JP3826436B2 - ポリエステル着物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性のあるポリエステル着物に関し、さらに詳しくは、吸湿性により優れた着用快適性を有し、絽または紗からなるからみ織構造の織物からなる単衣着物や襦袢、法衣、浴衣などの用途に好適なポリエステル着物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絽や紗に代表される夏用着物は、吸湿性に優れた絹、麻あるいは綿などの天然繊維からなるものが好まれている。しかし、いずれも吸汗性には優れるが、多量に汗をかいたときの乾燥性が悪く、きわじみになったり、ベトついて肌にまつわりつくため、気持ち良く着用を継続出来ないという問題がある。
【0003】
一方、最近はイージーケア性や速乾性に優れたポリエステル繊維が夏用着物として使用されるようになっている。しかし、ポリエステル繊維は、形態安定性、機械強度、耐薬品性、耐熱性、洗濯耐久性などには優れるが、吸湿率が低いため、発汗が多い夏期においてはムレやベトツキなどが発生し、不快感を生じさせる欠点がある。
【0004】
このような点から、ポリエステル繊維と吸湿性の高い繊維との混繊などにより吸湿快適性を得んとする試みがあるが、ポリエステル繊維を染色する際に一般に使用される分散染料によって汚染を生じたり、同色性に劣ったり、ポリエステル繊維本来の物理的特性が失われるなどの問題点があった。
また、後加工段階で吸湿性を付与する方法もあるが、十分な吸湿性を得るためには、吸湿性樹脂を和装用生地に多くピックアップさせる必要があるため、布帛表面にできた吸湿性樹脂の被膜により風合が硬くなり、からみ織構造の透かし模様の質感が損なわれる欠点があった。さらに、洗濯による樹脂落ちが起こるため吸湿性が次第に低下するという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリエステル繊維の有する形態安定性や強度保持性の特性を具備しながら、大きな吸湿性を与えることにより優れた着用快適性を有するポリエステル着物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明のポリエステル着物は、吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条を含む織物からなり、該ポリエステル系フィラメント糸条が、親水性化合物を共重合すると共に、極性基含有化合物および架橋剤のうち少なくともいずれかを含有する共重合ポリエステルを5重量%以上含む複合繊維またはブレンド繊維であって、該織物のJIS L 1094 B法による摩擦帯電圧が3kv未満で、絽あるいは紗などのからみ織構造からなり、経糸および緯糸のうち少なくともいずれか一方の単糸繊度が0.1〜10デニール、総繊度が30〜300デニール、糸強度が2.5〜7g/dであり、かつ該織物の通気性が80〜420cm3 /cm2 ・sec、縫目ずれが2mm以下であることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル着物は、吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条から構成された織物からなり、好ましくはポリエステル系フィラメント糸条100%の織物から構成されている。かかるポリエステル系フィラメント糸条から構成されることにより、織物としてのJIS L 1094 B法(摩擦帯電圧測定法)による摩擦帯電圧が3kv未満、より好ましくは1kv以下であり、かつ同じく織物としての吸放湿パラメーターΔMRも1%以上になる。
【0008】
このような構成によって優れた吸放湿性を有し、かつ快適な着用感を与えることができる。吸放湿パラメーターΔMRが1%に満たないと、吸湿率が低いため肌からの発汗によるムレやベタツキなどを発生し、着用不快感を防止することが難しくなる。また、摩擦帯電圧が3kvを超えると静電気による空気中の埃付着を防止することが難しくなる。
【0009】
さらに、本発明において、織物としての吸放湿パラメーターΔMRは、着用時の快適性、制電性、製織性の観点から、さらに好ましくは1.5〜10%、特に好ましくは3〜10%であるのがよい。また、摩擦帯電圧としては、さらに好ましくは下限が実質的に0kvであることが好ましい。また、本発明において、織物としての吸放湿パラメーターΔMRは、洗濯耐久性に対しても5回洗濯後の値が洗濯前の70%以内であることが好ましい。また、摩擦帯電圧についても、洗濯5回後の摩擦帯電圧が3kv未満であり、より好ましくは1kv未満であるのがよい。
【0010】
ここで、洗濯1回とは、市販の自動反転うずまき式電気洗濯機の洗濯槽に40±2℃の0.2%弱アルカリ性合成洗剤液25リットルを入れ、試験布と追加布の合計重量が約500gとなるように調整した後、洗濯5分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒という手順で行ったもののことをいう。また、すすぎは常温水を用い、オーバーフローさせながら行う。
【0011】
本発明における吸放湿パラメーターΔMRとは、30×90%RHにおける吸湿率MR2 と20℃×65%RHにおける吸湿率MR1 との差(ΔMR(%)=MR2 −MR1 )で表される値のことをいう。この吸放湿パラメーターΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースのパラメーターであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率差を表わしている。吸放湿パラメーターΔMRは大きければ大きいほど吸放湿力が高く、着用時の快適性が良好であることを表わしている。
【0012】
本発明において、上記吸放湿パラメーターΔMRが1%以上の性能を有するポリエステル系フィラメント糸としては特に限定はされるものでないが、製糸性、製織性、染色性および糸性能の耐久性などの観点から、次の繊維を用いることが重要である。すなわち、親水性化合物(A)を共重合した共重合ポリエステルであって、その共重合ポリエステルに極性基含有化合物(B)および架橋剤(C)のうち少なくともいずれかを含有する共重合ポリエステル(D)を5重量%以上含んでいる複合繊維またはブレンド繊維を用いることである。
【0013】
以下、それぞれの繊維について詳細に説明する。
まず、前者の共重合ポリエステル(D)を含む繊維について説明すると、この共重合ポリエステル(D)において、親水性化合物(A)としては、エステル形成基を1個以上含有する化合物であるのが好ましく、特に限定されないが、代表的な化合物としてポリオキシアルキレン化合物、ポリオキサゾリン類、ポリアクリルアミドとその誘導体などを用いることができる。その中でも、ポリオキシアルキレン化合物が好ましく、ポリオキシエチレン化合物はさらに好ましい。さらに、ポリオキシエチレン化合物の中でも、ポリエチレングリコール化合物が好ましく、結晶化抑制因子を含むポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0014】
ここで、結晶性抑制因子とは、分子鎖中あるいは末端に存在し、ポリエチレングリコールの繰り返し単位の対称性を乱すような有機残基のことをいう。結晶化抑制とは、示鎖走査熱分析(DSC、昇温条件16℃/分)によって求めた融点が同じ分子量のポリエチレングリコールの融点より低くなることをいう。
親水性化合物(A)の分子量は、ポリエステルとの相溶性およびポリエステル中における分散性の観点から600〜20000であることが好ましく、より好ましくは、1000〜10000であり、さらに好ましくは、2000〜6000である。また、親水性化合物(A)の共重合の割合は特に限定はされないが、紡糸性の観点から、全ポリマー重量に対して40〜99重量%であることが好ましい。
【0015】
これらの化合物は、大部分がポリエステル中に共重合されているのが好ましいが、一部についてはポリマー中に分散した状態で存在していてもよい。
次に、共重合ポリエステル(D)中に含有させる極性基含有化合物(B)としては、特に限定はされないが、下記一般式(I)
i −R1 −Xn (I)
(ただし、式中R1 は有機残基、Xはエステル形成性基でありnは1以上の正数、Yi はアミノ基、スルホン基、カルボキシル基、水酸基、アミド基およびホスホン酸基などの誘導体の中から選ばれる1つ以上の極性基を示す(i≧1の整数)。)
で表される極性基を有する化合物が好ましい。
【0016】
ここで、含有とは、ポリエステル中に分散または共重合した状態のことをいうが、特に共重合している状態であるのが好ましい。化合物としては、特にスルホン酸塩基を有する化合物が好ましい。
極性基含有化合物(B)を含有させることにより、ポリマーの吸湿率がさらに高まるばかりか、ポリマー中に水素結合やイオン性相互結合作用を生じ、繊維とした場合に経時的な物性の変化が生じにくいという効果が得られる。
【0017】
極性基含有化合物(B)の含有量は、糸切れの発生を防止し、かつ経時的な変化を生じにくくする観点から、全ポリマーを構成する酸成分に対して0〜50モル%であるのが好ましく、さらに好ましくは2〜15モルである。
また、共重合ポリエステル(D)中に含有させる架橋剤(C)としては、ポリエステルと反応し、架橋構造を形成する化合物であれば、特に限定はされないが、下記一般式(II)
(R3O)n2 (COOR4)m (II)
(ただし、式中R2 は3〜6価の有機残基、R3 は水素あるいはアセチル基、 R4 は水素あるいはアルキル基、3≦m+n≦6。)
で表される多官能化合物を用いることが好ましい。
【0018】
ここで、含有とは、ポリエステル中に分散している状態のことをいうが、共重合により架橋構造である状態は好ましい。
化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールが好ましいが、特に好ましいのはトリメリット酸である。架橋剤(C)を含有させることで、ポリマーの吸湿性がさらに高まるばかりでなく、ポリマー中に架橋構造が形成され、繊維とした場合に経時的な物性の変化が生じにくいという効果が得られる。
【0019】
架橋剤(C)の割合は、全ポリマーを構成する酸成分に対して0〜30モル%が好ましく、さらに好ましくは1〜15モル%、特に好ましくは、2〜10モル%である。このような範囲とすることにより、吸湿性を高く保持し、製糸性が良好になり、強度等の繊維物性が向上するので好ましい。
共重合ポリエステル(D)には、上述した極性基含有化合物(B)と架橋剤(C)との少なくともいずれか一方が含有されるが、好ましくはこの極性基含有化合物(B)と架橋剤(C)との両者を含んでいることがよい。
【0020】
また、共重合ポリエステル(D)には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの界面活性剤、各種の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤などが添加されていてももちろんよい。
【0028】
本発明において、前述した吸湿性成分である共重合ポリエステル(D)を含む複合繊維またはブレンド繊維とする為に併用する繊維形成性重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。衣料用合成繊維としてもっとも汎用性の高い、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを用いることは好ましい。
【0029】
複合繊維の形態としては特に限定はされないが、図1に示すような芯部1と鞘部2からなる芯鞘型複合繊維、図2に示すような芯部1と鞘部2と中空部3からなる芯鞘型複合中空繊維、図3に示すような島部1aと海部2aからなる海島型複合繊維、図4に示すような張り合わせ部1b,2bからなる張り合わせ型複合繊維などを用いることができる。
【0030】
例えば、図1の芯鞘型複合繊維および図2の芯鞘型複合中空繊維の場合には、芯部に共重合ポリエステル(D)(吸湿性ポリマー)を用い、繊維形成性重合体を鞘部に用いることができる。芯鞘断面形状は、同心円状や偏心円状でもよく、繊維形状は円形、多角形、H形などの異形断面でもよい。
【0031】
この場合の複合比率(重量%)は芯/鞘=5/95〜90/10が好ましく、さらに好ましくは7/93〜50/50、特に好ましくは10/90〜30/70である。芯部の複合比率の下限は、十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、また上限は、紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定され得る。
【0032】
また、図3の海島型複合繊維および図4の張り合わせ型複合繊維の場合には、島部または張り合わせ部に共重合ポリエステル(D)(吸湿性ポリマー)を用い、海部または他方の張り合わせ部に繊維形成性重合体を用いることができる。
【0033】
上記島部または一方の張り合わせ部の繊維形成性重合体に対する複合比率は5〜90重量%が好ましい。さらに好ましくは7〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。この島部または一方の張り合わせ部の複合比率の下限は、十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、上限は、紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定される。
【0034】
ブレンド繊維の場合には、繊維形成性重合体に対する共重合ポリエステル(D)(吸湿性ポリマー)の配合比率は、全ポリマー量に対して5〜80重量%が好ましく、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは7〜30重量%である。
【0035】
配合比率の下限は十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、配合比率の上限は、紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定される。
上記繊維形成重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどを含んでいてもよい。また、繊維形成性重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、各種の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤などが添加されていてももちろんよい。
【0036】
本発明のポリエステル着物を構成する織物としては、絽あるいは紗などのからみ織構造を有するものが使用される。からみ織構造とは、斜と平とを組合せた絽目と呼ばれる透けた空間が織り出された絽や、2本の経糸が緯糸1本ごとにもじり目をつくり、生地全体が非常に透けた紗などの構造のことである。
また、織物を構成する経糸および緯糸としては、少なくともいずれか一方が、単糸繊度が0.1〜10デニール、総繊度が30〜300デニール、糸強度が2.5〜7g/dであるポリエステル系フィラメント糸条が使用されることが好ましい。かつ、織物は、その通気性が80〜420cm3 /cm2 ・sec、縫目ずれが2mm以下であることが好ましい。
【0037】
ここで、本発明において通気性とは、JIS L 1096 A法(通気性、フラジール法)により測定したものをいい、また縫目ずれとは、JIS L 1096(縫目強力)により測定したものをいう。
織物を構成する経糸および緯糸のうち、少なくともいずれか一方の単糸繊度が10デニールより大であると、布帛の風合いが硬くなり、着物として使用することが困難になる。また、0.1デニール未満であると、製糸性が低下するため均質性に優れた織物を得ることが困難になる。単糸繊度の下限として、さらに好ましくは、製織性や着物の強度、風合いとの観点から、0.5デニール以上であることが望ましい。
【0038】
また、本発明のポリエステル着物の織物に使用する経糸および緯糸には、単糸繊度の異なるフィラメント糸を組み合わせた異繊度混繊糸を用いると、ソフトでかつ張りのある優れた着物を得ることができる。この異繊度混繊糸を使用する場合には、太繊度のフィラメント糸に前述した吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条を用いるとよく、一層吸湿率が高く、かつソフトで張りのあるポリエステル着物にすることができる。
【0039】
また、経糸および緯糸のうち少なくともいずれか一方の総繊度が、30デニールに満たない場合には、製織性、製糸性が悪くなり、また、張り・腰のない織物になるため、着物の生地としては不向きになる。また、総繊度が300デニールよりも大きくなると、布帛の風合いが硬くなるため、着物の生地として不向きになる。
【0040】
本発明のポリエステル着物に使用されるからみ織の織物は、その通気性が80cm3 /cm2 ・sec未満であると、肌からの発汗によるムレやベトツキなどを防止することが困難になる。さらに好ましくは、通気性としては、快適清涼性の観点から100cm3 /cm2 ・sec以上であるのがよい。
また、織物の経糸および緯糸の少なくともいずれか一方の糸の強度が2.5g/デニール未満であると、着用中に力のかかる背縫目や臀部に破れが生じ、着物としての強度を保つことが難しくなる。また、縫目ずれが2mmよりも大きいと、着用時に縫い目周辺に目ずれが起り、外観を乱したり、着物が破れやすくなる傾向にある。
【0041】
本発明のポリエステル着物に使用される織物の染色加工工程は、リラックス精錬−中間セット−染色−機能性付与加工−仕上げセットの通常の加工工程で何等問題はなく、他に生機セットを行ったり、アルカリ処理を行っても問題はない。機能性付与加工としては、帯電防止、消臭、撥水、防汚および防カビ加工などであって、布帛の風合をソフトに保ち、本発明の目的を損なわない範囲であれば、何等限定されるものではない。特に、吸湿加工の機能性付与を行うことは、布帛の吸湿率を向上し、着用時の快適性を向上するため好ましい。
上述した特性を有する本発明のポリエステル着物は、単衣、襦袢、法衣、浴衣など和装分野に好ましく使用することができる。
【0042】
【実施例】
以下に説明する実施例において使用する各評価は次の測定方法により求めたものである。
〔吸放湿性パラメーターΔMR〕
原糸または布帛1〜3gを用い、絶乾時の重量Woと20℃×65%RHおよび30℃×90%RHの雰囲気下に市販の恒温恒湿器中に24時間放置後の重量W1 およびW2 をそれぞれ測定し、次式によって20℃×65%RHでの吸湿率MR1 と30℃×90%RHでの吸湿率MR2 を算出する。
【0043】
MR1 (%)=[(W1 −Wo)/Wo]×100
MR2 (%)=[(W2 −Wo)/Wo]×100
次いで、上記吸湿率MR1 ,MR2 から、次式によって吸放湿性パラメーターΔMRを算出した。
ΔMR(%)=MR2 −MR1
〔強力〕
市販のテンシロン引張り試験機を用いて試長20cm、引張り速度10cm/分の条件で応力−歪み曲線から値を求めた。
〔着用時の快適性、まつわりつき〕
それぞれの布帛で単衣着物を作成し、30℃×65%の恒温恒湿室内で時速8kmの軽い運動を15分行った後の、被験者の官能試験により快適性の評価を行い、さらに、単衣着物の身体へのまつわりつきの有無を調べた。
【0044】
快適性評価の結果は、不快:×、やや快適:△、快適:○、非常に快適:◎で表示した。
実施例1
ジメチルテレフタル酸194部、エチレングリコール135部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル26.6部、トリメリット酸トリメチル7.5部およびテトラブチルチタネート0.1部を加え、エステル交換反応を行った後、分子量4000のポリエチレングリコール328部を加え、重合を行い共重合ポリエステルを製造した。
【0045】
得られた共重合ポリエステルを芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分として、共重合ポリエステルが繊維全重量の20重量%を含む芯鞘型の複合繊維として溶融紡糸し、延伸することにより、かつ吸放湿パラメーターΔMRが3.3%である75デニール、24フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条および150デニール、48フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を製糸した。
【0046】
上記75デニール、24フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条に実撚S900T/Mを施して経糸に用い、上記150デニール、48フィラメントに実撚S600T/Mを施して緯糸に用いて製織し、仕上経密度が177本/インチ、緯密度が55本/インチの三本絽を作製した。織物の染色加工は通常のポリエステル和装織物の加工工程で実施した。また、良好な風合いを得るためアルカリ減量加工(減量率9.6%)を施した。
【0047】
上記三本絽の織物の糸強度は、経糸3.5g/d、緯糸3.4g/dであった。また、織物の縫目ずれは、経方向1.5mm、緯方向1.5mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.3%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.1%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであり、通気性は265.9cm3 /cm2 ・secであった。
【0048】
快適性試験では非常に快適(◎)であり、単衣着物の身体へのまつわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、身体へのまつわりつきは見られなかった。
評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0003826436
【0050】
実施例2〜3
実施例1において、吸湿性ポリマー(共重合ポリエステル)を繊維全重量に対してそれぞれ10重量%(実施例2)、7重量%(実施例3)の複合比率にした複合繊維にした以外は、実施例1と同様にしたポリエステル系フィラメント糸条および織物をつくり、実施例1と同様の評価を行った。
【0051】
評価結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、吸湿性ポリマー(共重合ポリエステル)を繊維全重量に対して3重量%の複合比率にした複合繊維にした以外は、実施例1と同様にしたポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0.5%)および織物をつくり、実施例1と同様の評価を行った。
【0052】
評価結果を表1に示す。
比較例2
ポリエステル100%のマルチフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0%)を用いた以外は、実施例1にして織物をつくり同様の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
ポリエステル100%のマルチフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0%)を用い、実施例1と同様にして得られた織物に帯電防止加工した布帛を用い、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
実施例1において、経糸には同じポリエステル系フィラメント糸条を用い、また緯糸用には、実施例1と同じ75デニール、24フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を双糸にして下撚:300T/Mを施し、次に該糸を東京芝浦機械製スピンドル仮撚機を用いてスピンドル回転数:20万rpm、仮撚数:1750T/M、温度:180℃で先撚仮撚加工糸を作製した。
【0055】
上記経糸と緯糸とを用いて、仕上経密度が177本/インチ、緯仕上密度が55本/インチの三本絽を作製した。
得られた三本絽の織物の糸強度は経糸3.5g/d、緯糸3.5g/dであった。また、織物の縫目ずれは、経方向2.5mm、緯方向3.5mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.4%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.2%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであり、通気性は264.2cm3 /cm2 ・secであった。
【0056】
快適性試験は非常に快適(◎)であり、単衣着物の身体へのまつわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であった。縫製性は、通常の表地と何等変わることなく良好であり、風合いはソフトで着用性についても問題なかった。
実施例5
実施例1で得られた共重合ポリエステルを芯成分にし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分にして、共重合ポリエステルが繊維全重量の20%を占める芯鞘型複合繊維に溶融紡糸し延伸することにより、吸放湿パラメーターΔMRが3.1%の75デニール、24フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条および100デニール、48フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を製糸した。
【0057】
上記75デニール、24フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条に実撚S700T/Mを施して経糸に用い、また、上記100デニール48、フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条と、30デニール、12フィラメントの通常のポリエステルフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが0%)とを混繊機(愛機製AT−501型)でインターレース交絡処理を施したのち実撚S1000T/Mを施した糸条を緯糸用として用いて、三本絽で、仕上げ経密度177本/インチ、緯密度が55本/インチの規格になる単衣着物用織物を作製した。得られた織物の染色加工は通常のポリエステル和装織物の染色加工工程で実施した。また、良好な風合いを得るためアルカリ減量加工(減量率:10%)を施した。
【0058】
得られた織物の糸強度は、経糸3.5g/d、緯糸3.5g/dであった。また得られた織物の縫目ずれは、経方向1.5mm、緯方向1.5mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.1%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.0%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであり、通気性は266.7cm3 /cm2 ・secであった。
【0059】
快適性試験は快適(○)であり、単衣着物の身体へのまつわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も快適(○)であった。
比較例4
それぞれ吸湿率17%の性能を有する吸湿性ポリマーを繊維全重量の20重量%となるように芯成分に配置し、鞘成分にポエエチレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維として溶融紡糸し延伸して、吸放湿パラメーターΔMRが3.4%の75デニール、6フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条と、150デニール、48フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条とを製糸した。
【0060】
上記75デニール、6フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条に実撚700T/Mを施して経糸に用い、また上記150デニール、48フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条に実撚600T/Mを施して緯糸に用い、仕上経密度が177本/インチ、緯密度が55本/インチの三本絽を作った。
風合いがかたく、着物として不適であった。
【0061】
比較例5
経糸に20デニール、12フィラメント、緯糸に75デニール、24フィラメントを用い、さらに、それぞれ吸湿率17%の性能を有する吸湿性ポリマーを繊維全重量の20重量%含んで吸放湿パラメーターΔMRが3.3%からなる同心円芯鞘複合繊維を作製した。
【0062】
このフィラメントを用いて、仕上経密度が162本/インチ、緯密度が101本/インチの三本絽を作製し、この織物で単衣着物を作製した。得られた織物の通気性は、251.8cm3 /cm2 ・secであった。縫目ずれは、経方向3.5mm、緯方向4.0mmであった。また、着用性については、強度が弱く、目ずれが生じやすかった。
【0063】
比較例6
経糸に75デニール24フィラメント、緯糸に180デニール24フィラメントを用い、さらに、それぞれの糸が、吸湿率17%の性能を有する吸湿性ポリマーを繊維全重量の20重量%含み吸放湿パラメーターΔMRが3.3%からなる複合繊維であるフィラメントを作製した。
【0064】
このフィラメントを経・緯糸とも双糸使いとした、仕上経密度が60本/インチ、緯密度が35本/インチの紗織物を作製した。
得られた織物の通気性は、400cm3 /cm2 ・sec以上であった。縫目ずれは、経方向3.0mm、緯方向3.5mmであった。
そのため、強度があったが、目ずれが生じやすく、風合いが硬く着物としては不適であった。
【0065】
比較例7
比較例2と同じフィラメントを用い、仕上経密度が240/インチ、緯密度が105本/インチの平織物を作製した。
得られた織物の通気性は、32.3cm3 /cm2 ・sec以上であった。
また、着用性については、強度があったが、着用での快適性が悪く、夏用着物として不適であった。
【0066】
【発明の効果】
上述したように、本発明のポリエステル着物によれば、ポリエステル繊維の有する形態安定性や強度保持性の特性を具備しながら、大きな吸湿性を与えることにより優れた着用快適性を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる芯鞘型複合繊維の横断面を示すモデル図である。
【図2】本発明に用いる芯鞘型複合中空繊維の横断面を示すモデル図である。
【図3】本発明に用いる海島型複合繊維の横断面を示すモデル図である。
【図4】本発明に用いる張り合わせ型複合繊維の横断面を示すモデル図である。
【符号の説明】
1 芯部
2 鞘部
1a 島部
2a 海部
1b,2b 張り合わせ部
3 中空部

Claims (1)

  1. 吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条を含む織物からなり、該ポリエステル系フィラメント糸条が、親水性化合物を共重合すると共に、極性基含有化合物および架橋剤のうち少なくともいずれかを含有する共重合ポリエステルを5重量%以上含む複合繊維またはブレンド繊維であって、該織物のJIS L 1094 B法による摩擦帯電圧が3kv未満で、絽あるいは紗などのからみ織構造からなり、経糸および緯糸のうち少なくともいずれか一方の単糸繊度が0.1〜10デニール、総繊度が30〜300デニール、糸強度が2.5〜7g/dであり、かつ該織物の通気性が80〜420cm3 /cm2 ・sec、縫目ずれが2mm以下であるポリエステル着物。
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