JP3767413B2 - 車両のバンパー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両のバンパー、特に、下縁にフェンダライナやエンジンアンダカバー等の車体部品類の一端が連結され支持される車両のバンパー構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は従来のフロントバンパー(ノーマルバンパー)1を備えた乗用車の前面を示し、フロントバンパー1は合成樹脂の射出成形品で、図9および図10に示すように、下縁10の左右両側に車体のエンジンルーム前端下部に設置されたフェンダライナ6の前端やエンジンアンダカバー(以下、単にアンダカバーという)7の前端等の車体部品の一端を連結し、このフロントバンパー1により車体部品の一端を支持している。図9はフロントバンパー1の一方の端部の内面を示し、フロントバンパー1の下縁には舌片状の複数の支持片5a,5bが設けてある。支持片5aにはフェンダライナ6前縁一端およびアンダカバー7前縁一端を下方から重ね合わせて締結し、支持片5bにはフェンダライナ6の前縁他端を下方から締結している。
【0003】
近時、図7に示すように、同一車種で、ノーマルバンパー1に代えてエアロバンパー1Aを取付けることがなされている。ところが、エアロバンパー1Aを取付けた場合、エアロバンパー1Aはノーマルバンパー1に比べて上下幅が下方へ広くなっており、エアロバンパー1Aの下縁は、ノーマルバンパー1の下縁に連結するように設定されたフェンダライナ6やアンダカバー7の前端とは高さ位置が合わない。
【0004】
そこで、図11に示すように、エアロバンパー1Aには、バンパー本体10Aの下縁10にインテグラルヒンジ20を介して上下方向に回動可能に一体成形された支持片21と、バンパー本体10Aの背面からほぼ水平に突出する保持片25とからなり、保持片25で支持片21の上方への回動を所定角度に規制するようにした支持部2Bを設けて、支持片21をその先端部23がインテグラルヒンジ20より上方に位置するように引き起こし、先端部23にフェンダライナ6やアンダカバー7の前端を締結することが考えられている。図10および図11中、8はねじ部材9を締め込むグロメットである。
【0005】
尚、エアロバンパー1Aの成形時には、支持片21が2点鎖線で示すように、エアロバンパー1Aを車体に取付けた状態でバンパー本体10Aの下縁10から下方に垂れ下がる方向に延出し、支持片21の締結用穴の貫通方向が車両前後方向となるようにしている。これはエアロバンパー1Aを成形するための型の抜き方向をバンパー本体10Aの部分と支持片21の部分とで一致させ、型構造を簡単にするためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記エアロバンパー1Aでは、車両の高速走行時にフェンダライナ6およびアンダカバー7の前端の下面側が負圧となると支持片21が下方へ反転してフェンダライナ6やアンダカバー7の前端が下がったり、また、車両の冠水路の走行時に水位がフェンダライナ6やアンダカバー7の前端よりも高くなると水圧により支持片21が下方へ反転してフェンダライナ6やアンダカバー7の前端が下がる問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、バンパーにインテグラルヒンジにより上下回動可能に形成した支持片を所定の角度で確実に保持でき、支持片を介してバンパーに支持された車体部品類の下がりを防止するバンパーを提供することを課題としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両に取付けられたバンパー本体に、車両の下部に取付けられる車体部品の一端を支持する支持部を設けた合成樹脂の車両のバンパーにおいて、上記支持部は、上記バンパー本体の下端縁にインテグラルヒンジを介して上下方向に回動可能に一体に形成され、上方へ引き起こされたときに上記車体部品の一端が結合される結合部が先端に形成された支持片と、バンパー本体の裏面に突設され、引き起こされた上記支持片に先端が当接して上記支持片を所定の角度に規制する保持片と、上記保持片と上記支持片とを結合して上記支持片を上記所定の角度に保持せしめる結合手段とを備え、上記結合手段として、前部を上記保持片に重ね合せ固定する固定部とし、後部に上記支持片を挿通させる挿通穴を形成したブラケットと、上記保持片とこれに重ね合せた上記固定部とを結合する断面コ字形のクリップとを用い、上記挿通穴に上記支持片の先端側を挿通し、上記ブラケットの後部の挿通穴後縁を上記結合部の下面に当接させて上記結合部を支持せしめるとともに、重ね合された上記保持片と上記固定部とを上記クリップで挟み付け固定して上記支持片を上記所定の角度に保持せしめ、上記結合部に上記車体部品の一端をねじ締めして上記支持片に上記車体部品の一端を支持せしめる構造とする。支持片は保持片と結合手段により結合することで所定角度に保持され、下方へ反転しない。従って、支持片を介してバンパーに支持された車体部品の下がりを防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図7に示すように、エアロバンパー1Aは合成樹脂の射出成形品で、ノーマルバンパー(図8)に比べて上下幅が下方へ拡大してある。エアロバンパー(以下、単にバンパーという)1Aの下半部には車幅方向中央のグリル部11と、その左右両側にエア流入口12が形成してある。バンパー1Aの下縁10の左右両側には、図1および図2に示すように、フェンダライナ6とアンダカバー7の前端64,73を支持する支持部2が設けてある。
【0012】
図1は図7のY−Y線に沿う位置での支持部2の断面図、図2は支持部2の分解斜視図を示す。バンパー1Aのバンパー本体10Aの下縁10は後方に向かって湾曲し、下縁10には、これに沿い薄肉としたインテグラルヒンジ20を介して上下方向回動自在な支持片21が一体に成形してある。支持片21は、インテグラルヒンジ20から連なる平板状の基部22と、基部22から屈折してフェンダライナ6およびアンダカバー7の前縁一端64,73に対応する結合部23とで断面ほぼく字形をなす。支持片21は基部22側から結合部23先端末にかけて横幅を先細り状に形成してあり、結合部23には角穴24が形成してある。尚、支持片21は、従来技術の説明と同様に、図1の2点鎖線の状態でバンパー本体10Aと一体に成形される。
【0013】
バンパー本体10Aの下端の背面には、支持片21の上方位置に、図1の実線で示すように、支持片21を引き起こして、基部22を所定の角度で起立させ、結合部23をほぼ水平としたとき、支持片21の基部22に当接する保持片25が形成してある。保持片25は後方へ水平に突出する平坦な板状で、根元に向かって徐々に厚肉となるようにしてある。保持片25の横幅は根元から先端に向けて狭くなり、先端末26の横幅は支持片21を引き起こしたときに当接する基部22の横幅に合わせてある。
【0014】
支持片21と保持片25とは、支持片21を引き起こしてその基部22を保持片25の先端末26に当接せめた状態でブラケット3により結合してある。ブラケット3は金属板で、前後中間位置に段差を設けて前部31よりも後部32が高くしてある。ブラケット3は前部31が保持片25へ固定する固定部としてある。固定部31の横幅は保持片25よりも幅広で、左右の両側縁にはそれぞれ後述のクリップ4を嵌合する凹状の切欠き33が形成してある。また、固定部31の板面には左右両側に左右の切欠き33に近接して、板面を上方へ断面半円状に膨出せしめた凸部34が設けてある。
【0015】
ブラケット3の後部32は、支持片21の結合部23を挿通する角形の挿通穴35が形成してあり、挿通穴35の横幅は支持片21の基部22と結合部23間の屈折部の横幅よりも広くしてある。後部32の左右の両側縁には上方へ起立して結合部23の左右両側縁に沿うフランジ36が形成してある。
【0016】
ブラケット3はその挿通穴35を支持片21に結合部23先端側から挿通し、支持片21の結合部23と基部22間の屈折部を過ぎるまで挿通する。そして、固定部31を保持片25の上面に重ね合わせるとともに、後部32の左右側縁のフランジ36で結合部23の側縁を囲み、後部32の挿通穴35後縁を結合部23の下面に当接せしめて結合部23を下方から支えるように配す。そして、重ね合わせた保持片25および固定部31の左右両側部に両側からクリップ4を嵌合して固定部31を保持片25に固定する。
【0017】
図3に示すように、クリップ4は断面ほぼコ字形をなす金属片で、上片41および下片42をつなぐ側面部40の高さ寸法は保持片25とブラケット3の固定部31とを重ね合わせた板厚よりも若干大きくしてある。また、クリップ4の下片42は側面部40に対して鋭角に屈曲して傾斜状をなし、上片41と下片42との間隙は先端側が狭く、下片42の先端における上片41と下片42の間隙は固定部31と保持片25との重合板厚よりも狭い。クリップ4の上片41は全長が下片42よりも長く、ブラケット3の固定部31の凸部34に対応する角形の係合穴43が形成してある。クリップ4の下片42は先端の左右両側にクリップ内部へ向かって切り起こした左右一対の係止爪44が形成してあり、各係止爪44の先端は尖っている。
【0018】
図1および図2に示すように、クリップ4はその下片42の先端における上片41と下片42の間隙をブラケット3の固定部31の切欠き33に合わせして押し込み、上片41と下片42とで重ね合わせた固定部31と保持片25とを一体に上下に強く挟み付ける。クリップ4は、上片41の係合穴43と固定部31の凸部34とが係合し、下片42の係止爪44が保持片25の下面に食い込むので容易にはずれない。
【0019】
図4(図はバンパー1Aの一方の端部の内面を示す)に示すように、バンパー1Aは、バンパー本体10Aの上縁や後縁に設けた複数の取付け片5c,5d等を車体に締結して車体に取付けられる。また、車体のエンジンルームの前部下端まわりには、フェンダライナ6やアンダカバー7が取付けられている。フェンダライナ6は車体のホイールハウスの内周面に装着される合成樹脂の板体で、アーチ状のライナ本体60から前方へ張り出した前端部61を備え、ライナ本体60の両側縁に形成した複数の取付け穴62,63を介して車体のフェンダおよびエンジンルーム内面のエプロンに締結して取付けられる。アンダカバー7は、車体のラジエータ下面を覆う合成樹脂板のカバー体で、カバー本体70でラジエータ下面を覆いカバー本体70の側部後端に立設した縦壁部71を上記エプロンに、複数の取付け穴72を介して締結して取付けられる。
【0020】
そして、図1に示すように、バンパー1Aの下縁10の支持部2に、フェンダライナ6の前縁一端64およびアンダカバー7の前縁一端73とを一体に連結する。支持部2は、支持片21の結合部23がほぼ水平で、その高さ位置はノーマルバンパー1(図8)の下縁に合わせて設定されたフェンダライナ6およびアンダカバー7の前縁一端64,73に対応している。結合部23には、その角穴24に下側から角形筒状のゴム製グロメット8を圧入し、グロメット8の外周面に形成した凹溝81に角穴24の開口縁を嵌入して取付ける。グロメット8はその中心にねじ穴80を備えている。そして、結合部23に下方からフェンダライナ6およびアンダカバー7の前縁一端64,73を重ね合わせ、下方から両者64,73を貫通するねじ部材9をグロメット8のねじ穴80に締付ける。また、バンパー1Aの下縁10側端に形成した舌片状の支持片5bと、フェンダライナ6の前縁他端65とを締結する(図4)。
【0021】
車両の高速走行時、フェンダライナ6およびアンダカバー7の前端には、これらの下面側が負圧となって、フェンダライナ6およびアンダカバー7の前端を引き下げようとする力が作用する。また、冠水路の走行時にも、水位がフェンダライナ6およびアンダカバー7の前端よりも高くなると、これらに水圧がかかって、フェンダライナ6およびアンダカバー7の前端を引き下げようとする力が作用する。本実施形態によれば、保持片25の上面に固定したブラケット3の後部32により、その挿通穴35を通した支持片21の結合部23が下から支えられるので、支持片21を引き起こし状態で確実に保持することができる。従って、支持片21に連結したフェンダライナ6およびアンダカバー7の前端は、これらに上記引き下げようとする力が作用しても下がらない。
【0022】
次に、図5および図6に基づいて本発明の他の実施形態を説明する。本実施形態の基本構造は上述の実施形態のそれとほぼ同様で、相違点を中心に説明する。図5および図6に示すように、支持部2Aは、バンパー1Aのバンパー本体10Aの下縁10にインテグラルヒンジ20を介して上下方向回動自在に一体成形した支持片21aと、これに対向して、バンパー本体10Aの背面からほぼ水平に突出する保持片25aとで構成してある。
【0023】
支持片21aには、これを引き起こしたときに保持片25aの先端末26が当接する基部22の中間位置に、角形の貫通穴27が形成してある。一方、保持片25aの先端末26には幅方向中間に、後方へ突出して上記貫通穴27を貫通可能な突起部28が突設してある。
【0024】
支持片21aと保持片25aとは、支持片21aを引き起こして、支持片21aの貫通穴27に保持片25aの突起部28を挿通せしめるとともに、保持片25aの先端末26と支持片21aの基部22とを当接せしめる。そして、支持片21aを貫通した保持片25aの突起部28を超音波溶着により潰しつつ支持片21aの貫通穴27まわりに溶着してある。支持片21aの結合部23には、角穴24にグロメット8を嵌入し、下方からフェンダライナ6およびアンダカバー7の前縁一端64,73を重ね合わせてねじ部材9で締結してある。
【0025】
本実施形態によれば、支持部2Aの支持片21aと保持片25aとを溶着により結合したので、フェンダライナ6およびアンダカバー7の前端に上記引き下げようとする力が作用しても、支持片21aが下方へ反転せず、フェンダライナ6およびアンダカバー7の前端が下がらない。支持片21aと保持片25aとの結合には、ブラケット等の別部材がいらず構造の簡素化がはかれる。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、バンパー本体にインテグラルヒンジを介して上下回動可能に一体成形した支持片と、バンパー本体の背面に突設した保持片とを結合したので、支持片を所定の角度で確実に保持でき、支持片を介してバンパーに支持された車体部品類の下がりを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す図7のY−Y線に沿う断面図である。
【図2】上記実施形態の分解斜視図である。
【図3】上記実施形態に用いるクリップの斜視図である。
【図4】上記実施形態のバンパーの一端部の内面とその下縁に連結する車体部品を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す図7のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】上記実施形態の分解斜視図である。
【図7】本発明を適用するエアロバンパーを取付けた車両の前面斜視図である。
【図8】従来のノーマルバンパーを取付けた車両の前面斜視図である。
【図9】従来のノーマルバンパーの一端部の内面とその下縁に連結する車体部品を示す分解斜視図である。
【図10】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図11】従来のエアロバンパーの図7のY−Y線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 ノーマルバンパー
1A エアロバンパー
10A バンパー本体
10 下端縁
2,2A 支持部
20 インテグラルヒンジ
21,21a 支持片
23 結合部
25,25a 保持片
27 貫通穴(結合手段)
28 突起(結合手段)
3 ブラケット(結合手段)
31 固定部
35 挿通穴
4 クリップ(結合手段)
6 車体部品(フェンダライナ)
64 一端(前縁一端)
7 車体部品(エンジンアンダカバー)
73 一端(前縁一端)
Claims (1)
- 車両に取付けられたバンパー本体に、車両の下部に取付けられる車体部品の一端を支持する支持部を設けた合成樹脂の車両のバンパーにおいて、
上記支持部は、上記バンパー本体の下端縁にインテグラルヒンジを介して上下方向に回動可能に一体に形成され、上方へ引き起こされたときに上記車体部品の一端が結合される結合部が先端に形成された支持片と、
バンパー本体の裏面に突設され、引き起こされた上記支持片に先端が当接して上記支持片を所定の角度に規制する保持片と、
上記保持片と上記支持片とを結合して上記支持片を上記所定の角度に保持せしめる結合手段とを備え、
上記結合手段として、前部を上記保持片に重ね合せ固定する固定部とし、後部に上記支持片を挿通させる挿通穴を形成したブラケットと、上記保持片とこれに重ね合せた上記固定部とを結合する断面コ字形のクリップとを用い、
上記挿通穴に上記支持片の先端側を挿通し、
上記ブラケットの後部の挿通穴後縁を上記結合部の下面に当接させて上記結合部を支持せしめるとともに、重ね合された上記保持片と上記固定部とを上記クリップで挟み付け固定して上記支持片を上記所定の角度に保持せしめ、
上記結合部に上記車体部品の一端をねじ締めして上記支持片に上記車体部品の一端を支持せしめることを特徴とする車両用バンパー。
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