JP3699836B2 - 吸放湿性に優れた織編物およびその織編物からなるインナーウエア、ストッキング - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた吸放湿性を有し、しかも長期保管においても黄変の極めて少ない織編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維、特にポリエステル繊維は、木綿、麻、ウール、絹等の天然繊維と比べて強力、耐摩耗性、寸法安定性、ウオッシュアンドウエア性、速乾性等の点で優れており、衣料用素材として広く使用されている。
しかし、合成繊維は、一般に天然繊維が有する優れた吸湿性を有しておらず、着用時の発汗により、ムレ、ベタツキ等が生じ、天然繊維よりも快適性の点で劣っている。
【0003】
このため、従来より合成繊維に吸湿性や吸水性を付与する試みは種々なされている。例えば、吸湿成分としてポリエーテルエステルアミドを用い、30℃、90%RHの雰囲気下で24時間放置したときの水分率と、20℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置したときの水分率との差を吸放湿係数ΔMRとして定義付けされたΔMRが2.5%以上あるいは1.5%以上の値を有する吸湿性繊維が特開平9−41204号公報、特開平9−41221号公報などに開示されている。しかしながら、ΔMRは、異なる温湿度条件下で24時間放置したときの各々の水分率から算出した値であり、実用性の面からみた場合、温湿度条件が変化したときに迅速に吸湿または放湿することが重要であり、このことについては一切示唆されていない。
【0004】
また、特開昭63−227871号公報、特開昭63−227872号公報等には吸放湿性を有する快適性衣料素材が提案されており、20℃×65%RHから30℃×90%RHへ移動したときの15分後の吸湿率および30℃×90%RHから20℃×65%RHへ移動したときの15分後の放湿率が記載されている。しかしながら、これらはポリエステル繊維やポリアミド繊維からなる織編物表面にビニルカルボン酸等の吸湿成分をグラフト重合により付着させるというものであり、風合が硬くなる、吸湿時にぬるぬるとぬめる、染色斑が発生しやすい、染色堅牢度が著しく低下するといった問題があった。
【0005】
さらに、一般に優れた吸湿性や吸水性を有し、熱可塑性であるポリマーは着色しているか、あるいは経日的に着色するものが多く、これにより繊維製品の品質や品位が低下するという問題があった。例えば、特開平8−209450号公報や特開平8−311719号公報等には、吸放湿性に優れた複合繊維が開示されている。これらは吸放湿成分としてポリエチレンオキサイド変性物を用いており、吸放湿性には優れているものである。しかしながら、ポリエチレンオキサイド変性物の変性剤としてジイソシアネート化合物を使用することの記載はあるものの、脂肪族系ジイソシアネート化合物により複合繊維の色調変化を顕著に抑制できるという示唆はなく、実施例などに記載のポリエチレンオキサイド変性物「商品名:アクアコーク」は芳香族系のジイソシアネート化合物で変性されたものであり、経時的に繊維の色調が変化するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような現状に鑑みて行われたものであり、環境の温湿度状態により吸湿機能や放湿機能を発揮し、かつ温湿度状態が変化しても繰り返し吸放湿性を発揮できる優れた吸放湿性を有し、長期保管においても色調変化、特に黄変が極めて少ないばかりか、風合や染色性の問題がない吸放湿性に優れた織編物を提供することを技術的課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、「吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーとからなり、芯部に該吸放湿性成分を含有する芯鞘型複合繊維である合成繊維であって、該吸放湿性成分がポリアルキレンオキサイドとポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物であり、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1.5%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を25℃×60%環境下に30分間放置したときの放湿性が2%以上であり、かつ、前記合成繊維を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5である吸放湿性合成繊維を少なくとも一部に用いて構成されていることを特徴とする吸放湿性に優れた織編物」および「上記の織編物であって、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を25℃×60%環境下に30分間放置したときの放湿性が1.5%以上であり、かつ、織編物を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5である吸放湿性に優れた織編物。」ならびに「上記の吸放湿性に優れた織編物からなるインナーおよびストッキング」を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の織編物に使用する吸放湿性合成繊維は、吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーとで構成された繊維である。この合成繊維が、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1.5%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を25℃×60%RH環境下に30分間放置したときの放湿率が2%以上の吸放湿性を有している必要がある。
ここで、34℃×90%RHの温湿度条件は、初夏から盛夏にかけて人が衣服を着用しているときの人体と衣服の間の温湿度状態に概ね相当するものであり、25℃×60%RHの温湿度条件は、年間を通じて概ね平均的な温湿度状態や室内環境を想定したものである。
【0009】
本発明のように、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した合成繊維を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1.5%以上、すなわち25℃×60%RHの環境下に放置して平衡水分率に達した合成繊維を34℃×90%RHの環境下に移し、30分間放置する間に吸湿する吸湿量が1.5%以上であることにより、この合成繊維を用いた織編物は、人体から排出される汗の水蒸気をすばやく吸湿することができる。この吸湿性は、2.5%以上であるのがより好ましい。
【0010】
また、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した合成繊維を25℃×60%RH環境下に30分間放置したときの放湿性が2%以上、すなわち34℃×90%RHの環境下に放置して平衡水分率に達した合成繊維を25℃×60%RHの環境下に移し、30分間放置する間に放湿される放湿量が2%以上であることにより、この合成繊維を用いた織編物は、いったん吸湿した繊維内部水分を、通常衣服内の空間より温湿度の低い衣服外の空間へとすばやく放湿することができる。この放湿性は3%以上であるのがより好ましい。
実際には、合成繊維は人体から排出される水蒸気の汗を吸湿しながら同時に衣服外へと放出するので、吸湿性と放湿性を別々に測定することは困難であるが、ここでは前記の吸湿性および放湿性の定義でその指標とした。
【0011】
前述したように、本発明の吸放湿性合成繊維は、吸湿性が1.5%以上で、放湿性が2%以上である必要があるが、放湿性が吸湿性と同等かまたは高いことが好ましい。
【0012】
前記の吸放湿性能は、本発明の吸放湿性合成繊維に用いられる吸放湿性成分によってもたらされるものであるが、吸放湿性成分としては、前述の吸放湿性能を満足し、色調変化の少ないものであればよい。好ましくは、ポリアルキレンオキサイドとポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られるポリアルキレンオキサイド変性物である。特に、次の群からそれぞれ1種以上選ばれた化合物の反応により得られた変性物が繊維形成性ポリマーと同時に溶融紡糸が可能である点からも好ましい。
ポリアルキレンオキサイドとしてはポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよび両者の共重合体、ポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、脂肪族ジイソシアネートは、ここでは脂環族ジイソシアネートも含むが、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。ここで、芳香族成分を含むジイソシアネートを用いると、着色または経時的な黄変がみられるので好ましくない。
【0013】
本発明における吸放湿性合成繊維に用いられる繊維形成性ポリマーとしては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位に第3成分の共重合されたポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。これらの中でもソフト感とか耐摩耗性に優れていることからインナーウエアやストッキング等の用途にはポリアミドが好ましく用いられる。また、形態安定性や張り・腰の要求される外衣用としては、ポリエステルが好ましく用いられる。
【0014】
本発明で使用する吸放湿性合成繊維は、30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値がー1〜5の範囲である必要がある。これは前述したように、最終の繊維製品とした場合でも色調変化がほとんどなく、商品価値を低下させないために必要であり、好ましくはb値が0〜3である。
合成繊維のb値は、繊維形成性ポリマーの原料に含まれる不純物、重合条件、紡糸条件などの種々の要因によって変わるが、現状では吸放湿性成分側に色調悪化の主要因がある場合が多い。したがって、b値を前記範囲とするためには、吸放湿性成分を改良する必要があるが、前述したポリアルキレンオキサイド変性物は色調変化が極めて少なく本発明に好適に用いることができる。
【0015】
本発明の合成繊維は、吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーとから構成されてなり、形態としては、例えば、吸放湿性成分と繊維形成性ポリマー成分が均一あるいは不均一にブレンドされた繊維、両者が独立に存在する芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、一方の成分が他方の成分によって複数に分割された多分割型など各種のコンジュゲート繊維、吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーのブレンド物を1成分とし、これと繊維形成性ポリマーとのコンジュゲート繊維などが挙げられる。
【0016】
吸放湿性成分は、繊維の内層および/または外層のいずれに配してもよいが、衣料用途に用いる場合は、吸放湿性成分を繊維表面に露出させることなく、内層(芯部)に配するのが、吸湿時のぬねり感や染色斑の発生がなく、染色堅牢度も低下しないので特に好ましい。
【0017】
本発明における吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーの構成比率としては、前記の吸湿性と放湿性を同時に満足するように設定すればよく、また目的や用途に応じて決定すればよい。例えば、吸放湿性成分として前述のポリアルキレンオキサイド変性物を用いる場合、繊維重量に対して約5〜50重量%の範囲が好ましい。
【0018】
また、吸放湿性合成繊維の単糸繊度は、一般に0.1〜20デニールの範囲が好ましいが、特に限定されるものではなく、断面形状についてもどのような形状であってもよい。さらに、本発明の吸放湿性合成繊維は、マルチフィラメントの長繊維として使用することがコストの面で好ましいが、短繊維化して紡績糸として用いることも可能である。
【0019】
本発明の織編物は、上記吸放湿性合成繊維を少なくとも一部使用したものであり、上記吸放湿性合成繊維のみを用いて構成したものであってもよく、またポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の他の繊維との交編、交織あるいは吸放湿性合成繊維と他の繊維からなる混繊糸を用いた織編物であってもよい。ここで、他の繊維を使用する際の混合率については、下記の条件を満足する範囲であれば、本発明では特に限定しない。
【0020】
先ず第一に、本発明の織編物が、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した前記織編物を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1%以上で、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した前記織編物を25℃×60%RH環境下に30分間放置したときの放湿率が1.5%以上であるとの吸湿性と放湿性を同時に有している必要がある。
【0021】
本発明のごとく、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1%以上、好ましくは2%以上であることにより、本発明の織編物からなる衣服は、人体から排出される汗の水蒸気をすばやく吸湿することができる。
また、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を25℃×60%RH環境下に30分間放置したときの放湿性が1.5%以上、好ましくは2.5%以上であることにより、いったん吸湿した織編物は、通常、衣服内の空間より温湿度の低い衣服外の空間へと繊維内部の水分をすばやく放湿することができる。
【0022】
前述したように、本発明の織編物は、吸湿性が1%以上で、放湿性が1.5%以上である必要があるが、放湿性が吸湿性と同等かまたは高いことが好ましい。すなわち、放湿性が吸湿性より低いと、時間の経過と共に人体からの水蒸気の汗が除々に織編物に蓄積され、吸湿性能が低下する場合がある。また、吸湿性が1%未満の場合や放湿性が1.5%未満の場合には、吸湿量や放湿量自体が小さいため、衣服内が蒸れやすくなるので好ましくない。
【0023】
第二の条件として、本発明の織編物は30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値がー1〜5の範囲である必要がある。これは前述したように、最終の繊維製品とした場合でも色調変化が殆どなく、商品価値を低下させないために必要であり、好ましくはb値が0〜3である。
【0024】
本発明のインナーウエアとストッキングは、少なくともその一部が上述の織編物で構成されたものである。そして本発明の吸放湿特性が生かされる部分に本発明の吸放湿性に優れた織編物が用いられているのが望ましい。インナーウエアとしては、ショーツ、ブラジャー、キャミソール、ペチコート、ガードル等の婦人ランジェリー、ファンデーション及び肌着や紳士肌着、子供肌着等が挙げられる。ストッキングとしては、パンティーストッキング、ショートストッキング、タイツ、婦人靴下、紳士靴下、子供靴下、スポーツソックス等が挙げられる。
本発明のインナーウエアとストッキングは、上記2条件、すなわち、「25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した前記織編物を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した前記織編物を25℃×60%RH環境下に30分間放置したときの放湿率が1.5%以上の吸放湿性を有すること」と「30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値がー1〜5の範囲であること」を満足する範囲であればホック、フライス、レース等の付属品を付けてもさしつかえない。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例における性能の測定と評価は、次の方法で行った。
(1)ポリアルキレンオキサイド変性物の溶融粘度
測定試料としてポリアルキレンオキサイド変性物1.5gを用い、フローテスター(島津製作所製CFT−500D)を用いて、荷重50Kg/cm2 、温度170℃、ダイ直径1mm、ダイ長さ1mmの条件で測定した。
(2)ポリアルキレンオキサイド変性物の吸水能(g/g)
純水200ml中に、秤量したポリアルキレンオキサイド変性物1gを添加し、24時間撹拌した後、200メッシュの金網でろ過し、ろ過後のゲルの重量を吸水能[g(純水)/g(樹脂)]とした。
(3)吸湿性および放湿性
試料を、温度105℃で2時間乾燥して重量W0 を測定する。
イ) その後、25℃×60%RHの条件下で24時間放置して試料重量W1 を測定する。次に、この試料を34℃×90%RHの条件下に移し、30分後の試料重量W2 を測定する。
ロ) W2 測定後、さらに、同じ条件下に24時間放置し、試料重量W3 を測定する。次いで、25℃×60%RHの条件下に移し、30分後の試料重量W4 を測定する。
ハ) W4 測定後、市販の洗剤および家庭用洗濯機を用いて通常の洗濯を行い、屋外で日干しにより乾燥させる。
上記の操作を1回として、イ〜ハの操作を繰り返し5回行い、1回目と5回目の吸湿性および放湿性を下記式により求めた。
吸湿性(%)=[(W2 −W1 )/W0 ]×100
放湿性(%)=[(W3 −W4 )/W0 ]×100
(4)b値
合成繊維の評価に際しては、合成繊維を筒編して試料とし、試料を温湿度の管理がなされていない室内で、太陽光は入射するが、直接日光の当たらない場所で30日間放置した後、マクベス社製のMS−2020型分光光度計を用い、試料の光反射率を測定し、国際照明委員会で定義された色差色CIE−LABから求めた(実際には分光光度計により自動的に出力される)。測定に際し、試料以外からの反射光の影響を極力小さくするために、試料を幾重にも折り畳んで光が織編組織の間隙を通過しないことを目視で確認した後、測定を行った。
(5)染色堅牢度
耐光堅牢度:JIS L−0842により評価。
洗濯堅牢度:JIS L−0844により評価。
汗 堅牢度:JIS L−0848により評価。
摩擦堅牢度:JIS L−0849により評価。
(6)吸湿時の風合
手触りによる官能検査で行い、ぬるぬる感がないものを○、ややぬるぬる感があるものを△、ぬるぬる感が衣料用として実用困難なものを×と評価した。
(7)着心地感
着用官能検査で下記のように評価した。
○:蒸れ感がない、△:やや蒸れる、×:蒸れる
【0026】
実施例1
繊維形成性ポリマーとしてナイロン6、吸放湿性成分としてポリエチレンオキサイド、1,4-ブタンジオールおよびジシクロヘキシルメタン 4,4' ジイソシアネートの反応物であるポリエチレンオキササイド変性物(PEO、吸水能35g/g、溶融粘度4000ポイズ)を用い、ナイロン6とPEOを70/30の割合でブレンドして芯部に配し、ナイロン6を鞘部に配して芯鞘型にて芯鞘の比率を40/60として複合紡糸・延伸して吸湿性合成繊維40デニール/24フィラメントを得て、この吸湿性合成繊維を使用して、釜径33インチ、ゲージ数40Gの福原精機株式会社製LIL−8型丸編機械にてモックローディアの編組織で編物を編成し、通常の精練、プレセット、染色(Uvitex EBF 1%owf) 、ファイナルセットを行って本発明の吸放湿性に優れた編物を得た。
上述の如くして得られた編物をキャミソールに縫製し、本発明のインナーウエアを得た。
【0027】
実施例2〜4、比較例1〜3
実施例1において、吸湿性合成繊維の芯成分と鞘成分の条件を変えて、ナイロン6とPEOのブレンド比率を80/20とし、芯鞘比率を50/50とすること(実施例2)、芯成分をPEOのみとし、芯鞘比率を20/80とすること(実施例3)、繊維形成性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、PETとPEOのブレンド比率を80/20とし、芯鞘比率を50/50とすること(実施例4)、芯鞘共にナイロン6とすること(比較例1)、芯鞘共にPETとすること(比較例2)、繊維形成性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、PETとPEOのブレンド比率を90/10とし、芯鞘比率を20/80とすること(比較例3)以外は、実施例1と同様にして本発明の吸放湿性に優れた編物及び比較例の編物を得て、さらに本発明のインナーウエア及び比較例のインナーウエアを得た。
実施例1〜4及び比較例1〜3の繊維の評価及び編物の評価を併せて表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた編物は、いずれも吸湿性、放湿性に優れ、長期保管による色調変化も少なく良好な品質であった。また本発明の編物を縫製したキャミソールは着用による蒸れ感がなく良好な着心地であった。
【0030】
実施例5
実施例1で得られた吸放湿性合成繊維40デニール/24フィラメントを仮撚加工し、次いで30デニールポリウレタン弾性糸に30デニール/10フィラメントのナイロン6をシングルカバーリングした糸(SCY糸)と前記吸放湿性合成繊維の仮撚加工糸とをパンティーストッキングのパンティー部に編み立て(吸放湿性合成繊維の仮撚加工糸/SCY糸との混合比率=40/60)、またパンティーストッキングのパンティー部以外の部位(レッグ部、トウ部、ソール部等)は15デニールポリウレタン弾性糸に10デニール/5フィラメントのナイロン6をダブルカバーリングした糸で編み立てた。上記パンティーストッキングを常法によりセット、染色、ファイナルセットを行い、本発明のパンティーストッキングを得た。
【0031】
比較例4
実施例5で使用した吸放湿性合成繊維の仮撚加工糸に替えて、40デニール/24フィラメントのナイロン6仮撚加工糸40デニール/24フィラメントに替えること以外は実施例5と同様の方法にて比較用のパンティーストッキングを得た。
実施例5と比較例4のパンティーストッキングのパンティー部の性能とパンティーストッキングの着用による官能検査結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、実施例5で得られた編物は、いずれも吸湿性、放湿性に優れ、長期保管による色調変化も少なく良好な品質であった。また本発明のパンティーストッキングは、パンティー部に着用による蒸れ感がなく良好な着心地であった。
【0034】
実施例6
繊維形成性ポリマーとしてナイロン6、吸放湿性成分としてポリエチレンオキサイド、1,4-ブタンジオールおよびジシクロヘキシルメタン 4,4' ジイソシアネートの反応物であるポリエチレンオキササイド変性物(PEO、吸水能35g/g、溶融粘度4000ポイズ)を用い、ナイロン6とPEOを70/30の割合でブレンドして芯部に配し、ナイロン6を鞘部に配して芯鞘型にて芯鞘の比率を40/60として複合紡糸・延伸して40デニール/24フィラメントと10デニール/4フィラメントの2種の吸湿性合成繊維を得て、吸放湿性合成繊維40デニール/24フィラメントを仮撚加工し、次いで30dポリウレタン弾性糸に30デニール/10フィラメントのナイロン6をシングルカバーリングした糸(SCY糸)と前記吸放湿性合成繊維の仮撚加工糸とをパンティーストッキングのパンティー部に編み立て(吸放湿性合成繊維の仮撚加工糸/SCY糸との混合比率=40/60)、またパンティーストッキングのパンティー部以外の部位(レッグ部、トウ部、ソール部等)は15デニールポリウレタン弾性糸に吸放湿性合成繊維10デニール/4フィラメントをダブルカバーリングした糸で編み立てた。上記パンティーストッキングを常法によりセット、染色、ファイナルセットを行い、本発明のパンティーストッキングを得た。
得られたパンティーストッキングは、吸湿性、放湿性に優れ、長期保管による色調変化も少なく、着用による蒸れ感がなく良好な着心地であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、環境の温湿度状態により吸湿機能や放湿機能を発揮し、かつ温湿度状態が変化しても繰り返し吸放湿性を発揮できる優れた吸放湿性能を有し、長期保管においても色調変化、特に黄変の極めて少ないばかりか、インナー、ストッキング、靴下に用いても風合や染色堅牢度の問題がない吸放湿性に優れた織編物が提供できる。
Claims (4)
- 吸放湿性成分と繊維形成性ポリマーとからなり、芯部に該吸放湿性成分を含有する芯鞘型複合繊維である合成繊維であって、該吸放湿性成分がポリアルキレンオキサイドとポリオールおよび脂肪族ジイソシアネート化合物との反応によって得られたポリアルキレンオキサイド変性物であり、25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1.5%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した前記合成繊維を25℃×60%環境下に30分間放置したときの放湿性が2%以上であり、かつ、前記合成繊維を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5である吸放湿性合成繊維を少なくとも一部に用いて構成されていることを特徴とする吸放湿性に優れた織編物。
- 25℃×60%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を34℃×90%RH環境下に30分間放置したときの吸湿性が1%以上、34℃×90%RH環境下で平衡水分率に達した織編物を25℃×60%環境下に30分間放置したときの放湿性が1.5%以上であり、かつ、織編物を30日間放置したときのCIE−LAB表色系におけるb値が−1〜5である請求項1記載の吸放湿性に優れた織編物。
- 請求項2記載の吸放湿性に優れた織編物を少なくとも一部に用いてなるインナーウエア。
- 請求項2記載の吸放湿性に優れた織編物を少なくとも一部に用いてなるストッキング。
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