JP2021179053A - 吸湿性および耐摩耗性に優れた海島型複合繊維 - Google Patents

吸湿性および耐摩耗性に優れた海島型複合繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】熱水処理においても高品位かつ吸湿性、耐摩耗性に優れ、さらには、水洗濯処理後の黄変抑制が可能であり、耐酸化分解性が良好でドライクリーニング処理後または水洗濯処理後の酸化発熱の抑制が可能な吸湿性海島繊維を提供する。【解決手段】単糸繊度が0.5〜2.5dtex、繊維横断面の中心に対して、非点対称となるように島を配置され、繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.10〜0.40、繊維横断面における最外層厚みTが1.5〜4.5μm、熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%、島成分が吸湿性を有する共重合ポリエステル系ポリマーであり、特定のフェノール基の含有量が2〜40mmol/kgの吸湿性海島繊維。【選択図】図1

Description

本発明は、吸湿性と耐摩耗性に優れかつ耐酸化分解性が良好な海島型複合繊維に関する。
ポリエステル繊維は、安価であり、機械的特性やドライ感に優れているため、幅広い用途において用いられている。しかし、吸湿性に乏しいため、夏場の高湿時には蒸れ感の発生、冬場の低湿時には静電気の発生など、着用快適性の観点において解決すべき課題を有している。
上記の欠点を改善するため、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与する方法について、これまでに種々の提案がなされている。吸湿性を付与するための一般的な方法として、ポリエステルへの親水性化合物の共重合や親水性化合物の添加などが挙げられ、親水性化合物の一例としてポリエチレングリコールが挙げられる。
また、ポリエチレングリコールを含むポリアルキレングリコールを構成成分とし、その他の添加剤等を含有するポリエステル組成物についても、これまでに種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1では、高分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを島成分とすることでポリエステル繊維へ吸湿性を付与し、最外層厚みと繊維直径を制御することで熱水処理時の海成分の割れを抑制し、ハーフヒンダードフェノールとリン系酸化防止剤を併用することで耐酸化発熱性を付与した海島型複合繊維が提案されている。
特許文献2では、高分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを芯成分とすることでポリエステル繊維へ吸湿性を付与し、芯部を一部露出することで熱水処理時の鞘成分の破壊を抑制し、セミヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことで黄変抑制を付与した芯鞘型複合繊維が提案されている。
特許文献3では、ポリエーテルブロックアミドを島成分、PETを海成分とした、吸湿性と制電性を有する海島型複合繊維が提案されている。
特許文献4では、高分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを島成分とすることでポリエステル繊維へ吸湿性を付与し、最外層厚みと繊維直径を制御することで熱水処理時の海成分の割れを抑制した海島型複合繊維が提案されている。
WO2019/176811号公報 特表2019−502036号公報 特開2016−69770号公報 特開2020−020076号公報
しかしながら、上記特許文献1の海島型複合繊維では耐酸化発熱性が必ずしも解消されておらず、例えば実施例に開示された島数は6島で1週配置である海島型複合繊維は摩耗時に海成分が割れて島成分が露出し、耐酸化発熱性が低下するという課題があった。
特許文献2には、芯成分の一部が露出しているため、摩耗時に芯成分と鞘成分の剥離が容易に発生するという課題があった。
特許文献3では、吸放湿特性には優れるが酸化防止剤を含んでいないポリエーテルアミド共重合物を島成分として用いているため、耐酸化発熱性を有さないという課題があった。
特許文献4の海島型複合繊維では耐酸化発熱性が必ずしも解消されておらず、例えば実施例に開示された島数は6島で1週配置である海島型複合繊維は摩耗時に海成分が割れて島成分が露出し、耐酸化発熱性が低下するという課題があった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、織物や編物などの繊維構造体とした際の染め斑や毛羽の発生が少なく品位に優れるとともに、染色等の熱水処理後においても吸湿性に優れ、さらには、水洗濯処理後(JIS L0217)後の黄変抑制が可能であり、耐酸化分解性が良好でドライクリーニング処理後(JIS L1096)または水洗濯処理後の酸化発熱抑制が可能であることから、衣料用途に好適に採用できる海島型複合繊維を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、次の手段を採用する。
下記(1)〜(8)の特徴を有する吸湿性及び耐摩耗性に優れた海島型複合繊維。
(1)単糸繊度が0.5〜2.5dtexである
(2)繊維横断面の中心に対して、非点対称となるように島を配置されている
(3)繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.05〜0.40
(4)繊維横断面における最外層厚みTが1.5〜4.5μm
(最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す)
(5)熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%
(6)島成分が吸湿性を有する共重合ポリエステル系ポリマーである
(7)下記化学式(1)で表されるフェノール基の含有量が2〜40mmol/kg
Figure 2021179053
(8)リンの含有量が3〜15mmol/kg
本発明によって得られる海島型複合繊維は、染色等の熱水処理においても高品位かつ吸湿性、耐摩耗性に優れ、さらには、水洗濯処理(JIS L0217)後の黄変抑制が可能であり、耐酸化分解性が良好でドライクリーニング処理後(JIS L1096)または水洗濯処理後の酸化発熱の抑制が可能であることから、特に衣料用途において好適に用いることができる。
(a)〜(h)は、本発明の海島型複合繊維の断面形状の一例を示す図である。(i)は芯鞘複合繊維、(j)は公知例(特許文献1や4)の海島型複合繊維の断面形状を示す図である。 は、本発明の海島型複合繊維の製造方法で用いる海島複合口金の一例であって、(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、(b)は分配プレートの一部の横断面図、(c)は吐出プレートの横断面図である。 分配プレートの一例の一部である。 分配プレートにおける分配溝および分配孔配置の一例である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の吸湿性および耐摩耗性に優れた海島型複合繊維およびそれを一部に用いる繊維構造体について説明する。
本発明における単糸繊度とは、単繊維10000m当りの重量(g)のことであり、マルチフィラメント10000m当りの重量(g、総繊度)をフィラメント数で除した値を表す。単糸繊度が小さいほど単糸繊度の繊維径が小さく、比表面積が大きくなり、繊維構造体としたときの風合いが柔らかくなる。
本発明の吸湿性海島繊維の単糸繊度は、0.5〜2.5dtexであることが好ましい。単糸繊度の下限は、機械特性が良好となり品位を維持することができるという点から、0.5dtex以上が好ましい。機械特性が向上するという点から、0.8dtex以上がより好ましい。単糸繊度の上限は、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を発現することができるという点から、2.5dtex以下が好ましい。より柔らかな風合いが発現できるという点から2.0dtex以下がより好ましく、1.5dtex以下が更に好ましく、1.2dtex以下が特に好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面の中心に対して、非点対称となるように島が配置されることが好ましい。点対称とは図形を180°回転した時に元の図形と重なる「対称の中心」が存在することを表すが、本発明における非点対称とは「対称の中心」が存在しないことをいう。島を非点対称となるように配置することで、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う応力の直線状の集中を回避できるため、海成分へかかる応力の分散の分散効果が大きくなり、海成分の割れを抑制でき、海成分の割れに起因した染め斑や毛羽の発生が少なくなり、品位に優れる。さらに、吸湿成分の溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性が発現する。また、海成分の染色により、十分な発色性を得ることができ、発色性の点においても、高品位の繊維ならびに繊維構造体を得ることができる。非点対称な島成分の配置の具体例を図1(a)〜(h)に示すが、この限りではない。
本発明の海島型複合繊維の島数は、3〜5であることが好ましい。海島型複合繊維の島数が3個以上であれば、島成分である吸湿性ポリマーの分散配置により、染色等の熱水処理において吸湿性ポリマーの体積膨潤により発生する応力を分散する効果が発現するため、従来の芯鞘型複合繊維の課題であった応力集中に起因した鞘成分の割れを抑制できるため好ましい。島数が6個以上では、吸湿性ポリマーの体積膨潤により発生する応力を分散する効果が低減してしまうため、島数は5個以下が好ましい。
本発明の海島型複合繊維の島成分は、1〜3周に配置されていることが好ましい。本発明では、繊維横断面において同心円状に配置されている島成分のうち、1つの円上に配置された島成分を1周と定義し、直径の異なる同心円の数が周数となる。なお、繊維横断面の中心に1つの島成分が配置されている場合には、中心に配置された1つの島成分で1周と定義する。図1(a)〜(h)は本発明の海島型複合繊維の断面形状の一例であり、それぞれ島成分が、図1(a)、(b)、(e)では1周、図1(c)、(d)、(f)では2周、図1(g)、(h)では3周に配置されている。染色等の熱水処理において吸湿性ポリマーの体積膨潤により発生する応力について、繊維横断面における応力分布の詳細な解析により、芯鞘型複合繊維では芯成分と鞘成分との界面で応力が最大となる結果を得た。すなわち、芯鞘型複合繊維では、芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴い、応力が最大となる芯成分と鞘成分の界面に亀裂が生じ、もの亀裂が繊維表層まで伝播することで、鞘成分の割れが生じることがわかった。一方で、海島型複合断面では、島成分が分散配置されるため、応力の分散化も可能となり、最大応力も芯鞘型複合糸に比べ小さくなるため、島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴った、応力が最大となる島成分の繊維表層側と海成分の界面で生じた亀裂が、繊維表層まで伝播し、海成分の割れが引き起こされる、といった現象が抑制される。これらの観点から、島成分の配置は1周が好ましく、2周がより好ましく、3周が特に好ましい。しかし、後述するが、本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面において、最外層厚み(T)が1.5〜4.5μmであることが好ましいく、そのためには、島成分の配置は2周が好ましく、最外層厚み(T)を大きくできるという点から1周が特に好ましい。島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴った、島成分と海成分の界面で生じる応力の分散化という点と、最外層厚み(T)を大きくするという点は相反関係にあるが、これらのバランスを考慮すると、島成分の配置は1周が最も好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面において、最外層厚み(T)と繊維直径(R)の比:T/Rが0.05〜0.40であることが好ましい。本発明における最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。本発明における最外層厚み(T)と繊維直径(R)の比:T/Rとは、実施例記載の方法で算出される値を指す。T/Rが0.05以上であれば、繊維直径に対する最外層の厚みが十分に確保されるため、染色等の熱水処理によって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨張に伴う海成分の割れを抑制することができ、海成分の割れに起因した染め斑や毛羽の発生が少なくなり、品位に優れる。さらに、吸湿成分の溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性が発現する。また、海成分の染色により、十分な発色性を得ることができ、発色性の点においても、高品位の繊維ならびに繊維構造体を得ることができる。品位に優れ、高い吸湿性が維持できるという点から、海島型繊維のT/Rは0.10以上がより好ましく、0.15以上がさらに好ましく、0.20以上が特に好ましい。また、T/Rが0.40以下であれば、繊維直径に対する最外層の厚みによって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤が損なわれず、吸湿性ポリマーによる吸湿性が発現し、吸湿性の高い繊維ならびに繊維構造体を得ることが出来る。高い吸湿性が得られるという点から、海島型繊維のT/Rは0.32以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましく、0.23以下が特に好ましく、0.21以下が最も好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面において、最外層厚み(T)が1.5〜4.5μmであることが好ましい。本発明における最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。本発明における最外層厚みTとは、実施例記載の方法で算出される値を指す。海島型複合繊維の最外層厚みが1.5μm以上であれば、最外層の厚みが十分に確保されるため、染色等の熱水処理によって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れを抑制することができ、海成分の割れに起因した染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れ、かつ吸湿性ポリマーの溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性を発現するため好ましい。また、海成分の染色により、十分な発色性を得ることができ、発色性の点においても、高品位の繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。海島型複合繊維の最外層厚みは1.7μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。一方、海島型複合繊維の最外層厚みが4.5μm以下であれば、繊維直径に対する最外層厚みによって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤が損なわれず、吸湿性ポリマーによる吸湿性が発現し、吸湿性の高い繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。海島型複合繊維の最外層厚みは4.0μm以下がより好ましく、3.5μm以下がさらに好ましく、3.0μm以下が特に好ましく、2.5μm以下が最も好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率(重量比)は50/50〜90/10であることが好ましい。本発明における海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率(重量比)とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。海島型複合繊維の海成分の複合比率が50重量%以上であれば、海成分によるハリ、コシ缶やドライな感触が得られるため好ましい。また、延伸時や仮撚時の外力による海成分の割れや、吸湿時や吸水時の島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが抑制されるため、染め斑や毛羽の発生による品位の低下や、染色等の熱水処理時に熱水への島成分の吸湿性を有するポリマーの溶出による吸湿性の低下が抑制されるため好ましい。海島型複合背にの海成分の複合比率は55重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。一方、海島型複合繊維の海成分の複合比率が90重量%以下、すなわち島成分の複合比率が10重量%以上であれば、島成分の吸湿性ポリマーによる吸湿性が発現し、吸湿性に優れた海島型複合繊維が得られるため好ましい。海島型複合繊維の海成分の複合比率は85重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分は、結晶性を有していることが好ましい。海成分が結晶性を有していれば、実施例記載の方法による補外融解開始温度の測定において、結晶の融解に伴う融解ピークが観測される。海成分が結晶性を有していれば、延伸や仮撚工程における加熱ローラーや加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着が抑制されるため、加熱ローラーや加熱ヒーター、ガイド上の堆積物や糸切れ、毛羽の発生が少なく、工程通過性が良好であるとともに、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく、品位に優れるため好ましい。また、染色等の熱水処理時に熱水への海成分の溶出が抑制されるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分の具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエステルは、機械的特性や耐久性に優れるため好ましい。また、海成分がポリエステルやポリオレフィンなどの疎水性ポリマーの場合には、島成分の吸湿性ポリマーによる吸湿性と、海成分の疎水性ポリマーによるドライ感を両立でき、着用快適性に優れた繊維構造体を得られるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分に関する前記ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートは、機械的特性や耐久性に優れ、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートはポリエステル繊維特有のハリ、コシ感が得られるため好ましく、ポリブチレンテレフタレートは結晶性が高いため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分は、カチオン可染性ポリエステルであることが好ましい。ポリエステルがスルホン酸基などのアニオン部位を有していれば、カチオン部位を有するカチオン染料との相互作用により、カチオン可染性を有する。海成分がカチオン可染性ポリエステルであれば、鮮明な発色性を示すとともに、ポリウレタン繊維との混用において染料汚染を防止できるため好ましい。カチオン可染性ポリエステルの共重合成分の具体例として、5−スルホイソフタル酸金属塩があり、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が結晶性に優れるため、好適に採用できる。
本発明における海島型複合繊維の島成分である吸湿性を有する共重合ポリエステル系ポリマーとは、親水性高分子とポリエステルの共重合体からなる共重合ポリエステル系ポリマーであり、吸湿率差(△MR)が2.0%以上である。共重合によって親水性高分子をポリマー骨格の成分とすることで、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性を発現する。また、機械特性が向上するといった効果も発現することから、繊維等の加工品として好適に用いられる。
本発明における吸湿率差(△MR)とは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差であり、特に断りのない限り実施例記載の方法で測定される値を表す。吸湿性を有するとは△MRが2.0%以上のことであり、△MRの値が大きいほど吸湿性が高く着用快適性が向上する。
本発明の海島型複合繊維の熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は、2.0〜10.0%であることが好ましい。熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%であれば、衣服内の蒸れ感が少なく、着用快適性が発現する。熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0%より小さいと、吸湿性が低く衣服内の蒸れ感が大きくなる。熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が10.0%より大きいと、吸湿時に体積膨潤し、耐摩耗性が低下し、品位が低下する。高吸湿性と品位の観点から、熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.0〜8.0%であることが好ましい。
本発明における親水性高分子としては、具体的に、ポリエーテルやポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに制限されない。ポリエステルとの共重合時に反応性に優れるという点からポリエーテルが好ましい。
本発明における共重合ポリエステルの共重合成分であるポリエーテルとしては、具体的に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の単独重合体や、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール共重合体等の共重合体が挙げられるが、これらに制限されない。製造及び使用時の取り扱い性に優れるという点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく、吸湿性に優れるという点からポリエチレングリコールが特に好ましい。
本発明における島成分はポリエチレングリコールを共重合したポリエステルを特徴としている。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールは数平均分子量5000〜20000であり、得られる共重合ポリエステルに対して10〜50重量%共重合していることを特徴としている。ここで、共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの数平均分子量および共重合量の具体的な測定方法は後述するが、共重合ポリエステルをアルカリ水溶液で加水分解した後、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールを特定の数平均分子量とすることで吸湿特性が極めて大きくなり加工性が良好となる。具体的には共重合ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの数平均分子量が5000以上で吸湿性能が極めて大きくなる。この理由は明らかとはなっていないが数平均分子量が5000以上であると、本発明のポリエチレングリコール共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールとポリエステルが特異な構造を形成しており、そのため吸湿性が極めて高くなると考えている。ポリエチレングリコールの数平均分子量は5500以上がより好ましく、6000以上が更に好ましい。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの数平均分子量が20000を超えるとポリエステルとの反応性が低下し、重合時の吐出性が劣り、またポリエチレングリコールが熱水で溶け出すという問題が生じる場合がある。ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの数平均分子量は成形性、特に製糸性の観点から10000以下がより好ましい。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの数平均分子量は以下の手順にて算出することができる。共重合ポリエステル、約0.05gを密閉可能なバイアル瓶に採取し、28重量%のアンモニア水1mLを加え、120℃で5時間加熱し試料を溶解する。放冷後、精製水1ml、6M塩酸1.5mlを加え、精製水で5mlに定容する。遠心分離後、0.45μmフィルターで濾過し、濾液に含まれる片末端封鎖ポリアルキレンオキサイド化合物の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定する。なお、本発明における共重合成分であるポリエチレングリコールの数平均分子量とは、GPCにより標準ポリエチレングリコール換算の値として求めたものを指す。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの共重合量は10〜50重量%であることを特徴としている。ポリエチレングリコールの共重合量が10重量%より少ないと得られた共重合ポリエステルの吸湿性が小さく、ポリエチレングリコールを共重合しないポリエステルと同等程度の吸湿性となり、衣服内の蒸れ感が大きくなる。高い吸湿性を得ることができるという観点から、ポリエチレングリコールの共重合量は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上が更に好ましく、40重量%以上が特に好ましい。また、耐熱性、溶融成形性、例えば紡糸性の観点からポリエチレングリコールの添加量は50重量%以下である必要がある。50重量%を超えると得られた共重合ポリエステルが高い温度域での使用に耐えられない、あるいは成形品の機械的強度が低下する場合がある。
本発明において、ポリエステルに共重合されたポリエチレングリコールの共重合量は以下の手順にて算出することができる。まず、繊維、約0.05gを示差走査熱量測定装置(DSC)の測定パンに採取し、室温から300℃まで加熱し、海成分と島成分由来の融解ピークを特定する。海成分の融解ピークの熱量から、海成分の割合を算出し、島成分の割合を算出する。さらに、繊維、約0.08gを核磁気共鳴装置(NMR)の測定チューブに採取し、重水素化1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(HFIP)1gを加え溶解する。この溶液を1H−NMR測定行い、DSC測定から算出した島成分の割合を用いることで、ポリエステル組成物に共重合されたポリエチレングリコールの共重合量を算出することができる。
本発明においてポリエチレングリコールが共重合したポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。
共重合成分のポリエチレングリコールの添加時期は、例えば、エステル化反応またはエステル交換反応前、エステル化反応またはエステル交換反応が実質的に終了した時点から重縮合反応が開始されるまで、重縮合反応が実質的に終了した後などの任意の段階に添加される。
本発明のポリエチレングリコールが共重合したポリエステルの製造方法においては、芳香族ジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールを50モル%以上含むジオールを用いてエステル化反応を行うことが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、および5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
耐熱性、機械特性および染色性に優れるポリエステル組成物を効率的に製造できるという点で、全ジカルボン酸成分中、テレフタル酸が50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい態様である。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分として、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を併用することも好ましい態様である。
ジオールとしては、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、複素環式ジオールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記の芳香族ジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、およびポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエチレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体と、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、およびポリオキシプロピレン−(3.0)−2,2−ビス
(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のプロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記の他の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記の脂環式ジオールとしては、例えば、シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、および1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記の複素環式ジオールとしては、例えば、イソソルビド、イソマンニド、およびイソイデット等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
結晶化特性、成形性、耐熱性および機械特性に優れるポリブチレンテレフタレートを効率的に製造できるという点から、全ジオール成分中、1,4−ブタンジオールが50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい態様である。1,4−ブタンジオール以外のジオール成分として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを併用することも好ましい態様である。
本発明の吸湿性海島複合繊維には、下記化学式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を更に含むことを特徴としている。
Figure 2021179053
本発明の吸湿性海島複合繊維に含有されるフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ{5,5}ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、トコフェロール、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのフェノール系化合物は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酸化分解抑制効果が高くかつ水洗濯処理の際に生成される黄色のキノン系化合物の量が減少し、黄変抑制効果が高いという観点から、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)](BASF製、IRGANOX245)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ{5,5}ウンデカン(ADEKA製、アデカスタブAO−80)、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(RIANINLON CORPORATION製、THANOX1790)を好適に採用できる。
これらのフェノール系酸化防止剤は、海成分のポリマーに含まれていても良いし、島成分のポリマーに含まれていても良いし、海成分と島成分の両方に含まれていても良い。複合繊維を、ドライクリーニング処理(JIS L1096)または水洗濯処理(JIS L0217)を実施後の耐酸化発熱性が向上するという点から、島成分のポリマーにこれらのフェノール系酸化防止剤が含まれていることが好ましい。
本発明の吸湿性海島複合繊維に含有されるフェノール系酸化防止剤の種類は以下の手順で同定することができる。約3gの繊維をHFIP40mLに溶解後、トルエンを80mL添加する。その後、メタノール120mLを加え、析出させる。調整した溶液を0.45μmフィルターで濾過し、エバポレーターを用いて濾液から溶媒を除去し、酸化防止剤を得ることができる。得られた酸化防止剤をNMR測定チューブに入れ、重水素化HFIP1gを加え溶解する。この溶液を1H−NMR測定行うことで、繊維中に含有されるフェノール系酸化防止剤の構造が判明し、種類を同定することができる。
本発明の吸湿性海島複合繊維は、上記フェノール系酸化防止剤を更に2.0〜40.0mmol/kg含有することを特徴としている。フェノール系酸化防止剤の含有量が2.0mmol/kgより少ないと、複合繊維を、ドライクリーニング処理(JIS L1096)または水洗濯処理(JIS L0217)を実施後の耐酸化発熱性が低下し、90時間未満で酸化発熱が発生する。耐酸化発熱性を付与することが出来るという点から、フェノール系酸化防止剤の含有量の下限値は8.0mmol/kg以上がより好ましく、14.0mmol/kg以上がさらに好ましく、20.0mmol/kg以上が特に好ましく、24.0mmol/kg以上が最も好ましい。また、フェノール系酸化防止剤の含有量が40.0mmol/kgより多いと、繊維の配向が抑制されるため繊維強度が低下し、製編、製織工程における糸切れの多発や、使用時の毛羽発生による品位低下が起こる。繊維強度の観点から、フェノール系酸化防止剤の含有量の上限値は、35.0mmol/kg以下がより好ましく、30.0mmol/kg以下がさらに好ましい。
本発明の複合繊維の耐酸化発熱試験は以下の手順で実施する。ドライクリーニング処理(JIS L1096)または水洗濯処理(JIS L0217)を実施した試料を円筒形容器の深さ25mmまで積み重ね、その中心部に熱電対を設置する。更に試料を積み重ねて円筒形容器に隙間無く充填する。試料を充填した円筒形容器を150℃に設定した恒温乾燥機に入れ、酸化発熱が開始する時間を測定する。酸化発熱開始時間が100時間以上であれば合格、90時間以上であれば良好、90時間未満であれば不合格とした。
本発明の吸湿性海島複合繊維に含有されるフェノール系酸化防止剤の含有量は、以下の手順で算出できる。約3gの繊維をHFIP40mLに溶解後、トルエンを80mL添加する。その後、メタノール120mLを加え、析出させる。調整した溶液を0.45μmフィルターで濾過し、得られた濾液を測定用試料し、HPLC測定行うことで、繊維中に含有されるフェノール系酸化防止剤の含有量を算出することができる。
本発明の吸湿性海島複合繊維には、リン系酸化防止剤を含むことを特徴としている。リン系酸化防止剤を含んでいることで、水洗濯処理(JIS L0217)に使用される次亜塩素酸系漂白剤によるフェノールの失活が抑制され、水洗濯処理後も高い耐酸化発熱性を発現する。本発明の吸湿性海島複合繊維に含まれるリン系酸化防止剤は、リン元素を有した化合物であれば特に制限はない。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、3,9−ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5ウンデカン]、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)]等があげられる。これらのリン系酸化防止剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)フォスファイト(BASF製、IRGAFOS168)、3,9−ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5ウンデカン](ADEKA製、アデカスタブPEP−36)、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(城北化学製、JA−805)、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P−EPQ)は、水洗濯処理後の耐酸化分解性良好であるため、好適に採用でき、水洗濯処理後の黄変抑制の観点から、P−EPQまたはPEP−36が更に好ましい。紡糸前のチップ乾燥時にブリードアウト抑制可能という観点から、PEP−36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、海成分のポリマーに含まれていても良いし、島成分のポリマーに含まれていても良いし、海成分と島成分の両方に含まれていても良い。複合繊維を、ドライクリーニング処理(JIS L1096)または水洗濯処理(JIS L0217)を実施後の耐酸化発熱性が向上するという点から、島成分のポリマーにこれらのリン系酸化防止剤が含まれていることが好ましい。
本発明の吸湿性海島複合繊維に含有されるリン系酸化防止剤の種類は以下の手順で同定することができる。約3gの繊維をHFIP40mLに溶解後、トルエンを80mL添加する。その後、メタノール120mLを加え、析出させる。調整した溶液を0.45μmフィルターで濾過し、エバポレーターを用いて濾液から溶媒を除去し、酸化防止剤を得ることができる。得られた酸化防止剤をNMR測定チューブに入れ、重水素化HFIP1gを加え溶解する。この溶液を1H−NMR測定を行うことで、繊維中に含有されるリン系酸化防止剤の構造が判明し、種類を同定することができる。
本発明の吸湿性海島複合繊維は、上記リン系酸化防止剤をリン量として3.0〜15.0mmol/kg含有することを特徴としている。リン系酸化防止剤のリン量含有量が3.0mmol/kgよりも少ないと水洗濯処理(JIS L0217)実施後に黄変が発生し、耐酸化発熱性が低下し、90時間未満で酸化発熱が発生する場合がある。耐酸化発熱性を付与することが出来るという点から、リン系酸化防止剤の含有量の下限値はリン量として6.0mmol/kg以上がより好ましく、7.0mmol/kg以上がさらに好ましい。また、リン系酸化防止剤のリン量含有量が15.0mmol/kgより多いと、繊維の配向が抑制されるため繊維強度が低下し、製編、製織工程における糸切れの多発や、使用時の毛羽発生による品位低下が起こる場合がある。繊維強度の観点から、リン系酸化防止剤の含有量の上限値はリン量として13.0mmol/kg以下がより好ましく、10.0mmol/kg以下がさらに好ましい。
本発明の吸湿性海島複合繊維に含有されるリン系酸化防止剤の含有量は、以下の手順で算出できる。約3gの繊維に硫酸10mLを加えサンドバス上にて250℃で分解させる。過塩素酸1.0mLを加え、さらに300℃で分解させる。試料が無色透明になったら、350℃で分解し、硫酸還流を行う。冷却後、20%水酸化ナトリウム水溶液で中和する。得られた溶液と試料溶液として、分光光度計にて720nmにおける吸光度を測定し、リン量を算出することができる。
本発明のポリエステル組成物に含有されるリン系酸化防止剤は、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)にて加熱減量評価を行ったとき、5%重量減少温度が170℃以上であることを特徴とする。5%重量減少温度が170℃未満のとき、混練時や紡糸時に、分解および/または揮発してしまい、得られる繊維の耐酸化発熱性や黄変抑制効果が低下する傾向にある。耐酸化発熱性や黄変抑制効果が発現するという観点から、5%重量減少温度は170℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましく、220℃以上が特に好ましい。
本発明のポリエステル組成物に含有されるリン系酸化防止剤は、1分子中にリン原子を2個以上含む分子構造であることを特徴とする。1分子中のリン原子が1個の分子構造のリン系酸化防止剤を用いると、混練時や紡糸時に揮発してしまい、得られる繊維の耐酸化発熱性や黄変抑制効果が低下する。耐酸化発熱性や黄変抑制効果が発現するという観点から、リン系酸化防止剤は、1分子中にリン原子を2個以上含む分子構造であることが好ましい。
本発明のポリエステル組成物に含有されるリン系酸化防止剤は、融点が80℃以上であることを特徴とする。リン系酸化防止剤の融点が80℃未満のとき、混練時や紡糸時に、分解および/または揮発してしまい、得られる繊維の耐酸化発熱性や黄変抑制効果が低下する傾向にある。耐酸化発熱性や黄変抑制効果が発現するという観点から、融点は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましく、180℃以上が特に好ましく、200℃以上が最も好ましい。
本発明のポリエステル組成物に含有されるリン系酸化防止剤は、下記化学式(2)または化学式(3)で表される分子構造を有していることを特徴とする。
Figure 2021179053
Figure 2021179053
化学式(2)で表される分子構造を有するリン系酸化防止剤としては、クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX(登録商標) P−EPQを挙げることができる。
化学造式(3)で表される分子構造を有するリン系酸化防止剤としては、ADEKA製、アデカスタブ(登録商標)PEP−36を挙げることができる。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられるフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤の添加時期や添加法に関しては特に制限はない。海成分および/または島成分を一旦冷却固化後再溶融した状態で混練してもよく、また、海成分および/または島成分と直接ブレンドしてもよい。強制的に吸湿性ポリマーと混ぜる観点から、島成分を一旦冷却固化後再溶融した状態で二軸混練機にて混練するのが好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造において、チオプロピオネート化合物などの硫黄系酸化防止剤の添加に関しては特に制限はないが、得られる繊維の明度の観点から硫黄系酸化防止剤を添加しないことが好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、海成分および/または島成分に副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
本発明の海島型複合繊維は、一般の繊維と同様に仮撚や撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の海島型複合繊維および/または仮撚糸からなる繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。また、本発明の海島型複合繊維および/または仮撚糸からなる繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の海島型複合繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよいし、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
次に、本発明の海島型複合繊維の製造方法を以下に示す。
本発明の海島型複合繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚などの捲縮加工方法を用いることができる。
本発明では溶融紡糸を行う前に、海成分、島成分を乾燥させ、含水率を300ppm以下としておくことが好ましい。含水率が300ppm以下であれば、溶融紡糸の際に加水分解による分子量低下や水分による発泡が抑制され、安定して紡糸を行うことができるため好ましい。含水率は100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
本発明では、事前に乾燥したチップをエクストルーダー型やプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機へ供給して、海成分と島成分を別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、後述する海島複合口金で海成分と島成分を合流させて海島構造として、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする。
本発明では、海島複合口金として、例えば、特開2007−100243号公報に開示されているパイプ群が配置された従来公知のパイプ型海島複合口金を用いて製造してもよい。しかしながら、従来のパイプ型海島複合口金では、最外層の海成分の厚みは150nm程度が技術の限界であり、本発明の必須要件である繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を満たすことが困難である。そのため、本発明では、特開2011−174215号公報に記載の海島複合口金を用いた方法が好適に用いられる。
本発明に用いる海島複合口金の一例として、図2〜4に示す部材で構成される海島複合口金について説明する。図2(a)〜(c)は、本発明に用いる海島複合口金の一例を模式的に説明するための説明図であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの一部の横断面図である。図2(b)および図2(c)は図2(a)を構成する分配プレートおよび吐出プレートであって、図3は分配プレートの平面図、図4は本発明における分配プレートの一部の拡大図であり、それぞれが一つの吐出孔に関わる溝および孔として記載したものである。
以下、複合ポリマー流が計量プレート、分配プレートを経て形成され、吐出プレートの吐出孔から吐出されるまでの過程を説明する。紡糸パック上流からポリマーA(島成分)とポリマーB(海成分)が、図2の計量プレートのポリマーA用計量孔(10−(a))およびポリマーB用計量孔(10−(b))に流入し、下端に穿設された孔絞りによって計量された後、分配プレートに流入される。分配プレートでは、計量孔10から流入したポリマーを合流するための分配溝11(図3:11−(a)、11−(b))とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔12(図4:12−(a)、12−(b))が穿設されている。また、複合ポリマー流の最外層に海成分であるポリマーBから構成される層を形成するため、図3に示すような分配孔を底面に穿設した環状溝16が設置される。
この分配プレートから吐出されたポリマーAおよびポリマーBによって構成された複合ポリマー流は、吐出導入孔13から吐出プレート9に流入される。次に、複合ポリマー流は、所望の径を有した吐出孔に導入する間に縮小孔14によって、ポリマー流に沿って断面方向に縮小され、分配プレートで形成された断面形態を維持して、吐出孔15から吐出される。
海島複合口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、紡糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、海成分、島成分の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、240〜320℃であることが好ましい。紡糸温度が240℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は250℃以上であることがより好ましく、260℃以上であることが更に好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが更に好ましい。
溶融紡糸における紡糸速度は、海成分、島成分の組成、紡糸温度などに応じて適宜選択することができる。一旦溶融紡糸を行って巻き取った後、別途、延伸または仮撚を行う二工程法の場合の紡糸速度は、500〜6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は1000m/分以上であることがより好ましく、1500m/分以上であることが更に好ましい。一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は4500m/分以下であることがより好ましく、4000m/分以下であることが更に好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500〜5000m/分、高速ローラーを2500〜6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。一工程法の場合の紡糸速度は低速ローラーを1000〜4500m/分、高速ローラーを3500〜5500m/分とすることがより好ましく、低速ローラーを1500〜4000m/分、高速ローラーを4000〜5000m/分とすることが更に好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
延伸を行う場合の延伸温度は、海成分、島成分のポリマーの補外融解開始温度や、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、50〜150℃であることが好ましい。延伸温度が50℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。延伸温度は60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて60〜150℃の熱セットを行ってもよい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は6.0倍以下であることがより好ましく、5.0倍以下であることが更に好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は50m/分以上であることがより好ましく、100m/分以上であることが更に好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合には、1段ヒーターのみ使用する、いわゆるウーリー加工以外に、1段ヒーターと2段ヒーターの両方を使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。仮撚加工機の具体例として、フリクションディスク式、ベルトニップ式、ピン式などが挙げられるが、これらに限定されない。
仮撚加工を行う場合のヒーター温度は、海成分、島成分のポリマーの補外融解開始温度などに応じて適宜選択することができるが、120〜210℃であることが好ましい。ヒーター温度が120℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。ヒーター温度は140℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。一方、ヒーター温度が210℃以下であれば、加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解が抑制されるため、糸切れや加熱ヒーター等の汚れが少なく、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。ヒーター温度は200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合の延伸倍率は、仮撚加工前の繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.01〜2.5倍であることが好ましい。延伸倍率が1.01倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が2.5倍以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。延伸倍率は2.2倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることが更に好ましい。
仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200〜1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。加工速度は300m/分以上であることがより好ましく、400m/分以上であることが更に好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。加工速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
本発明では、必要に応じて、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。本発明では、染料として分散染料を好適に採用することができる。
本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。
本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
本発明の海島型複合繊維およびそれからなる仮撚糸、繊維構造体は、吸湿性に優れるものである。そのため、快適性や品位が要求される用途において好適に用いることができる。例えば、一般衣料用途、スポーツ衣料用途、寝具用途、インテリア用途、資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.布帛の吸湿率差(△MR)
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20を含む水溶液に投入し、80℃で20分間精練後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、精練後の筒編みとした。また、精練後の筒編みを浴比1:100、処理温度130℃、処理時間60分の条件で熱水処理した後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、熱水処理後の筒編みとした。
吸湿率(%)は、精練後および熱水処理後の筒編みを試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.10の水分率に準じて算出した。始めに、筒編みを60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU−123内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W2)を測定した。その後、筒編みを105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後の筒編みの重量(W3)を測定した。筒編みの重量W1、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、筒編みの重量W2、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。△MRが2.0%以上であれば吸湿性を有すると判断し、3.0%以上であればさらに良好とした。
MR1(%)={(W1−W3)/W3}×100
MR2(%)={(W2−W3)/W3}×100
吸湿率差(△MR)(%)=MR2−MR1。
B.海/島複合比率
海島型複合繊維の原料として用いた海成分の重量と島成分の重量から、海/島複合比率(重量比)を算出した。
C.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 。
D.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 。
E.繊維直径R
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて1000倍で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、抽出した全ての単糸の繊維直径を測定し、その平均値を繊維直径R(μm)とした。繊維横断面は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には、繊維横断面の外接円の直径を繊維直径として採用した。
F.最外層厚みT
上記Fに記載の繊維直径と同様の方法で繊維横断面を観察し、単糸の全体像が観察できる最も高い倍率で顕微鏡写真を撮影した。得られた写真において、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、繊維横断面の輪郭に2点以上で接する真円の半径を繊維の半径として求め、さらに図1中の4のように海島構造の外周に配置された島成分と2個以上接するように外接する真円(外接円)の半径を求めた。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、繊維の半径および海島構造部分の外接円の半径を同様に求め、それぞれの単糸において繊維の半径と海島構造部分の外接円の半径の差を算出し、その平均値を最外層厚みT(μm)とした。
G.T/R
T/Rは、上記Fで算出した最外層厚みT(μm)を、上記Eで算出した繊維直径R(μm)で除して算出した。
H.海成分の割れ
上記Aで作製した熱水処理後の筒編みを白金−パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて1000倍で観察し、無作為に10視野の顕微鏡写真を撮影した。得られた10枚の写真において、海成分が割れている箇所の合計を海成分の割れ(箇所)とし、3箇所以内をS、3箇所以内をA、9箇所以内をB,それよりも多いときをCとした。
I.均染性
上記Aと同様に作製した精練後の筒編みを160℃で2分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT−YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度130℃、染色時間60分の条件で染色した。なお、海成分としてカチオン可染性ポリエステルを用いた場合には、カチオン染料として日本化薬製Kayacryl Blue 2RL−EDを1.0重量%加え、pHを4.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度130℃、染色時間60分の条件で染色した。
作製した染色後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」をS、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」をA、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」をB、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」をCとし、A、Sを合格とした。
J.品位
上記Iで作製した染色後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「毛羽が全くなく、品位に極めて優れる」をS、「毛羽がほとんどなく、品位に優れる」をA、「毛羽があり、品位に劣る」をB、「毛羽が多数あり、品位に極めて劣る」をCとし、A、Sを合格とした。
K.摩耗後の変退色
上記Iで作製した染色後の筒編みを試料とし、直径10cmおよび17.5cmとなるように試料を採取して、試験片を大栄科学精器製作所製アピアランス・リテンションテスター(ART形試験機)の上下ホルダーにセットした。上部試験片を蒸留水で湿潤させたガーゼで完全に湿らせた後、押圧7.36Nで10分間摩耗した。摩耗後、上部の試験片を標準状態で4時間放置したのち、変色の程度を変退色グレースケールで等級判定した。3級以上であれば耐摩耗性良好と判断し、4級以上であればより良好とした。
L.風合い
上記Aで作成した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「非常に柔らかい」をS、「柔らかい」をA、「硬い」をB、「非常に硬い」をCとし、A、Sを合格とした。
M.蒸れ感改善
上記Iで作製した染色後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「ぬめりやべとつきが全くなく、蒸れ感が全くない」をS、「ぬめりやべとつきがほとんどなく、蒸れ感がほとんどない」をA、「ぬめりやべとつきがあり、蒸れ感を感じる」をB、「ぬめりやべとつきが極めて強く、蒸れ感が極めて強い」をCとし、A、Sを合格とした。
N.耐久性
上記Aで作製した熱水処理後の筒編みをJIS L0217:2010(繊維製品の取扱いに関する表示記号およびその表示方法)に規定する付表1 103法に準じて洗濯処理を100回行った試料について、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「亀裂や目ずれが全くない」をSS、「亀裂や目ずれがほとんどない」をS「亀裂や目ずれがあまりない」をA、「亀裂や目ずれがある」をB、「亀裂や目ずれが多数ある」をCとし、A、S、SSを合格とした。
O.共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの抽出
共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの抽出を以下の手順を行い、ポリエチレングリコールの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する。
共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの抽出手順を示す。
得られた共重合ポリエステルを0.05g採取し、1mLの28%アンモニア水中にて120℃で5時間加熱溶解し、放冷後、精製水1mL、6M塩酸1.5mLを加え、精製水で5mL定容、遠心分離後、0.45μmフィルターにて濾過し、濾液をGPC測定に用いた。
P.ポリエチレングリコールの共重合量
共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの共重合量の分析は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて実施した。
装置:日本電子株式会社製 AL−400
重溶媒:重水素化1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(HFIP)
積算回数:128回
サンプル濃度:測定サンプル0.05g/重溶媒1mL。
Q.ポリエチレングリコールの数平均分子量
共重合ポリエステル中のポリエチレングリコールの分子量の分析は、上記の抽出した濾液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行った。
検出器:Waters製2410示差屈折率検出器、感度 128x
カラム:東ソー製TSKgelG3000PWXLI
溶媒:0.1M 塩化ナトリウム水溶液
流速:0.8mL/min
注入量:200μL
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール(エーエムアル株式会社製 Mw106〜10100)。
R.繊維中のフェノール系酸化防止剤の抽出
繊維中に含まれるフェノール系酸化防止剤の抽出を以下の手順を行い、フェノール系酸化防止剤の構造分析は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて実施した。
共重合ポリエステル中のフェノール系酸化防止剤の抽出手順を示す。
得られた繊維、約3gをHFIP40mLに溶解後、トルエンを80mL添加する。その後、メタノール120mLを加え、析出させる。析出物を0.45μmフィルターで除去し、濾液をエバポレーターを用いて濃縮し、乾固物を得ることができる。この乾固物を1H−NMR測定または高速液体クロマトグラム(HPLC)測定に用いた。
S.繊維中に含まれるフェノール系酸化防止剤の構造分析
フェノール系酸化防止剤の構造分析は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて実施した。
装置:日本電子株式会社製 AL−400
重溶媒:重水素化HFIP
積算回数:128回
サンプル濃度:測定サンプル0.05g/重溶媒1mL。
T.フェノール基含有率の分析
得られた繊維、約3gをHFIP40mLに溶解後、トルエンを80mL添加する。その後、メタノール120mLを加え、析出させる。析出物を0.45μmフィルターで除去し、得られた濾液をHPLC測定試料とした。この試料を用い、以下の条件にてHPLC装置(島津製作所製SCL−10AVP)でHPLC測定を行い、予め作成しておいた標準物質(1,4−ジフェニルベンゼン)の検量線より、HPLC測定用試料中に含まれるフェノール基量を定量し、実施例によって得られた繊維中に含まれるフェノール基含有率(mmol/kg)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値をフェノール基含有率とした。
カラム:YMC製YMC−Pack ODS−A(内径4.6mm、長さ150mm、粒子径5nm)検出器:島津製作所製 SPD−10AVVP
移動相:メタノール(溶媒A)、水(溶媒B)、溶媒A:溶媒B=88:12
流速:1.3mL/分
注入量:1μL
カラム温度:40℃
標準物質:1,4−ジフェニルベンゼン。
U.リン元素含有率
試料1gを100mLの三角フラスコにとり、硫酸10mLを加えサンドバス上にて250℃で分解させた。過塩素酸1.0mLを加え、さらに300℃で分解させた。試料が無色透明になったら、350℃で分解し、硫酸が十分還流するまで継続した。冷却後、溶液を50mLのメスフラスコに移し、20%水酸化ナトリウム水溶液で滴定中和後、中和液にモリブテン青発色液2mLを加えた。15分放置後、分光光度計(日立ハイテクサイエンス製U−3310)にて720nmにおける吸光度を測定し、リン元素量を定量し、実施例によって得られた繊維中に含まれるリン元素含有率(mmol/kg)を算出した。
V.リン系酸化防止剤の構造分析
R項記載の方法で得られた析出物を用い、共重合ポリエステル中に含まれるリン系酸化防止剤の構造分析は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて実施した。
装置:日本電子株式会社製 AL−400
重溶媒:重水素化HFIP
積算回数:128回
サンプル濃度:測定サンプル0.05g/重溶媒1mL。
W.ドライクリーニング処理
JIS L1096(織物及び編物の生地試験方法)の8.39寸法変化・8.39.5試験方法・d)ドライクリーニング処理方法に規定されるJ−1法(パークロロエチレン法)に準じて実施した。20℃で12分間のパークロロエチレン処理を行った後、タンブラー乾燥機にて60℃で20分間乾燥処理を行うサイクルを1セットとし、これを10セット繰り返した。
X.水洗濯処理後黄変抑制
JIS L0217:1995(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)の103法に準じて実施した。花王製洗剤「アタック」と2.3ml/Lの花王製漂白剤「ハイター」を加え洗濯処理を10回繰り返した後、タンブラー乾燥機にて60℃で30分間乾燥処理を行うサイクルを1セットとし、これを10セット繰り返した。後述Zの色調測定にて、水洗濯処理後の黄変抑制評価として、「b*値が10未満」をA、「b*値が10以上15以下」をB、「b*値が15より大きい」をC、とした。
Y.酸化発熱開始時間(酸化発熱試験)
上記Wで作製しドライクリーニングまたは水洗濯処理を実施した試料を円筒形容器の深さ25mmまで積み重ね、その中心部に熱電対を設置した。更に試料を積み重ねて円筒形容器に隙間無く充填した。試料を充填した円筒形容器を150℃に設定した恒温乾燥機中200時間入れ、酸化発熱が開始した時間を測定した。「150時間経過しても酸化発熱が起こらない」をS、「100時間経過しても酸化発熱が起こらない」をA、「90時間経過後に酸化発熱開始」をB、「90時間未満で酸化発熱開始」をCとし、SおよびAを合格とした。
Z.窒素酸化物堅牢度
JIS L0855:2005(窒素酸化物に対する染色堅ろう度試験方法)弱試験(1サイクル試験)に準じて行った。A項で作製した精練後の筒編みを試料として、窒素酸化物に暴露し、緩衝尿素溶液で後処理した後、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、窒素酸化物堅牢度を評価した。
AA.色調
ミノルタ製分光測色計CM−3700d型にて黒色校正板をバックに試料を設置し、L*値およびb*値を測定した。
[参考例1]
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート100kgが仕込まれ、温度250℃に保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学社製)82.5kgとエチレングリコール(日本触媒社製)35.4kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物101.5kgを重縮合槽に移送した。
このエステル化反応生成物に、リン酸トリメチル25.3gを添加し、10分後に酢酸コバルト4水和物20.3g、三酸化アンチモン25.3g添加した。さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3質量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度および最終圧力の到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングしてポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを得た。得られたPETの固有粘度は0.65であった。
(実施例1)
BDO1.0kgを100℃に加熱後、チタン触媒:テトラ−n−ブトキシチタネート(TBT)(東京化成)を250g混合して触媒溶液を得た。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)(東京化成)45.3kg、ジオール成分としてブタンジオール(BDO)(東京化成)44.2kg、エステル化反応触媒として上記方法により得られた触媒溶液135gを、精留塔の付いたES反応槽に仕込んだ。温度160℃、圧力93kPaの減圧下にてエステル化反応を開始した後、徐々に昇温し、最終的に温度235℃の条件下でエステル化反応を270分間行った。
数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(PEG)(三洋化成工業製PEG6000S)60.0kg、酸化防止剤:ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX(登録商標)1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、ES反応槽で得られた反応物を移行した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、上記方法により得られた触媒溶液300gを添加し、温度250℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を行い、所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングしてポリエチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートのペレットを得た。重合吐出につき、問題は無かった。得られた共重合ポリエステルの固有粘度は2.00であった。
得られたポリエチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対して、フェノール系酸化防止剤として2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’ ジイル=ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ5−メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO−80)を6.0重量%、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P−EPQ)2.2重量%を配合し、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施し、ポリエステル組成物を得た。なお、ポリエチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートは二軸押出機の元込めより投入した。
得られた共重合ポリエステルを海成分とし、参考例1で得られたポリエステルを島成分とし、それぞれを水分率300ppm以下になるまで乾燥した後、島成分を10重量%、海成分を90質量%の配合比でエクストルーダー型複合紡糸機へ供給して、別々に溶融させ、紡糸温度285℃において、海島複合口金を組み込んだ紡糸パック(フィルター目開き:5μm)に流入させ、118dtex−72fの未延伸糸を得た。このとき、図1(a)に示した、島数:3島、1周配置の島配置とした。その後、延伸仮撚機(加撚部:フリクションディスク式、ヒーター部:接触式)を用いて、得られた未延伸糸をヒーター温度140℃、倍率1.4倍の条件で延伸仮撚し、84dtex−72fの海島型複合仮撚糸を得た。紡糸前の乾燥準備において、ブリードアウト等の問題は無かった。
得られた共重合ポリエステルのポリマー特性、繊維の繊維特性および布帛特性を表1、表3に示す。繊維強度は3.2cN/dtexであった。熱水処理後の吸湿率差(△MR)は1.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「A」であり、耐久性は「SS」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例2)
実施例1で海島型複合糸の紡糸条件として、島成分を15重量%に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
繊維強度は3.0cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「SS」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例3)
実施例1で海島型複合糸の紡糸条件として、島成分を20重量%に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例4)
実施例3で酸化防止剤の添加量をAO−80:8.0重量%、P−EPQ:2.9重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例5)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:7.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例6)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:6.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例7)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:5.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例8)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:4.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例9)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:3.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例10)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:2.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.6cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例11)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:1.0重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.2%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例12)
実施例4で酸化防止剤の添加量をAO−80:0.5重量%に変更したこと以外は実施例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.2%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例13)
実施例3で酸化防止剤の添加量をP−EPQ:3.6重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例14)
実施例13で酸化防止剤の添加量をP−EPQ:1.4重量%に変更したこと以外は実施例13と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「B」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例15)
実施例14でTPAを54.3kg、BDOを53.0kg、ES触媒溶液162gに変更してエステル化反応を実施したこと、および、PEGを48.0kgに変更して重縮合反応を実施したこと以外は実施例14と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例16)
実施例3で混練時に添加するリン系酸化防止剤をトリス(2,4−t−ブチルフェニル)フォスファイト(BASF製、IRGAFOS168)に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
紡糸前のチップ乾燥時にリン系酸化防止剤由来のブリードアウトが発生し、繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「B」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例17)
実施例3で混練時に添加するリン系酸化防止剤をテトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(城北化学工業製、JA−805)に変更し、添加量を2.6重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例18)
実施例3で混練時に添加するリン系酸化防止剤をトリフェニルホスファイト(城北化学工業製、JP−360)に変更し、添加量を1.4重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
紡糸前のチップ乾燥時にリン系酸化防止剤由来のブリードアウトが発生し、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例19)
実施例3で混練時に添加するリン系酸化防止剤を3,9−ビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5ウンデカン](ADEKA製、アデカスタブPEP−36)に変更し、添加量を1.4重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
紡糸前のチップ乾燥時にリン系酸化防止剤由来のブリードアウトが発生し、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例20)
実施例3で混練時に添加するフェノール系酸化防止剤をビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)](BASF製、IRGANOX245)に変更し、添加量を4.8重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例21)
実施例3で混練時に添加するフェノール系酸化防止剤を1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(RIANINLON CORPORATION製、THANOX1790)に変更し、添加量を3.8重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例22)
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート100kgが仕込まれ、温度250℃に保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学社製)51.9kgとエチレングリコール(日本触媒社製)23.3kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行った。
数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(PEG)(三洋化成工業製PEG6000S)60.0kg、酸化防止剤:ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、ES反応槽で得られた反応物63.9kgを重縮合槽に移送した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、リン酸トリメチル30.0gを添加し、10分後に酢酸コバルト4水和物24.0g、三酸化アンチモン30.0g添加した。さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3質量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度および最終圧力の到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングしてポリエチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。重合吐出時、ミスカットが多かった。得られた共重合ポリエステルの固有粘度は1.15であった。
実施例3において、混練時のシリンダー温度を280℃としたこと以外は実施例3と同様に混練および紡糸を実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例23)
実施例1で海島型複合糸の紡糸条件として、島成分を25重量%に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
繊維強度は2.5cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は5.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例24)
実施例1で海島型複合糸の紡糸条件として、島成分を30重量%に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
繊維強度は2.4cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は5.8%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例25)
実施例1で海島型複合糸の紡糸条件として、島成分を35重量%に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。
繊維強度は2.3cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は7.2%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例26)
実施例3で海島型複合糸の紡糸条件として、最外層厚み(T)を2.6μmに変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例27)
実施例26で海島型複合糸の紡糸条件として、得られる海島型複合仮撚糸の品種を84dtex−36fに変更し、繊維直径(R)を14.9μm、最外層厚み(T)を3.6μmに変更したこと以外は実施例26と同様に実施した。
繊維強度は2.9cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例28)
実施例26で海島型複合糸の紡糸条件として、得られる海島型複合仮撚糸の品種を66dtex−36fに変更し、繊維直径(R)を13.2μm、最外層厚み(T)を4.1μmに変更したこと以外は実施例26と同様に実施した。
繊維強度は2.5cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.8%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例29)
実施例26で海島型複合糸の紡糸条件として、得られる海島型複合仮撚糸の品種を66dtex−72fに変更し、繊維直径(R)を9.4μm、最外層厚み(T)を2.9μmに変更したこと以外は実施例26と同様に実施した。
繊維強度は2.4cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例30)
実施例11で混練時に添加するP−EPQ添加量を4.2重量%に変更したこと以外は実施例11と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例31)
実施例3でPEGを数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(PEG)(三洋化成工業製PEG4000)に変更して重縮合反応を実施したこと以外は実施例3と同様に実施した。
重合吐出時のカッティングにおいてミスカットが多く、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(実施例32)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(b)に示した、島数:5島、1周配置に変更し、最外層厚み(T)を2.1μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例33)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(e)に示した、島数:7島、1周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.7μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れは「A」、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例34)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(c)に示した、島数:4島、2周配置に変更し、最外層厚み(T)を2.1μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例35)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(d)に示した、島数:6島、2周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.9μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れは「A」、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「S」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例36)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(f)に示した、島数:8島、2周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.6μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.5%であった。海成分の割れは「B」、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例37)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(g)に示した、島数:10島、3周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.4μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.8cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.6%であった。海成分の割れは「B」、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(実施例38)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(h)に示した、島数:11島、3周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.2μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.5%であった。海成分の割れは「B」、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例1)
実施例27で芯鞘型複合糸に変更し、紡糸条件として、最外層厚み(T)を3.9μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
得られた共重合ポリエステルのポリマー特性、繊維の繊維特性および布帛特性を表2、表4に示す。
繊維強度は2.6cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は2.5%であった。海成分の割れは「C」や、均染性、品位は「B」であり、摩耗後の変退色は2級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「B」であり、耐久性は「B」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例2)
比較例1で得られる芯鞘型複合仮撚糸の品種を66dtex−72fに変更し、繊維直径(R)を10.6μm、最外層厚み(T)を2.8μmに変更したこと以外は比較例1と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は2.3%であった。海成分の割れは「C」、均染性、品位は「B」であり、摩耗後の変退色は2級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「B」であり、耐久性は「B」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例3)
実施例27で得られる海島型複合仮撚糸の島配置を図1(j)に示した、島数:6島、1周配置に変更し、最外層厚み(T)を1.3μmに変更したこと以外は実施例27と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例4)
比較例3で得られる海島型複合仮撚糸の品種を66dtex−132fに変更し、島配置を図1(d)に示した、島数:6島、2周配置に変更し、繊維直径(R)を6.9μm、最外層厚み(T)を1.6μmに変更したこと以外は比較例3と同様に実施した。
繊維強度は2.6cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は2.2%であった。海成分の割れは「C」や、均染性、品位は「B」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「B」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例5)
比較例4で得られる海島型複合仮撚糸の品種を84dtex−24fに変更し、繊維直径(R)を18.3μm、最外層厚み(T)を3.9μmに変更したこと以外は比較例4と同様に実施した。
繊維強度は2.6cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「S」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例6)
比較例4で得られる海島型複合仮撚糸の品種を84dtex−36fに変更し、繊維直径(R)を14.9μm、最外層厚み(T)を3.2μmに変更したこと以外は比較例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例7)
比較例4で得られる海島型複合仮撚糸の品種を44dtex−66fに変更し、繊維直径(R)を8.0μm、最外層厚み(T)を4.6μmに変更したこと以外は比較例4と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.0%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「A」であり、蒸れ感改善は「A」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例8)
比較例3で得られる海島型複合仮撚糸の最外層厚み(T)を4.6μmに変更したこと以外は比較例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は4.1%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「A」であり、摩耗後の変退色は3級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「A」であり、耐久性は「A」であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「S」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4級であった。
(比較例9)
実施例3で酸化防止剤を添加しないこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例10)
実施例3でTPAを63.4kg、BDOを61.9kg、ES触媒溶液189gに変更してエステル化反応を実施したこと、および、PEGを36.0kgに変更して重縮合反応を実施したこと、混練時に添加するP−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は1.5%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例11)
実施例3でTPAを72.4kg、BDOを70.7kg、ES触媒溶液216gに変更してエステル化反応を実施したこと、および、PEGを24.0kgに変更して重縮合反応を実施したこと、混練時に添加するP−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は0.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例12)
実施例3でTPAを81.5kg、BDOを79.5kg、ES触媒溶液243gに変更してエステル化反応を実施したこと、および、PEGを12.0kgに変更して重縮合反応を実施したこと、混練時に添加するP−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は0.5%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例13)
実施例3で混練時に添加するAO−80添加量を10.0重量%、P−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「B」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例14)
実施例3で混練時に添加するP−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例3と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例15)
実施例15で混練時に添加するP−EPQ添加量を0.7重量%に変更したこと以外は実施例15と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例16)
実施例20で混練時に添加するフェノール系酸化防止剤をペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF製、IRGANOX1010)に変更したこと以外は実施例20と同様に実施した。
繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「C」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例17)
比較例16で練時に添加するフェノール系酸化防止剤をビス[3,3−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸]エチレン(クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX O3)に変更し、添加量を3.2重量%に変更したこと以外は比較例16と同様に実施した。
紡糸前のチップ乾燥時にリン系酸化防止剤由来のブリードアウトが発生し、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は3.9%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「C」であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例18)
実施例3でTPAを76.9kg、BDOを75.1kg、ES触媒溶液230gに変更してエステル化反応を実施したこと、および、PEGを数平均分子量10000g/molのポリエチレングリコール(PEG)(三洋化成工業製PEG10000)18.0kgに変更して重縮合反応を実施したこと以外は実施例3と同様に実施した。
重合吐出時に吐出ガットの太細が発生し、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は0.7%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
(比較例19)
比較例18で用いるPEGを数平均分子量20000g/molのポリエチレングリコール(PEG)(三洋化成工業製PEG20000)に変更したこと以外は比較例18と同様に実施した。
重合吐出時に吐出ガットの太細が発生し、繊維強度は2.7cN/dtexであった。このときの熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)は0.8%であった。海成分の割れや、均染性、品位は「S」であり、摩耗後の変退色は4級、風合いは「S」であり、蒸れ感改善は「SS」であり、耐久性は「SS」と良好であった。水洗濯処理後の黄変抑制は「A」であり、水洗濯処理後の酸化発熱は「A」と良好であった。また、窒素酸化物堅牢度試験結果は4−5級であった。
Figure 2021179053
Figure 2021179053
Figure 2021179053
Figure 2021179053
実施例及び比較例で使用したフェノール系化合物(フェノール系酸化防止剤)及びリン系酸化防止剤の化学構造式は表5及び表6のとおりである。本発明で用いたリン系酸化防止剤の各種物性について表7に示す。
Figure 2021179053
Figure 2021179053
Figure 2021179053
本発明で得られる海島型複合繊維は、染色等の熱水処理においても高品位かつ吸湿性、耐摩耗性に優れ、さらには、水洗濯処理後の黄変抑制が可能であり、耐酸化分解性が良好でドライクリーニング処理後または水洗濯処理後の酸化発熱の抑制が可能である。これらの特徴から、快適性や品位が要求される用途において好適に用いることができる。具体的には、一般衣料用途、スポーツ衣料用途、寝具用途、インテリア用途、資材用途などが挙げられる。
1.海成分
2.島成分
3.繊維直径
4.最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円
5.最外層厚み
6.島成分の直径
7.計量プレート
8.分配プレート
9.吐出プレート
10−(a).計量孔1
10−(b).計量孔2
11−(a).分配溝1
11−(b).分配溝2
12−(a).分配孔1
12−(b).分配孔2
13.吐出導入孔
14.縮小孔
15.吐出孔
16.環状溝

Claims (6)

  1. 下記(1)〜(8)の特徴を有する吸湿性海島繊維。
    (1)単糸繊度が0.5〜2.5dtexである
    (2)繊維横断面の中心に対して、非点対称となるように島を配置されている
    (3)繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.10〜0.40
    (4)繊維横断面における最外層厚みTが1.5〜4.5μm
    (最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す)
    (5)熱水処理後の吸湿率差(ΔMR)が2.0〜10.0%
    (6)島成分が吸湿性を有する共重合ポリエステル系ポリマーである
    (7)下記化学式(1)で表されるフェノール基の含有量が2〜40mmol/kg
    Figure 2021179053
    (8)リン量の含有量が3〜15mmol/kgの範囲
  2. 配置されている島数が3〜5個であることを特徴とする請求項1記載の吸湿性海島繊維
  3. 吸湿性を有する共重合ポリエステル系ポリマーがポリエチレングリコールを共重合したポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の吸湿性海島繊維。
  4. フェノール基の含有量が2〜40mmol/kgの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸湿性海島繊維。
  5. リン量の含有量が3〜15mmol/kgの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸湿性海島繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに1項に記載の吸湿性海島繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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