JP6939102B2 - 吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維、仮撚糸および繊維構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、芯成分、鞘成分ともに結晶性を有するポリマーであり、かつ芯成分が吸湿性を有しており、繊維横断面において芯成分が表面に露出している部分を1箇所有した芯鞘型複合繊維に関するものである。より詳しくは、延伸や仮撚工程における融着が抑制されているため、糸切れや毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であり、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるとともに、開口部を1箇所設けることで剥離が抑制されており、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーの体積膨潤に伴う鞘割れや、ひいては吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されており、熱水処理後においても吸湿性に優れ、衣料用途に好適に使用できる芯鞘型複合繊維に関するものである。
ポリエステル繊維は、安価であり、機械的特性に優れているため、幅広い用途において用いられている。しかし、吸湿性に乏しいため、夏場の高湿時には蒸れ感の発生、冬場の低湿時には静電気の発生など、着用快適性の観点において解決すべき課題を有している。
上記の欠点を改善するため、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与する方法について、これまでに種々の提案がなされている。吸湿性を付与するための一般的な方法として、ポリエステルへの親水性化合物の共重合や親水性化合物の添加などが挙げられ、親水性化合物の一例としてポリエチレングリコールが挙げられる。
例えば、特許文献1では、ポリエステルに対し、ポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを吸湿性ポリマーとして用いた繊維が提案されている。この提案では、吸湿性ポリマーを単独で繊維化し、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献2では、鞘に吸湿性ポリマー、芯に疎水性ポリマーを配置した偏芯芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に疎水性ポリマーを配置することにより、吸湿と乾燥の可逆変化に対する形態安定性を付与している。
特許文献3、4では、芯にポリエチレングリコールが共重合されたポリエステル、鞘にポリエチレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に吸湿性ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献5、6では、芯にポリエチレングリコールが共重合されたポリマー、鞘にポリエチレンテレフタレートを配置し、鞘の一部に開口部を有する芯鞘型複合繊維が提案されている。芯成分は吸湿性を有するが、これらの提案では、芯成分を溶出することにより、C字状の中空繊維とし、ポリエステル繊維へ軽量性を付与している。溶出しやすい芯成分の具体例として、特許文献5では重量平均分子量500〜8000、すなわち数平均分子量としては8000未満のポリエチレングリコールを8〜70重量%共重合したポリエチレンテレフタレート、特許文献6では分子量3000のポリエチレングリコールを17重量%共重合したポリエチレンテレフタレートが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、繊維表面全体に露出している吸湿性ポリマーが、紡糸油剤によって膨潤するため、紡糸、延伸、仮撚工程や製編、製織工程におけるローラーやガイドとの擦過によって脱落し、ローラーやガイド上に堆積した結果、糸切れや毛羽が生じるなど、工程通過性や品位に課題があった。また、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの共重合成分であるポリエチレングリコールが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。
特許文献2記載の方法では、芯に疎水性ポリマーを配置しているため、吸湿と乾燥の可逆変化に対する形態安定性は得られるものの、繊維表面の少なくとも半分以上に吸湿性ポリマーが露出しているため、特許文献1記載の方法と同様に、吸湿性ポリマーの膨潤や脱落が生じ、工程通過性や品位に課題が残るものであった。
特許文献3、4記載の方法では、芯成分の吸湿性ポリマーが鞘で完全に覆われているため、紡糸油剤による吸湿性ポリマーの膨潤や、ローラーやガイドとの擦過による脱落が抑制され、工程通過性は改善されているものの、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤し、鞘割れが発生して品位が低下するという課題があった。さらには、鞘割れした部分を起点として芯成分の吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。
特許文献5、6記載の方法では、芯成分の吸湿性ポリマーが繊維表面の一部に露出しているため、紡糸油剤による吸湿性ポリマーの膨潤や、ローラーやガイドとの擦過による脱落が抑制され、工程通過性は改善されている。しかしながら、芯成分を溶出させることを目的としており、染色等の熱水処理で芯成分を完全に溶出させるため、得られる繊維はC字状のポリエステル中空繊維であり、吸湿性を有さないものであった。
特開2006−104379号公報 特開平9−13257号公報 特開2001−172374号公報 特開2017−43860号公報 特開平6−200473号公報 特開2007−131980号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、延伸や仮撚工程における融着が抑制されているため、糸切れや毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であり、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるとともに、開口部を1箇所設けることで剥離が抑制されており、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーの体積膨潤に伴う鞘割れや、ひいては吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されており、熱水処理後においても吸湿性に優れ、衣料用途に好適に採用できる芯鞘型複合繊維を提供することにある。
上記の本発明の課題は、芯成分、鞘成分ともに結晶性を有するポリマーであり、かつ芯成分が吸湿性を有するポリマーであり、前記吸湿性を有するポリマーが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とし、数平均分子量2000〜30000g/molのポリエーテルを共重合成分とするポリエーテルエステルであり、繊維横断面において芯成分の一部が表面に露出しており、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満である芯鞘型複合繊維であり、芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度が150℃以上かつ熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%であることを特徴とする芯鞘型複合繊維によって解決することができる。
また、芯成分/鞘成分の複合比率(重量比)が10/90〜70/30であることが好ましい。
前記芯成分の吸湿性を有するポリマーは共重合成分としてポリエーテルを含むポリエーテルエステルでポリエーテルが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールであることが好適に採用できる。
前記ポリエーテルエステルは芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエーテルを共重合成分で、前記脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールであり、ポリエーテルの数平均分子量が2000〜30000g/molであること、ポリエーテルの共重合率が25〜60重量%であることが好適に採用できる。
さらには、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分はカチオン可染性ポリエステルであることが好ましい。
本発明の仮撚糸は前記芯鞘型複合繊維を2本以上撚り合わせてなるものであり、前記芯鞘型複合繊維および/または前記仮撚糸を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体に好適に採用できる。
本発明によれば、延伸や仮撚工程における融着が抑制されているため、糸切れや毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好である。また、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。さらには、開口部を1箇所有するため剥離が抑制されており、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーの体積膨潤に伴う鞘割れや、ひいては吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されており、熱水処理後においても吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維を提供することができるため、特に衣料用途において好適に用いることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維の断面形状の一例を示す図である。 比較例7で製造した芯鞘型複合繊維の断面形状を示す図である。 比較例8で製造した芯鞘型複合繊維の断面形状を示す図である。
本発明の芯鞘型複合繊維は、芯成分、鞘成分ともに結晶性を有するポリマーであり、かつ芯成分が吸湿性を有するポリマーであり、繊維横断面において芯成分の一部が表面に露出しており、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満である芯鞘型複合繊維であり、芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度が150℃以上かつ熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%である。
一般的に、吸湿性を有するポリマーは紡糸油剤によって膨潤しやすく、ローラーやガイドとの擦過による脱落で汚れとして堆積し、糸切れや毛羽を引き起こすため、工程通過性が不良であり、かつ織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽が発生するため、低品位という課題がある。また、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴い、繊維同士が融着するという課題もある。工程通過性や品位を改善するため、芯成分の吸湿性を有するポリマーを完全に被覆した芯鞘型複合繊維が提案されているが、染色等の熱水処理時に芯成分の体積膨潤による鞘割れや、鞘割れした部分からの吸湿性を有するポリマーの溶出により、熱水処理後には吸湿性が発現しないという別の課題を生じる。そこで、繊維横断面において芯成分の一部が表面に露出した芯鞘型複合繊維が提案されているが、仮撚時の融着、熱水処理時の鞘割れおよび芯成分の溶出の全てを同時に抑制することはできず、その結果、工程通過性が良好かつ高品位であり、さらには熱水処理後においても吸湿性を発現する芯鞘型複合繊維は未だ得られていなかった。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、芯成分、鞘成分ともに結晶性を有すること、かつ芯成分が吸湿性を有しており、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満であること、芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度が150℃以上であることの全てを満たしたときに初めて、上記課題の全てを解決し、工程通過性が良好かつ高品位であり、熱水処理後においても吸湿性を発現する芯鞘型複合繊維を得ることに成功した。
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分は、結晶性を有するポリマーである。芯成分が結晶性を有していれば、実施例記載の方法による補外融解開始温度の測定において、結晶の融解に伴う融解ピークが観測される。芯成分が結晶性を有していれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好である。また、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。さらには、結晶性を有している場合には、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分の吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持される。
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分は、吸湿性を有するポリマーである。本発明において、吸湿性を有するポリマーとは、吸湿率差(ΔMR)が2.0%以上のポリマーである。本発明における吸湿率差(△MR)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。芯成分が吸湿性を有していれば、鞘成分との複合により、吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維を得ることができる。
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分の具体例として、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミド、熱可塑性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなどの吸湿性を有するポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、共重合成分としてポリエーテルを含むポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドは吸湿性に優れるため好ましく、特にポリエーテルエステルは耐熱性に優れ、得られる芯鞘型複合繊維の機械的特性や色調が良好であるため好ましい。これらの吸湿性を有するポリマーは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの吸湿性を有するポリマーと、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどをブレンドしたものを、吸湿性を有するポリマーとして用いてもよい。
前記吸湿性を有するポリマーの共重合成分のポリエーテルの具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどの単独重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール共重合体などの共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールは、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましく、特にポリエチレングリコールは吸湿性に優れるため好ましい。
前記ポリエーテルエステルは、耐熱性および機械的特性の観点から、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエーテルを共重合成分とすることが好ましい。芳香族ジカルボン酸の具体例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、脂肪族ジオールの具体例として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールは、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましく、耐熱性および機械的特性の観点においてはエチレングリコールが好適に採用でき、結晶性の観点においては1,4−ブタンジオールが好適に採用できる。
前記ポリエーテルエステルの共重合成分のポリエーテルの数平均分子量および共重合率は、ポリエーテルエステルが結晶性を有する範囲で適宜選択することができるが、好適な範囲はポリエーテルエステルの構成成分に応じて異なるものである。例えば、ポリエーテルエステルの構成成分である脂肪族ジオールとしてエチレングリコールを用いた場合、ポリエーテルの共重合率が高過ぎると、染色等の熱水処理時にポリエーテルエステルが熱水へ溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下してしまう。また、ポリエーテルエステルの構成成分である脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオールを用いた場合、上記エチレングリコールを用いた場合と比べ、ポリマーの結晶性が高いため、ポリエーテルの共重合率が高い場合においても、熱水へのポリエーテルエステルの溶出が抑制される。すなわち、脂肪族ジオールとして1,4−ブタンジオールを用いた場合には、ポリエーテルの共重合率を高くすることができるため、ポリエーテルエステルの吸湿性、ひいては得られる芯鞘型複合繊維の吸湿性を高くすることができるため好ましい。
ポリエーテルエステルの構成成分である脂肪族ジオールがエチレングリコールの場合、ポリエーテルの数平均分子量は8000〜30000g/molであることが好ましく、ポリエーテルの共重合率は10〜35重量%であることが好ましい。ポリエーテルの数平均分子量が8000g/mol以上であれば、ポリエーテルエステルの吸湿性が高く、芯成分として用いた場合に吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるため好ましい。また、ポリエーテルエステルの結晶性の低下や補外融解開始温度の低下を抑制でき、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるため好ましい。ポリエーテルの数平均分子量は8100g/mol以上であることがより好ましく、8300g/mol以上であることが更に好ましい。一方、ポリエーテルの数平均分子量が30000g/mol以下であれば、重縮合反応性が高く、未反応のポリエーテルを低減することができ、染色等の熱水処理時に熱水への溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持されるため好ましい。ポリエーテルの数平均分子量は25000g/mol以下であることがより好ましく、20000g/mol以下であることが更に好ましい。また、ポリエーテルの共重合率が10重量%以上であれば、ポリエーテルエステルの吸湿性が高く、芯成分として用いた場合に吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるため好ましい。ポリエーテルの共重合率は15重量%以上であることがより好ましく、20重量%以上であることが更に好ましい。一方、ポリエーテルの共重合率が35重量%以下であれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるため好ましい。また、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分のポリエーテルエステルの溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持されるため好ましい。ポリエーテルの共重合率は32重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることが更に好ましい。
ポリエーテルエステルの構成成分である脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールの場合、ポリエーテルの数平均分子量は2000〜30000g/molであることが好ましく、ポリエーテルの共重合率は25〜60重量%であることが好ましい。ポリエーテルの数平均分子量が2000g/mol以上であれば、ポリエーテルエステルの吸湿性が高く、芯成分として用いた場合に吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるため好ましい。また、ポリエーテルエステルの結晶性の低下を抑制できるため好ましい。ポリエーテルの数平均分子量は3000g/mol以上であることがより好ましく、5000g/mol以上であることが更に好ましい。また、ポリエーテルの数平均分子量が8000g/mol以上であれば、ポリエーテルエステルの結晶性の低下や補外融解開始温度の低下を抑制でき、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるため特に好ましい。一方、ポリエーテルの数平均分子量が30000g/mol以下であれば、重縮合反応性が高く、未反応のポリエチレングリコールを低減することができ、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分のポリエーテルエステルの溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持されるため好ましい。ポリエーテルの数平均分子量は27000g/mol以下であることがより好ましく、25000g/mol以下であることが更に好ましく、20000g/mol以下であることが特に好ましい。また、ポリエーテルの共重合率が25重量%以上であれば、ポリエーテルエステルの吸湿性が高く、芯成分として用いた場合に吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるため好ましい。ポリエーテルの共重合率は30重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることが更に好ましい。一方、ポリエーテルの共重合率が60重量%以下であれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるため好ましい。また、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分のポリエーテルエステルの溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持されるため好ましい。ポリエーテルの共重合率は55重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の鞘成分は、結晶性を有している。鞘成分が結晶性を有していれば、実施例記載の方法による補外融解開始温度の測定において、結晶の融解に伴う融解ピークが観測される。鞘成分が結晶性を有していれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。また、染色等の熱水処理時に熱水への鞘成分の溶出が抑制される。
本発明の芯鞘型複合繊維の鞘成分の具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエステルは、機械的特性や耐久性に優れるため好ましい。また、鞘成分がポリエステルやポリオレフィンなどの疎水性ポリマーの場合には、表面に露出している芯成分の吸湿性を有するポリマーによる吸湿性と、鞘成分の疎水性ポリマーによるドライな感触を両立でき、着用快適性に優れた繊維構造体を得られるため好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の鞘成分に関する前記ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートは、機械的特性や耐久性に優れ、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートはポリエステル繊維特有のハリ、コシ感が得られるため好ましく、ポリブチレンテレフタレートは結晶性が高いため好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の鞘成分は、カチオン可染性ポリエステルであることが好ましい。ポリエステルがスルホン酸基などのアニオン部位を有していれば、カチオン部位を有するカチオン染料との相互作用により、カチオン可染性を有する。鞘成分がカチオン可染性ポリエステルであれば、鮮明な発色性を示すとともに、ポリウレタン繊維との混用において染料汚染を防止できるため好ましい。カチオン可染性ポリエステルの共重合成分の具体例として、5−スルホイソフタル酸金属塩があり、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が結晶性に優れるため、好適に採用できる。5−スルホイソフタル酸金属塩の共重合率は、0.1〜6mol%であることが好ましく、0.5〜2mol%であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維横断面において芯成分が表面に露出している部分を1箇所有している。芯成分が完全に被覆された芯鞘型複合繊維と異なり、繊維横断面において芯成分の一部が表面に露出しているため、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーが体積膨潤した際の鞘割れを抑制することが可能である。また、芯成分の吸湿性を有するポリマーが表面に露出しているため、芯成分が完全に被覆された芯鞘型複合繊維よりも高い吸湿性が発現する。ここで、芯成分の表面露出部分が複数箇所の場合、繊維断面において鞘が不連続となり、鞘の剥離や脱落の原因となる。そのため、鞘の剥離・脱落の抑制と、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーが体積膨潤した際の鞘割れの抑制を両立させるためには、芯成分が表面露出している部分が1箇所であり、かつできるだけ露出面積が小さいこと、具体的には後述の繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満である必要がある。
本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満である。本発明における繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。芯鞘型複合繊維のr/Rが0.005以上であれば、芯成分の吸湿性を有するポリマーの表面露出により、芯成分が完全に被覆された芯鞘型複合繊維よりも高い吸湿性が発現する。また、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーが体積膨潤できるため、鞘割れを抑制することができる。一方、芯鞘型複合繊維のr/Rが0.050未満であれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。また、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分の吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されるため、熱水処理後においても吸湿性が維持される。芯鞘型複合繊維のr/Rは0.035以下であることがより好ましく、0.030以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維は、芯成分および/または鞘成分に副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明の芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度は、150℃以上である。本発明における芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も低温側の融解ピークから補外融解開始温度を算出した。芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度が150℃以上であれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度は170℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分/鞘成分の複合比率(重量比)は、10/90〜70/30であることが好ましい。本発明における芯鞘型複合繊維の芯成分/鞘成分の複合比率(重量比)とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。芯鞘型複合繊維の芯成分の複合比率が10重量%以上であれば、吸湿性に優れた芯鞘型複合繊維が得られるため好ましい。本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分の複合比率は20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることが更に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の芯成分の複合比率が70重量%以下、すなわち鞘成分の複合比率が30重量%以上であれば、鞘成分によるハリ、コシ感やドライな感触が得られるため好ましい。また、延伸時や仮撚時の外力による鞘割れや、吸湿時の芯成分の体積膨潤による鞘割れが抑制されるため、毛羽の発生による品位の低下や、染色等の熱水処理時に熱水への芯成分の吸湿性を有するポリマーの溶出による吸湿性の低下が抑制されるため好ましい。本発明の芯鞘型複合繊維の芯成分の複合比率は60重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10〜500dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。芯鞘型複合繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。芯鞘型複合繊維の繊度は、30dtex以上であることがより好ましく、50dtex以上であることが更に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の繊度が500dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。芯鞘型複合繊維の繊度は、400dtex以下であることがより好ましく、300dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の単糸繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5〜4.0dtexであることが好ましい。本発明における単糸繊度とは、実施例記載の方法で測定される繊度を単糸数で除した値を指す。芯鞘型複合繊維の単糸繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。芯鞘型複合繊維の単糸繊度は、0.6dtex以上であることがより好ましく、0.8dtex以上であることが更に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の単糸繊度が4.0dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。芯鞘型複合繊維の単糸繊度は、2.0dtex以下であることがより好ましく、1.5dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の強度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から2.0〜5.0cN/dtexであることが好ましい。本発明における強度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。芯鞘型複合繊維の強度が2.0cN/dtex以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。芯鞘型複合繊維の強度は2.5cN/dtex以上であることがより好ましく、3.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の強度が5.0cN/dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の伸度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10〜60%であることが好ましい。本発明における伸度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。芯鞘型複合繊維の伸度が10%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性が良好となるため好ましい。芯鞘型複合繊維の伸度は15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。芯鞘型複合繊維の伸度は55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
本発明の芯鞘型複合繊維の熱水処理後の吸湿率差(△MR)は、2.0〜10.0%である。本発明における熱水処理後の吸湿率差(△MR)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。△MRとは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差である。すなわち、△MRは吸湿性の指標であり、△MRの値が高いほど着用快適性が向上する。本発明の吸湿率差(ΔMR)は熱水処理後の値であり、染色等の熱水処理後においても吸湿性が発現していることを表す点で非常に重要である。芯鞘型複合繊維の熱水処理後の△MRが2.0%以上であれば、衣服内の蒸れ感が少なく、着用快適性が発現する。芯鞘型複合繊維の熱水処理後の△MRは3.0%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることが更に好ましく、4.0%以上であることが特に好ましい。一方、芯鞘型複合繊維の熱水処理後の△MRが10.0%以下であれば、工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維横断面において芯成分が表面に露出している部分を1箇所有しており、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満を満たしていれば、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
本発明の芯鞘型複合繊維は、一般の繊維と同様に仮撚や撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の芯鞘型複合繊維および/または仮撚糸からなる繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。また、本発明の芯鞘型複合繊維および/または仮撚糸からなる繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の芯鞘型複合繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよいし、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
次に、本発明の芯鞘型複合繊維の製造方法を以下に示す。
本発明の芯鞘型複合繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚加工方法を用いることができる。
本発明では溶融紡糸を行う前に、芯成分、鞘成分を乾燥させ、含水率を300ppm以下としておくことが好ましい。含水率が300ppm以下であれば、溶融紡糸の際に加水分解による分子量低下や水分による発泡が抑制され、安定して紡糸を行うことができるため好ましい。含水率は100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
本発明では、事前に乾燥したチップをエクストルーダー型やプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機へ供給して、芯成分と鞘成分を別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、芯鞘型複合紡糸口金で芯成分と鞘成分を合流させて芯鞘構造として、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする。紡糸口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、製糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、芯成分、鞘成分の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、240〜320℃であることが好ましい。紡糸温度が240℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は250℃以上であることがより好ましく、260℃以上であることが更に好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが更に好ましい。
溶融紡糸に用いる口金は、芯成分が表面に露出している部分を1箇所有した繊維断面(図1)にすべく、インサート型、パイプ型もしくは分配方式の複合口金において、芯成分の1箇所が表面に露出するよう加工した芯鞘断面用口金を使用した。
溶融紡糸における紡糸速度は、芯成分、鞘成分の組成、紡糸温度などに応じて適宜選択することができる。一旦溶融紡糸を行って巻き取った後、別途、延伸または仮撚を行う二工程法の場合の紡糸速度は、500〜6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は1000m/分以上であることがより好ましく、1500m/分以上であることが更に好ましい。一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は4500m/分以下であることがより好ましく、4000m/分以下であることが更に好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500〜5000m/分、高速ローラーを2500〜6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。一工程法の場合の紡糸速度は低速ローラーを1000〜4500m/分、高速ローラーを3500〜5500m/分とすることがより好ましく、低速ローラーを1500〜4000m/分、高速ローラーを4000〜5000m/分とすることが更に好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
延伸を行う場合の延伸温度は、芯成分、鞘成分のポリマーの補外融解開始温度や、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、50〜150℃であることが好ましい。延伸温度が50℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制できるため好ましい。延伸温度は60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて60〜150℃の熱セットを行ってもよい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は6.0倍以下であることがより好ましく、5.0倍以下であることが更に好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は50m/分以上であることがより好ましく、100m/分以上であることが更に好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合には、1段ヒーターのみ使用する、いわゆるウーリー加工以外に、1段ヒーターと2段ヒーターの両方を使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。仮撚加工機の具体例として、フリクションディスク式、ベルトニップ式、ピン式などが挙げられるが、これらに限定されない。
仮撚加工を行う場合のヒーター温度は、芯成分、鞘成分のポリマーの補外融解開始温度などに応じて適宜選択することができるが、120〜210℃であることが好ましい。ヒーター温度が120℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制できるため好ましい。ヒーター温度は140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。一方、ヒーター温度が210℃以下であれば、加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解が抑制されるため、糸切れや加熱ヒーター等の汚れが少なく、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。ヒーター温度は200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合の延伸倍率は、仮撚加工前の繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.01〜2.5倍であることが好ましい。延伸倍率が1.01倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が2.5倍以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。延伸倍率は2.2倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200〜1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。加工速度は300m/分以上であることがより好ましく、400m/分以上であることが更に好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。加工速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
本発明では、必要に応じて、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。本発明では、染料として分散染料を好適に採用することができる。
本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。
本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
本発明の芯鞘型複合繊維およびそれからなる仮撚糸、繊維構造体は、吸湿性に優れるものである。そのため、快適性や品位が要求される用途において好適に用いることができる。例えば、一般衣料用途、スポーツ衣料用途、寝具用途、インテリア用途、資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めたものである。
A.芯成分、鞘成分の吸湿率差(△MR)
芯成分または鞘成分のポリマーを試料とし、始めに60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU−123内に24時間静置し、ポリマーの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に24時間静置し、ポリマーの重量(W2)を測定した。その後、105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後のポリマーの重量(W3)を測定した。ポリマーの重量W1、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、ポリマーの重量W2、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。
MR1(%)={(W1−W3)/W3}×100
MR2(%)={(W2−W3)/W3}×100
吸湿率差(△MR)(%)=MR2−MR1 。
B.補外融解開始温度
芯成分、鞘成分のポリマーおよび実施例によって得られた繊維を試料とし、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、補外融解開始温度を測定した。始めに、窒素雰囲気下で試料約5mgを0℃から280℃まで昇温速度50℃/分で昇温後、280℃で5分間保持して試料の熱履歴を取り除いた。その後、280℃から0℃まで急冷した後、再度0℃から280℃まで昇温速度3℃/分、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒で昇温し、TMDSC測定を行った。JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)9.1に準じて、2回目の昇温過程中に観測された融解ピークより補外融解開始温度を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を補外融解開始温度とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も低温側の融解ピークから補外融解開始温度を算出した。
C.芯/鞘複合比率
芯鞘型複合繊維の原料として用いた芯成分の重量と鞘成分の重量から、芯/鞘複合比率(重量比)を算出した。
D.糸切れ
各実施例に記載の仮撚条件にて、10時間加工した際の糸切れの回数をカウントし、糸切れ(回)とした。
E.堆積物
各実施例に記載の仮撚条件にて、10時間加工後に延伸仮撚機の加熱ヒーター、冷却板、フリクションディスク、ガイドを観察し、「堆積物がほとんどない」を◎、「堆積物がわずかにある」を○、「堆積物が多い」を△、「堆積物が極めて多い」を×とし、○、◎を合格とした。
F.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 。
G.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 。
H.繊維横断面の外周の長さR、芯成分の表面露出部分の長さr、r/R
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を白金−パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて1000倍で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に30本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、全ての繊維横断面の外周の長さ、および全ての芯成分の表面露出部分の長さを測定後、30本の平均値を算出し、繊維横断面の外周の長さR、芯成分の表面露出部分の長さrとした。
r/Rは、上記で算出した繊維横断面の外周の長さR、芯成分の表面露出部分の長さrを用いて下記式によって算出した。
繊維横断面の外周の長さRと芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)=r/R
なお、比較例8のみ芯成分の表面露出が複数箇所有するため、芯成分の表面露出部分の長さrとr/Rに関して、芯成分の表面露出部分の長さの総和をrとし、r/Rを算出した。
I.精練後、熱水処理後の吸湿率差(△MR)
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1g/L、日華化学製界面活性剤サンモールBK−80を含む水溶液中、80℃で20分間精練後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、精練後の筒編みとした。また、精練後の筒編みを浴比1:100、処理温度130℃、処理時間60分の条件で熱水処理した後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、熱水処理後の筒編みとした。
吸湿率(%)は、精練後および熱水処理後の筒編みを試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.10の水分率に準じて算出した。始めに、筒編みを60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU−123内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W2)を測定した。その後、筒編みを105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後の筒編みの重量(W3)を測定した。筒編みの重量W1、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、筒編みの重量W2、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。
MR1(%)={(W1−W3)/W3}×100
MR2(%)={(W2−W3)/W3}×100
吸湿率差(△MR)(%)=MR2−MR1 。
J.融着
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みを白金−パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて1000倍で観察し、無作為に5視野の顕微鏡写真を撮影した。得られた5枚の写真において、融着している箇所の合計を融着(箇所)とした。
K.鞘割れ
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みを白金−パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて1000倍で観察し、無作為に5視野の顕微鏡写真を撮影した。得られた5枚の写真において、鞘割れしている箇所の合計を鞘割れ(箇所)とした。
L.均染性
上記Iと同様に作製した精練後の筒編みを160℃で2分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT−YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度130℃、染色時間60分の条件で染色した。なお、鞘成分としてカチオン可染性ポリエステルを用いた場合には、カチオン染料として日本化薬製Kayacryl Blue 2RL−EDを1.0重量%加え、pHを4.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度130℃、染色時間60分の条件で染色した。
染色後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」を◎、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」を○、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」を△、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」を×とし、○、◎を合格とした。
M.品位(毛羽、品位)
上記Lで作製した染色後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「毛羽が全くなく、品位に極めて優れる」を◎、「毛羽がほとんどなく、品位に優れる」を○、「毛羽があり、品位に劣る」を△、「毛羽が多数あり、品位に極めて劣る」を×とし、○、◎を合格とした。
実施例1
数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)を30重量%共重合したポリブチレンテレフタレートを芯成分とし、ポリエチレンテレフタレート(IV=0.66)を鞘成分とし、それぞれを150℃で12時間真空乾燥した後、芯成分を40重量%、鞘成分を60重量%の配合比でエクストルーダー型複合紡糸機へ供給して別々に溶融させ、紡糸温度285℃、吐出量36g/分で芯鞘型分配方式の複合用紡糸口金(孔数:72)から吐出させて紡出糸条(単糸断面形状:図1)を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速20m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2500m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って144dtex−72fの未延伸糸を得た。その後、延伸仮撚機(加撚部:フリクションディスク式、ヒーター部:接触式)を用いて、得られた未延伸糸をヒーター温度170℃、倍率1.7倍の条件で延伸仮撚し、84dtex−72fの仮撚糸を得た。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表1に示す。仮撚時の糸切れは0回であり、仮撚後に加熱ヒーターやガイド等に堆積物は見られず、工程通過性は極めて良好であった。また、熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、熱水処理後も吸湿性が良好であった。さらには、繊維同士の融着、鞘割れは見られず、均染性、品位は合格レベルであった。
実施例2〜9、比較例1
芯成分の共重合成分であるポリエチレングリコールの共重合率および芯/鞘複合比率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表1に示す。ポリエチレングリコールの共重合率、ないし芯成分と鞘成分の複合比率を変更した場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。比較例1では精練後の吸湿性が低く、その結果、熱水処理後の吸湿性も極めて劣るものであった。
実施例10〜15、比較例2、3
芯成分の共重合成分であるポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率および芯/鞘複合比率を表2に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表2に示す。ポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率、ないし芯成分と鞘成分の複合比率を変更した場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。比較例2では精練後の吸湿性が低く、その結果、熱水処理後の吸湿性も極めて劣るものであった。また、比較例3では芯成分の補外融解開始温度が未検出であり、結晶性を有していないため、糸切れ、堆積物が極めて多く、工程通過性は極めて不良であった。また、融着や鞘割れが多数見られ、均染性、品位は合格レベルに至らなかった。さらには、融着や鞘割れを観察した顕微鏡写真において、芯成分の吸湿性を有するポリマーの溶出が見られたことから、熱水処理により芯成分の吸湿性を有するポリマーが溶出した結果、熱水処理により吸湿性が大きく低下し、熱水処理後の吸湿性は極めて低いものであった。
実施例16〜22、比較例4〜6
ポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率を表3に示すとおりに共重合したポリブチレンテレフタレートを芯成分とし、ポリブチレンテレフタレート(IV=0.66)を鞘成分とし、紡糸温度を255℃とし、芯/鞘複合比率を表3に示すとおりとし、実施例18、比較例4、5では延伸仮撚機のヒーター温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表3に示す。実施例18〜24においては、ポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率および芯/鞘複合比率を変更した場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。比較例4では精練後の吸湿性が低く、その結果、熱水処理後の吸湿性も極めて劣るものであった。比較例5では精練後の吸湿性は高いものの、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、さらには工程通過性も不良であり、均染性、品位も合格レベルに至らなかった。比較例6では芯成分の補外融解開始温度が低いため、糸切れ、堆積物が極めて多く、工程通過性は極めて不良であった。また、精練後の吸湿性が低く、その結果、熱水処理後の吸湿性も極めて劣るものであった。
実施例23〜25
芯成分を実施例23、24では数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)を表4に示す共重合率で共重合したナイロン6、実施例25ではアルケマ製“PEBAX MH1657”に変更した以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表4に示す。芯成分をポリエーテルアミドに変更した場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。
実施例26
芯成分を東レ製“PAS−40N”とし、延伸仮撚機のヒーター温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表4に示す。芯成分をポリエーテルエステルアミドに変更した場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。
実施例27
鞘成分を5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩を1.5mol%および数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)1.0重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(IV=0.66)に変更した以外は、実施例10と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表4に示す。鞘成分としてカチオン可染性ポリエステルを用いた場合も、工程通過性、布帛特性ともに良好であった。
比較例7
断面形状を図2に変更した以外は、実施例10と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表4に示す。糸切れは無く、堆積物もほとんど見られず、工程通過性は良好であった。しかしながら、融着はないものの、芯成分の吸湿性を有するポリマーが鞘成分で完全に被覆されているため、熱水処理時の吸湿性を有するポリマーの体積膨潤に伴う、鞘割れが多数見られた。その結果、均染性、品位は合格レベルに至らなかった。
比較例8
断面形状を図3に変更した以外は、実施例10と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性、布帛特性および工程通過性の評価結果を表4に示す。糸切れ、堆積物が極めて多く、工程通過性は極めて不良であった。また、芯成分が表面に複数箇所露出しているため、鞘の剥離、脱落が確認された(表4の鞘割れとしてまとめてカウントした)。その結果、均染性、品位は合格レベルに至らなかった。
Figure 0006939102
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Figure 0006939102
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本発明の芯鞘型複合繊維は、延伸や仮撚工程における融着が抑制されているため、糸切れや毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好である。また、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れる。さらには、あらかじめ開口部を1箇所設けることで、剥離が抑制されており、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性を有するポリマーの膨潤に伴う鞘割れが抑制されている。また、吸湿性を有するポリマーの溶出が抑制されており、熱水処理後においても吸湿性に優れるものである。そのため、衣料用の織編物や不織布などの繊維構造体として好適に用いることができる。
1.芯成分
2.鞘成分

Claims (8)

  1. 芯成分、鞘成分ともに結晶性を有するポリマーであり、かつ芯成分が吸湿性を有するポリマーであり、前記吸湿性を有するポリマーが、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールである1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とし、数平均分子量2000〜30000g/molのポリエーテルを共重合成分とするポリエーテルエステルであり、繊維横断面において芯成分が表面に露出している部分を1箇所有しており、繊維横断面の外周の長さRと、芯成分の表面露出部分の長さrの比(r/R)が0.005以上0.050未満である芯鞘型複合繊維であり、芯鞘型複合繊維の補外融解開始温度が150℃以上かつ熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%であることを特徴とする芯鞘型複合繊維。
  2. 芯成分/鞘成分の複合比率(重量比)が10/90〜70/30であることを特徴とする請求項1に記載の芯鞘型複合繊維。
  3. ポリエーテルが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一つのポリエーテルであることを特徴とする請求項1または2に記載の芯鞘型複合繊維。
  4. ポリエーテルの共重合率が25〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の芯鞘型複合繊維。
  5. 鞘成分がカチオン可染性ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の芯鞘型複合繊維。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の芯鞘型複合繊維を2本以上撚り合わせた仮撚糸。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の芯鞘型複合繊維少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
  8. 請求項6に記載の仮撚糸を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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