JP3762071B2 - 印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機(電子印刷機等)におけるウェブ送り出しの走行制御を行なう方法及び装置に関する。
【0002】
【従来技術】
図6は従来の片面・両面兼用電子印刷機の全体概略図を示している。この電子印刷機の場合には、図6に示すように、給紙装置1にかけられた巻取紙20より供給されるウェブ14が給紙ドラグローラ7により引き出されて印刷装置2に供給される。その後に、ウェブ14は印刷装置2にて印刷(トナーを付着)され、第1定着ローラ3,第2定着ローラ4にてウェブ14にトナーが定着される。かくして、ウェブ14が第2定着ローラ4を通過した後に、排紙ドラグローラ13により排紙されると共に断裁装置6によって断裁されて揃えられ、印刷物ができあがるように構成されている。なお、図6において、9a,9b,9cは紙押えローラ、10a,10b,10cはサーボモータ、11は給紙ブレーキである。
【0003】
上述の電子印刷機にてウェブ14の片面のみ印刷する場合(片面印刷の場合)には、ウェブ14が給紙ドラグローラ7を通った後に、印刷装置2a,2bによりウェブ14の片面に印刷されて第1定着ローラ3でトナーの定着が行なわれ、次いで中間ドラグローラ8に導入される。さらに、印刷装置2c,2dによりウェブ14の片面に印刷され、第2定着ローラ4で定着された後に、排紙ドラグローラ13によって断裁装置6へ送られたウェブ14が断裁されて揃えられ、印刷物ができあがる。
【0004】
また、上述の電子印刷機にてウェブ14の両面を印刷する場合(両面印刷の場合)には、ウェブ14は印刷装置2a,2bにて表面(片面)に印刷され、第1定着ローラ3で定着された後、反転ターンバー5によって表裏を反転され中間ドラグローラ8により印刷装置2c,2dへ送り込まれ裏面の印刷が行われる。次いで、第2定着ローラ4によって定着された後、片面印刷の場合と同様に断裁装置6にて裁断されて揃えられ、両面印刷物ができあがる。
【0005】
ところで、従来の電子印刷機においては、ウェブ14は第1定着ローラ3を通過する際に加熱されて紙の長さが変化するため、引き続き印刷装置2c,2dにより重ね刷りを行わなければならないプロセス・カラーによる多色刷りにおいては、印刷見当が狂ってしまい精度の良い多色刷りが行なえないという大きな問題があった。そのため、従来では、給紙ドラグローラ7と排紙ドラグローラ13との間に中間ドラグローラ8を配設し、給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8間、及び、中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ13間の張力をそれぞれ制御して印刷装置2a,2bを通過するウェブ14の伸びと印刷装置2c,2dを通過するウェブ14の伸びとを互いに同じくするような構成を採用し、これにより印刷見当精度の向上を図っているのが実状である。
【0006】
次に、ドラグローラ間での張力発生の機構を図を用いて説明すると、以下の通りである。一般に、印刷部の入口張力、すなわち給紙装置1から給紙ドラグローラ7に至る間の領域での張力は、日本印刷新聞社出版の“オフセット印刷機”によると、前記給紙ドラグローラ7より下流の印刷機全紙経路における紙張力のベース張力となるもので、印刷精度等の安定に支配的な要因であると記載されている。また、上述の書籍中に、インフィード張力の式が与えられており、この式におけるメータリングローラを給紙ドラグローラに、そして印刷ユニット周速を中間ドラグローラ周速と見なして置き換えを行うと次式が得られる。
【0007】
【数1】
ここで、
F2 :インフィード張力、F1 :給紙ドラグローラ入口張力、V0 :中間ドラグローラ周速、V1 :給紙ドラグローラ周速、E:紙のヤング率、η:紙の粘性係数、a:紙厚、l:紙幅、T2 :時定数(紙が給紙ドラグローラより中間ドラグローラまでのスパンを通り抜ける時間)、
である。
【0008】
中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ13との間の張力も、上記(1)式中の中間ドラグローラ周速を排紙ドラグローラ周速に、給紙ドラグローラ周速を中間ドラグローラ周速に、そして給紙ドラグローラ入口張力F1 を上記(1)式で求まるインフィード張力F2 で置き換えてやれば、張力F2 として求められる。
【0009】
これ故、例えば給紙装置1の張力F1 を一定に保ったとしても、給紙ドラグローラ7の周速V1 もしくは中間ドラグローラ8の周速V0 を変化させるとインフィード張力F2 、すなわち給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間の紙張力は変化することとなる。また、中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ13との間の紙張力についても同様であり、かかる張力制御においては、各ドラグローラを駆動するモータのトルクを一定に保つためのトルク制御を行なうことはドラグローラ周速の変動を引き起すため、望ましいものではない。このため、従来では、ドラグローラの駆動には速度制御が用いられてきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような速度制御を用いた場合には、次の如き問題点がある。すなわち、従来の速度制御では、ウェブ14がドラグローラ7,8又は13を通過した後にウェブ14にたるみが生じた時に、各ドラグローラ間の周速差が小さい場合、たるみがとれて張力が安定するまでに可成りの時間を要し、ウェブ14の走行方向における印刷見当精度の高い印刷物を得るまでに多くの損紙を生じるという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウェブ(紙)のたるみを短時間で除去することができると共に、印刷開始後(運転開始後)に張力が安定するまでの時間を大幅に短縮でき、ウェブ走行方向の見当ずれによる紙損の発生を著しく低減することができるような印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法及び装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法では、印刷機の給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラの間のたるみを除去する印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法において、
前記各ドラグローラをウェブ送り出し走行経路の上流側から逐次にトルク制御による駆動を行い、前記ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみをなくし、
前記ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみが除去される毎に、前記各ドラグローラのトルク制御を速度制御に順次に切り換えるようにしている。
【0013】
また、本発明に係る印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法では、前記給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラ間のウェブの張力を張力センサにて検出し、前記張力センサにて検出された張力検出値に基づいて前記ウェブの張力制御を行なうようにしている。
【0014】
また、本発明に係る印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法では、印刷機の給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラにより、ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみをなくす印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法において、
(a) 前記各ドラグローラをトルク制御により駆動させ、前記給紙側から逐次に前記ウェブのたるみを除去する工程と、
(b) 前記たるみ除去工程により上流側のウェブのたるみがなくなった時点で当該上流側のドラグローラの駆動を停止する工程と、
(c) 前記ドラグローラ停止工程において駆動を停止された前記ドラグローラを速度制御駆動に切り換える工程と、
を有し、
前記各工程をウェブ送り出し走行経路の上流側から順次に施行するようにしている。
【0015】
また、本発明に係る印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法では、前記ウェブのたるみが除去される毎に、前記各ドラグローラのトルク制御を速度設定をゼロとする速度制御に順次に切り換わるようにしている。
【0016】
また、本発明に係る印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御装置では、印刷機の給紙装置から排紙装置までの領域内に配設された複数の給紙ドラグローラ、中間ドラグローラ、及び排紙ドラグローラと、当該各ドラグローラ間のウェブの張力をそれぞれ検出する複数の張力センサと、当該張力センサからの制御信号が入力される制御装置とを設けたウェブ送り出し走行制御装置において、
前記印刷機の印刷開始時には、
前記制御装置が、張力センサからの制御信号に基づいて、前記各ドラグローラをトルク制御駆動させて前記ウェブの走行経路の上流側から逐次にウェブのたるみを除去して所定の予備張力を付与せしめた後に、ウェブのたるみが除去された箇所のドラグローラを停止させると共にトルク制御駆動から速度制御駆動に順次に切り換えるように構成している。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。なお、図1及び図2において、図6と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るウェブ送り出し走行制御装置を備えた電子印刷機の構成を示すものである。この電子印刷機の全体構成は、図1に示すように、従来のものと同じであるが、本実施形態においては、各ドラグローラ7,8,13にそれぞれ取付けられるローラ駆動用のサーボモータ10a,10b,10cは速度制御及びトルク制御の何れも可能な構成のものが用いられており、制御装置12は速度制御及びトルク制御の切り換え及び制御を行なう機能を備えるように構成されている。さらに、図1に示すように、給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間、給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間、及び中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ13との間にウェブ14の張力を検出するための張力センサ15a,15b,15cがそれぞれ設置されており、これらの張力センサ15a,15b,15cの出力が制御装置12に制御信号として入力されるように構成されている。
【0019】
次に、本例の電子印刷機におけるウェブ14のたるみ除去作用について述べると、以下の通りである。まず、図2(A)において矢印で示すように、給紙ドラグローラ7のみをトルク制御で駆動し、給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間のウェブ14のたるみを除去する。この除去されたウェブ14のたるみは給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間に蓄えられることとなる。そして、給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間のウェブ14のたるみが除去されると、給紙ドラグローラ7はトルク制御設定値を超える張力を受け、このドラグローラ7の周速はゼロとなる。この時点で、給紙ドラグローラ7の駆動を速度設定値ゼロで速度制御に切り換えられる。
【0020】
次いで、給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間に蓄えられたウェブ14のたるみ(図2(A)参照)を除去するために、図2(B)において矢印で示すように中間ドラグローラ8のみをトルク制御で駆動し、給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間に蓄えられたウェブ14のたるみを除去する。これにより給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間のウェブ14のたるみが除去されると、中間ドラグローラ8はトルク制御設定値を超える張力を受け、このドラグローラ8の周速はゼロとなる。この時点で、中間ドラグローラ8の駆動を速度設定値ゼロで速度制御に切り換えられる。
【0021】
しかる後に、前述と同様の手順により、排紙ドラグローラ13のみトルク制御で駆動し、中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ14との間のウェブ14のたるみを除去した時点で(図2(C)参照)、全てのドラグローラ7,8,13の駆動用サーボモータ10a,10b,10cは速度設定値をゼロとする速度制御に切り換えられる。
【0022】
そして、全てのドラグローラ7,8,13が速度制御に切り換った時点で、各ドラグローラ間に必要とされる張力を得るための各ドラグローラ周速が従来技術の説明で述べた上記(1)式により求められ、その求められた値が各ドラグローラの周速の速度設定値として設定され、全ドラグローラ7,8,13が前記速度設定値に基づく速度制御にて駆動される。
【0023】
なお、上述の制御の具体的なフローチャートは、図3に示す通りである。すなわち、この場合は、先ず始めに給紙ドラグローラ7のみをトルク制御で駆動する。そして、給紙ドラグローラ7の周速がゼロになった時点でその駆動を停止し、速度設定値がゼロの状態で速度制御に切り換える。次いで、中間ドラグローラ8のみをトルク制御で駆動して中間ドラグローラ8の周速がゼロになった時点でその駆動を停止し、速度設定値がゼロの速度制御に切り換える。しかる後に、全てのドラグローラ7,8,13について、必要な張力により定まる速度設定値をセット(設定)し、全てのドラグローラ7,8,13を当該速度設定値に基づいた速度制御に切り換えて駆動する。
【0024】
また、トルク設定手段を用いることができない場合においてもウェブ(紙)のたるみ量の最大値をドラグローラ周速で除した値より大きい値をタイマ値とし、前述のように給紙ドラグローラ7より逐次に各ドラグローラ7,8,13をタイマ値で定められる一定時間駆動してたるみを取ることも可能である。この場合、前述したトルク制御による方法に比べてやや予備張力の設定精度は低くなるが、ウェブに予備張力が与えられていることにより、速度制御にて全てのドラグローラを駆動し始めてから安定した張力を得られるまでの時間を短縮することができる。
【0025】
なお、タイマを用いる場合の具体的な制御のフローチャートは図4に示す通りである。すなわち、この場合は、ウェブ14のたるみを除去するのに必要な時間を各ドラグローラ7,8,13用のタイマにそれぞれ設定しておく。そして、先ず始めに給紙ドラグローラ7のみを駆動し、給紙ドラグローラ7用のタイマを作動開始する。これに伴い給紙ドラグローラ7用のタイマがカウントアップされた時点で、給紙ドラグローラ7の駆動を停止し、速度設定値=0の条件の下に速度制御に切り換える。次いで、中間ドラグローラ8のみを駆動し、中間ドラグローラ8用のタイマを作動開始する。これに伴い中間ドラグローラ8用のタイマがカウントアップされた時点で、中間ドラグローラ8の駆動を停止し、速度設定値=0の条件の下に速度制御に切り換える。次いで、排紙ドラグローラ13のみを駆動し、排紙ドラグローラ13用のタイマを作動開始する。これに伴い排紙ドラグローラ13用のタイマがカウントアップされた時点で、排紙ドラグローラ13の駆動を停止し、速度設定値=0の条件の下に速度制御に切り換える。しかる後に、各ドラグローラ7,8,13について、必要な張力により定まる速度設定値をセット(設定)し、全てのドラグローラ7,8,13を当該速度設定値に基づいた速度制御に切り換えて駆動する。
【0026】
上述のように印刷機の給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラ7,8,13を給紙側から逐次にトルク制御による駆動を行ない、ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブ14のたるみをなくすようにしてやることにより、僅かなドラグローラ周速差によってウェブのたるみを除去するようにしてした従来のたるみ除去方法に比べ、より短い時間でウェブ14のたるみを除去することが可能となる。また、ウェブ14に予備張力を与えることにより、所定の設定速度で全ドラグローラ7,8,13を速度制御して駆動開始してから張力が安定するまでの時間も大幅に短縮することができる。また、静的な状態で予備張力をかけることにより、各ドラグローラ間の予備張力を精度良くかけることができるので、速度制御に切り換えた後に、必要とする各ドラグローラ間の張力が安定するまでの時間を短縮することができる。
【0027】
次に、本例の電子印刷機における張力センサ15a,15b,15cの役割について説明すると、以下の通りである。まず、給紙ドラグローラ7のみの駆動が行われ、これにより給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間のウェブ14のたるみが除去される。そして、ウェブ14のたるみが除去されるのに伴ってウェブ14に張力が与えられ、この際に張力センサ15aにて検出された張力検出値が制御装置12に供給される。かくして、張力センサ15aから制御装置12に供給される張力検出値が運転時に必要な張力に達した時点で、制御装置12から出力される制御信号に基づいて給紙ドラグローラ7の駆動が停止され、速度設定値がゼロに設定されると共に速度制御に切り換えられる。なお、給紙ドラグローラ7と中間ドラグローラ8との間及び中間ドラグローラ8と排紙ドラグローラ13との間のウェブ14のたるみ除去及び張力制御は、前述した給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間のウェブ14のたるみ除去及び張力制御の場合と同様に逐次に行なわれる。
【0028】
そして、ウェブ送り出し走行経路の全ての箇所におけるウェブ14のたるみが除去されてウェブ14に予備張力が与えられた時点で、全てのドラグローラ7,8,13は速度設定値がゼロで速度制御される。しかる後に、従来の方法で述べた上記(1)式を用いて定まる速度設定値が各ドラグローラに設定される。設定完了後、全てのドラグローラ7,8,13が同時に速度制御で始動されて印刷運転が開始される。
【0029】
なお、この場合の具体的な制御のフローチャートは図5に示す通りである。すなわち、この場合には、ウェブ14に付与すべき予備張力を予め設定しておく。そして、先ず始めに給紙ドラグローラ7のみを駆動し、張力センサ15aにて検出される張力値がゼロでなくなった時点(張力を生じた時点)から給紙ドラグローラ7を張力制御の下で駆動させ、給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間のウェブ14の予備張力が予め設定された所定の予備張力値となった時点で給紙ドラグローラ7の駆動を停止し、速度設定値がゼロの速度制御に切り換える。次いで、中間ドラグローラ8のみを駆動し、張力センサ15bにて検出される張力値がゼロでなくなった時点から中間ドラグローラ8を張力制御の下で駆動させ、第1定着ローラ3の上流側におけるウェブ14の予備張力が予め設定された所定の予備張力値となった時点で中間ドラグローラ8の駆動を停止し、速度設定値がゼロの速度制御に切り換える。次いで、排紙ドラグローラ13のみを駆動し、張力センサ15cにて検出される張力値がゼロでなくなった時点から排紙ドラグローラ13を張力制御の下で駆動させ、第2定着ローラ4の上流側におけるウェブ14の予備張力が予め設定された所定の予備張力値となった時点で排紙ドラグローラ13の駆動を停止し、速度設定値がゼロの速度制御に切り換える。しかる後に、各ドラグローラ7,8,13について、必要な張力により定まる速度設定値をセット(設定)し、全てのドラグローラ7,8,13を当該速度設定値に基づいた速度制御に切り換えて駆動する。
【0030】
このような構成によれば、張力センサ15a,15b,15cを給紙装置1と給紙ドラグローラ7との間及び各ドラグローラ7,8,13間にそれぞれ設置し、該検出値により張力制御を行うようにしているので、印刷開始時(運転開始時)における予備張力の精度が向上し、速度制御に切り換えて運転を開始した後の張力が安定するまでの時間を大幅に短くすることが可能になる。
【0031】
本発明の実施形態につき述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では3つのドラグローラ7,8,13を駆動制御する場合について述べたが、4つ以上のドラグローラを備える印刷機の場合にも本発明を適用可能である。
【0032】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明は、各ドラグローラをウェブ送り出し走行経路の上流側から逐次にトルク制御による駆動を行い、ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみをなくし、ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみが除去される毎に、各ドラグローラのトルク制御を速度制御に順次に切り換えるようにしたものであるから、僅かなドラグローラ周速差によってウェブ(紙)のたるみを除去するようにした従来の方法に比べ、より短い時間でウェブのたるみを除去することが可能となる。そのため、ウェブの走行方向における印刷見当精度の高い印刷物を得るまでに多くの損紙を生じるような不具合を回避することができる。
【0033】
また、請求項2に記載の本発明は、給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラ間のウェブの張力を張力センサにて検出し、張力センサにて検出された張力検出値に基づいてウェブの張力制御を行なうようにしたものであるから、印刷開始時(印刷機の運転開始時)における予備張力の設定精度を向上させることができ、速度制御に切り換えて印刷を開始した後に張力が安定するまでの時間を大幅に短くすることができる。これにより、張力が安定するまで生じるウェブ走行方向の見当ずれによる紙損を著しく低減することができる。
また、各ドラグローラ間に予備張力を与えることにより、ドラグロールをトルク制御により駆動するトルク制御状態から、ドラグロールを速度制御により駆動する速度制御状態に切り換えた後に各ドラグローラ間におけるウェブの張力が安定するまでの時間を短縮することにより、ウェブの張力が安定するまでに生じるウェブ走行方向の見当ずれによる損紙の発生量を低減することができる。また、静的な状態で各ドラグローラ間に予備張力をかけることで、この予備張力を精度良くかけることができ、速度制御に切り換えた後に必要とする各ドラグローラ間の張力が安定するまでの時間を短縮するのに効果がある。
【0034】
また、請求項3に記載の本発明は、各ドラグローラをトルク制御により駆動させ、給紙側から逐次にウェブのたるみを除去する工程と、たるみ除去工程により上流側のウェブのたるみがなくなった時点で当該上流側のドラグローラの駆動を停止する工程と、ドラグローラ停止工程において駆動を停止されたドラグローラを速度制御駆動に切り換える工程とを有し、各工程をウェブ送り出し走行経路の上流側から順次に施行するようにしたものであるから、ウェブのたるみ除去を円滑にしかも迅速に行なうことができて紙損を大幅に低減でき、ウェブの予備張力を精度良くかけることができて各ドラグローラ間の張力が安定するまでの時間を短縮することができる。
【0035】
また、請求項4に記載の本発明は、ウェブのたるみが除去される毎に、各ドラグローラのトルク制御を速度設定をゼロとする速度制御に順次に切り換わるようにしたものであるから、速度設定値がゼロの状態で速度制御に切り換えることができる。
【0036】
また、請求項5に記載の本発明は、印刷機の印刷開始時には、制御装置が、張力センサからの制御信号に基づいて、各ドラグローラをトルク制御駆動させてウェブの走行経路の上流側から逐次にウェブのたるみを除去して所定の予備張力を付与せしめた後に、ウェブのたるみが除去された箇所のドラグローラを停止させると共にトルク制御駆動から速度制御駆動に順次に切り換えるように構成したものであるから、給紙装置,給紙ドラグローラ,中間ドラグローラ,及び排紙ドラグローラ間のたるみを周速差ではなく、速度差にて除去できるため、ウェブ(紙)のたるみを短時間で除去することができると共に、印刷開始後(運転開始後)に張力が安定するまでの時間を大幅に短縮でき、ウェブ走行方向の見当ずれによる紙損の発生を著しく低減することができるような印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェブ送り出し走行制御装置を備えた電子印刷機のシステム構成図である。
【図2】本発明のウェブ送り出し走行制御方法を説明するための概念図であって、図2(A)は給紙ドラグローラと中間ドラグローラとの間及び中間ドラグローラと排紙ドラグローラとの間にそれぞれ紙(ウェブ)のたるみがある状態を示す概念図、図2(B)は給紙ドラグローラと中間ドラグローラとの間の紙のたるみが除去されかつ中間ドラグローラと排紙ドラグローラとの間に紙のたるみがある状態を示す概念図、図2(C)は給紙ドラグローラと中間ドラグローラとの間及び中間ドラグローラと排紙ドラグローラとの間の紙のたるみが共に除去された状態を示す概念図である。
【図3】全てのドラグローラを速度制御で駆動する際のウェブ送り出し走行制御のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【図4】トルク設定手段に代えてタイマを用いる場合のウェブ送り出し走行制御のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【図5】全てのドラグローラを同時に速度制御で始動して運転を開始する際のウェブ送り出し走行制御のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【図6】従来の片面・両面兼用電子印刷機の全体構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 給紙装置
2 印刷装置
2a,2b,2c,2d 印刷装置
3 第1定着ローラ
4 第2定着ローラ
7 給紙ドラグローラ
8 中間ドラグローラ
12 制御装置
13 排紙ドラグローラ
14 ウェブ
15a,15b,15c 張力センサ
Claims (5)
- 印刷機の給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラの間のたるみを除去する印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法において、
前記各ドラグローラをウェブ送り出し走行経路の上流側から逐次にトルク制御による駆動を行い、前記ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみをなくし、
前記ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみが除去される毎に、前記各ドラグローラのトルク制御を速度制御に順次に切り換えるようにしたことを特徴とする印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法。 - 前記給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラ間のウェブの張力を張力センサにて検出し、前記張力センサにて検出された張力検出値に基づいて前記ウェブの張力制御を行なうようにしたことを特徴とする請求項1に記載の印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法。
- 印刷機の給紙側から排紙側までの領域内に配設された各ドラグローラにより、ウェブ送り出し走行経路の上流側から順次にウェブのたるみをなくす印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法において、
(a) 前記各ドラグローラをトルク制御により駆動させ、前記給紙側から逐次に前記ウェブのたるみを除去する工程と、
(b) 前記たるみ除去工程により上流側のウェブのたるみがなくなった時点で当該上流側のドラグローラの駆動を停止する工程と、
(c) 前記ドラグローラ停止工程において駆動を停止された前記ドラグローラを速度制御駆動に切り換える工程と、
を有し、
前記各工程をウェブ送り出し走行経路の上流側から順次に施行するようにしたこと、
を特徴とする印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法。 - 前記ウェブのたるみが除去される毎に、前記各ドラグローラのトルク制御を速度設定をゼロとする速度制御に順次に切り換わるようにしたことを特徴とする請求項1及至3のいずれか1項に記載の印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御方法。
- 印刷機の給紙装置から排紙装置までの領域内に配設された複数の給紙ドラグローラ、中間ドラグローラ、及び排紙ドラグローラと、当該各ドラグローラ間のウェブの張力をそれぞれ検出する複数の張力センサと、当該張力センサからの制御信号が入力される制御装置とを設けたウェブ送り出し走行制御装置において、
前記印刷機の印刷開始時には、
前記制御装置が、張力センサからの制御信号に基づいて、前記各ドラグローラをトルク制御駆動させて前記ウェブの走行経路の上流側から逐次にウェブのたるみを除去して所定の予備張力を付与せしめた後に、ウェブのたるみが除去された箇所のドラグローラを停止させると共にトルク制御駆動から速度制御駆動に順次に切り換えるように構成したことを特徴とする印刷開始時におけるウェブ送り出し走行制御装置。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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