JPH10196586A - ターボ真空ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ロータとステータの細隙部に生成物が固着した
場合でも、小さい起動トルクで、ポンプの再起動を可能
とするターボ真空ポンプを提供する。 【解決手段】ロータ１に設けられた遠心圧縮ポンプ段4a
は吸気口6側に、円周流圧縮ポンプ段4bは排気口12側に
配置されている。そして、円周流圧縮ポンプ段4bは、該
円周流圧縮ポンプ段4bからステータ2の複数段の気体流
路内に突出した複数段の円板16の各両面に羽根部15を形
成し、かつ羽根部15の内径を円周流圧縮ポンプ段4bのボ
ス径とほぼ等しく構成している。これにより、ロータ1
とステータ2の細隙部の対向面積が最小となり、生成物1
4が固着する固着面積を減らし、低トルクでロータ回転
の再起動を可能としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、排気口の圧力が大
気圧であるターボ形真空ポンプに係り、特に半導体や食
品、薬品等の製造装置に用いられ、清浄な真空を作り出
すのに好適なポンプ構成に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種の従来技術として、特開平8-8629
8号公報記載のように、ドライターボ真空ポンプが提案
されている。この公知例のポンプの構造を、図１４に示
す。図１４に示すように、シャフト3の中間部及び下端
部を転がり軸受7a,7bで支承し、その軸受間に高周波モ
ータロータ8aが圧入されている。

【０００３】このシャフト3の上部側に、多段の円周流
圧縮ポンプ段4bと遠心圧縮ポンプ段4aのロータ1が圧入
されている。このロータ1に対向してステータ2が配置さ
れ、ステータ2の上部にはポンプの吸気口6が形成された
吸込みケーシング5が取り付けられている。

【０００４】ステータ2の外周部に、ポンプ作用によっ
て生じた熱を取り去るための冷却ジャケット9が形成さ
れている。一方、モータステータ8bはモータケーシング
10に保持されている。モータケーシング10には、モータ
の冷却ジャケット11が形成されている。

【０００５】次に、特開平8-86298号公報記載のポンプ
の動作を説明する。図示しない制御装置の指令に基づい
てポンプを高速駆動すると、吸気口6から吸入された気
体は、遠心圧縮ポンプ段4aで分子流圧力域から中間流圧
力域での圧縮及び円周流圧縮ポンプ段4bで粘性流圧力域
での圧縮をされ、排気口12から大気へ排気される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
願平6-222969号公報に記載のドライターボ真空ポンプ
は、主として半導体製造装置の排気系に使用される。生
成物を発生するプロセスに対しては、生成物の凝縮堆積
を防止するために、ポンプ部分を高温に保っているが、
それでも圧力が高くなって気体の濃度が濃くなる円周流
圧縮ポンプ段には生成物が発生してしまうことがある。

【０００７】高速運転中は、ロータの慣性力や遠心力で
生成物が飛ばされて運転に支障は殆どないが、ポンプを
一旦停止し放置すると、ロータとステータ間の細隙に入
った生成物によってロータとステータが固着し、再起動
不可能になる場合があった。

【０００８】特に図１５に示すように、円周流圧縮ポン
プ段4bのロータ1とステータ2の両方とも平面からなる細
隙部に生成物14が生じた場合には、生成物14の固着面積
が広くなるので固着力が強く、起動不可能になるトラブ
ルが発生して製造ラインを止めてしまう恐れがあった。

【０００９】本発明の目的は、ロータとステータの細隙
部に生成物が固着した場合でも、小さい起動トルクで、
ポンプの再起動を可能とするターボ真空ポンプを提供す
ることにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、吸気口と排気口を有するハウジングと、
該ハウジング内に固定されたステータと、該ステータに
対向し第１の圧縮ポンプ段と第２の圧縮ポンプ段が設け
られたロータとを有し、前記ロータが回転することによ
り、前記吸気口から吸込まれた気体を前記排気口から排
気するターボ真空ポンプにおいて、前記第１の圧縮ポン
プ段は前記吸気口側に、前記第２の圧縮ポンプ段は前記
排気口側に設けられ、前記第２の圧縮ポンプ段は、該第
２の圧縮ポンプ段から前記ステータの複数段の気体流路
内に突出した複数段の円板の各両面に羽根部を形成し、
かつ前記羽根部の内径が前記第２の圧縮ポンプ段のボス
径とほぼ等しいことを特徴とする。

【００１１】また、本発明の他の特徴として、前記羽根
部の軸方向側及び径方向側の羽根端部を尖らせることに
ある。

【００１２】また、本発明の他の特徴として、前記ステ
ータは、前記第２の圧縮ポンプ段の段間シール部にラビ
リンスを設けることにある。

【００１３】また、本発明の他の特徴は、吸気口と排気
口を有するハウジングと、該ハウジング内に固定された
ステータと、該ステータに対向し第１の圧縮ポンプ段と
第２の圧縮ポンプ段が設けられたロータとを有し、前記
ロータが回転することにより、前記吸気口から吸込まれ
た気体を前記排気口から排気するターボ真空ポンプにお
いて、前記第１の圧縮ポンプ段は前記吸気口側に、前記
第２の圧縮ポンプ段は前記排気口側に設けられ、前記第
２の圧縮ポンプ段は、該第２の圧縮ポンプ段から前記ス
テータの複数段の気体流路内に突出した複数段の羽根部
を形成し、かつ前記ステータの段間壁は平板状とするこ
とにある。

【００１４】本発明によれば、ロータに設けられた第１
の圧縮ポンプ段は吸気口側に、第２の圧縮ポンプ段は排
気口側に配置されている。そして、第２の圧縮ポンプ段
は、該第２の圧縮ポンプ段からステータの複数段の気体
流路内に突出した複数段の円板の各両面に羽根部を形成
し、かつ羽根部の内径を第２の圧縮ポンプ段のボス径と
ほぼ等しく構成している。

【００１５】そして、羽根部の軸方向側及び径方向側の
羽根端部を尖らせている。また、ステータは、前記第２
の圧縮ポンプ段との段間シール部にラビリンスを設けて
いる、 また、第２の圧縮ポンプ段は、該第２の圧縮ポ
ンプ段からステータの複数段の気体流路内に突出した複
数段の羽根部を形成し、かつステータの段間壁を平板状
としている。

【００１６】これにより、ロータとステータの細隙部の
対向面積が最小となり、生成物が固着する固着面積を減
らし、低トルクでロータ回転の再起動が可能となる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例に係るタ
ーボ真空ポンプを、図を用いて説明する。図１は、本発
明の一実施例に係るターボ真空ポンプの構成断面を示
す。図１に示すように、上下方向に軸配置されたシャフ
ト3の中間部及び下端部を転がり軸受7a,7bで支承し、そ
の軸受間に高周波モータロータ8aが圧入されている。

【００１８】図２は、図１のＳ部の拡大詳細を示す。シ
ャフト3の上部側に、図２に示すように、ボス径を羽根
部内径とほぼ等しくし、1枚の円板16の両面に羽根部15
を設けて2段のポンプとした第２の圧縮ポンプ段である
多段の円周流圧縮ポンプ段4bと、オープンの後退羽根を
有する第１の圧縮ポンプ段である遠心圧縮ポンプ段4aの
ロータ1を圧入し、締結する。

【００１９】また、図３は図２をＴ矢印方向から見た図
であり、図４は図３のＰ−Ｐ矢視図である。図３、図４
に示すように、羽根部15は円板16の両面に円周方向に向
かって放射状に設けられている。

【００２０】このロータ1と同軸に隙間をもってステー
タ2が配置され、ステータ2の上部には、ポンプの吸気口
6が形成された吸込みケーシング5が機密性をもって取り
付けられている。ステータ2の外周部にポンプ作用によ
って生じた熱を取り去るための冷却ジャケット9が形成
されている。

【００２１】次に、このように構成された本実施例のタ
ーボ真空ポンプの動作について説明する。図示しない制
御装置によって、高周波モータロータ8a及び高周波モー
タステータ8bとからなるモータがシャフト3及びロータ1
を高速駆動すると、吸気口6から吸入された気体は、遠
心圧縮ポンプ段4aで分子流圧力域から中間流圧力域での
圧縮をされ、さらに円周流圧縮ポンプ段4bで粘性流圧力
域での圧縮をされ、排気口12から排気される。

【００２２】ポンプ作用による発熱で、ポンプ部は高温
となる。ポンプ運転中は、冷却ジャケット9で冷却され
るステータ2よりも直接冷却部のないロータ1の方が温度
が高くなる。

【００２３】また、ロータ1とステータ2の材質の線膨張
率は必ずしも同一ではないので、ロータ1とステータ2の
間の細隙も、ポンプ運転中と停止してポンプが常温に戻
った時では異なる。特に軸方向細隙部は、運転中よりも
常温停止時の方が、細隙が狭くなる部分が生じる。

【００２４】ポンプがポンプ内に生成物14を発生するプ
ロセスに使用され、運転中よりも常温停止時の方が狭く
なる細隙部において、相対的にロータ1よりも温度が低
いステータ2の細隙面に生成物14が付着してロータ1と殆
ど隙間のない状態で運転されていた場合には、ポンプが
停止し、長時間放置して常温に戻った場合には、ロータ
1とステータ2は生成物14によって固着される場合があ
る。

【００２５】しかし、多くの場合、生成物14の発生段は
気体が圧縮されて濃度が濃くなる排気口側の円周流圧縮
ポンプ段4bである。本実施例の円周流圧縮ポンプ段4bの
ロータ1の軸方向細隙の大部分は、羽根15がステータ2の
面と対向しており、生成物14によって固着する面積が平
面同士の場合と比較して1/10程度と小さいので、ロータ
1とステータ2の固着力も同じ比率で小さくなって、図示
しない制御装置に要求される起動トルクを大幅に軽減す
ることができる。

【００２６】図５、図６、図７は、図２の羽根15の形状
を示す。図５〜図６に示すように、ロータ1の羽根15の
軸方向側と径方向側の端部を尖らせると、生成物14によ
るロータ1とステータ2の固着面積は更に小さくなる。ま
た、図８に示すように、円周流圧縮ポンプ段4bの段間シ
ール部のステータ2の面にラビリンス13を設けると、運
転時と停止時の軸心のずれ等に起因する細隙狭まりによ
る生成物固着に対しても、ポンプ起動トルクを軽減する
ことができる。

【００２７】図９は、本発明の他の実施例に係わるター
ボ真空ポンプの構成断面を示す。図９に示すように、ポ
ンプ部の構成を、図１の遠心圧縮ポンプ段4aと円周流圧
縮ポンプ段4bから、ねじ圧縮ポンプ段4cと円周流圧縮ポ
ンプ段4bとしたものである。ロータにねじ溝17が切って
ある。ねじ溝17はステータ2側に切っても同じ作用であ
る。ねじ圧縮ポンプ段4cは、遠心圧縮ポンプ段4aと比較
して、圧縮比はとりにくいが構造が簡単であり、原価低
減に有効である。

【００２８】図１０は、本発明の更に他の実施例に係わ
るターボ真空ポンプの構成断面を示す。図１０に示すよ
うに、図１の円周流圧縮ポンプ段4bの部分を、円筒形の
ボスの上に軸方向に多段に並べて、羽根部15をステータ
2流路内に突出し、かつステータ2の段間壁18を平板状と
する構造にしたものである。

【００２９】図１１は、図１０のＵ部の拡大詳細を示
す。また、図１２は図１１をＶ矢印方向から見た図であ
り、図１３は図１２のＱ−Ｑ矢視図である。図１１〜図
１３に示すように、本実施例の円周流圧縮ポンプ段4dの
ロータ1の形状は、断面形状が回転方向に対し凹の三日
月状の羽根部15が、円周方向に密に並んで一つの段を形
成している。

【００３０】この形式の円周流圧縮ポンプ段は、高圧縮
比が得やすく、段数が少なくてすむ。この円周流圧縮ポ
ンプ段4dも、ロータ1とステータ2間の細隙部は、主とし
て羽根端とステータ平面の対向となり、生成物固着が発
生した場合でも、固着面積が小さくてすむ。

【００３１】

【発明の効果】本発明によれば、ロータとステータの細
隙部が平面同士で対向する面積を小さくすることができ
たので、停止時にロータとステータが生成物で固着した
場合のポンプ起動トルクが軽減でき、モータを駆動する
制御装置の容量を小さくすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るターボ真空ポンプの構
成断面図である。

【図２】図１のＳ部の拡大詳細図である。

【図３】図２をＴ矢印方向から見た図である。

【図４】図３のＰ−Ｐ矢視図である。

【図５】図２の羽根15の形状を示す図である。

【図６】図２のＡ−Ａ断面図である。

【図７】図２のＢ−Ｂ断面図である。

【図８】図１の円周流圧縮ポンプ段の段間ラビリンスシ
ールの説明図である。

【図９】本発明の他の実施例に係わるターボ真空ポンプ
の構成断面図である。

【図１０】本発明の更に他の実施例に係わるターボ真空
ポンプの構成断面図である。

【図１１】図１０のＵ部の拡大詳細図である。

【図１２】図１１をＶ矢印方向から見た図である。

【図１３】図１２のＱ−Ｑ矢視図である。

【図１４】従来のターボ真空ポンプの構成断面図であ
る。

【図１５】図１４のＷ部の拡大詳細図である。

【符号の説明】

1・・・ロータ、2・・・ステータ、3・・・シャフト、4a・・・遠心
圧縮ポンプ段、4b,4d・・・円周流圧縮ポンプ段、4c・・・ね
じ圧縮ポンプ段、5・・・吸込みケーシング、6・・・吸気口、
7a,7b・・・軸受、8a・・・モータロータ、8b・・・モータステー
タ、9,11・・・冷却ジャケット、10・・・モータケーシング、
12・・・排気口、13・・・ラビリンス、14・・・生成物、15・・・羽
根部、16・・・円板、17・・・ねじ溝、18・・・段間壁

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸気口と排気口を有するハウジングと、該
   ハウジング内に固定されたステータと、該ステータに対
   向し第１の圧縮ポンプ段と第２の圧縮ポンプ段が設けら
   れたロータとを有し、前記ロータが回転することによ
   り、前記吸気口から吸込まれた気体を前記排気口から排
   気するターボ真空ポンプにおいて、 前記第１の圧縮ポンプ段は前記吸気口側に、前記第２の
   圧縮ポンプ段は前記排気口側に設けられ、前記第２の圧
   縮ポンプ段は、該第２の圧縮ポンプ段から前記ステータ
   の複数段の気体流路内に突出した複数段の円板の各両面
   に羽根部を形成し、かつ前記羽根部の内径が前記第２の
   圧縮ポンプ段のボス径とほぼ等しく構成されていること
   を特徴とするターボ真空ポンプ。
2. 【請求項２】請求項１において、前記羽根部の軸方向側
   及び径方向側の羽根端部を尖らせることを特徴とするタ
   ーボ真空ポンプ。
3. 【請求項３】請求項１において、前記ステータは、前記
   第２の圧縮ポンプ段の段間シール部にラビリンスを設け
   ることを特徴とするターボ真空ポンプ。
4. 【請求項４】吸気口と排気口を有するハウジングと、該
   ハウジング内に固定されたステータと、該ステータに対
   向し第１の圧縮ポンプ段と第２の圧縮ポンプ段が設けら
   れたロータとを有し、前記ロータが回転することによ
   り、前記吸気口から吸込まれた気体を前記排気口から排
   気するターボ真空ポンプにおいて、 前記第１の圧縮ポンプ段は前記吸気口側に、前記第２の
   圧縮ポンプ段は前記排気口側に設けられ、前記第２の圧
   縮ポンプ段は、該第２の圧縮ポンプ段から前記ステータ
   の複数段の気体流路内に突出した複数段の羽根部を形成
   し、かつ前記ステータの段間壁は平板状とすることを特
   徴とするターボ真空ポンプ。