JP3753272B2 - ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキシアルキレン基及びイオン性基を含有したビニルエステル系樹脂の水性液を用いたビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂(低ケン化ポリビニルアルコール系樹脂)は、ビニル系化合物(特に塩化ビニル)の懸濁重合用分散助剤として広く利用されている。
しかし、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂は、水に全く不溶であるため、懸濁重合に用いるときは粉体のまま添加したり、或いは水/アルコール系や水/ケトン系の溶液に溶解させた後に添加したりされており、前者の方法では仕込み時の作業性が悪く、かつ分散助剤としての効果が十分に発揮することができず、また後者の方法ではアルコール溶剤による環境汚染(COD負荷の上昇等)等の問題が生じてくる。
かかる問題点を解決するために、側鎖にアミノ基,アンモニウム基,カルボキシル基,スルホン基等を有したビニルエステル系重合体を分散質とする水性分散液を用いることが提案されている。(特開平4−154810号公報)
【0003】
しかしながら、上記の水性分散液では変性量が多い場合、ビニル系化合物の重合時の緩衝剤の使用量、緩衝剤の投入時期、重合系内の酸素濃度等により重合系内のpH値の範囲(3〜8)が変化するためか、その特性(ポロシティーアップ、ポロシティー分布の均一性、脱モノマー性や可塑剤吸収能の向上等)を十分発揮することができない場合があり、また重合安定性が不良になるなどの懸念があった。更に親水性が強くなるため、ビニル系モノマーの懸濁分散助剤として使用した場合、主剤の保護コロイド性を低下させる為と思われるが、重合安定性が不安定となり得られる重合物の粒子が粗粒化するなどの懸念もあった。そこでそれらの問題を解決するため、変性量を少なくすると、上記の問題点が解決するものの、水性液の放置安定性が低下してしまう欠点があった。
一方本出願人は、重合安定性に優れ、かつ脱(塩ビ)モノマー性等の良好なビニル系重合体粒子が得ることを目的として、オキシアルキレン基の含有量が0.5〜10モル%でケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を50重量%以下含有する水性液を提案した。(特願平7−286753号)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特願平7−286753号の水性液では、樹脂分が低い時、特に10重量%未満で放置したときの放置安定性がビニルエステル系樹脂のケン化度によっては悪く、使用に際してはこの点に留意する必要があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる事情に鑑みて鋭意検討した結果、本発明者らは、下記の化2で示されるオキシアルキレン基の含有量が0.5〜5.0モル%で、側鎖又は末端にイオン性基の含有量が0.05〜1.0モル%で、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を50重量%以下含有する水性液をビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤に用いたとき、樹脂分が低い時、特に1重量%以上10重量%未満で放置しても、溶液の放置安定性が特に優れ、重合缶内に添加された際、1重量%未満の濃度で水分子を抱接することができず、該助剤は即座にビニルモノマーの方へ吸着または溶解される為、かかる水性液をビニル系化合物の懸濁重合に供したときビニル系化合物の重合時の緩衝剤の使用量、重合系内の酸素濃度等による重合系内のpH変化等の重合条件に左右されずに可塑剤吸収性、脱モノマー性に優れることを見いだし本発明の完成に至った。
尚、本発明の水性液とは、水性分散液、水溶液等を包含するものである。
【化2】
(但し、R1,R2は水素又はアルキル基で好ましくは水素で、nは2〜300の整数を示す。)
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤は、オキシアルキレン基の含有量が0.5〜5.0モル%で、側鎖又は末端にイオン性基を有し、その含有量が0.05〜1.0モル%で、ケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を50重量%以下含有する水性液で、かかるオキシアルキレン基とは、上記の化2で表されるものであるが、一般的には下記の化3で表されるものである。
【0007】
【化3】
(但し、R1,R2は水素又はアルキル基、nは2〜300の整数を示す。)
上記の化2或いは化3においては、nの数が5〜300程度、好ましくは5〜55のオキシアルキレン基が実用的であり、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が効果的であるが、好ましくはポリオキシエチレン基がより効果的である。
【0008】
オキシアルキレン基及びイオン性基を有するビニルエステル系樹脂は任意の方法で製造できる。例えば▲1▼オキシアルキレン基を有する不飽和単量体とイオン性基を有する不飽和単量体をコモノマーとしてビニルエステル系化合物を共重合する方法や、オキシアルキレン基を有する不飽和単量体とイオン性基を有するアルコール、アルデヒド或いはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ビニルエステル系化合物を共重合する方法、▲2▼ポリオキシアルキレン基の存在にイオン性基を有する不飽和単量体又はイオン性基を有するアルコール、アルデヒド或いはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ビニルエステル系化合物を共重合する方法等が挙げられるが、▲1▼が樹脂の製造面、性能面等から実用的である。
以下▲1▼の方法について具体的に説明する。
【0009】
オキシアルキレン基を有する不飽和単量体としては次の様なものが例示される。但し、本発明ではこれらのみに限定されるものではない。
[(メタ)アクリル酸エステル型]
下記の化4で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【化4】
(但し、Rは水素又はメチル基、Aはアルキレン基,置換アルキレン基,フェニレン基,置換フェニレン基のいずれか、mは0又は1以上の整数、R1,R2は水素又はアルキル基、nは2〜300、好ましくは5〜55の整数を示す。)
【0010】
[(メタ)アクリル酸アミド型]
下記の化5で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル等が挙げられる。
【化5】
(但し、R3は水素又はメチル基又は上記の化2又は化3を表し、A,m,R,R1,R2,nは前記と同様。)
【0011】
[(メタ)アリルアルコール型]
下記の化6で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【化6】
(但しR,R1,R2,nは前記と同様。)
【0012】
[ビニルエーテル型]
下記の化7で示されるもので、具体的にはポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等が挙げられる。
【化7】
(但し、A,m,n,R,R1,R2は前記と同様。)
これらのオキシアルキレン基を含有する単量体の中でも化6で示される(メタ)アリルアルコール型のものが好適に使用される。
【0013】
本発明で用いられるイオン性基を有する単量体としては特に限定されず、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、アミノ基含有単量体、アンモニウム基含有単量体等が用いられる。
【0014】
カルボキシル基含有単量体としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、又はエチレン性不飽和ジカルボンモノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)又はエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいは(メタ)アクリル酸等の単量体およびその塩が挙げられ、その中でもエチレン性不飽和カルボン酸、又はエチレン性不飽和カルボン酸モノエステルおよびその塩が好適に使用される。
またカルボキシル基を有するアルコール、アルデヒドあるいはチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤としては、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来するものが有効で以下のものが挙げられる。
【0015】
【化8】
HS−(CH2)n−COOH
及び化8の塩
【化9】
及び化9の塩
(但し一般式化9において、Rはそれぞれ水素原子又は低級アルキル基(置換基を含んでもよい)、一般式化8と化9においてnは0〜5の整数を示す。)
【化10】
及び化10の塩
(但し一般式化10において、nは0〜20の整数を示す。)
具体的にはメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトステアリン酸等が挙げられる。
【0016】
スルホン酸基含有単量体としては以下のものが挙げられる。
(イ)エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩
(ロ)下記化11又は化12で表されるスルホアルキルマレート
【化11】
【化12】
(但し化11又は化12においてR1はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素又は水素原子アルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。)
上記のスルホアルキルマレートとして具体的には、ナトリウムスルホプロピル2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピル2−エチルヘキシルマレート、ナトリウムスルホプロピルトリデシルマレート、ナトリウムスルホプロピルエイコシルマレート等が挙げられる。
【0017】
(ハ)下記化13〜15で表されるスルホアルキル(メタ)アクリルアミド、スルホアルキル(メタ)アクリレート
【化13】
【化14】
【化15】
(但し化13〜15において、R2,R3,R4,R5,R7,R8,R9は水素又はアルキル基、R6はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素、アルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。)
上記のスルホアルキル(メタ)アクリルアミドとして具体的には、ナトリウムスルホメチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホS−ブチルアクリルアミド、ナトリウムスルホt−ブチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
【化16】
(但しR10は水素又はアルキル基、nは2〜4の整数、Mは水素,アルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。)
上記のスルホアルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、ナトリウムスルホエチルアクリレート等が挙げられる。
上記スルホン酸基含有単量体の中でもオレフィンスルホン酸、又はその塩が好適に使用される。
【0019】
またスルホン酸基を有するアルコール、アルデヒド或いはチオール等の官能基を有するスルホン酸基含有単量体としては、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来するものが有効で以下のものが挙げられる。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(但し化17〜20において、R11〜R19はそれぞれ水素又はメチル基、nは2〜4の整数、Mは水素,アルカリ金属又はアンモニウムイオンを示す。尚、nが整数のときはnの数だけ存在する各R14,R15,R17,R18は同時に同じものでも異なるものでもよい。)
具体的には、チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロパン等が挙げられる。
【0020】
また、スルホン酸基を導入したポリビニルアルコールを得る方法としては、 ポリビニルアルコールを臭素、ヨウ素等で処理した後、酸性亜硫酸ソーダ水溶液で加熱する方法。ポリビニルアルコールを濃厚な硫酸水溶液中で加熱する方法。ポリビニルアルコールをスルホン酸基を有するアルデヒド化合物でアセタール化する方法等もある。
【0021】
アミノ基あるいはアンモニウム基を含有する単量体としては以下のものが挙げられる。
【化21】
及び化21の四級化物
【化22】
及び化22の四級化物
【0022】
【化23】
及び化23の四級化物
【化24】
及び化24の四級化物
【化25】
(但し化21〜25において、nは0〜3の整数、mは1〜10の整数、R1,R2,R5,R6,R7は水素又はメチル基を示し、R3,R4はそれぞれ低級アルキル基(置換基を含んでもよい)、Xはアンモニウム窒素と塩を形成する陰性の基、Aはアミンあるいはアンモニウム原子と化21のアミド基の窒素原子あるいは化23の酸素とを連結する基をそれぞれ示す。)
【0023】
又、アミノ基あるいはアンモニウム基を有するアルコール、アルデヒドあるいはチオール等の官能基を有するアミノ基あるいはアンモニウム基含有単量体を連鎖移動剤として共存させ重合する方法があるが、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来するものが有効で以下のものが挙げられる。
【化26】
及び化26の四級化物
【化27】
及び化27の四級化物
【0024】
【化28】
及び化28の四級化物
【化29】
及び化29の四級化物
(但し化23〜29において、nは0〜3の整数、mは1〜10の整数、R1,R2,R5,R6,R7は水素又はメチル基を示し、R3,R4はそれぞれ低級アルキル基(置換基を含んでもよい)、Aはアミンあるいはアンモニウムの窒素と化26のアミド基の窒素あるいは化28の酸素とを連結する基を示す。)
【0025】
上記の単量体と共重合するビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が単独又は併用で用いられるが、工業的には酢酸ビニルが好適である。
【0026】
本発明においては、前述した如きオキシアルキレン基を有する不飽和単量体、イオン性基を有する単量体、ビニルエステル以外の他の一般の単量体を50モル%以下共存せしめて重合を行なっても良い。これらの単量体を次に例示する。
[エチレン性不飽和ジカルボン酸およびそのアルキルエステル等]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、マレイン酸モノアルキルエステル、マレインジアルキル酸エステル、オレイン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
[α−オレフィン]
エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキサデセン、α−オクタデセン等。
【0027】
[アルキルビニルエーテル]
プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等。
[アルキルアリルエーテル]
プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等。
その他、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニルなどの使用も可能である。
【0028】
共重合するに当たっては特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、普通メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合等も可能である。かかる溶液重合において単量体の仕込み方法としては、ビニルエステルの重合を開始し、単量体を重合期間中に連続的に又は分割的に添加する方法、単量体を重合初期に一括仕込み、又重合初期よりビニルエステルと単量体を同時に仕込む方法等任意の手段を用いて良い。連鎖移動剤を共存させ重合する場合は所定の変性量になるように重合系のビニルエステルの反応率に応じて連鎖移動剤を添加することにより、反応系の連鎖移動量がビニルエステルに対してあまり変化しないようにすることが好ましい。共重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒や低温活性触媒を用いて行われる。又反応温度は30℃〜沸点程度の範囲から選択される。
ビニルエステル成分は、それを更にケン化してビニルアルコール成分に変えることも可能であり、このときのケン化度は70モル%以下であることが必要で、該ケン化度が70モル%を越えると、ビニルエステル系樹脂を分散助剤として、懸濁重合で得られるビニル系化合物の脱モノマー性やポロシティー分布の均一性、可塑剤吸収性向上の点で不十分であり、好ましくは0〜60モル%、更に好ましくは20〜60モル%、特に好ましくは30〜60モル%である。
【0029】
ケン化に当たっては共重合体をアルコール、ベンゼン、酢酸メチル等に溶解しアルカリ触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は20〜50重量%の範囲から選ばれる。
ケン化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることが必要である。かかる触媒の使用量はモノマー単位のビニルエステル1モルに対して1〜100ミリモル当量、好ましくは1〜50ミリモル、更に好ましくは1〜30ミルモルである。
また、該水溶液からなる分散助剤の放置安定性を上げるために硫酸、塩酸等の酸触媒を用いてケン化を行うことも可能である。
【0030】
しかして、本発明に用いるオキシアルキレン基及びイオン性基を有するビニル系化合物が得られるわけであるが、このなかでオキシアルキレン基の含有量は、0.5〜5.0モル%であることが必要で、好ましくは1.0〜4.0モル%、更に好ましくは1.0〜3.0モル%である。該含有量が0.5モル%未満では、水性液の放置安定性が悪く、逆に5.0モル%を越えると、ビニルエステル系樹脂を分散剤として懸濁重合で得られるビニル系化合物のポロシティー分布の均一性、ポロシティー、可塑剤吸収性が低下して不適当である。
【0031】
本発明に用いるイオン性基の含有量は0.05〜1.0モル%であることが必要で、好ましくは0.1〜1.0モル%である。0.05モル%未満では、水溶性分散液の樹脂分を10モル%以下にした場合の放置安定性が低下し、1.0モル%を越えると親水性が強くビニル系モノマーの懸濁重合時に主剤の保護コロイド性を低下させる為か、重合安定性が不安定となり得られる重合物が粗粒化し好ましくない。
【0032】
次に該ビニルエステル系樹脂の水溶液を得るのであるが、かかる水溶液を得る方法としては、特に限定されず、ケン化時のアルコールをスチーム等の吹き込みにより水に置換する方法、撹拌下で水中へビニルエステル系樹脂を投入し、引き続き撹拌する方法、更に加熱を併用する方法等が挙げられ、好ましくはケン化時の含有アルコールをスチーム等の吹き込みにより水に置換する方法が用いられる。
【0033】
本発明の分散助剤は、上記のビニルエステル系化合物を水中に50重量%以下の割合で分散又は溶解させたもので、好ましくは1〜45重量%、更に好ましくは3〜40重量%である。該樹脂の割合が50重量%を越えると該水性液の流動性が著しく低下したり或いはゲル状となったりして不適当なことがある。
【0034】
本発明の水性液からなる分散助剤は、樹脂分50重量%以下(好ましくは1〜45重量%、更に好ましくは3〜40重量%)で、該分散助剤を水性液にする為の分散剤や乳化剤を特に使用することもなく1年以上の良好な放置安定性が得られる。
又本発明の水性液にはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ペンタクロルフェノールナトリウム塩等の公知の防腐剤を分散剤としての性能を阻害しない範囲で適当量添加することができる。
【0035】
本発明の分散助剤は完全ケン化物とした場合の4重量%水溶液の粘度(20℃)が0.5〜10mPasであることが好ましく、更に好ましくは1.5〜5.0mPasである。該粘度が0.5mPas未満では分散助剤としての効果を十分発揮できず、得られる懸濁重合物の重合体粒子の内部モルフォロジーを充分コントロールすることができない(重合性粒子の内部空隙のアップが不充分な)傾向にあり、好ましくない。また10mPasを越えると水性液(分散助剤)中の樹脂濃度が上げられず、水性液(分散助剤)の流動性が低下したり或いはゲル状となったりするので好ましくない。
【0036】
次に得られたビニルエステル系樹脂の水性液を分散助剤として用いたビニル系化合物の懸濁重合法について説明する。
懸濁重合を行う際には、通常、水又は加熱水媒体に本発明の分散助剤と公知の分散安定剤を添加し、ビニル系モノマーを分散させて油溶性触媒の存在下で重合を行う。かかる分散安定剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ゼラチン或いはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられ、中でもケン化度65〜90モル%、好ましくは68〜89モル%で重合度500〜3500のポリビニルアルコールが好適に用いられ、分散安定剤の種類等によって一概に言えないが分散安定剤と分散助剤の添加量の重量比は90/10〜30/70の範囲が好ましく、特に80/10〜50/50が好ましい。
該分散安定剤及び分散助剤は、重合の初期に一括仕込みしても、又重合の途中で分割して仕込んでもよい。
【0037】
更に、本発明の分散助剤には、本発明の効果を阻害しない範囲においてカチオン系、アニオン系又はノニオン系の界面活性剤を併用してもよい。
また、使用される触媒としては、油溶性の触媒であれば特に限定されず、例えば、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、γ−クミルパーオキシネオデカネート、ベンゾールパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、α,α′−アゾビスイソブチロニトリル、α,α′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド或いはこれらの混合物が使用される。
又、スケーリング防止の為、適当量のチオシアン酸アンモニウムや亜硝酸塩等の水溶性の重合禁止剤を添加してもよい。
重合温度は、当業者周知の範囲から、目的とするビニル系化合物の重合度に応じて任意に選択される。
【0038】
懸濁重合の対象となるモノマーとしては、塩化ビニルの単独重合のみではなく、これと共重合可能なモノマー、例えばハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はその無水物やエチレン、プロピレン、スチレン等との共重合物にも好適であり、更には塩化ビニル用に限らず、スチレン、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル等任意のビニル化合物の懸濁重合用にも使用することができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお,実施例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
オキシエチレンの付加モル数が平均15のポリオキシエチレンモノアリルエーテルとマレイン酸モノメチルと酢酸ビニルをメタノール中でアゾビスイソブチロニトリルの存在下で共重合し、次いで残存モノマーを追い出した後、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を加えてケン化して表1に示される如きポリオキシエチレン基、イオン性基含有ポリビニルアルコール樹脂(分散助剤1)を得た。
得られた該樹脂(分散助剤1)を分散質としてニーダーにより水に溶解させて表2に示す濃度の水溶液を調製し、以下の要領で分散性及び放置安定性を調べた。評価結果を表2に併せて示す。
【0040】
(分散性)
目視により、共重合体の析出やゲルの発生等の状況を調べた。
(放置安定性)
水性液を20℃で12ケ月放置し、放置前後の分散質の分散(又は溶解)状態を目視観察して、凝集、沈殿の発生等の変化の有無を調べた。
【0041】
次いで、表3に示す様に分散助剤1の水性液と、主分散剤(A)を用いて、以下の要領でポリ塩化ビニルの重合を行って、得られたポリ塩化ビニル粒子について、後述の如き性能評価を行った。
撹拌機を備えたオートクレーブ中に塩化ビニルモノマー100部、水150部、表3に示す分散助剤1の水性液を仕込み時に、仕込み定量性を上げるため固形分10%まで希釈して、希釈液で0.1部(オキシエチレン基含有ポリビニルアルコール共重合体の固形分換算で0.02部)及び主分散剤(A)として重合度2200,ケン化度80モル%のポリビニルアルコール0.08部を用い、更にラウロイルパーオキサイド0.2部を仕込み、回転数400rpmで撹拌しながら温度60℃にて懸濁重合を行って、ポリ塩化ビニル粒子を得、以下の評価を行い、結果を表4に示した。
【0042】
<嵩密度>
JIS K 6721に準拠した。
<可塑剤吸収性>
プラストグラフに接続されたプラネタリー型ミキサーに得られたポリ塩化ビニル粒子60部とDOP(ジオクチルフタレート)40部の混合物を投入して、80℃で撹拌しながら各時間毎の混練トルクを測定し、混練トルクが低下するまでの経過時間を調べた。
評価基準は以下の通り。
A −−− 3分未満
B −−− 3〜5分未満
C −−− 5分以上
【0043】
<残存モノマー>
得られたポリ塩化ビニル粒子の一定量をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させて、ガスクロマトグラフにより残存する塩化ビニルモノマーを定量した。
<フィッシュアイ>
得られたポリ塩化ビニル粒子100部、DOP(ジオクチルフタレート)50部、ジオクチル錫ラウレート3部及びステアリン酸亜鉛1部を155℃でロール練りして0.3mm厚のシートを作製し100mm×100mm当たりのフィッシュアイの数を測定した。
評価基準は以下の通り。
A ――― 0〜4個
B ――― 5〜11個
C ――― 11個以上
【0044】
実施例2〜9、比較例1〜7
実施例1に準じて、表1に示す如きオキシアルキレン基、イオン性基含有ポリビニルアルコール樹脂(分散助剤2〜9及び分散助剤10〜16)を作製し、表2に示される水性液を同様に調製して、水溶液の評価を同様に行った。評価結果を表2に併せて示す。
更に実施例1に準じて、表3に示す様に分散助剤2〜16の水性(分散)液と主分散剤(A)を用いてポリ塩化ビニルの重合を行って、同様に評価を行った。
尚、比較例1〜4及び7で得られた分散助剤は表2の如く分散性が不良であったため、ポリ塩化ビニルの重合は行わなかった。又水性分散液の樹脂濃度が10%より高い場合は10%まで希釈し、10%以下の樹脂濃度の水性液、実施例2及び7〜11、比較例6で得られた分散助剤は希釈することなく、塩化ビニルモノマーに対して分散助剤が所定量になる様に水性液を仕込んだ。
実施例2〜9、比較例1〜7のポリ塩化ビニル重合の評価結果を表4に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【発明の効果】
本発明のビニル化合物の懸濁重合用分散助剤は、オキシアルキレン基の含有量が0.5〜5.0モル%で、側鎖又は末端にイオン性を有し、その含有量が0.05〜1.0モル%で、かつケン化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を含有する水性液を用いているため、該ビニルエステル系樹脂からなる水性液は50重量%の樹脂分の水性液で放置しても安定で、且つ広範囲の希釈率で希釈可能であり、かかる水溶液をビニル系化合物の懸濁重合に供したときは、嵩密度、可塑剤吸収性、脱モノマー性に優れ、ビニル系化合物の懸濁重合用の分散助剤として大変有用性が高い。
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