JP3728499B2 - 芯鞘型複合繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高吸湿性エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする染色加工性良好な芯鞘複合繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルやナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等の合成繊維は優れた物理的特性および化学的特性を有しており、衣料用途のみならず広く産業用途にも使用されており、工業的に貴重な価値を有している。
しかしながら、これら合成繊維は、吸湿、吸水性が低いため肌着、中衣、シーツ、タオル等の吸湿、吸水性が要求される分野への進出は限定されているのが実情である。例えばポリエステル繊維の場合には、従来から最大の課題とも云える吸湿・吸水性を改善する提案が種々なされている。
具体的には、ポリエステル繊維を加工剤で処理して親水性を付与する方法やポリエステル繊維表面又は内部を多孔質化して吸湿・吸水性を付与する方法などが提案されている。
しかしながら、これらの手法では吸湿・吸水性を十分に付与することが困難であり、かつ洗濯により付与された性能が低下するという問題があつた。
これらの問題点を改善するために、親水性に優れるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体をポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合した繊維が提案されている(特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報等)。
【0003】
これらの繊維は、高温高圧染色や縫製、あるいはスチームアイロンの使用により、表面に露出したエチレン−ビニルアルコール系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じ、織編物としての風合が硬化するという課題があり、これを改善するために、ジアルデヒド化合物によりアセタール化処理する方法が、例えば、特公平7−84684号公報に提案されている。
【0004】
しかしながら、該アセタール化処理は染色工程以外の別工程を必要とするため加工コストが高くなるという問題、アセタール化処理する際に強酸を高濃度で使用するため、処理装置に耐酸性が要求されるという問題、アセタール化処理時の未反応のジアルデヒド化合物によって染料が退色し、染色物の耐光性が悪化するという問題、天然繊維に比べて膨らみ感が不足するという問題、スチームアイロンや転写プリント等の過度の熱処理等によりエチレン−ビニルアルコール系共重合体が軟化したり微膠着を生じるという問題などを有していた。
【0005】
このような問題を解決するために本願出願人は、すでに特開平10−158926号公報にてジアルデヒドと界面活性剤の混合物を用いた架橋処理法を提案している。しかしながら、この技術では精練と同時に架橋処理することが困難であるため、架橋処理を染色処理と同時に行うこととなり、その際に採用される処理条件の関係から、使用できる染料の種類が制限されるという課題を残していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を克服し、これらの樹脂が本来備えている特性を損なうことなく、染色加工の簡略化及び低コスト化、染料選択の自由度の大きい芯鞘型複合繊維を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを、(A)に対する(B)の割合を3〜45質量%とし、溶融混練して得られる混合物であって、かつ60℃のDMSOに対し不溶解性の成分を5〜75質量%含有する混合物成分を鞘成分とし、融点150℃以上の熱可塑性樹脂(C)を芯成分とし、鞘成分と芯成分の質量複合比率が10:90〜90:10である複合繊維であって、該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm2以上存在していることを特徴とする複合繊維である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物である。該重合体に含有されるエチレン単位の含有量は25〜70モル%であり、好ましくは30〜55モル%である。該共重合体のエチレン単位の含有量が70モル%を超えて高くなる場合、すなわちビニルアルコール単位の含有量が低くなれば、得られるポリマーの融点が低くなり、実用に耐える耐熱性を有する繊維を得ることができない場合がある。また、水酸基の減少のために親水性等の特性が低下し、目的とする親水性を有する天然繊維ライクの風合が得られにくくなる。一方、エチレン単位の含有量が25モル%未満の場合、すなわちビニルアルコール単位の含有量が75%を超えて高くなりすぎると、溶融紡糸性が不良になる上、延伸時に単糸切れ、断糸が多くなる。
【0009】
ビニルアルコール単位の含有量が多いエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、紡糸温度として250℃以上が要求されるような、ポリエチレンテレフタレートなどの高融点ポリマーとの複合紡糸が可能であるが、エチレン単位の含有量が少ないために溶融紡糸性が低下する傾向がある。従って、ポリエチレンテレフタレート等の高融点ポリマーを芯成分として複合紡糸することを考慮すれば、エチレン単位の含有量が30〜55モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用することが好ましい。
【0010】
本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)にポリアミド系樹脂(B)を3〜45質量%の割合、好ましくは5〜40質量%の割合で溶融混練することによって該共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)との少なくとも一部を架橋結合させることが重要である。この架橋反応は、溶融混練時のみに止まらず繊維化した後の熱処理などによっても進行するものであるが、架橋反応は、主にポリアミドの末端カルボキシル基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体の−OHとの反応や、ポリアミドの末端アミノ基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体のカルボキシル基との反応等によるものと推定される。架橋は、95℃の熱水中でも膠着しない程度に形成されている必要があり、溶融混練時のポリアミド系樹脂(B)の分散状態によって、島表面と海成分の架橋反応の反応効率が影響され、ある範囲に分散していることが重要である。そして、本発明においては、溶融混練して得られる混合物(複合繊維の鞘成分)には、60℃のDMSO中で2時間加熱攪拌した場合に、不溶解性の成分が5〜75質量%含まれていることが重要である。
60℃のDMSO処理によって、混合物中のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は溶解し、ポリアミド系樹脂(B)と共重合体(A)とが架橋反応して形成される樹脂成分および未反応のポリアミド系樹脂(B)の両者が不溶解性の成分として確認される。
本発明において、混合物成分中の不溶解性の成分の含有量が5質量%未満であると、スチームアイロン、あるいは洗濯、乾燥時に繊維間の膠着や過大収縮等を生じやすい。一方、75質量%を越えると繊維化工程性が低下し、風合いもぬめり感が強くなり好ましくない。したがって、7〜50質量%の不溶解性の成分の含有量であることが好ましい。
【0011】
本発明で使用されるポリアミド系樹脂(B)の種類は特に限定されるものでないが、例えば、ポリカプロラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン2,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカノメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリドデカメチレンセバカミド(ナイロン10,8)、あるいは、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジペート共重合体(ナイロン6/6,6)、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン12/6,6)、ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)、エチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)などが挙げられる。
なお、上記のナイロン表示中で「,」の前後の数値はポリアミドを構成するジカルボン酸成分とジアミン成分のそれぞれの炭素数を表すものであり、「/」は前後の数値で示されるポリアミド同士の共重合体を表すものである。
【0012】
これらのポリアミド系樹脂(B)は、ナイロン6/12の縮重合時にポリエーテルジアミン類とジカルボン酸(ダイマー酸など)を添加して、高分子鎖中にポリエーテル結合を有するポリアミドとしてもよい。また、縮合時にヘキサメチレンジアミンやラウリルアミンのような脂肪族アミンやメタキシリレンジアミンやメチルベンジルアミンのような芳香族アミンを添加して、ポリアミド中のカルボキシル末端基を減少させたものも好ましい。また、例えば、メタキシリレンジアミンと全量の80%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと、炭素数が6〜10個のα,ω−脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%含有するメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂も有効である。
これらの重合体の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミドなどのような単独重合体、およびメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、などのような共重合体、ならびにこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジンのような脂環式ジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような脂肪族ジアミン、テレフタル酸のような脂肪族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムのようなラクタム、γ−アミノヘプタン酸のようなω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等とを共重合した共重合体等が挙げられる。上記の共重合体において、パラキシリレンジアミンは全キシリレンジアミンに対して80%以下であり、好適には75%以下である。またキシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中において少なくとも70モル%以上、好適には75モル%以上である。また、これらのポリマーには、たとえばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,12等の重合体、帯電防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、安定剤、染料、顔料等を含有してもよい。
【0013】
さらに、非晶質ポリアミド、すなわち、DSC測定において、実質上吸熱結晶融解ピークを有さないもので、主として、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合体も用いられる。脂肪族ジアミンとしては、たとえばヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)−メタン、2,2−ビス−(4−アミノヘキシル)−イソプロピリジン、1,4−(1,3)−ジアミノシクロヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパン、および2−エチルジアミノブタンなどが挙げられる。これらのジアミンは、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタンメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、および1,3−ジアミノプロパンが好適に用いられる。
芳香族ジカルボン酸としては、たとえばイソフタール酸、テレフタール酸、アルキル置換イソフタール酸、アルキル置換テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、イソフタール酸、テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが熱成形性の面で好適である。そして、非晶質ポリアミドとしての例としては、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸の重縮合体、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸の重縮合体などが挙げられる。なかでもイソフタール酸/テレフタール酸のモル比が60/40〜95/5、さらには、65/35〜90/10の範囲にあるヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体が好適である。
【0014】
上記のポリアミド系樹脂(B)は1種または2種以上用いられるが、上記樹脂(B)のうち好適なポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6/6,6、ナイロン6/12、メタキシリレンジアミン含有ポリアミド、非晶質ポリアミドなどである。ナイロン6/12における6成分と12成分の組成割合は特に制限はないが12成分が60モル%以下、より好ましくは50モル%以下が好ましい。
【0015】
本発明の複合繊維の鞘成分は、エチレン−ビルアルコール系共重合体(A)成分中に不溶解性の成分が島状に分散しており、その島の大きさは1nm〜300nm、好ましくは10nm〜200nmであり、島の数は10ケ/μm2以上であることが重要である。島の大きさが300nmを超えると繊維化工程性が不安定となることと、目的である耐熱性が得られにくいため好ましくなく、また、1nm未満になると耐熱性が得られず不適当である。また、島数が10ケ/μm2未満になった場合、耐熱性が得られず不適当である。島数の上限値は特に限定されないが、多すぎる場合はゲル化に至り紡糸不可となるので、好ましくは1000ケ/μm2以下、特に500ケ/μm2以下であることが望まれる。
【0016】
本発明の複合繊維の鞘成分における、エチレン−ビルアルコール系共重合体(A)成分中の島の分散状態は、繊維化工程性を考慮すると下記に示す方法で求められる分散係数(α)が0.5以上、さらには0.65以上であることが望ましい。分散係数は値が大きいほど、相溶化に優れる傾向となるが本発明においては(A)成分と(B)成分との相溶性からすれば、0.95以下、さらには0.8以下の分散係数で分散されていることが適当である。
【0017】
分散係数(α)の計算方法は下記に示す通りである。
透過型電子顕微鏡(日立H−800NA)を用いて観察し、100,000倍の像を得、その画像をスキャナ装置(EPSON GT-9500)を用いてコンピューターに取り込んで画像解析を行い、市販の画像解析ソフト((株)プラネトロン Image-Pro Ver.4.0)を用い、下記条件で粒子解析した。
輝度レンジ;Automatic Dark Objects
測定項目;Area,Center-X,Center−Y
分散係数(α)=exp(−φ)
【数1】
Xi:i番目のブロックに含まれる点数
X:1つのブロックに含まれる点の平均点
n:ブロック数
【0018】
また本発明の複合繊維の芯成分を構成する熱可塑性樹脂(C)は耐熱性、寸法安定性等の点から、融点が150℃以上の結晶性熱可塑性樹脂であることが重要であり、そのような樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等をあげることができる。ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4'−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールまたはこれらのエステル形成性誘導体とから合成されるポリエステルや、ポリ乳酸等のポリエステルをあげることができ、中でも構成単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位または、ブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。また、かかるポリエステル中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。
【0019】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドをあげることができ、少量の第3成分を含むポリアミドでもよい。かかるポリアミド中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
【0020】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンを例示することができる。
【0021】
さらに芯成分に使用する熱可塑性樹脂(C)としては、上記のポリマーを単独で使用しても、それらを2種以上ブレンドして使用しても差し支えない。
【0022】
さらに、本発明においては複合繊維の鞘成分と融点が150℃以上の熱可塑性樹脂(C)からなる芯成分との複合比率は前者:後者(質量比)=10:90〜90:10であることが紡糸性の点から重要である。複合形態については従来公知の芯鞘型の複合形態であれば特に制限はなく、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の有する親水性、および風合改良性を発現させるためには、複合繊維の表面をエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が覆っていることが必要不可欠である。
【0023】
本発明の複合繊維の製造方法は、上記のような島の分散状態を達成できる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、以下のような方法によって製造することができる。
まず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)をチップブレンド、あるいはチップフィーダーを用いて混合し、溶融混練効果の高いスクリュー構成にした二軸押出機で溶融押出し紡糸ヘッドに導入する。この時の押し出し条件としては、温度はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の融点の高い側を基準にして融点からプラス10℃の範囲、滞留時間は2分〜30分の範囲で設定する。一方の熱可塑性樹脂(C)は、別の押出機で溶融押出し紡糸ヘッドに導入する。
【0024】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、高温で長く滞留すると分解をはじめるため、ポリエステルなどの高融点ポリマーと複合紡糸する場合には、紡糸ヘッド温度を260〜300℃に設定する必要があり、かかる高温紡糸が必要な場合は、押出機からヘッドまでのゾーン温度をそれぞれのポリマーの適正温度で設定することが好ましい。このことは、高重合度ポリプロピレンなどのように高粘度ポリマーと複合する場合にも留意することが必要である。この点においてナイロンは(C)成分の熱可塑性樹脂として適している。
【0025】
溶融紡出速度(溶融紡出量)は約20〜50g/紡糸孔1mm2・分程度とすると、品質の良好な複合繊維を良好な紡糸工程性で得ることができるので好ましい。また、紡糸口金における紡糸孔の大きさや数、紡糸孔の形状などは、目的とする芯鞘複合繊維の単繊維繊度、マルチフィラメントのトータル繊度、断面形状などに応じて調節することができるが、紡糸孔(単孔)の大きさを約0.018〜0.07mm2程度にしておくのが望ましい。紡糸ヘッド温度条件によっては、紡糸口金の孔周囲にノズル汚れが堆積して糸切れが発生するので、ノズル孔出口がテーパー状に広がった形状にしたり、口金下の雰囲気をスチームシールして酸素を遮断する手法が好ましい。
【0026】
そして、上記によって溶融紡出した複合繊維を、一旦複合成分ポリマーのうちガラス転移温度の低い方のポリマーのガラス転移温度以下の温度、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以上低い温度に冷却する。この場合の冷却方法や冷却装置としては、紡出した複合繊維をそのガラス転移温度以下に冷却できる方法や装置であればいずれでもよく特に制限されないが、紡糸口金の下に冷却風吹き付け筒などの冷却風吹き付け装置を設けておいて、紡出されてきた複合繊維に冷却風を吹き付けてガラス転移温度以下に冷却するようにすることが好ましい。
【0027】
その際に冷却風の温度や湿度、冷却風の吹き付け速度、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け角度などの冷却条件は、口金から紡出されてきた複合繊維を繊維の揺れなどを生じないようにしながら速やかに且つ均一にガラス転移温度以下にまでに冷却できる条件であればよい。そのうちでも、冷却風の温度を約20〜30℃、冷却風の湿度を20〜60%、冷却風の吹き付け速度を0.4〜1.0m/秒程度として、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け方向を紡出方向に対して垂直にして紡出した複合繊維の冷却を行うのが、高品質の複合繊維を円滑に得ることができるので好ましい。また、冷却風吹き付け筒を用いて前記の条件下で冷却を行う場合は、紡糸口金の直下にやや間隔をあけてまたは間隔をあけないで、長さが約80〜160cm程度の冷却風吹き付け筒を配置するのが好ましい。また、引取り速度は、一旦巻き取ってから延伸処理を行う場合、紡糸直結の一工程で紡糸延伸して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き取る場合とで異なるが、おおよそ500m/minから6000m/minの範囲で引き取れる。500m/min未満で紡糸できないことはないが、生産性の点からは意味が少ない。一方、6000m/minを越えるような高速では、繊維の断糸が起こりやすい。生産性及び生産コストの面、さらには、本発明のような架橋反応を生じるような繊維においては高速紡糸方式(延伸省略)、紡糸直結延伸方式で繊維化することが好ましい。延伸は通常の乾熱延伸でも湿熱延伸でも良く、使用するエチレン−ビニルアルコール系共重合体が膠着しない温度で(C)成分の延伸が可能な適正条件を選択すればよい。
【0028】
このようにして得られる本発明の複合繊維の単繊維繊度は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、0.5〜50dtexのものを製造することができる。そして、かかる本発明の複合繊維は、例えば、衣料用途や非衣料用途など各種の用途に好適に使用することができるものである。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
〔架橋繊維の風合〕
○:ソフトで嵩高感のある風合
×:膠着が生じ、硬化している
〔繊維化工程性〕
100kg紡糸した際の毛羽・断糸の発生状況で評価した。
○:毛羽、断糸の発生なく良好
△:断糸はなく、毛羽の発生が僅かに認められる
×:断糸が発生
〔島の分散状態、島の個数〕
透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H−800NA型)を用い、複合繊維の断面を100000倍に拡大して観察した。
島の大きさは、島部が鞘成分中にほぼ球形で分散しているので、その平均直径を意味するものである。
〔不溶解性成分の含有量〕
光学顕微鏡または電子顕微鏡観察による繊維断面写真から、複合繊維を構成する鞘成分(混合物成分)の面積比率(R;但し、複合繊維断面積を1としたときの値)を求める。次いで、繊維試料0.3gをDMSO溶媒50mlに入れ、60℃×2時間加熱溶解処理し、処理前後の試料質量から下記式により求めた。
(鞘成分中の)不溶解性成分の含有量(%)=〔{処理後質量−処理前質量×(1−R)}/(処理前質量×R)〕×100
【0030】
実施例1
エチレン−ビニルアルコール系共重合体〔エチレン単位の含有量44モル%、ケン化度99.6%、メルトインデックス MI=2160g(190℃、荷重5.5g/10min)〕にナイロン6/12(6/12=80/20%)を10質量%チップブレンドし、30φ二軸押出機、220℃にて溶融混練させ、鞘成分用の混合物成分とし、ポリエチレンテレフタレート([η]=0.68)を芯成分とし、両者の複合比率を1:1とし、芯鞘型の複合紡糸装置を用いて口金温度260℃の条件で紡糸ノズルより吐出し、4500m/分の速度で紡糸を行い、83デシテックス/24フィラメントの複合繊維を得た。
次いで得られた複合繊維を用いて編物を作成し、染色および還元洗浄を下記条件にて行い、染色物の風合変化等の評価を行った結果、良好な風合を有する染色物が得られた(表1)。
【0031】
染色条件
浴比 1:50
105℃×40分
還元洗浄
NaOH 2g/l
Na2SO4 2g/l
アミラジンD 2g/l
85℃×20分
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2〜5
ポリアミド系樹脂の種類、添加量、芯鞘の複合比率等を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した結果、いずれも風合が良好な染色物であった(表1)。
【0034】
実施例6〜8
芯成分のポリマー(C)の種類又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)のエチレン単位の含有量等を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した結果、いずれも風合が良好であった(表1)。
【0035】
比較例1、2
ポリアミド系樹脂(B)の添加量を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した。ポリアミド系樹脂の添加量が1%のものは繊維化可能であったがエチレン−ビニルアルコール系重合体の架橋反応が進行せず良好な風合のものが得られなかった。添加量が70%のものは、粘度低下が大きく繊維化工程性が極めて悪く、風合いもぬめり感が強く不良であった(表1)。
【0036】
比較例3、4
芯鞘の複合比率を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に評価した。鞘/芯の比率を5/95、95/5のものは、断面形成が不良であり均一な品質のものは得られなかった(表1)。
Claims (2)
- エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを、(A)に対する(B)の割合を3〜45質量%とし、溶融混練して得られる混合物であって、かつ60℃のDMSOに対し不溶解性の成分を5〜75質量%含有する混合物成分を鞘成分とし、融点150℃以上の熱可塑性樹脂(C)を芯成分とし、鞘成分と芯成分の質量複合比率が10:90〜90:10である複合繊維であって、該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm2以上存在していることを特徴とする複合繊維。
- ポリアミド系樹脂(B)がナイロン6/12、ナイロン6及びナイロン6,6からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド系樹脂である請求項1記載の複合繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2001375791A JP3728499B2 (ja) | 2001-12-10 | 2001-12-10 | 芯鞘型複合繊維 |
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