JP5716452B2 - 共重合ポリアミドおよびそれからなるペレットならびに繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、共重合ポリアミドに関するものであり、特に、加熱処理することで溶融させて、主に繊維素材を接着させることに優れた繊維型ホットメルト接着剤に好適に用いることができる共重合ポリアミドに関するものである。
ポリカプロアミドやポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミドは、物理特性や耐薬品性などに優れるため、エンジニアリングプラスチックや衣料用・産業用繊維用途等に幅広く利用されている。
これらの用途以外でも、特定の融点の共重合ポリアミドは、加熱処理することで溶融させて、素材同士を接着させるホットメルト型の接着剤としても利用されている。
例えば、3種以上のモノマーを共重合し、かつ融点が80〜130℃の範囲にある共重合ポリアミドフィラメントが提案されている(特許文献1)。
一般に基布の風合いを損なわずに接着加工を行うためには、できるだけ低い温度で高い流動性をもつものが好ましく用いられており、特許文献1に記載のフィラメントでは、モノマーの組み合わせを適正に選択することと、特定範囲の低重合物を意図的に多く含有させることでこれを達成している。
しかしながら低重合物を多く含有すると、溶融紡糸して繊維を得る過程で繊維表面に析出した低重合物が紡糸機に堆積することで糸切れが増加することなどによって、製糸操業性および収率悪化の原因となっていた。
このような問題を解決するために、特定成分を含有する油剤を繊維表面に付着させた共重合ポリアミドフィラメントが提案されている(特許文献2)。しかしながらこの方法でも製糸操業性悪化を抑制する効果は十分でなかった。
さらに近年では、家庭用洗濯機にも洗浄力を高めるために高温洗浄の機能がついていたり、熱風を使用する家庭用衣類乾燥機が広く普及したことなどから、高温で洗濯や乾燥が繰り返されるケースが増えてきた。このような使用環境では、特許文献1および2などに代表される従来の低融点ホットメルト型接着剤では、未反応のモノマーや温水に可溶な低重合物が洗濯水に溶出してしまうことや、融解開始温度が低いことなどから接着面の一部が軟化してずれが生じたり、剥離してしまうケースが生じていた。
このように、加工が容易で接着強度に優れるというホットメルト型接着剤の利点は維持しつつ、日常的に洗濯や乾燥を繰り返してもその接着強度を保つことができ、かつ繊維化する際にも収率が悪化しないポリアミドが求められていた。
特開2010−189806号公報 特開2009−74209号公報
本発明は、繊維形成時の操業性に優れ、かつ長期にわたって接着力が低下しにくいホットメルト型接着剤に好適に用いることができる共重合ポリアミドを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)少なくとも一種の脂肪族モノマーを含む3種以上のモノマーを共重合してなる共重合ポリアミドであり、かつ、JIS K 7121(1987)に基づき測定した融解ピーク温度(Tpm)が81〜117℃であり、かつ、60℃の熱水に可溶な低重合成分が0.8重量%以下であることを特徴とする共重合ポリアミド。
(2)前記3種以上のモノマーが、少なくともポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー、およびポリドデカンアミドを構成するモノマーを含むことを特徴とする、前記(1)に記載に共重合ポリアミド。
(3)ポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー、およびポリドデカンアミドを構成するモノマーの3種の合計のモノマー比率が50〜100重量%であることを特徴とする、前記(2)記載の共重合ポリアミド。
(4)前記3種以上のモノマーが4種以上のモノマーであることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
(5)モノマーがさらにポリヘキサメチレンセバカミドおよび/またはポリウンデカンアミドを構成するモノマーから選択されるモノマーを0〜50重量%含むものである前記(3)記載の共重合ポリアミド。
(6)補外融解開始温度(Tim)と前記Tpmの差が20℃未満であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の共重合ポリアミドからなるペレット。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の共重合ポリアミドを溶融紡糸してなる繊維。
(9)繊維がマルチフィラメントであることを特徴とする、前記(8)に記載の繊維。
(10)単糸繊度が1.5〜5dtexの範囲にあることを特徴とする前記(9)に記載の繊維。
本発明によれば、繊維形成時の操業性に優れ、かつ長期にわたって接着力が低下しにくいホットメルト型接着剤に好適な共重合ポリアミドを得ることができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の共重合ポリアミドは、いわゆるアミド結合によって複数種のモノマーが連結される樹脂であるが、全芳香族ポリアミド(アラミド)は含まない。かかる構造とすることで、接着加工時の内部応力ひずみの分散や屈曲性の向上といった効果が得られ、優れた接着強度を発現できる。
本発明の共重合ポリアミドは、少なくとも一種以上の脂肪族モノマーを含む3種以上のモノマーを共重合し、JIS K 7121(1987)に基づき測定した融解ピークの頂点の温度(Tpm)が80〜130℃である共重合ポリアミドであることが重要となる。好ましくは4種以上のモノマーから構成されている共重合ポリアミドである。かかる構造とすることで、各種繊維製品の風合いを損なわない条件で接着加工することができる。
共重合ポリアミドを構成するモノマーとしては、ポリカプロアミド、ポリウンデカンアミド、ポリドデカンアミド等を構成するラクタムまたはアミノカルボン酸、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカンアミド、ポリヘキサメチレントリデカンアミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するジカルボン酸とジアミンが等モル量結合した塩が挙げられ、モノマーとしてポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)、ポリヘキサメチレンセバカミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムセバケート(SH塩)、ポリドデカンアミドを構成するω−ラウロラクタムまたは12−アミノドデカン酸を含むことが特に好ましい。
本発明の共重合ポリアミドの共重合組成および共重合比率については、本発明で規定する融点の範囲内である限りにおいて特に制限はない。また、共重合ポリアミドの重合原料であるモノマーとしては3種以上を用いるが、4種以上であってもよいことは前述のとおりである。
なかでもモノマーとしては、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)、ポリドデカンアミドを構成するω−ラウロラクタムまたは12−アミノドデカン酸の一種以上を含むことが商業的に安定入手可能な点から好ましく、融解ピーク温度の制御の容易さとのバランスの点から、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)およびポリドデカンアミドを構成するω−ラウロラクタムまたは12−アミノドデカン酸の3種を含むことが特に好ましい。
上記モノマーに組み合わせるその他のモノマーとしては、ポリヘキサメチレンセバカミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムセバケート(SH塩)、ポリウンデカンアミドを構成するω−ウンデカンラクタムまたは11−アミノウンデカン酸が好ましく挙げられる。
モノマーとして、少なくともポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマーおよびポリドデカンアミドを形成するモノマーの3種を含む場合、これらポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマーおよびポリドデカンアミドを形成するモノマーの合計のモノマー比率が50〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは60〜100重量%である。前記合計モノマー比率が50重量%未満の場合は、その他の共重合ポリアミドを構成するモノマーの組み合わせによっては、本発明の共重合ポリアミド繊維の強伸度が低くなり、製織、編立等の高次加工に供した際に、糸切れ、原糸毛羽が発生し安定した高次加工を実現できなくなる可能性がある。
個々のモノマー比率については、ポリカプロアミドを構成するモノマーは30〜60重量%、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマーは10〜30重量%、ポリドデカンアミドを形成するモノマーは10〜30重量%、その他のポリアミドを形成するモノマーは0〜50重量%からそれぞれ選択して、合計量を100重量%とすることが特に好ましい。このような範囲内であれば、本発明の共重合ポリアミドの融解ピーク温度を本発明範囲内に制御しやすく、例えば、アイロン等の比較的低温度での接着強力が要求される用途(ズボンの裾上げテープ等)に使用した際に、良好な接着強度を維持することが可能である。
本発明の共重合ポリアミド樹脂または繊維は、JIS K7121(1987)に基づき測定した融解ピークの頂点の温度が81〜117℃であることが重要となる融解ピーク温度が数値範囲未満の場合は、温湿度等の環境変化により原糸自体が変性してしまい、共重合ポリアミドマルチフィラメント同士が融着を起こし、解舒不良や糸質低下が発生する等、通常時の取り扱いや高次加工が極めて難しくなる。また逆に、融解ピーク温度が数値範囲を越える場合は、例え共重合成分、後述する単糸繊度が規定範囲内だったとしても、熱によって完全に溶融しないため接着強度で劣るものとなる。
本発明の共重合ポリアミドでは、低重合物含有率を極めて低いレベルにすることが必須であり、具体的には60℃の温水抽出法により検出される低重合物含有率で0.8重量%以下とする必要がある。好ましくは0.5重量%以下であり、さらに好ましくは0.3重量%以下である。一般的にポリアミドを溶融紡糸に供する場合も、溶融紡糸時に発生するポリアミドのモノマー、オリゴマー等を低減し、紡糸口金の表面汚れを抑制することを目的に、溶融紡糸に供する前、ポリアミドペレットの段階等で極力低重合物を除去する方法が取られる。例えば、重合されたポリアミドペレットを熱水等に接触させ低重合物を抽出する方法等が挙げられ、抽出処理後のポリアミドペレットの低重合物含有率は概ね1.5重量%未満である。しかしながら本発明で用いる融解ピーク温度が80〜130℃の低融点共重合ポリアミドにおいては、通常のポリアミドと同様の方法でペレットを熱水処理した場合、ペレット同士の融着が容易に起こり、目的とするポリアミドを得ることができない。融着を避けて低重合物を抽出するには、抽出前のペレットを適切に処理することと、抽出水の温度が上昇しすぎることのないような設備を用いることが重要である。
まず、抽出前のペレットについては、重合してから常温(30℃)以下で24時間以上保管した後のチップを用いる。抽出水温度は抽出前に測定した共重合ポリアミドの融解ピーク温度より35℃以上低い温度とする必要があり、好ましくは融解ピーク温度−40℃未満である。下限は特にないが、抽出水温度が低いほど抽出時間が長く必要であるため、30℃以上とすることが好ましい。厳密に温度を制御するため、外部に抽出水を加熱する熱交換器を有する抽出装置が好ましく使用される。抽出時間については、所望の低重合物含有率となるまで行う。共重合ポリアミドを構成するモノマー、重合直後の共重合ポリアミド中の低重合物含有率、ペレット形状、浴比、抽出温度等によって異なるが、概ね24〜144時間程度、好ましくは36〜144時間程度、最も好ましくは48〜144時間程度であり、必要に応じてヒドラジン等の還元剤を添加することが好ましい。
抽出調製を終えた共重合ポリアミドは、2〜8重量%程度の水分を含有するため乾燥をすることが好ましい。共重合ポリアミドペレットの乾燥方法は、1.3kPa以下の減圧下で、バッチ方式で加熱する方法、あるいは、共重合ポリアミドペレットと加熱された窒素とを連続的に接触させる方法等が挙げられる。共重合ポリアミドペレットを大量生産する場合は、連続運転が可能な後者が有利であり、少量多品種生産をする場合は前者が有利である。通常の場合、乾燥は共重合ポリアミドの融点以下の温度で10〜30時間程度保持することにより、水分率が概ね0.1重量%以下になるまで行うことが好ましい。
また本発明で得られる共重合ポリアミドは、JIS K7121(1987)に基づき測定した補外融解開始温度(Tim)とTpmの差が20℃未満であることが好ましく、さらに好ましくは15℃未満である。本発明者らは、共重合ポリアミド樹脂に含まれる低融点成分(モノマーなど)を適切な範囲に低減することなどにより、TimとTpmの差を前記範囲とすることが効果的であることを見出した。このような範囲とすることで、高温で洗濯や乾燥が繰り返されるケースにおいても安定した接着状態を維持することが可能である。なお、補外融解開始温度(Tim)とは、JIS K7121(1987)に記載されているように、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、融解ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点を示し、融点ピークの頂点の温度(Tpm)との差が大きいほど、低温で軟化しやすいことを示す。補外融解開始温度(Tim)とTpmの差の下限としては0℃であることが理想的だが、現在の技術でこのレベルにすることは困難であるため、3℃であれば、十分効果がある。
本発明の共重合ポリアミドには、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでいても良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物等の安定剤、酸化チタン等の着色剤、難燃剤、導電性付与剤、繊維状強化剤等が挙げられる。ただし、酸化チタン等の無機粒子においては、多量に添加すると接着強力が低下する傾向にあり、無機粒子の含有率の好ましい範囲として好ましくは0〜5.0重量%、さらに好ましくは0〜2重量%、最も好ましくは0〜0.1重量%である。
本発明の共重合ポリアミドは、ホットメルト型の接着剤として有用であり、繊維型、フィルム型、粉末型等種々の形態で用いることが可能であり、繊維製品、包装材料、木工製品などの接着に有効である。なかでも繊維型として、繊維製品の接着に用いる場合に特に有用である。
本発明の共重合ポリアミドから得られる繊維は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも構わないが、好ましくはマルチフィラメントが用いられ、その単糸繊度は1.5〜5dtexが好ましく、さらに好ましくは2〜4dtexである。かかる構成とすることで、一本一本の単糸が完全にかつ均一に溶融するため、優れた接着強度を発現できる。単糸繊度が1.5dtex未満の場合は、得られるフィラメントの強伸度が低下するため、高次加工性が悪化したり、また、溶融紡糸性自体も悪化するため、収率良く安定して生産することができない。また逆に、単糸繊度が5dtexを越える場合は、例え共重合成分、融解ピーク温度が規定範囲内だったとしても、単糸一本一本が均一に溶融しないことがあり、接着強度に劣るものとなる。
本発明の共重合ポリアミドから得られる繊維の強度としては、1.5cN/dtex以上であることが好ましく、更に好ましくは2cN/dtex以上である。強度が1.5cN/dtex未満の場合は、撚糸、編み込みといった高次工程での毛羽、糸切れが発生し、高次通過性が不安定になる可能性がある。
また、本発明の共重合ポリアミドから得られる繊維の伸度としては、40〜120%の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、60〜100%の範囲である。かかる範囲が最も高次加工のし易い範囲であり、この範囲を外れると、例えば、伸度が40%未満の場合は、特にモールヤーンを形成する際等の撚糸の工程で撚りが入りにくく、原糸毛羽も発生しやすくなるので注意が必要である。逆に、伸度が120%を越える場合は、繊維構造が安定していないため、保管中や高次加工中に品質変化を起こす可能性があり、特に、高温多湿下の倉庫等ではその現象が顕著となるので注意が必要である。
本発明の共重合ポリアミドから得られる繊維の単糸横断面形状は、繊維あるいはその加工品の要求特性、またはそれらを安定して得るために適宜選択しても良い。例示すると、真円、楕円、三葉、四葉、十字、中空、扁平、T字、X字、H字断面等が挙げられるが、熱接着用として加工することを考慮すると、真円とすることが溶融紡糸性、紡糸容易性の点から好ましい。また、その繊維形態は、長繊維、短繊維、不織布、熱成形体等、様々な繊維製品形態を採ることができる。
本発明の共重合ポリアミドを用いた繊維製品としては、例えば、糸全体に直立した花糸を配し溶融接着により固定させた飾り撚糸(モールヤーン)であるとか、布帛同士を家庭用アイロン等で接着する裾上げテープ等に代表されるいわゆる接着テープ、更には、複数の繊維の一部に混繊させた糸条とし熱処理により形態固定をさせた糸条としてモップ等に用いられるブラシ毛部分やカーペット用のパイル糸とする用途等好適に用いることができる。
本発明の共重合ポリアミドの製造方法について説明する。
本発明の共重合ポリアミドは、公知のいずれの重合方法でも製造可能であるが、重合後に温水による洗浄を行い、水溶性成分の除去を行う操作が必須である。
以下に重合方法について例示する。
重合および洗浄方法はバッチ式、連続式のいずれの方法でも製造可能であるが、融点レベルの異なるポリマーをニーズに合わせて多種生産する場合には通常バッチ式が採用される。
以下にバッチ式での製造方法について例示する。
まずバッチ式重合設備について説明する。共重合ポリアミドを重合するに際しては、重合初期に加圧する必要があり、反応器にはいわゆるオートクレーブが一般に用いられる。均一な加熱や反応を促すため、内部に加熱用コイルを装備したり、撹拌翼を装備することも可能である。
重合中の重合装置内圧力の最大値は、使用するモノマーの沸点によって調整するが、通常0.7MPa以上が採用される。0.7MPa未満の場合、モノマー成分の蒸発量が多くなり、モルバランスが崩れて得られる共重合ポリアミド樹脂の重合度が低くなることがある。上限は特にないが、重合装置の耐圧などを考慮して好ましくは3.0MPa以下、さらに好ましくは2.0MPa以下が採用される。重合終了後にポリマーを排出する方法としては、不活性ガスにより重合装置を加圧し、ストランド状に押し出したポリマーを水冷後、カッティングしてペレットを得る方法が好ましく用いられる。このとき、ポリマーをできるだけ短時間で押し出すことがポリマー品質の安定化に効果的であり、好ましくは1.5時間以内、さらに好ましくは1時間以内、最も好ましくは0.5時間以内に押し出される。
本発明によって得られる共重合ポリアミド樹脂の粘度数としては、粘度数を低くするほど、接着対象物への浸透性が向上し、より高い接着強度を得ることができるが、極端に粘度数を低くしすぎると、ストランド化できなかったり、溶融紡糸性が悪化する可能性があるため好ましくない。粘度数の好ましい範囲としては、80〜170ml/gの範囲である。粘度数は、JIS−K6933(1999)に従い、96%硫酸を溶媒として、ウベローデ粘度計を用いて測定した。
得られたペレットは、通常常温(30℃以下)で24時間以上保管してから抽出工程へ供する。保管時間24時間未満で抽出工程へ供すると、ペレット同士が融着することがある。
また、本発明の共重合ポリアミドからなる繊維は公知のいずれの溶融紡糸方法でも製造可能である。例えば、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは巻取速度を4000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等である。いずれの方法においても製造可能であるが、生産性やコストの観点から直接紡糸延伸法、高速紡糸法の両者が優れている。
以下に直接紡糸延伸法での製造方法について例示する。
まず溶融部について説明する。共重合ポリアミドを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられるが、両者とも特に限定されるものではない。溶融温度は、共重合ポリアミドの融解ピーク温度で適宜決定して良いが、好ましい溶融温度範囲としては160℃〜200℃である。しかしながら、直接紡糸延伸法、高速紡糸法はいずれも引取速度が速く、モノマーの組み合わせ、つまり共重合ポリアミドの組成によっては溶融紡糸糸条が剛直になり高速曳糸性を保てなくなる可能性がある。こういった場合は、溶融温度を更に上げた方が高速曳糸性の観点から好ましく、その好ましい溶融温度範囲としては200〜240℃である。
紡糸温度についても溶融温度と同じである。なお、ここでいう紡糸温度とは、ポリマー配管、計量ポンプ、紡糸口金等を保温しているいわゆる保温温度(スピンブロック温度)である。好ましい紡糸温度範囲としては160℃〜200℃であるが、高速曳糸性に劣位の共重合ポリアミドを使う場合は200〜240℃の範囲が好ましい。
また、紡糸口金から吐出されるまでのポリマー滞留時間は、ポリマー溶融部先端、例えば、プレッシャーメルタータイプの溶融紡糸装置の場合はメルター部から、エクストルーダータイプの溶融紡糸装置の場合はシリンダー入口から、紡糸口金から吐出するまでの時間を20分以内とすることが好ましい。
紡糸口金から吐出された共重合ポリアミドマルチフィラメント等の繊維は、冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。引き取り速度は1000〜4000m/minの範囲が好ましく、延伸糸の伸度が40〜120%の範囲となるように適宜延伸倍率を設定、延伸後、速度として2500〜4000m/minの範囲で巻き取るのが好ましい。
また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることも可能である。更には、解舒性を向上させることを目的に、巻き取り直前に追加で油剤を付与することも可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、本発明の共重合ポリアミドマルチフィラメントの物性の測定方法は以下の通りである。
A.融解ピーク温度
JIS−K7121(1987)の示差走査熱量測定(DSC)法に従い測定した。なお、パーキンエルマー社製のDiamond DSC装置を用い、昇温速度は20℃/minとした。
B.低重合物(MO)含有率
試料(ペレット)を粉砕した後、JIS標準ふるい35メッシュと100メッシュのフルイにかけ、35メッシュを通過し、100メッシュに留まる粉末を分取する。得られた粉末を水分率が0.03重量%以下となるまで乾燥後秤量し、その重量をW1とする。秤量した粉末を粉末重量に対して200倍以上の重量の60℃温水で4時間抽出する。粉末を水洗し、ついで再び水分率が0.03重量%以下となるまで乾燥後秤量し、その重量をW2とする。W1,W2から下式により算出した。
低重合物(MO)含有率(重量%)=(W1−W2)/W1×100。
C.粘度数
JIS−K6933(1999)に従い測定した。なお、ウベローデ粘度計を用い、溶媒は96%硫酸とした。
D.正量繊度
JIS L1013(2010)に記載のB法(簡便法)に従い測定した。なお、公定水分率は、JIS L0105(2006)の表1に基づき4.5%とした。
E.強度、伸度
JIS L1013(2010)に従い測定した。なお、オリエンテック社製テンシロン(定速伸張形試験機)を用い、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/minとした。
F.接着強度
(1)被接着布(倉敷紡績ブロード生地#KT4000)をタテ12cm、ヨコ10cmに切断する。2枚準備した。
(2)フィラメントについて糸長50cmで約1650dTになるように合糸して50T/mの撚りを入れた。
(3)被接着布に約1650dTに合糸したフィラメントを置いた。置き方は被接着布のタテ方向で上から4cm(下から8cm)の点から、ヨコ方向に水平になるように合糸したフィラメントを置いた。
(4)接着布とフィラメントが動かないように両端をセロテープ(登録商標)で留め、両端からはみ出したフィラメントは切断した。
(5)もう1枚の接着布を上からかぶせフィラメントを2枚の接着布で挟んだ。接着布同士が動かないように接着布の両端をセロテープ(登録商標)で留めた。
(6)接着プレス機にセットし加圧接着した。プレス条件は140℃×17kg×5secとした。
(7)接着した接着布について両端1cmはカットして除した。接着布を2cm幅にカットした。接着強度測定布として4枚作成した。
(8)島津製作所製オートグラフAGS−50Dを用い、剥離するまでの最大強力を測定して合糸繊度で除した値を接着強度とした(N=4)。引張条件は、引張速度5cm/min、剥離角度は180°とした。
G.糸切れ回数
実施例に記載の溶融紡糸方法で1t紡糸した際の糸切れ回数とした。
H.洗濯後接着強度保持率
F(1)〜(7)項と同様の操作で得た接着布を、JIS L0217(1995)103法(本洗い40℃×5分→脱水1分→常温すすぎ2分→脱水1分すすぎ2分 →脱水1分後吊り干し乾燥)に従って家庭洗濯を20回行ったあと、F(8)項と同様の操作で接着強度を測定し、次式により洗濯後接着強度保持率を算出した。
洗濯後接着強度保持率(%)=洗濯後接着強度/洗濯前接着強度×100。
(実施例1)
ε−カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(AH塩)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩(SH塩)およびω−ラウロラクタムを、それぞれ35/15/35/15の重量比率となるよう合計20kgを計量し、ダブルヘリカルリボン翼をもった撹拌機と熱媒ジャケットを装備した内容積80Lのバッチ式重合缶に入れた。重合缶内を充分に窒素置換した後、30rpmで撹拌しながら290℃で加熱を開始した。缶内圧力が1.7MPa(ゲージ圧)に到達した時点で加熱温度を270℃に変更し、缶内圧力を維持した。内温が220℃に到達した時点から90分かけて徐々に大気圧まで放圧した。大気圧に到達したら窒素ガスを5L/分流通させて30分間缶内をブローした。その後缶内に0.4MPa(ゲージ圧)の窒素圧をかけ、水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。
得られたペレットを常温で24時間放置した後、バッチ式の抽出そうに仕込み、60±1℃に調整したイオン交換水(抽出水)をペレット重量の20倍入れて24時間抽出処理した。処理後のペレットをイオン交換水で充分にすすぎ、60℃で24時間減圧乾燥した。
この共重合ポリアミドペレットを220℃の溶融温度でプレッシャーメルターで溶融し、34ホールを有する紡糸口金より吐出された。紡糸口金より吐出後、18℃の冷風で冷却、給油した後に、1500m/minの速度で引き取り、巻取速度3500m/minの直接紡糸延伸を行い、2糸条の56dtex−17フィラメントの共重合ポリアミドマルチフィラメントを得た。
得られた抽出処理前のペレットについて、粘度数、融解ピーク温度(Tpm)、補外融解開始温度(Tim)を評価し、抽出処理を行わないものについては、低重合物含有率も評価した。また、得られた抽出処理後のペレットについて、粘度数、融解ピーク温度(Tpm)、補外融解開始温度(Tim)、低重合物含有率を評価し、さらに紡糸工程および得られたフィラメントについて、正量繊度、強度、伸度、糸切れ回数、接着強度、洗濯後接着強度保持率を評価した。これらの結果を表1に示す。
(実施例2)
抽出処理時間を48時間とした以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例3)
抽出処理時間を120時間とした以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例1)
抽出処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例2)
抽出処理時間を18時間とした以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例3)
抽出水温度を80℃とした以外は、実施例1と同様とした。抽出中にペレットが融着して評価不能となった。
(実施例4)
ε−カプロラクタム、AH塩、SH塩およびω−ラウロラクタムを、それぞれ30/10/20/40の重量比率となるようにし、抽出水温度を40℃とした以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例5)
抽出処理時間を72時間とした以外は、実施例4と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例6)
抽出処理時間を144時間とした以外は、実施例4と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例4)
抽出処理を実施しなかった以外は、実施例4と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例5)
抽出処理時間を18時間とした以外は、実施例4と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例7)
ε−カプロラクタム、AH塩およびω−ラウロラクタムを、それぞれ50/20/30の重量比率となるようにした以外は、実施例1と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例8)
抽出処理時間を48時間とした以外は、実施例7と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(実施例9)
抽出処理時間を120時間とした以外は、実施例7と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例6)
抽出処理を実施しなかった以外は、実施例7と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
(比較例7)
抽出処理時間を18時間とした以外は、実施例7と同様とした。得られたペレットおよびフィラメントについて、実施例1と同様の項目を評価した。この結果を表1に示す。
Figure 0005716452
表1の結果から明らかなように、本発明の共重合ポリアミドから得られるマルチフィラメントは、従来の熱接着用マルチフィラメントと比較して、洗濯後の接着強度保持率が優れており、また、安定した溶融紡糸も可能といった極めて顕著な効果を奏するものであると言える。

Claims (10)

  1. 少なくとも一種の脂肪族モノマーを含む3種以上のモノマーを共重合してなる共重合ポリアミドであり、かつ、JIS K 7121(1987)に基づき測定した融解ピーク温度(Tpm)が81〜117℃であり、かつ、60℃の熱水に可溶な低重合成分が0.8重量%以下であることを特徴とする共重合ポリアミド。
  2. 前記3種以上のモノマーが、少なくともポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー、およびポリドデカンアミドを構成するモノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載に共重合ポリアミド。
  3. ポリカプロアミドを構成するモノマー、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するモノマー、およびポリドデカンアミドを構成するモノマーの3種の合計のモノマー比率が50〜100重量%であることを特徴とする、請求項2記載の共重合ポリアミド。
  4. 前記3種以上のモノマーが4種以上のモノマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
  5. モノマーがさらにポリヘキサメチレンセバカミドおよび/またはポリウンデカンアミドを構成するモノマーから選択されるモノマーを0〜50重量%含むものである請求項3記載の共重合ポリアミド。
  6. 補外融解開始温度(Tim)と前記Tpmの差が20℃未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の共重合ポリアミド。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の共重合ポリアミドからなるペレット。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の共重合ポリアミドを溶融紡糸してなる繊維。
  9. 繊維がマルチフィラメントであることを特徴とする、請求項8に記載の繊維。
  10. 単糸繊度が1.5〜5dtexの範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の繊維。
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