JP3768745B2 - 圧力センサの異常検出装置および異常検出方法 - Google Patents

圧力センサの異常検出装置および異常検出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ABS制御や倍力助勢や車両姿勢制御や自動制動制御などホイルシリンダ圧を任意にコントロールするブレーキ装置などのように、ポンプから流体が吐出される流体圧回路において流体圧力を検出するべく設けられた圧力センサの異常を検出する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のように、流体回路の流体圧力の異常を検出する方法として、例えば、特開平8-178786号公報に記載のように、ブレーキ装置のマスタシリンダ圧あるいはブレーキ配管の圧力を検出するものが知られている。
【0003】
この従来技術は、ブレーキ配管にポンプが流体を吐出するように構成されて、ABS制御や倍力助勢や車両姿勢制御や自動制動制御などホイルシリンダ圧を任意にコントロールすることが可能なブレーキ装置において、運転者によるブレーキ操作あるいは液圧制御によって発生したブレーキ液圧を検出するために、マスタシリンダまたはブレーキ配管に圧力センサを設け、この圧力センサの検出値に基づいてホイルシリンダに供給する液圧を調節するよう構成されている。
【0004】
そして、この圧力センサの異常検出方法として、この圧力センサからの出力値を繰り返し読み込み、この読込値が、予め設定された所定の範囲の正常範囲内に収まっている場合には、正常と判断し、読込値が正常値範囲外に出た状態が所定の時間を越えて続くと、異常と判断する方法・装置が記載されている。つまり、圧力センサおよびその配線において、断線や地絡といった状態が発生すると、圧力センサの検出値が、全く圧力を検出していない状態あるいは通常よりも過大な圧力を検出する状態となるため、上記のように読込値が所定の正常値範囲外の値となることで異常と判定するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧力センサの故障としては、地絡や断線などの他に、圧力センサの出力値が所定の中間値のままになるという故障(以下、これを中間故障と称する)もあり、この場合、上述の従来の異常検出方法にあっては、中間値が前記正常範囲内に収まっていると、異常を検出できず正常と判断してしまうおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、上述のような誤判定が成されるのを防止して異常検出精度の向上を図ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、図1のクレーム対応図に示すように、運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じてホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧源と、前記ホイルシリンダと前記液圧源とを接続するブレーキ配管bと、前記ブレーキ配管bに設けられた圧力センサcと、前記ブレーキ配管bに設けられ、前記ホイルシリンダの液圧を調整する液圧調整弁と、前記運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じて前記ホイルシリンダの目標液圧を決定し、この目標液圧に応じて前記液圧源と前記液圧調整弁のいずれか一方を制御する制御手段と、前記圧力センサcの出力値が、所定の幅を有した異常判定しきい帯の範囲内であるか否かを判定し、前記出力値が前記異常判定しきい帯内である状態が所定時間継続した場合に前記圧力センサcが異常であると判定する異常判定手段gとを有する圧力センサcの異常検出装置であって、前記異常判定手段gは、前記圧力センサcの出力値を繰り返し読み込むとともに、今回読み込まれた出力値と前回読み込まれた出力値とを基に単位時間当たりの圧力センサc出力値の変化量を算出し、前記変化量の前回値、および今回値それぞれの大小判定を行う前回異常判定値および今回異常判定値を設け、前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは異常と判定し、前記変化量の前回値および今回値がそれぞれ前記前回異常判定値および今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは正常と判定し、前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも大きい場合、前記圧力センサは正常と判定することとした。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧力センサcの異常検出装置において、前記今回異常判定値は、前記前回異常判定値と異なる符号を有し、
前記今回異常判定基準値の絶対値は、前記前回異常判定基準値の絶対値より小さいこととした。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の圧力センサcの異常検出装置において、前記液圧源はポンプであって、前記ポンプの駆動中には、前記ポンプの非駆動時に前記前回異常判定基準値を大きくすることとした。
【0010】
また、請求項4の発明にあっては、運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じてホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧源と、前記ホイルシリンダと前記液圧源とを接続するブレーキ配管bと、前記ブレーキ配管bに設けられた圧力センサcと、前記ブレーキ配管bに設けられ、前記ホイルシリンダの液圧を調整する液圧調整弁とを有し、前記運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じて前記ホイルシリンダの目標液圧を決定し、この目標液圧に応じて前記液圧源と前記液圧調整弁のいずれか一方を制御し、前記圧力センサcの出力値が、所定の幅を有した異常判定しきい帯の範囲内であるか否かを判定し、前記出力値が前記異常判定しきい帯内である状態が所定時間継続した場合に前記圧力センサcが異常であると判定する圧力センサcの異常検出方法であって、前記圧力センサcの出力値を繰り返し読み込むとともに、今回読み込まれた出力値と前回読み込まれた出力値とを基に単位時間当たりの圧力センサc出力値の変化量を算出し、前記変化量の前回値、および今回値それぞれの大小判定を行う前回異常判定値および今回異常判定値を設け、前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは異常と判定し、前記変化量の前回値および今回値がそれぞれ前記前回異常判定値および今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは正常と判定し、前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも大きい場合、前記圧力センサは正常と判定することを特徴とする圧力センサの異常検出方法。圧力センサcの異常検出方法とした。
【0016】
【発明の作用および効果】
圧力センサcが故障したときには、その出力値は、0あるいは極大値あるいは中間値に向けて急変した後、その値に固定される。
【0017】
そこで、本発明では、圧力センサcの出力値の変化量が所定の異常判定基準値よりも大きいときには、上述の故障による急変として捉え、さらに、その後の圧力センサcの出力値に大きな変化が生じることが無く、異常判定しきい帯内である状態が所定時間継続した場合に、圧力センサcが異常と判定する。
【0018】
ちなみに、圧力センサが正常な場合には、検出圧力が急変したりノイズが重畳したりすることにより出力値の変化量が異常判定基準値よりも大きくなっても、正常な検出圧力の急変の場合には、その後も圧力が上下するし、特に、圧力センサがポンプの吐出圧を検出している場合には、ポンプの吐出作動に伴う圧力の上下を検出するものであるし、また、ノイズが重畳した場合はノイズが重畳しなくなった時点で、基の値に戻る急変が生じる。したがって、圧力センサの出力値が異常判定しきい帯の範囲外に出ることになり、異常と判定されることはない。
【0019】
以上のように、本発明にあっては、圧力センサが故障したときに、その出力値が中間故障時の出力値である中間値を含みどのようなレベルであっても異常判定を行うことができ、従来と比較して検出精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【0020】
本願発明では、圧力センサcの出力値の変化量が異常判定基準値よりも大きくなると、異常判定しきい帯設定ステップにより異常判定しきい帯を設定し、その後、時間計測ステップにより、出力値が異常判定しきい帯内に収まっている状態の経過時間を計測し、続く異常判定ステップにおいて、この計測時間が所定の異常判定時間に達したときに異常と判定する。
【0021】
すなわち、圧力センサが正常な場合であっても、出力値の変化量が異常判定基準値を超えた後に、その出力値が異常判定しきい帯の範囲内に一時的に留まる可能性は全くないわけではない。そこで、このような一時的なこの留まりである場合を排除できるだけの時間が経過した時点で、異常と判定することにより、異常検出精度をさらに向上させることができる。
【0022】
請求項1に記載の発明では、読込手段dにおいて圧力センサcの出力値を読み込み、その単位時間あたりの変化量が異常判定基準値よりも大きい場合に、異常判定しき帯設定手段eにおいて、異常判定しきい帯を設定し、その後、時間計測手段fにより、圧力センサcの出力値が異常判定しきい帯の範囲内である時間を計測し、この計測時間が所定の異常判定時間に達したときに異常判定手段gが、異常と判定する。
【0023】
したがって、請求項1に記載の発明は、圧力センサcに異常が発生したときには、その出力が0や過大値はもちろん、中間値となったとしても、このように、圧力センサcの出力値の変化量の急変の後に出力値が所定のしきい帯の範囲内に留まることに基づいて、この状態の経過時間により異常判定をおこなうものであり、異常の誤検出を防止して検出精度を向上させることができる。
【0024】
請求項1に記載の発明では、車両のブレーキ配管bに設けられた圧力センサcの異常検出を高い精度で行うことができる。
【0025】
請求項1に記載の発明では、圧力センサcは、少なくとも、運転者の制動操作、ABS制御、自動制動制御のいずれかが実行されたときのブレーキ液圧を検出することができ、運転者の制動操作の場合は、運転者の踏み込み操作の後には、踏み込みを緩めて制動力を軽減する操作が伴うし、ABS制御および自動制動制御の場合には、ポンプが吐出する際の脈動が発生することにより、圧力センサcが正常であれば、上述のように時間計測手段fが時間を計測するときには、圧力センサcの出力値は異常判定しきい帯に留まることはない。したがって、高い精度で異常検出を行うことができる。
【0026】
請求項1に記載の発明にあっては、異常判定しきい帯設定手段eは、前回異常判定基準値および今回異常判定基準値を有している。すなわち、ノイズが重畳された場合、ノイズが重畳された時点で圧力センサcの出力値に急変が生じ、ノイズの重畳が解消された時点で、重畳時とは逆方向の急変が生じる。また、正常な圧力変化の場合も、圧力の急変が生じても、基本的には、基の値に戻る変化が生じる。それに対して、圧力センサcが故障した場合には、出力値の急変が生じた後には、元に戻ることはない。
また、請求項2に記載の発明にあっては、前回異常判定基準値および今回異常判定基準値は、互いに大きさおよび符号が異なることとする。
【0027】
そこで、請求項1に記載の発明にあっては、前回の単位時間あたりの変化量と比較する前回異常判定基準値は、最初の急変の有無を判定し、次回に、今回の単位時間あたりの変化量と比較する今回異常判定基準値は、前回の急変方向とは逆方向の変化量が大きいか否かを判定する。したがって、今回比較する戻り方向の変化量が小さければ、異常と判定し、戻り方向の変化量が大きければ正常と判定する。
また、請求項2に記載の発明にあっては、前回異常判定基準値の絶対値を今回異常判定基準値の絶対値よりも大きくする。
【0028】
このように、請求項1に記載の発明にあっては、最初の急変化量とその後の戻り方向の変化量との2段階で時間計測手段fによる計測を実行するか否かを決定するため、異常検出精度が高くなる。
また、請求項2に記載の発明にあっては、前回異常判定基準値の絶対値を今回異常判定基準値の絶対値よりも大きくするため、よりいっそう異常検出精度が高くなる。
【0029】
請求項3に記載の発明では、異常判定しきい帯設定手段eにおいて、ポンプが駆動するABS制御中や自動制動制御中は、ポンプが駆動していない通常の制動時と比較して、前回異常判定基準値として大きな値を用いる。つまり、ポンプ吐出圧が作用して、圧力の急変が生じる可能性が高いときには、前回異常判定基準値として大きな値を用い、異常な変化として捉えないようにし、これにより検出精度の向上を図ることができる。
【0030】
本願発明では、時間計測手段fは、圧力センサcの出力値が異常判定しきい帯の範囲外となったときには、それまでの計測時間から所定値を差し引く。したがって、圧力センサcの出力値の急変があって、時間計測手段fが、いったん経過時間の計測を開始しても、圧力センサcが正常であった場合には、計測時間がどんどん差し引かれて、結果的に計測時間0となって、異常と判定することが無くなる。ちなみに、単に、経過時間の計測を中断するだけであると、圧力センサcが正常であっても、その出力値が異常判定しきい帯を度々通過すれば、計測時間が蓄積されて異常と誤判定されるおそれがある。よって、本願発明は、いっそう検出精度の向上を図ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図2は以下に説明する実施の形態1を適用したブレーキ制御装置の全体構成を示す構成図である。
【0032】
図において、WCはホイルシリンダ、MCはマスタシリンダ、BPはブレーキペダル、RTはリザーバタンクである。
前記マスタシリンダMCと4輪の各ホイルシリンダWCとは、2系統のブレーキ配管(請求の範囲の主通路に相当する)1,2により接続されている。なお、前記マスタシリンダMCは、運転者のブレーキ操作に応じた液圧を発生させるものであるが、ブレーキ操作液圧源としては、これに限らず、運転者のブレーキ操作を電気的に検出してこれに応じた制御圧を発生する手段を用いてもよい。
【0033】
以下、構成を詳細に説明するが、各ブレーキ配管1,2における構成は同一であるので、以下に、ブレーキ配管1に関する構成についてのみ説明し、ブレーキ配管2における構成には、同じ符号を付けることで説明を省略する。
【0034】
前記ブレーキ配管1は、分岐点1dにおいて各ホイルシリンダWC,WCに向けて2つの分岐回路1f,1rに分岐され、各分岐回路1f,1rに、液圧制御弁を構成する流入弁5および流出弁6が設けられている。そして、流入弁5には一方弁1gが並列に設けられ、また、流出弁6には、ホイルシリンダWCのブレーキ液をリザーバ7に逃がすドレン回路10が接続されている。
【0035】
このドレン回路10には、リザーバ7のブレーキ液をブレーキ配管1の流入弁5よりも上流である分岐点1dに戻す還流回路4fおよびメインポンプ4が設けられている。なお、還流回路4fには、脈動を吸収するダンパ4dが設けられ、また、メインポンプ4において、逆流防止用の吸入弁4hおよび吐出弁4bが設けられている。
【0036】
さらに、メインポンプ4の吸入弁4hの直下流には、加給回路32の一端が接続されており、この加給回路32は、他端が、加給ピストン51の加給室51aが接続されている。また、前記加給回路32の途中には、この加給回路32を開閉する常閉のイン側ゲート弁42が設けられている。
【0037】
前記加給ピストン51は、シリンダ52内を加給室51aと圧力導入室51bとに画成してピストン53が摺動自在に設けられている。このピストン53は、リターンスプリング54により圧力導入室51bを縮める方向に付勢され、かつピストン53には、ブレーキ配管1と加給回路32とを連通させる通路を閉じるチェック弁55が設けられている。
【0038】
さらに、前記ブレーキ配管1において、分岐点1dよりも上流には、ブレーキ配管1を開閉する常開のアウト側ゲート弁(請求の範囲のゲート弁に対応する)41と、チェック弁21とが並列に設けられている。そして、前記ブレーキ配管1においてアウト側ゲート弁41の下流位置と、前記加給回路32のイン側ゲート弁42よりも上流位置とが、リリーフ回路34で接続されているとともに、このリリーフ回路34には、ブレーキ配管1側が所定圧を越える高圧になると、ブレーキ液を加給回路32側に逃がすリリーフ弁43が設けられている。
【0039】
また、前記加給ピストン53の圧力導入室51bどうしは、圧力導入回路33により接続され、この圧力導入回路33にサブポンプ8の加給吐出回路8aが接続されている。前記サブポンプ8は、加給吸入回路8bがマスタシリンダMCのリザーバタンクRTに接続されていて、作動時には、リザーバタンクRTのブレーキ液を圧力導入回路33に向けて吐出するものである。なお、サブポンプ8には、吸入弁8cおよび吐出弁8dが設けられている。
【0040】
さらに、加給吸入回路8bと圧力導入回路33とが2本の循環回路38a,38bにより接続されている。そして、循環回路38aの途中には循環回路38aを開閉可能な常開の循環切換弁45が設けられ、一方の循環回路38bにはリリーフ弁46が設けられている。このリリーフ弁46は、循環切換弁45aが閉状態の時に圧力導入回路33が所定の圧力異常にならないように圧力調整するよう構成されている。
【0041】
なお、上記メインポンプ4およびサブポンプ8は、1つのモータMで駆動されるよう構成されており、図3に示すように、このモータMおよび前記流入弁5,流出弁6,アウト側ゲート弁41,イン側ゲート弁42,循環切換弁45の作動は、コントロールユニットCUにより制御される。このコントロールユニットCUは、入力手段として前記加給回路32の途中に設けられた圧力センサPSや車輪速センサS,ヨーレイトセンサYR,舵角センサH,ブレーキセンサBSなどを備えたセンサ群SGを有している。
【0042】
次に、ブレーキ制御装置の基本的な作動を説明する。
a)通常のブレーキ操作時
通常、各弁5,5,6,6,41,42,45は、図示の非作動状態となっており、この状態でブレーキペダルBPを踏むと、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧が、各ブレーキ配管1,2を通って各ホイルシリンダWCに伝達され、ブレーキペダルBPの踏力に応じた車輪の制動が行われる。
また、運転者がブレーキ操作を終えると、ホイルシリンダWCに供給されていたブレーキ液は、各ブレーキ配管1,2を上記とは逆に流れてマスタシリンダMCに戻る。
【0043】
b)ABS制御時
上述のブレーキ操作時に、車輪がロックしたことあるいはロックしそうな状態となったことをコントロールユニットCUが検出すると、車輪のスリップ率を所定の範囲内に納めて車輪のロックを防止するABS制御を行う。すなわち、このABS制御は、制動時に車輪がロックしないようにブレーキ液圧を減圧・保持・増圧するもので、上述のブレーキ操作により生じたブレーキ液圧により、いずれかの車輪のスリップ率が所定値以上となると、コントロールユニットCUは、まず、アウト側ゲート弁41を閉弁させるとともに、モータMの駆動を開始し、さらに、そのロックしそうな車輪を制動するホイルシリンダWCに接続されている分岐回路1r,1fの流入弁5を閉弁し流出弁6を開弁する。この流出弁6の開弁によりホイルシリンダWCのブレーキ液がドレン回路10を経てリザーバ7に排出され、ホイルシリンダWCの減圧されて、制動力が弱まる。なお、リザーバ7に排出されたブレーキ液は、メインポンプ4の駆動により随時ブレーキ配管1に還流される。
【0044】
そして、この制動力の低下の結果、車輪のスリップ率が所定値未満に低下したら、コントロールユニットCUは、流出弁6への通電を停止して流出弁6を閉弁させてホイルシリンダWCの液圧を保持させ、さらに、この保持作動の結果、スリップ率が他の所定値未満まで低下すると、コントロールユニットCUは、流入弁5への通電をカットして開弁させ、この結果、高圧となっているブレーキ配管1のブレーキ液がホイルシリンダWCに供給されて制動力が再増加される。
【0045】
以上の作動を繰り返すことで、ブレーキペダルBPを踏んでいる間、各車輪のスリップ率を所定の範囲内に保持して、車輪のロックを防止させながら最大制動力が得られるABS制御が成される。
【0046】
また、以上のABS制御時には、モータMを駆動させる結果、サブポンプ8も駆動するが、このABS制御時には、循環切換弁45が開弁されており、サブポンプ8が吐出するブレーキ液の全量が2つの循環回路38a,38bを介して循環されるために空転状態となっていて、サブポンプ8は負荷とはならない。このようにサブポンプ8は仕事を行わないから、圧力導入室51bへは圧力導入されることがなく、ピストン53はリターンスプリング54の付勢力により一端に配置された状態に維持される。また、このABS制御時も上述の通常ブレーキ操作時と同様にイン側ゲート弁42は閉弁状態に保たれているため、マスタシリンダMCで圧力が発生しても、ブレーキ液が加給回路32からサブポンプ8へ供給されることはない。
【0047】
この後、運転者がブレーキ操作を終えたり車速が所定値以下になるなどのABS制御終了条件が成立したりするとABS制御を終了するもので、この場合、コントロールユニットCUは、アウト側ゲート弁41を開弁してブレーキ配管1を連通状態とし、かつ、流入弁5,流出弁6を元の状態に戻す。したがって、ホイルシリンダWCに供給されていたブレーキ液は、ブレーキ配管1を逆流してマスタシリンダMCに戻る。また、リザーバ7に排出されたブレーキ液もメインポンプ4の駆動によりブレーキ配管1に戻された後、マスタシリンダMCに戻るもので、これに要する時間が経過した後、モータMの駆動が停止される。
【0048】
c)自動制動制御時
コントロールユニットCUは、急発進・急加速により駆動輪のスリップ率が高くなったのに応じてスリップ率を所定の範囲内に納める駆動力制御、過オーバステアや過アンダステアなど車両の姿勢が乱れそうになったのに応じて制動力を発生させて車両のヨーモーメントを安定方向に作用させて車両姿勢を安定させる車両姿勢安定制御、あるいは先行車を自動的に追尾する自動追尾制御において必要に応じて自動的に制動を行う自動制動制御、のうちの少なくとも一つからなる自動制動制御を行う。
【0049】
自動制動制御時には、コントロールユニットCUは、モータMの駆動を開始させるとともに循環切換弁45を閉弁(ONとする)させ、かつ、アウト側ゲート弁41を閉弁(ONとする)させる一方、イン側ゲート弁42を開弁(ONとする)させる。
【0050】
このモータMの駆動により前記サブポンプ8が駆動して、マスタシリンダMCのリザーバタンクRT内のブレーキ液が吸入されて圧力導入回路33に吐出されて、加給ピストン51の圧力導入室51bに導入される。この圧力導入によりピストン53がリターンスプリング54の付勢力に抗して摺動し、加給室51a内のブレーキ液がピストン53のストロークによる容積変化分だけ加給回路32に吐出される。そして、この加給回路32のブレーキ液がイン側ゲート弁42を介してメインポンプ4に吸引され、各分岐回路1f,1rに吐出される。したがって、流入弁5,流出弁6を必要に応じて開閉させて各ホイルシリンダ圧を最適制御できる。すなわち、自動制動制御の開始時には、その直前にABS制御を行っていない限りはリザーバ7にブレーキ液は貯留されておらず、メインポンプ4を駆動させただけでは即座にブレーキ液を吸入・吐出することができず、吐出圧は生じない。そこで、サブポンプ8を駆動させて加給ピストン51からメインポンプ8の吸入側にブレーキ液を供給させることにより上述のような作動を行うことができるものである。
【0051】
また、この時、ブレーキ配管1が高圧になり過ぎた場合には、リリーフ弁43が開弁してリリーフ弁43の開弁圧まで減圧されるもので、これにより、加給ピストン51では、このブレーキ液の戻り分だけ加給室51aの容積が拡大されてピストン本体53が押し戻される。
【0052】
なお、循環切換弁45は、自動制動制御を実行している間閉弁させ、自動制動制御の終了とともに開弁させる。
【0053】
その後、自動制動制御を終了する場合、アウト側ゲート弁41ならびに循環切換弁45を開弁するとともにモータMの駆動を停止させる。したがって、加給ピストン51では、サブポンプ8による加給圧がなくなってピストン53がリターンスプリング54により押し戻されてホイルシリンダWCあるいはメインポンプ4からブレーキ配管1に戻されたブレーキ液が加給室51aに戻る。また、圧力導入室51b内に導入されていたブレーキ液はリザーバタンクRTに戻る。
【0054】
本実施の形態1では、上述のABS制御および自動制動制御の制御精度を高めるために加給回路32に圧力センサPSを設け、加給回路32における液圧を検出するよう構成されている。
【0055】
このように圧力センサPSを設けた構成では、圧力センサPSに異常が発生した場合に、正常に制御を実行できなくなることから、圧力センサPSの異常を常時検出する必要がある。
【0056】
本実施の形態では、コントロールユニットCUにおいて、圧力センサPSの異常検出を実行しているもので、以下に、これについて説明する。
【0057】
図4は、請求項1ないし3に記載の発明に対応した実施の形態1の制御を実行する部分の制御流れを示すフローチャートである。
【0058】
ステップ101では、圧力センサPSの出力電圧Pmを読み込む。なお、この出力電圧Pmは、圧力センサPSの出力電圧の1msにおけるサンプリング値であって、このステップ101の処理を実行する部分が請求の範囲の読込ステップならびに読込手段に相当する。
続くステップ102では、圧力センサPSの出力電圧Pmの移動平均値Paveを求める。この移動平均値Paveは、出力電圧Pmを10msの間で移動平均した値であって、ノイズ成分を除去するためにこの処理を行っている。
【0059】
ステップ103では、移動平均値Paveの前回値Pave[1]と今回値Pave[0]との差に基づいて、圧力変化率△Pを算出する。続くステップ104では、圧力センサPSの出力値が異常変化状態であることを示す異常変化フラグDpが0(非異常変化状態)であるか否かを判定し、Dp=0であればステップ105に進み、Dp=1であればステップ111に進む。
【0060】
ステップ105では、前回の圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値(請求の範囲の前回異常判定基準値に相当する)PBよりも大きいか否か判定し、△P[1]>PBであればステップ106に進み、△P[1]≦PBであればステップ107に進む。ちなみに、第2異常判定基準値PBは、例えば60kgf/cm2程度の大きい値であって、これはモータMを駆動させたときに生じる圧力変化速度の最大値および最小値に応じて算出した値であって、この値はポンプ4,8の仕様に応じて適宜決定する。
【0061】
ステップ106では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値(請求の範囲の今回異常判定基準値に相当する)PCの負の値-PCよりも大きいか否か判定し、△P[0]>-PCであればステップ109に進み、△P[0]≦-PCであればステップ110に進む。ちなみに、第3異常判定基準値PCは、例えば1kgf/cm2程度であって、第2異常判定基準値PBに比べて極めて小さな値であり、これは圧力センサPSに異常が発生したときの出力変動幅により算出するものである。
【0062】
一方、ステップ105においてNOと判定された場合に進むステップ107にあっては、前回の圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値PBの負の値-PBよりも小さいか否か判定し、△P[1]<-PBであればステップ108に進み、△P[1]≧-PBであればステップ110に進む。さらに、続くステップ108では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値PCよりも小さいか否か判定し、△P[0]<PCであればステップ109に進み、△P[0]≧PCであればステップ110に進む。
【0063】
ステップ109では、圧力センサPSの出力値の変化が異常であると判定して異常変化フラグDp=1にセットするとともに今回の移動平均値Pave[0]を異常時平均値P1とし、ステップ110では圧力センサPSが正常であると判定する。
【0064】
要するに、ステップ105から110の処理にあっては、前回の制御サイクルにおいて大きな圧力変化が生じ、今回の制御サイクルにおいて圧力変化が小さいときにステップ109に進んで、圧力センサPSの出力値の変化に異常があると判定し、前回・今回のいずれも大きな圧力変化が生じない場合、ならびに前回大きな圧力変化があっても今回はそれと逆方向に大きな圧力変化があった場合は、ノイズの影響であるとして圧力センサPSは正常であると判定する。
【0065】
このような処理に基づいて異常変化フラグDp=1にセットされた場合、ステップ104においてNOと判定されてステップ111に進むことになる。このステップ111では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1に第3異常判定基準値PCを加えた値(請求の範囲の異常判定しきい帯の上限値に相当する)よりも大きいか否か、すなわちPave[0]>P1+PCであるか否かを判定し、YESであればステップ112に進み、NOの場合はステップ113に進む。ステップ113では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1から第3異常判定基準値PCを差し引いた値(請求の範囲の異常判定しきい帯の下限値に相当する)よりも小さいか否か、すなわちPave[0]<P1-PCであるか否かを判定し、YESであればステップ112に進み、NOの場合はステップ116に進む。
【0066】
以上説明したステップ102から109まで、ならびにステップ111,112の処理を実行する部分が請求の範囲の異常判定しきい帯設定ステップならびに異常判定しきい帯設定手段に相当する。
【0067】
ステップ112では、異常判定タイマT1が0であるか否かを判定し、T1=0の場合はステップ114に進んで異常変化フラグDp=0にリセットするとともに異常時平均値P1も0にリセットする。また、ステップ112においてT1≠1の場合はステップ115に進んで異常判定タイマT1のカウント値を1だけデクリメントする。
【0068】
また、ステップ116では、異常判定タイマT1を1だけインクリメントし、続くステップ117において異常判定タイマT1が異常判定時間TA未満であるか否かを判定し、異常判定時間TA未満であればステップ110に進んで圧力センサPSが正常であると判定するが、異常判定時間TA異常となるとステップ118に進んで圧力センサPSが異常と判定する。ちなみに、異常判定時間TAは例えば100ms程度の短時間である。
【0069】
すなわち、ステップ111から118の処理では、圧力センサPSの出力値の前回から今回にかけての変化率が異常であると判定したら、その時点の移動平均値(異常時平均値P1)に対して±PCの幅を持った範囲を設定し、その後の移動平均値Pave[0]がこの範囲内に入っていれば、異常である異常判定タイマT1をカウントして行き、そのカウント値が異常判定時間TAを越えれば、異常と判定するものであり、請求の範囲の時間制速ステップ,異常判定ステップおよび時間計測手段,異常判定手段に相当する。
【0070】
次に、作用について説明する。
コントロールユニットCUは、常時、圧力センサPSの出力電圧Pmを読込ながら、その移動平均値Paveを求めている(ステップ101→102)。
ここで、図5(b)に示すように、圧力センサPSの出力値にノイズが重畳した場合について説明すると、この場合、圧力センサPSの出力値は、急激に高まった後に急激に低下するため、圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値PBを越えるが、その後の圧力変化率△P[0]は第3異常判定基準値-PCよりも小さな値となる。したがって、ステップ104→105→106→110の流れとなって圧力センサPSが正常であると判定することになる。
【0071】
一方、圧力センサPSに中間故障が発生して、その出力値が図5(a)に示すように変化した場合について説明する。すなわち、圧力センサPSは、その出力が急激に上昇した後、ある所定の出力値を維持する中間故障が生じた場合には、前回の圧力変化率ΔP[1]が第2異常判定基準値PBを越えるが、その後の今回の圧力変化率ΔP[0]は第3異常判定基準値-PCよりも大きな値となる。その結果、ステップ104→105→106→109の流れとなって、異常変化フラグDpが1にセットされるとともに、その時点の移動平均値Pave[0]を異常時平均値P1と設定する。
【0072】
圧力センサPSの出力値Pmは、その後も変化しないことから、異常変化フラグDpがセットされた後は、ステップ104→111→113→116の流れとなって異常判定タイマT1がカウントされ、このカウント値が異常判定時間TAを越えた時点で、異常発生と決定される。
【0073】
以上のように、本実施の形態では、ノイズが重畳した場合には、圧力センサPSの出力値が急激に変化するが、その後、出力値が元に戻るため、再度、逆方向の急激な変化が生じる。それに対して、中間故障の場合には、圧力センサPSの出力値が急激に変化し、その後、出力値が維持されるというような特性の違いに基づいて、圧力センサPSの出力値に急激な変化(所定値よりも大きい変化率)が発生した後に、逆方向の急激な変化が生じれば正常と判定するが、出力値が一定の範囲内に収まれば、故障と判定するものである。
【0074】
したがって、従来では検出できなかった中間故障にも対応でき、異常検出精度の向上を図ることができる。ちなみに、圧力センサPSは、正常に作動している場合の出力値の範囲が所定のプラス出力範囲に設定されており、地絡や断線の場合も、出力値がこの所定のプラス出力範囲から出る急激な変化の後、所定のプラス出力範囲外の一定の低出力値や高出力値に維持されるため、上記と同様にして異常を検出することができる。
【0075】
(実施の形態2)
図6は、請求項1ないし3に記載の発明に対応した異常検出の他例である実施の形態2の制御流れを示す。この実施の形態2では、コントロールユニットCUがABS制御あるいは自動制動制御を実行しているか否かを判定に加えるようにした例である。
【0076】
実施の形態1と同様にして、ステップ201では、圧力センサPSの出力電圧Pmを読み込み、続くステップ202では、圧力センサPSの出力電圧Pmの移動平均値Paveを求め、続くステップ203では、移動平均値Paveの前回値Pave[1]と今回値Pave[0]との差に基づいて、圧力変化率△Pを算出する。
【0077】
次にステップ204では、モータ駆動状態フラグMtrに基づいてモータMが駆動状態であるか否かを判定し、駆動状態であればステップ220に進み、非駆動状態であればステップ205に進む。
【0078】
モータMの非駆動時に進むステップ205から219に至る制御、ならびにモータMの駆動時に進むステップ220から234に至る制御は、基本的には、実施の形態1におけるステップ104からステップ118に至る制御と同様であるが、それぞれ、モータMを駆動させているか否かに応じて異常判定基準値として第1異常判定基準値(前回異常判定基準値に相当する)PA,第2異常判定基準値PB,第3異常判定基準値PCの3つの異常判定基準値を状況に応じて使い分けている点が相違する。
【0079】
ステップ205では、圧力センサPSの出力値が異常変化状態であることを示す異常変化フラグDpが0(非異常変化状態)であるか否かを判定し、Dp=0であればステップ206に進み、Dp=1であればステップ210に進む。
【0080】
ステップ206では、前回の圧力変化率△P[1]が第1異常判定基準値PAよりも大きいか否か判定し、△P[1]>PAであればステップ207に進み、△P[1]≦PAであればステップ207に進む。ちなみに、第1異常判定基準値PAは、例えば12kgf/cm2程度の通常の制動操作により発生する圧力変化速度の最大値および最小値に応じた大きさの値である。
【0081】
ステップ207では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値PCの負の値-PCよりも大きいか否か判定し、△P[0]>-PCであればステップ213に進み、△P[0]≦-PCであればステップ218に進む。ちなみに、第3異常判定基準値PCは、実施の形態1と同じ値である。
【0082】
一方、ステップ206においてNOと判定された場合に進むステップ208にあっては、前回の圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値PBの負の値-PBよりも小さいか否か判定し、△P[1]<-PBであればステップ209に進み、△P[1]≧-PBであればステップ218に進む。さらに、続くステップ209では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値PCよりも小さいか否か判定し、△P[0]<PCであればステップ213に進み、△P[0]≧PCであればステップ218に進む。
【0083】
ステップ213では、圧力センサPSの出力値の変化が異常であると判定して異常変化フラグDp=1にセットするとともに今回の移動平均値Pave[0]を異常時平均値P1とし、ステップ218では圧力センサPSが正常であると判定する。
【0084】
このような処理に基づいて異常変化フラグDp=1にセットされた場合、ステップ205においてNOと判定されてステップ210に進むことになる。このステップ210では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1に第3異常判定基準値PCを加えた値よりも大きいか否か、すなわちPave[0]>P1+PCであるか否かを判定し、YESであればステップ212に進み、NOの場合はステップ211に進む。ステップ211では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1から第3異常判定基準値PCを差し引いた値よりも小さいか否か、すなわちPave[0]<P1-PCであるか否かを判定し、YESであればステップ212に進み、NOの場合はステップ216に進む。
【0085】
ステップ212では、異常判定タイマT1が0であるか否かを判定し、T1=0の場合はステップ214に進んで異常変化フラグDp=0にリセットするとともに異常時平均値P1も0にリセットする。また、ステップ212においてT1≠1の場合はステップ215に進んで異常判定タイマT1のカウント値を1だけデクリメントする。
【0086】
また、ステップ216では、異常判定タイマT1を1だけインクリメントし、続くステップ217において異常判定タイマT1が異常判定時間TA未満であるか否かを判定し、異常判定時間TA未満であればステップ218に進んで圧力センサPSが正常であると判定するが、異常判定時間TA以上となるとステップ219に進んで圧力センサPSが異常と判定する。ちなみに、異常判定時間TAは例えば100ms程度の短時間である。
【0087】
モータMの駆動時に進むステップ220では、異常変化フラグDpが0(非異常変化状態)であるか否かを判定し、Dp=0であればステップ221に進み、Dp=1であればステップ225に進む。
【0088】
ステップ221では、前回の圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値PBよりも大きいか否か判定し、△P[1]>PBであればステップ222に進み、△P[1]≦PBであればステップ223に進む。ちなみに、第2異常判定基準値PBは、実施の形態1と同じ値である
ステップ222では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値PCの負の値-PCよりも大きいか否か判定し、△P[0]>-PCであればステップ228に進み、△P[0]≦-PCであればステップ233に進む。ちなみに、第3異常判定基準値PCは、実施の形態1と同じ値である。
【0089】
一方、ステップ221においてNOと判定された場合に進むステップ223にあっては、前回の圧力変化率△P[1]が第2異常判定基準値PBの負の値-PBよりも小さいか否か判定し、△P[1]<-PBであればステップ224に進み、△P[1]≧-PBであればステップ233に進む。さらに、続くステップ224では、今回の圧力変化率△P[0]が第3異常判定基準値PCよりも小さいか否か判定し、△P[0]<PCであればステップ228に進み、△P[0]≧PCであればステップ233に進む。
【0090】
ステップ228では、圧力センサPSの出力値の変化が異常であると判定して異常変化フラグDp=1にセットするとともに今回の移動平均値Pave[0]を異常時平均値P1とし、ステップ233では圧力センサPSが正常であると判定する。
【0091】
このような処理に基づいて異常変化フラグDp=1にセットされた場合、ステップ220においてNOと判定されてステップ225に進むことになる。このステップ225では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1に第3異常判定基準値PCを加えた値よりも大きいか否か、すなわちPave[0]>P1+PCであるか否かを判定し、YESであればステップ227に進み、NOの場合はステップ226に進む。ステップ226では、今回の移動平均値Pave[0]が異常時平均値P1から第3異常判定基準値PCを差し引いた値よりも小さいか否か、すなわちPave[0]<P1-PCであるか否かを判定し、YESであればステップ227に進み、NOの場合はステップ226に進む。
【0092】
ステップ227では、異常判定タイマT1が0であるか否かを判定し、T1=0の場合はステップ229に進んで異常変化フラグDp=0にリセットするとともに異常時平均値P1も0にリセットする。また、ステップ227においてT1≠1の場合はステップ230に進んで異常判定タイマT1のカウント値を1だけデクリメントする。
【0093】
また、ステップ231では、異常判定タイマT1を1だけインクリメントし、続くステップ232において異常判定タイマT1が異常判定時間TA未満であるか否かを判定し、異常判定時間TA未満であればステップ233に進んで圧力センサPSが正常であると判定するが、異常判定時間TA以上となるとステップ234に進んで圧力センサPSが異常と判定する。ちなみに、異常判定時間TAは例えば100ms程度の短時間である。
【0094】
この実施の形態2の場合も、前回の制御サイクルにおいて大きな圧力変化が生じ、今回の制御サイクルにおいて圧力変化が小さいときに圧力センサPSの出力値の変化に異常があると判定し、前回・今回のいずれも大きな圧力変化が生じない場合、ならびに前回大きな圧力変化があっても今回はそれと逆方向に大きな圧力変化があった場合は、ノイズの影響であるとして圧力センサPSは正常であると判定するもので、この時、モータMが駆動状態であるか非駆動状態であるかで圧力センサPSが正常である場合の圧力変化率が異なることから、異常な変化率であるか否かを判定する判定基準値を異ならせ、よりいっそう異常検出精度の向上を図っているものである。
【0095】
以上図面により実施の形態1,2について説明してきたが、本発明は上記実施の形態の構成に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では、ブレーキ操作液圧源としてブレーキペダルBPの操作により機械的に液圧を発生させるマスタシリンダを示したが、ブレーキペダルBPと機械的な連携が無く、ブレーキペダルBPに対する操作を電気的に検出してその検出値に基づいて制御液圧を発生する手段を用いてもよい。
【0096】
また、実施の形態では、圧力センサPSを、加給回路32に設けた例を示したが、圧力センサPSは、マスタシリンダMCからホイルシリンダWCに至るまでのどの位置に設けてもよいし、あるいは、制御としてABS制御のみを実行する装置であれば、圧力センサPSは、マスタシリンダMCから増圧弁5に至るまでのどの位置に設けてもよいし、あるいは、本実施の形態1,2のように、ABS制御および自動制動制御を実行する装置であっても、例えば、自動制動制御時には異常検出を行わないというのであれば、圧力センサは、アウト側ゲート弁3よりも上流に設けてもよい。
【0097】
さらに、本発明を適用するブレーキ装置としては、実施の形態1,2に限定されるものではなく、例えば、実施の形態1,2では、2つのポンプ4,8が設けられた構成のブレーキ装置について説明したが、ポンプは1つの構造であってもよい。このような構成のブレーキ装置に適用した例を実施の形態3として説明する。
【0098】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3を適用したブレーキ装置を示すものであるが、この説明にあたり、実施の形態1と同じ構成には同じ符号を付けて説明を省略することにする。
【0099】
ブレーキ配管1,2の途中には、アウト側ゲート弁23が設けられている。このアウト側ゲート弁23は、ブレーキ配管1,2の連通・遮断を切り替える常開のソレノイド弁である。
【0100】
前記アウト側ゲート弁23には、マスタシリンダMC側からホイルシリンダWC側へのブレーキ液の流通のみを許容する一方弁23aが並列に設けられているとともに、これらに並列に迂回路23bが設けられ、この迂回路23bには、アウト側ゲート弁23の下流の圧力が所定圧を越えたら上流に逃がすリリーフバルブ23cが設けられている。
【0101】
さらに、前記ブレーキ配管1,2には、マスタシリンダMC以外の液圧源としてポンプ24が接続されている。すなわち、このポンプ24は、運転者が操作していないときのブレーキ液圧源となるとともに、ABS制御を実行したときの戻しポンプを兼ねるものである。このポンプ24は、モータMにより作動するプランジャポンプであって、2つのプランジャ24p,24pを備えるとともに、それぞれのプランジャ24p,24pで吸入・吐出を行うポンプ室24rが、枝分かれされた吸入回路24a,24bを介して前記ブレーキ配管1,2においてアウト側ゲート弁23よりも上流の位置と、前記リザーバ7とに接続されている。一方、吐出回路24cが、前記ブレーキ配管1,2において、前記アウト側ゲート弁23と増圧弁5との間の位置に接続されている。なお、前記吸入回路24bには、ブレーキ液がリザーバ7の方向へ流れるのを防止する逆止弁24dが設けられている。
【0102】
また、前記吸入回路24aには、この吸入回路24aの連通・遮断を切り替えるイン側ゲート弁29が設けられている。このイン側ゲート弁29は、常閉のソレノイドバルブにより構成されている。
【0103】
前記2つのゲート弁23,29、増圧弁5、減圧弁6およびモータ8の作動はコントロールユニットCUにより制御される。このコントロールユニットCUの入力手段の1つである圧力センサPSは、前記ブレーキ配管1,2のアウト側ゲート弁23の下流に設けられ、ブレーキ配管1,2の液圧を検出する。
【0104】
なお、前記コントロールユニットCUは、圧力センサPSの異常を検出するが、その制御流れは、実施の形態1,2と同じであるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力センサの異常検出装置を示すクレーム対応図である。
【図2】実施の形態を適用したブレーキ制御装置を示す構成図である。
【図3】実施の形態1の要部を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1の制御流れを示すフローチャートである。
【図5】実施の形態の作動例を示すタイムチャートである。
【図6】実施の形態2の制御流れを示すフローチャートである。
【図7】実施の形態3のブレーキ制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
b 圧力回路
c 圧力センサ
d 読込手段
e 異常判定しきい帯設定手段
f 時間計測手段
g 異常判定手段
MC マスタシリンダ
WC ホイルシリンダ
BP ブレーキペダル
RT リザーバタンク
PS 圧力センサ
S 車輪速センサ
YR ヨーレイトセンサ
H 舵角センサ
BS ブレーキセンサ
1 ブレーキ配管
1d 分岐点
1f 分岐回路
1g 一方弁
1r 分岐回路
2 ブレーキ配管
4 メインポンプ
4b 吐出弁
4d ダンパ
4f 環流回路
4h 吸入弁
5 流入弁
6 流出弁
7 リザーバ
8 サブポンプ
8a 加給吐出回路
8b 加給吸入回路
8c 吸入弁
8d 吐出弁
8e フィルタ
10 ドレン回路
21 チェック弁
32 加給回路
33 圧力導入回路
34 リリーフ回路
38a 循環回路
38b 循環回路
41 アウト側ゲート弁
42 イン側ゲート弁
43 リリーフ弁
45a 循環切換弁
45b 循環切換弁
46 リリーフ弁
51 加給ピストン
51a 加給室
51b 圧力導入室
52 シリンダ
53 ピストン
54 リターンスプリング
55 チェック弁

Claims (4)

  1. 運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じてホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧源と、
    前記ホイルシリンダと前記液圧源とを接続するブレーキ配管と、
    前記ブレーキ配管に設けられた圧力センサと、
    前記ブレーキ配管に設けられ、前記ホイルシリンダの液圧を調整する液圧調整弁と、
    前記運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じて前記ホイルシリンダの目標液圧を決定し、この目標液圧に応じて前記液圧源と前記液圧調整弁のいずれか一方を制御する制御手段と、
    前記圧力センサの出力値が、所定の幅を有した異常判定しきい帯の範囲内であるか否かを判定し、前記出力値が前記異常判定しきい帯内である状態が所定時間継続した場合に前記圧力センサが異常であると判定する異常判定手段と
    を有する圧力センサの異常検出装置であって、
    前記異常判定手段は、
    前記圧力センサの出力値を繰り返し読み込むとともに、今回読み込まれた出力値と前回読み込まれた出力値とを基に単位時間当たりの圧力センサ出力値の変化量を算出し、
    前記変化量の前回値、および今回値それぞれの大小判定を行う前回異常判定値および今回異常判定値を設け、
    前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは異常と判定し、
    前記変化量の前回値および今回値がそれぞれ前記前回異常判定値および今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは正常と判定し、
    前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも大きい場合、前記圧力センサは正常と判定すること
    を特徴とする圧力センサの異常検出装置。
  2. 請求項1に記載の圧力センサの異常検出装置において、
    前記今回異常判定値は、前記前回異常判定値と異なる符号を有し、
    前記今回異常判定基準値の絶対値は、前記前回異常判定基準値の絶対値より小さいこと
    を特徴とする圧力センサの異常検出装置。
  3. 請求項1に記載の圧力センサの異常検出装置において、
    前記液圧源はポンプであって、
    前記ポンプの駆動中には、前記ポンプの非駆動時に比べ前記前回異常判定基準値を大きくすること
    を特徴とする圧力センサの異常検出装置。
  4. 運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じてホイルシリンダにブレーキ液圧を供給する液圧源と、
    前記ホイルシリンダと前記液圧源とを接続するブレーキ配管と、
    前記ブレーキ配管に設けられた圧力センサと、
    前記ブレーキ配管に設けられ、前記ホイルシリンダの液圧を調整する液圧調整弁と
    を有し、
    前記運転者のブレーキ操作または車両の走行状態に応じて前記ホイルシリンダの目標液圧を決定し、この目標液圧に応じて前記液圧源と前記液圧調整弁のいずれか一方を制御し、
    前記圧力センサの出力値が、所定の幅を有した異常判定しきい帯の範囲内であるか否かを判定し、前記出力値が前記異常判定しきい帯内である状態が所定時間継続した場合に前記圧力センサが異常であると判定する圧力センサの異常検出方法であって、
    前記圧力センサの出力値を繰り返し読み込むとともに、今回読み込まれた出力値と前回読み込まれた出力値とを基に単位時間当たりの圧力センサ出力値の変化量を算出し、
    前記変化量の前回値、および今回値それぞれの大小判定を行う前回異常判定値および今回異常判定値を設け、
    前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは異常と判定し、
    前記変化量の前回値および今回値がそれぞれ前記前回異常判定値および今回異常判定値よりも小さい場合、前記圧力センサは正常と判定し、
    前記変化量の前回値が前記前回異常判定値よりも大きく、かつ前記変化量の今回値が前記今回異常判定値よりも大きい場合、前記圧力センサは正常と判定すること
    を特徴とする圧力センサの異常検出方法。
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