JP3734613B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速回転するロータにより排気を行なうようにしたターボ分子ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来のこの種のターボ分子ポンプの構造例を示す断面図である。図示するように、ターボ分子ポンプはケーシング1の内部にロータRとステータSにより構成される翼排気部L1及び溝排気部L2からなる排気部を具備し、該溝排気部L2の排気側がケーシング1の排気口20に連通している。このような構造のターボ分子ポンプを半導体製造装置等に使用しプロセスガスを流すと以下のような問題が発生する。
【0003】
昇華性反応生成物の付着によりロータRとステータSの隙間が閉塞され、回転していたロータRを拘束し停止させたり、翼排気部L1及び溝排気部L2での圧縮が終了した後の排気口20までの通路(溝排気部L2の排気側と排気口20を結ぶ通路)に昇華性反応生成物が付着堆積し該通路を閉塞させポンプ内の背圧を上昇させ、駆動モータ6を過負荷停止させる。
【0004】
昇華性反応生成物は温度とその分圧の関係で気相又は固相になり、より温度の低い環境又はより分圧の高い環境、即ち絶対圧力の高い環境で固形化しやすくなる。上記構造のターボ分子ポンプにおいては翼排気部L1、溝排気部L2、排気口20と行くに従って順次昇華性反応生成物が付着しやすくなる。そこで従来は、ケーシング1の外部や排気口20にヒータ15やヒータ16を取付け、ポンプ全体を昇温していた。なお、ターボ分子ポンプ全体の説明は後に詳述するのでここでは省略する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記昇華性反応生成物に対して、実際に昇温が必要な部分は翼排気部L1及び溝排気部L2の排気側、翼排気部L1及び溝排気部L2で圧縮が終了した後のポンプの排気口20までの通路である。従来は上記のようにケーシング1の外部や排気口20にヒータ15やヒータ16を取付けポンプ全体を昇温していたため大きな熱量が必要となり、結果として該通路部の昇温には限界があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ポンプケーシング内にロータとステータにより構成される排気部で圧縮終了した後のポンプ排気口までの通路を小さい熱量で確実に昇温できるターボ分子ポンプを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ポンプケーシング内部にロータとステータにより構成される排気部と、該排気部の排気側に連通しロータの半径方向に開口する排気口を具備するターボ分子ポンプにおいて、排気口をポンプケーシングとは別の部材で構成すると共に、該部材を直円筒状で中間部にフランジが形成され、その先端がポンプケーシング内の排気部の排気側近傍まで延伸し、該フランジのみで前記ポンプケーシング又はステータに接触を介して取り付け、且つ該フランジ部に前記直円筒状部材の軸中心方向に対して鉛直方向に挿入して設けたヒータで加熱昇温するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、ロータとステータにより構成される排気部は翼排気部及び溝排気部からなることを特徴とする
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のターボ分子ポンプの構造を示す断面図である。本ターボ分子ポンプはロータ(回転部)Rとステータ(固定部)Sにより構成されている。ステータ(固定部)Sはポンプケーシング1と基部2と固定筒状部3が一体となって主に構成され、ロータRは主軸4と回転筒状部5とから主に構成される。ポンプケーシング1の内部にロータ(回転部)Rとステータ(固定部)Sにより翼排気部L1及び溝排気部L2が構成されている。
【0010】
主軸4と固定筒状部3の間に駆動モータ6と、その上下に上部ラジアル軸受(磁気軸受)7及び下部ラジアル軸受(磁気軸受)8が設けられ、そして主軸4の下部にはターゲットディスク9とステータS側に設けられた上下の電磁石10a、10bを有するアキシャル軸受11が配置されている。このような構成によってロータRが5軸の能動制御を受けながら高速で回転するようになっている。
【0011】
回転筒状部5の上部外周部には、回転翼12が一体に設けられて羽根車を構成し、ポンプケーシング1の内面には、回転翼12と交互に配置された固定翼13が設けられている。該固定翼13はその縁部を上下の固定翼スペーサ14により上下から押さえられ、ねじ溝部スペーサ19の上端とポンプケーシング1の上部内面に形成された段部1aの間に挟持し固定されている。高速回転する回転翼12と静止している固定翼13との相互作用によって排気を行なう前記翼排気部L1を構成している。
【0012】
更に、翼排気部L1の下方に溝排気部L2が設けられている。即ち、回転筒状部5には、外周面にねじ溝18aが形成されたねじ部18が固定筒状部3を囲むように設けられ、一方、ステータSにはこのねじ部18の外周を囲むねじ溝部スペーサ19が配置されている。溝排気部L2は高速回転するねじ部18のねじ溝18aのドラッグ作用によって排気を行なう。
【0013】
排気口20を構成する排気口構成部材21は円筒状で、図示するようにその先端部が溝排気部L2の排気側近傍まで延伸する寸法を有し、且つ中間部にフランジ21aが形成された構造である。排気口20を構成する排気口構成部材21はケーシング1とは別部品として構成され、ケーシング1に形成された排気口挿入孔に挿入し固定している。また、排気口構成部材21は、フランジ21a部のみでケーシング又は固定円筒部と接触を介して取り付けられ、フランジ21a部に設けられたヒータ17で加熱昇温されるようになっている。
【0014】
排気口構成部材21は小さく、熱容量も小さいので、ヒータ17の出力熱容量が小さくても該排気口構成部材21を加熱し昇温させることができる。これにより、溝排気部L2の排気側からのガスが実際に外部に排気されるまでの通路が排気口20を構成する部材で構成され、且つヒータ17で加熱昇温されるから、該通路に昇華性反応生成物が付着しないか或いは付着しにくくなる。
【0015】
なお、上記実施の形態例では、翼排気部L1と溝排気部L2を有する広域型のターボ分子ポンプを例に説明したが、本発明はこのような広域型のターボ分子ポンプに限定されるものではなく、要はポンプケーシング内部にロータとステータにより排気部が構成されたターボ分子ポンプに適用できることは当然である。
【0017】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、排気口をポンプケーシングとは別の部材で構成すると共に、該部材を直円筒状で中間部にフランジが形成され、その先端がポンプケーシング内の排気部の排気側近傍まで延伸し、該フランジのみで前記ポンプケーシング又はステータに接触を介して取り付け、且つ該フランジ部に前記直円筒状部材の軸中心方向に対して鉛直方向に挿入して設けたヒータで加熱昇温するようにしたので、下記のような優れた効果が得られる。
【0018】
(1)ロータとステータにより構成される排気部で圧縮終了した後のポンプの排気口までの通路を簡単な構成で小さい熱量で確実に昇温できるようになり、この通路内面に昇華性反応生成物が付着堆積し該通路を閉塞させポンプ内の背圧を上昇させることがない。従って駆動モータが過負荷停止することがなくなる。
【0019】
(2)また、排気口構成部材直円筒状で中間部にフランジが形成された構成であるから、構成が簡単で、製造が簡単になる。また、ヒータはフランジ部に直円筒状部材の軸中心方向に対して鉛直方向に挿入して設けるので、排気口構成部材の外周にヒータを設ける場合に比較し、排気口構成部材の長さ寸法を小さくでき、該排気口構成部材がポンプケーシングからはみ出る寸法が小さくなるから、ターボ分子ポンプの設置スペースを小さくできる。また、排気口構成部材の長さ寸法が小さくなることからその熱容量が小さくなると共に、該排気口構成部材をヒータでフランジの内部から加熱昇温するので、排気口構成部材の外周にヒータを設けて外周から加熱昇温させる場合に比較し、容量の小さいヒータで効率よく排気口構成部材を加熱昇温させることができ、昇温のための消費エネルギーが少ないばかりではなく、ターボ分子ポンプが用いられる処理装置の全体の真空を長時間維持し、処理途中の製品への損害をより一層低減させることができるターボ分子ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のターボ分子ポンプの構造を示す断面図である。
【図2】従来のターボ分子ポンプの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ポンプケーシング
2 基部
3 固定筒状部
4 主軸
5 回転筒状部
6 駆動モータ
7 上部ラジアル軸受
8 下部ラジアル軸受
9 ターゲットディスク
10a,b 電磁石
11 アキシャル軸受
12 回転翼
13 固定翼
14 固定翼スペーサ
15 ヒータ
16 ヒータ
17 ヒータ
18 ねじ部
19 ねじ溝部スペーサ
20 排気口
21 排気口構成部材
R ロータ
S ステータ
1 翼排気部
2 溝排気部

Claims (2)

  1. ポンプケーシング内部にロータとステータにより構成される排気部と、該排気部の排気側に連通し前記ロータの半径方向に開口する排気口を具備するターボ分子ポンプにおいて、
    前記排気口を前記ポンプケーシングとは別の部材で構成すると共に、該部材を直円筒状で中間部にフランジが形成され、その先端がポンプケーシング内の排気部の排気側近傍まで延伸し、該フランジのみで前記ポンプケーシング又はステータに接触を介して取り付け、且つ該フランジ部に前記直円筒状部材の軸中心方向に対して鉛直方向に挿入して設けたヒータで加熱昇温するようにしたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
  2. 前記ロータとステータにより構成される排気部は翼排気部及び溝排気部からなることを特徴とする請求項1に記載のターボ分子ポンプ。
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