JP3733316B2 - 車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材 - Google Patents

車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の低燃費化に対するニーズが大きく、その1つの例として超高燃費ハイブリッドカーの開発が進められている。特に最近では、エンジンを主動力とし加速時等にエンジンをDCブラシレスモータでアシストする補助動力機構(モータアシスト機構)を備えたハイブリッドカーが提案されている。
【0003】
ところで、モータアシスト機構を構成するブラシレスモータは、エンジンルーム内の限られたスペース、具体的にはエンジンとトランスミッションとの間の狭いスペースに配置されるため、設置上大きな制約を受ける。従って、この種のブラシレスモータには薄型であることが要求されている。
【0004】
モータアシスト機構に用いられる車両用薄型ブラシレスモータは、エンジンのクランクシャフトに直結されたロータと、そのロータを包囲するリング状のステータとを備えている。また、ステータは、コアに巻線を施すことにより形成された多数の磁極、磁極を収容するステータホルダ、巻線に集中的に配電を行うための集中配電部材(いわゆるバスリング)等によって構成されている。
【0005】
従来、車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材を作製するにあたり、U,V,W,3相分のバスバーをそれぞれ別の金型を用いて個々にリング状に打ち抜き形成していた。そこで、本願発明者はこれをさらに発展させ、帯状に打ち抜いた後に厚さ方向に湾曲させて略円環状にしたバスバーを絶縁樹脂層中にインサート成形して集中配電部材を構成することを考えた。
【0006】
ところで、この種のモータには非常に大きな電流が流されるため、これに用いられる集中配電部材には相当高度な絶縁耐圧が要求される。従って、各相に対応して設けられるバスバー同士は、絶縁距離の確保のために、絶縁樹脂層内において互いに所定の間隔を隔てている必要がある。
【0007】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インサート成形時には絶縁樹脂層を成形する樹脂の圧力がバスバーに加わるため、バスバーの相対位置が変動しやすく、所定の間隔を保持することができない場合がある。特にこのような略円環状のバスバーでは上記問題が一層顕著になる。
【0008】
また、略円環状に湾曲加工されたバスバーをそのままインサート成形した場合、成形時の熱によりバスバーが直線状に戻ろうとして変形するおそれもあり、寸法精度に優れた製品が得られない可能性がある。さらにこの場合、樹脂絶縁層が部分的に薄くなることも考えられ、高い絶縁耐圧を実現するうえで障害になることも予想される。
【0009】
ここで、直線状バスバーを二重モールドする技術が従来から提案されており、この技術を上記インサート成形に応用すればよいとも考えられる。しかしながら、この技術を用いたとしても、成形工程を2回行う必要があることに加え、その際に別の金型が必要になることから、コスト的に不利である。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造が比較的簡単であって、低コストかつ絶縁耐圧の高い車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、バッテリに接続される端子部及びステータの巻線に接続されるタブを有するとともに、厚さ方向に湾曲されることにより略円環状に形成され、モータの各相に対応して設けられる複数本のバスバーと、インサート成形によって形成され、前記各バスバーを被覆する樹脂絶縁層とを備え、前記巻線に対して集中的に電流を配給可能なリング状の集中配電部材であって、集中配電部材周方向に沿って延びる複数の保持溝が並列に形成された円弧状樹脂部品の両端面を隣接する他の円弧状樹脂部品の端面と接合することによって連続円環状に形成した絶縁ホルダを備え、前記各バスバーは、前記絶縁ホルダの保持溝内に各々挿入されることでそれらが互いに所定の間隔を隔てた状態で集中配電部材の径方向に積層配置されており、前記絶縁ホルダは、前記保持溝内に挿入された前記各バスバーとともに前記絶縁樹脂層により被覆され、前記樹脂絶縁層内に完全に埋設されていることを要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、インサート成形時に絶縁樹脂層を成形する樹脂の圧力がバスバーに加わっても、各バスバーの相対位置が変動することがない。これは、各バスバーが絶縁ホルダに形成された保持溝に挿入されることで、それらの間隔が保持されているからである。また、各バスバーは絶縁ホルダに保持されているので、インサート成形時に熱の影響で略円環状に折曲されたバスバーが直線状に戻るのを確実に防止できる。従って、各バスバー間の寸法精度に優れ高い絶縁耐圧を確保することが可能になるとともに、樹脂絶縁層が部分的に薄くなるのを確実に防止することが可能になる。更に、二重モールド法とは異なりインサート成形用金型が1種で足りるので、高コスト化を伴うこともない。
【0013】
また、前記絶縁ホルダは複数の円弧状樹脂成形品から構成され、これらの円弧状樹脂部品を用いて前記各バスバーが保持されている。
【0014】
このため、絶縁ホルダを樹脂成形によって真円状に樹脂成形する場合と比べて、比較的簡単にかつ精度よく作製することが可能である。しかも、絶縁ホルダを作製するのに低コストである。
【0015】
また、前記絶縁ホルダは連続円環状に形成されている。
【0016】
このため、分断構造の絶縁ホルダを複数用いた場合に比べて、部品点数が少なくなる。そればかりか、絶縁ホルダ間の隙間がなくなることにより、インサート成形時にボイドの発生が回避される。つまり、絶縁ホルダの保持溝内は絶縁樹脂層成形用の樹脂によって完全に埋め尽くされる。従って、集中配電部材の防水性、気密性が向上し、もって絶縁耐圧も高くなる。
【0017】
また、前記絶縁ホルダは、前記保持溝内に挿入された前記各バスバーとともに樹脂絶縁層内に完全に埋設されている。
【0018】
このため、絶縁樹脂層からの表面から絶縁ホルダが露出している構成に比べて、外部の湿気等が侵入する可能性が極めて小さくなる。従って、集中配電部材の防水性、気密性がいっそう向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ハイブリッド自動車に使用される3相の薄型DCブラシレスモータ11は、エンジン12とトランスミッション13との間に配設されている。薄型ブラシレスモータ11は、エンジン12のクランクシャフトに直結されたロータ14と、そのロータ14を包囲するリング状のステータ15とを備えている。ステータ15は、コアに巻線16を施すことにより形成された多数の磁極、磁極を収容するステータホルダ、巻線16に配電を行うための円環状の集中配電部材17等によって構成されている。図2はステータ15の模式図を示す。同図に示すように、各相の巻線16は、その一端が集中配電部材17に設けられたバスバー22a,22b,22cに接続され、他端が図示しないリング状の導電部材に接続されている。
【0022】
図3〜図6に示すように、集中配電部材17は、その内部に自然色の合成樹脂からなる連続円環状の絶縁ホルダ21が埋設されている。絶縁ホルダ21の形成材料としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート:polybutyrene terephthalate)や、PPS(ポリフェニレンサルファイド:polyphenylene sulfide)等を用いることが可能である。
【0023】
本実施形態では、絶縁ホルダ21の形成材料に無機繊維としてのガラス繊維が約40%添加されたPPSが採用されている。この材料を絶縁ホルダ21に採用した理由としては、電気的特性(絶縁耐圧)に優れているからである。特に、本実施形態の薄型ブラシレスモータ11では、各相のバスバー22a,22b,22cに印加される電圧は高圧であるため、バスバー22a,22b,22cの絶縁耐圧を確保することが重要であると言える。この場合の絶縁耐圧としては、少なくとも2000V以上が求められる。その上、PPSは、例えばPP(ポリプロピレン)等の汎用樹脂に比べて耐熱性が極めて高いばかりか、機械的強度にも優れている。
【0024】
図8,図9,図10に示すように、絶縁ホルダ21の一側面には、その周方向に沿って延びる3つの保持溝23a,23b,23cが凹設されている。各保持溝23a,23b,23cは、それぞれ平行な間隔をおいて、絶縁ホルダ21の径方向に並設されている。各保持溝23a,23b,23cには、それぞれ各相に対応するバスバー22a,22b,22cが個別に挿入されている。それぞれのバスバー22a,22b,22cは互いに所定の間隔を隔てた状態で集中配電部材径方向に積層配置される。従って、保持溝23a,23b,23cには、挿入される各バスバー22a,22b,22cを正確な位置に相対保持する役割がある。そして、前記絶縁ホルダ21及び各バスバー22a,22b,22cは、全体的に絶縁樹脂層25によって被覆されている。この被覆により、バスバー22a,22b,22cの絶縁が図られている。
【0025】
絶縁樹脂層25は、前記絶縁ホルダ21と同じ、ガラス繊維が添加されたPPS製である。この材料を絶縁樹脂層25に採用した理由としては、絶縁ホルダ21と同じ理由であって、電気的特性(絶縁耐圧)、耐熱性、機械的強度が優れているからである。但し、絶縁樹脂層25の材料も自然色のナチュラル樹脂が使用されている。
【0026】
本実施形態において、内側に位置するバスバー22aはW相、中間に位置するバスバー22bはU相、外側に位置するバスバー22cはV相に対応している。以下、説明を分かりやすくするために、W相のバスバー22aを「内側バスバー22a」、U相のバスバー22bを「中間バスバー22b」、V相のバスバー22cを「外側バスバー22c」と表現して区別する。
【0027】
各バスバー22a,22b,22cについて説明する。前記バスバー22a,22b,22cは、銅板或いは銅合金等からなる導電性金属板材を、プレス装置で帯状に打ち抜いた帯状成形素材をあらかじめ厚さ方向に湾曲させ、円弧の一部がない不完全円環状(略C字状)に賦形したものである。その上、各バスバー22a,22b,22cは、その径が外側にあるものほど大きくなるように設定されている。そして、賦形した各バスバー22a,22b,22cを、各保持溝23a,23b,23cに挿入していることから、絶縁ホルダ21に対するバスバー22a,22b,22cの組み付けが容易なものとなっている。
【0028】
図8〜図11に示すように、各バスバー22a,22b,22cの一側縁には、前記巻線16の一端が接続される複数のタブ41a,41b,41cが突設されている。各タブ41a,41b,41cは、バスバー22a,22b,22cを成形するときの素材である導電性金属板材をプレス装置で打ち抜くとき、それと同時に打ち抜かれるものである。従って、バスバー22a〜22cとタブ41a〜41cとは、1回のプレス工程を経ることにより連結された状態で一体形成されている。これは、バスバー22a,22b,22cとタブ41a,41b,41cとを溶接等により後付けする場合と比較して製造工程を簡略することが可能だからである。
【0029】
それぞれのタブ41a,41b,41cは、各バスバー22a,22b,22cにつき、6つずつ設けられている。各相それぞれのタブ41a,41b,41cは、各バスバー22a,22b,22cの円周方向に沿って等間隔に、すなわち中心角が60゜で配置されている。
そして、各バスバー22a〜22cの切り離し部42が互いに周方向に20゜ずらして配置されることにより、合計18個のタブ41a〜41cは、集中配電部材17の中央部を中心とする円周方向に沿って等間隔に、すなわち中心角が20゜で配置されている。ちなみに、図11に示すように、本実施形態では外側バスバー22cの切り離し部42を基準とした場合、中間バスバー22bは時計周りの円周方向へ+20゜ずれて配置されている。これに対して、内側バスバー22aは、反時計周り方向へ−20゜ずれて配置されている。
【0030】
各バスバー22a,22b,22cのタブ41a,41b,41cは、先端が集中配電部材17の中心を向くように断面略L字状にそれぞれ折曲されている。そして、各タブ41a,41b,41cの先端部は、集中配電部材17の内周面から外方に突出している。この突出した部分に、前記巻線16が接続されるようになっている。各タブ41a,41b,41cはそれぞれの長さが異なっており、それらの先端は、集中配電部材17の中央部を中心とする同一円周上に位置している。このことから、外側に位置するバスバー22a,22b,22cのタブ41a,41b,41cほど、集中配電部材17の径方向における長さが長くなっている。
【0031】
図15(a),(b)に示すように、中間バスバー22bのタブ41bにおいて絶縁樹脂層25により被覆されている箇所には、保持溝23a,23b,23cを構成する壁部43a,43b,43c,43dの高さ方向に膨らむ湾曲部44が形成されている。この湾曲部44は、絶縁樹脂層25内において内側バスバー22a(他のバスバー)の上縁部を迂回している。この湾曲部44を設けたのは、沿面距離を確保するためである。
【0032】
図16(a),(b)に示すように、外側バスバー22cのタブ41cにおいて絶縁樹脂層25により被覆されている箇所には、壁部43a〜43dの高さ方向に膨らむ湾曲部45が形成されている。この湾曲部45は、絶縁樹脂層25内において内側バスバー22aのみならず中間バスバー22b(いずれも他のバスバー)の上縁部を迂回している。この湾曲部45を設けたのは、上述した湾曲部44と同様に沿面距離を確保するためである。なお、ここでの湾曲部45は、2つのバスバー22a,22bの上端部を迂回させているため、前記中間バスバー22bにあるタブ41bの湾曲部44よりも長くなっている。
【0033】
図14(a),(b)に示すように、内側バスバー22aにあるタブ41aの基端部は、上述したような湾曲部44,45が存在せず、単に90゜に折曲された形状である。これは、タブ41aが折曲されている側には、他のバスバーが存在していないため、沿面距離を確保する必要がないからである。
【0034】
図14(a),(b)に示すように、内側バスバー22aのタブ形成部位と、その内側バスバー22aに隣接する中間バスバー22bのタブ非形成部位とを隔てている壁部43bの端部には、内側小突片47が一体的に形成されている。内側小突片47を設けたのは、内側バスバー22aとそれに隣接する中間バスバー22bとの間の沿面距離を確保するためである。内側小突片47は、合成樹脂製であって合計で6つ設けられており、それらは絶縁ホルダ21の円周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、各内側小突片47は、内側バスバー22aに設けられたそれぞれのタブ41aに1つずつ対応している。また、内側小突片47を有する壁部43bの高さは、内側バスバー22a及び中間バスバー22bのタブ非形成部位同士を隔てている壁部43bの高さよりも高くなっている。
【0035】
図15(a),(b)に示すように、中間バスバー22bのタブ形成部位と、その中間バスバー22bに隣接する外側バスバー22cのタブ非形成部位とを隔てている壁部43cの端部には、外側小突片48が一体的に形成されている。外側小突片48を設けたのは、中間バスバー22bとそれに隣接する外側バスバー22cとの間の沿面距離を確保するためである。外側小突片48は、合成樹脂製であって合計で6つ設けられており、それらは絶縁ホルダ21の円周方向に沿って等間隔に配置されている。そして、各外側小突片48は、中間バスバー22bに設けられたそれぞれのタブ41bに1つずつ対応している。また、外側小突片48を有する壁部43cの高さは、中間バスバー22b及び外側バスバー22cのタブ非形成部位同士を隔てている壁部43cの高さよりも高くなっている。
【0036】
図3〜図7に示すように、各バスバー22a,22b,22cの一側縁には、それぞれ端子部50w,50u,50vが1つずつ一体的に形成され、それらは絶縁樹脂層25の外周面一部から突出されている。各端子部50u,50v,50wは、図1に示す電源ケーブル51を介して、薄型ブラシレスモータ11のバッテリ(図示しない)に接続されている。各端子部50u,50v,50wは、バスバー22a,22b,22cを成形するときの素材である導電性金属板材をプレス装置で打ち抜くとき、それと同時に打ち抜かれるものである。従って、バスバー22a〜22cと端子部50u,50v,50wとは、1回のプレス工程を経ることにより連結された状態で一体形成される。これは、バスバー22a,22b,22cと端子部50u,50v,50wとを溶接等により後付けする場合と比較して製造工程を簡略することが可能である。
【0037】
図6,図7に示すように、端子部50u,50v,50wの先端部には、前記電源ケーブル51の図示しない取付ボルトが挿通されるボルト挿通孔52が透設されている。絶縁樹脂層25の外周面には、各端子部50u,50v,50wの基端部から中央部にかけてその周囲を包囲する樹脂収容部53が一体的に形成され、その内部には絶縁性を有する熱硬化性樹脂からなる封止材54が充填されている。そして、端子部50u,50v,50wにおいて、ボルト挿通孔52よりも基端側でかつ絶縁樹脂層25から露出している箇所は、封止材54により埋設されている。この封止材54により各端子部50u,50v,50wの一部を封止することにより、防水性、気密性が高められる。本実施形態においては、封止材54としてシリコーン系の熱硬化性樹脂を使用している。熱硬化性樹脂はシリコーン系以外に任意に変更することが可能である。
【0038】
図28は、バスバー22a,22b,22cを展開した図である。同図に示すように、端子部50u,50v,50wは、各バスバー22a,22b,22cの長手方向のほぼ中央部分に配置されている。そして、それぞれの端子部50u,50v,50wの両側にあるタブ41a,41b,41cの数は同じになっている。具体的に言えば、各端子部50u,50v,50wの一方側には3つのタブ41a,41b,41cが設けられ、他方側にも3つのタブ41a,41b,41cが設けられている。このように、端子部50u,50v,50wを挟んだ両側にそれぞれ同数のタブ41a,41b,41cを設けたのは、タブ41a,41b,41cに等しい電流を流すためである。
【0039】
図6,図8に示すように、各端子部50u〜50wは、その基端部に前記封止材54によって被覆された埋設部55と、前記ボルト挿通孔52を有し封止材54によって被覆されていない露出部56とに区分される。埋設部55は、プレス成形され、その中央部は斜状に折曲されている。このように斜状部分55aを形成したのは、埋設部55の中央部分を直角に折曲するよりも使用する材料を少なくすることができ、バスバー22a,22b,22cの軽量化に貢献するからである。
【0040】
各端子部50u,50v,50wにおける埋設部55の両端部には、スリット57a,57bが透設されている。両スリット57a,57bは、端子部50u,50v,50wの長手方向に沿って延びている。そして、2つのスリット57a,57bによって埋設部55の一部が肉抜きされることとなり、その部分における埋設部55の幅が、肉抜きされていない部分の幅よりも短くなっている。このような構成としたのは、インサート成形により、絶縁ホルダ21の周囲を被覆する絶縁樹脂層25を冷却した際に、絶縁樹脂層25とバスバー22a〜22cとの熱収縮量の差を小さくするためである。なお、スリット57a,57bの数や幅は、各端子部50u,50v,50wの強度を損なわない程度であれば任意に変更することが可能である。例えば、埋設部55の両端部にそれぞれ2つのスリット57a,57bを設けることが可能である。
【0041】
図8に交差斜線で示すように、端子部50u,50v,50wにおける露出部56と埋設部55との一部には、錫めっきが施されている。詳しくは、露出部56の先端から埋設部55における斜状部分55aの中央部付近にかけて錫めっきが施されている。この錫めっきをした理由は、バスバー22a,22b,22cの表面が酸化腐食するのを防ぐためである。
【0042】
端子部50u,50v,50wは、図18,図19に示す第1プレス装置60で曲げ成形した後に、図20に示す第2プレス装置61で更に曲げ成形することによって得られる。
【0043】
まず、第1プレス装置60について説明する。図18,図19に示すように、第1プレス装置60は、端子部50u,50v,50wを曲げ成形するものである。第1プレス装置60は、固定型である下型62と、可動型である上型63とから構成されている。そして、下型62に対して上型63が接近することで、両型62,63は閉じられる。これに対して、下型62から上型63が離間することで両型62,63は開かれる。
【0044】
下型62の上面にはV字状をなす下型側成形凹部62aと、V字状をなす下型側成形突部62bとが隣接するように形成されている。下型側成形突部62bの上端部には、パイロットピン64が突設されている。このパイロットピン64は、端子部50u,50v,50wの斜状部分55aに透設されたパイロット孔65に貫通することで、端子部50u,50v,50wを位置決めするものである。
【0045】
一方、上型63の下面には、V字状をなす上型側成形突部63aと、V字状をなす上型側成形凹部63bとが隣接するように形成されている。上型側成形突部63aと下型側成形凹部62aは互いに対峙され、一方の上型側成形凹部63bと下型側成形突部62bとは互いに対峙されている。そのため、下型62に上型63が接近して金型を閉じることにより、凹凸の関係でもって両型62,63が互いに係合するようになっている。また、上型側成形凹部63bの内奥面には、待避凹部66が形成されている。そして、両型62,63が閉じられたときに、この待避凹部66内にパイロットピン64が挿入されることで、パイロットピン64と上型63とが干渉し合わないようになっている。
【0046】
続いて、第2プレス装置61について説明する。
図20に示すように、第2プレス装置61は端子部50u,50v,50wとバスバー22a,22b,22cとの境界部を曲げ成形するものである。第2プレス装置61は、固定型である下型67と、可動型である上型68とから構成されている。そして、下型67に対して上型68が接近することで、両型67,68が閉じられる。これに対して、下型67から上型68が離間することで、両型67,68は開かれる。
【0047】
下型67の上面には、端子部50u,50v,50wにおける埋設部55が係合される下型側成形突部67aが形成されている。下型67において下型側成形突部67aの近傍に位置する箇所には、端子部50u,50v,50wを位置決めするための挿入ピン69が突設されている。下型67に端子部50u,50v,50wをセットしたときに、そのボルト挿通孔52に挿入ピン69が貫通されるようになっている。挿入ピン69が貫通した状態では、端子部50u,50v,50wが位置ずれしないようになっている。
【0048】
上型68の下面には、下型側成形突部67aに対峙した上型側成形凹部68aが形成されている。そして、下型67に上型68が接近して金型を閉じることにより、それら両部67a,68aによる凹凸の関係でもって両型67,68が互いに係合するようになっている。なお、上型側成形凹部68aを除く上型68は、両型67,68を閉じたとき下型67にある挿入ピン69と干渉しない厚みに設定されている。
【0049】
図18(b),図21に示すように、上記第1プレス装置60及び第2プレス装置61によって、端子部50u,50v,50wに曲げ加工が施される部位には、その幅方向に延びるノッチ59が複数個凹設されている。このノッチ59は、端子部50u,50v,50wを成形する前に、導電性金属板材を打ち抜いたものである帯状成形素材92の両面にそれぞれ設けられる。本実施形態では、端子部50u,50v,50wに相当する帯状成形素材92の一方の面に1つ設けられ、他方の面に3つ設けられている。そして、帯状成形素材92においてノッチ59を凹設した部位が、内側に曲げられる。
【0050】
次に、上記のように構成された第1プレス装置60及び第2プレス装置61を用いて端子部50u,50v,50wを曲げる工程について説明する。
図18(a),(b)に示すように、第1プレス装置60の両型62,63を開いた状態で下型62の上面に、導電性金属板材を所定の形状に打ち抜いた板状の帯状成形素材92を載置する。そして、その帯状成形素材92に形成されたパイロット孔65に、下型62のパイロットピン64を貫通させ、帯状成形素材92が位置ずれしないようにする。更に、帯状成形素材92におけるボルト挿通孔52を有する側の端部を下型62に係合させることによっても、同帯状成形素材92が位置ずれしないようにする。
【0051】
図19(a),(b)に示すように、両型62,63が閉じられると、帯状成形素材92は、下型側成形凹部62aと上型側成形突部63aとの間、下型側成形突部62bと上型側成形凹部63bとの間に挟み込まれる。これにより、端子部50u,50v,50wに相当する部分の帯状成形素材92が曲げられ、端子部50u,50v,50wが成形される。その後、両型62,63が開かれ、その間から端子部50u,50v,50wのみが成形された帯状成形素材92が取り出される。
【0052】
次いで、図20(a),(b)に示すように、第2プレス装置61の両型67,68を開いた状態で、下型62の下型側成形凹部62aに、第1プレス装置60で成形された端子部50u,50v,50wを係合する。それとともに、端子部50u,50v,50wに形成されたボルト挿通孔52に挿入ピン69を貫通させ、帯状成形素材92が位置ずれしないようにする。
【0053】
そして、両型67,68が閉じられると、帯状成形素材92の端部、つまりバスバー22a,22b,22cに相当する部分が、下型側成形突部67aと上型側成形凹部68aとの隙間に挟み込まれる。これにより、バスバー22a,22b,22cと端子部50u,50v,50wとの境界部分が直角に曲げられる。その後、両型62,63が開かれ、その間から端子部50u,50v,50wのみが成形された帯状成形素材92が取り出される。
【0054】
図24〜図27に示すように、絶縁ホルダ21を被覆する絶縁樹脂層25は、インサート成形用金型70によって成形される。このインサート成形用金型70は、固定型である下型71と、可動型である上型72とから構成されている。上型72は下型71に対して接近離間可能であって、上型72が接近することにより型閉めされ、離間することにより型開きされる。
【0055】
下型71及び上型72には、それぞれ成形凹部71a,72aが対峙するように形成されている。そして、両型71,72が型閉じされることにより、互いに対峙する2つ成形凹部71a,72aによって円環状のキャビティ73が形成されるようになっている。このキャビティ73には図示しないゲートを介して絶縁樹脂層25を成形するための溶融樹脂材料90が充填される。なお、ゲートは、下型71の内周面(図24〜図27において左側の面)において複数設けられている。しかも、そのゲートは、下型71の内周面に沿って等間隔に設けられている。これにより、キャビティ73内において絶縁ホルダ21にかかる溶融樹脂材料90の圧力が均等になる。
【0056】
上型72には、キャビティ73に収容される絶縁ホルダ21の上面を押さえ付ける上型側支持体80が設けられている。この上型側支持体80は、上側成形凹部72aの内頂面から出没可能になっている。図示しないが、上型側支持体80は複数個(本実施形態では18個)設けられている。上型側支持体80は、端子部50u,50v,50wが配置されている箇所を除いて、絶縁ホルダ21の周方向に沿って等間隔に配列されている。そして、上型側支持体80が突出しているとき、その先端面に凹設された複数の係止溝81は、内側バスバー22aと中間バスバー22bとを隔てる壁部43bの上端部と、中間バスバー22bと外側バスバー22cとを隔てる壁部43cの上端部とに係合する。この係合した状態において、上型側支持体80の先端面は各バスバー22a,22b,22cの上端縁に当接される。これにより、上型側支持体80によって、絶縁ホルダ21の上側(図24に示すホルダ21の上側)が押さえ付けられるようになっている。
【0057】
下型71にはキャビティ73に収容される絶縁ホルダ21を支持するためのホルダ支持体としてのホルダ支持ピン74が設けられている。このホルダ支持ピン74は、下側成形凹部71aの底面付近からキャビティ73内に出没可能になっている。図示しないが、ホルダ支持ピン74は複数個(本実施形態では36個)設けられ、それらは絶縁ホルダ21の周方向に沿って等間隔に配列されている。
【0058】
図22,図23(a),(b)に示すように、ホルダ支持ピン74が突出している状態において、その先端部は絶縁ホルダ21の下面に形成された非貫通凹部75に係合される。この係合により、キャビティ73内に絶縁ホルダ21が収容されているとき、絶縁ホルダ21は位置ずれしなくなる。
【0059】
非貫通凹部75は、テーパ状に形成されており、その内頂部に向かうに従って縮径されている。そのため、ホルダ支持ピン74が非貫通凹部75の内周面に案内されながら、最終的に非貫通凹部75にホルダ支持ピン74が係合される。従って、下型71の下側成形凹部71aに絶縁ホルダ21をセットするとき、ホルダ支持ピン74が非貫通凹部75から外れて配置されることがない。
【0060】
絶縁ホルダ21の底面において、ホルダ支持ピン74の周囲に位置する箇所には、円弧状のリブ76a,76bが2つ突設されている。リブ76a,76bがあることで、非貫通凹部75に係合されているホルダ支持ピン74が容易に外れなくなる。
【0061】
両リブ76a,76bの間には複数(本実施形態では2つ)の切欠き部77a,77bが形成されている。この切欠き部77a,77bがあることにより、絶縁樹脂層25のインサート成形時において非貫通凹部75からホルダ支持ピン74が抜かれた状態では、切欠き部77a,77bを介して非貫通凹部75側に絶縁樹脂層25を成形するための樹脂が回り込みやすくなる。最終的に製造された集中配電部材17では、非貫通凹部75が絶縁樹脂層25によって穴埋めされている。なお、リブ76a,76b及び切欠き部77a,77bの数を任意に変更することが可能である。例えばリブ76a,76bの数を1つにするとともに、全体形状をC字状にすることで、切欠き部77a,77bを1つにすることが可能である。
【0062】
図22,図23,図14〜図16に示すように、絶縁ホルダ21の底部には、各保持溝23a,23b,23cの内部に通じる連通孔78が透設されている。連通孔78を設けたのは、絶縁樹脂層25を成形するための樹脂が、そのインサート成形時に各保持溝23a,23b,23c内に回り込みやすくするためである。連通孔78は、絶縁ホルダ21の周方向に沿って複数個設けられている。正確に言えば、各連通孔78は、それぞれの保持溝23a,23b,23cに沿ってそれぞれ配置されている。しかも、図10に示すように、各連通孔78は、絶縁ホルダ21の周方向において互いの位置をずらして配置されている。このことは、絶縁ホルダ21の径方向における同一線上には、1つの連通孔78しか配置されていないことを意味する。
【0063】
図22,図24に示すように、下型71に絶縁ホルダ21をセットしたとき、下側成形凹部71aの内側面に対し、先端面が突き当たる位置決め突部82が絶縁ホルダ21の内周面に形成されている。この位置決め突部82は、複数個設けられ、それらは絶縁ホルダ21の周方向に沿って等間隔に配置されている。すべての位置決め突部82が下側成形凹部71aの内側面に突き当たることにより、絶縁ホルダ21がその径方向へ位置ずれすることがなくなる。
【0064】
図9,図12,図13に示すように、絶縁ホルダ21にある各保持溝23a〜23cは、バスバー22a〜22cが収容されているバスバー収容部位83と、収容されていないバスバー非収容部位84とに区分される。バスバー非収容部位84における保持溝23a,23b,23c内には、複数の第1補強リブ85が絶縁ホルダ21の円周方向に間隔をおいて設けられている。各第1補強リブ85は、保持溝23a,23b,23cを隔てる壁部43a〜43dの底面及び内側面と一体的に形成されている。
【0065】
なお、保持溝23a,23b,23cに溶融樹脂材料90を流動させやすくする連通孔78は、それぞれの部位83,84に位置する保持溝23a,23b,23cの底面に形成されている。これにより、保持溝23a,23b,23c全体に溶融樹脂材料90が充填されやすくなる。
【0066】
絶縁ホルダ21におけるバスバー収容部位83は、3つの保持溝23a,23b,23cが設けられているのに対し、バスバー非収容部位84は、2つの保持溝23a,23bしか設けられていない。つまり、バスバー非収容部位84においては、最も外側にある保持溝23cがない。このことから、絶縁ホルダ21におけるバスバー非収容部位84は、バスバー収容部位83に比べて幅狭となっている。
【0067】
更に、絶縁ホルダ21におけるバスバー収容部位8の外周面には、第2補強リブ86が絶縁ホルダ21の周方向に沿って延びるように突設されている。この第2補強リブ86は、円弧状に形成され、その曲率半径が絶縁ホルダ21の半径と同じに設定されている。
【0068】
次に、上記のように構成されたインサート成形用金型70を用いて集中配電部材17をインサート成形する方法について説明する。
型開きした状態で、下型71の下側成形凹部71aに絶縁ホルダ21を配置する。そして、絶縁ホルダ21の非貫通凹部75を、下側成形凹部71a内に突出されているホルダ支持ピン74の先端に係合する。これにより、絶縁ホルダ21は下側成形凹部71aの底面から一定の間隔をおいて支持されることとなる。このとき、絶縁ホルダ21に設けられた複数の各位置決め突部82は、その先端面が下側成形凹部71aの内周面に当接されている。そのため、絶縁ホルダ21は径方向への位置ずれが規制される。
【0069】
図24に示すように、上型72が下型71に接近して金型が閉じられると、キャビティ73が形成される。それとともに、上側成形凹部72a内に突出していた上型側支持体80の先端面がバスバー22a,22b,22cの上端に当接する。更に、上型側支持体80の先端面にある係止溝81が保持溝23a,23b,23cを仕切る壁部43b,43cに係合する。これにより、絶縁ホルダ21及びバスバー22a,22b,22cが上型側支持体80によって押さえ付けられる。以上のように、絶縁ホルダ21は、複数のホルダ支持ピン74と、複数の上型側支持体80とによって上下方向の動きが規制される。
【0070】
図25に示すように、下型71に形成された図示しないゲートを介してキャビティ73内に絶縁樹脂層形成用の溶融樹脂材料90が充填される。このとき、絶縁ホルダ21を覆うように充填される溶融樹脂材料90は、各保持溝23a,23b,23cの開口部を介してその内部にも回り込む。しかも、絶縁ホルダ21に透設した連通孔78からも保持溝23a,23b,23c内に回り込む。また、絶縁ホルダ21におけるバスバー非収容部位84(図12参照)の保持溝23a,23b,23cに溶融樹脂材料90の圧力が加わっても、第1及び第2補強リブ85,86により壁部43a〜43cが変形することがない。
【0071】
溶融樹脂材料90がキャビティ73のほぼ全体に行きわたったところで、図26に示すように、ホルダ支持ピン74は下型71に退避するとともに、上型側支持体80は上型72に退避する。このとき、絶縁ホルダ21は、キャビティ73内において、支持されるものがなくなり完全に浮いた状態となるが、溶融樹脂材料90は、キャビティ73に充填され続けているので、絶縁ホルダ21が傾くことはない。その上、ホルダ支持ピン74と上型側支持体80とが退避することによる抜き穴が溶融樹脂材料90により埋められる。更に、ホルダ支持ピン74が係合されていた非貫通凹部75内やその付近に溶融樹脂材料90が回り込むとともに、壁部43b,43cの上端部の間やその付近に溶融樹脂材料90が回り込む。これにより、絶縁ホルダ21が溶融樹脂材料90によって覆われる。
【0072】
図27に示すように、所定時間が経過し、溶融樹脂材料90が冷却固化することで絶縁樹脂層25が成形される。その後、下型71から上型72を離間させて型開きし、絶縁ホルダ21と絶縁樹脂層25とが一体化された集中配電部材17を取り出す。
【0073】
次に、集中配電部材17の製造方法について説明する。
(導電性金属板材の打ち抜き工程)
図29に示すように、導電性金属板材91を図示しないプレス装置によって打ち抜き、各バスバー22a〜22cを曲げ形成するもととなる帯状成形素材92を製作する。各バスバー22a,22b,22cの帯状成形素材92は、直線状であるため、それらを並列に打ち抜くことが可能である。このことは、帯状成形素材92を円環状に打ち抜く場合に比べて歩留まりを著しく向上することに貢献している。
【0074】
(バスバーに関する第1の曲げ加工)
図29に示すように、帯状成形素材92において端子部50u,50v,50wに相当する部分を、既に上述した第1プレス装置60と第2プレス装置61とによって曲げ成形する。
【0075】
(バスバーに関する第2の曲げ加工)
図29に示すように、端子部50u,50v,50wを成形し終えた帯状成形素材92において、バスバー22a,22b,22cに相当する部分を、その厚さ方向に湾曲させて略円環状に成形する。この成形に関しては、図示しないベンディング装置で行う。このように、絶縁ホルダ21にバスバー22a,22b,22cを組み付ける前に、バスバー22a,22b,22cを略円環状に賦形しておく。
【0076】
(バスバー挿入工程)
図30に示すように、既に製作しておいた絶縁ホルダ21に、各バスバー22a,22b,22cを挿入する。ここでは、絶縁ホルダ21の外側に位置するものから順番に挿入する。つまり、外側バスバー22c、中間バスバー22b、内側バスバー22aの順で挿入する。この順番で挿入するのは、内側にあるバスバーから先に挿入すると、後から挿入するバスバーが、先に挿入されたバスバーの端子部によって挿入を妨げられるからである。
【0077】
(バスバーに関する第3の曲げ加工)
図31に示すように、絶縁ホルダ21に各バスバー22a〜22cを組み付けた状態で、各タブ41a,41b,41cをそれぞれの先端が絶縁ホルダ21の中心に向くように曲げ成形する。このとき、中間バスバー22b及び外側バスバー22cについては、基端部に湾曲部44,45が成形される。
【0078】
(インサート成形)
図32に示すように、バスバー22a,22b,22cが組み付けられた絶縁ホルダ21の外周に絶縁樹脂層25を成形する。この成形に関しては、既に説明したインサート成形用金型70を用いた製造方法によって行う。その後、インサート成形用金型70から集中配電部材17を取り出し、最後に絶縁樹脂層25に形成された樹脂収容部53に封止材54を充填する。
【0079】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)各バスバー22a,22b,22cが絶縁ホルダ21に形成された保持溝23a,23b,23cに挿入されることで、それらの間隔が保持されている。そのため、インサート成形時に絶縁樹脂層25を成形する溶融樹脂材料90の圧力がバスバー22a,22b,22cに加わっても、各バスバー22a,22b,22cの相対位置が変動するのを防止することができる。
【0080】
(2)各バスバー22a,22b,22cは絶縁ホルダ21に保持されている。このことから、インサート成形時に溶融樹脂材料90の熱の影響で略円環状に折曲された各バスバー22a,22b,22cが直線状に戻るのを確実に防止できる。従って、各バスバー22a,22b,22c間の寸法精度が低下するのを防止することができ、結果として高い絶縁耐圧を確保することができる。しかも、絶縁樹脂層25が部分的に薄くなるのを確実に防止することができる。
【0081】
(3)インサート成形用金型70で絶縁ホルダ21及びバスバー22a,22b,22cの周囲に絶縁樹脂層25を形成している。このような製造方法によれば、二重モールド法とは異なり、1種の金型70で足り得る。よって、集中配電部材17の製造コストが高くなるのを抑えることができる。
【0082】
(4)分断構造からなる複数の円弧状部材から絶縁ホルダ21を構成する場合と異なり、絶縁ホルダ21は連続的な円環状に形成されているため、絶縁ホルダ21上に溶融樹脂材料90が入り込む隙間が存在しない。そのため、インサート成形時に、絶縁ホルダ21上に絶縁樹脂層25を成形する溶融樹脂材料90が入り込む余地がない。このことは、絶縁樹脂層25を成形するときに、ボイドが発生するのを防止することができる結果、集中配電部材17の防水性、気密性及び絶縁耐圧を確実に確保することができる。従って、信頼性の高い集中配電部材17を提供することができる。
【0083】
(5)絶縁ホルダ21は、絶縁樹脂層25内に完全に埋設されている。このことから、絶縁ホルダ21の一部が露出している構成に比べて、外部の湿気等が絶縁樹脂層25に侵入する可能性が極めて小さくなる。よって、集中配電部材17の防水性及び気密性の低下を防止することができ、信頼性をいっそう高めることができる。
【0084】
(6)絶縁ホルダ21及び絶縁樹脂層25の形成材料にPPSを使用している。PPSは機械的強度に優れているため、車両の振動等による衝撃にも十分に耐え得る集中配電部材17とすることができる。しかも、PPSにはガラス繊維が混入されているため、大電流が流れるバスバー22a,22b,22cでも、その絶縁耐圧に十分に耐えることができる。
【0085】
(7)絶縁ホルダ21と絶縁樹脂層25とによってバスバー22a,22b,22c間の絶縁が図られる。そのため、テフロン(R)等の高価な絶縁コーティングが不要になり、比較的簡単にかつ低コストで集中配電部材17を製造することができる。
【0086】
(8)各相のバスバー22a,22b,22cは、1つの部材からなる絶縁ホルダ21に保持され、更にそれらが絶縁樹脂層25によって被覆されている。そのため、例えば、円弧状の樹脂成形品からなる複数個の絶縁ホルダにより各バスバーを保持し、それを絶縁樹脂層25で被覆する場合と比較して、部品点数を大幅に少なくすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0087】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。この実施形態においては、前記実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0088】
前記実施形態では絶縁ホルダ21を一つの部材から構成したが、図33,図34に示すように、ここでは絶縁ホルダ21が複数の円弧状樹脂部品95から構成されている。各円弧状樹脂部品95は、絶縁ホルダ21の構成と同じように、壁部43a〜43dによって区画された保持溝23a〜23cが形成されている。複数の円弧状樹脂部品95は、その両端部が隣接する円弧状樹脂部品95の端面と接合するように、バスバー22a,22b,22cの円周方向に沿って配置されている。そして、絶縁ホルダ21を全体として見ると連続的な円環状をなしている。
【0089】
そして、インサート成形時には、各バスバー22a,22b,22cを保持溝23a,23b,23cにはめ込んで、絶縁ホルダ21を円環状にする。その後、第1実施形態で説明したように、インサート成形用金型70の下型71にセットし、キャビティ73内に溶融樹脂材料90を充填して絶縁ホルダ21の周囲に絶縁樹脂層25を成形する。
【0090】
従って、本実施形態によれば、絶縁ホルダ21は、複数の円弧状樹脂部品95によって構成されているため、絶縁ホルダ21を樹脂成形によって真円状に樹脂成形する場合と比べて、比較的簡単にかつ精度よく作製することが可能である。しかも、低コストに絶縁ホルダ21を作製することができる。
【0091】
(別の実施形態)
本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、3相の薄型ブラシレスモータ11に具体化したが、それに限らず単相のそれに具体化してもよい。また、単相モータに具体化するのに伴い、バスバー及び保持溝の数を2つにすることが許容される。
【0092】
・前記実施形態は、薄型DCブラシレスモータ11を使用しているが、ACブラシレスモータに具体化することも許容される。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に示す。
【0093】
(1)請求項5において、前記絶縁樹脂層の形成材料は、前記絶縁ホルダと同じPPS製である。この構成とすれば、絶縁ホルダと絶縁樹脂層とを同じ材料とすることで、異種の材料を組み合わせて用いた場合に比べて両者の親和性を高くすることができ、絶縁ホルダと絶縁樹脂層とを強力に付着させることができる。
【0094】
(2)複数本のバスバーと、前記各バスバー同士を非接触状態に維持しつつ前記各バスバーを相対保持する絶縁ホルダと、前記各バスバー及び前記絶縁ホルダを被覆する樹脂絶縁層とを備えた。この構成にすれば、各バスバーの間隔を保持してそれらの絶縁を確実に図ることができる。
【0095】
(3)モータの各相に対応して設けられる複数本のバスバーと、前記各バスバーを個別に収容するための保持溝が複数形成された絶縁ホルダと、前記各バスバー及び前記絶縁ホルダを被覆する樹脂絶縁層とを備え、ステータの巻線に対して集中的に電流を配給可能にした。この構成にすれば、モータのステータに使用される各バスバーの間隔を保持してそれらの絶縁を確実に図ることができる。
【0096】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、製造を比較的簡単にすることができる。また、製造コストを低くすることができるとともに、絶縁耐圧を高くすることができる。
【0097】
また、絶縁ホルダを真円状に樹脂成形する場合と比べて比較的簡単にかつ精度よく作製することができる。
また、インサート成形時にボイドの発生を回避することができるので、集中配電部材の防水性及び気密性を向上することができ、もって絶縁耐圧もいっそう高くすることができる。
【0098】
また、絶縁樹脂層からの表面から絶縁ホルダが露出している構成に比べて、外部の湿気等が侵入する可能性を極めて小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】薄型ブラシレスモータの概略図。
【図2】薄型ブラシレスモータの概略配線図。
【図3】集中配電部材の斜視図。
【図4】集中配電部材の正面図。
【図5】集中配電部材の背面図。
【図6】(a)は集中配電部材の断面図、(b)はその端子部の拡大図、(c)は端子部の拡大斜視図。
【図7】集中配電部材の端子部を示す平面図。
【図8】絶縁ホルダの斜視図。
【図9】絶縁ホルダにバスバーを挿入した正面図。
【図10】絶縁ホルダの一部分を拡大して示す正面図。
【図11】絶縁ホルダを省略し、バスバーのみを示す正面図。
【図12】絶縁ホルダにおけるバスバー非収容部位を示す拡大図。
【図13】(a)は図9におけるE−E断面図、(b)は図9におけるF−F、(c)は図9におけるG−G断面図。
【図14】(a)は図4のA−A断面図、(b)はその部分の斜視図。
【図15】(a)は図4のB−B断面図、(b)はその部分の斜視図。
【図16】(a)は図4のC−C断面図、(b)はその部分の斜視図。
【図17】(a)は図4のD−D断面図、(b)はその部分の斜視図。
【図18】(a)は型開きした第1プレス装置の断面図、(b)はそこでプレス成形される帯状成形素材。
【図19】(a)は型閉じした第1プレス装置の断面図、(b)はそこでプレス成形された帯状成形素材。
【図20】(a)は型閉じした第2プレス装置の断面図、(b)はそこでプレス成形された帯状成形素材。
【図21】(a)はバスバーの端子部を曲げ成形する前の帯状成形素材、(b)はそのH−H断面図。
【図22】絶縁ホルダの背面図。
【図23】(a)は非貫通凹部の拡大図、(b)は非貫通凹部の拡大斜視図。
【図24】インサート成形用金型を示し、絶縁ホルダをセットした状態を示す断面図。
【図25】図24に続いて、インサート成形用金型内に溶融樹脂材料を充填した状態を示す断面図。
【図26】図25に続いて、ホルダ支持ピンと上型側支持体とを待避させた状態を示す断面図。
【図27】図26に続いて、インサート成形用金型を型開きした状態を示す断面図。
【図28】集中配電部材の製造工程を示し、導電性金属板材を打ち抜いて帯状成形素材を得た図。
【図29】図28に続く製造工程を示し、バスバーの端子部を曲げた図。
【図30】図29に続く製造工程を示し、バスバーを絶縁ホルダに挿入する図。
【図31】図30に続く製造工程を示し、バスバーのタブを内側に曲げた図。
【図32】図31に続く製造工程を示し、端子部の一部を封止材で封止した図。
【図33】第2実施形態における絶縁ホルダにバスバーを挿入した正面図。
【図34】同じく、絶縁ホルダを構成する円弧状樹脂部品の斜視図。
【符号の説明】
11…薄型ブラシレスモータ(モータ)、15…ステータ、16…巻線、17…集中配電部材、21…絶縁ホルダ、22a,22b,22c…バスバー、23a,23b,23c…保持溝、25…絶縁樹脂層、41a,41b,41c…タブ、43a〜43d…壁部、50u,50v,50w…端子部。

Claims (1)

  1. バッテリに接続される端子部及びステータの巻線に接続されるタブを有するとともに、厚さ方向に湾曲されることにより略円環状に形成され、モータの各相に対応して設けられる複数本のバスバーと、インサート成形によって形成され、前記各バスバーを被覆する樹脂絶縁層とを備え、前記巻線に対して集中的に電流を配給可能なリング状の集中配電部材であって、
    集中配電部材周方向に沿って延びる複数の保持溝が並列に形成された円弧状樹脂部品の両端面を隣接する他の円弧状樹脂部品の端面と接合することによって連続円環状に形成した絶縁ホルダを備え、前記各バスバーは、前記絶縁ホルダの保持溝内に各々挿入されることでそれらが互いに所定の間隔を隔てた状態で集中配電部材の径方向に積層配置されており、前記絶縁ホルダは、前記保持溝内に挿入された前記各バスバーとともに前記絶縁樹脂層により被覆され、前記樹脂絶縁層内に完全に埋設されていることを特徴とする車両用薄型ブラシレスモータの集中配電部材。
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