JP3795979B2 - 分子ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は実験研究装置、分析計測装置、及び半導体製造工業における成膜分野等における工業用真空装置において、中真空から超高真空にわたる圧力範囲で使用される分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
分子ポンプにはターボ分子ポンプ、ねじ溝真空ポンプ、及びこれら2者が複合した複合分子ポンプがある。
【0003】
従来エッチング装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の成膜装置の排気用として使用されている複合分子ポンプの例として、図10の如く吸気口aと排気口bとを有する筐体c内に、吸気口a側からターボ分子ポンプ部d及びねじ溝真空ポンプ部eを順次配設したものが知られている。
【0004】
尚、fはこれらターボ分子ポンプ部d及びねじ溝真空ポンプ部eの共通ロータgを固定した回転軸、hはモータ、i及びjはそれぞれジャーナル磁気軸受及びスラスト磁気軸受を示し、X矢印はプロセスガスの吸入方向を、又、Y矢印はプロセスガスの排出方向を示す。
【0005】
従来の分子ポンプをエッチング装置やCVD装置等の排気に使用した場合、プロセスガスが凝縮性を有するため、分子ポンプのロータやステータをはじめプロセスガスの接する部分に凝縮性気体が凝縮・堆積してロータをロックさせてしまう不具合があった。
【0006】
そこで、分子ポンプの外周又は内部に設置したヒータによりポンプ部を加熱してロータ及びステータに凝縮性気体が凝縮・堆積するのを防止しようとした例(特開平3−290092号公報)や、ねじ溝ポンプのステータを断熱材で支持してステータを自己昇温させて同上の凝縮・堆積の防止を図った例(特開平7−4384号公報)が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
分子ポンプのロータ等はアルミ合金製のため、強度上の制約からロータの温度は120℃程度までとする必要があり、又、磁気軸受やモータ等の電気部品も高温を嫌うので、前記のヒータによりポンプ部を加熱する方法(特開平3−290092号公報)は、ポンプ部の過熱によりポンプ寿命を劣化させたり、不具合を発生させたりする原因となる問題があった。
【0008】
又、前記のステータを断熱材で支持して自己昇温させる方法(特開平7−4384号公報)も、大流量のプロセスガスが負荷として加わる時には、ポンプ部が過熱するという同上の問題があった。
【0009】
更に又、このステータを自己昇温させる方法では、プロセスガス負荷が少な過ぎる場合とか、プロセス開始後数時間はステータ温度が充分に昇温せず、ポンプ部の流路に排気ガスの凝縮を起こす問題があった。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解消し、プロセスガス負荷の大小にかかわらずロータやステータや排気管等の排気ガスと接触する部分の温度を所定温度に保って凝縮を常時防止することができる分子ポンプを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するべく、ロータ、ステータ及び排気通路部の温度を制御可能に形成する分子ポンプにおいて、パージガスをモータハウジングの内部に導入するためのパージガス導入手段を具備すると共に、ロータ駆動用モータにかかるガス負荷の大きさに応じて該パージガスの導入量を制御するように形成し、前記モータハウジングは、排気通路部からの熱伝導を遮断する構造に形成され、該排気通路部のプロセスガスを排出するための排出口部はポンプの筐体の排気孔部内に該排気孔部の内壁と間隙を存して断熱的に挿通した排気内側管からなると共に、該排気内側管には加熱用ヒータを設置したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態として、複合分子ポンプに適用した例を図1の縦断面図により説明する。
【0013】
プロセスガスは吸気口1から吸入され、ターボ分子ポンプ部2及びねじ溝真空ポンプ部3を経て排気口4より排出される。
【0014】
5はこれらターボ分子ポンプ部2及びねじ溝真空ポンプ部3の共通のロータで、回転軸5aに固定されており、アルミ合金製である。
【0015】
ねじ溝真空ポンプ部3のステータ3aは、断熱材製のリング3b、3bを介して上部筐体6に係止されていると共に、ロータ5にあるねじ溝3cのねじ山部とは僅かな間隙を存して対向しており、又、該ステータ3aの下端には第1ねじシール7が一部を密着して係着されている。
【0016】
しかし、該ステータ3aはその他の部分とは直接に接触をしていないので、該ステータ3aは断熱的に支持されていることになる。
【0017】
第1ねじシール7は外周部にねじ溝7aを有すると共に内周部にOリング7bを有し、該ねじ溝7aはねじ山部をロータ5の内周部に僅かな間隙を存して対向させている。
【0018】
該ねじ溝7aは共通ロータ5の回転によりロータ内室5bの気体を下向き(排気内側管12aに通じる方向)に排気するように形成されている。
【0019】
又、該第1ねじシール7は前記Oリング7bを介してモータハウジング8の外周部に摺動可能に外挿されている。
【0020】
該第1ねじシール7はねじ溝7aの作用によってねじ溝真空ポンプ部3より排出されるプロセスガスがロータ内室5bに漏洩してくるのを防止している。
【0021】
9は第2ねじシールで、内周部にねじ溝9aを有し、モータハウジング8の上端部に係止されていると共に、該ねじ溝9aのねじ山部を共通ロータ5のボス部外周部に僅かな間隙を存して対向させている。
【0022】
該ねじ溝9aは、ロータ5の回転により、前記ロータ内室5bの気体を下向き(モータハウジング8の内部)に排気するように形成されいている。
【0023】
10はパージガス導入口で、該パージガス導入口10より導入された窒素ガス等のパージガスは下部筐体内室10a及びパージ穴10bを通ってモータハウジング8内部を満たし、プロセスガスがモータハウジング8内部へ浸入するのを防止している。
【0024】
該モータハウジング8内部のパージガスの圧力は前記第2ねじシール9のねじ溝9aの圧縮作用によってロータ内室5bの圧力よりも高くなっている。このモータハウジング8の内部の圧力は該モータハウジング8と回転軸5aとの間の熱伝達に大きな影響を与える。
【0025】
即ち、
Q :回転軸5aからモータハウジング8に伝達される伝熱量
γ :パージガスの比熱比
M :パージガスの分子量
R :気体定数
T1 :回転軸5aの温度
T2 :モータハウジング8に接しているモータステータ電磁石の温度
P :モータハウジング8内の圧力
とすると、数1に示す関係式が成立する。
【0026】
【数1】
Figure 0003795979
【0027】
このように、モータハウジング8内の圧力Pを高くすることによって、回転軸5aとモータハウジング8間の伝熱量を増大させることができる。
【0028】
モータハウジング8は空冷又は水冷された下部筐体12を介して放熱し、一定温度に保たれている。一方、ロータ5は回転軸5aを介しての熱伝達によって放熱しているので、プロセスガス負荷の増大によってロータ5の温度が上昇した場合には、回転軸5aからモータハウジング8への熱伝達量Qを増やしてロータ5の過熱を防ぐ必要がある。
【0029】
このため、プロセスガス負荷の増減に応じてモータハウジング8内のパージガス圧力を制御するようにしている。
【0030】
尚、プロセスガス負荷の増減は、後述する駆動用モータ8aの特性から、定格回転速度からの回転速度の変動値として検出されるので、回転速度検知器(図示せず)による検出値よりプロセスガス負荷の増減を知り、これによってパージガス導入口10へのパージガス導入量を自動制御し、これに繋がる前記モータハウジング8内のパージガスの圧力を制御して、ロータ5の温度を所定値に保っている。
【0031】
次に11は予熱用ガス導入口を示す。
【0032】
本実施の形態の複合分子ポンプにおいて、該予熱用ガス導入口11はターボ分子ポンプ部2とねじ溝真空ポンプ部3の間に設けられている。
【0033】
予熱用ガスには常温の窒素ガスなどが用いられ、プロセスの稼動を始める前の装置立上げ時に該予熱用ガス導入口11から予熱用ガスを導入し、ねじ溝真空ポンプ部3におけるポンプ作用に伴う発熱によってステータ3a等の温度を昇温させておく。
【0034】
又、長時間プロセスガス負荷がない場合(例えばプロセスを中断している時)にも、予熱用ガスの導入によりステータ3a等の温度を所定の高温に保つことができる。
【0035】
尚、該ステータ3aの温度を適切に保つためには、この予熱用ガスの導入量を制御する必要があり、この予熱用ガス導入量の制御は後述する駆動用モータ8aの制御特性を用いて回転速度を検知して行っている。
【0036】
尚、予熱用ガスの導入口部は、本実施の形態の複合分子ポンプの場合にはターボ分子ポンプ部2とねじ溝真空ポンプ部3の間に設けるとしたが、これは分子ポンプがターボ分子ポンプだけの場合にはロータ翼及びステータ翼の全段数のほぼ中央部に該導入口部を設ければよく、又、分子ポンプがねじ溝真空ポンプだけの場合にはステータのほぼ中央部に該導入口部を設ければよい。
【0037】
ここで、本発明の特徴の1つである駆動用モータ8aの特性について説明する。
【0038】
回転軸5aを駆動する駆動用モータ8aはブラシレスのDCモータで、図2の実線で示す特性を持つように形成されている。
【0039】
従来この種のモータの制御方法では、図2の点線で示す特性を持っていた。即ち、定格回転速度においてプロセスガス負荷が増大すると回転速度は僅かに低下するが、その低下の割合は最大電流値の時でも約1%程度と少ない。
【0040】
この様なモータを分子ポンプ駆動用に用いると、プロセスガス負荷が増大した場合など、最大定格出力で連続運転中に分子ポンプのロータが過熱して120℃を超えてしまい、ロータの強度上極めて危険な状態になることが予想される。
【0041】
又、このロータの過熱を避けるために、駆動用モータの最大定格出力がより小さな従来形のモータで従来の制御方法を用いた場合には、起動時に慣性モーメントの大きな前記ロータを定格回転速度にまで上昇するのに長時間を要するので、やはり不具合である。
【0042】
これに対し、本発明の駆動用モータ8aは、負荷の増大を入力電流値で検知し、それに応じてモータ回転速度を定格回転速度よりも低下させる制御を行っている。
【0043】
即ち、定格回転速度の30乃至70%(50%以上の範囲が好ましい)から駆動用モータ8aへの供給電流値を低下させて、図2の実線で示すモータ入力電流・回転速度特性が得られるようにしている。
【0044】
この制御により駆動用モータ8aの最大出力は著しく低下し、過大なプロセスガス負荷が加えられた場合にはロータ5の回転速度が低下して該プロセスガス負荷によるモータの負荷が下がり、ロータ5等の過熱を防止することができる。又、回転速度を測定すればモータ入力電流が判るので、直ちにモータ出力即ちプロセスガス負荷の大きさを知ることができる。
【0045】
又、駆動用モータ8aの最大出力を低下させたために、ロータ5が定格回転速度まで上昇するのに従来よりも多少長い時間を要するようになるが、一般に分子ポンプでは定格回転速度の半分の回転速度でも装置立上げ時等の初期排気に充分な排気速度を有しているため、それ以後の定格回転速度までの回転速度の上昇に要する時間が多少増大しても実用上問題はない。
【0046】
本発明の駆動用モータ8aでは電流値と共に回転速度を情報としてコントローラへ取り込み、マイコンを用いて制御を行って回転速度に応じた電流がモータに流れるようにしているが、この制御のブロック図を図3に示す。又、従来の駆動用モータの制御のブロック図を図4に示す。
【0047】
但し、 は設定された最大電流値、Iは電流検出値、Nは回転速度検出値であり、又、K(N)はマイコンを用いた可変ゲインである。
【0048】
尚、ねじ溝分子ポンプ部3から排気されるプロセスガス又は予熱ガス等は、排気内側管12a及び12bを経て排気口4より外部に排出されるが、これら排気内側管12a、12bから下部筐体12へ熱が伝達するのを防ぐために、該下部筐体12の排気孔部の内壁12cと間隙を存してこれら排気内側管12a、12bを挿通させている。
【0049】
又、排気内側管12bの周囲に加熱用ヒータ12dを設置して、プロセスガスが排気内側管12a、12bの排気通路内に凝縮・堆積するのを防止する構造としている。
【0050】
次に、本発明の第1の実施の形態の作動、効果について説明する。
【0051】
プロセスの稼動を始める前に分子ポンプのウォーミングアップをする。即ち、装置の立上げ時には、予熱用ガス導入口11から窒素ガスなどの予熱用ガスをねじ溝ポンプ部3に導入し、ポンプ作用に伴う発熱によってステータ3a及びロータ5の温度を昇温させておき、然る後にプロセスガスに切り更えることにより、プロセスガスが流路に凝縮・堆積するのを防止している。
【0052】
尚、この予熱ガスの導入は装置立上げ時だけに限らず、長時間プロセスガスの負荷の無い状態で装置を運転している場合にも同様に予熱ガスの導入を行って、ねじ溝ポンプ部のステータ3aをはじめロータ5等を高温に保つことができる。
【0053】
又、プロセスの稼動中はプロセスガス負荷の増減がロータ5の温度変動を引き起こすので、該プロセスガス負荷の増減を前記回転速度検知器により検出すると共にこの信号によりパージガスの供給量を制御することによりロータ5の温度をコントロールしている。
【0054】
即ち、プロセスガス負荷が増加した時はパージガスの導入量を増やして下部筐体内室10a及びモータハウジング8の内部の圧力を上昇させ、ロータ5から回転軸5aを介してモータハウジング8への伝熱量を増加させてロータ5の温度が120℃以上に上昇するのを防ぎ、又、プロセス負荷が減少した時はパージガスの導入量を減らして前記伝熱量を減少させてロータ5の過度の温度低下を防止している。
【0055】
これらの効果は、予熱用ガスの導入量の制御やパージガスの導入量の制御と共に、モータハウジング8及びステータ3aの前記構造、第1ねじシール7及び第2ねじシール9の前記パージガス送出作用、及び駆動用モータ8aに与えた前記特性等の総合作用により実現されている。
【0056】
更に又、排気内側管12bを加熱用ヒータ12dによって120℃以上に加熱することにより、該排気内側管内にプロセスガスが凝縮・堆積することを防止している。
【0057】
尚、この加熱用ヒータ12dによる加熱は、分子ポンプと補助ポンプ間の補助配管を加熱するという従来から行われている方法が採用されている場合には、その熱伝導による加熱を利用するようにしてもよい。
【0058】
又、本実施の形態では、分子ポンプを複合分子ポンプとしたが、これは分子ポンプがターボ分子ポンプだけの場合でも、又は分子ポンプがねじ溝真空ポンプだけの場合でも同様に実施することが可能である。
【0059】
本発明の第2の実施の形態を図5乃至図9により説明する。
【0060】
図5は本第2の実施の形態の縦断面図で、前述の第1の実施の形態と同じく複合分子ポンプに適用した例を示す。
【0061】
本実施の形態では、パージガス供給手段と予熱用ガス供給手段とを兼用した供給手段を具備させた。
【0062】
即ち、パージガス供給口10の前に後述するガス流量切り替え機構13を設置してパージガスと予熱用ガス各々に必要なガス流量を供給できるようにすると共に、前記第1ねじシール7の軸長をねじ溝真空ポンプ部3のステータ3aの軸長と略同じ長さに形成した点が第1の実施の形態とは異なっている。
【0063】
前記第1の実施の形態では、予熱用ガスがターボ分子ポンプ部2とねじ溝真空ポンプ部3の間の予熱用ガス導入口11から導入するようにしていたのに対し、本第2の実施の形態では、パージガス導入口10からモータハウジング8内に導入された予熱用ガスが第2ねじシール9のねじ溝9a及び第1ねじシール7のねじ溝7aを経由してねじ溝真空ポンプ部3の流路の下流側に供給されるようにした。
【0064】
パージガスも予熱用ガスも、共に窒素ガス等が使用される。
【0065】
図6にガス流量切り替え機構の1例を示す。
【0066】
高圧の窒素ガスライン14に接続した該ガス流量切り替え機構13は減圧弁13a、パージガス用弁13bを経て、パージガス用オリフィス13cを有する第1管路と、予熱用ガス弁13d及び予熱ガス用オリフィス13eを有する第2管路とに分岐するが、これら第1管路と第2管路は再び合流してパージガス導入口10へと接続している。
【0067】
次に本第2の実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0068】
パージガスは、プロセスガスがモータハウジング8の内部に浸入してくるのを防止する目的で該モータハウジング8内部へ供給されているが、その供給量は、標準的な例では10SCCM程度である。
【0069】
これに対し、予熱用ガスとしては約200SCCM程度の供給量が必要となる。このため、パージガス用オリフフィス13cと予熱ガス用オリフィス13eとを別々に設けることにより、電磁弁の操作によって直ちにパージガスから予熱用ガスへと窒素ガス流量が切り替わるようにした。
【0070】
図7はガス流量切り替え機構13の配線図を示す。
【0071】
PB1 を押すとR1 が励磁してPVが励磁され、パージガス用弁13bが開き、パージガス用オリフィス13cを通って10SCCM程度の窒素ガスがモータハウジング8内部へ供給される。尚、パージガスの供給を停止する時はPB2 を押してR1 を非励磁とすればよい。
【0072】
又、R1 が励磁されている時、PB3 を押すことによりタイマーリレーTが一定時間励磁され、更にHVが励磁されて予熱用ガス弁13dが開き、流量200SCCMの窒素ガスが予熱ガス用オリフィス13eを通ってモータハウジング8内部へ供給される。
【0073】
モータハウジング8内部へ供給されたこの窒素ガスは、第2ねじシール9のねじ溝9aを経て第1ねじシール7のねじ溝7aを通り、ねじ溝真空ポンプ部3の流路の下流側に放出される。この時、軸方向に長く形成された該ねじ溝7aを窒素ガスが通過する際の摩擦熱により該第1ねじシール7とロータ5、及び該第1ねじシール7と密着して接続しているステータ3aが昇温する。
【0074】
又、ねじ溝真空ポンプ3自体も、その下流側に放出された窒素ガスに対するポンプ作用により発熱するので、ロータ5とステータ3aは更に昇温して、短時間で予熱が行われる。
【0075】
この予熱はロータ5を高速回転させた状態で行われ、一定時間Tだけ大流量の窒素ガスを供給して予熱を行うようにしたが、これを第1の実施の形態と比較すると、本実施の形態ではターボ分子ポンプ部2とねじ溝真空ポンプ部3の間に面倒な予熱用ガス導入口11や予熱用ガス配管がなくて済み、又、予熱用ガスがねじ溝真空ポンプ部3の下流側に導入されるため、分子ポンプの上流側の吸気圧力が大きく上昇するという不具合も発生しない利点を有する。
【0076】
因みに、ねじ溝真空ポンプ部3の下流側に予熱用ガスを導入した場合の複合分子ポンプの排気性能への影響について検討する。
【0077】
図8は排気速度700L/S クラスの複合分子ポンプの圧縮比曲線の一例である。補助ポンプ排気速度を標準的な値である1000L/min とし、200SCCMの窒素ガスをパージガス導入口10より導入した場合、該複合分子ポンプの排気圧力は0.15Torrとなる。
【0078】
即ち、図8により、予熱ガス導入による圧力上昇分は、数2のとおりとなる。
【0079】
【数2】
Figure 0003795979
【0080】
この程度の吸気口圧力の上昇は、プロセス開始前のバックグランド圧力条件にとって全く問題とならない。
【0081】
又、従来の外部ヒータによりねじ溝真空ポンプのステータを昇温させた場合と、本第2の実施の形態によりねじ溝真空ポンプ部3のステータ3aを昇温させた場合との比較例を図9に示す。ステータ3aをプロセスガスが凝着を起こさない温度の55℃とするのに、ヒータ加熱型では2時間を要するのに対し、本第2の実施の形態による自己昇温型では、より短い時間で所要の温度に達することがわかる。
【0082】
尚、本第2の実施の形態では、ガス流量切り替え機構13をパージガス用オリフィス13c及び予熱ガス用オリフィス13e等からなるものとしたが、これは1台のマスフローコントローラで置き換えてもよい。
【0083】
又、前記パージガス用オリフィス13cの絞りを可変とし、前記回転軸5aからモータハウジング8への伝熱量Qのコントロールを該パージガス用オリフィス13cとの可変絞りによって行うようにしてもよい。
【0084】
又、本実施の形態では分子ポンプを複合分子ポンプとしたが、これはねじ溝真空ポンプだけの場合でも同様に実施することが可能である。
【0085】
【発明の効果】
このように本発明によれば、ポンプ部の外部又は内部にヒータを用いずに、自己昇温によって短時間でポンプ部を加熱して分子ポンプ内にプロセスガスが凝縮・堆積するのを防止すると共に、プロセスガスのガス負荷が急速に増大しても、ロータ部の温度上昇を安全な許容範囲内に保持することが可能な構造の分子ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の複合分子ポンプの縦断面図である。
【図2】駆動用モータの特性を示す図である。
【図3】本発明の駆動用モータの制御のブロック図である。
【図4】従来の駆動用モータの制御のブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の複合分子ポンプの縦断面図である。
【図6】複合分子ポンプのパージガス導入口に接続したガス流量切り替え機構のシステム図である。
【図7】同上ガス流量切り替え機構の配線図である。
【図8】複合分子ポンプの圧縮曲線の1例を示すグラフである。
【図9】ねじ溝真空ポンプにおける外部ヒータ加熱型と自己昇温型の昇温時間の比較の1例を示すグラフである。
【図10】従来の複合分子ポンプの縦断面図である。
【符号の説明】
3 ねじ溝真空ポンプ部
3a ステータ
4 排気口
5 ロータ
6、12 筐体
7 第1ねじシール
7b Oリング
8 モータハウジング
8a 駆動用モータ
9 第2ねじシール
10 パージガス導入口
11 予熱用ガス導入口
12a、12b 排気内側管
12c 排気孔部の内壁
12d 加熱用ヒータ
13 ガス流量切り替え機構
13c パージガス用オリフィス
13e 予熱ガス用オリフィス

Claims (4)

  1. ロータ、ステータ及び排気通路部の温度を制御可能に形成する分子ポンプにおいて、パージガスをモータハウジングの内部に導入するためのパージガス導入手段を具備すると共に、ロータ駆動用モータにかかるガス負荷の大きさに応じて該パージガスの導入量を制御するように形成し、前記モータハウジングは、排気通路部からの熱伝導を遮断する構造に形成され、該排気通路部のプロセスガスを排出するための排出口部はポンプの筐体の排気孔部内に該排気孔部の内壁と間隙を存して断熱的に挿通した排気内側管からなると共に、該排気内側管には加熱用ヒータを設置したことを特徴とする分子ポンプ。
  2. ロータ、ステータ及び排気通路部の温度を制御可能に形成する分子ポンプにおいて、パージガスをモータハウジング内部に導入するためのパージガス導入手段を具備すると共に、ロータ駆動用モータにかかるガス負荷の大きさに応じて該パージガスの導入量を制御するように形成し、前記パージガス導入手段は、前記プロセスガスがロータ内部に漏洩しないように作動する第1ねじシールと、モータハウジング内部にあるパージガスがモータハウジング外部に漏洩しないように作動する第2ねじシールとを有し、前記第1ねじシールはOリングを介して前記モータハウジングの外周部に摺動可能に外挿されてポンプの筐体に断熱的に係止されたねじ溝真空ポンプ部のステータに係着されていることを特徴とする分子ポンプ。
  3. ロータ、ステータ及び排気通路部の温度を制御可能に形成する分子ポンプにおいて、ロータ及びステータを予熱するための予熱用ガス導入手段を具備すると共に、ロータ駆動用モータにかかるガス負荷の大きさに応じて該予熱用ガスの導入量を制御するように形成し、前記ロータ及びステータを予熱するための予熱用ガス負荷又はプロセスガス負荷は、前記駆動用モータの回転速度から検出できるように形成され、該ロータ駆動用モータはブラシレスのDCモータとすると共に、該モータの最大電流値が流れるときの該モータの回転速度は該モータの定格回転速度の30乃至70%以下の範囲とし、それ以上の該モータの回転速度においては該モータへ供給される電流値が該モータの回転速度の増大と供に減少するように制御されていることを特徴とする分子ポンプ。
  4. ロータ、ステータ及び排気通路部の温度を制御可能に形成する分子ポンプにおいて、パージガスをモータハウジング内部に導入するためのパージガス導入手段を具備すると共に、ロータ駆動用モータにかかるガス負荷の大きさに応じて該パージガスの導入量を制御するように形成し、前記ガス負荷は、前記駆動用モータの回転速度から検出できるように形成し、該ロータ駆動用モータはブラシレスのDCモータとすると共に、該モータの最大電流値が流れるときの該モータの回転速度は該モータの定格回転速度の30乃至70%以下の範囲とし、それ以上の該モータの回転速度においては該モータへ供給される電流値が該モータの回転速度の増大と供に減少するように制御されていることを特徴とする分子ポンプ。
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