JP2022071334A - 熱接着用ポリアミド糸およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 長期保管後でも安定した高次加工性を有し、かつ、接着強度にも優れた熱接着用ポリアミド糸、及びその製造方法を提供する。【解決手段】 3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドで、脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む脂肪族共重合ポリアミド糸であって、伸度が50~90%、融解熱量が10~50J/gである熱接着用ポリアミド糸により達成できる。【選択図】なし
Description
本発明は、加熱処理することで溶融させて、主に繊維素材を接着させることに優れた熱接着用ポリアミド糸であり、特に低温度操作で容易に溶融し、かつ長期保管後の高次加工性にも優れた熱接着用ポリアミド糸を提供する。
ポリカプロアミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド糸は、力学特性や寸法安定性に優れるため、衣料用途のみならずインテリアや車両内装、産業用途等幅広く利用されている。
また、前記した用途以外でも、特定の融点の共重合ポリアミド糸等は、加熱処理することで溶融させて、主に繊維素材を接着させるホットメルト型の接着剤としても好適に用いられる。
例えば、3種以上の共重合成分を含む共重合ポリアミドから構成される、高次加工性や強度に優れた高配向未延伸糸が提案されている(特許文献1)。
この他にも、低温度操作でも容易に溶融し、かつ、接着強度にも優れた3種以上の共重合成分を含む脂肪族共重合ポリアミド糸が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献1に記載の高配向未延伸糸は延伸工程を経ていないため、高配向と言いつつも糸の結晶構造としては不安定であり、長期保管後の糸の強伸度低下が顕著となることから、結果として、長期保管後の高次加工性が劣位であった。
特許文献2に記載の脂肪族共重合ポリアミド糸に関しては、実施例において延伸糸に関する例示がされており、糸の結晶構造としては、特許文献1に記載の高配向未延伸糸と比較して安定する。しかしながら、この例においても、長期保管後の糸の強伸度低下を抑制するまでは至っておらず、結果として、長期保管後の高次加工性が劣位であった。
本発明は、従来技術では困難であった長期保管後でも安定した高次加工性を有し、かつ、接着強度にも優れた熱接着用ポリアミド糸、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を達成するために、以下の構成を採用する。
(1)3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドで、脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む脂肪族共重合ポリアミド糸であって、伸度が50~90%、融解熱量が10~50J/gである熱接着用ポリアミド糸。
(1)3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドで、脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む脂肪族共重合ポリアミド糸であって、伸度が50~90%、融解熱量が10~50J/gである熱接着用ポリアミド糸。
(2)単糸繊度が0.5~10dtexのマルチフィラメントである、前記(1)に記載の熱接着用ポリアミド糸。
(3)融点が80~140℃、温水収縮率が10~50%、強度が2.5~4.0cN/dtexである、前記(1)または(2)に記載の熱接着用ポリアミド糸。
(4)脂肪族共重合ポリアミドは、ポリカプロアミドを構成するモノマー(A)とポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー(B)とを含み、モノマー(A)とモノマー(B)の合計含有率が脂肪族共重合ポリアミドの40~70重量%である、前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸。
(5)脂肪族共重合ポリアミドは、ポリドデカンアミドを構成するモノマー(C)を含み、モノマー(C)の含有率が脂肪族共重合ポリアミドの5~40重量%である、前記(1)~(4)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸。
(6)前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有する縫い糸。
(7)前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有するモール糸。
(8)前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有する熱接着用テープ。
(9)脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む、3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドからなる、前記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸の製造方法であって、延伸倍率が1.5~3.5倍で延伸した後に、熱セット温度が脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して10℃低い温度~融点未満の範囲で熱セットをする、熱接着用ポリアミド糸の製造方法。
本発明によれば、高次加工性、接着強度に優れた熱接着用ポリアミド糸を提供することができる。更には、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造を延伸-熱セットすることによって制御し、繊維構造の安定化を図ることによって、長期保管後でも安定した高次加工性を有する熱接着用ポリアミド糸を提供することができる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、脂肪族共重合ポリアミドからなる。本発明に用いられる脂肪族共重合ポリアミドは、いわゆる炭化水素が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であり、芳香族や脂環族といった環式構造を有するモノマーは共重合成分として含まない。かかる構造とすることで、脂肪族共重合ポリアミドを低融点にできるので、アイロン等の比較的低温度の熱にも完全に溶融し、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際も優れた接着強度を発現できる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミド、好ましくは4種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドで、脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む脂肪族共重合ポリアミド糸ある。かかる構造とすることで、脂肪族共重合ポリアミドを低融点にできるので、アイロン等の比較的低温度の熱にも完全に溶融し、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際も優れた接着強度を発現できる。共重合するモノマーが2種以下の場合、脂肪族共重合ポリアミドの融点が高くなり、接着強度を維持できないばかりか、アイロン等の比較的低温度の熱では熱接着すること自体も困難となる。
脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーとしては、ポリカプロアミド、ポリウンデカンアミド、ポリドデカンアミド等を構成するアミノカルボン酸やラクタム(6-アミノカプロン酸、ε-カプロラクタム、11―アミノウンデカン酸、ウンデカラクタム、12アミノドデカン酸、ドデカラクタム等)、及び、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカンアミド、ポリヘキサメチレントリデカンアミド等を構成するジカルボン酸とジアミンが等モル量結合した塩が挙げられる。
脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーとしては、ポリカプロアミドを構成するモノマー(A)、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー(B)とを含むことが好ましく、モノマー(A)とモノマー(B)の合計含有率が、脂肪族共重合ポリアミドの40~70重量%であることが好ましい。合計含有率が40重量%以上であると、その他の脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーの組み合わせによって、本発明の熱接着用ポリアミド糸の強伸度が高くなり、高次加工に供した際に毛羽や糸切れの発生が少なく、安定した高次加工性が可能となる。合計含有率が70重量%以下であると、その他の脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーの組み合わせによって、本発明の熱接着用ポリアミド糸の融点が140℃以下となり、アイロン等の比較的低温度の熱にも完全に溶融し、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際も優れた接着強度を発現できる。
脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーとしては、ポリドデカンアミドを構成するモノマー(C)を含み、モノマー(C)の含有率が脂肪族共重合ポリアミドの5~40重量%であることが好ましい。含有率が5重量%以上であると、その他の脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーの組み合わせによって、本発明の熱接着用ポリアミド糸の融点が140℃以下となり、アイロン等の比較的低温度の熱にも完全に溶融し、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際も優れた接着強度を発現できる。含有率が40重量%以下であると、その他の脂肪族共重合ポリアミドを構成するモノマーの組み合わせによって、本発明の熱接着用ポリアミド糸の融点が80℃以上となり、特に、高温下等の気温変化にも耐えやすく、長期保管後でも安定した高次加工が可能となる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸には、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでいても良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物等の安定剤、酸化チタン等の着色剤、難燃剤、導電性付与剤、繊維状強化剤等が挙げられる。ただし、酸化チタン等の無機粒子においては、多量に添加すると接着強度が低下する傾向にあり、無機粒子の含有率の好ましい範囲としては0~0.1重量%である。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、伸度が50~90%である。好ましくは60~80%である。伸度をかかる範囲とすることで、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造が安定化するため、長期保管後でも安定した高次加工が可能となる。また、熱接着用ポリアミド糸の柔性も維持できるため、特に、縫い糸といった撚糸工程を経由する用途において、撚りが入りやすく、毛羽もない安定した高次加工が可能となる。伸度が50%未満の場合、熱接着用ポリアミド糸の柔性を維持できず、特に、縫い糸といった撚糸工程を経由する用途において、撚りが極端に入りにくくなることから毛羽が発生し、安定した高次加工が困難となる。伸度が90%を超える場合、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造が安定していないため、長期保管後の糸の強伸度低下が顕著となることから、結果として、長期保管後の安定した高次加工が困難となる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、融解熱量が10~50J/gである。好ましくは15~50J/gである。融解熱量とは、物質が固体から液体に相転移する際に必要な熱量であるが、ポリアミドに代表される結晶性高分子は、融解熱量と結晶構造に密接な関係があり、融解熱量が高いほど結晶構造が安定する。ポリアミド糸の強伸度等の各種特性は結晶構造の影響を受けることが一般的には知られているが、本発明の熱接着用ポリアミド糸に代表される脂肪族(多元)共重合ポリアミド糸は、経時による各種特性変化が一般的な共重合をしていないポリアミド糸よりも大きくなり、結晶構造の制御は極めて重要となる。結晶構造と密接な関係がある融解熱量をかかる範囲とすることで、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造が安定化するため、長期保管後でも安定した高次加工が可能となる。融解熱量が10J/g未満の場合、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造が安定していないため、長期保管後の糸の強伸度低下が顕著となることから、結果として、長期保管後の安定した高次加工が困難となる。融解熱量は、熱接着用ポリアミド糸の伸度等が所望の範囲となり、本発明の効果を損なわない限りにおいては高い方がもちろん良いが、溶解熱量が50J/gを超えるものを得ようとした場合、本発明の熱接着用ポリアミド糸の伸度が50%未満となりやすく、結果として、熱接着用ポリアミド糸の柔性を維持できず、特に、縫い糸といった撚糸工程を経由する用途において、撚りが極端に入りにくくなることから毛羽が発生し、安定した高次加工が困難となる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸の総繊度、単糸本数は、本発明の効果を損なわない限りにおいては特に限定されるものではないが、総繊度は10~400dtex、フィラメント数は2~150本であることが好ましい。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、単糸繊度が0.5~10dtexのマルチフィラメントであることが好ましい。更に好ましくは1~5dtexのマルチフィラメントである。本発明の熱接着用ポリアミド糸は、モノフィラメントの形態であってももちろん良いが、熱接着用ポリアミド糸の総繊度が太い場合は単糸繊度も太くなることから、アイロン等の比較的低温度の熱には完全に溶融せず、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際は接着強度に劣るものとなる。この場合は、マルチフィラメントの形態とすることで単糸繊度を細くすれば良い。単糸繊度が0.5dtex以上であると、単糸の強力が高くなり、高次加工に供した際に毛羽や糸切れの発生が少なく、安定した高次加工性が可能となる。単糸繊度が10dtex以下であると、単糸1本1本が密着して接触し、かつ、完全に均一に溶融するため優れた接着強度を発現できる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、融点が80~140℃であることが好ましい。更に好ましくは90~120℃である。融点が80℃以上であると、特に、高温下等の気温変化にも耐えやすく、長期保管後でも安定した高次加工が可能となる。融点が140℃以下であると、アイロン等の比較的低温度の熱にも完全に溶融し、例えば、ズボンの裾上げテープ等に使用した際も優れた接着強度を発現できる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、温水収縮率が10~50%であることが好ましい。更に好ましくは15~45%である。なお、温水温度は35℃である。温水収縮率が50%以下であると、熱接着用ポリアミド糸の結晶構造が安定化するため、長期保管後でも安定した高次加工が可能となる。温水収縮率は、本発明の効果を損なわない限りにおいては低い方がもちろん良いが、脂肪族共重合ポリアミドの性質や、熱接着用ポリアミド糸の製造過程を鑑みた場合、10%未満のものを得ることは困難である。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、強度が2.5~4.0cN/dtexであることが好ましい。更に好ましくは3.0~4.0cN/dtexである。強度が2.5cN/dtex以上であると、高次加工に供した際に毛羽や糸切れの発生が少なく、安定した高次加工性が可能となる。強度は、本発明の効果を損なわない限りにおいては高い方がもちろん良いが、脂肪族共重合ポリアミドの性質や、熱接着用ポリアミド糸の製造過程を鑑みた場合、強度が4.0cN/dtexを超えると、伸度を所望の範囲とすることが困難となる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸の横断面形状は、熱接着用ポリアミド糸、あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適宜選択しても良い。例示すると、真円、楕円、三葉、四葉、十字、中空、扁平、T字、X字、H字断面等が挙げられるが、熱接着用として加工することを考慮すると、真円とすることが溶融紡糸性、紡糸容易性の点から好ましい。また、その繊維形態は、長繊維、短繊維、不織布、熱成形体等、様々な繊維製品形態を採ることができる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、ホットメルト型の接着剤として有用であり、繊維製品の接着に用いる場合に特に有用である。本発明の熱接着用ポリアミド糸を用いた繊維製品としては、例えば、縫い糸であるとか、糸全体に直立した花糸を配し熱接着により固定させた飾り撚糸(モール糸)、布帛同士をアイロン等で接着する裾上げテープ等に代表されるいわゆる熱接着用テープ、更には、複数の繊維の一部に混繊させた糸条とし熱処理により形態固定をさせた糸条(モップ等に用いられるブラシ毛部分、カーペット等に用いられる用パイル糸等)等に好適に用いることができる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸の製造方法について説明する。
本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドは、公知のいずれの重合方法でも製造可能であるが、重合後に温水による抽出を行い、水溶性成分の除去を行う操作を行うことが好ましい。重合および抽出方法はバッチ式、連続式のいずれの方法でも可能であるが、融点レベルの異なるポリマーをニーズに合わせて多種生産する場合には通常バッチ式が採用される。以下にバッチ式での重合方法について例示する。
本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドは、公知のいずれの重合方法でも製造可能であるが、重合後に温水による抽出を行い、水溶性成分の除去を行う操作を行うことが好ましい。重合および抽出方法はバッチ式、連続式のいずれの方法でも可能であるが、融点レベルの異なるポリマーをニーズに合わせて多種生産する場合には通常バッチ式が採用される。以下にバッチ式での重合方法について例示する。
まず、バッチ式重合設備について説明する。脂肪族共重合ポリアミドを重合するに際しては、重合初期に加圧する必要があり、反応器にはいわゆるオートクレーブが一般に用いられる。均一な加熱や反応を促すため、内部に加熱用コイルを装備したり、撹拌翼を装備したりすることも可能である。
重合中の重合装置内圧力の最大値は、使用するモノマーの沸点によって調整するが、通常0.7MPa以上が採用される。0.7MPa未満の場合、モノマー成分の蒸発量が多くなり、モルバランスが崩れて得られる脂肪族共重合ポリアミド樹脂の重合度が低くなることがある。上限は特にないが、重合装置の耐圧などを考慮して好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下が採用される。重合終了後にポリマーを排出する方法としては、不活性ガスにより重合装置を加圧し、ストランド状に押し出したポリマーを水冷後、カッティングしてペレットを得る方法が好ましく用いられる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、80~140℃であることが好ましい。更に好ましくは90~120℃である。かかる範囲とすることで、得られる熱接着用ポリアミド糸の融点を所望の範囲とすることが可能となる。
本発明の熱接着用ポリアミド糸は、延伸-熱セット工程を伴えば公知の溶融紡糸法で製造可能であるが、延伸-熱セット工程の両者を制御する観点から直接紡糸延伸法が優れている。以下に直接紡糸延伸法での製造方法について例示する。
まず、溶融部について説明する。脂肪族共重合ポリアミドを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられるが、特に限定されるものではない。溶融温度は、脂肪族共重合ポリアミド樹脂の融点で適宜決定して良いが、好ましい溶融温度範囲としては160~240℃である。更に好ましくは、紡糸口金から吐出された糸条の曳糸性を保つ観点から200~240℃である。
紡糸温度についても溶融温度と同じである。なお、ここでいう紡糸温度とは、ポリマー配管、計量ポンプ、紡糸口金等を保温しているいわゆる保温温度(スピンブロック温度)である。好ましい紡糸温度範囲としては160℃~240℃であるが、更に好ましくは、紡糸口金から吐出された糸条の曳糸性を保つ観点から200~240℃である。
また、紡糸口金から吐出されるまでのポリマー滞留時間は、ポリマー溶融部先端、例えば、プレッシャーメルタータイプの溶融紡糸装置の場合はメルター部から、エクストルーダータイプの溶融紡糸装置の場合はシリンダー入口から、紡糸口金から吐出するまでの時間を20分以内とすることが好ましい。
紡糸口金から吐出された糸条は、該糸条より出てくる気体状の低重合物成分を吸引除去された後(MO吸引)、チムニー等の糸条冷却装置によって冷却風を吹きあてることにより糸条を室温まで冷却、給油装置で給油するとともに集束、流体処理装置で交絡、必要に応じて、再度、給油装置で給油するとともに集束、引取ローラー、延伸ローラーを通過し、その際は引取ローラーと延伸ローラーの周速度の比に従って延伸される。延伸糸は熱セットされた後、巻取装置で巻き取る。本発明の熱接着用ポリアミド糸における伸度や融解熱量といったパラメーターを所望の範囲とするには、この延伸-熱セット工程の両者を制御することが重要となる。以下に延伸-熱セット工程について例示する。
延伸倍率に関しては、1.5~3.5倍である。好ましくは2.0~3.0倍である。なお、延伸倍率とは、引取ローラーと延伸ローラー間の速度差による機械延伸倍率であり、例えば、引取ローラーが1200m/分で延伸ローラーが3000m/分の場合、延伸倍率は2.5倍となる。機械延伸を施し、かつ、後記に記載の熱セット工程を制御することで、本発明の熱接着用ポリアミド糸の伸度や融解熱量といったパラメーターを所望の範囲とすることが可能となる。延伸倍率が1.5倍以上であると、高分子鎖が配列されずランダムに存在する非晶性部分に積極的な延伸が加えられるため、高分子鎖が規則正しく配列された結晶性部分として成長し、融解熱量を所望の範囲とすることが可能となる。延伸倍率が3.5倍以下であると、熱接着用ポリアミド糸の柔性を維持できるため、伸度を所望の範囲とすることが可能となる。
ポリアミド糸の伸度や融解熱量を所望の範囲とする方法については、前記に記載の機械延伸を施す以外にも、例えば、引取ローラーの速度を可能な限り速くし、かつ、引取ローラーと延伸ローラーを極力等速度とした、紡糸ドラフトによる延伸が一般的に知られており、特許文献1に提案されている方法は、後者の紡糸ドラフトを利用したものである。しかしながら、この方法では、本発明の熱接着用ポリアミド糸においては、伸度を所望の範囲とすることは可能となるものの、融解熱量を所望の範囲とすることは極めて困難であり、融解熱量を所望の範囲とするには、前記に記載の機械延伸と熱セット工程の両者を制御することが重要となる。
熱セットに関しては、延伸後に糸条と加熱体を接触させて施すものである。直接紡糸延伸法で例示すると、延伸ローラー内部に加熱ヒーターを具備し、延伸ローラーに把持(接触)された糸条を熱セットする方法を好ましく用いる。熱セット温度は、本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して10℃低い温度~融点未満である。好ましくは、本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して10℃低い温度~本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して5℃低い温度以下である。例えば、本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点が110℃の場合、100≦熱セット温度<110(℃)である。好ましくは、100≦熱セット温度≦105(℃)である。熱セット温度をかかる範囲とし、かつ、前記に記載の延伸工程を制御することで、本発明の熱接着用ポリアミド糸の融解熱量を所望の範囲とすることが可能となる。熱セット温度が、本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して10℃低い温度未満の場合、融解熱量を所望の範囲とすることが困難となる。熱セット温度が、本発明の熱接着用ポリアミド糸に用いる脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点以上の場合、加熱体上での糸条の融着が発生し、熱接着用ポリアミド糸を得ることができない。
巻取速度に関しては、本発明の熱接着用ポリアミド糸における伸度や融解熱量といったパラメーターが所望の範囲となり、かつ、安定した製造が可能となる範囲で適宜設定すれば良く、2500~4000m/分が好ましい。
次に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値の測定法等は次の通りである。
A.融点
TA Instrument社製Q1000を用いて熱分析を行い、Universal Analysis2000によってデータ処理を実施した。熱分析は、窒素流下(50mL/分)で、温度範囲-50~300℃、昇温速度10℃/分、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)で測定を実施した。融解ピークから融点を測定した。
TA Instrument社製Q1000を用いて熱分析を行い、Universal Analysis2000によってデータ処理を実施した。熱分析は、窒素流下(50mL/分)で、温度範囲-50~300℃、昇温速度10℃/分、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)で測定を実施した。融解ピークから融点を測定した。
B.温水収縮率
繊維試料を50cmのループにし、繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さAを求め、次いで、初荷重を外した状態で温水(35℃)に20分間浸漬した後、自然乾燥し、再び繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さBを求め、次式の通り算出した。
温水収縮率(%)=〔(A-B)/A〕×100 。
繊維試料を50cmのループにし、繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さAを求め、次いで、初荷重を外した状態で温水(35℃)に20分間浸漬した後、自然乾燥し、再び繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さBを求め、次式の通り算出した。
温水収縮率(%)=〔(A-B)/A〕×100 。
C.総繊度、単糸繊度
繊維試料を、1/30(g)の張力で枠周1.125mの検尺機を用いて200回巻き、225mのカセを作成した。得られたカセをデシケーター(温度20℃、相対湿度55%RH)に移し180分保管した。カセの重量を測定して得られた値から10000m当たりの重量を算出し、さらに、(1.045/1.025)を掛け合わせ総繊度を算出した。なお、測定は4回行い、その平均値を総繊度とした。単糸繊度は総繊度/フィラメント数とした。
繊維試料を、1/30(g)の張力で枠周1.125mの検尺機を用いて200回巻き、225mのカセを作成した。得られたカセをデシケーター(温度20℃、相対湿度55%RH)に移し180分保管した。カセの重量を測定して得られた値から10000m当たりの重量を算出し、さらに、(1.045/1.025)を掛け合わせ総繊度を算出した。なお、測定は4回行い、その平均値を総繊度とした。単糸繊度は総繊度/フィラメント数とした。
D.融解熱量
TA Instruments社製Q1000を測定機器として用いて測定した。示査走査熱量測定(DSC)から得られた融解熱量(ΔH)(J/g)であり、更に詳しくはDSC曲線から得られる融解熱量の各ピークの総和である。測定は2回行い、その平均値を融解熱量とした。
TA Instruments社製Q1000を測定機器として用いて測定した。示査走査熱量測定(DSC)から得られた融解熱量(ΔH)(J/g)であり、更に詳しくはDSC曲線から得られる融解熱量の各ピークの総和である。測定は2回行い、その平均値を融解熱量とした。
なお、DSCの測定条件は下記の通りとした。
・測定装置:TA Instruments社製Q1000
・データ処理:TA Instruments社製Universal Aalysis 2000
・雰囲気:窒素流50mL/分
・試料量:約10mg
・試料容器:アルミニウム製標準容器
・温度と熱量校正:高純度インジウム(Tm=156.61℃、ΔHm=28.71 J/g)
・温度範囲:約-50~300℃
・昇温速度:10℃/分 1回目の昇温過程(ファーストrun) 。
・データ処理:TA Instruments社製Universal Aalysis 2000
・雰囲気:窒素流50mL/分
・試料量:約10mg
・試料容器:アルミニウム製標準容器
・温度と熱量校正:高純度インジウム(Tm=156.61℃、ΔHm=28.71 J/g)
・温度範囲:約-50~300℃
・昇温速度:10℃/分 1回目の昇温過程(ファーストrun) 。
E.強度及び伸度
繊維試料をオリエンテック社製“TENSILON”(登録商標)、UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。伸度は、引張強さ-伸び曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を繊度で除した値を強度とした。測定は10回行い、その平均値を強度及び伸度とした。なお、つかみ間隔500mm、引張速度は500mm/分とした。
繊維試料をオリエンテック社製“TENSILON”(登録商標)、UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。伸度は、引張強さ-伸び曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を繊度で除した値を強度とした。測定は10回行い、その平均値を強度及び伸度とした。なお、つかみ間隔500mm、引張速度は500mm/分とした。
F.接着強度
(1)被接着布(倉敷紡績ブロード生地#KT4000)をタテ12cm、ヨコ10cmに切断し、2枚準備した。
(1)被接着布(倉敷紡績ブロード生地#KT4000)をタテ12cm、ヨコ10cmに切断し、2枚準備した。
(2)繊維試料について糸長50cmで約1650dtexになるように合糸して50T/mの撚りを入れた。
(3)被接着布に約1650dTに合糸した繊維試料を置いた。置き方は被接着布のタテ方向で上から4cm(下から8cm)の点から、ヨコ方向に水平になるように合糸した繊維試料を置いた。
(4)接着布と繊維試料が動かないように両端をセロテープ(登録商標)で留め、両端からはみ出した繊維試料は切断した。
(5)もう1枚の接着布を上からかぶせ、繊維試料を2枚の接着布で挟んだ。接着布同士が動かないように接着布の両端をセロテープ(登録商標)で留めた。
(6)接着プレス機にセットし加圧接着した。プレス条件は140℃×17kg×5秒とした。
(7)接着した接着布について両端1cmはカットして除した。接着布を2cm幅にカットした。接着強度測定布として4枚作成した。
(8)島津製作所製オートグラフAGS-50Dを用い、剥離するまでの最大強力を測定して合糸繊度で除した値を接着強度とした。引張条件は、引張速度5cm/分、剥離角度は180℃とした。なお、測定は4回行い、その平均値を接着強度とした。
(9)接着強度は3.0cN/dtex以上を合格と判定した。
G.高次加工性
通常のリング撚糸機を用い、210dtex、34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド糸を各ニップローラーに通し、撚り込みガイドの各スリット穴に通した。次いで温度30℃、湿度60%の環境下で30日間保管した各実施例、比較例で得られた繊維試料を1本、ニップローラーを介せず直接撚り込みガイドのスリット穴に通し、上記210dtex、34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド糸3本と一緒に撚糸を行い、縫糸用糸条を得た。繊維撚糸加工時の収率を基準として収率を測定し、次の4段階で評価した。
通常のリング撚糸機を用い、210dtex、34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド糸を各ニップローラーに通し、撚り込みガイドの各スリット穴に通した。次いで温度30℃、湿度60%の環境下で30日間保管した各実施例、比較例で得られた繊維試料を1本、ニップローラーを介せず直接撚り込みガイドのスリット穴に通し、上記210dtex、34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド糸3本と一緒に撚糸を行い、縫糸用糸条を得た。繊維撚糸加工時の収率を基準として収率を測定し、次の4段階で評価した。
◎:収率95%以上
〇:収率90%以上、95%未満
△:収率85%以上、90%未満
×:収率85%未満 。
〇:収率90%以上、95%未満
△:収率85%以上、90%未満
×:収率85%未満 。
<脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの製造>
(実施例1~7、比較例1~3)
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ31/18/32/19の重量比率となるように計量し、ダブルヘリカルリボン翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積80Lのバッチ式重合缶に入れた。重合缶内を充分に窒素置換した後、30回転/分で撹拌しながら290℃で加熱を開始した。缶内圧力が1.7MPa(ゲージ圧)に到達した時点で加熱温度を270℃に変更し、缶内圧力を維持した。内温が220℃に到達した時点から90分かけて徐々に大気圧まで放圧した。大気圧に到達したら窒素ガスを5L/分流通させて30分間缶内をブローした。その後缶内に0.4MPa(ゲージ圧)の窒素圧をかけ、水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られた樹脂ペレットを常温で24時間放置した後、バッチ式の抽出槽に仕込み、60±1℃に調整したイオン交換水(抽出水)を樹脂ペレット重量の20倍入れて24時間抽出処理した。処理後のペレットをイオン交換水で充分にすすぎ、60℃で24時間減圧乾燥して、N6/N66/N610/N12の重量比率が、31/18/32/19である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
(実施例1~7、比較例1~3)
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ31/18/32/19の重量比率となるように計量し、ダブルヘリカルリボン翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積80Lのバッチ式重合缶に入れた。重合缶内を充分に窒素置換した後、30回転/分で撹拌しながら290℃で加熱を開始した。缶内圧力が1.7MPa(ゲージ圧)に到達した時点で加熱温度を270℃に変更し、缶内圧力を維持した。内温が220℃に到達した時点から90分かけて徐々に大気圧まで放圧した。大気圧に到達したら窒素ガスを5L/分流通させて30分間缶内をブローした。その後缶内に0.4MPa(ゲージ圧)の窒素圧をかけ、水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られた樹脂ペレットを常温で24時間放置した後、バッチ式の抽出槽に仕込み、60±1℃に調整したイオン交換水(抽出水)を樹脂ペレット重量の20倍入れて24時間抽出処理した。処理後のペレットをイオン交換水で充分にすすぎ、60℃で24時間減圧乾燥して、N6/N66/N610/N12の重量比率が、31/18/32/19である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
(実施例8)
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ23/19/18/40の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66/N610/N12の重量比率が、23/19/18/40である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ23/19/18/40の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66/N610/N12の重量比率が、23/19/18/40である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
(実施例9)
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ45/25/25/5の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66/N610/N12の重量比率が、45/25/25/5である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)(N610)、ω-ラウロラクタム(N12)を、それぞれ45/25/25/5の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66/N610/N12の重量比率が、45/25/25/5である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
(比較例4)
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)をそれぞれ85/15の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66の重量比率が、85/15である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
ε-カプロラクタム(N6)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)(N66)をそれぞれ85/15の重量比率となるように計量する以外は、実施例1と同様に重合し、N6/N66の重量比率が、85/15である脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを得た。なお、得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点は、表1に示す通りであった。
<熱接着用ポリアミド糸の製造、評価>
(実施例1~5、比較例1~3)
得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを220℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸口金より吐出させた。また、紡糸温度は220℃とした。紡糸口金より吐出後、吸引風速35m/分でMO吸引を施し、18℃の冷風で冷却した後、給油装置により給油、交絡ノズル装置により交絡を付与した。
表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、22dtex、10フィラメントの熱接着用ポリアミド糸を得た。
(実施例1~5、比較例1~3)
得られた脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットを220℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸口金より吐出させた。また、紡糸温度は220℃とした。紡糸口金より吐出後、吸引風速35m/分でMO吸引を施し、18℃の冷風で冷却した後、給油装置により給油、交絡ノズル装置により交絡を付与した。
表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、22dtex、10フィラメントの熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例6)
22dtex、40フィラメントとする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
22dtex、40フィラメントとする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例7)
44dtex、5フィラメントとする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
44dtex、5フィラメントとする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例8)
180℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を180℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
180℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を180℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例9)
230℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を230℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
230℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を230℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例4)
260℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を260℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。なお、接着強度の測定において、140℃×17kg×5秒のプレス条件では熱接着用ポリアミド糸は満足に溶融せず、接着強力の値はゼロを示した。
260℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、紡糸温度を260℃とする以外は、実施例1と同様に、表1に示す延伸倍率、熱セット温度で延伸-熱セット工程に供した後、表1に示す巻取速度で巻き取り、熱接着用ポリアミド糸を得た。
得られた熱接着用ポリアミド糸について、融点、温水収縮率、総繊度、単糸繊度、融解熱量、強度、伸度、接着強度、高次加工性を評価した。この結果を表1に示す。なお、接着強度の測定において、140℃×17kg×5秒のプレス条件では熱接着用ポリアミド糸は満足に溶融せず、接着強力の値はゼロを示した。
表1の結果から明らかなように、本発明の熱接着用ポリアミド糸は、従来の熱接着用ポリアミド糸と比較して、長期保管後の使用を想定した、30℃、湿度60%の環境下で30日間保管した後においても安定した高次加工性を有し、かつ、低温度操作での接着強度にも優れるといった極めて顕著な効果を奏するものといえる。
比較例1では、延伸倍率が低く、熱接着用ポリアミド糸の伸度が高く、融解熱量も低い。そのため、結晶構造が安定しておらず、温度30℃、湿度60%の環境下で30日間保管後の高次工程での高次加工性に劣っていた。
比較例2では、延伸倍率が高く、熱接着用ポリアミド糸の伸度が低く、熱融解熱量が高い。そのため、延伸糸の柔性が低下し、撚糸工程を経由する縫い糸の高次工程において、撚りが極端に入りにくくなって毛羽が発生し、高次加工性に劣っていた。
比較例3では、熱セット温度が低く、熱接着用ポリアミド糸の融解熱量が低い。そのため、結晶構造が安定しておらず、温度30℃、湿度60%の環境下で30日間保管後の高次工程での高次加工性に劣っていた。
Claims (9)
- 3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドで、脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む脂肪族共重合ポリアミド糸であって、伸度が50~90%、融解熱量が10~50J/gである熱接着用ポリアミド糸。
- 単糸繊度が0.5~10dtexのマルチフィラメントである、請求項1に記載の熱接着用ポリアミド糸。
- 融点が80~140℃、温水収縮率が10~50%、強度が2.5~4.0cN/dtexである、請求項1または2に記載の熱接着用ポリアミド糸。
- 脂肪族共重合ポリアミドは、ポリカプロアミドを構成するモノマー(A)とポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー(B)とを含み、モノマー(A)とモノマー(B)の合計含有率が脂肪族共重合ポリアミドの40~70重量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸。
- 脂肪族共重合ポリアミドは、ポリドデカンアミドを構成するモノマー(C)を含み、モノマー(C)の含有率が脂肪族共重合ポリアミドの5~40重量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有する縫い糸。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有するモール糸。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸を一部に有する熱接着用テープ。
- 脂肪族ポリアミドを構成するモノマーを含む、3種以上のモノマーを共重合してなる脂肪族共重合ポリアミドからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱接着用ポリアミド糸の製造方法であって、延伸倍率が1.5~3.5倍で延伸した後に、熱セット温度が脂肪族共重合ポリアミドの原料ペレットの融点に対して10℃低い温度~融点未満の範囲で熱セットをする、熱接着用ポリアミド糸の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2020180234A JP2022071334A (ja) | 2020-10-28 | 2020-10-28 | 熱接着用ポリアミド糸およびその製造方法 |
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