JP3665288B2 - 混紡糸 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高吸湿性エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする合成繊維と天然繊維とからなる吸湿性に優れ、肌に優しい混紡糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルやナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等の合成繊維は優れた物理的特性および化学的特性を有しており、衣料用途のみならず広く産業用途に使用されており、工業的に貴重な価値を有している。
しかしながら、これら合成繊維は、吸湿、吸水性が低いため肌着、中衣、シーツ、タオル等の吸湿、吸水性が要求される分野への進出は限定されているのが実情である。
一方、綿、絹、羊毛等の天然繊維は吸湿、吸水性に優れ、また肌にも優しいなどの長所を有しているが、合成繊維に比較すると寸法安定性、防しわ、耐久性に劣る。
上記のような合成繊維と天然繊維のそれぞれの短所を補い長所を引き出すために、合成繊維と天然繊維とからなる混紡糸は古くから知られている。特に綿とポリエステルの混紡糸は綿の吸湿、吸水性等とポリエステルの速乾性、洗濯堅牢性、耐光性、耐皺等が活かされるため、肌着、ワイシャツを中心に衣料用に広く用いられている。
しかしながら、ポリエステルは吸湿・吸水性が不十分であり、また肌との馴染みが不十分であった。
近年これらの問題点を改善するために、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を他の熱可塑性重合体、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合化し繊維化することにより吸湿性、肌との馴染みを改良しようとして各種の提案がなされている(特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報等)。
【0003】
これらの提案で得られる繊維は、湿熱状態において繊維表面に露出したエチレン−ビニルアルコール系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じるため、染色時などに温度管理を適切にしないと、膠着に伴い織編物の風合が硬化するという課題を有しており、ジアルデヒド化合物によりアセタール化処理することにより該繊維の耐熱性を改善させる方法も提案されている。
しかしながら、アセタール化処理は繊維形成後に別工程が必要となるばかりか、場合によっては、染色加工時に使用できる染料が制限されるなどの課題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、染色加工時の染料選択の制限の原因となる上記のようなアセタール加工をすることなく、耐熱性が改善されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含む合成繊維と天然繊維とからなる風合いの良好な混紡糸を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを溶融混練して得られ、60℃のDMSOに対し不溶解性の成分である、ポリアミド樹脂(B)と共重合体(A)とが架橋反応して形成された樹脂成分および未反応のポリアミド系樹脂(B)を5〜75質量%含有する混合物を少なくとも一成分とする合成繊維と天然繊維とからなる混紡糸であって、該合成繊維と天然繊維との質量混合比率は10:90〜90:10であり、かつ該合成繊維の該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm以上存在していることを特徴とする混紡糸である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係わるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物である。該共重合体に含有されるエチレン単位の含有量は25〜70モル%であることが必要であり、好ましくは30〜55モル%である。該共重合体のエチレン単位の含有量が70モル%を超えて高くなる、すなわちビニルアルコール単位の含有量が低くなれば、得られるポリマーの融点が低くなり、実用に満足な耐熱性を有するものを得ることができない場合がある。また、水酸基の減少のために親水性等の特性が低下し、目的とする親水性を有する天然繊維ライクの風合が得られにくくなる。一方、エチレン単位の含有量が25モル%未満の場合、すなわち、ビニルアルコール単位の含有量が75%を超えて高くなると、該共重合体の融点は高温側にシフトし、例えば、紡糸温度として250℃以上が要求されるようなポリエチレンテレフタレートなどの高融点ポリマーとの複合紡糸が可能となるが、一方でエチレン単位の含有量が少ないために溶融紡糸性が低下する、紡糸延伸時での断糸が増加するなどの傾向がある。
従って、ポリエチレンテレフタレート等の高融点ポリマーとの複合繊維を本発明の混紡糸に使用することを考慮する場合、エチレン単位の含有量が30〜55モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用することが好ましい。
【0007】
本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)にポリアミド系樹脂(B)を3〜45質量%の割合、好ましくは5〜40質量%の割合で溶融混練することによって該共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)との少なくとも一部を架橋結合させることが重要である。この架橋反応は、溶融混練時のみに止まらず繊維化した後の熱処理などによっても進行するものであるが、架橋反応は、主にポリアミドの末端カルボキシル基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体の−OHとの反応や、ポリアミドの末端アミノ基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体のカルボキシル基との反応等によるものと推定される。架橋は、95℃の熱水中でも膠着しない程度に形成されている必要があり、溶融混練時のポリアミド系樹脂(B)の分散状態によって、島表面と海成分の架橋反応の反応効率が影響され、ある範囲に分散していることが重要である。そして、本発明においては、溶融混練して得られる混合物には、60℃のDMSO中で2時間加熱攪拌した場合に、不溶解性の成分が5〜75質量%含まれていることが重要である。
60℃のDMSO処理によって、混合物中のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は溶解し、ポリアミド系樹脂(B)と共重合体(A)とが架橋反応して形成される樹脂成分および未反応のポリアミド系樹脂(B)の両者が不溶解性の成分として確認される。
本発明において、混合物成分中の不溶解性の成分の含有量が5質量%未満であると、スチームアイロン、あるいは洗濯、乾燥時に繊維間の膠着や過大収縮等を生じやすい。一方、75質量%を越えると繊維化工程性が低下し、風合いもぬめり感が強くなり好ましくない。したがって、7〜50質量%の不溶解性の成分の含有量であることが好ましい。
【0008】
本発明で使用されるポリアミド系樹脂(B)の種類は特に限定されるものでないが、例えば、ポリカプロラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン2,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカノメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリドデカメチレンセバカミド(ナイロン10,8)、あるいは、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジペート共重合体(ナイロン6/6,6)、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン12/6,6)、ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)、エチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)などが挙げられる。
なお、上記のナイロン表示中で「,」の前後の数値はポリアミドを構成するジカルボン酸成分とジアミン成分のそれぞれの炭素数を表すものであり、「/」は前後の数値で示されるポリアミド同士の共重合体を表すものである。
【0009】
これらのポリアミド系樹脂(B)は、ナイロン6/12の縮重合時にポリエーテルジアミン類とジカルボン酸(ダイマー酸など)を添加して、高分子鎖中にポリエーテル結合を有するポリアミドとしてもよい。また、縮合時にヘキサメチレンジアミンやラウリルアミンのような脂肪族アミンやメタキシリレンジアミンやメチルベンジルアミンのような芳香族アミンを添加して、ポリアミド中のカルボキシル末端基を減少させたものも好ましい。また、例えば、メタキシリレンジアミンと全量の80%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと、炭素数が6〜10個のα,ω−脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%含有するメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂も有効である。
これらの重合体の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミドなどのような単独重合体、およびメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、などのような共重合体、ならびにこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジンのような脂環式ジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような脂肪族ジアミン、テレフタル酸のような脂肪族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムのようなラクタム、γ−アミノヘプタン酸のようなω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等とを共重合した共重合体等が挙げられる。上記の共重合体において、パラキシリレンジアミンは全キシリレンジアミンに対して80%以下であり、好適には75%以下である。またキシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中において少なくとも70モル%以上、好適には75モル%以上である。また、これらのポリマーには、たとえばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,12等の重合体、帯電防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、安定剤、染料、顔料等を含有してもよい。
【0010】
さらに、非晶質ポリアミド、すなわち、DSC測定において、実質上吸熱結晶融解ピークを有さないもので、主として、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合体も用いられる。脂肪族ジアミンとしては、たとえばヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)−メタン、2,2−ビス−(4−アミノヘキシル)−イソプロピリジン、1,4−(1,3)−ジアミノシクロヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパン、および2−エチルジアミノブタンなどが挙げられる。これらのジアミンは、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタンメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、および1,3−ジアミノプロパンが好適に用いられる。
芳香族ジカルボン酸としては、たとえばイソフタール酸、テレフタール酸、アルキル置換イソフタール酸、アルキル置換テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、イソフタール酸、テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが熱成形性の面で好適である。そして、非晶質ポリアミドとしての例としては、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸の重縮合体、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸の重縮合体などが挙げられる。なかでもイソフタール酸/テレフタール酸のモル比が60/40〜95/5、さらには、65/35〜90/10の範囲にあるヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体が好適である。
【0011】
上記のポリアミド系樹脂(B)は1種または2種以上用いられるが、上記樹脂(B)のうち好適なポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6/6,6、ナイロン6/12、メタキシリレンジアミン含有ポリアミド、非晶質ポリアミドなどである。ナイロン6/12における6成分と12成分の組成割合は特に制限はないが12成分が60モル%以下、より好ましくは50モル%以下が好ましい。
【0012】
本発明の混紡糸に用いる合成繊維においては、エチレン−ビルアルコール系共重合体(A)成分中に不溶解性の成分が島状に分散していることが好ましく、その島の大きさは1nm〜300nmが好ましく、より好ましくは10nm〜200nmであり、島の数は10ケ/μm以上であることが好ましい。島の大きさが300nmを超えると繊維化工程性が不安定となる場合があり、目的である耐熱性が得られにくいため好ましくなく、また、1nm未満になると耐熱性が得られにくい。また、島数が10ケ/μm未満になった場合、耐熱性が得られにくい。島数の上限値は特に限定されないが、多すぎる場合はゲル化に至り紡糸不可となりやすいので、好ましくは1000ケ/μm以下、特に500ケ/μm以下であることが望まれる。
【0013】
本発明に用いる合成繊維は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とポリアミド系樹脂を溶融混練した混合物からなる単独紡糸繊維であってもよいが、該混合物と他の熱可塑性樹脂との複合繊維とすることもでき、特に該混合物を鞘成分とし、熱可塑性樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維にすると繊維の寸法安定性が向上するため好ましい。
芯鞘型複合繊維にする場合の芯成分を構成する熱可塑性樹脂(C)は耐熱性、寸法安定性等の点から、融点が150℃以上の熱可塑性樹脂であることが好ましく、そのような樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等をあげることができる。ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4'−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールまたはこれらのエステル形成性誘導体とから合成されるポリエステルや、ポリ乳酸等のポリエステルをあげることができ、中でも構成単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位または、ブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。また、かかるポリエステル中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。
【0014】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドをあげることができ、少量の第3成分を含むポリアミドでもよい。かかるポリアミド中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
【0015】
その他の熱可塑性重合体としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル酸系樹脂、酢ビ系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエステルケトン、フッ素樹脂、半芳香族ポリエステルアミドが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化チタン、シリカ、酸化バリュウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
さらに熱可塑性樹脂(C)としては、上記のポリマーを単独で使用しても、それらを2種以上ブレンドして使用しても差し支えない。
【0016】
さらに、芯鞘複合繊維とする場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)、ポリアミド系樹脂(B)の溶融混合物からなる鞘成分と融点が150℃以上の熱可塑性樹脂(C)からなる芯成分との複合比は前者:後者(質量比)=10:90〜90:10であることが紡糸性の点から好ましい。また、複合形態は従来公知の芯鞘型の複合形態であれば特に制限はなく、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の有する親水性、および風合改良性を発現させるためには、複合繊維の表面をエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が覆っていることが好ましい。
また、本発明に用いる合成繊維の繊維断面形状は丸断面に限定されず、偏平断面、三角断面、中空断面、Y字断面、十字断面等の異形断面であってもよい。風合いや膨らみ感のためにはY字断面や十字断面が好ましい。
【0017】
本発明に用いられる合成繊維の製造方法は、上記のような不溶解性成分の分散状態が達成されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維であれば特に限定されないが、例えば、以下のような方法によって製造することができる。
まず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)をチップブレンド、あるいはチップフィーダーを用いて混合し、溶融混練効果の高いスクリュー構成にした二軸押出機で溶融押出し紡糸ヘッドに導入する。この時の押し出し条件としては、温度はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の融点の高い側を基準にして融点からプラス10℃の範囲、滞留時間は2分〜30分の範囲で設定する。適切な条件を設定すれば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)成分中に不溶解性成分が島状に分散して形成され、その島の大きさが1nm〜300nmであり、島部の数が10ケ/μm以上の混合物が得られ、これを単独で溶融紡糸するか、別の押出機で溶融押出した他の熱可塑性樹脂(C)と共に紡糸ヘッドに導入し、複合繊維とすることができる。
【0018】
溶融紡出速度(溶融紡出量)を約20〜50g/紡糸孔1mm・分程度とすると、品質の良好な繊維を安定して得ることができるので好ましい。また、紡糸口金における紡糸孔の大きさや数、紡糸孔の形状などは、繊維の単繊維繊度、トータル繊度、断面形状などに応じて調節することができるが、紡糸孔(単孔)の大きさを約0.018〜0.07mm程度にしておくのが望ましい。引取り速度は、一旦巻き取ってから延伸処理を行う場合、紡糸直結の一工程で紡糸延伸して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き取る場合で異なるが、おおよそ500m/minから6000m/minの範囲で引き取れる。延伸は通常の乾熱延伸でも湿熱延伸でも良く、使用するエチレン−ビニルアルコール単位が膠着しない温度で(C)成分の延伸が可能な適正条件を選択すればよい。
【0019】
本発明に用いられる天然繊維としては、例えば、綿繊維、麻繊維、羊毛繊維、絹繊維等があげらる。これらの繊維は天然繊維であるためそれぞれ固有の繊度と繊維長をもつステープルであり、これらの天然繊維に合せた繊度と繊維長にエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の繊度と繊維長を適宜設定する。例えば綿繊維を混紡する場合には、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の繊度を1.7dtex前後、繊維長を38mm前後に設定することが好ましい。
また紡績性を高めるため、スタッフィング法あるいはギヤ法等で機械捲縮を付与して用いる方が好ましい。
【0020】
合成繊維と天然繊維とは、質量比率で10:90〜90:10に混紡する。合成繊維の混紡率が10質量%未満であるとエチレン−ビニルアルコール系共重合体の特徴である寸法安定性、吸湿性、肌触り、耐光性等を得ることができない。また天然繊維の混紡比率が10質量%未満である場合には、吸湿性、肌触り等の天然繊維それぞれの特徴を得ることができない。好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは25:75〜60:40である。
【0021】
合成繊維と天然繊維との混綿方法は梳綿過程以前の原綿状態で混綿しても良いし、それぞれ別々の梳綿機を通した後のスライバー状態で混綿してもよく、またそれぞれ別別に粗紡した後に一緒に精紡して混綿してもよい。綿紡績、梳毛紡績の場合にはスライバー状態で混綿することが好ましく、紡毛紡績の場合には原綿の状態で混綿することが好ましい。
【0022】
本発明において、合成繊維と天然繊維は公知の綿糸紡績工程、梳毛紡績工程、紡毛紡績工程、あるいは絹糸紡績工程等で混紡され、精紡されて紡績糸となる。本発明の紡績糸は、単糸のまま、または撚糸されて製織、製編されて種種の用途に用いられる。
また、合成繊維に捲縮を付与したステープルとせず、フィラメントの状態で天然繊維と複合紡績糸を製造することも可能である。例えば精紡工程において、ドラフトパートに供給され、フロントローラーを出た天然繊維の粗糸を開繊状態にしておき、この上にドラフトパートに供給せず、フロントローラーのみを通過せしめたエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維フィラメントを重ね合わせて合撚する方法を用いることができる。また例えば天然繊維の紡績糸とエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維フィラメントとを合撚しても得られる。
【0023】
本発明の混紡糸を染色加工して用いることもできる。それぞれを綿染めした後に混紡糸とすることもできるが、一旦、混紡糸とし、織編物とした後に、合成繊維のみ、天然繊維のみ、あるいは両方を染めることもできる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体はスレン染料、含金染料等で染色することができるが、ポリエステルとの芯鞘複合繊維とすると、より安価な分散染料で染色することも可能となる。また本発明に用いる合成繊維は耐湿熱性に優れ、通常のエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維が90℃〜100℃の湿潤下で溶融するのに対し、100℃以上の湿熱下においても溶融せず、繊維形態を保持する。したがって、例えば綿との混紡糸として、綿を直接染料で95℃で染色加工する場合に105℃まで加工温度が少々ズレても、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が溶融することなく染色加工できる。綿との混紡の場合には反応染料か直接染料を用い、羊毛や絹の場合には酸性染料を用いてそれぞれの天然繊維を染色加工することができる。
【0024】
本発明の混紡糸を用いた織編物は天然繊維の吸湿性、風合いと、合成繊維の寸法安定性、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の吸湿性と肌触りを有し、肌着、中衣、シーツ、タオル、ワイシャツ等に用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
【0026】
〔混紡糸の風合〕
○:ソフトで嵩高感のある風合
×:素材あるいは膠着により硬い風合い
【0027】
〔島の分散状態、島の個数〕
透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H−800NA型)を用い、繊維の断面を100,000倍に拡大して観察した。
島の大きさは、島部が鞘成分中にほぼ球形で分散しているので、その平均直径を意味するものである。
【0028】
〔不溶解性成分の含有量〕
単独繊維の場合:繊維試料0.3gをDMSO溶媒50mlに入れ、60℃×2時間加熱溶解し、処理前後の試料質量より求めた。
複合繊維の場合:光学顕微鏡または電子顕微鏡観察による繊維断面写真から、複合繊維を構成する混合物成分の面積比率(R;但し、複合繊維断面積を1としたときの値)を求める。次いで、繊維試料0.3gをDMSO溶媒50mlに入れ、60℃×2時間加熱溶解処理し、処理前後の試料質量から下記式により求めた。
(混合物成分中の)不溶解性成分の含有量(%)=〔{処理後質量−処理前質量×(1−R)}/(処理前質量×R)〕×100
【0029】
〔混紡糸の寸法安定性〕
染色加工後の収縮の著しいもの:×
染色加工時の収縮が殆どないもの:○
【0030】
〔混紡糸の水分率〕
20℃、65%RHでの公定水分率を求めた。
【0031】
実施例1
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(エチレン単位の含有量44モル%、ケン化度99.6%、メルトインデックス MI=2160g、190℃、荷重5.5g/10min)にナイロン6/12(6/12=80/20%)を10質量%チップブレンドし、30φ二軸押出機、220℃にて溶融混練し鞘成分用のポリマーとし、ポリエチレンテレフタレート([η]=0.68)を芯成分とし、両者の複合比率を1:1とし、芯鞘型の複合紡糸装置を用いて口金温度260℃の条件で紡糸ノズルより吐出し、1,000m/分の速度で紡糸を行い、引き続き80℃の水浴中で3.2倍に湿熱延伸し、単糸1.7デシテックスの芯鞘型複合繊維を得た。次いで得られた複合繊維を13万デシテックスに集束し、スタッフィング式の捲縮機で捲縮数18個/25mmの捲縮を付与し、38mmの繊維長にカットした原綿を得た。得られた芯鞘型複合繊維の原綿を梳綿機を用いスライバーとし、これと単位長さ辺りの重量が同じである綿繊維からなるスライバーを同一練篠機に供給してスライバー混合し、芯鞘が複合繊維と綿繊維とからなる混紡スライバーを得た。これにダブリングとドラフトを施して均斉化した後、粗紡機にて単位重量0.5g/m、撚り数0.8回/25mmの粗糸を得た。さらに精紡機にて35倍にドラフトし、23回/25mmに撚糸して紡出し、芯鞘型複合繊維と綿繊維との混合比率50:50の40番手(英式綿番手)の混紡糸を得た。この混紡糸を用いて編物を作成し、直接染料を用いて綿繊維を染色した後、分散染料を用いて芯鞘型複合繊維を染色した。染色物の評価を行った結果、良好な風合、肌触り、吸湿性、寸法安定性のものが得られた(表1)。
【0032】
Figure 0003665288
【0033】
【表1】
Figure 0003665288
【0034】
実施例2〜5
ポリアミド系樹脂(B)の種類、添加量等を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した。いずれの染色物も風合が良好であった(表1)。
【0035】
実施例6〜8
芯成分の熱可塑性樹脂(C)の種類又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)のエチレン単位の含有量等を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した。いずれの染色物も良好な風合いを示していた(表1)。
【0036】
比較例1、2
表1に示すようにポリアミド系樹脂(B)の添加量を変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編物の作成、染色を行い、得られた染色物を評価した。ポリアミド系樹脂(B)の添加量が1質量%のものは繊維化可能であったがエチレン−ビニルアルコール系重合体(A)の架橋反応が進行せず染色加工時に溶融して繊維の形態を保持していなかった。含有量が70質量%のものは、粘度増加が著しく圧損が大きいため繊維化工程性が不良であった(表1)。
【0037】
比較例3
実施例1で使用した芯鞘型複合繊維の代りに、1.7デシテックス、38mmのポリエステル原綿を用い、実施例1と同様にして筒編み地を作成したが、吸湿性の劣るものであった(表1)。
【0038】
比較例4
実施例1と同様にして綿繊維のみからなる紡績糸の編地を作成したが、染色加工時の収縮が大きく、寸法安定性の不足するものであった(表1)。

Claims (5)

  1. エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを溶融混練して得られ、60℃のDMSOに対し不溶解性の成分である、ポリアミド樹脂(B)と共重合体(A)とが架橋反応して形成された樹脂成分および未反応のポリアミド系樹脂(B)を5〜75質量%含有する混合物を少なくとも一成分とする合成繊維と天然繊維とからなる混紡糸であって、該合成繊維と天然繊維との質量混合比率は10:90〜90:10であり、かつ該合成繊維の該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm以上存在していることを特徴とする混紡糸。
  2. ポリアミド系樹脂(B)がナイロン6/12、ナイロン6及びナイロン6,6からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド系樹脂である請求項1に記載の混紡糸。
  3. 合成繊維が複合繊維である請求項1または2に記載の混紡糸。
  4. 合成繊維が芯鞘型複合繊維であり、該混合物が鞘成分に配され、融点が150℃以上の熱可塑性樹脂(C)が芯成分に配されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の混紡糸。
  5. 天然繊維が綿である請求項1〜4のいずれか1項に記載の混紡糸。
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