JP3975398B2 - 快適性に優れたストッキング - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は吸湿性に優れ、吸湿時に加温効果あり、むれずに快適状態を保つストッキングに関し、更には抗菌、消臭効果も併せ持ち、洗濯耐久性にも優れ、また摩擦帯電圧や半減期にも優れたストッキングに関する。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン糸の出現以来、婦人の脚線美を高める衣料としてストッキングが普及し、パンティーストッキングの出現で更にその使用量を伸ばしてきた。更に嗜好の高級化により、より透明で、伸縮性の高い物等の商品の差別化が進んできた。その1つとして、より締め付け感の強いサポートタイプのストッキングが求められ、スパンデックスとナイロン糸のカバーリング糸使いのストッキングが登場し、今や主流になってきている。合成フィラメントは強度が高く、薄くて着用耐久性の優れたストッキングを得る上で重宝されているが、薄いことから厳寒時の保温性に欠ける欠点がある。また吸湿性が低いことから発汗時には蒸れることも改良されることが望まれている。加えてこの蒸れは靴内での異臭につながり、女性達の悩みの1つとなっている。
【0003】
合成繊維にも吸湿性の優れた繊維は多々存在するが、おおむね強度が低く、薄くて耐久性を求められるストッキング用途には不向きであり、ストッキングに用いられるフィラメントはナイロンまたはポリエステルが主流であり、特にナイロンは合成繊維の中では公定水分率が高く、強度も高いことからナイロンフィラメント糸が用いられる。しかし、厳寒期や酷暑時には問題も多い。厳寒用として厚地のいわゆるタイツもあるが、容姿を気にする若い女性には不満が多い。逆に酷暑時は生足といわれる未着用のケースもあるが、外観、締め付け感が重視され、不満ながらも着用されるケースが多い。
【0004】
近年、サポートタイプと称される締め付け感の強いストッキングの要求が高まり、ウレタン等の弾性糸とナイロンの複合糸が主流になりつつあるが、蒸れ感を解消する手段として、ナイロン繊維の吸湿特性を改良した吸湿性ナイロン糸の利用(特許文献1、2参照。)や、吸湿性ポリウレタンを利用すること(特許文献3参照。)が試みられている。吸放湿性が改善され、快適性に富むストッキングが提案されているが、吸湿発熱や抗菌、消臭効果の改善までには及んでいない。
【0005】
吸湿発熱効果は従来綿や羊毛繊維で旧知であるが、前述のタイツと同様で薄地で審美性を求められる婦人ストッキングには不向きである。
【0006】
これらの実状に鑑み、吸湿発熱樹脂粒子を後加工で接着樹脂でナイロンとポリウレタン弾性糸の複合糸で構成されるストッキングに固着する方法が提案されている(特許文献4参照。)が、吸湿粒子が表層のナイロン糸にも存在し、吸湿時のべとつきの問題や洗濯耐久性に欠ける問題の他、風合いが硬化する問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−228155号公報(請求項1など)
【特許文献2】
特開平9−256278号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献3】
特開2001−98423号公報(請求項1など)
【特許文献4】
特開2001−131802号公報(請求項1など)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような課題を解決しようとするものであって、弾性糸と合成繊維を少なくとも含んで構成されるストッキングに吸湿性を付与し、吸湿時に加温効果があり、むれずに快適状態を保つストッキングを提供するものであり、更には抗菌、消臭効果も併せ持ち、洗濯耐久性にも優れたストッキングを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1.弾性糸と合成繊維糸とのカバリング糸を少なくとも含んで構成されるストッキングであり、ストッキングを構成する編地の表裏表面はカバリング糸の巻き糸である合成繊維糸及び/又は交編糸である合成繊維糸を構成する合成繊維で覆われ、弾性糸が高吸放湿性微粒子を0.2〜50重量%含有し、高吸放湿性微粒子がアクリロニトリルを50重量%以上含むアクリロニトリル系重合体にヒドラジン、ジビニルベンゼンまたはトリアリルイソシアネート処理により架橋構造を導入し、残存しているニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめた塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上有する高吸放湿性有機微粒子であり、該弾性糸が構成編地の20重量%以上複合されてなり、吸湿時に7℃/分以上の加温効果を示し、放湿時に吸温作用を示し、洗濯前と10回洗濯後の吸湿発熱温度差が1℃未満であり、アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸から選ばれる少なくとも一つの消臭率が洗濯前と洗濯後共に70%以上であることを特徴とするストッキング。
2.抗菌性能があることを特徴とする上記第1に記載のストッキング。
.摩擦帯電圧が2500V以下であることを特徴とする上記第1又は第2に記載のストッキング。
.JIS−L−1094の制電性の半減期測定における半減期が50秒以下であることを特徴とする上記第1〜第のいずれかに記載のストッキング。
【0010】
本発明のストッキングの特徴は吸湿能があり、吸湿時に発熱、加温効果がある点にある。先ず本発明の着用時の温湿度変化について述べる。温湿度とはストッキングの編地の編み目内に包含する空気の温湿度をさし、この変化が快適性を左右する。着用中に運動等の刺激により体温が上昇すると、体温の冷却するため皮膚表面より汗が放出され、編地含有気相の温度、湿度ともに上昇し、不快感を感じることになる。この時編地に吸湿性があると、気相湿度を低く押さえることができ、不快の程度を低く押さえることができる。吸湿した水分は繊維表面から外部環境に放湿される。吸湿する時に発熱加温されると、気相中の水分量は同等で温度のみが上昇するため、相対的に湿度が低下し、皮膚からの発汗が促進され、結果として体温が低くおさえられる。この現象はストッキングの吸湿平衡状態に達するまでの数分間続く。やがて吸湿量と放湿量が平衡に達し、加温効果が停止する。この時ストッキングの温度が下がり、平衡温度に達する。運動が停止され、発汗が停止すると、放湿のみが行われ、やがて初期状態にもどる。
【0011】
本発明のストッキングに用いる高吸放湿性微粒子は綿繊維や羊毛繊維に比べ、吸放湿速度が遅く吸湿到達レベルが高いことが好ましく、結果として発熱、放熱がマイルドで長時間継続することになり、特に発汗停止後の繊維温度の低下速度が遅く、運動停止後の冷え感を抑止する効果がある。
【0012】
発明者らは弾性糸中の高吸放湿性微粒子濃度を変更することにより、吸湿時の着用テストで体感できる加温効果を検討した結果、7℃/分以上の昇温能力であることが好ましいことを知見した。より好ましくは9℃/分以上である。外部環境にも左右され、外温が低いほど昇温能力が高いことが望ましい。
【0013】
本発明のストッキングは薄さ、強さ、伸長性及び伸長回復性の点より弾性糸と合成繊維糸の複合糸で構成されるか、該複合糸と合成繊維糸の仮撚り加工糸との交編編地であることが好ましい。弾性糸は弾性フィラメントであることが好ましく、合成繊維糸は合成フィラメントであることが好ましい。ストッキングの表裏表面は実質的に合成フィラメントでおおわれていることが好ましい。これは弾性糸が直接肌と接触することを避け、肌面との滑りを良くすることがストッキングとして好ましい特性を満たすためである。複合糸の双方をフィラメントとすれば、透明性を上げることと、強度を高くして着用耐久性を高めることにおいて好ましく、合成フィラメントはポリエステルまたはナイロンであることが好ましい。
吸湿性、耐久性の観点から合成フィラメントはナイロンフィラメントであることがより好ましい。この複合糸の総繊度は実用上パンテイ―部用としては30デシテックス〜80デシテックス、レッグ用としては10デシテックス〜50デシテックスであることが好ましい。
【0014】
初期と10回洗濯後の吸湿発熱特性差は洗濯耐久性を示し、1℃未満であることは、10回の洗濯後も体感できる吸湿発熱特性を維持していることを意味する。本発明で言う洗濯とは、繊維評価技術協議会の標準洗剤を使用したJIS−0217−103法に準拠した洗濯をいう。
【0015】
本発明に係る弾性糸に含まれる高吸放湿性微粒子は無機微粒子でも構わないが、有機微粒子であることが好ましく、非生体系高分子からなる有機微粒子であることが更に好ましい。非生体系高分子からなる有機微粒子として、ポリアクリル酸系ポリマー微粒子、ポリビニール系ポリマー微粒子、ナイロン系ポリマー微粒子、ポリウレタン系ポリマー微粒子を使用することができるが、吸湿発熱性、消臭抗菌性等からポリアクリル酸系ポリマー微粒子が特に好ましく、この微粒子はアクリロニトリルを50重量%以上含むアクリロニトリル系重合体にヒドラジン、ジビニルベンゼン又はトリアリルイソシアヌレート処理により架橋構造を導入し、残存しているニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめたものであって、塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上有する有機微粒子を含む弾性糸であることが特に好ましい。前記塩型カルボキシル基は吸湿性に関与し、1.0mmol/g未満では吸湿性が不足するため好ましくない。
好ましくは4.0〜10.0mmol/gである。また、架橋処理による窒素含有量の増加が抗菌性、消臭性能の向上に作用する。
【0016】
本発明に係る弾性糸に添加するポリアクリル酸系ポリマー微粒子は、物性低下を防ぎ、紡糸操業性及び後加工通過性を良好とするために粒径が20μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下であって、その含有量は繊維に対して0.2〜50重量%含有することが好ましい。この範囲より含有量が低ければ十分な効果が得られず、高ければ弾性糸製造時の糸切れを誘発する等の不具合が生じるからである。
【0017】
高吸放湿性有機微粒子を含む弾性糸は構成する編地の20重量%以上含有することが好ましく、これを下回ると吸放湿特性が不足気味になり好ましくない。またストッキングのしめつけ感も不足するため好ましくない。より好ましくは25〜40%である。パンティーストッキングの場合はパンティー部とレッグ部を別々の糸で構成することが一般的に行われている。両者とも同一糸で構成する場合は問題ないが、片方のみに該吸湿性有機微粒子を含む弾性糸を用いる場合はその部分のみの編地中の該吸湿性有機微粒子を含む弾性糸の構成比率をさす。
【0018】
このように、環境の変化に応じて吸湿発熱と放湿吸熱をくり返し作用する編地はパンティー部及びレッグ部に任意に使い分けすることにより、季節及び環境にあったパンティーストッキングを設計することができる。例えば、夏季用のストッキングにはレッグ部のみに発熱・吸湿性有機微粒子を含む弾性糸をもちいることで、さらさら感のある涼しいストッキングが得られ、冬季用としてはパンティー部及びレッグ部双方に用いることがこのましい。
【0019】
本発明における弾性糸とは、社会通念上ゴム弾性挙動を示すと認められる繊維をいい、例えば少なくとも100%以上伸張することができ、かつ20%以上の回復率を有する繊維などが挙げられる。
【0020】
本発明に係る弾性糸はポリウレタン弾性糸であってもよい。該弾性糸は特に優れた伸縮性を示し、着用時に高伸長状態で利用でき、粒子表面に形成する弾性樹脂膜がより薄くなり高吸放湿性微粒子の効果が顕著にあらわれる。
【0021】
本発明に係る弾性糸に用いることができるポリウレタン重合体は、ポリオールと過剰モルのジイソシアネート化合物からなる両末端がイソシアネート基である中間重合体を、N,N‘−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの不活性な有機溶剤に溶解し、ジアミン化合物を反応させて得るものであってもよい。
【0022】
上記ポリオールとしては特に制限はないが、例えばポリマージオールなどが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコールおよびポリオキシプロピレンテトラメチレングリコールなどのポリエーテルジオール、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸およびマロン酸などの二塩基酸の一種または二種以上とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコールおよびジエチレングリコールなどのグリコール一種または二種以上とから得られるポリエステルジオール、ポリ−ε−カプロラクトンおよびポリバレロラクトンなどのポリラクトンジオール、ポリエステルアミドジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどから選択することができる。
【0023】
ジイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族および芳香族のジイソシアネート化合物であれば特に制限されない。例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、1,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、m−およびp−キシリレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−および1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
鎖延長剤としてのジアミン化合物は特に制限されるものではないが、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンおよびヒドラジンなどが挙げられる。
【0025】
本発明のストッキングはアンモニア、酢酸及びイソ吉草酸から選ばれる少なくとも一つの消臭率が70%以上である特徴を有することが好ましい。これらの成分は社団法人である繊維評価技術協議会が汗臭の臭気成分としているものであり、これらの成分を消臭する性能を有していれば、特に上記3種のいずれの成分に対しても消臭性能を有していれば、発汗後の臭気を消臭する性能を有しているとみなしやすく、この性能が70%以上であることがその目処となっている。よって70%未満ではその性能が不充分であり消臭性能を有しているとは言えない。
好ましくは消臭性能が85%以上であり、さらには90%以上が一層好ましい範囲となる。
【0026】
本発明のストッキングはアンモニア、酢酸及びイソ吉草酸から選ばれる少なくとも一つの消臭率が洗濯前と洗濯後共に70%以上であることが好ましい。従来から市販されているストッキングは製品にした後に消臭成分を付着させる、所謂後加工品が殆どであり、それらは洗濯耐久性に劣るため、たとえ初期に消臭性能を有しているものであっても、洗濯後にはその消臭性能が劣化してしまう。本発明のストッキングが好ましく採用する弾性糸はその繊維表面及び内部に繊維と一体となっているため、洗濯してもその性能はほとんど劣化しない。洗濯後の消臭率のより好ましい範囲としては80%以上であり、さらには85%以上が一層好ましい。
【0027】
本発明のストッキングは、摩擦帯電圧が2500V以下であることが好ましい。摩擦帯電圧が2500Vを超えるとスカート着用時のまつわりつきやすく、特に低湿度の冬に着用すると不快感を感じやすくなる。好ましい範囲は2000V以下であり、さらには1500V以下が一層好ましい。
【0028】
本発明のストッキングは、帯電圧の半減期が50秒以下であることが好ましい。摩擦帯電圧同様に、この帯電圧の半減期はまつわりつきやすさを評価するパラメータであり、この数値が50秒以下であれば、たとえ左右のストッキングやスカートなどのアウターとのこすれによる静電気が起きても、帯電圧の減少速度が速いため、不快感を感じにくくなる。50秒を超えると、特に低湿度の冬に着用した場合に不快感を感じやすくなる。好ましくは30秒以下であり、さらには15秒以下が一層好ましい。
【0029】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
[吸湿発熱特性の測定]
ストッキングの一部(おおよそ30cm)を70℃のタンブラー乾燥機で2時間乾燥後、シリカゲルの入ったデシケーターに入れ、32℃×70%RHの環境下にデシケーターを8時間以上調温する。その後、デシケーターから32℃×70%RHの環境下に取り出し、20秒間隔でサーモトレーサーで撮影し、ストッキング表面の温度を計測する。このデーターより最高到達温度と時間を特定し、次式より昇温速度を算出する。
昇温速度(℃/分)={(最高到達温度℃)−(32℃)}/到達時間(分)10回洗濯前後の吸湿発熱温度差は最高到達温度を比較した。
【0031】
[抗菌性能の測定]
試験菌を黄色ブドウ球菌として、繊維評価技術協議会の定めるSEK統一試験法により試験し、静菌活性値で示した。この値が1.6以上で抗菌性能があると判断した。
【0032】
[消臭性能の測定]
繊維評価技術協議会の機器評価方法に準拠し測定した。アンモニアと酢酸は検知管法、イソ吉草酸はガスクロマト法に準拠し測定した。
【0033】
[摩擦帯電圧]
JIS−L−1094の摩擦帯電圧測定法に準拠した。
【0034】
[半減期]
JIS−L−1094の半減期測定法に準拠した。
【0035】
【実施例1】
分子量1800のポリオキシテトラメチレングリコール200部とメチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)45部を80℃で3時間反応させ、両末端イソシアネート基の中間重合体を得た。中間重合体を40℃まで冷却した後、N,N−ジメチルアセトアミド375部を加え10℃まで冷却した。エチレンジアミン4.0部、ジエチルアミン0.4部をN,N−ジメチルアセトアミド147.6部に溶解したジエチルアミン溶液を用意し、高速攪拌されている中間重合体溶液へジエチルアミン溶液を一気に添加し、溶液濃度32.2重量%、粘度2500ポイズ(30℃)のポリウレタン重合体溶液を得た。
【0036】
こうして得たポリウレタン重合体溶液に、n−ブチルアミン/N,N−ジメチルヒドラジン末端封鎖ポリマー4%、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物を添加混合する。
【0037】
引続き、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、p−スチレンスルホン酸ソーダ及び水からなる原料微粒子水分散体をヒドラジン架橋し、NaOHにて加水分解処理した、平均粒径0.5μm(光散乱光度計で測定)、膨潤度80%の高吸放湿性有機微粒子を13重量%前記ポリウレタン重合体溶液に添加混合し紡糸原液とした。
【0038】
紡糸原液を脱法後、孔径0.5mmの口金から吐出し、235℃の加熱空気を流した紡糸筒内押し出し、油剤を5%OWF付与して速度550m/分で巻き取った。得られた糸条を40℃で72時間加熱処理し、後加工に供する22dtex、2filのポリウレタン弾性糸を得た。得られたポリウレタン弾性糸の最大発熱量は3℃であり、20℃×65%RHにおける吸湿率は4.8%、20℃×95%RHにおける吸湿率は6.4%、であった。
【0039】
得られた弾性糸に、巻き糸としてナイロン6の通常延伸糸8dtex、5filの糸条を用い、カバリングの際の芯糸ドラフトを3.3、下撚り数2900回/m、上撚り数2450回/mにそれぞれ設定し、ダブルカバリング糸を製造した。
【0040】
上記のカバリング糸を4口パンティストッキング編み機(口径4インチ、編み針本数400本)に供給し編立、プリセット、裁断、縫製、染色加工、ファイナルセットの一連の後加工を行いパンティストッキングを得た。このストッキングの吸湿発熱特性、抗菌性能、消臭性能、摩擦帯電圧、帯電圧の半減期を評価した結果を表1に示した。このパンティーストッキングを用いて、20℃、65%RHの環境下で歩行と安静姿勢を各10分、2回繰り返す着用テストの結果、10人のパネラー全てが比較例1で得たパンティーストッキングと対比して快適であると評価した。
【0041】
[実施例2]
実施例1で得たカバリング糸と22dtex、6filのナイロン6仮撚り加工糸を1コース毎に配すること意外は実施例1と同法でパンティーストッキングを得た。このストッキングの吸湿発熱特性、抗菌性能、消臭性能、摩擦帯電圧、帯電圧の半減期を評価した結果を表1に示した。このパンティーストッキングを用いて、20℃、65%RHの環境下で歩行と安静姿勢を各10分、2回繰り返す着用テストの結果、10人のパネラーは比較例1で得たパンティーストッキングと対比して9人までが快適であると評価した。
【0042】
[比較例1]
高吸放湿性有機微粒子を添加しない紡糸原液とした以外は実施例1と全く同法でパンティーストッキングを得た。このストッキングの吸湿発熱特性、抗菌性能、消臭性能、摩擦帯電圧、帯電圧の半減期を評価した結果を表1に示した。このパンティーストッキングを用いて、20℃、65%RHの環境下で歩行と安静姿勢を各10分、2回繰り返す着用テストの結果、10人のパネラーは実施例1で得たパンティーストッキングと対比して不快であると10人とも評価した。
【0043】
[比較例2]
高吸放湿性有機微粒子を3重量%前記ポリウレタン重合体溶液に添加混合し紡糸原液とした以外は実施例1と全く同法でパンティーストッキングを得た。このストッキングの吸湿発熱特性、抗菌性能、消臭性能、摩擦帯電圧、帯電圧の半減期を評価した結果を表1に示した。このパンティーストッキングを用いて、20℃、65%RHの環境下で歩行と安静姿勢を各10分、2回繰り返す着用テストの結果、10人のパネラーは実施例1で得たパンティーストッキングと対比して8人まで不快であると評価した。
【0044】
[比較例3]
比較例1で得たパンティーストッキングに実施例1で使用した高吸放湿性有機微粒子と水溶系ポリウレタン(エラストロンW−33;第一工業製薬社製 固形分30%)と触媒(キャタシスト64;第一工業製薬社製)を200:33:10の比率の混合液をパッド−ドライ法で高吸放湿性有機微粒子が5重量%になるように固着した。このストッキングの吸湿発熱特性、抗菌性能、消臭性能、摩擦帯電圧、帯電圧の半減期を評価した結果を表1に示した。洗濯前の吸湿発熱特性は優れた性能を示したが、10回の洗濯を繰り返したあとの性能は極度に低下していた。また洗濯前のストッキングを実施例1と同法で着用テストを実施したところ10人中、3人が運動中にべたつきを感じたと評価した。
【0045】
【表1】
Figure 0003975398
【0046】
【発明の効果】
本発明によって、吸湿性に優れ、吸湿初期に発熱加温効果があり、発汗停止後の急冷によるべとつき感もない快適性に富んだ洗濯耐久性にも優れたストッキングを提供することが可能となり、加えて、抗菌、消臭能、ペーハー緩衝能等の衛生機能や制電性能も兼ね備えたストッキングの提供が可能となった。

Claims (4)

  1. 弾性糸と合成繊維糸とのカバリング糸を少なくとも含んで構成されるストッキングであり、ストッキングを構成する編地の表裏表面はカバリング糸の巻き糸である合成繊維糸及び/又は交編糸である合成繊維糸を構成する合成繊維で覆われ、弾性糸が高吸放湿性微粒子を0.2〜50重量%含有し、高吸放湿性微粒子がアクリロニトリルを50重量%以上含むアクリロニトリル系重合体にヒドラジン、ジビニルベンゼンまたはトリアリルイソシアネート処理により架橋構造を導入し、残存しているニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめた塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上有する高吸放湿性有機微粒子であり、該弾性糸が構成編地の20重量%以上複合されてなり、吸湿時に7℃/分以上の加温効果を示し、放湿時に吸温作用を示し、洗濯前と10回洗濯後の吸湿発熱温度差が1℃未満であり、アンモニア、酢酸及びイソ吉草酸から選ばれる少なくとも一つの消臭率が洗濯前と洗濯後共に70%以上であることを特徴とするストッキング。
  2. 菌性能があることを特徴とする請求項1に記載のストッキング。
  3. 摩擦帯電圧が2500V以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のストッキング。
  4. JIS−L−1094の制電性の半減期測定における半減期が50秒以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のストッキング。
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