインターレーサー等を使用した公知のエアー加工技術を用いて行えばよく,交絡の程度を示す交絡数は,通常20〜 120個/mの範囲にあればよい。
【0018】
本発明では,上述の混繊糸における芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとの混合重量比a/bが20/80〜80/20の範囲にある必要がある。この範囲より芯鞘型複合糸Aの混合割合が少なくなると,目的とする吸水性と吸放湿性が得られず,好ましくない。また,この範囲よりポリエステル異型断面糸Bの混合割合が少なくなると,ポリエステルの触感が得られなくなる。また,混繊糸を用いて製織し,ブラウスやシャツ用途に展開するために行う減量加工の工程で高減量率の加工が実施できず,ソフトな風合を得ることが難しい。さらに,染色時,ポリエステル異型断面糸Bを染色する分散染料が芯鞘型複合糸Aを汚染する程度が大きくなり,染色堅牢度が不良となる場合がある。
【0019】
さらに,本発明では,交絡混繊糸を形成する芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率がポリエステル異型断面糸Bより大きいことが必要である。
本発明でいう沸水収縮率は,次の方法で測定され,算出されるものである。
かせ掲機で糸を一定長に巻き上げた後,初荷重(0.1g/d)下でかせ長(P)を測定する。次に,無拘束の状態で沸騰水中で30分間処理し,自然乾燥後,初荷重(0.1g/d)下でかせ長(Q)を測定し,次式によって算出する。
沸水収縮率(%)=〔(P−Q)/P〕×100
芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率がポリエステル異型断面糸Bの沸水収縮率以下になると,芯鞘型複合糸Aの表面にポリエステル異型断面糸Bの構成フイラメントのループを十分に発現させることが困難となり,ポリエステルの触感が得られないばかりでなく,芯鞘型複合糸Aのポリアミド成分が糸条の表面に露出するため耐光堅牢度が不良となる場合もあり,好ましくない。
【0020】
本発明において,芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとの沸水収縮率差については特に限定されるものではないが,芯鞘型複合糸Aがポリエステル異型断面糸Bよりも3%以上,特に5%以上高いことが好ましい。
【0021】
また,ポリエステル異型断面糸Bの乾熱収縮率は特に限定されるものではないが,製編織して得られる布帛のふくらみ感とソフトな風合を向上させるためには2%以下,特に−3%以下であることが好ましい。
本発明でいう乾熱収縮率とは,次の方法で測定し,算出するものである。
まず,約30cmの試料に0.05g/d の荷重をかけて試料長I0 を測定した後,試料に荷重をかけずに 160℃の温度下に30分間放置する。次に,試料に0.05g/d の荷重をかけて試料長I1 を測定し,次の式で算出する。
乾熱収縮率 (%) =〔(I0 −I1 )/I0 〕×100
【0022】
次に,本発明の吸水性と吸放湿性に優れた織編物は,上述の交絡混繊糸を主体として構成された織物,編物であり,上述した交絡混繊糸を 100%使用したものでもよいが,本発明の目的とする性能を阻害しない範囲であれば,他の糸条と交織,交編等により得ることもできる。
【0023】
【作用】
非水溶性ポリエチレンオキシド変性物は,それ自体で高度な吸放湿性と吸水性を有してこのような非水溶性ポリエチレンオキシド変性物を芯成分とし,ポリエステルを鞘成分とした複合糸の場合,染色時,特に減量加工時に芯成分が吸水膨潤し,鞘成分であるポリエステルとの水膨潤差が大きくなり,糸の鞘割れが発生する。
【0024】
本発明において,ポリエステル異型断面糸Bとともに交絡混繊糸を構成する芯鞘型複合糸Aは,その一成分として非水溶性ポリエチレンオキシド変性物を含有しているが,本発明のように,鞘成分にポリアミドを使用し,芯成分として非水溶性ポリエチレンオキシド変性物を用いた芯鞘型複合糸の場合,染色加工による芯成分の吸水膨潤作用に追随して,鞘成分であるポリアミドも多少膨潤し両者の水膨潤差が小さくなる結果,糸の鞘割れが発生しない。このため,この芯鞘型複合糸は,染色加工時においても鞘割れによる前記変性物の溶出がなく,織編物の状態で高度の吸放湿性を発揮することができる。
【0025】
上述の芯鞘型複合糸の芯成分である非水溶性ポリエチレンオキシド変性物自体は高度な吸放湿性と吸水性を有しているものの,本発明のように,その鞘成分にポリアミドを配置すると,高度の吸放湿性を発揮するが,吸水性については若干の向上が認められる程度であった。
しかしながら,本発明の交絡混繊糸は,吸水性を有するポリエステル異型断面糸Bと,ポリエステル異型断面糸Bよりも沸水収縮率が大きい芯鞘型複合糸Aとで構成されているので,染色時に受ける熱処理によって,芯鞘型複合糸Aの表面に主としてポリエステル異型断面糸Bの構成フイラメントの弛みと空隙を十分に発現させたることができ,この空隙による導水,吸水作用と,ポリエステル異型断面糸Bの異型断面による吸水性能が相まって,高度な吸水性を発揮することができる。
また,ポリエステル異型断面糸Bとして乾熱収縮率が2%以下の糸条を用いれば,製編織して得られる布帛のふくらみ感とソフトな風合を一層向上させることができる。
さらに,上記の交絡混繊糸を主体とする本発明の織編物は,ポリエステルの触感が得られるばかりでなく,着用した際,汗を吸汗,吸湿し,芯鞘型複合糸Aが膨潤しても,芯鞘型複合糸Aは皮膚と直接接触しないため,ぬめりやベタツキを感じず,快適性を保持することができる。
【0026】
【実施例】
次に,本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。なお,実施例における性能の測定と評価は,次の方法で行った。
(1) 吸放湿性
試料を温度 105℃で2時間乾燥して重量W0 を測定した後,温度25℃,相対湿度60%の条件下で2時間調湿して重量W1 を測定し,下記式(イ)により初期水分率M0 を求める。
次に,このサンプルを温度34℃,相対湿度90%の条件下で24時間吸湿させた後,重量W2 を測定し,水分率M1 を下記式(ロ)により算出する。
続いて,このサンプルを温度25℃,相対湿度60%の条件下でさらに24時間放置した後,重量W3 を測定し, 放湿後の水分率M2 を下記式(ハ)により算出する。
M0 (%)=〔(W1 −W0 )/W0 〕×100 (イ)
M1 (%)=〔(W2 −W0 )/W0 〕×100 (ロ)
M2 (%)=〔(W3 −W0 )/W0 〕×100 (ハ)
(2) 吸水性
試料を温度25℃,相対湿度60%の条件下で2時間調湿した吸水前のサンプルの重量Wを秤量した後,JIS L−1907 5.3で規定された吸水率測定法によって1分後の吸水サンプルの重量W60を測定し,下記式により吸水率Rを求める。
R(%)=〔(W60−W)/w〕×100
(3) 染色堅牢度
染色した試料の染色堅牢度について,次のJISに従って変退色及び汚染の程度を級で判定する。
耐光堅牢度 : JIS L−0842
洗濯堅牢度 : JIS L−0844
汗堅牢度 : JIS L−0848
摩擦堅牢度 : JIS L−0849
(4) ぬめり感
試料を上述の吸水率測定法を用いて1分間吸水させた後,試料のぬめりをハンドリングによる官能試験により,有,無の2段階で評価する。
(5) ふくらみ感
試料について,ハンドリングによる官能試験により,次の3段階で評価する。
◎:ふくらみ感相当あり 〇:ふくらみ感あり ×:ふくらみ感なし
(6) ポリエステルの触感
試料について,ハンドリングによる官能試験により,有,無の2段階で評価する。
【0027】
実施例1
m−クレゾール溶媒中で濃度0.5g/dl,温度20℃で測定した相対粘度2.6のナイロン6を85重量部とアクアコーク(住友精化工業株式会社製,非水溶性ポリエチレンオキシド変性物)15重量部とをドライブレンドした混合物を芯成分,上記ナイロン6を鞘成分とし,芯成分/鞘成分の重量比が50/50の芯鞘型複合糸を溶融紡糸した。その際,12孔の吐出孔を有する紡糸口金を使用して,紡糸温度 255℃で溶融紡糸し,紡出した糸条に18℃の空気を吹きつけて冷却し,油剤を付与した後,1300m/分で捲き取り,3.0倍の延伸を行って,50d/12fの芯鞘複合糸Aを得た。
得られた芯鞘複合糸Aの沸水収縮率は12.8%であった。
【0028】
次に,フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中で濃度0.5g/dl,温度25℃で測定した相対粘度1.38のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した。その際,36個のW型断面形状の吐出孔を有する紡糸口金を使用して,紡糸温度 285℃で溶融紡糸し,紡出した糸条に18℃の空気を吹き付けて冷却し,油剤を付与した後,3600m/分の速度で捲き取り,1.5倍の延伸を行って50d/36fのポリエステル異型断面糸Bを得た。
得られたポリエステル異型断面糸Bの沸水収縮率は5.1%,乾熱収縮率は 4.9%であり,吸水率比は2.3であった。
【0029】
上記で得られた芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとを供給糸とし,デュポン社製インターレーサーJD−1を用いて,糸速 600m/分,空気圧1kg/cm2,オーバーフィード率2.0%の条件で空気交絡処理を施し,本発明の交絡混繊糸を得た。
得られた交絡混繊糸の交絡数は58個/mであった。
【0030】
次に,この交絡混繊糸を経糸及び緯糸に用いて,経糸密度 120本/2.54cm,緯糸密度87本/2.54cmの平織物を製織し,得られた生機を用いて常法により精練,プレセット,アルカリ減量(減量率18.2%)した後,Sumikaron Yellow ERPD(住友化学工業株式会社製,分散染料)1% owfとLanaset Yellow 2R (日本チバガイギー株式会社製,酸性染料)1% owfにて染色(染色温度 120℃,染色時間30分)を行った。さらに,常法により還元洗浄処理し,110℃で60分間の乾燥を施した後,170℃で30秒間の熱処理を行って,本発明の織物を得た。
得られた交絡混繊糸と織物の評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
芯成分に使用したアクアコークとナイロン6との混合物をナイロン6に変える以外は,実施例1と同一の方法により比較用の交絡混繊糸と織物を得た。
【0032】
比較例2,3
芯鞘型複合糸Aの繊度を50d/12fから各々20d/4f(比較例2),120d/24f(比較例3)に変え,ポリエステル異型断面糸Bの繊度を50d/36fから 100d/68f(比較例2),25d/12f(比較例3)に変える以外は実施例1と同一の方法により比較用の交絡混繊糸と織物を得た。
【0033】
比較例4
吸水率比が2.3のポリエステル異型断面糸B(W型断面)を, 吸水率比が1.1のポリエステル異型断面糸(トリローバル断面)に変える以外は実施例1と同一の方法により比較用の交絡混繊糸と織物を得た。
【0034】
比較例5
芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率を12.8%から4.7%に変える以外は,実施例1と同一の方法により比較用の交絡混繊糸と織物を得た。
比較例1〜5で得られた交絡混繊糸と織物の評価を表1に示す。
【0035】
実施例2
ポリエステル異型断面糸Bとして,実施例1で得られたポリエステル異型断面糸Bに,非接触ヒータ温度 425℃, 弛緩率20%,引取速度600m/分で弛緩熱処理を施した糸条を用い,芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとの空気交絡処理時の空気圧を3kg/cm2 にした以外は,実施例1と同様にして交絡混繊糸と織物を得た。
弛緩熱処理後のポリエステル異型断面糸Bの沸水収縮率は1.4%, 乾熱収縮率は−3.6%であり,吸水率比は2.8であった。
なお,弛緩率は次の式で算出した。
弛緩率=〔(供給速度−引取速度)/引取速度)〕×100
実施例2で得られた交絡混繊糸と織物の評価を表1に示す。
【0036】
比較例6
吸水率比が2.8のポリエステル異型断面糸B(W型断面)を, 吸水率比が1.1のポリエステル異型断面糸(トリローバル断面)に変える以外は実施例2と同一の方法により比較用の交絡混繊糸と織物を得た。
比較例6で得られた交絡混繊糸と織物の評価を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように,実施例1,2で得られた交絡混繊糸からの織物は,ポリエステルの触感を保持しながら,優れた吸水性と吸放湿性を有しており,さらに,湿潤した際のぬめり感もなく,快適衣料素材として好適なものであった。また,特に,実施例2で得られた織物は,ふくらみ感に優れ,ソフトな風合を有し,快適素材として好適なものであった。
【0039】
一方,芯鞘型複合糸の芯成分にアクアコーク(非水溶性ポリエチレンオキシド)が存在しない比較例1と,交絡混繊糸における芯鞘型複合糸Aの割合が少ない比較例2の織物は,ポリエステルの触感は有するものの,吸水性と吸放湿性に劣るものであった。また,交絡混繊糸における芯鞘型複合糸Aの割合が多すぎる比較例3と,芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率がポリエステル異型断面糸Bより小さい比較例5の織物は,吸水性と吸放湿性は優れているものの,染色堅牢度が不良であり,かつポリエステルの触感がなく,湿潤した際にぬめり感を有するものであった。さらに,ポリエステル異型断面糸Bの吸水率比が小さい比較例4,6の織物は,吸放湿性に優れ,ポリエステルの触感を有するものの,吸水性に劣るものであった。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば,ポリエステルの触感を有しながら,従来のポリエステル繊維にはない高度の吸水性と吸放湿性を有する素材を提供することができ,快適性に優れた衣料を得ることが可能となる。
また,交絡混繊糸の一方を構成するポリエステル異型断面糸Bとして乾熱収縮率が2%以下の糸条を用いれば,製編織して得られる織編物に,優れたふくらみ感とソフトな風合を付与することが可能となる。
Claims (3)
- 非水溶性ポリエチレンオキシド変性物又は前記変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分より構成された芯鞘型複合糸Aと,下記式(1)で示される吸水率比が1.5以上であるポリエステル異型断面糸Bとが交絡した混繊糸であって,混繊糸における芯鞘型複合糸Aとポリエステル異型断面糸Bとの混合重量比a/bが20/80〜80/20であり,かつ芯鞘型複合糸Aの沸水収縮率がポリエステル異型断面糸Bより大きいことを特徴とする吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸。
吸水率比=X/Y (1)
ただし,Xはポリエステル異型断面糸Bの吸水率(%),Yはポリエステル異型断面糸Bと同繊度,同フイラメント数のポリエステル丸断面糸の吸水率(%)であり,吸水率(%)は, 糸条を筒編し,常法により精練,染色を施した編地を試料として用い, ラローズ法(JIS L−1907 5.3)により測定した1分後の値である。 - ポリエステル異型断面糸Bの乾熱収縮率が2%以下である請求項1記載の吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸。
- 請求項1又は請求項2記載の交絡混繊糸を主体とする吸水性と吸放湿性に優れた織編物。
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JP07305097A JP3773221B2 (ja) | 1996-12-03 | 1997-03-26 | 吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸及び織編物 |
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JP32254596 | 1996-12-03 | ||
JP07305097A JP3773221B2 (ja) | 1996-12-03 | 1997-03-26 | 吸水性と吸放湿性に優れた交絡混繊糸及び織編物 |
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