JP3750622B2 - エピタキシャル膜付きSiCウエハ及びその製造方法並びにSiC電子デバイス - Google Patents

エピタキシャル膜付きSiCウエハ及びその製造方法並びにSiC電子デバイス Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,エピタキシャル膜を有するSiCウエハ及びその製造方法,並びに該SiCウエハを用いた電子デバイスに関する。
【0002】
【従来技術】
従来より,SiC単結晶を利用するSiC半導体は,Si半導体に代わる次世代パワーデバイスの候補材料として期待されている。高性能なSiCパワーデバイスを実現するためには,上記SiC半導体に生じる逆方向リーク電流等を低減することが必須条件である。これまでの研究報告によれば,上記SiC単結晶に生じるマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,積層欠陥等の欠陥が,SiC半導体の逆方向リーク電流等の原因となっていると考えられている。
また,上記パワーデバイスの用途には,特にエピタキシャル膜を有するSiCウエハが用いられる。そのため,SiC単結晶中のみならず,エピタキシャル膜中にも上記欠陥を含まないエピタキシャル膜付きSiCウエハの開発が望まれている。
【0003】
図4に示すごとく,SiC単結晶は主要な面方位として{0001}面(c面)と,{0001}面に垂直な{1−100}面(a面)及び{11−20}面(a面)とを有している。
一般に,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを得る方法としては,まず,六方晶の{0001}面又は{0001}面からオフセット角度10°以内の面を種結晶面として露出するSiC種結晶を用いて,昇華再析出法等により種結晶面上に上記SiC単結晶を成長させる,いわゆるc面成長を行い,成長させたSiCバルク単結晶を得る。
【0004】
次に,該SiCバルク単結晶から{0001}面からオフセット角度10°以内の面を成膜面として露出するSiCウエハを作製する。続いて,この成膜面に研磨等の表面処理を施し,所望の元素及び密度の不純物を導入したエピタキシャル膜を成膜してエピタキシャル膜付きSiCウエハを得る。
【0005】
しかし,上記のように{0001}面を種結晶面とし,<0001>方向に成長させてなるSiCバルク単結晶(c面成長結晶)中には,<0001>方向に略平行な方向にマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位が非常に多く発生するという問題があった。さらに,このc面成長結晶からSiCウエハを作製してエピタキシャル膜を成膜すると,該エピタキシャル膜中にはSiCウエハの表面に露出する転位が継承される。これにより,上記エピタキシャル膜中にもSiCウエハと略同密度の転位が存在し,各種デバイス特性に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
一方,特開平5−262599号公報には,SiC単結晶の{0001}面からの傾きが60〜120°(好ましくは90°)の面を種結晶面として,この種結晶をa面成長させて,成長結晶(a面成長結晶)を得る方法が開示されている。そして,このa面成長結晶中には,マイクロパイプ欠陥や螺旋転位が含まれないことを明らかにした。
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記a面成長結晶中には,<0001>方向に平行及び直交なバーガースベクトルを持つ刃状転位及び{0001}面内の積層欠陥が成長方向に略平行に高密度に存在する。そのため,このa面成長結晶からSiCウエハを作製しエピタキシャル膜を成膜すると,該エピタキシャル膜中にa面成長結晶に含まれる高密度の刃状転位から転位が継承される。このようにエピタキシャル膜中に転位を高密度に含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハは,オン抵抗が高くなり,また,逆方向リーク電流を生じるため,デバイス動作に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,SiCウエハ及びエピタキシャル膜中に欠陥及び転位をほとんど含有しないエピタキシャル膜付きSiCウエハ及びその製造方法,並びにオン抵抗が低く,逆方向リーク電流の発生がほとんどないSiC電子デバイスを提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】
第1の発明は,SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製して該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜しエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法において,該製造方法は,N回(Nは,N≧2の自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表した場合,
n=1である第1成長工程においては,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,または{11−20}面からオフッセット角度20°以下の面を第1成長面として露出させた第1種結晶を用いて,上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
n=2,3,...,N回目である連続成長工程においては,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
上記成膜工程においては,n=Nである第N成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法にある(請求項1)。
【0010】
本発明の第1成長工程においては,上記{1−100}面,又は{11−20}面という,いわゆるa面からオフセット角度20°以内の面を第1成長面としている。
そのため,上記第1成長結晶は第1成長面と直交する方向に成長し,これはいわゆるa面成長に相当する。それ故,上記第1成長結晶中には上記マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。
しかし,上記第1成長工程に用いる第1種結晶中には,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及びそれらの複合転位が存在する。そのため,上記第1成長結晶中には,これらの欠陥に起因する<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルを持つ刃状転位が上記第1成長面の表面から継承されて存在する。このとき上記刃状転位は,第1成長結晶の成長方向に平行な方向に伸びるように存在する。
【0011】
次に,上記連続成長工程においては,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面,即ちほぼa面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製する。
そのため,第(nー1)成長結晶に含まれる刃状転位は,上記第n種結晶の表面にはほとんど露出されないので,第n成長結晶中に上記刃状転位はほとんど発生しない。また,上記連続成長工程におけるSiC単結晶の成長は,略a面成長の方向に起こる。そのため,上記連続成長工程における成長結晶中には,マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。
また,上記連続成長工程は,1回(N=2のとき),または複数回繰り返して行うことができる。そして,連続成長工程の回数を増やす毎に,得られる成長結晶のいわゆる転位密度を指数関数的に減少させることができる。
【0012】
次に,上記成膜工程においては,n=Nである第N成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜する。ここで,第N成長結晶は,上記第1成長工程及び連続成長工程により得られた成長結晶であり,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位及び刃状転位をほとんど含んでいない。そのため,上記SiCウエハの成膜面には,上記欠陥及び転位はほとんど露出されず,上記欠陥及び転位が上記エピタキシャル膜中に継承されることはほとんどない。
【0013】
このように,本発明によれば,SiCウエハ及びエピタキシャル膜中に欠陥及び転位をほとんど含有しないエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法を提供することができる。
【0014】
尚,本発明において,{1−100},{11−20}及び{0001}は,いわゆる結晶面の面指数を表している。上記面指数において,「−」記号は通常数字の上に付されるが,本明細書及び図面においては書類作成の便宜上のため数字の左側に付した。また,<0001>,<11−20>,及び<1−100>は,結晶内の方向を表し,「−」記号の取り扱いについては,上記面指数と同様である。
【0015】
第2の発明は,SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製して該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜しエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法において,該製造方法は,(N+α)回(Nは,N≧2の自然数であり,αは自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりN+αで終わる序数)として表した場合,
n=1である第1成長工程においては,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,または{11−20}面からオフッセット角度20°以下の面を第1成長面として露出させた第1種結晶を用いて,上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
n=2,3,...,N回目である第1連続成長工程においては,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
n=N+1,N+2,...,N+α回目である第2連続成長工程においては,第(n−1)成長面より0〜45°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
上記成膜工程においては,n=N+αである第(N+α)成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法にある(請求項2)。
【0016】
本発明の第1成長工程においては,上記第1の発明と同様に,上記{1−100}面,又は{11−20}面という,いわゆるa面からオフセット角度20°以内の面を第1成長面としている。
そのため,上記第1成長結晶は第1成長面と直交する方向に成長し,これはいわゆるa面成長に相当する。それ故,上記第1成長結晶中には上記マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。
しかし,上記第1成長工程に用いる第1種結晶中には上記第1の発明と同様に,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及びそれらの複合転位が存在する。そのため,上記第1成長結晶中には,これらの欠陥に起因する<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルを持つ刃状転位が上記第1成長面の表面から継承されて存在する。このとき上記刃状転位は,第1成長結晶の成長方向に平行な方向に伸びるように存在する。
【0017】
次に,上記第1連続成長工程においては,上記第1の発明と同様に,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面,即ちほぼa面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製する。そのため,第(nー1)成長結晶に含まれる刃状転位は,上記第n種結晶の表面にはほとんど露出されないので,第n成長結晶中に上記刃状転位はほとんど発生しない。また,上記第1連続成長工程におけるSiC単結晶の成長は,略a面成長の方向に起こる。そのため,上記第1連続成長工程における成長結晶中には,マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。
また,上記第1の発明と同様に,上記第1連続成長工程は,1回(N=2のとき),または複数回繰り返して行うことができる。そして,第1連続成長工程の回数を増やす毎に,得られる成長結晶のいわゆる転位密度を指数関数的に減少させることができる。
【0018】
次に,n=N+1,N+2,...,(N+α)回目である第2連続成長工程においては,第(n−1)成長面より0〜45°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製する。
そのため,上記第2連続成長工程においては,第N成長結晶と同品質の第(N+α)成長結晶を作製することができる。そして,上記第2連続成長工程においては,第(n−1)成長面より0〜45°という傾きの小さい面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製している。そのため,上記第(n−1)成長結晶より第n種結晶を作製する際には,第(n−1)成長結晶を高く成長させる必要がない。それ故,第n成長結晶を作製するための時間及びコストを削減することができる。
また,上記第2連続成長工程は,1回(α=1のとき),または複数回繰り返して行うことができる。
【0019】
次に,上記成膜工程においては,n=N+αである第(N+α)成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜する。ここで,第(N+α)成長結晶は,上記第1成長工程,第1連続成長工程及び第2連続成長工程により得られた成長結晶であり,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位及び刃状転位をほとんど含んでいない。そのため,上記SiCウエハの成膜面には,上記欠陥及び転位はほとんど露出されず,上記欠陥及び転位が上記エピタキシャル膜中に継承されることはほとんどない。
【0020】
このように本発明によれば,上記第1の発明と同様に,SiCウエハ及びエピタキシャル膜中に欠陥及び転位をほとんど含有しないエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法を提供することができる。
【0021】
尚,本発明においても上記第1の発明と同様に,{1−100},{11−20}及び{0001}は,いわゆる結晶面の面指数を表している。上記面指数において,「−」記号は通常数字の上に付されるが,本明細書及び図面においては書類作成の便宜上のため数字の左側に付した。また,<0001>,<11−20>,及び<1−100>は,結晶内の方向を表し,「−」記号の取り扱いについては,上記面指数と同様である。
【0022】
また,上記第1又は第2の発明により作製されることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハる。
【0023】
第1又は第2の発明により作製されるエピタキシャル膜付きSiCウエハは,上述したごとく,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位をほとんど含まず,高品質である。それ故,次世代パワーデバイスの材料として非常に有効である。
【0024】
また,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを用いて作製されことを特徴とするSiC電子デバイスる。
【0025】
上記エピタキシャル膜付きSiCウエハは,上述したごとく,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位をほとんど含まず,高品質である。
そのため,上記SiC電子デバイスは,オン抵抗が低く,逆方向リーク電流の発生が非常に少ないという優れたデバイス特性を有する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明において,上記第1成長面は,{1−100}面又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面であり,これは{1−100}又は{11−20}面を含む概念である。
ここで,上記第1成長面は,{1−100}面又は{11−20}面であることが好ましい。
この場合には,上記第1成長は,それぞれ<1−100>又は<11−20>方向に成長する(a面成長)。そのため,上記第1成長結晶に含まれる<0001>方向の貫通欠陥をより効果的に減少させることができる。
【0027】
また,上記連続成長工程及び第1連続成長工程において,上記第n成長面は,第(n−1)成長面より80°〜90°傾き,且つ{0001}面より80〜90°傾いた面であることが好ましい。
この場合には,<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルを持つ刃状転位をより効果的に減少させることができる。
【0028】
また,上記各成長面の上にSiC単結晶を成長させる前には,各成長面の表面の付着物や加工変質層を除去しておくことが好ましい。
この場合には,上記付着物や加工変質層に起因する各成長面から各成長結晶に継承される転位を防ぐことができる。なお,上記付着物や加工変質層を除去する方法としては,例えば研磨,化学洗浄,Reactive Ion Etching(RIE),犠牲酸化等がある。
【0029】
また,上記各種結晶上でのSiC単結晶の成長には昇華再析出法を用いることが好ましい(請求項3)。
この場合には,充分な成長高さが得られるため,大口径のエピタキシャル膜付きSiCウエハを作製することができる。
なお,本発明において使用できるSiC単結晶成長手法は昇華再析出法に限らず,十分な成長高さのバルク状単結晶を成長できる手法であれば全て適用できる。例えば,Mater. Sci. Eng. B Vol.61−62(1999)113−120に示されているような2000℃を越える温度域での化学気相堆積法も用いることができる。
【0030】
また,上記各種結晶の厚みは1mm以上であることが好ましい(請求項4)。この場合には,上記種結晶と種結晶を固定している物体との熱膨張差による応力によって成長結晶に生じる転位及び積層欠陥を防止することができる。即ち,上記種結晶の厚みを充分大きくすることにより,上記応力が種結晶を構成する格子を歪めて,成長結晶に転位及び積層欠陥が発生することを防止することができる。また,特に,上記種結晶の成長面の面積Aが500mm2を越える場合には,上記種結晶の厚みを1mmよりさらに大きくする必要がある。このときの必要最低限の厚みをtseedとすると,tseed=A1/2×2/πの式が与えられる。
なお,上記種結晶及び成長結晶とは,本発明におけるすべての種結晶及びすべての成長結晶を含む概念である。
【0031】
また,上記成膜面は,{0001}面からオフセット角度0.5°〜20°の面,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面とすることが好ましい(請求項5)。
この場合には,上記エピタキシャル膜中へのマイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位の発生をほとんど抑制することができる。なお,{0001}面からオフセット角度0.5°未満の面を成膜面とした場合には,上記エピタキシャル膜の成膜が困難になるおそれがある。
【0032】
また,上記エピタキシャル膜の成膜には,CVD法,PVE法,又はLPE法を用いることが好ましい(請求項6)。ここで上記CVD法は,Chemical Vapor Deposition(化学気相堆積法)法,上記PVE法は,Physical Vapor Epitaxy(昇華エピタキシー)法,上記LPE法は,Liquid Phase Epitaxy(液相エピタキシー)法をいう。
この場合には,デバイス作製上重要な設計パラメータである膜厚及び膜中の不純物濃度を容易に制御することができる。
【0033】
また,上記エピタキシャル膜に1×1013〜1×1020/cm3の不純物を含有させることが好ましい(請求項7)。
この場合には,上記不純物がドナーやアクセプタ等の役割を果たし,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを半導体デバイス等として用いることができる。上記不純物の含有量が1×1013/cm3未満の場合には,上記不純物は充分な量のキャリアを供給することができず,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハのデバイス特性が低下するおそれがある。一方,1×1020/cm3を越える場合には,上記不純物が凝集し,その結果上記エピタキシャル膜中に転位や積層欠陥が発生するおそれがある。
【0034】
また,上記不純物はその構成元素として,窒素,ホウ素又はアルミニウムの1種以上を含有することが好ましい(請求項8)。
この場合には,上記エピタキシャル膜をp又はn型半導体とすることができる。そのため,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハをダイオード等の半導体デバイスとして利用することができる。
【0035】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本例のエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法は,図1〜図3に示すごとく,SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製し,該SiCウエハ上にエピタキシャル膜を成膜してエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法である。そして,この製造方法は,N回(Nは,N≧2の自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表す。
【0036】
まず,図1に示すごとく,n=1である第1成長工程においては,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面を第1成長面15として露出させた第1種結晶1を用いて,上記第1成長面15上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶10を作製する(第1成長工程)。
【0037】
次に,図1及び図2に示すごとく,n=2である第2成長工程としての連続成長工程においては,第1成長面15より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第2成長面25とした第2種結晶2を第1成長結晶10より作製し,該第2種結晶2の上記第2成長面25上にSiC単結晶を成長させて第2成長結晶20を作製する(連続成長工程)。
【0038】
そして,図2及び図3に示すごとく,上記成膜工程においては,n=2である第2成長結晶20から成膜面35を露出させたSiCウエハ3を作製し,該SiCウエハ3の上記成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜する(成膜工程)。
【0039】
以下本例につき詳細に説明する。
本例では,図1〜5に示すごとく,SiC単結晶よりなる種結晶上に昇華再析出法によりSiC単結晶を成長させて,このSiC単結晶からSiCウエハを作製し,このSiCウエハ上にエピタキシャル膜を成膜する。なお,本例においては,上記のごとくN=2,即ち2回の成長工程を含む例を示す。
【0040】
まず,昇華再析出法により成長したSiC単結晶を準備した。図4に示すごとく,SiC単結晶は,主要な面方位として{0001}面と,{0001}面に垂直な{1−100}面及び{11−20}面とを有している。また,{0001}面に垂直な方向が<0001>方向,{1−100}面に垂直な方向が<1−100>方向,{11−20}面に垂直な方向が<11−20>である。
図1に示すごとく,上記SiC単結晶の{1−100}面が第1成長面15として露出するように上記SiC単結晶を切断し,さらにこの第1成長面15を加工,研磨した。また,第1成長面15の表面を化学洗浄して付着物を除去し,RIE(Reactive Ion Etching),犠牲酸化により,切断・研磨に伴う加工変質層を除去し,これを第1種結晶1とした。なお,第1種結晶1の厚みは3mmである。
【0041】
次に,図5に示すごとく,上記第1種結晶1とSiC原料粉末82とをこれらが対向するように坩堝8内に配置した。このとき,上記第1種結晶1は坩堝8の蓋体85の内側面に接着剤を介して固定した。そして上記坩堝8を減圧不活性雰囲気中で2100〜2400℃に加熱した。このとき,SiC原料粉末82側の温度を第1種結晶1側の温度より20〜200℃高く設定した。これにより,坩堝8内のSiC原料粉末82が加熱により昇華し,該SiC原料粉末82より低温の第1種結晶1上に堆積し,第1成長結晶10を得た(第1成長工程)。
【0042】
次に,図1及び図2に示すごとく,上記第1成長結晶10から,第1成長面15より90°傾き,且つ{0001}面より90°傾いた面,即ち{11−20}面を第2成長面25とする第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして作製した。そして,この第2種結晶2を第1種結晶1と同様にして成長させ,第2成長結晶20を得た(連続成長工程)。
【0043】
次に,図2及び図3に示すごとく,上記第2成長結晶20から,{0001}面からオフセット角度xの面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を切り出した。このSiCウエハ3の成膜面35に,上記第1種結晶の作製時と同様に加工,研磨,化学洗浄,RIE,犠牲酸化等の表面処理を施した。
そして,CVD法により上記SiCウエハ3の成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜し,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した(成膜工程)。具体的には,原料ガスとしてSiH4ガス及びC38ガスを5ml/minにて,またキャリアガスとしてH2ガスを10l/minにてそれぞれ反応管に導入し,SiCウエハ3を保持しているサセプタの温度を1550℃として成膜を行った。なお,本例では,上記オフセット角度xは,5°とし,雰囲気圧は30kPaとした。
【0044】
次に,上記のようにして作製したエピタキシャル膜付きSiCウエハ4のエピタキシャル膜30中に含まれる欠陥密度を調べるために,上記エピタキシャル膜にKOHエッチングを施し,これによって生じたエッチピット数を測定した。
その結果,転位に対応するエッチピットの数は,102〜103/cm2であり,非常に少なかった。
【0045】
以下,本例の作用効果につき説明する。
本例の第1成長工程においては,上記{1−100}面を第1成長面15としている。
そのため,上記第1成長結晶10は第1成長面15と直交する方向に成長し,これはいわゆるa面成長に相当する。それ故,上記第1成長結晶10中には上記マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。しかし,第1種結晶中には,マイクロパイプ欠陥,螺旋転位,刃状転位,及びそれらの複合転位などの欠陥が存在する。そのため,上記第1成長結晶10中には,<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルをもつ刃状転位が上記第1成長面の表面から継承されて存在する。このとき上記刃状転位は,第1成長結晶の成長方向に平行な方向に伸びるように存在する。
【0046】
上記連続成長工程においては,第1成長面15より90°傾き,且つ{0001}面より90°傾いた面,即ち{11−20}面を第2成長面25とする第2種結晶2を作製している。
そのため,上記第1成長結晶10に含まれる刃状転位は,上記第2種結晶2の表面にはほとんど露出されない。それ故,第2成長面25上にSiC単結晶を成長させても,第2成長結晶20中には第2種結晶2から継承される刃状転位はほとんど除外される。また,上記連続成長工程において,上記第2種結晶2は略a面成長の方向に成長する。そのため,上記第2成長結晶20中には,マイクロパイプ欠陥及び螺旋転位は発生しない。
【0047】
上記成膜工程においては,上記第2成長結晶20の{0001}面からオフセット角度5°の面を露出させたSiCウエハ3を作製している。そのため,上記SiCウエハ3の成膜面35には,<0001>方向に平行及び直交するバーガースベクトルをもつ刃状転位はほとんど存在しない。それ故,上記エピタキシャル膜30には,<0001>方向に直交するバーガースベクトルをもつ転位である刃状転位は発生しない。また,<0001>方向に平行な方向のバーガースベクトルをもつ欠陥であるマイクロパイプ欠陥及び螺旋転位も発生しない。
【0048】
また,本例においては,上記第1成長面15及び第2成長面25上にSiC単結晶を成長させる前,又は成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜する前に,付着物や加工変質層を取り除いている。そのため,上記付着物や加工変質層に起因し各成長面15,25又は成膜面35から各成長結晶10,20又はエピタキシャル膜35に継承される転位を防ぐことができる。
【0049】
また,上記各種結晶の厚みを1mm以上にしている。
そのため,上記各種結晶1,2と種結晶が接触している蓋体65との熱膨張差による応力によって成長結晶10,20に生じる転位及び積層欠陥を防止することができる。
【0050】
このように,本例によれば,SiCウエハ及びエピタキシャル膜中に欠陥及び転位をほとんど含有しないエピタキシャル膜付きSiCウエハ及びその製造方法を提供することができる。
【0051】
また,本例においてはN=2として,上記連続成長工程を1回だけ行っているが,複数回繰り返して行ってもよい。
即ち,本例の連続成長工程においては,{11−20}面を第2成長面25として第2成長結晶20を得た。この第2成長結晶20から,上記第2成長面25より90°傾き,且つ{0001}面より90°傾いた面,即ち{1−100}面を第3成長工程における第3成長面とし,この上にSiC単結晶を成長させて,第3成長結晶を作製する。さらに,上記第3成長結晶から,第4成長工程,第5成長工程,・・・,第(N−1)工程というように,上記連続成長工程を繰り返して行うことができる。
この場合には,上記連続成長工程の回数を増やす毎に,ここで得られる成長結晶のいわゆる転位密度を指数関数的に減少させることができる。
【0052】
(実施例2)
本例のエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法は,図3,図6〜図8に示すごとく,SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製して該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜しエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法である。そして,この製造方法は,(N+α)回(Nは,N≧2の自然数であり,αは自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりN+αで終わる序数)として表す。
【0053】
まず,図6に示すごとく,n=1である第1成長工程においては実施例1と同様にして,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面を第1成長面15として露出させた第1種結晶1を用いて,上記第1成長面15上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶10を作製する(第1成長工程)。
【0054】
次に,図6及び図7に示すごとく,n=2である第2成長工程としての第1連続成長工程においては実施例1と同様にして,第1成長面15より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第2成長面55とした第2種結晶5を第1成長結晶10より作製し,該第2種結晶5の上記第2成長面55上にSiC単結晶を成長させて第2成長結晶50を作製する(第1連続成長工程)。
【0055】
次に,図7及び図8に示すごとく,n=3である第3成長工程としての第2連続成長工程においては,第2成長面55より0〜45°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第3成長面65とした第3種結晶6を第2成長結晶50より作製し,該第3種結晶6の上記第3成長面65上にSiC単結晶を成長させて第3成長結晶60を作製する(第2連続成長工程)。
そして,図3及び図7に示すごとく,上記成膜工程においては,n=3である第3成長結晶60から成膜面35を露出させたSiCウエハ3を作製し,該SiCウエハ3の上記成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜する(成膜工程)。
【0056】
以下本例につき詳細に説明する。
本例では,図3及び図6〜図8に示すごとく,SiC単結晶よりなる種結晶上に昇華再析出法によりSiC単結晶を成長させて,このSiC単結晶からSiCウエハを作製し,このSiCウエハ上にエピタキシャル膜を成膜する。なお,本例においては,上記のごとくN=2及びα=1の合計3回の成長工程を含む例を示す。
【0057】
まず,昇華再析出法により成長したSiCを準備した。このSiC単結晶の{1−100}面が第1成長面15として露出するように上記SiC単結晶を切断し,実施例1と同様にして,厚み3mmの第1種結晶1を作製した。さらに,実施例1と同様にして,上記SiC原料粉末をこの第1種結晶1上に堆積させ,第1成長結晶10を得た(第1成長工程)。
【0058】
次に,図6及び図7に示すごとく,上記第1成長結晶10から第1成長面15より90°傾き,且つ{0001}面より90°傾いた面,即ち{11−20}面を第2成長面55とする第2種結晶2を実施例1と同様にして作製した。そして,さらにこの第2種結晶5を第1種結晶1と同様にして成長させ,第2成長結晶50を得た(第1連続成長工程)。ここで,上記第2成長結晶50は,上記第1成長結晶の約半分の高さまで成長させた。
【0059】
次に,図7及び図8に示すごとく,上記第2成長結晶50から第2成長面55より角度y傾き,且つ{0001}面より90°傾いた面を第3成長面65とする第3種結晶6を上記第1及び第2種結晶と同様にして作製した。そして,さらにこの第3種結晶6を上記第1及び第2種結晶と同様にして成長させ,第3成長結晶60を得た(第2連続成長工程)。なお,上記角度yは,0〜45°の範囲で任意に決定することができ,本例では0°とした。
【0060】
次に,図3及び図8に示すごとく,上記第3成長結晶60から,{0001}面からオフセット角度zの面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を切り出した。そして,実施例1と同様にして,このSiCウエハ3の成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜し,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した(成膜工程)。なお,本例では上記オフセット角度zは,5°とした。
【0061】
上記のようにして作製したエピタキシャル膜付きSiCウエハ4のエピタキシャル膜30中に含まれる欠陥密度を,実施例1と同様にして調べるたところ,転位に対応するエッチピットの数は,実施例1で作製したエピタキシャル膜付きSiCウエハ4と同程度であり,非常に少なかった。
そして,本例の製造方法によっても,同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を得ることができた。
【0062】
また,本例の第2連続成長工程においては,第2成長面55より角度y=0°,即ち第2成長面55と平行で,且つ{0001}面より90°傾いた面を第3成長面65としている。そのため,上記第2成長工程においては,第2成長結晶50を高く成長させる必要がない。それ故,第3種結晶6を短時間及び低コストにて作製することができ,最終的に上記エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製するための時間及びコストを削減することができる。
【0063】
また,本例においてはN=2,α=1として,上記第1及び第2連続成長工程を1回ずつ行っているが,これらは複数回繰り返して行ってもよい。上記第1連続成長工程を繰り返し行うと,実施例1の連続成長工程と同様に,得られる成長結晶のいわゆる転位密度を指数関数的に減少させることができる。ここで,転位密度を充分に低減させておくと,第2連続成長工程においては角度yという小さい角度でも,転位密度の非常に少ない種結晶を得ることができる。
【0064】
(実施例3)
本例は,上記成膜面として{1−100}面を用いて上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に第2成長結晶20を作製し,該第2成長結晶20から,{1−100}面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を切り出した。このSiCウエハ3の上記成膜面35上に,実施例1と同様に,表面処理を施しCVD法によりエピタキシャル膜30を成膜して,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を得ることができた。
【0065】
(実施例4)
本例は,上記成膜面として{11−20}面を用いて上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に第2成長結晶20を作製し,該第2成長結晶20から,{11−20}面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を切り出した。このSiCウエハ3の上記成膜面35上に,実施例1と同様に,表面処理を施しCVD法によりエピタキシャル膜30を成膜して,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を得ることができた。
【0066】
(実施例5)
本例は,PVE法により上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に,{0001}面からオフセット角度5°の面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を作製し,該成膜面35に表面処理を施した。
そして,PVE法により上記SiCウエハ3の成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜し,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。具体的には,TaCコートを施した黒鉛坩堝中に上記SiCウエハ3と高純度の多結晶SiC板を対峙して配置し,減圧不活性雰囲気(Ar,雰囲気圧100Pa)中にて坩堝を約1800℃に昇温した。このとき,上記SiCウエハ3の温度が多結晶SiC板に比べて低くなるように温度勾配(5〜10℃/cm)を設定した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハを得ることができた。
【0067】
(実施例6)
本例は,LPE法により上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に,{0001}面からオフセット角度5°の面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を作製し,該成膜面35に表面処理を施した。
そして,LPE法により,上記SiCウエハ3の成膜面35上にエピタキシャル膜30を成膜し,エピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。具体的には,不純物が1ppm未満という高純度の黒鉛坩堝の底部に上記SiCウエハ3を固定し,坩堝中に不純物が10ppb未満という高純度のSi粉末を充填し,高圧不活性雰囲気(Ar,雰囲気圧1.0MPa)中にて1800℃で加熱した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハを得ることができた。
【0068】
(実施例7)
本例は,上記エピタキシャル膜中に不純物として窒素を含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に,{0001}面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を作製し,該成膜面35に表面処理を施した。
次に,上記成膜工程において,実施例1と同様にしてCVD法によりエピタキシャル膜を成膜するときに,N2ガスを流量0.5ml/min(0.5sccm)にて導入した。このようにして,エピタキシャル膜30中に不純物として窒素を含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。尚,このときエピタキシャル膜30中に含まれる不純物の濃度は,1.5×1016〜1×1018/cm3であった。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハを得ることができた。
【0069】
(実施例8)
本例は,上記エピタキシャル膜中に不純物としてアルミニウムを含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に,{0001}面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を作製し,該成膜面35に表面処理を施した。
次に,上記成膜工程において,実施例1と同様にしてCVD法によりエピタキシャル膜30を成膜するときに,(CH33Alガスを流量0.01ml/min(0.01sccm)にて導入し,エピタキシャル膜30中に不純物としてアルミニウムを含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハを得ることができた。尚,このときエピタキシャル膜30中に含まれる不純物濃度は,1×1018/cm3〜2×1018/cm3であった。
【0070】
(実施例9)
本例は,上記エピタキシャル膜中に不純物としてホウ素を含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様に,{0001}面を成膜面35として露出させたSiCウエハ3を作製し,該成膜面35に表面処理を施した。
次に,上記成膜工程において,実施例1と同様にしてCVD法によりエピタキシャル膜30を成膜するときに,B26ガスを流量0.001ml/min(0.001sccm)にて導入し,エピタキシャル膜30中に不純物としてホウ素を含有するエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。
この場合にも,実施例1と同様に欠陥密度が非常に小さいエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を得ることができた。尚,このときエピタキシャル膜30中に含まれる不純物の濃度は,2×1018〜3×1018/cm3であった。
【0071】
(実施例10)
本例は,実施例1において得られたエピタキシャル膜付きSiCウエハ上にショットキーバリアダイオードを作製した例を示す。
まず,実施例1と同様にしてエピタキシャル膜付きSiCウエハ4を作製した。このSiCウエハ4上に,ショットキーバリアダイオードを作製した。具体的には,オーミック電極としてNiを蒸着し,真空雰囲気900℃にて熱処理した後に,ショットキー電極を蒸着するという手順で行った。
次に,このショットキーバリアダイオードの逆方向及び順方向の電流−電圧特性を測定した。
その結果を図9及び図10に示す。尚,図9は,逆方向の電流−電圧特性を示し,図10は順方向のものを示す。
【0072】
図9より知られるごとく,上記ショットキーバリアダイオードにおいて,逆方向リーク電流IRは,10-7A/cm-2以下(VR<200V)であり,非常に少ない。
また,図10より知られるごとく,順方向電流IFの立ち上がりは非常に急峻であり,即ちオン抵抗が非常に小さい。
このように,上記エピタキシャル膜付きSiCウエハを用いると高性能な電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる,第1成長工程を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる,連続成長工程を示す説明図。
【図3】実施例1及び実施例2にかかる,成膜工程を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる,SiC単結晶の主要な面方位を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる,昇華再結晶法によるSiC単結晶の成長方法を示す説明図。
【図6】実施例2にかかる,第1成長工程を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる,第1連続成長工程を示す説明図。
【図8】実施例2にかかる,第2連続成長工程を示す説明図。
【図9】実施例10にかかる,エピタキシャル膜付きSiCウエハを用いた電子デバイスにおける逆方向の電流−電圧特性を示す説明図。
【図10】実施例10にかかる,エピタキシャル膜付きSiCウエハを用いた電子デバイスにおける順方向の電流−電圧特性を示す説明図。
【符号の説明】
1...第1種結晶,
15...第1成長面,
10...第1成長結晶,
2...第2種結晶(連続成長工程),
25...第2成長面(連続成長工程),
20...第2成長結晶(連続成長工程),
3...SiCウエハ,
35...成膜面,
30...エピタキシャル膜,
4...エピタキシャル膜付きSiCウエハ,
5...第2種結晶(第1連続成長工程),
55...第2成長面(第1連続成長工程),
50...第2成長結晶(第1連続成長工程),
6...第3種結晶(第2連続成長工程),
65...第3成長面(第2連続成長工程),
60...第3成長結晶(第2連続成長工程),

Claims (8)

  1. SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製して該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜しエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法において,該製造方法は,N回(Nは,N≧2の自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりNで終わる序数)として表した場合,
    n=1である第1成長工程においては,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,または{11−20}面からオフッセット角度20°以下の面を第1成長面として露出させた第1種結晶を用いて,上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
    n=2,3,...,N回目である連続成長工程においては,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
    上記成膜工程においては,n=Nである第N成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  2. SiC単結晶よりなる種結晶上にSiC単結晶を成長させてバルク状のSiC単結晶を製造し,該SiC単結晶からSiCウエハを作製して該SiCウエハの成膜面上にエピタキシャル膜を成膜しエピタキシャル膜付きSiCウエハを製造する方法において,該製造方法は,(N+α)回(Nは,N≧2の自然数であり,αは自然数)の成長工程と,該成長工程後にエピタキシャル膜を成膜する成膜工程とを含み,上記成長工程における各成長工程を第n成長工程(nは自然数であって1から始まりN+αで終わる序数)として表した場合,
    n=1である第1成長工程においては,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,または{11−20}面からオフッセット角度20°以下の面を第1成長面として露出させた第1種結晶を用いて,上記第1成長面上にSiC単結晶を成長させ第1成長結晶を作製し,
    n=2,3,...,N回目である第1連続成長工程においては,第(n−1)成長面より45〜90°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
    n=N+1,N+2,...,N+α回目である第2連続成長工程においては,第(n−1)成長面より0〜45°傾き,且つ{0001}面より60〜90°傾いた面を第n成長面とした第n種結晶を第(n−1)成長結晶より作製し,該第n種結晶の上記第n成長面上にSiC単結晶を成長させて第n成長結晶を作製し,
    上記成膜工程においては,n=N+αである第(N+α)成長結晶から成膜面を露出させたSiCウエハを作製し,該SiCウエハの上記成膜面上にエピタキシャル膜を成膜することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  3. 請求項1または2において,上記各種結晶上でのSiC単結晶の成長には昇華再析出法を用いることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において,上記各種結晶の厚みは1mm以上であることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記成膜面は,{0001}面からオフセット角度0.5°〜20°の面,{1−100}面からオフセット角度20°以下の面,又は{11−20}面からオフセット角度20°以下の面であることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において,上記エピタキシャル膜の成膜には,CVD法,PVE法,又はLPE法を用いることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において,上記エピタキシャル膜に1×1013〜1×1020/cmの不純物を含有させることを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
  8. 請求項7において,上記不純物はその構成元素として,窒素,ホウ素又はアルミニウムを1種以上含有することを特徴とするエピタキシャル膜付きSiCウエハの製造方法。
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