JP4459657B2 - 複合繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする、耐剥離性に優れ、そして染色性の良好な複合繊維に関する。
従来、合成繊維、例えばポリエステルやナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等の繊維は優れた物理的特性および化学的特性を有しており、衣料用途のみならず広く産業用途にも使用されており、工業的に貴重な価値を有している。
しかしながら、これら合成繊維は、吸湿および吸水性が低いため、肌着、中衣、シーツ、タオル等の吸湿、吸水性が要求される分野への進出は限定されているのが実情である。例えばポリエステル繊維の場合には、従来から最大の欠陥とも云える吸湿・吸水性を改善する提案が種々なされている。具体的には、ポリエステル繊維を親水性後加工剤で後処理する方法やポリエステル繊維表面又は繊維内部を多孔質化して吸湿・吸水性を付与する方法などが提案されている。
しかしながら、これらの手法はいずれも吸湿・吸水性が不十分であり、かつ洗濯により付与された性能が低下するという問題があつた。近年これらの問題点を改善するために、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を他の熱可塑性重合体、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合化し繊維化することにより寸法安定性を改良しようとして各種の提案がなされている(特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報、特公平7−84681号公報等)。
しかしながら、複合する他の成分がポリエステル、ポリオレフィンの場合には、相溶性の悪さに起因する工程性の悪化、品質の低下などの問題があり、用途は限られたものであった。 また、ポリアミドの場合には相溶性はよいが、通常のポリアミドの場合には、染色性において染色堅牢度が劣るため衣料用途への展開は限られたものであった。また、通常のポリアミドは、ガラス転移温度が室温付近にあるため物性変化が生じ易く、実用性に問題があった。
特公昭56−5846号公報 特公昭55−1372号公報 特公平7−84681号公報
本発明は、前記従来技術の問題点を克服し、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が本来備えている特性を損なうことなく、成分間の接着性や染色性が改良された複合繊維を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、ジカルボン酸単位の60〜100モル%が芳香族ジカルボン酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2-メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2-メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が40:60から99:1の範囲であり、対数粘度が0.4〜2.0の範囲である熱可塑性ポリアミド(B成分)と、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A成分)とからなり、染色された、液汚染による染色堅牢度が4級以上である複合繊維である。

本発明に係わるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物ポリマーである。該重合体に含有されるエチレンの量は、好ましくは25〜60モル%であり、より好ましくは30〜55モル%である。該共重合体のエチレン含有量が60モル%を超えて高くなる、すなわちビニルアルコール成分の含有量が低くなれば、得られるポリマーの融点が低くなり、後述する架橋アセタール化を行っても、満足な耐熱水性を有するものを得ることができない場合がある。逆にエチレン含有量が60モル%を越える場合には、水酸基の減少のために親水性等の特性が低下し、目的とする親水性を有する天然繊維ライクの風合が得られにくくなる。一方、繊維構造から見ると、ビニルアルコール成分の含有量が75%を超えて高くなりすぎると、溶融紡糸性が低下するとともに、繊維化する際の紡糸性が不良になる上、紡糸または延伸時に単糸切れ、断糸が多くなる。
特に本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を高融点の半芳香族ポリアミドと複合紡糸するためには、紡糸温度を250℃以上にする必要が通常生じるが、共重合体中のビニルアルコール成分の含有量が多くなれば、示差走査熱量計(DSC)測定による融点ピークが高温側にシフトし、半芳香族ポリアミドと複合紡糸が可能とはなるが、一方でエチレン含有量が少ないために溶融紡糸性が低下する傾向がある。従って、半芳香族ポリアミド等の高融点ポリマーとを複合紡糸することを考慮すれば、エチレン含有量が30〜60mol%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体を使用することが好ましい。
本発明の分割型複合繊維に用いられるもう一方の成分である熱可塑性ポリアミド(B)は、実質的にジカルボン酸単位およびジアミン単位からなる。
ジカルボン酸単位は、60から100モル%が芳香族ジカルボン酸単位からなっており、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位として、テレフタル酸単位を60モル%以上、より好ましくは75モル%以上含有している場合であり、特に90モル%以上含有していることが好ましい。芳香族ジカルボン酸単位の含有率が60モル%未満の場合には、得られる繊維の耐アルカリ性、耐酸性、強度などの諸物性が低下する。
テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸単位としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタシンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を1種または2種以上含ませることができる。耐薬品性、耐熱性などの点から、上記したジカルボン酸単位の中でも、芳香族ジカルボン酸単位を含ませるのが好ましい。
さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの官能基を3個以上有する多価カルボン酸を、繊維化が可能な範囲内で含ませることができる。
ジアミン単位としては、脂肪族ジアミン単位を60モル%〜100モル%含有していることが必要であり、75モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましい。脂肪族ジアミン単位の含有率が60モル%未満の場合には、得られる繊維の耐酸性、強度などが低下する。
ジアミン単位として好ましいのは、1,9−ノナンジアミンであるが、1,9−ノナンジアミン単位以外の他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンから誘導される単位を1種または2種以上含ませることができる。
1,9−ノナンジアミン単位以外の他のジアミン単位を含有させる場合は、例えば、電池セバレーターなどの耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性等が要求される用途に用いることを考慮して、ジアミン単位として、2−メチル1,8−オクタンジアミン単位を導入することが好ましい。
そして、ジアミン単位が、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を含有する場合は、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が40:60〜99:1であることが好ましく、70:30〜95:5であることがさらに好ましい。
熱可塑性ポリアミドの製造法は特に制限されず、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の製造方法を用いることができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法あるいは界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出機重合法などの方法により重合可能である。
本発明で使用される熱可塑性ポリアミドの対数粘度は0.4〜2.0の範囲内であり、0.4未満ではペレット化ができない。2.0より大きい場合は重合が困難である。好ましくは0.6〜1.4の範囲であり、より好ましくは0.7〜1.2の範囲である。
本発明に用いるエチレン−ビニルアルコール系共重合体および半芳香族ポリアミドには帯電防止剤、二酸化チタンなどの艶消剤及び熱安定性の酸化防止剤等を添加しても構わない。
さらに、複合繊維にする場合のエチレン−ビニルアルコール系共重合体と半芳香族ポリアミドとの複合比は前者:後者(質量比)=30:70〜90:10であることが好ましく、複合形態や繊維形状に応じて両者の複合比を上記範囲内で調整することができる。エチレン−ビニルアルコール系共重合体の複合比が30質量%未満の場合、すなわち半芳香族ポリアミドが70質量%を越える場合には、吸湿・吸水性能的に不十分であり、ソフトな風合いが得られない。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の複合比が90質量%を越える場合、すなわち半芳香族ポリアミドが10質量%未満の場合には、繊維強度が不十分となり、染色による発色性が不足なものとなる。
また、複合形態は例えば図1のイからヲに示すような従来公知の複合形態であれば特に制限はないが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の有する親水性、および風合改良性を発現させるためには、複合繊維の表面の少なくとも一部、好ましくは該表面の30%以上に該重合体が存在することが好ましい。
つぎに本発明の複合繊維の製造方法について説明する。
本発明の複合繊維の製造方法は、まずエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A成分)と熱可塑性ポリアミド(B成分)をそれぞれ別の押出機で溶融押出し、各々紡糸ヘッドへ導入し、目的とする個々の複合形状を形成させる紡糸口金を経由して溶融紡出する。この場合の溶融紡出温度、溶融紡出速度などは特に制限されないが、複合2成分のうちより高い融点を持つポリマーの融点Tm(℃)に対して、溶融紡出温度を(Tm+約20℃〜Tm+約40℃)の範囲に設定し、かつ溶融紡出速度(溶融紡出量)を約20〜50g/紡糸孔1mm・分程度とすると、品質の良好な複合繊維を良好な紡糸工程性で得ることができるので好ましい。
また、紡糸口金における紡糸孔の大きさや数、紡糸孔の形状なども特に制限されず、目的とする複合繊維の単繊維繊度、トータルデニール、断面形状などに応じて調節することができるが、紡糸孔(単孔)の大きさを約0.018〜0.07mm程度にしておくのが望ましい。紡糸口金の孔周囲にノズル汚れが堆積して糸切れが発生する場合は、ノズル孔出口がテーパー状に広がった形状にしたり、口金下の雰囲気をスチームシールして酸素を遮断する手法を用いるのが好ましい。
そして、上記によって溶融紡出した複合繊維を、一旦複合2成分ポリマーのうちガラス転移温度の低い方のポリマーのガラス転移温度以下の温度、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以上低い温度に冷却する。この場合の冷却方法や冷却装置としては、紡出した複合繊維をそのガラス転移温度以下に冷却できる方法や装置であればいずれでもよく特に制限されないが、紡糸口金の下に冷却風吹き付け筒などの冷却風吹き付け装置を設けておいて、紡出されてきた複合繊維に冷却風を吹き付けてガラス転移温度以下に冷却するようにすることが好ましい。
その際に冷却風の温度や湿度、冷却風の吹き付け速度、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け角度などの冷却条件も特に制限されず、口金から紡出されてきた複合繊維を繊維の揺れなどを生じないようにしながら速やかに且つ均一にガラス転移温度以下にまでに冷却できる条件であればいずれでもよい。
なかでも、冷却風の温度を約20〜30℃、冷却風の湿度を20〜60%、冷却風の吹き付け速度を0.4〜1.0m/秒程度として、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け方向を紡出方向に対して垂直にして紡出した複合繊維の冷却を行うのが、高品質の複合繊維を円滑に得ることができるので好ましい。また、冷却風吹き付け筒を用いて前記の条件下で冷却を行う場合は、紡糸口金の直下にやや間隔をあけてまたは間隔をあけないで、長さが約80〜160cm程度の冷却風吹き付け筒を配置するのが好ましい。
また、引取り速度は、一旦巻き取ってから延伸処理を行う場合、紡糸直結の一工程で紡糸延伸して巻き取る場合、延伸を行わずに高速でそのまま巻き取る場合で異なるが、おおよそ500m/minから7000m/minの範囲で引き取れる。500m/min未満で紡糸できないことはないが、生産性の点からは意味が少ない。一方、7000m/minを越えるような超高速では、繊維の断糸が起こりやすい。生産性及び生産コストの面からは、紡糸直結延伸方式で繊維化することが好ましい。
本発明において、紡糸された複合繊維は延伸されるが、延伸倍率としては2〜5倍でかつ破断伸度の60〜85%が好ましく、このようにして延伸して得られた複合繊維の太さとしては、衣料用途には0.5〜5デシテックスの範囲が好ましく、また産業資材分野には、0.5〜30デシテックスが好ましい。このようにして得られた繊維は、マルチフィラメント糸として、あるいはカットしてステープル繊維として使用することが可能であり、マルチフィラメント糸として用いる場合には、そのトータルデニールとしては30〜200デシテックスが一般的である。
なお、本発明の繊維は、必要により染色される。あるいは、複合繊維を構成するポリマー中に、染料や顔料を添加しておくことにより、原着繊維とすることも可能である。さらに、本発明の繊維を構成するポリマーには、必要により各種の添加剤や安定剤等を添加したり、さらには繊維表面に、各種油剤、表面処理剤を付与したり、更に各種の表面処理方法を行ない、必要な特性を付加することも可能である。
本発明で得られる複合繊維は、織物、編物、不織布等の布帛に加工され、吸湿および吸水性が高いため、肌着、中衣、シーツ、タオル等の吸湿、吸水性が要求される分野に使用される。また、電池用セパレータやフィルター等の産業資材分野にも用いることができる。
本発明の繊維は、吸湿・吸水性に優れ、さらに熱水条件下での寸法安定性に優れ、更に染色性や耐剥離性に優れ、かつ繊維物性の点においても優れたものであり、衣料用途のみならず、産業資材分野にも用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
[ポリアミドの対数粘度]
濃硫酸を用いて30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて測定した値から算出。
[繊維強度および伸度]
JISL1013に準拠して測定。
[繊維化工程性]
100kg紡糸した際の毛羽・断糸の発生状況で評価。
○:毛羽、断糸の発生なく良好
△:断糸はなく、毛羽の発生が僅かに認められる
×:断糸が発生
[染色性]
筒編みについて下記の条件で染色したときの発色性を10人のパネラーにより官能評価を行った。その結果を、非常に優れる2点、優れるを1点、劣るを0点とし、総合点で3段階に分けた。
○:合計点が15点以上
△:合計点が6〜14点
×:合計点が5点以下
[筒編み処理条件]
(前処理)
ビスエチレンジオキシノナン 15%omf
マレイン酸 1g/l
アニオン活性剤 1g/l
90℃×30分
(染色)
Diamix Navy Blue SPHconc 3%omf
分散剤 1g/l
酢酸 (50%) 1g/l
浴比 1:50 115℃×40分
(還元洗浄)
ハイドロサルファイト 1g/l
水酸化ナトリウム 1g/l
アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/l
80℃×20分
上記条件で処理した筒編み地をJISL−0844 A−2法により液汚染による染色堅牢度を調べた。
[複合繊維の各成分の接着性]
24〜48フィラメントを1000T/Mの撚をかけ、そのままの状態で糸条を切断し、切断面のフィラメントの剥離状態を観察した。切断個所を10個所について、下記の基準により評価した。
○:剥離程度が2割未満の場合
△:剥離程度が2〜5割の場合
×:剥離程度が5割を越える場合
実施例および比較例で使用したポリアミドの製造例を以下に示す。
参考例1〜2
表1に示す量のテレフタル酸、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム−水和物(原料に対して0.1質量%)および蒸留水2.2リットルを、内容積20リットルのオートクレープに添加し、窒素置換を行った。ついで100℃で30分間攪拌し、2時間かけて内温を210℃に昇温した。この時、オートクレープは2.2×10Paまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.2×10Paに保持しながら反応を続けた。次に、30分かけて圧力を9.8×10Pa まで下げ、さらに1時間反応を続けてプレポリマーを得た。このプレポリマーを100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。
粉砕物を230℃、1.3×10Pa下にて10時間固相重合することによりポリマーを得た。得られたポリマーの対数粘度を表1に示す。
Figure 0004459657
実施例1
複合繊維を構成するポリアミド成分として表1に示した参考例2のポリアミド(PA9MT)を用い、もう一方のエチレン−ビニルアルコール系共重合体としてエチレン共重合割合が44モル%のものを用いた。これらポリアミドとエチレン−ビニルアルコール系共重合体を個別に溶融押出し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A成分)を鞘、ポリアミド(B)を芯とする芯鞘断面を形成させる紡糸ヘッドへ供給し、計量部分の径が0.25mmφ、ランド長さ0.5mmでしかもノズル孔出口がラッパ状に広がり出口径が0.5mmφになっている24ホール丸孔ノズルから、紡糸温度290℃で溶融紡出した(表2参照)。
紡糸口金直下に長さ1.0mの横吹き付け型の冷却風吹き付け装置を設置しておき、口金から紡出した複合繊維を直ちにその冷却風吹き付け装置に導入して、温度25℃、湿度65HR%に調整した冷却空気を0.5m/秒の速度で紡出繊維に吹き付けて、繊維を60℃以下(冷却風吹き付け装置の出口での繊維の温度=40℃)にまで冷却した。
吐出された該複合繊維の紡糸原糸を1000m/分で引き取り、捲取ることなく連続して延伸し、150℃で熱セットしながら3.5倍に延伸し3500m/分で84デシテックス/24フィラメントの複合繊維延伸糸を採取した。得られた繊維の物性、染色性、接着性、紡糸工程性、染色堅牢度を表2に示した。
Figure 0004459657
実施例2〜5
実施例2、3は、A成分とB成分の複合比率を変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。実施例4、5は断面形状を各々図へ、図ハとしたこと以外は実施例1と同様に実施した。
実施例6
表2に示した参考例1のポリアミドを用いた以外は実施例1と同様に実施した。
実施例7
A成分のエチレン共重合割合を表2に示す様に変更した以外は実施例1と同様に実施した。
比較例1〜4
比較例1は、B成分としてカプロラクタムを開環重合させたナイロン6(宇部興産社製:UBEナイロン6、極限粘度1.4)を用い、比較例2はヘキサメチレンジアミン(脂肪族ジアミン)とアジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)とからなるナイロン66(宇部興産製;UBEナイロン66、極限粘度1.41)を用い、比較例3はメタキシリレンジアミン(芳香族ジアミン)とアジピン酸(脂肪族ジカルボン酸)とからなるポリアミド(三菱ガス化学社製;MXナイロン6007)を用い、比較例4はポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は実施例1と同様に実施した。
以上の実施例および比較例から、ポリアミド成分として、芳香族ジカルボン酸が用いられていない場合(比較例1〜3)は共に、発色性が悪く、かつ染色堅牢性にも劣ることが分かる。特に比較例2および3の場合には、繊維化工程においても断糸等のトラブルが生じた。またポリアミド成分ではなくポリエステル成分を用いた場合(比較例4)には、発色性や染色堅牢性においては問題なかったが、エチレンービニルアルコール共重合成分とポリエステル成分との間で剥離が生じた。それに大して本発明の繊維は、上記した点で何ら問題がなく、優れたものであった。
本発明の複合形態の例を現す繊維断面模式図。B:熱可塑性ポリアミドA:エチレンビニルアルコール共重合成分

Claims (4)

  1. ジカルボン酸単位の60〜100モル%が芳香族ジカルボン酸単位からなり、ジアミン単位の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン単位および2-メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなり、かつ1,9−ノナンジアミン単位と2-メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が40:60から99:1の範囲であり、対数粘度が0.4〜2.0の範囲である熱可塑性ポリアミド(B成分)と、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A成分)とからなり、染色された、液汚染による染色堅牢度が4級以上である複合繊維。
  2. 熱可塑性ポリアミドのジカルボン酸単位がテレフタル酸単位からなる請求項1に記載の複合繊維。
  3. B成分とA成分の複合比(質量比)が30:70〜90:10である請求項1に記載の複合繊維。
  4. 複合形態が芯鞘型である請求項1に記載の複合繊維。
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