JP3768449B2 - 穀類加熱調理済み食品の物性改良方法およびこれを用いた穀類加熱調理済み食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、穀類加熱調理済み食品のほぐれを改良するための方法、この方法によって得られる食品、および穀類加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
米、麦、そば、およびこれらの加工品である米飯、パン、麺等の穀類加工食品を喫食する際には、予め加熱調理することにより、含有する澱粉をα化しておくことが一般的である。穀類加工食品は加熱調理直後に最も好ましい色、光沢、ほぐれ易さ等の物性を有するが、その後は乾燥、澱粉の老化等の原因により、色調が変化する、表面の光沢が失われる、付着性が増し結着する等、物性が経時的に劣化する。
【0003】
なお、本明細書中で「付着」とは、穀類加工食品中の食材同士が結着してほぐれにくくなることをいう。具体的には、穀類の粒、麺、もしくは皮が互いに結着することをいう。さらに具体的には例えば、ご飯中の米粒と米粒とが結着してほぐれにくくなること、スパゲッティ中の麺と麺とが結着してほぐれにくくなること、餃子の皮どうしが結着して複数の餃子がくっついてしまってほぐれにくくなることなどをいう。穀類加工食品中の食材同士が結着してしまうと、その食品を食べにくくなり、さらにその食品の食感が低下して食品としての価値が著しく低下してしまう。
【0004】
穀類加工食品を喫食するにあたっては、加熱調理後可能な限り早く喫食することが望ましいが、外食店舗、流通店舗等において販売される穀類加工食品の場合は、製造、流通に時間を要するため喫食までにより長時間が経過する。この間に穀類加工食品は、加熱調理直後の好ましい物性を失い、価値が著しく低下する。
【0005】
上記課題を解決するため、さまざまな方法が提案されている。
【0006】
特開平6−327427号には、茹で麺の製造の際に、30重量%水溶液の粘度が約8〜300cpであるデンプンの低分子化物を麺の表面に添加する方法が提案されている。特開平6−327427号に提案されている方法では、麺線のほぐれ改良のために澱粉の低分子化物を用いている。さらに、澱粉を低分子化する方法として主に酸による加水分解を例示している。これらの方法で低分子化された澱粉は、低分子のものから高分子のものまで分子量の分布が非常に広いため、甘味を呈する、老化しやすいなどの欠点がある。また、分子量のばらつきが大きいため、効果が一定でないという欠点がある。
【0007】
特開平7−135914号には、粳米からなる米飯食品の製造の際に、10%水溶液に於ける浸透圧が約8〜100m osmolであるデンプン分解物を粳米に添加する方法が記載されている。特開平7−135914号に提案されている方法も特開平6−327427号に提案されている方法と同様に、分子量の分布が非常に広いため、甘味を呈する、老化しやすいなどの欠点がある。
【0008】
特開平9−75022号(特許第3121240号)に提案された方法では、難消化性デキストリンおよびペクチンを含有する穀類加工食品用ほぐれ改良剤が使用される。この公報によれば、難消化性デキストリン単独またはペクチン単独では充分なほぐれやすさを得ることができない。そのため、難消化性デキストリンおよびペクチンの両方を用いる必要があり煩雑である。さらに、ペクチンは特有の臭いを有するため、ざるそばのように香りが品質に重要な役割を果たす穀類加工食品には適さない。
【0009】
特開2000−236825号には上記課題を解決するために、少なくとも14個のα−1,4−グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンおよび/又は内分岐環状構造部分と外分岐環状構造部分と有する、重合度が50以上であるグルカンを米飯炊飯時に配合することが提案されている。しかしながら、この提案の方法では炊飯時に該グルカンを添加することが必須である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、加熱調理済みの穀類加工食品のほぐれを改良するための方法および組成物を提供することを目的とする。より詳細には、すし飯、チャーハン、炊き込み御飯等の米飯類、そば、うどん、パスタ、ビーフン等の麺類、ぎょうざ、しゅうまい等の穀類加工食品に対して加熱調理後に行っても食感および風味を損なうことのない穀類加熱調理済み食品のほぐれ改良方法、この方法によって得られる食品、および穀類加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の穀類加熱調理済み食品のほぐれ改良方法は、穀類未調理食品を加熱調理して穀類加熱調理済み食品を得る工程、およびグルカンを、加熱調理中の該穀類食品または該加熱調理済み食品に添加して、穀類ほぐれ改良食品を得る工程を包含し、ここで、該グルカンが、(1)重量平均分子量が30,000〜39,000であるグルカン、(2)重量平均分子量が41,000〜300,000であるグルカン、(3)重量平均分子量が350,000〜1,000,000であるグルカン、(4)DEが1〜1.9であるグルカン、(5)DEが5.1〜9.9であるグルカン、(6)DEが12.1〜15であるグルカン、および(7)分子量800,000以下でありかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類である。
【0012】
1つの実施形態では、上記グルカンは、(2a)重量平均分子量が100,000〜300,000であるグルカン、(3a)重量平均分子量が350,000〜1,000,000であるグルカン、(4a)DEが1〜1.9であるグルカン、(5a)DEが5.1〜9.9であるグルカン、および(7a)分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類であり得る。
【0013】
1つの実施形態では、上記グルカンは、デンプン分解物であり得る。
【0014】
1つの実施形態では、上記グルカンは、分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンであり得る。
【0015】
1つの実施形態では、上記グルカンは、高度分岐環状グルカンであり得る。
【0016】
1つの実施形態では、上記加熱調理済み食品は米飯類であり得る。
【0017】
1つの実施形態では、上記添加工程は、上記穀類加熱調理済み食品が付着する前に行われ得る。
【0018】
1つの実施形態では、上記添加工程は、上記穀類加熱調理済み食品の温度が室温に下がる前に行われる。
【0019】
1つの実施形態では、上記グルカンは、該穀類加熱調理済み食品100重量部に対して0.5〜20重量部であり得る。
【0020】
本発明の加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物はグルカンを含有し、ここで、該グルカンが、(1)重量平均分子量が30,000〜39,000であるグルカン、(2)重量平均分子量が41,000〜300,000であるグルカン、(3)重量平均分子量が350,000〜1,000,000であるグルカン、(4)DEが1〜1.9であるグルカン、(5)DEが5.1〜9.9であるグルカン、(6)DEが12.1〜15であるグルカン、および(7)分子量800,000以下でありかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類であり得る。
【0021】
1つの実施形態では、上記グルカンは、(2a)重量平均分子量が100,000〜300,000であるグルカン、(3a)重量平均分子量が350,000〜1,000,000であるグルカン、(4a)DEが1〜1.9であるグルカン、(5a)DEが5.1〜9.9であるグルカン、および(7a)分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類であり得る。
【0022】
1つの実施形態では、上記グルカンは、デンプン分解物であり得る。
【0023】
1つの実施形態では、上記グルカンは、分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンであり得る。
【0024】
1つの実施形態では、上記グルカンは、高度分岐環状グルカンであり得る。
【0025】
1つの実施形態では、上記加熱調理済み食品が米飯類であり得る。
【0026】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、さらに調味料を含有し得る。
【0027】
本発明の穀類加熱調理済み食品の保存方法は、穀類加熱調理済み食品100重量部に対して0.5〜20重量部のグルカンを、加熱調理中の該穀類食品または該加熱調理済み食品に添加して、穀類ほぐれ改良食品を得る工程、および該穀類ほぐれ改良食品を保存する工程を包含し、ここで、該グルカンは、(1)重量平均分子量が30,000〜39,000であるグルカン、(2)重量平均分子量が41,000〜300,000であるグルカン、(3)重量平均分子量が350,000〜1,000,000であるグルカン、(4)DEが1〜1.9であるグルカン、(5)DEが5.1〜9.9であるグルカン、(6)DEが12.1〜15であるグルカン、および(7)分子量800,000以下でありかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類であり得る。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
<加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物の原料>
本発明では、穀類加熱処理済み食品のほぐれを改良するために、グルカンが用いられる。加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物は、第1の成分としてグルカンを含有する。
【0030】
本発明で使用されるグルカンは、重量平均分子量が30,000〜39,000、41,000〜300,000または350,000〜1,000,000であるグルカン、DE1〜1.9、5.1〜9.9または12.1〜15のグルカン、および分子量800,000以下でありかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類である。
【0031】
重量平均分子量が30,000〜39,000、41,000〜300,000または350,000〜1,000,000であるグルカンは、例えば、デンプンを酸、酵素などで部分的に加水分解して得ることができる。このようなグルカンの例としては、例えば、松谷化学工業株式会社のパインデックス#1(重量平均分子量34,300;DE8±1)、マックス1000(重量平均分子量37,300;DE8〜9.5)、マックス1000EX(重量平均分子量45,700;DE7〜9)、フードテックス(重量平均分子量468,400;DE2);参松工業株式会社のBLD(重量平均分子量43,900)、BLD8(重量平均分子量50,100;DE8);ならびに三和澱粉工業株式会社のサンデック#100(重量平均分子量45,700;DE10)、サンデック#70(重量平均分子量75,200;DE7)が挙げられる。
【0032】
グルカンの重量平均分子量を調べる方法の例としては光散乱法が挙げられる。光散乱法の中でも、高速液体クロマトグラフィー装置にWyatt社製のレーザー光散乱光度計(DAWN−DSP)および示差屈折計を連結し、グルカンをゲルろ過カラムに供し、溶離液を流すことによって溶離したグルカンを分析する方法が特に簡便である。ゲルろ過のカラムとしては、例えば昭光通商製のSB−806M HQ(内径8mm、長さ300mm)を用い、溶離液としては0.1Mの硝酸ナトリウム溶液を用いる。試料としては、例えば、0.5重量%のグルカン溶液80μLを用いる。重量平均分子量は、レーザー散乱光度計の感度と、示差屈折計の感度とからWyatt社の操作説明書にしたがって計算することにより、求めることができる。
【0033】
本発明で使用されるグルカンは、重量平均分子量が30,000〜39,000、41,000〜300,000または350,000〜1,000,000であることにより、加熱調理後、食品の温度が室温まで下がった後でさえほぐれがよいという効果を有する。重量平均分子量がこの範囲にない場合、ほぐれ改良効果が得にくい。
【0034】
本明細書中では、「DE」とは、デンプンの分解程度を示す指標であって、固形分中のグルコースに換算した直接還元糖百分率である。従って、理論的には、DE=100のものがグルコースになる。
【0035】
本発明で使用されるグルカンは、DE1〜1.9、5.1〜9.9または12.1〜15であることにより、加熱調理後、食品の温度が室温まで下がった後でさえほぐれがよいという効果を有する。DEがこの範囲にない場合、ほぐれ改良効果が得にくい。
【0036】
本明細書中で「環状構造を有するグルカン」とは、α−1,4結合および/またはα−1,6結合で結合したグルコシル残基から形成される環状構造を有するグルカンをいう。重合度6以上のものが公知であり使用可能である。例えば、重合度6、7または8の環状グルカンは、デンプンなどに酵素CGTaseを作用させることにより容易に得られる。
【0037】
本明細書中では、「分子量800,000以下でありかつ環状構造を有するグルカン」とは、デンプンを1,4−α−グルカン分枝酵素、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、D酵素等の酵素で低分子化するなどの方法により得られるものであり、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成される内分岐環状構造部分とその環状構造部分に結合した外分岐構造部分からなるグルカンをいう。グルカンとは、D−グルコースから構成される多糖をいう。また、本発明でいうグルカンという用語には、グルカンの誘導体が含まれる。内分岐環状構造部分とは、α―1,4−グルコシド結合とα―1,6−グルコシド結合とで形成される環状構造部分をいう。外分岐構造部分とは、上記内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分をいう。
【0038】
環状構造を有するグルカンの例としては、江崎グリコ株式会社の高度分岐環状デキストリンが挙げられる。
【0039】
本明細書中では、「高度分岐環状グルカン」とは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンをいう。高度分岐環状グルカンおよびその製造方法は、特開平8−134104号(特許第3107358号)に詳細に記載されている。
【0040】
本発明の組成物に含まれる高度分岐環状グルカンは、分子全体として少なくとも1つの分岐を有すればよい。
【0041】
本発明の組成物に含まれる高度分岐環状グルカンは、重合度が50以上であれば、任意の重合度のものを用い得るが、好ましくは、重合度は、約50〜約10,000、より好ましくは約50〜約7,000、最も好ましくは、約50〜約5,000である。
【0042】
高度分岐環状グルカンに存在する、内分岐環状構造における重合度は、好ましくは、約10〜約500、さらに好ましくは、約10〜約100である。
【0043】
高度分岐環状グルカンに存在する、外分岐環状構造における重合度は、好ましくは約40以上であり、より好ましくは約100以上、さらに好ましくは約300以上、さらにより好ましくは約500以上である。
【0044】
高度分岐環状グルカンに存在する、内分岐環状構造部分のα−1,6−グルコシド結合は少なくとも1個あればよく、通常1個〜約200、好ましくは、約1〜約50個である。
【0045】
高度分岐環状グルカンは、1種類の重合度のものを単独で用いてもよいし、種々の重合度のものの混合物として用いてもよい。好ましくは、高度分岐環状グルカンの重合度は、最大の重合度のものと最小の重合度のものとの重合度の比が約100以下、より好ましくは約50以下、さらにより好ましくは約10以下である。
【0046】
高度分岐環状グルカンの製造方法の概略を以下に記載する。高度分岐環状グルカンの製造方法においては、原料という用語には誘導体化された原料が含まれる。高度分岐環状グルカンは、α−1,4−グルコシド結合および少なくとも1個のα−1,6−グルコシド結合を有する糖類と、この糖類に作用して環状構造を形成し得る酵素とを反応させることによって製造され得る。
【0047】
高度分岐環状グルカンの製造に使用し得る酵素としては、α−1,4−グルコシド結合および少なくとも1個のα−1,6−グルコシド結合を有する糖類に作用して、重合度が50以上であって、環状構造を有するグルカンを形成し得る酵素であれば、いずれをも使用し得る。使用し得る酵素としては、枝作り酵素(1,4−α−グルカン分岐酵素、枝付け酵素、ブランチングエンザイム、Q酵素とも呼ばれる)、D酵素(4−α−グルカノトランスフェラーゼ、不均化酵素、アミロマルターゼとも呼ばれる)、CGTase(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼとも呼ばれる)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
枝作り酵素(EC 2.4.1.18)は、澱粉系の糖類のα−1、4−グルカン鎖の一部を6位に転移して分枝を作る酵素である。
【0049】
D酵素(EC 2.4.1.25)は、ディスプロポーショネーティングエンザイムとも呼ばれ、マルトオリゴ糖の糖転移反応(不均一化反応)を触媒する酵素である。D酵素は、供与体分子の非還元末端からグルコシル基あるいは、マルトシルもしくはマルトオリゴシルユニットを受容体分子の非還元末端に転移する酵素である。従って、酵素反応は、最初に与えられたマルトオリゴ糖の重合度の不均一化をもたらす。
【0050】
枝作り酵素は、種々の植物、動物、細菌などの微生物に存在しており、その起源は問わない。反応最適温度が高い点から、好熱性細菌由来の枝作り酵素遺伝子をクローン化した大腸菌から精製された枝作り酵素が、あるいは、大量の酵素が得易い点から、馬鈴薯由来の枝作り酵素が好ましい。
【0051】
D酵素としては、種々の植物、あるいは微生物に由来するものが使用され得、市販の酵素も使用され得る。D酵素は最初、馬鈴薯から発見されたが、馬鈴薯以外にも、種々の植物および大腸菌などの微生物に存在することが知られている。この酵素は、植物に由来する場合にはD酵素、微生物に由来する場合にはアミロマルターゼと呼ばれている。従って、D酵素はその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主を用いて発現させたものであっても使用し得る。
【0052】
CGTase(EC 2.4.1.19)としては、周知の微生物由来のCGTase、あるいは市販のCGTaseが用いられ得る。微生物由来のCGTaseとしては、好適には、市販のBacillus stearothrmophilus 由来のCGTase(株式会社林原生物化学研究所、岡山)、Bacillus macerans由来のCGTase(商品名:コンチザイム、天野製薬株式会社、名古屋)、あるいはAlkalophilic Bacillus sp.A2−5a由来のCGTaseが用いられ得る。より好適には、Alkalophilic Bacillus sp.A2−5a由来のCGTaseが用いられ得る。Alkalophilic Bacillus sp.A2−5aは、特開平7−107972号に開示されているアルカリ域で高い活性を有するCGTaseを産生する株であり、出願人によって、工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号(FERM P−13864)として寄託されている。
【0053】
上記枝作り酵素、D酵素、あるいはCGTaseは、澱粉分子内のα−1,4−またはα−1,6グルコシド−結合を加水分解するエンド型のアミラーゼ類の酵素活性が検出されなければもしくは非常に弱ければ、精製段階の粗酵素であっても、高度分岐環状グルカンの製造に使用し得る。
【0054】
高度分岐環状グルカンの製造に用いる酵素は、精製酵素、粗酵素を問わず、固定化されたものでもよい。反応の形式は、バッチ式でも連続式でもよい。固定化の方法としては、担体結合法、(たとえば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)など、当業者に周知の方法が使用され得る。
【0055】
高度分岐環状グルカンの製造に使用する原料としては、α−1,4−グルコシド結合および少なくとも1個のα−1,6−グルコシド結合を有する糖類が用いられ得る。このような糖類としては、澱粉、澱粉の部分分解物、アミロペクチン、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンなどが挙げられる。
【0056】
澱粉としては、通常市販されている澱粉であればどのような澱粉でも用いられ得る。例えば、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、タピオカ澱粉などの地下澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などの地上澱粉が用いられ得る。
【0057】
澱粉の部分分解物としては、上記澱粉を酵素や酸などで部分的に加水分解したもの、澱粉の枝切り物が挙げられる。
【0058】
アミロペクチンとしては、特にアミロペクチン100%からなるワキシーコーンスターチが、製造されるグルカンの分子量分布がより均一となるため、好適に用いられ得る。例えば、重合度が約600程度以上のアミロペクチンが原料として用いられ得る。
【0059】
また、枝作り酵素を用いる場合には、α−1,4−結合のみを有するグルカンも原料として用いられ得る。α−1,4−グルコシド結合のみを有する糖類としては、アミロース、澱粉の部分分解物、澱粉枝切り物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロース、マルトオリゴ糖などが挙げられる。重合度が約400以上のアミロースが好適に用いられ得る。
【0060】
また、原料としては、上記澱粉あるいは澱粉の部分分解物などの誘導体も用いられ得る。例えば、上記澱粉のアルコール性の水酸基の少なくとも1つが、グリコシル化、ヒドロキシアルキル化、アルキル化、アセチル化、カルボキシメチル化、硫酸化、あるいはリン酸化された誘導体なども用いられ得る。さらに、これらの2種以上の混合物も原料として用いられ得る。
【0061】
高度分岐環状グルカンの製造方法における、上記原料と上記酵素とを反応させる工程は、高度分岐環状グルカンが生成するpH、温度などの反応条件であれば、いずれもが用いられ得る。上記原料の濃度(基質濃度)も、反応条件などを考慮して決定され得る。
【0062】
酵素が枝作り酵素である場合には、反応のpHは、通常約3から約11である。反応速度、効率、および酵素の安定性などの点から、好ましくは約4から約10、さらに好ましくは約7から約9である。温度は、約10℃から約110℃、反応速度、効率、および酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から約90℃である。基質濃度は、通常約0.05%から約60%程度、反応速度、効率、および基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは約0.1%から約30%程度である。使用する酵素量は、基質1gあたり、通常約50〜10,000単位である。
【0063】
酵素がD酵素である場合には、反応のpHは、通常、約3から約10、反応速度、反応効率、および酵素の安定性などの点から、好ましくは約4から約9、さらに好ましくは、約6から約8である。温度は、約10℃から約90℃、反応速度、反応効率、および酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から約60℃、さらに好ましくは、約30℃から約40℃の範囲である。耐熱性の微生物などから得られる酵素を用いる場合は、約50℃から約110℃の高温で使用し得る。原料の濃度(基質濃度)も、反応条件などを考慮して決定し得る。通常、約0.1%から約50%程度、反応速度、効率、基質溶液の取リ扱い易さなどの点から、好ましくは約0.1%から約30%、溶解度などを考慮すると、さらに好ましくは、約0.1%から約20%である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で決定され、通常は、約1時間から約48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましい。基質1gあたり、通常約500〜約100,000単位、好ましくは約700〜約25,000単位、より好ましくは約2,000〜約20,000単位である。
【0064】
酵素がCGTaseである場合、反応時のpHは、通常約4から約11である。反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約4.5から約10、さらに好ましくは約5から約8である。反応温度は、約20℃から約110℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約40℃から約90℃である。基質濃度は、通常約0.1%から約50%程度、反応速度、効率、基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは、約0.1%から約30%程度である。使用する酵素量は、基質1gあたり、通常約1から約10、000単位、好ましくは約1から約1、000単位、より好ましくは約1から約500単位である。
【0065】
上記反応で得られた種々の環状構造を有する高度分岐環状グルカンは、当業者に周知の分離方法、例えば、クロマト分離(例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、HPLC)膜分離などで分離され、溶媒(例えば、メタノール、エタノール)を用いる沈澱などの方法を、単独で、あるいは組み合わせて用いて精製され得る。
【0066】
上記の方法では、原料の澱粉からの高度分岐環状グルカンの収率は非常に高く、特に、枝作り酵素を用いた場合にはほぼ100%の収率で得られ得る。D酵素、あるいはCGTaseを用いる場合には、環状構造のみを有するグルカンも生産されるが、これらは、例えば、セファデックスを用いるゲル濾過により、容易に、目的の分岐構造を有する環状グルカンから分離され得る。また、分離された高度分岐環状グルカンは、HPLCなどのゲル濾過で分子量に応じて分離され得る。
【0067】
反応生成物の重合度は、ゲル濾過によって、重合度既知のアミロースの溶出位置から示差屈折計を用いて測定され得る。さらに、示差屈折計と低角度レーザー光散乱光度計を併用して、次の原理により重合度が決定され得る。示差屈折計の出力はグルカンの濃度に比例し、低角度レーザー光散乱計の出力はグルカンの重合度と濃度の積に比例する。従って、両検出器の出力の比を測定することにより、グルカンの重合度が決定され得る。
【0068】
高度分岐環状グルカンの重合度は容易に適宜調整され得る。例えば、得られたグルカンにエキソ型のアミラーゼ、例えばグルコアミラーゼを作用させて、外分岐構造部分の糖鎖を切断すれば、重合度がより低いグルカンが容易に得られる。
【0069】
グルカンは、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを混合して用いてもよい。
【0070】
グルカンは好ましくは、重量平均分子量が100,000〜300,000または350,000〜1,000,000であるグルカン、DE1〜1.9、5.1〜9.9のグルカン、および分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンのうちの少なくとも一種類であり、より好ましくは、分子量8,000〜800,000でかつ環状構造を有するグルカンであり、さらにより好ましくは、高度分岐環状グルカンである。好ましくは、グルカンは、デンプン分解物である。
【0071】
本発明の、加熱調理済み食品のほぐれを改良するための組成物は、上述したグルカンのみから構成されてもよいが、必要に応じて、他の成分を含んでもよい。
【0072】
本発明の組成物に含まれるグルカンの重量は、穀類加熱調理済み食品に添加するに適切であれば任意の重量であり得る。グルカンの重量は好ましくは、組成物の重量100%に対して1%〜90%であり、より好ましくは3%〜30%であり、さらに好ましくは5%〜20%である。グルカンの重量が多すぎると、穀類加熱調理済み食品に均一に混ざりにくくなる場合がある。グルカンの重量が少なすぎると、添加の効果が得られにくい場合がある。
【0073】
本発明の組成物は、必要に応じて、「調味料」を含み得る。本明細書中で「調味料」とは、食物の味を調えるために使用される材料をいう。従来公知の任意の調味料が本発明に使用可能である。具体的な調味料の例としては、グルカンを除く糖類、塩、酢、醤油、味噌、ソース、乳製品、化学調味料、野菜エキス、果物のエキス、野菜のペースト、果物のペースト、肉エキス、だし、カレー粉などが挙げられる。
【0074】
グルカンを除く糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類などの糖質が挙げられる。単糖類としては、果糖、ブドウ糖、キシロース、ソルボース、ガラクトース、異性化糖などが挙げられる。二糖類としては、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ショ糖、異性化乳糖、パラチノースなどがある。オリゴ糖類としては、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、シュクロオリゴ糖、テアンオリゴ糖、海藻オリゴ糖などが挙げられる。糖アルコール類としては、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、パラチニットなどが挙げられる。
【0075】
塩の例としては、天然塩および精製塩が挙げられる。天然塩としては、岩塩、伯方の塩、赤穂の塩などが挙げられる。
【0076】
酢の例としては、米酢、穀物酢、果実酢、醸造酢、合成酢などが挙げられる。米酢の例としては、米酢、玄米酢などが挙げられる。穀物酢の例としては、粕酢、モルト酢などが挙げられる。果実酢の例としては、リンゴ酢、ブドウ酢、パイン酢などが挙げられる。
【0077】
醤油の例としては、濃口醤油、薄口醤油、魚醤などが挙げられる。
【0078】
味噌の例としては、白味噌、赤味噌、八丁味噌などが挙げられる。
【0079】
ソースの例としては、ウスターソースなどが挙げられる。
【0080】
乳製品の例としては、脱脂粉乳、クリーム、濃縮ホエイ、バターなどが挙げられる。
【0081】
野菜エキスの例としては、タマネギエキス、ハクサイエキスなどが挙げられる。
【0082】
野菜のペーストの例としては、トマトペーストなどが挙げられる。
【0083】
果物のペーストの例としては、モモペースト、リンゴペーストなどが挙げられる。
【0084】
肉エキスの例としては、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなどが挙げられる。
【0085】
だしとしては、かつおだし、昆布だし、煮干しだしなどが挙げられる。
【0086】
カレー粉としては、一般に用いられる任意のカレー粉が用いられ得る。
【0087】
本発明の組成物は、必要に応じて「水」を含み得る。水は、軟水、中間水および硬水のいずれであってもよい。軟水とは、硬度20°以上の水をいい、中間水とは、硬度10°以上20°未満の水をいい、硬水とは、硬度10°未満の水をいう。水は、好ましくは軟水または中間水であり、より好ましくは軟水である。
【0088】
本発明の組成物は、グルカンによる効果を妨害しない限り、必要に応じて他の添加物または具材を含むことができる。他の添加物または具材としては、香料、色素、保存料、pH安定剤、アミノ酸(例えば、グルタミン酸ナトリウム)、野菜、果実、肉などが挙げられる。
【0089】
<本発明の組成物の製造>
本発明の組成物は、例えば、グルカンと、本発明の組成物に含まれる他の任意の成分とを混合することによって製造され得る。このような組成物の製造方法は当該分野で周知である。
【0090】
本発明の組成物は、当該分野で公知の方法によって、小袋に封入され、密封され、滅菌処理され得る。本発明の組成物は、例えば、すし飯のもと、チャーハンのもと、混ぜご飯のもとなどとして利用され得る。
【0091】
<穀類加熱調理済み食品のほぐれ改良方法>
本発明の方法は、穀類未調理食品を加熱調理して穀類加熱調理済み食品を得る工程、およびグルカンを、加熱調理中の該穀類食品または該加熱調理済み食品に添加して、穀類ほぐれ改良食品を得る工程を包含する。
【0092】
本明細書中では、「穀類未調理食品」とは、米、麦、そば、あわ、ひえ、とうもろこしなどの穀類を主原料とする食品であって、調理がされていないそのままの状態では食用に適さない食品をいう。
【0093】
穀類未調理食品の例としては、糖質を主成分とする食品および糖質を主成分とする部分を含む食品が挙げられる。このような食品の例としては、コメ、パン生地、うどん生地(生麺および乾麺を含む)、そうめん生地(生麺および乾麺を含む)、中華麺生地(生麺および乾麺を含む)、そば生地(生麺および乾麺を含む)、マカロニ(生の状態および乾いた状態を含む)、スパゲッティ(生麺および乾麺を含む)、未加熱のぎょうざ、未加熱のしゅうまい、未加熱のまんじゅうなどが挙げられる。穀類未調理食品は、生の状態であっても、乾燥状態であっても、冷凍された状態であってもよい。
【0094】
本明細書中では、「加熱調理する」とは、穀類未調理食品に熱を加えて、穀類未調理食品を喫食可能な状態にすることをいう。加熱調理は、対象となる穀類未調理食品に応じて当該分野で周知の方法で行われ得る。
【0095】
本明細書中で「加熱調理中」とは、穀類食品の加熱が開始された後、加熱が終了するまでの間をいう。
【0096】
本明細書中では、「穀類加熱調理済み食品」とは、加熱調理された穀類未調理食品をいう。穀類加熱調理済みの例としては、米飯、パン、うどん、素麺、中華麺、そば、マカロニ、スパゲッティ、ぎょうざ、しゅうまい、まんじゅう等が挙げられる。穀類加熱調理済み食品は好ましくは、米飯類である。「加熱調理済み」とは、調理工程のうちの加熱工程が済んでいることをいう。具体的には例えば、加熱工程の後に続けて保温工程がある場合には、加熱工程が完了した時点で本明細書中でいう加熱調理済み食品となる。
【0097】
本明細書中では、「穀類ほぐれ改良食品」とは、穀類加熱調理済み食品に、本発明で使用されるグルカンが添加された食品をいう。穀類ほぐれ改良食品は、本発明で使用されるグルカンを添加しない食品と比較してほぐれが改良された食品をいう。
【0098】
ほぐれが改良されたか否かは、例えば、本発明で使用されるグルカンを添加して得られた穀類ほぐれ改良食品の試料および無添加の試料の圧縮応力を、実施例1の試料の圧縮応力測定法に従って測定し、これらの試料の圧縮応力を比較することによって判断される。無添加の場合と比較して、添加の場合に圧縮応力が低下したならば、添加によってほぐれが改良されたといえる。
【0099】
本発明で使用されるグルカンは、直接まぶす、砂糖、食塩等の粉体に分散して噴霧する、水、だし等の液体に溶解して浸漬または噴霧するなど、当該分野で公知の任意の方法によって加熱調理中の穀類食品または穀類加熱調理済み食品に添加され得る。添加方法としては、使用するグルカンの全量を一度に食品中に投入してもよく、時間をかけて少量ずつ投入してもよい。添加の際もしくは添加の後には、必要に応じて食品の撹拌を行って、食品中の材料全体の表面に均一にグルカンを接触させるようにすることが好ましい。
【0100】
添加工程は、穀類加熱調理済み食品が付着する前に行ってもよいし、付着した後に行ってもよい。食品が付着した後に添加する場合には、グルカンを水などの溶媒に溶解して添加することが好ましい。加熱処理済み食品の表面の澱粉がβ化する前に添加工程が行われれば、加熱終了後、添加工程までの間の経過時間および添加時点での温度条件に関係なく、グルカンのほぐれ改良効果が発揮される。
【0101】
添加されるグルカンの量は代表的に、加熱調理中の穀類食品または穀類加熱調理済み食品100重量部に対して0.5〜20重量部であり、好ましくは1.0〜10重量部であり、より好ましくは、1.0重量部〜5.0重量部である。添加量が0.5重量部未満ではほぐれ改良効果が得られにくい場合があり、20重量部より多い場合は、得られる穀類ほぐれ改良食品の表面がべたつく、粉っぽくなる等の問題が生じる場合がある。
【0102】
<穀類加熱調理済み食品の保存方法>
本発明の方法によって得られた穀類ほぐれ改良食品は、本発明で使用されるグルカンを添加していない状態と比較して長期に保存することができる。この場合、「長期に」とは、グルカンの添加終了後、5分間〜5日間、10分間〜3日間、30分間〜1日間、1時間〜10時間であり得る。
【0103】
本発明によって得られる穀類ほぐれ改良食品は、長時間にわたって表面の色、光沢がよく、ほぐれがよいなど、好ましい物性を維持している。これにより、見た目にも美しく、風味にも優れ、ほぐれがよく付着しにくく、形成、計量、容器への充填等の加工適性に優れた穀類加工食品を提供することができる。
【0104】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0105】
<製造例1:高度分岐環状グルカンの調製>
Takata,H.ら,Carbohydr.Res.,295(1996)91−101に記載の方法をスケールアップして行うことによって、高度分岐環状グルカンを合成した。詳細には、まず、ワキシーコーンスターチ(平均重合度30,000以上)20kgを160リットルの5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁し、100℃の湯浴中で充分に攪拌しながら加熱することにより糊化させた。50℃程度まで放冷した後、pHが7付近であることを確認した。次いで、8,000,000単位の枝作り酵素を添加した後、50℃で18時間、保温しながら攪拌することにより、反応産物を得た。次いで、反応産物を脱イオン処理した後、噴霧乾燥機により乾燥することにより、高分枝環状グルカンの白色粉末を得た。得られた高度分岐環状グルカンの内分枝環状構造部分の重量平均分子量は50であり、分子全体としての重量平均重合度は1,800であった。
【0106】
<実施例1および比較例1〜4;すし飯の作製>
表1に示す配合のすし酢を用いてすし飯を作製した。
【0107】
【表1】
このすし飯に、実施例1として上記製造例1で製造した高度分岐環状グルカンをすし飯100重量部に対して1.0重量部添加したもの、比較例1として無添加のもの、比較例2として和光純薬工業株式会社製トウモロコシアミロース(重量平均分子量約2,800,000)をすし飯100重量部に対して1.0重量部添加したもの、比較例3として美幌農協製馬鈴薯デンプン(重量平均分子量約100,000,000)をすし飯100重量部に対して1.0重量部添加したもの、および比較例4として松谷化学工業株式会社製パインデックス#100をすし飯100重量部に対して1.0重量部添加したものを、試料として用いた。
【0108】
実施例1および比較例2〜4において、グルカンは、予めすし酢中にグルカンを溶解してグルカン含有すし酢を調製しておき、炊き上がった米飯(約80℃)にこのグルカン含有すし酢を添加することにより添加された。これらの試料作製後、20℃、湿度50%の条件下で2時間後の(i)ボール内でのしゃもじによるほぐれのよさ、(ii)すし飯の光沢および(iii)口腔内でのほぐれのよさをパネル10名を用いて官能評価した。比較例1を3点として5点満点で点数化した。5点が最もほぐれよく、光沢がよい評価、1点が最もほぐれが悪く、光沢が悪い評価とする。結果を表2に示す。表2中の点数はパネル10名の評点の平均値を表す。
【0109】
【表2】
本発明の処理を施したすし飯(実施例1)は作製後2時間後においてもボール内でのほぐれがよく、光沢がよく、口腔内でのほぐれがよかったが、比較例1、比較例2および比較例3は作製後2時間後にはボール内でほぐれにくくなり、光沢が失われ、口腔内でのほぐれが悪くなった。比較例4でのすし飯もほぐれは悪くなかったが、ほぐれを改良する効果は、比較例4よりも実施例1の方が高かった。
【0110】
上記実施例1、比較例1および比較例4の試料を作製し、各20gを高さ15mm、直径40mmの円筒状容器に充填した後、20℃、湿度50%の条件下で1〜24時間後の物性を山電株式会社製レオナーRE−33005を用いて、ほぐれのよさを評価した。評価は、直径3mmのプランジャーを用い、圧縮貫入速度10mm/sec、クリアランスを試料の厚さの70%とし、20℃での直線運動による圧縮応力を測定することによって行った。最大圧縮応力と経過時間の関係は図1に示す結果を得た。本発明の処理を施したすし飯は作製後長時間ほぐれのよさを維持したが、未処理のすし飯(比較例1)はほぐれのよさを維持できなかった。実施例1のすし飯は、比較例4のすし飯と比較してほぐれのよさが優れていた。。
【0111】
<実施例2および比較例5>
通常の方法により、米を炊飯して米飯を得た。炊飯前の米100重量部に対して3.0重量部の割合の、製造例1で調製した高度分岐環状グルカンを、5倍量の水に溶解した状態で、上記炊飯の加熱完了後の約80℃の米飯に対して加え、均一になるように混ぜた。得られた米飯を実施例2の試料とした。
【0112】
一方、上記高度分岐環状グルカンを炊飯前に米100重量部に対して3.0重量部添加した後炊飯して、米飯を得た。この米飯を比較例5の試料とした。これらの試料作製後、20℃、湿度50%の条件下で2時間後の(i)ボール内でのしゃもじによるほぐれのよさ、(ii)すし飯の光沢および(iii)口腔内でのほぐれのよさを比較した。その結果、(i)〜(iii)すべての点で比較例5よりも実施例2の方がすぐれていた。
【0113】
<実施例3ならびに比較例6および7>
通常の方法により、米を炊飯して米飯を得た。炊飯前の米100重量部に対して2重量部の割合の、製造例1で調製した高度分岐環状グルカンを、5倍量の水に溶解した状態で、上記炊飯の加熱完了後の約80℃の米飯に対して加え、均一になるように混ぜた。得られた米飯を実施例3の試料とした。
【0114】
一方、上記高度分岐環状グルカンを、炊飯後の米飯100重量部に対して2重量部になるように炊飯用の水に添加した後炊飯して、米飯を得た。この米飯を比較例6の試料とした。また、通常の方法により炊飯した米飯を比較例7の試料とした。実施例3、ならびに比較例6および7の試料を、実施例1および比較例2〜4と同様に、20℃、湿度50%の条件下で2時間後の(i)ボール内でのしゃもじによるほぐれのよさ、(ii)すし飯の光沢および(iii)口腔内でのほぐれのよさについて評価した。結果を以下の表3に示す。
【0115】
【表3】
その結果、上記高度分岐環状グルカンを炊飯前に添加したもの(比較例6)のほぐれは悪くなかったが、炊飯後に添加した(実施例3)方が効果が高かった。
【0116】
それゆえ、同量のグルカンを添加した場合、炊飯後に添加した方が炊飯前に添加した場合よりも効果が高いことがわかった。すし飯、まぜごはん、チャーハンなど炊飯後に味付工程のある食品の場合、炊飯前にグルカンを添加する工程を設けるよりも、炊飯後の味付工程とグルカン添加工程を同時に行った方が生産効率がよいので、炊飯後の添加によってより高い効果が得られることは、極めて有利である。また、麺類など、多量の湯を用いて加熱する必要がある食品の場合、加熱用の湯の中にグルカンを溶解させておくよりも、加熱完了後に添加した方がグルカンの使用量が少量で済み経済的であるので、この観点から見ても、炊飯後の添加によってより高い効果が得られることは、極めて有利である。
【0117】
<実施例4、実施例5および比較例8>
水分値13.4%のうどんの乾麺を吸水歩留300%まで茹で、流水で10℃に冷却、水切りした。出発原料としてバレイショ由来のデンプンを酵素CGTaseで処理することによって得られた、重合度6、7および8である環状グルカンの混合物をその後、水に溶解し、うどん100重量部に対して0.5〜20重量部添加したものを実施例4とした。実施例5として上記製造例1により製造した高度分岐環状グルカンを水に溶解し、うどん100重量部に対して0.5〜20重量部添加したものおよび比較例8として無添加のものを調製した。
【0118】
これらのうどんを調製後、20℃、湿度50%の条件下で2時間後の(i)ほぐれのよさ、(ii)うどんの光沢をパネル10名を用いて官能評価した。5点が最もほぐれよく、光沢がよい評価、1点が最もほぐれが悪く、光沢が悪い評価とする。結果を表4に示す。表4中の点数はパネル10名の評点の平均値を表す。
【0119】
【表4】
この結果、環状グルカンおよび高度分岐環状グルカンを添加することにより、ほぐれおよび光沢がよいうどんが得られることがわかった。一方、無添加の比較例8では、ほぐれも光沢もよくなかった。
【0120】
【発明の効果】
本発明の穀類加熱調理済み食品の物性改良方法は、グルカンの効果により、作製後長時間調理、加工直後の好ましい色、光沢、ほぐれ易さ等の物性を有する穀類加熱調理済み食品を提供することができ、色調が変化する、表面の光沢が失われる、付着性が増し結着する等の経時的な物性劣化がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によって得たすし飯、比較例のすし飯およびグルカンを添加していないすし飯について最大圧縮応力と経時時間との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 穀類加熱調理済み食品のほぐれを改良するための方法であって、該方法が、穀類未調理食品を加熱調理して穀類加熱調理済み食品を得る工程、およびグルカンを、該加熱調理済み食品に添加して、穀類ほぐれ改良食品を得る工程を包含し、
ここで、該グルカンが、高度分岐環状グルカンである、方法。 - 前記グルカンの量が、該穀類加熱調理済み食品100重量部に対して0.5〜20重量部である、請求項1に記載の方法。
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