JP3759396B2 - ハブハイクラッチ及びそのハブハイクラッチの製造方法並びにハブハイクラッチの製造用冷間鍛造装置 - Google Patents

ハブハイクラッチ及びそのハブハイクラッチの製造方法並びにハブハイクラッチの製造用冷間鍛造装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒軸の基端にフランジとそのフランジの外周に外歯を有したリムが連続形成され、円筒軸の先絞り部外周にセレーションが形成されたハブアッセンブリ・ハイクラッチとして使用される歯車(本発明ではハブハイクラッチと称する)の製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハブハイクラッチは、底の中央に透孔を有するカップ状の歯車部に、その歯車部とは別体に形成された円筒軸を溶接して一体化したものが主流であったが、鍛造技術の発達により、例えば特開平10−99937号に記載のように、熱間鍛造によって外歯を有する歯車部と、製品形状より短い円筒軸部とが一体になった予備成型品を、先ず冷間絞り工程で円筒軸部を伸長せしめることにより先絞り部を形成し、次に冷間サイジング工程で歯車部に形成されている外歯の仕上げと先絞り部部及びセレーションの形成を行う方法や、特開平10−34250号公報に記載のように、熱間鍛造によって外歯及びセレーションが未形成の予備成型品に、段付きマンドレルを備えたパンチによって、円筒軸部を伸長せしめると共に、外歯とセレーションとを一気に形成する方法が生み出された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の鍛造方法では、円筒軸部を伸長せしめる際、製品形状における先絞り部(セレーション部分を含む)の円筒軸に対する断面減少率が30%以上になると、肉の押し出しが緩慢となり、円筒軸部が座屈を起こしてしまうことが判明している。
そのためセレーションを形成する先絞り部の断面減少率が30%を越える形状の製品には適用できなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先絞り部の断面減少率が30%以上である形状の製品に適用可能な技術であって、その構成を以下に示す。
【0005】
本発明は、製品形状より短い円筒軸の基端に厚肉のフランジを備えた予備成型品を、円筒軸の基端にフランジとそのフランジの外周に外歯を有したリムが連続形成され、円筒軸の先絞り部外周にセレーションを有した製品形状の外周面に対応すべく、リム形成部と円筒軸形成部及びセレーション形成部とから成るキャビティを有する下型と、製品形状におけるリムの内周面に対応したパンチと、そのパンチの中心に、製品形状における円筒軸の内周面に対応した径で先端に小径部を有し、パンチとは別に昇降動作可能に設けられた段付きマンドレルとから成る上型とを駆使し、円筒軸部先端がセレーション形成部の直前に達するようにセットされた予備成型品に対し、マンドレルとパンチとを同時に下降動作させることによって、円筒軸部先端をセレーション形成部内に入れ込む第1段階と、マンドレルとパンチとの下降動作を続行し、マンドレルを、その小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置するまで下降させることで後方押し出しによりリムを形成すると共に、前方押し出しにより円筒軸部の先端をセレーション形成部内へ更に入れ込む第2段階と、マンドレルのみを下降させ、前記セレーション形成部内に入れ込んだ肉を押し広げ、セレーション付きの先絞り部を形成する第3段階とを連続して一気に実行し、その後第4段階で脱型することを特徴とするハブハイクラッチの製造方法にある。
【0006】
又、本発明は、円筒軸の基端にフランジとそのフランジの外周に外歯を有したリムが連続形成され、円筒軸の先絞り部外周にセレーションを有した製品形状の外周面に対応すべく、リム形成部と円筒軸形成部及びセレーション形成部とから成るキャビティを有する下型と、製品形状におけるリムの内周面に対応したパンチと、そのパンチの中心に、製品形状における円筒軸の内周面に対応した径で先端に小径部を有し、パンチとは別に昇降動作可能に設けられた段付きマンドレルとから成る上型とを有し、前記マンドレルとパンチとは、パンチが下死点に位置した状態で、マンドレルにおける小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置する関係を保つよう制御可能としたハブハイクラッチ製造装置とにある。そして前記ハブハイクラッチ製造装置にあっては、キャビティにおけるセレーション形成部の円筒軸形成部際に突部を周設することが望ましい。尚、本発明において、マンドレルの小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置する、との表現は、セレーション形成部にマンドレルの小径部が挿入された状態のことであり、その状態で、キャビティの内周面とマンドレルの外周面との間に形成される空間の断面積が、円筒軸形成部からセレーション形成部にかけてほぼ均一となることを意味する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係るハブハイクラッチ及びそのハブハイクラッチの製造方法並びにハイハブクラッチ製造装置を図面に基づいて説明する。
図1は、ハブハイクラッチ製造装置としての冷間鍛造装置であり、1は下型、2は上型である。
下型1は、製品形状の外周面に対応したキャビティ3を有するダイ4と、そのダイ4の外周に配置される締付用のダイケース5と、それらダイ4とダイケース5とを支持するダイプレート6とを備えている。
前記キャビティ3は、上から順に、内周面に外歯形成用歯形7を有したリム形成部3aと、そのリム形成部3aと同軸状に形成された円筒軸形成部3bと、その円筒軸形成部3bに連続し、内周面にセレーション形成用歯形8を有した小径のセレーション形成部3cとにより構成されており、その更に下方には、マンドレル嵌入用の貫通孔9が設けられ、その貫通孔9の周囲には、ノックアウトピース10によってリム形成部3a内に出没動作する複数のエジェクタピン11,11・・が同心円上に配置されている。
尚、セレーション形成部3cの内面における円筒軸形成部3b際には突部12(図3参照)が周設されている。
【0008】
一方上型2は、製品形状のリム内周面に対応したパンチ13と、そのパンチ13の中心に同軸配置され、製品形状の円筒軸内周面に対応し、先端に小径部を有した段付き形状のマンドレル14と、前記パンチ13を支持するパンチケース15とを備えていて、パンチ13と、マンドレル14における小径部14aを除いた部分との組み合わせによって製品形状の内周面に対応した形状が構成される。そして前記パンチ13とマンドレル14とは、それぞれ独立して昇降動作されるようになっている。
【0009】
このように形成された冷間鍛造装置により、予め熱間鍛造にて成型された予備成型品16を下型1のキャビティ3内にセットし、上型2で加圧する。
予備成型品16は、製品形状に比べて短く、先絞り部分のない円筒軸部17aの基端に厚肉のフランジ部18aを備えた形態をしており、この予備成型品16をキャビティ3内に落とし込むと、円筒軸部17aの先端が円筒軸形成部3bとスプライン形成部3cとの境にある段部20に突き当たり、フランジ部18aがリム形成部3a内に浮いた状態でセットされる(図2のa)。
先ず第1段階では、パンチ13とマンドレル14とを同時に下降させ、マンドレル14を予備成型品16の円筒軸部17a内に押し込んで、円筒軸部17a先端をセレーション形成部3c内に入れ込ませる(図2のb)。
続く第2段階では、パンチ13とマンドレル14との下降動作を続行する。
マンドレル14は、パンチ13に対し、パンチが下死点に位置した状態で、小径部14aとの境に形成される段部19が、キャビティ3におけるセレーション形成部3cの直前に位置する関係を保つよう制御される。
【0010】
そのためこの第2段階では、フランジ部18aがパンチ13によって加圧され、前後両方向への押し出し力が働くので、フランジ部18aの肉は、リム形成部3aの内周面とパンチ13の外周面との隙間へと押し出され、フランジ部18aが薄肉化される一方、その薄肉に形成されたフランジ18の周縁に外歯付きのリム21が形成されると共に、円筒軸部17a側に移動し、円筒軸部17aの先端は、前記第1段階に続いてセレーション形成部3c内へと入れ込まれる。
この円筒軸部17aの先端がセレーション形成部3c内に入れ込まれるに際しては、マンドレル14は第2段階が実行されている間、例えば図3に示すように、マンドレル14における小径部14aとの境に形成される段部19が、キャビティ3におけるセレーション形成部3cの直前に位置しているので、セレーション形成部3cの内周面とマンドレル14における小径部14aの外周との間(段部19.20間を含む)に形成される隙間の断面積を、成型せんとする形状の製品に比べて広げることが可能となり、その結果、製品形状における先絞り部の断面減少率がいくら大きくても、小径部を調整することで、円筒軸部の先端をスプライン形成部内に入れ込む際の断面減少率を下げることによって、円筒軸部17a(円筒軸17)の座屈を防止できる。
【0011】
次に第3段階では、パンチ13を下死点位置に残したままマンドレル14のみを下降せしめ、セレーション形成部3c内に流れ込んだ肉によってセレーション23付きの先絞り部22が形成される。
【0012】
完成品24が成型されたら、第4段階でエジェクタピン11,11・・を突出させて完成品24を押し上げ、脱型する。
この脱型の際、先絞り部22は突部12を通過するので、その突部12でセレーション23がしごかれ、セレーション23の精度アップが図られる(図2のd)。
【0013】
このようにして加圧工程を3段階に分け、且つ、それら第1段階から第3段階を連続して一気に実行することで、一回の加圧工程により予備成型品を完成品に成形できる。
而も、先絞り部の断面減少率が30%以上ある形状の製品にあっても、円筒軸に座屈現象を起こさせることがない。
尚、第1段階終了時におけるキャビティとマンドレルとの間に形成される隙間の形状は、製品における先絞り部の断面減少率に基づいて決定される。
【0014】
尚、実施例は、第1及び第2段階で円筒軸部先端をセレーション形成部内に流し込み、第3段階でセレーション付きの先絞り部を形成しているが、ボリューム調整により、第2段階である程度のセレーション形状を形成しておくことができるし、第3段階で形成されたセレーションの精度次第では、突部を省略することもできる。
そして本発明は、断面減少率が30%を下回る形状の製品を成型する場合においても利用して差し支えない。
【0015】
【発明の効果】
本発明に係るハブハイクラッチの製造方法によれば、第1段階にて、円筒軸部先端がセレーション形成部の直前に達するようにセットされた予備成型品に対し、段付きマンドレルとパンチとを同時に下降動作させることによって、円筒軸部先端をセレーション形成部内に入れ込ませると共に、第2段階でマンドレルとパンチとの下降動作を続行し、マンドレルを、その小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置するまで下降させることで円筒軸部の先端をセレーション形成部内へ更に入れ込むため、マンドレルの小径部を効果的に利用して断面減少率の低下を図ることで、円筒軸部の肉をセレーション形成部内に入れ込ませやすくでき、先絞り部の断面減少率が30%以上の製品を成型するに際しても、円筒軸が座屈することがなくなり、第1段階から第3段階まで一気に加圧するので、効率もよい。
又本発明のハブハイクラッチの製造用冷間鍛造装は、マンドレルとパンチとを、パンチが下死点に位置した状態で、マンドレルにおける小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置する関係を保つよう制御可能としたので、前記断面減少率を減少させるには最適である。
更に、請求項4に記載したハブハイクラッチの製造用冷間鍛造装置を使用することにより、脱型の際、突部でセレーションをしごき、セレーションの精度アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るハブハイクラッチの製造用冷間鍛造装置の説明図である。
【図2】製造過程を段階的に示した説明図である。
【図3】第2段階における肉の流れを示した説明図である。
【符号の説明】
1・・下型、2・・上型、3・・キャビティ、3a・・リム形成部、3b・・円筒軸形成部、3c・・セレーション形成部、4・・ダイ、5・・ダイケース、6・・ダイプレート、7・・外歯形成用歯形、8・・セレーション形成用歯形、9・・貫通孔、10・・ノックアウトピース、11・・エジェクタピン、12・・突部、13・・パンチ、14・・マンドレル、14a・・小径部、15・・パンチケース、16・・予備成型品、17円筒軸、17a・・円筒軸部、18・・フランジ、18a・・フランジ部、19・・(マンドレルの)段部、20・・(キャビティの)段部、21・・リム、22・・先絞り部、23・・セレーション、24・・完成品。

Claims (3)

  1. 製品形状より短い円筒軸部の基端に厚肉のフランジ部を備えた予備成型品を、円筒軸の基端にフランジとそのフランジの外周に外歯を有したリムが連続形成され、円筒軸の先絞り部外周にセレーションを有した製品形状の外周面に対応すべく、リム形成部と円筒軸形成部及びセレーション形成部とから成るキャビティを有する下型と、製品形状におけるリムの内周面に対応したパンチと、そのパンチの中心から、製品形状における円筒軸の内周面に対応した径で先端に小径部を有し、前記パンチとは別に昇降動作可能に設けられた段付きマンドレルとから成る上型とを駆使し、円筒軸部先端がセレーション形成部の直前に達するようにセットされた予備成型品に対し、マンドレルとパンチとを同時に下降動作させることによって、円筒軸部先端をセレーション形成部内に入れ込む第1段階と、マンドレルとパンチとの下降動作を続行し、マンドレルを、その小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置するまで下降させることで後方押し出しによりリムを形成すると共に、前方押し出しにより円筒軸部の先端をセレーション形成部内へ更に入れ込む第2段階と、マンドレルのみを下降させ、前記セレーション形成部内に入れ込んだ肉を押し広げ、セレーション付きの先絞り部を形成する第3段階とを連続して一気に実行し、その後第4段階にて脱型することを特徴とするハブハイクラッチの製造方法。
  2. 円筒軸の基端にフランジとそのフランジ部の外周に外歯を有したリムが連続形成され、円筒軸の先絞り部外周にセレーションを有した製品形状の外周面に対応すべく、リム形成部と円筒軸形成部及びセレーション形成部とから成るキャビティを有する下型と、製品形状におけるリムの内周面に対応したパンチと、そのパンチの中心に、製品形状における円筒軸の内周面に対応した径で先端に小径部を有し、パンチとは別に昇降動作可能に設けられた段付きマンドレルとから成る上型とを有し、前記マンドレルとパンチとは、パンチが下死点に位置した状態で、マンドレルにおける小径部との境に形成される段部が、キャビティにおけるセレーション形成部の直前に位置する関係を保つよう制御可能としたハブハイクラッチ製造装置。
  3. キャビティにおけるセレーション形成部の円筒軸形成部際に突部を周設した請求項に記載のハブハイクラッチ製造装置
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