JP3757809B2 - 温度調節器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御対象の温度を制御する温度調節器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱処理装置として、例えば、熱酸化装置がある。この熱酸化装置では、熱処理炉としての反応管の温度を、複数の温度センサで検出し、温度調節器は、検出された温度が、予め設定された目標温度になるように、反応管の周囲に分割して配置された複数のヒータの通電制御を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような熱酸化装置やCVD装置などの熱処理装置では、真空中などの放熱しにくい環境で加熱を行うものであるために、外乱応答時に温度が一旦オーバーシュートして熱くなってしまうと、冷めにくいために、なかなか目標温度まで温度が低下せず、その結果、温度の整定までの時間がかかり、熱処理のタクトタイムが長くなるといった難点がある。
【0004】
また、例えば、射出成形機や押し出し成形機のシリンダ部の温度制御においては、放熱を抑えて、いわゆる省エネを図るために、前記シリンダ部等の周囲を断熱材で囲んで断熱する場合があるが、かかる場合にも、外乱応答時に一旦オーバーシュートして熱くなってしまうと、冷めにくいために、なかなか目標温度まで温度が低下しないことになる。
【0005】
また、例えば、複数のヒータが内蔵された熱処理盤に被処理物を載置して熱処理する場合に、前記被処理物の熱伝導性が均一でないようなときには、被処理物を熱処理盤に載置したときのオーバーシュート量を、前記複数のヒータで異ならせることにより、被処理物を均一に熱処理できるようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、外乱応答に対するオーバーシュート量を調整できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上述の目的を達成するために、次のように構成している。
【0012】
本発明の温度調節器は、温度検出手段からの検出温度と目標温度との偏差に基づいて、操作信号を出力する温度制御手段と、外乱を検知する外乱検知手段と、外乱検知手段の検知出力に応答して、前記温度検出手段の検出温度を初期温度として前記目標温度へ徐々に近づくように前記温度制御手段への目標温度を変更する目標温度変更手段とを備え、前記外乱検知手段は、整定後に、前記温度検出手段の検出温度が最も低下または上昇したときに検知出力を与えるものである。
【0013】
本発明によると、外乱が検知されると、外乱によって変化した検出温度を、初期温度として目標温度に徐々に近づくように、温度制御手段に対する目標温度を変更するので、この初期温度から目標温度への変更の度合いによって、外乱応答時のオーバーシュート量を調整できることになり、用途や特性に応じて、オーバーシュートを抑制したり、あるいは、オーバーシュートを強めて応答を高めたりするといったことが可能となる。しかも、外乱によって、検出温度が最も低下したとき、または、最も上昇したときに、検知出力を与えるので、外乱によって最も低下した温度または最も上昇した温度が初期温度として目標温度変更手段に取り込まれて該初期温度から徐々に目標温度に近づくにように目標温度が変更されることになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器のブロック図である。
【0024】
この実施の形態の温度調節器1は、熱処理盤や熱処理炉などの制御対象2の温度を検出する図示しない温度センサからの検出温度(現在温度)と目標温度との偏差に基づいて、操作信号を、電磁開閉器およびヒータを含む図示しない操作手段に出力して制御対象2の温度が目標温度になるようにPID制御を行う温度制御手段としてのPIDコントローラ3を備えている。
【0025】
この温度調節器1は、例えば、熱処理装置としての枚葉式のCVDの熱処理盤の温度制御に適用できるものである。この熱処理盤には、ウェハが順番に載置されて熱処理されるものであり、ウェハが熱処理盤に載置されると、ウェハに熱が奪われる結果、熱処理盤の温度が目標温度以下に低下することになる。このようなウェハの載置による温度低下は、外乱とされるものである。
【0026】
この実施の形態の温度調節器1は、かかる外乱応答時のオーバーシュート量を調整できるように、外乱を検知する外乱検知部4と、この外乱検知部4の検知出力に応答して、温度センサからの検出温度を初期温度として設定温度である目標温度へ徐々に近づくようにPIDコントローラ3への目標温度を変更する目標温度変更部5を備えている。
【0027】
外乱検知部4は、制御対象2の検出温度が設定温度、すなわち、目標温度に整定している状態で外乱が印加されたときの検出温度の変動に基づいて、外乱を検知するものである。この実施の形態では、整定した後、温度センサからの検出温度が、設定温度を中心とした一定の温度範囲を外れたときに外乱であるとして、最も温度が低下した最下点温度になったときに検知出力を与えるものである。
【0028】
目標温度変更部5は、設定温度を目標温度としてそのまま出力しており、外乱検知部4で外乱が検知されると、温度センサからの上記最下点温度が一旦与えられた後、再び設定温度が与えらる。これによって、目標温度変更部5は、最下点温度を初期温度として目標温度である設定温度に徐々に近づくように目標温度を変更して出力するものであり、目標値フィルタと同様な動作を行うものである。
【0029】
図2は、外乱の印加による検出温度(現在温度)の変化および目標温度変更部5による目標温度の変更の状態を示す図である。
【0030】
設定温度に整定している状態において、例えば、ウェハが制御対象2である熱処理盤に載置される、すなわち、外乱が印加されると、検出温度(現在温度)は、実線Aで示されるように急激に低下し、最下点温度T1に達したときに、外乱検知部4が検知出力を与え、これに応答して、目標温度変更部5は、最下点温度T1を初期温度とし、該初期温度から目標温度である設定温度まで徐々に近づけるように、PIDコントローラ3に対する目標温度を、破線Bで示されるように変更するものである。
【0031】
この目標温度変更部5による外乱応答時の目標温度の変更の度合いを調整することにより、オーバーシュート量を調整することができる。
【0032】
図3は、この実施の形態の目標温度変更部5の構成の一例を伝達関数を用いて示したものである。
【0033】
この図3の目標温度変更部5は、2自由度PIDの目標値フィルタを使用しており、同図において、TIはPIDコントローラ3の積分時間、TDはPIDコントローラ3の微分時間、ηはPIDコントローラ3の不完全微分係数を表す。目標温度変更部5の調整パラメータはα、β、γの3つである。
【0034】
図4は、上記構成の目標温度変更部5において、調整パラメータβとγを固定値として、調整パラメータαだけを変化させた場合の目標温度の変更の状態を示す図である。
【0035】
この図に示されるように、調整パラメータαの値を0から1.0までの間で、大きくするほど、オーバーシュート量を小さくできる。逆に、調整パラメータαを、−1までの負の値に設定すると、オーバーシュート量を大きくできる。
【0036】
すなわち、調整パラメータαの値を設定するだけで外乱に対するオーバーシュート量を自由に調整できることになる。
【0037】
しかも、検出温度の最下点温度T1を基準(初期温度)にして目標温度を変更するので、感覚的にわかりやすく、調整パラメータαの設定が容易であり、用途や制御対象の特性等に応じて、調整パラメータαを予め設定してオーバーシュート量を所望の量に調整できることになる。
【0038】
なお、初期温度は、最下点温度T1に限らず、例えば、最下点の直前の温度などを用いてもよい。
【0039】
次に、以上の構成を有する温度調節器1を、各種の温度制御に適用した例について説明する。
【0040】
図5は、被処理物である商品6を、内蔵のヒータによって加熱される熱処理盤7で熱処理する場合の温度制御に適用した例であり、同図(a)は商品6および熱処理盤7を示し、同図(b)は商品6を熱処理盤7に搭載したときの商品6の温度変化および熱処理盤7のヒータに対応する温度変化を示す図である。
【0041】
熱処理盤7が設定温度で整定しているときに、商品6を熱処理盤7に搭載し、商品6を熱処理盤7の設定温度に到達させる用途の場合、商品6の温度がオーバーシュートせず、かつできるだけ立ち上がり時間を短くしなければならない。
【0042】
従来では、調整段階で商品6の搭載実験を数回行い、試行錯誤的にPIDの3つのゲインを調整しなければならなかった。このような従来例では、オーバーシュートとPIDゲインとの関係は感覚的にはわかりにくいので、調整が困難である。また一般的に積分時間を大きめに設定することにより、オーバーシュートを小さくできるけれども、積分時間を大きめに設定すると、応答時間が遅くなるので商品6の温度の立ち上がり時間が遅くなることや、整定温度に戻るまでに時間がかかるなどの問題点があった。
【0043】
これに対して、本発明の温度調節器1によれば、調整パラメータαを一つ調整するだけで効果があり、かつ、目標温度を変更するので感覚的にわかりやすいので調整が容易である。しかも、従来のようにPIDゲインは変更不要なので、応答が遅くなるなどの問題点がない。
【0044】
図6は、多入出力干渉系の温度制御に適用した例を示しており、二つの第1,第2のヒータ8,9によって加熱される熱処理盤10で商品11を熱処理する場合の温度制御であり、同図(a)は熱処理盤10および商品11を示し、同図(b)は従来例による商品温度の変化および各ヒータに対応する検出温度の変化を示し、同図(c)は本発明の温度調節器1による商品温度の変化および各ヒータに対応する検出温度の変化を示している。
【0045】
熱処理盤10の各ヒータ8,9に対応する処理点の温度が設定温度で整定しているときに、商品11を熱処理盤10に搭載し、商品11を、熱処理盤10の設定温度まで到達させる用途の場合、商品全体の温度を均一に昇温させなければならない。
【0046】
ところが、例えば、ヒータ8,9または熱処理盤10に搭載する商品の熱伝導特性にばらつきがあるような場合は、同図(b)に示されるように、商品全体の温度を均一に昇温させることができない。
【0047】
これに対して、本発明の温度調節器1によれば、各ヒータ8,9のオーバーシュート量を上述のように調整して異ならせることにより、同図(c)に示されるように、商品全体の温度を均一に昇温させることができるものである。
【0048】
次に、多入出力干渉系に対して本発明と、本件出願人が先に出願して既に公開されている傾斜温度制御とを組み合わせて使用した場合に適用して説明する。
【0049】
ここで、傾斜温度制御の概要について説明する。傾斜温度制御は、本件出願人が、優先権主張を伴う平成11年7月29日提出の特願平11−215061号(特開2000−187514)において、提案して既に公開されて公知となったものである。
【0050】
この傾斜温度制御では、例えば、複数の温度センサの検出温度の平均温度(代表温度)および複数の検出温度の温度差である傾斜温度を制御量として制御するものであり、複数の検出温度から平均温度およぴ傾斜温度を算出する平均温度・傾斜温度算出手段(モード変換器)と、各PID制御手段からの操作信号(操作量)を、所定の配分比で各ヒータに配分する配分手段(前置補償器)とを備えている。
【0051】
かかる傾斜温度制御によると、複数の温度検出手段から得られる検出温度を、傾斜温度と平均温度といった干渉のない独立の情報に変換して制御を行うとともに、配分手段によって各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくするように配分するので、干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減することが可能となり、例えば、ウェハを熱処理する熱処理盤の温度を所望の温度、例えば、均一な温度に制御することが可能となる。
【0052】
図7は、かかる傾斜温度制御と本発明とを組み合わせたブロック図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0053】
同図において、16は制御対象2の温度を検出する二つの温度センサの検出温度に基づいて、平均温度および傾斜温度(温度差)を算出するモード変換器であり、17は、各PIDコントローラ31,32からの操作信号(操作量)を、所定の配分比で各ヒータに配分する前置補償器である。かかる温度制御では、平均温度が目標平均温度に、傾斜温度が目標傾斜温度になるように温度制御がなされる。なお、外乱検知部41,42および目標値変更部51,52は、上述の図1の外乱検知部4および目標温度変更部5と同様である。
【0054】
図8は、図7の温度制御が適用される二つのヒータ14,15を備える熱処理盤12および該熱処理盤12で熱処理される商品13を示しており、各ヒータ14,15が、図7の各PIDコントローラ31,32によってそれぞれ制御される。この際に、各ヒータ14,15に個別的に対応して設けられている図示しない二つの温度センサからの各検出温度の平均温度および各検出温度の温度差である傾斜温度が、それぞれ目標平均温度および目標傾斜温度になるように制御されるものである。
【0055】
本発明と傾斜温度制御における平均のPID制御とを組み合わせると、オーバーシュート量を調整する一つのの調整パラメータα、または一組のパラメータα、β、γを調整するだけで、全チャンネルのオーバーシュート量を同時に調整できるので、各チャンネル個別に調整する手間が省けることになる。
【0056】
外乱印可時の傾斜温度のオーバーシュートを小さくするためには、傾斜のP、Iを弱めに設定しなければならない。このため、チャンネル間の差を均一にする速度が遅くなる。これに対して、本発明と傾斜温度制御の傾斜のPID制御とを組み合わせると、応答速度を重視したPIDゲインに設定してもオーバーシュート量を小さくできるので、応答速度が速く、かつオーバーシュートのない高精度なチャンネル間均一が実現できることになる。
【0057】
図9(a)は、傾斜温度制御における目標平均温度に対する各ヒータ14,15の外乱印加時の温度変化を示し、図9(b)は、目標傾斜温度(この例では0)に対する各ヒータ14,15の温度差である傾斜温度の変化を示しており、図10(a),(b)は、本発明と傾斜温度制御とを組み合わせた場合の図9(a),(b)にそれぞれ対応する波形を示している。
【0058】
図9(b)および図10(b)を比較することにより、本発明によってオーバーシュート量を調整することにより、傾斜温度が0に速やかに整定して高精度なチャンネル間の均一化が可能となる。
【0061】
上述の実施の形態では、調整パラメータとしてαのみを調整したけれども、その他の調整パラメータβ,γを調整してもよいのは勿論である。
【0062】
上述の実施の形態では、制御対象を加熱する場合に適用して説明したけれども、本発明は、制御対象を冷却する場合にも適用できるのは勿論である。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、外乱の印加に応答して、外乱によって変化した検出値を、初期値として、該初期値から目標値に徐々に近づくように、制御手段に対する目標値を変更するので、この初期値から目標値への変更の度合いによって、外乱応答時のオーバーシュート量を調整できることになり、用途や特性に応じて、オーバーシュートを抑制したり、あるいは、オーバーシュートを強めて応答を高めたりするといったことが可能となる。これによって、より高精度な温度制御などが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器のブロック図である。
【図2】外乱の印加による検出温度(現在温度)の変化および目標温度変更部5による目標温度の変更の状態を示す図である。
【図3】目標温度変更部の構成図である。
【図4】調整パラメータによる目標温度の変更の状態を示す図である。
【図5】本発明の温度制御を適用した第1の例を示す図である。
【図6】本発明の温度制御を適用した第2の例を示す図である。
【図7】本発明の温度制御と傾斜温度制御とを組み合わせた構成を示すブロック図である。
【図8】図7の制御対象である熱処理盤および商品を示す図である。
【図9】傾斜温度制御における目標平均温度に対する各ヒータの温度変化および目標傾斜温度に対する各ヒータの温度差である傾斜温度の変化を示す図である。
【図10】図7の実施の形態の図9に対応する図である。
【符号の説明】
1 温度調節器
2 制御対象
3 PIDコントローラ
4 外乱検知部
5 目標温度変更部
Claims (1)
- 温度検出手段からの検出温度と目標温度との偏差に基づいて、操作信号を出力する温度制御手段と、外乱を検知する外乱検知手段と、外乱検知手段の検知出力に応答して、前記温度検出手段の検出温度を初期温度として前記目標温度へ徐々に近づくように前記温度制御手段への目標温度を変更する目標温度変更手段とを備え、
前記外乱検知手段は、整定後に、前記温度検出手段の検出温度が最も低下または上昇したときに検知出力を与えることを特徴とする温度調節器。
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