JP3430881B2 - 三元コポリアミド - Google Patents

三元コポリアミド

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柔軟性や透明性に
優れ、かつ、熱水処理で融着性を示さない三元コポリア
ミドから製造されたフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアミドは機械的強度、熱的性質、化
学的性質や成形加工性が優れているため、自動車や各種
機械の部品、フィルムおよび繊維などに広く使用されて
いる。これら用途の中で柔軟性や透明性などの特性を要
求される分野では各種のコポリアミドが使用されてい
る。主なコポリアミドとして、ε−カプロラクタムおよ
びヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩
(以下、「AH塩」と略記する。)からなるコポリアミ
ド(ナイロン6/66)、ε−カプロラクタムとアミノ
ドデカン酸またはω−ラウロラクタムからなるコポリア
ミド(ナイロン6/12)、ε−カプロラクタムおよび
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との等モル塩から
なるコポリアミド(ナイロン6/610)、ε−カプロ
ラクタム、AH塩とアミノドデカン酸またはω−ラウロ
ラクタムからなる三元コポリアミド(ナイロン6/66
/12)などが知られている。
【0003】従来、三元コポリアミドはホットメルトタ
イプの接着剤の材料として広く使用されていたが、二元
コポリアミドに比べ、柔軟性、透明性、延伸性などに優
れているため、これらの性質を生かし、フィルムの製造
に適した三元コポリアミドの開発が進められている。
【0004】例えば、特開平3−106646号公報に
は、ε−カプロラクタムあるいはεーアミノカプロン酸
を主成分として、他の2種の脂肪族ポリアミド10〜5
0重量%と共重合した、融点150〜200℃の脂肪族
系三元コポリアミドを含む耐レトルト性包装材料が開示
されている。また、特開平8−225644号公報には
特定組成のε−カプロラクタム、AH塩およびアミノウ
ンデカン酸またはアミノドデカン酸からなる三元コポリ
アミドが開示されている。
【0005】これらの三元コポリアミドは主にフィルム
に使用されるが、このフィルムで包装した食品を熱水中
で加熱した場合、フィルム同士が付着して剥がれなくな
り、食品の取り出しが困難となるなど、熱水処理により
ポリアミド同士が融着するという欠点があり、これらの
欠点を改良した三元コポリアミドが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、透明
性および柔軟性に優れ、かつ、熱水処理により融着性を
示さない三元コポリアミドから製造されたフィルムを提
供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、三元コポ
リアミドの組成および配合を詳細に検討した結果、本発
明の目的は三元コポリアミドがε−カプロラクタム成分
またはεーアミノカプロン酸成分から誘導される単位、
AH塩成分から誘導される単位、アミノドデカン酸また
はω−ラウロラクタムから誘導される単位から構成さ
れ、大部分がε−カプロラクタム成分またはεーアミノ
カプロン酸成分から誘導される単位であり、AH塩、ア
ミノドデカン酸、ω−ラウロラクタムから誘導される単
位の少なくとも一成分が特定量未満とすることにより達
成できることや等温結晶化法により160℃で保持して
測定した時の半結晶化時間の影響を受けることがあるこ
となどを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、(a)ε−カプロラ
クタム成分またはεーアミノカプロン酸成分から誘導さ
れる単位75〜95重量%、(b)ヘキサメチレンジア
ミンとアジピン酸との等モル塩(AH塩)成分から誘導
される単位と(c)アミノドデカン酸成分またはω−ラ
ウロラクタム成分から誘導される単位との合計量が10
〜25重量%からなる三元コポリアミドであつて、
(a)、(b)、(c)の合計量が100重量%であ
り、かつ、(b)あるいは(c)の少なくとも一成分が
4重量%未満からなる三元コポリアミドから製造された
フィルムである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するε−カプロラクタム、εーアミノカプ
ロン酸、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸、AH
塩、アミノドデカン酸およびω−ラウロラクタムは市販
品が使用できる。本発明の三元コポリアミドの構成成分
であるε−カプロラクタム成分またはε−アミノカプロ
ン酸成分からなる単位の割合は75〜95重量%、好ま
しくは80〜95重量%、より好ましくは87〜90重
量%である。AH塩成分とアミノドデカン酸成分または
ω−ラウロラクタム成分からなる単位の合計量は5〜2
5重量%、好ましくは5〜20重量%、より好ましくは
5〜13重量%であり、かつ、AH塩成分、アミノドデ
カン酸成分またはω−ラウロラクタム成分からなる単位
の少なくとも一成分が4重量%未満である。
【0010】ε−カプロラクタム成分またはε−アミノ
カプロン酸成分からなる単位の割合が75重量%未満の
場合、熱水処理により融着が起こりやすくなる。95重
量%より多い場合、柔軟性や透明性が低下するようにな
る。また、AH塩成分、アミノドデカン酸成分またはε
−ラウロラクタム成分からなる単位の全てが4重量%以
上の場合、熱水処理により融着が起こりやすくなること
がある。三元コポリアミドを構成する成分の割合を少量
変化させることにより、熱水処理時の融着性が大きく変
化することを見出したことは本発明の特徴の一つであ
り、従来、知られていなかったことである。
【0011】また、本発明の三元コポリアミドであつ
て、示差走査熱量計による等温結晶化法により160℃
で保持して測定した半結晶化時間が100〜200秒で
あるものは本発明の目的を達成する上でより好ましい。
半結晶化時間が200秒より長い場合、熱水処理条件に
よっては、融着が起こりやすくなることがある。100
秒より短い場合、柔軟性や透明性が低下することがあ
る。
【0012】本発明の三元コポリアミドの分子量は、特
に制約はないが、JIS K 6810に準じて測定し
た相対粘度が、1.5〜5.0、好ましくは2.0〜
4.5のものが好ましく使用できる。相対粘度が過度に
高くなると溶融粘度が高くなり過ぎ、成形品やフィルム
などの製造が難しくなることがある。また、過度に低く
なると、得られる三元コポリアミドの機械的性質などの
実用的な性質が低下することがある。
【0013】本発明の三元コポリアミドの製造には、溶
融重合、溶液重合、界面重合、固相重合、およびこれら
を組合わせた公知の重合方法を用いることができる。通
常、得られる三元コポリアミドの融点より高い温度で実
施される溶融重合が好ましく用いられる。また、本発明
の三元コポリアミドは公知の重合装置が使用でき、バッ
チ式または連続式などにより、必要に応じて常圧、減
圧、加圧などの操作を適宜、組合せることにより製造で
きる。
【0014】本発明は、三元コポリアミドから製造され
るフィルムである。フィルムの製造は特に制限がなく、
公知の成形法により製造できる。例えば、公知の押出成
形機を用いるTダイ法、インフレーション法、チューブ
ラー法や溶剤キャスト法、熱プレス法などの方法で製造
できる。溶融成形法を用いる場合、成形温度は、通常、
200〜300℃に設定される。
【0015】本発明の三元コポリアミドは、特性や成形
性を損なわない範囲で、必要に応じて滑剤、酸化防止
剤、耐熱安定剤、耐候性付与剤、帯電防止剤、撥水剤等
を配合することが出来る。
【0016】本発明の三元コポリアミドは特定量のε−
カプロラクタムまたはεーアミノカプロン酸、AH塩、
アミノドデカン酸またはω−ラウロラクタムから構成さ
れており、柔軟性、透明性などに優れ、かつ、熱水処理
による融着が起こりにくい。
【0017】
【実施例】以下実施例および比較例を示し、本発明を具
体的に説明する。尚、実施例および比較例中に示した測
定値は以下の方法で測定した。
【0018】1)相対粘度 JIS K6810に準じ、98重量%の濃硫酸を溶媒
として、1重量/容量%のポリマー濃度で、オストワル
ド粘度計を用い、25℃で測定した。
【0019】2)半結晶化時間 パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC TAC
7型を用い、窒素ガス雰囲気下に試料のポリアミドを昇
温速度20℃/minで260℃まで加熱し、その温度
で10分間保持した後、100℃/min以上の速度で
冷却し、160℃になった時点で冷却を中止し、160
℃で保持して測定した等温結晶化速度のデータから半結
晶化時間を求めた。
【0020】
【0021】4)フィルムの特性評価 バーマグ社製Baroflexの押出機を用い、空冷イ
ンフレーション法により、シリンダー温度230℃で作
成した厚さ100μm のフィルムを試料として、AST
M D882に準じ、引張弾性率、引張降伏応力を測定
した。透明性はJIS K7105に準じて測定したH
aze値で評価した。また、熱水処理による融着性の評
価は作成したナイロンフィルムから切出した縦100m
m、横100mmのサンプルを5枚重ね、治具に挟んで
固定し、9.8kPaの圧力を掛けて、約90℃の熱水
中に浸漬した。24時間後、熱水から取出し、下記の基
準で融着の状態を評価した。 ◎:フィルムは融着箇所が無く、容易に1枚毎に剥がす
ことができた。 ○:フィルムは一部が融着していたが、剥がすことがで
きた。 △:フィルムが部分的に融着しており、剥がすことがで
きなかった。 ×:フィルムは全面的に融着しており、剥がすことがで
きなかった。
【0022】実施例1 撹拌機、温度計、圧力計、窒素導入口、放圧口および重
合物取出口を備えた70lのオートクレイブに実質上、
無水のε−カプロラクタム16kg、AH塩3.6kg
およびアミノドデカン酸0.4kgを仕込んだ。十分に
窒素置換した後、撹拌下に240℃まで昇温し、同温度
で10時間重合させた。その後、撹拌を止め、生成した
ポリアミドをオートクレーブ底部の重合取出口から紐状
に取出し、水槽で冷却してから、ペレタイザーでポリア
ミドチップとした。このポリアミドチップを沸騰水中に
入れ、撹拌下に約6時間、洗浄して未反応モノマーを抽
出除去した後、40℃で72時間減圧乾燥した。得たポ
リアミドの相対粘度は3.98であり、等温結晶化法に
より160℃で測定した半結晶化時間は160秒であっ
た。フィルムの性質を表1に示した。
【0023】比較例1 ε−カプロラクタムを16.0kg、AH塩を3kg、
アミノドデカン酸を1kg使用した以外は、実施例1と
同様の方法で実施し、相対粘度3.85のポリアミドを
得た。未反応モノマー抽出除去後のポリアミドチップは
一部が融着していた。等温結晶化により160℃で測定
した半結晶化時間は210秒であった。フィルムの性質
を表1に示した。
【0024】比較例2 ε−カプロラクタムを15.0kg、AH塩を4kg、
アミノドデカン酸を1kg使用した以外は、実施例1と
同様の方法で実施し、相対粘度3.85のポリアミドを
得た。未反応モノマー抽出除去後のポリアミドチップは
一部が融着していた。等温結晶化法により160℃で測
定した半結晶化時間は250秒であった。フィルムの性
質を表1に示した。
【0025】比較例3 ε−カプロラクタムを16.0kg、アミノドデカン酸
を4kg使用した以外は、実施例1と同様の方法で実施
し、相対粘度3.85のポリアミドを得た。等温結晶化
法により160℃で測定した半結晶化時間は95秒であ
った。フィルムの性質を表1に示した。
【0026】実施例2 ε−カプロラクタムを15.6kg、AH塩を3.8k
g、アミノドデカン酸を0.6kg使用した以外は、実
施例1と同様の方法で実施し、相対粘度3.8のポリア
ミドを得た。等温結晶化法により160℃で測定した半
結晶化時間は190秒であった。フィルムの性質を表1
に示した。
【0027】実施例3 ε−カプロラクタムを15kg、AH塩を0.6kg、
アミノドデカン酸を4.4kg使用した以外は、実施例
1と同様の方法で実施し、相対粘度3.4のポリアミド
を得た。等温結晶化法により160℃で測定した半結晶
化時間は140秒であった。フィルムの性質を表1に示
した。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】ε−カプロラクタム成分またはεーアミ
ノカプロン酸成分75〜95重量%、AH塩成分とアミ
ノドデカン酸成分またはω−ラウロラクタム成分の合計
量が5〜25重量%からなり、AH塩成分、アミノドデ
カン酸成分またはω−ラウロラクタム成分のすくなくと
も一成分が4重量%未満である三元コポリアミドから製
造されたフィルムは柔軟性や透明性などに優れ、かつ、
熱水処理により融着性を示さない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 69/00 - 69/50

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)ε−カプロラクタム成分またはεー
    アミノカプロン酸成分から誘導される単位75〜95重
    量%、(b)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との
    等モル塩成分から誘導される単位と(c)アミノドデカ
    ン酸成分またはω−ラウロラクタム成分から誘導される
    単位との合計量が5〜25重量%からなる三元コポリア
    ミドであって、(a)、(b)、(c)の合計量が10
    0重量%であり、かつ、(b)または(c)の少なくと
    も一成分が4重量%未満であることを特徴とする三元コ
    ポリアミドから製造されたフィルム
  2. 【請求項2】等温結晶化法により160℃で保持して測
    定した時の半結晶化時間が100〜200秒の範囲にあ
    る請求項1記載の三元コポリアミドから製造されたフィ
    ルム
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