JP3657552B2 - エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発色性、耐湿熱性に優れる高吸湿性エチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成繊維、例えばポリエステルやナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等の繊維は優れた物理的特性および化学的特性を有しており、衣料用途のみならず広く産業用途にも使用されており、工業的に貴重な価値を有している。
これら合成繊維は、吸湿,吸水性が低いため肌着、中衣、シーツ、タオル等の吸湿、吸水性が要求される分野への進出は限定されているのが実情である。例えばポリエステル繊維の場合には、従来から最大の欠陥とも云える吸湿・吸水性を改善する提案が種々なされ、具体的には、ポリエステル繊維を加工剤で処理して親水化する方法やポリエステル繊維表面又は内部を多孔質化して吸湿・吸水性を付与する方法などが提案されている。
しかしながら、これらの手法では吸湿・吸水性が十分に付与できず、洗濯を行うことにより、その性能が低下するという問題があつた。そこで、これらの問題点を改善するために、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を一成分とする繊維が提案されている(特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報)。
【0003】
これらの繊維は吸湿性を有しているものの、高温高圧染色や縫製、あるいはスチームアイロンの使用により、繊維表面に露出したエチレン−ビニルアルコール系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じ、織編物としての風合が硬化するという課題があり、これを防止するために、ジアルデヒド化合物によりアセタール化処理する方法が、例えば、特公平7−84684号公報に提案されている。
しかしながら、アセタール化処理は現行の染色工程以外の別工程を必要とするため加工コストが高くなるという問題、さらに廃液処理も煩雑であるなどの種々の課題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を解決し、アセタール化処理などの架橋処理を繊維形成後に行うことなく、耐湿熱性と発色性に優れる高吸湿性エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を簡便な手段で提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを溶融混練して得られる混合物からなる繊維であって、該混合物は60℃のDMSOに対し不溶解性の成分を5〜75質量%含有しており、該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm2以上存在していることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物である。該共重合体に含有されるエチレン単位の含有量は、好ましくは25〜70モル%であることが必要であり、好ましくは30〜55モル%である。該共重合体のエチレン単位の含有量が70モル%を超えて高くなる、すなわちビニルアルコール成分の含有量が低くなれば、得られるポリマーの融点が低くなり、実用に満足な耐熱性を有するものを得ることができない場合がある。また、水酸基の減少のために親水性等の特性が低下し、親水性を有する天然繊維ライクの風合が得られにくくなる。一方、繊維構造から見ると、ビニルアルコール成分の含有量が75%を超えて高くなりすぎると、溶融紡糸性が低下するとともに、繊維化する際の紡糸性が不良になる上、紡糸または延伸時に単糸切れ、断糸が多くなる。
【0007】
特に本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を紡糸する際に、共重合体中のビニルアルコール成分の含有量が多くなれば、示差走査熱量計(DSC)測定による融点ピークが高温側にシフトし、ポリアミド系樹脂(B)とブレンド反応紡糸性が好転する方向であるが、一方でエチレン単位の含有量が少ないために溶融紡糸性が低下する低下する傾向がある。従って、高融点ポリアミドとをブレンド紡糸することを考慮すれば、エチレン含有量が30〜55モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用することが好ましい。
【0008】
本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)にポリアミド系樹脂(B)を3〜45質量%の割合、好ましくは5〜40質量%の割合で溶融混練することによって該共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)との少なくとも一部を架橋結合させることが重要である。この架橋反応は、溶融混練時のみに止まらず繊維化した後の熱処理などによっても進行するものであるが、架橋反応は、主にポリアミドの末端カルボキシル基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体の−OHとの反応や、ポリアミドの末端アミノ基とエチレン−ビニルアルコール系共重合体のカルボキシル基との反応等によるものと推定される。架橋の程度は、95℃の沸騰水中で膠着のない程度の耐熱性を有する必要があり、溶融混練時のポリアミド系樹脂(B)の分散状態によって、島表面と海成分の架橋反応の反応効率が影響され、ある範囲に分散していることが重要である。そして、本発明においては、溶融混練して得られる混合物には、60℃のDMSO中で2時間加熱攪拌した場合に、不溶解性の成分が5〜75質量%含まれていることが重要である。
60℃のDMSO処理によって、混合物中のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は溶解し、ポリアミド系樹脂(B)と共重合体(A)とが架橋反応して形成される樹脂成分および未反応のポリアミド系樹脂(B)の両者が不溶解性の成分として確認される。
本発明において、混合物中の不溶解性の成分の含有量が5質量%未満であると、スチームアイロン、あるいは洗濯、乾燥時に繊維間の膠着や過大収縮等を生じやすい。一方、75質量%を越えると繊維化工程性が低下し、風合いもぬめり感が強くなり好ましくない。したがって、7〜50質量%の不溶解性の成分の含有量であることが好ましい。
【0009】
本発明で使用されるポリアミド系樹脂(B)の種類は特に限定されるものでないが、例えば、ポリカプロラミド(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン2,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカノメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリドデカメチレンセバカミド(ナイロン10,8)、あるいは、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジペート共重合体(ナイロン6/6,6)、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン12/6,6)、ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)、エチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンアジペート共重合体(ナイロン2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミンアジペート/ヘキサメチレンジアミンセバケート共重合体(ナイロン6,6/6,10)などが挙げられる。
なお、上記のナイロン表示中で「,」の前後の数値はポリアミドを構成するジカルボン酸成分とジアミン成分のそれぞれの炭素数を表すものであり、「/」は前後の数値で示されるポリアミド同士の共重合体を表すものである。
【0010】
これらのポリアミド系樹脂は、例えば、ナイロン6/12の縮重合時にポリエーテルジアミン類とジカルボン酸(ダイマー酸など)を添加して、高分子鎖中にポリエーテル結合を有するポリアミドとしてもよい。また、縮合時にヘキサメチレンジアミンやラウリルアミンのような脂肪族アミンやメタキシレンジアミンやメチルベンジルアミンのような芳香族アミンを添加して、ポリアミド中のカルボキシル末端基を減少させたものも好ましい。また、例えば、メタキシリレンジアミンと全量の80%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと、炭素数が6〜10個のα,ω−脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%含有するメタキシリレン基含有ポリアミドも有効である。
これらの重合体の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミドなどのような単独重合体、およびメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、などのような共重合体、ならびにこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジンのような脂環式ジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような脂肪族ジアミン、テレフタル酸のような脂肪族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムのようなラクタム、γ−アミノヘプタン酸のようなω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等とを共重合した共重合体等が挙げられる。上記の共重合体において、パラキシリレンジアミンは全キシリレンジアミンに対して80%以下であり、好適には75%以下である。またキシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから生成された構成単位を分子鎖中において少なくとも70モル%以上、さらには75モル%以上有していることが好ましい。また、これらのポリマーには、たとえばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,12等の重合体、帯電防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、安定剤、染料、顔料等を含有してもよい。
【0011】
さらに、非晶質ポリアミド、すなわち、DSC測定において、実質上吸熱結晶融解ピークを有さないもので、主として、脂肪族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸の重縮合体も用いられる。脂肪族ジアミンとしては、たとえばヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)−メタン、2,2−ビス−(4−アミノヘキシル)−イソプロピリジン、1,4−(1,3)−ジアミノシクロヘキサン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノプロパン、および2−エチルジアミノブタンなどが挙げられる。これらのジアミンは、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタンメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノブタン、および1,3−ジアミノプロパンが好適に用いられる。
芳香族ジカルボン酸としては、たとえばイソフタール酸、テレフタール酸、アルキル置換イソフタール酸、アルキル置換テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種またはそれ以上を同時に用いることができる。なかでも、イソフタール酸、テレフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などが熱成形性の面で好適である。そして、非晶質ポリアミドとしての例としては、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸の重縮合体、ヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン−テレフタール酸の重縮合体などが挙げられる。なかでもイソフタール酸/テレフタール酸のモル比が60/40〜95/5、さらには、65/35〜90/10の範囲にあるヘキサメチレンジアミン−イソフタール酸/テレフタール酸の重縮合体が好適である。
【0012】
上記のポリアミド系樹脂は1種または2種以上用いられるが、上記樹脂のうち好適なポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6/6,6、ナイロン6/12、メタキシリレンジアミン含有ポリアミド、非晶質ポリアミドなどである。ナイロン6/12における6成分と12成分の組成割合は特に制限はないが12成分が60モル%以下、より好ましくは50モル%以下が好ましい。
【0013】
さらに本発明の(A)成分中においては、不溶解性の成分が島形状となって分散し、その島の大きさが1nm〜300nm、好ましくは10nm〜200nmであり、島数は10ケ/μm2以上であることが重要である。島の大きさが300nmを超えると繊維化工程性が不安定となるため好ましくなく、1nm未満になると目的とする耐熱性が得られず不適当である。島数が10ケ/μm2未満になった場合も耐熱性が得られず不適当である。島数の上限値は特に限定されないが、多すぎる場合はゲル化に至り紡糸不可能となるので、好ましくは1000ケ/μm2以下、さらには500ケ/μm2以下であることが望まれる。
【0014】
本発明においては、その目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。
【0015】
また必要に応じて平均粒子径が0.01μm以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量%以下、重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。特に平均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子が好ましく、紡糸性、延伸性が向上する。
【0016】
また、本発明の繊維は、発色性に優れており、例えば下記条件の染色加工を施した場合に、発色性の指標であるL*値が18以下という優れた発色性を示すものである。
【0017】
本発明の繊維を製造するには、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)をチップブレンド、あるいはチップフィーダーを用いて混合し、溶融混練効果の高いスクリュー構成にした二軸押出機で溶融押出し紡糸ヘッドに導入する。この時の押し出し条件としては、温度はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)の融点の高い側を基準にして融点からプラス10℃の範囲、滞留時間は2分から30分の範囲で設定する。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体は、260℃以上の温度で長く滞留すると分解をはじめるため、高融点ポリアミドと混合紡糸する場合には、紡糸ヘッド温度を240〜290℃に押さえる必要がある。
この場合、溶融紡出速度などは、溶融紡出速度(溶融紡出量)を約20〜50g/紡糸孔1mm2・分程度とすると、品質の良好な繊維を良好な紡糸工程性で得ることができるので好ましい。
【0018】
また、紡糸口金における紡糸孔の大きさや数、紡糸孔の形状などは、目的とする繊維の単繊維繊度、トータルデニール、断面形状などに応じて調節することができるが、紡糸孔(単孔)の大きさを約0.018〜0.07mm2程度にしておくのが望ましい。紡糸ヘッド温度条件によっては、紡糸口金の孔周囲にノズル汚れが堆積して糸切れが発生するので、ノズル孔出口がテーパー状に広がった形状にしたり、口金下の雰囲気をスチームシールして酸素を遮断する手法が好ましい。
【0019】
そして、上記によって溶融紡出した繊維を、一旦ガラス転移温度以下の温度、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以上低い温度に冷却する。この場合の冷却方法や冷却装置としては、紡出した繊維をそのガラス転移温度以下に冷却できる方法や装置であればいずれでもよく特に制限されないが、紡糸口金の下に冷却風吹き付け筒などの冷却風吹き付け装置を設けておいて、紡出されてきた繊維に冷却風を吹き付けてガラス転移温度以下に冷却するようにすることが好ましい。
【0020】
その際に冷却風の温度や湿度、冷却風の吹き付け速度、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け角度などの冷却条件は、口金から紡出されてきた繊維を、揺れなどを生じないようにしながら速やかに且つ均一にガラス転移温度以下にまでに冷却できる条件であればよい。そのうちでも、冷却風の温度を約20〜30℃、冷却風の湿度を20〜60%、冷却風の吹き付け速度を0.4〜1.0m/秒程度として、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け方向を紡出方向に対して垂直にして紡出した繊維の冷却を行うのが、高品質の繊維を円滑に得ることができるので好ましい。また、冷却風吹き付け筒を用いて前記の条件下で冷却を行う場合は、紡糸口金の直下にやや間隔をあけてまたは間隔をあけないで、長さが約80〜160cm程度の冷却風吹き付け筒を配置するのが好ましい。また、引取り速度は、一旦巻き取ってから延伸処理を行う場合、紡糸直結の一工程で紡糸延伸して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き取る場合で異なるが、おおよそ500m/minから6000m/minの範囲で引き取れる。500m/min未満で紡糸できないことはないが、生産性の点からは意味が少ない。一方、6000m/minを越えるような高速では、繊維の断糸が起こりやすい。生産性及び生産コストの面、さらには、本発明のような溶融紡糸工程で架橋反応を生じるような繊維においては高速紡糸方式(延伸省略)、紡糸直結延伸方式で繊維化することが好ましい。
【0021】
このようにして得られる本発明の繊維の単繊維繊度は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、0.1〜50dtexのものを製造することができる。また、繊維の断面形状も丸断面以外の各種断面形状(例えば中空状、偏平状、楕円状、多角形状(3〜6角形など)3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン状(I字状)など)とすることができる。そして、かかる本発明の繊維は、例えば、衣料用途や非衣料用途など各種の用途に好適に使用することができるものである。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
(1)融点(℃)
示差走査熱量計(DSC)により、以下の条件で測定して、吸熱ピーク温度で示す。
測定条件:35℃で1分間放置し、ついで300℃まで速度10℃/分で昇温した。
(2)繊維の風合
○:繊維の膠着が見られず、ソフトで嵩高感のある風合
×:繊維に膠着が生じ、硬化している
(3)L*値
染色物について日立307型カラーアナライザー(日立製作所製;自動記録式分光光度計)を用いて測定した値である。
(4)繊維化工程性
100kg紡糸した際の毛羽・断糸の発生状況で評価した。
○:毛羽、断糸の発生なく良好
△:断糸はなく、毛羽の発生が僅かに認められる
×:断糸が発生
(5)島の分散状態、島の個数
透過型電子顕微鏡を用い観察した。
(6)不溶解性成分の含有量
繊維試料0.3gをDMSO溶媒50mlに入れ、60℃×2時間加熱溶解し、処理前後の試料質量より求めた値である。
【0023】
実施例1
エチレン単位の含有量が44モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体にナイロン6/12を10質量%溶融混練し、口金温度260℃の条件で丸ノズルより吐出し、1000m/分の速度で加熱ローラーに巻き取り、次いで3000m/分の速度で直接延伸を行い、83デシテックス/24フィラメントのマルチフィラメントを得た。繊維化工程性は特に問題がなかった。
次いで得られた繊維を用いて編物を作成し、下記の条件で染色および還元洗浄を行い、評価を行った結果、発色性、風合ともに良好であった(表1参照)。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例2〜5
ポリアミド系樹脂(B)の種類とその添加量を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編成、染色処理を行った。いずれも、繊維化工程性に問題はなく、編物の発色性、風合ともに良好であった。
【0026】
実施例6〜8
エチレン単位の含有量を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編成、染色処理を行った。いずれも、繊維化工程性に問題はなく、編物の発色性、風合ともに良好であった。
【0027】
比較例1、2
ポリアミド系樹脂(B)の添加量を表1に示すように変更すること以外は実施例1と同様に繊維化、編成、染色処理を行った。(B)の添加量が1質量%のものは繊維化は可能であったがエチレン−ビニルアルコール系共重合体の架橋反応が進行しないためか風合が硬いものであった。また、(B)の添加量が70質量%のものは、粘度低下が大きく繊維化工程性が極めて悪く、得られた編物の風合いもぬめり感の多いものであった。
Claims (2)
- エチレン単位の含有量が25〜70モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリアミド系樹脂(B)とを溶融混練して得られる混合物からなる繊維であって、該混合物は60℃のDMSOに対し不溶解性の成分を5〜75質量%含有しており、該不溶解性の成分は共重合体(A)成分中に島状に分散し、該島の大きさが1nm〜300nm、島の数は繊維断面でみて10ケ/μm2以上存在していることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維。
- ポリアミド系樹脂(B)がナイロン6/12、ナイロン6及びナイロン6,6からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド系樹脂である請求項1記載の繊維。
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