JP4372239B2 - 制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制電性、吸水性、吸放湿性に優れ、しかも長期保管においても黄変の極めて少ないインナー、中衣、シャツ、ブラウス、スポーツウエア等の衣料素材に好適な織編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維は、木綿、麻、ウール、絹等の天然繊維と比べて強力、耐摩耗性、寸法安定性、ウオッシュアンドウエア性、速乾性等の点で優れており、衣料用素材として広く使用されている。
しかし、合成繊維は、一般に天然繊維が有する優れた制電性能、吸水性能や吸湿性能を有しておらず、冬場の着用時には静電気によるまとわりつきやほこりの付着など、また夏場の着用時には発汗によりムレ、ベタツキ等が生じ、天然繊維よりも快適性の点で劣っていた。
【0003】
上記問題を解決すべく、従来より合成繊維に制電性や吸水性を付与する試みがなされている。例えば、V字、U字あるいは1個以上の凹部を有する異型断面糸に帯電防止剤、吸水加工剤を併用する方法(特開昭54ー131045号公報、特開昭52ー148218号公報、特開昭53ー106848号公報、特開昭55ー122074号公報)等が知られているが、これらの方法では、ある程度の制電性や吸水性能を付与せしめることが可能であるが、性能耐久性が乏しくかつ天然繊維が持つ吸湿性能は有しておらず、天然繊維に比べ着心地の点で劣っていた。
【0004】
上記問題に対し、合成繊維に制電性、吸水性、吸湿性の性能を付与する試みも種々なされている。例えば、後加工によってナイロン繊維、ポリエステル繊維に上記性能を付与する方法として、ラジカル開始剤や電子線を用いてビニルカルボン酸をグラフト重合する方法(特開平4ー146271号公報、特開平4ー272272号公報)が知られているが、この方法は加工処理による繊維の強力低下、風合の硬化、効果の耐久性不足といった種々の問題を有していた。
【0005】
また、原糸製造段階でポリアルキレングリコールをポリエステルに配合した複合繊維(特公昭39ー5214号公報)、繊維表面から中空部まで貫通する貫通溝を有する繊維形成性ポリマーよりなる中空繊維(特公昭60ー37203号公報)、有機スルホン酸化合物を均一に分散させたポリエステル繊維をアルカリ処理した微多孔性繊維(特開昭60ー167969号公報)等が提案されている。しかし、これらの繊維は、いずれも吸湿性のレベルが低く、また制電性、吸水性、吸放湿性の両性能を同時に十分なレベルで満たすものではなかった。
【0006】
これらの問題を解消するために、10%以上の吸湿性能を有する樹脂を芯部、ポリエステルを鞘部として構成された芯鞘型複合繊維(特開平2ー99612号公報)が提案されている。しかしながら、この繊維は原糸製造段階で十分な吸水性と吸放湿性を有するものの、染色仕上げ加工時、特に減量加工時に繊維の鞘部が破損し芯成分である吸湿性樹脂が溶出してしまい、所期の吸水性と吸放湿性が低下するという問題があった。
さらにまた、特願平9ー289464号にて提案した非水溶性ポリエチレンオキシド変性物または非水溶性ポリエチレンオキシド変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分により構成された芯鞘型複合繊維とポリエステル繊維とからなる織編物は高度の制電性、吸水性、吸放湿性を有してはいるものの、長期間の放置により織編物が黄変するという問題があった。
このように、合成繊維に十分なレベルの制電性、吸水性、吸放湿性を付与することは非常に難しく、未だ実用化された例は認められない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑みて行われたものであり、高度の制電性、吸水性、吸放湿性とを備えた織編物であり、かつ長期間の保管においても黄変の少ない織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するもので、次の構成を有するものである。
すなわち本発明は、温度34℃、相対湿度90%における吸湿率がナイロン6の1.5倍以上であるポリアミド系繊維Aと、ポリエステル繊維Bとからなる織編物であって、前記ポリアミド系繊維Aはポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物をポリアミド系繊維A重量に対し0.5〜60重量%の範囲で含有し、該織編物中に占めるポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの混用重量比A/Bが30/70〜70/30であり、かつ該織編物を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5であることを特徴とする制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物、さらに、ポリアミド系繊維Aがポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物又は前記変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分より構成された芯鞘型複合繊維である制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物、さらにまた、制電性が1000V以下、吸水性が150%以上、吸湿能力が1.5%以上を有することを特徴とする制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物を要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、織編物に高度の吸水性と吸放湿性を付与するために、織編物を構成する一方の糸条として、温度34℃、相対湿度90%における吸湿率がナイロン6の1.5倍以上であるポリアミド系繊維Aを用いる必要がある。ここで、吸湿率がナイロン6の1.5倍未満の場合、本発明の目的とする制電性、吸放湿性が得られない。
【0010】
本発明でいう温度34℃、相対湿度90%における吸湿率がナイロン6の1.5倍以上であるポリアミド系繊維Aとは、ナイロン4のホモポリマー及びこれを主体とする共重合体やポリビニルピロリドン、ポリエーテルエステルアミド、あるいはポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物等の吸湿性を有するポリマーをポリアミド系重合体に含有せしめて製糸した繊維である。ここで、製糸性、糸質物性、染色性、染色堅牢度、製糸後の繊維の経時的黄変等を考慮するとポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物をポリアミド系重合体に含有せしめた繊維が好ましく用いられる。
【0011】
ここで、上記ポリエチレンオキサイド変性物に使用するポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよび両者の共重合体、ポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、脂肪族ジイソシアネートは、ここでは脂環族ジイソシアネートも含むが、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。ここで、芳香族成分を含むジイソシアネートを用いると、得られた織編物が着色または経時的な黄変がみられるので好ましくない。
【0012】
本発明では上記ポリエチレンオキサイド変性物をポリアミドに含有せしめる方法としては公知のブレンド法、あるいは繊維の鞘成分をポリエチレンオキサイド変性物とし芯成分をポリアミドとしたり、または繊維の芯成分をポリエチレンオキサイド変性物とポリアミドとのブレンド物とし、鞘成分をポリアミドとする等の芯鞘複合繊維、もしくは繊維の片方をポリエチレンオキサイド変性物とし、もう片方をポリアミドとしたり、繊維の片方をポリエチレンオキサイド変性物とポリアミドとのブレンド物とし、もう片方をポリアミドとしたサイドバイサイド型複合繊維等が挙げられる。
芯鞘複合繊維あるいはサイドバイサイド型複合繊維で片方の成分をポリエチレンオキサイド変性物とポリアミドとのブレンド物とする場合、両者を予め溶融混合してマスターチップ化しておいてもよい。
ここで、製糸性、糸質物性、染色性、染色堅牢度、湿潤時のぬめり感等を考慮すると繊維の芯成分をポリエチレンオキサイド変性物またはポリエチレンオキサイド変性物とポリアミドとのブレンド物とし、鞘成分をポリアミドとした芯鞘複合繊維が好ましく用いられる。
【0013】
本発明で芯成分の一部に用いたり、鞘成分として用いるポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD(ポリメタキシリレンアジパミド)等のホモポリマー及びこれらを主体とする共重合体もしくは混合物が好ましく用いられる。
【0014】
ポリアミド繊維にポリエチレンオキサイド変性物を含有せしめる際の含有率は、使用するポリアミドの種類や芯成分と鞘成分の複合比により得られる繊維の吸放湿性が異なるため、本発明では特に限定されるものではないが、一般にはポリアミド繊維重量に対して0.5〜60重量%の範囲にあることが好ましい。ポリエチレンオキサイド変性物の含有率が0.5重量%未満では、目的とする吸放湿性が得られない場合があり、含有率が60重量%を超えると、製糸性に問題が生じるおそれがあるので好ましくない。
【0015】
本発明に用いるポリアミド系繊維Aは、常法にしたがって製造することができる。ここで、芯鞘複合繊維あるいはサイドバイサイド型複合繊維とする場合の複合比は、使用するポリマーや要求される性能の度合いにより異なるが、ポリエチレンオキサイド変性物を含有する成分とポリアミドのみの成分が重量比で15/85〜85/15の範囲にあることが好ましい。これよりもポリエチレンオキサイド変性物を含有する成分の割合が少ないと、吸放湿性に劣り、逆に芯成分が多くなりすぎると、製糸性に問題が生じる場合があり、好ましくない。
【0016】
次に、本発明にて使用するポリエステル繊維Bとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリマーおよびこれらを主体とし、イソフタル酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸成分や他種のグリコール成分との共重合体や上記ポリエステルの混合物が好ましく用いられる。
【0017】
本発明の制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物は、上述のポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとを混用した織物、編物であり、その混用態様としてはあらかじめポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとを流体攪乱処理等の方法により交絡して得られる混繊糸を製造しておき織編物に供する方法、ポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとからなる交織、交編等公知の方法により得ることができる。
【0018】
本発明では、上述の織編物中に占めるポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの混用重量比A/Bが30/70〜70/30の範囲にある必要がある。混用重量比A/Bが30/70未満では、目的とする制電性、吸水性、吸放湿性が得られず、好ましくない。混用重量比A/Bが70/30を越えると、目的とする制電性が得られず。さらに、染色時、ポリエステル繊維Bを染色する分散染料がポリアミド系繊維Aを汚染する程度が大きくなり、染色堅牢度が不良となる場合がある。
【0019】
次に、本発明の織編物は、温湿度管理されていない室内で太陽光は入射するが直接日光の当たらない場所に30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5である必要がある。これは、最終の繊維製品とした場合でも色調変化が殆どなく、商品価値を低下させないために必要であり、好ましくはb値が0〜3である。
織編物のb値は、ポリマーの原料に含まれる不純物、重合条件、紡糸条件など種々の要因によって変わるが、現状では吸放湿性を有するポリマーに色調悪化の主要因がある場合が多い。したがって、b値を前記範囲内とするためには、吸放湿性を有するポリマーを改良する必要があるが、前述したポリアルキレンオキサイド変性物は色調変化が極めて少なく本発明に好適に用いることができる。
【0020】
本発明では、得られた織編物は、JIS L1094B法による摩擦帯電圧が1000V以下である制電性を有するのが好ましい。摩擦帯電圧が1000Vを超えると、この織編物を縫製して着用した際、静電気によるまとわりつきや埃の付着等があり、着心地が悪くなることがある。
【0021】
また本発明の織編物は、JIS L1907 5.3で規定された吸水性測定法による吸水性が150%以上であることが好ましい。吸湿性が150%未満の場合は、着用状態により異なるが、着用中の発汗に伴いべたつきを感じることがあり好ましくない。
【0022】
本発明の織編物は、標準状態での吸湿率と温度34℃、相対湿度90%RHにおける吸湿率の差である吸湿能力が1.5%以上であることが好ましい。吸湿能力が1.5%未満の場合には、着用時にむれ感を感じることがあり、好ましくない。
【0023】
【作用】
本発明において、ポリエステル繊維Bとともに織編物を構成するポリアミド系繊維Aは、ナイロン4のようにそれ自身が高度な吸放湿性を有していたり、あるいはポリビニルピロリドン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエチレンオキサイド変性物等の高度な吸放湿性と吸水性を有するポリマーをポリアミドに含有せしめているので、優れた吸放湿性と吸水性を発揮することができる。
【0024】
上述のポリアミド系繊維Aは、高度な吸放湿性と吸水性を有しているものの、制電性については摩擦帯電圧で2000V程度であり、一般的な合成繊維に比較すると静電気が発生しても衣服がまとわりつかないレベルではあるが、静電気によるほこりの付着が発生するレベル(摩擦帯電圧1000V以下にならないとほこりの付着がなくならない。)である。
【0025】
しかしながら、本発明の織編物のごとくポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bと構成することにより高度な制電性を発揮することができる。この理由については定かではないが、本発明者等らは下記の様に考えている。本発明のポリアミドとポリエステルとの帯電列をみると、ポリアミドに静電気を与えると正の電荷を持つ。これに対してポリエステルに静電気を与えると負の電荷を持つ。これらポリアミドとポリエステルの帯電列の間に綿、シルク、レーヨン、アセテート、アクリル等の繊維がありこれらの繊維と接触することにより、いったんポリアミドは正の電荷、ポリエステルは負の電荷を帯びるが、次にこれらの電荷が打ち消し合って帯電量が低くなるものと思われる。この際、特にポリアミド系繊維Aがポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物をポリアミドに含有せしめたものである場合にポリエステル繊維Bとの比率により打ち消し合う電荷量が異なるが、優れた制電効果が得られるものと考えている。
【0026】
【実施例】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。なお、実施例における性能の測定と評価は、次の方法で行った。
(1)繊維の吸湿率
試料を温度105℃で2時間乾燥して重量V0 を測定した後、温度34℃、相対湿度90%の条件下で24時間放置して重量V2 を測定し、水分率M1 を下記式により算出する。
M1(%)=〔(V2 −V0)/V0 〕×100
(2)織編物の吸放湿性
試料を温度105℃で2時間乾燥して重量W0 を測定した後、温度25℃、相対湿度60%の条件下で2時間調湿して重量W1 を測定し、下記式(a)により初期水分率N0 を求める。
次に、このサンプルを温度34℃、相対湿度90%の条件下で24時間吸湿させた後、重量W2 を測定し、水分率N1 を下記式(b)により算出し、吸湿能力N3 を下記式(d)により算出する。
続いて、このサンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件下でさらに24時間放置した後、重量W3 を測定し。放湿後の水分率N2 を下記式(c)により算出する。
N0(%)=〔(W1 −W0)/W0 〕×100 (a)
N1(%)=〔(W2 −W0)/W0 〕×100 (b)
N2(%)=〔(W3 −W0)/W0 〕×100 (c)
N3(%)=(N1 −N0)
(3)織編物の吸水性
試料を温度25℃、相対湿度60%の条件下で2時間調湿した吸水前のサンプルの重量Wを秤量した後、JISL−1907 5.3で規定された吸水性測定法によって1分後の吸水サンプルの重量W60を測定し、下記式により吸水率Rを求める。
R(%)=[(W60−W)/W]×100
〔JIS L1096織物の試験法の6.26.2吸水率と同じ方法が?〕
(3)織編物の制電性
染色した試料の制電性について、次のJISに従って測定した。
半減期 ;JIS L−1094 A法
摩擦帯電圧;JIS L−1094 B法
(4)織編物のb値
試料を温湿度管理されていない室内で太陽光は入射するが直接日光の当たらない場所で30日間放置後、マクベス社製のMS−2020型分光光度計を用い、光反射率を測定し、国際照明委員会でで定義された色差式CIE−LABから求めた(実際には分光光度計により自動的に出力される)。測定に際し、試料以外からの反射光の影響を極力小さくするため、試料を幾重にも折り畳んで光が組織の間隙を通過しないことを目視で確認した後、測定を行う。
【0027】
実施例1
m−クレゾール溶媒中で濃度0.5g/デシリットル、温度20℃にて測定した相対粘度2.6のナイロン6を85重量部とポリエチレンオキサイド、1,4ーブタンジオールおよびジシクロヘキシルメタンー4,4’ージイソシアネートとの反応物であるポリエチレンオキサイド変性物15重量部とをドライブレンドした混合物を芯成分、上記ナイロン6を鞘成分とし、芯成分/鞘成分の重量比が50/50の芯鞘型複合繊維を溶融紡糸した。その際、12孔の吐出孔を有する紡糸口金を使用して、紡糸温度255℃で溶融紡糸し、紡出した糸条に18℃の空気を吹きつけて冷却し、油剤を付与した後、1300m/分で捲き取り、3.0倍の延伸を行って、50d/12fのポリアミド系繊維Aを得た。この繊維の温度34℃相対湿度90%における吸湿率は13.0%であった。
次に、フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中で濃度0.5g/dl、温度25℃で測定した相対粘度1.38のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した。その際、36個の丸型断面形状の吐出孔を有する紡糸口金を使用して、紡糸温度285℃で溶融紡糸し、紡出した糸条に18℃の空気を吹き付けて冷却し、油剤を付与した後、3600m/分の速度で捲き取り、1.5倍の延伸を行って50d/36fのポリエステル繊維Bを得た。
上記で得られたポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとを供給糸とし、デュポン製インターレーサーJD−1を用いて、糸速600m/分、空気圧1Kg/cm2 、オーバーフィード率2.0%の条件で空気交絡処理を施し、交絡数が55個/m、ポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの混用重量比が50/50の交絡混繊糸を得た。
次に、この交絡混繊糸を経糸および緯糸に用いて、経糸密度120本/吋、緯糸密度90本/吋の平織物を製織し、得られた生機を用いて常法により精練、プレセット、アルカリ減量(減量率21.2%)した後、Sumikaron Yellow ERPD(住友化学工業株式会社製、分散染料)1% owfとLanaset Yellow 2R (日本チバガイギー株式会社製、酸性染料)1% owfにて染色(染色温度120℃、染色時間30分)を行った。さらに、常法により還元洗浄処理し、110℃で60分間の乾燥、170℃で30秒間の熱処理を行って、本発明の織物を得た。
【0028】
比較例1
実施例1において、ポリアミド系繊維Aとしてナイロン6繊維50d/12fを用いること以外は実施例1と同一の方法により比較例の織物を得た。
【0029】
比較例2、3
ポリアミド系繊維Aの繊度を50d/12fから各々30d/6f(比較例2)、120d/24f(比較例3)に変え、ポリエステル繊維Bの繊度を50d/36fから100d/68f(比較例2)、30d/12f(比較例3)に変えて、ポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの混用重量比を23/77(比較例2)、80/20(比較例3)とすること以外は実施例1と同一の方法により比較例の織物を得た。
【0030】
比較例4
実施例1において、ポリエチレンオキサイド変性物の原料としてジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネートの代わりに芳香族環をもつ4,4'- ジフェニルメタンジイソシアネートを用いた以外は同様にして50d/24fの延伸糸を得た。このポリアミド系繊維Aを用いて実施例1と同様の方法にて比較例の織物を得た。この織物の吸放湿性は実施例1と同程度であったが、製造30日後のb値は12.6と著しく黄変した。
実施例1及び比較例1〜3で得られた織物の評価を合わせて表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1で得られた織物は、優れた制電性、吸水性、吸放湿性を有しており、快適衣料素材として好適なものであった。一方、ポリアミド系繊維Aの芯成分にポリエチレンオキサイド変性物が存在しない比較例1と、ポリアミド系繊維Aの割合が少ない比較例2の織物は、制電性、吸水性、吸放湿性すべての項目においてその性能が劣るものであった。また、芯ポリアミド系繊維Aの割合が多い比較例3の織物は、優れた吸水性と吸放湿性を有するものの、制電性に劣るものであった。
【0033】
実施例2
ポリアミド系繊維Aとして実施例1にて採取した50d/12fを使用した。
次に、フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中で濃度0.5g/デシリットル、温度25℃で測定した相対粘度1.38のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した。その際、36個のW型断面形状の吐出孔を有する紡糸口金を使用して、紡糸温度285℃で溶融紡糸し、紡出した糸条に18℃の空気を吹き付けて冷却し、油剤を付与した後、3600m/分の速度で捲き取り、1.5倍の延伸を行って50d/24fのW断面型ポリエステル繊維Bを得た。
次に、このポリアミド系繊維AとW断面型ポリエステル繊維Bとを用いて、各々64.6%、35.4%の交編率にてモックローディアの組織にて交編編物(編機;LPJ−H福原精機(株)製、釜経33インチ、ゲージ数32G)を得た。得られた生機を用いて常法により精練、プレセットした後、Sumikaron Yellow ERPD(住友化学工業株式会社製、分散染料)2% owfとLanaset Yellow 2R (日本チバガイギー株式会社製、酸性染料)2% owfにて染色(染色温度120℃、染色時間30分)を行った。さらに、常法により還元洗浄処理し、110℃で60分間の乾燥、170℃で30秒間の熱処理を行って、本発明の編物を得た。
【0034】
比較例5
実施例2において、ポリアミド系繊維Aとしてナイロン6繊維50d/12fを使用すること以外は、実施例2と同一の方法により比較例の編物を得た。
【0035】
比較例6、7
ポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの交編率A/Bを、各々25.4%/74.6%(比較例6)、80.6%/19.4%(比較例7)に変える以外は実施例2と同一の方法により比較用の編物を得た。実施例2及び比較例5〜7で得られた織物の評価を合わせて表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2から明らかなように、実施例2で得られた編物は、優れた制電性、吸水性、吸放湿性を有しており、快適衣料素材として好適なものであった。一方、ポリアミド系繊維Aの芯成分にポリエチレンオキサイド変性物が存在しない比較例4と、ポリアミド系繊維Aの割合が少ない比較例5の編物は、制電性、吸水性、吸放湿性すべての項目においてその性能が劣るものであった。また、ポリアミド系繊維Aの割合が多い比較例6の編物は、優れた吸水性と吸放湿性を有するものの、制電性に劣るものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の合成繊維にはない高度の制電性、吸水性、吸放湿性を有する織編物を提供する事ができ、快適性に優れた衣料を得ることが可能となる。
Claims (3)
- 温度34℃、相対湿度90%における吸湿率がナイロン6の1.5倍以上であるポリアミド系繊維Aと、ポリエステル繊維Bとからなる織編物であって、前記ポリアミド系繊維Aはポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物をポリアミド系繊維A重量に対し0.5〜60重量%の範囲で含有し、該織編物中に占めるポリアミド系繊維Aとポリエステル繊維Bとの混用重量比A/Bが30/70〜70/30であり、かつ該織編物を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5であることを特徴とする制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物。
- ポリアミド系繊維Aがポリアルキレンオキサイド、ポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリエチレンオキサイド変性物又は前記変性物とポリアミドとの混合物からなる芯成分とポリアミドからなる鞘成分より構成された芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1記載の制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物。
- 制電性が1000V以下、吸水性が150%以上、吸湿能力が1.5%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の制電性、吸水性、吸放湿性に優れた織編物。
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