JP2020020076A - 吸湿性海島型複合繊維および繊維構造体 - Google Patents

吸湿性海島型複合繊維および繊維構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】吸湿性に優れかつ機械特性が良好な海島型複合繊維を提供する。【解決手段】下記(1)〜(5)の特徴を有する吸湿性海島型複合繊維。(1)島成分が吸湿性を有するポリマー(2)島成分が相分離構造による連続相と分散相を有する(3)繊維横断面における島成分の分散相の総面積が島成分の総面積の25〜60%を占める(4)繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.050〜0.250(5)熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0〜10.0%なお、最外層厚みTとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。【選択図】図1

Description

本発明は、吸湿性に優れかつ機械的特性が良好な海島型複合繊維に関するものである。より詳しくは、染色等の熱水処理においても高品位かつ吸湿性に優れ、さらには、機械的特性が良好であることから、衣料用途に好適に使用できる海島型複合繊維に関するものである。
ポリエステル繊維は、安価であり、機械的特性やドライ感に優れているため、幅広い用途において用いられている。しかし、吸湿性に乏しいため、夏場の高湿時には蒸れ感の発生、冬場の低湿時には静電気の発生など、着用快適性の観点において解決すべき課題を有している。
上記の欠点を改善するため、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与する方法について、これまでに種々の提案がなされている。吸湿性を付与するための一般的な方法として、ポリエステルへの親水性化合物の共重合や親水性化合物の添加などが挙げられ、親水性化合物の一例としてポリエチレングリコールが挙げられる。
例えば、特許文献1では、低分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを単独で繊維化し、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献2では、高分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを単独で繊維化し、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献3では、芯に低分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステル、鞘にポリエチレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に吸湿性ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献4では、島に低分子量のポリエチレングリコールが共重合されたポリエステル、海にポリエチレンテレフタレートを配置した海島型複合繊維が提案されている。この提案では、島に吸湿性ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特開2006−104379号公報 国際公開2015/146790号 特開2001−172374号公報 特開平8−198954号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、吸湿性ポリマーが繊維表面全体に露出しており、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの共重合成分であるポリエチレングリコールが酸化分解され処理液へ溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。
特許文献2記載の方法では、ポリエチレングリコールを大量に共重合して吸湿性を発現させるため、繊維のタフネスが不良となり、工程通過性が悪く、また繊維構造体にして着用・洗濯を繰り返すと、表面に亀裂が生じるなど耐久性の課題があった。
特許文献3記載の方法では、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤することに伴い、芯成分と鞘成分の界面に応力が集中した結果、鞘成分の割れが生じ、この鞘成分の割れが原因となり、染め斑や毛羽の発生による品位の低下という課題があった。さらには、鞘成分の割れた部分を起点として芯成分の吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。
特許文献4記載の方法では、繊維横断面において、繊維直径に対する最外層の海成分の厚みが小さいため、染色等の熱水処理時に島成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤することに伴い海成分が割れ、この海成分の割れが原因となり、染め斑や毛羽の発生による品位の低下という課題があった。さらには、割れた部分を起点として島成分の吸湿性ポリマーが溶出し吸湿性が低下するという課題があった。また、島成分が相分離構造を有さない均一構造であるため、吸湿性を高めると繊維のタフネスが不良となり、工程通過性が悪く、さらに繊維構造体にして着用・洗濯を繰り返すと、表面に亀裂が生じるなど耐久性の課題があった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、織物や編物などの繊維構造体とした際の染め斑や毛羽の発生が少なく品位に優れるとともに、染色等の熱水処理後においても吸湿性に優れ、さらには、機械的特性が良好であることから、衣料用途に好適に採用できる海島型複合繊維を提供することにある。
上記課題は、下記(1)〜(5)の特徴を有する吸湿性海島型複合繊維によって解決できる。
(1)島成分が吸湿性を有するポリマー
(2)島成分が相分離構造による連続相と分散相を有する
(3)繊維横断面における島成分の分散相の総面積が島成分の総面積の25〜60%を占める
(4)繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.050〜0.250
(5)熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0〜10.0%
なお、最外層厚みTとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
本発明で得られる海島型複合繊維は、染色等の熱水処理後においても高品位かつ吸湿性に優れ、さらには、機械的特性が良好であることから、特に衣料用途において好適に用いることができる。
図1(a)〜(n)は、本発明の海島型複合繊維の断面形状の一例を示す図である。 図2は、本発明の海島型複合繊維の製造方法で用いる海島複合口金の一例であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの横断面図である。 図3は、分配プレートの一例の一部である。 図4は、分配プレートにおける分配溝および分配孔配置の一例である。
本発明における最外層厚みとは、繊維の半径と最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
本発明における吸湿率差(△MR)とは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差であり、実施例の欄に記載の方法で測定される値を表す。吸湿性を有するとは△MRが2.0%以上のことであり、△MRの値が高いほど吸湿性が高く着用快適性が向上する。
本発明におけるタフネスとは、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した強度(cN/dtex)と伸度(%)を用いて下記式(I)によって算出した値であり、実施例の欄に記載の方法で測定される値を表す。タフネスが良好であるとはタフネスが15以上であることをさし、タフネスが高いほど工程通過性がよく、また繊維構造体にしたときの耐久性が良好となる。
タフネス=強度×(伸度)1/2 ・・・(I) 。
本発明の海島型複合繊維の島成分は、吸湿性を有するポリマー(吸湿性ポリマー)である。吸湿性を有するポリマーとは、吸湿率差(△MR)が2.0%以上のポリマーのことである。
本発明の海島型複合繊維の島成分の吸湿性を有するポリマーは、疎水性高分子と親水性高分子との共重合体からなる。共重合によって共有結合を形成することで、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性を発現する。
本発明の海島型複合繊維の島成分の吸湿性を有するポリマーの好ましい態様については製造方法の説明部分で詳細に記載するが、中でも、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーであることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーであれば、吸湿性に優れかつ耐熱性も良好であるため、得られる海島型複合繊維の機械的特性や色調が良好になる。また、本発明の海島型複合繊維の島成分の吸湿性を有するポリマーは、共重合ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。共重合ポリブチレンテレフタレートであれば、ポリマーの色調が良好であるため、得られる海島型複合繊維の色調が優れる。また、結晶性が高いため熱水流動しにくく、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性を発現する。
本発明の海島型複合繊維の島成分の吸湿性を有するポリマーは、相分離構造による連続相と分散相を有する。連続相と分散相の成分は、双方とも疎水性高分子と親水性高分子の共重合体であり、その組成比が異なるだけである。そのため、連続相と分散相の親和性が極めて高い相分離構造である。この相分離構造は、重合反応が進行し、疎水性高分子と親水性高分子とが共重合する過程で特異的に発現するものである。すなわち、非相溶の高分子化合物の溶融混合によって発現する相分離構造とは異なり、重合反応の進行とともに発現する相分離構造であるため、均一な分散相が形成される。この相分離構造により、相分離構造を有さない均一構造と比べ、吸湿性とタフネスとを両立することが可能となる。総分離構造は、実施例の欄に記載の方法で確認することができる。
本発明の海島型複合繊維の繊維横断面における島成分の分散相の総面積は、島成分の総面積の25〜60%を占める。繊維横断面における島成分の分散相の総面積が島成分の総面積の25%以上にすることで、高い吸湿性により衣服内の蒸れ感を抑制できる。一方、繊維横断面における島成分の分散相の総面積が島成分の総面積の60%以下にすることで、繊維のタフネスを保持でき、工程通過性がよく、また繊維構造体とした後の繰り返し着用・洗濯後の耐久性が向上する。高吸湿性とタフネスの観点から繊維横断面における島成分の分散相の総面積は島成分の総面積の30〜55%であることが好ましい。
本発明の海島型複合繊維の繊維横断面における島成分の分散相の最大直径は、1〜100nmであることが好ましい。繊維横断面における島成分の分散相の最大直径が1〜100nmであれば、さらに優れた吸湿性とタフネスとを両立することが可能となる。分散相の最大直径は、実施例の欄に記載の方法で測定することができる。
本発明の海島型複合繊維の繊維横断面における島成分の分散相の平均直径は、0.1〜85nmであることが好ましい。繊維横断面における島成分の分散相の平均直径が0.1〜85nmであれば、さらに優れた吸湿性とタフネスとを両立することが可能となる。
本発明の海島型複合繊維の繊維横断面における島成分の分散相の円相当径の変動係数(CV)は、20%以下であることが好ましい。繊維横断面における島成分の分散相の円相当径の変動係数(CV)が20%以下であれば、繊度斑が小さくなり、染め斑や毛羽の発生が少なく品位に優れる。島成分の分散相の円相当径の変動係数(CV)は、実施例の欄に記載の方法で測定することができる。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.050〜0.250である。T/Rが0.050以上にすることで、繊維直径に対する最外層の厚みが十分確保され、染色等の熱水処理によって島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが抑制され品位を維持できる。一方、海島型複合繊維のT/Rが0.250以下にすることで、吸湿性に優れ衣服内の蒸れ感が抑制される。吸湿性と品位の観点から、海島型複合繊維のT/Rは0.070〜0.220であることがより好ましい。外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)は、実施例の欄に記載の方法で測定することができる。
本発明の海島型複合繊維の熱水処理後の吸湿率差(△MR)は、2.0〜10.0%である。熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0%以上で、吸湿性に優れ衣服内の蒸れ感が抑制される。熱水処理後の吸湿率差(△MR)が10.0%以下で、吸湿性ポリマーの体積膨潤による海成分の割れが抑制され、品位を維持できる。吸湿性と品位の観点から熱水処理後の吸湿率差(△MR)は3.0%〜8.0%であることが好ましく、4.0%〜7.0%であることがより好ましい。
本発明の海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率(重量比)は、50/50〜90/10であることが好ましい。海島型複合繊維の海成分の複合比率が50重量%以上であれば、海成分によるハリ、コシ感やドライな感触が得られるため好ましい。また、延伸時や仮撚時の外力による海成分の割れや、吸湿時や吸水時の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが抑制されるため、染め斑や毛羽の発生による品位の低下、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーが熱水へ溶出することによる吸湿性の低下が抑制されるため好ましい。一方、海島型複合繊維の海成分の複合比率が90重量%以下、すなわち島成分の複合比率が10重量%以上であれば、吸湿性に優れた海島型複合繊維が得られるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10〜500dtexであることが好ましい。海島型複合繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、海島型複合繊維の繊度が500dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5〜4.0dtexであることが好ましい。海島型複合繊維の単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、海島型複合繊維の単繊維繊度が4.0dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の強度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から2.0〜5.0cN/dtexであることが好ましい。海島型複合繊維の強度が2.0cN/dtex以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる。一方、海島型複合繊維の強度が5.0cN/dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の伸度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10〜60%であることが好ましい。海島型複合繊維の伸度が10%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性が良好となるため好ましい。一方、海島型複合繊維の伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維のタフネスは15以上である。タフネスが15以上により、工程通過性が良好で、また繊維構造体にした後の繰り返し着用・洗濯後の耐久性に優れる。工程通過性、耐久性の観点からタフネスが18以上であることが好ましく、20以上であるとより好ましい。
本発明の海島型複合繊維の繊度変動値U%(hi)は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、品位の観点から0.1〜1.0%であることが好ましい。繊度変動値U%(hi)は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、繊度変動値U%(hi)が小さいほど、繊維の長手方向における太さ斑が小さいことを示す。繊度変動値U%(hi)は品位の観点から小さければ小さいほど好ましいが、製造可能な範囲として0.1%が下限である。一方、繊度変動値U%(hi)が1.0%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れており、毛羽や糸切れが発生しにくく、また、染色した際に染め斑や染め筋などの欠点が発生しにくく、高品位の繊維構造体を得ることができるため好ましい。繊度変動値U%(hi)は、実施例の欄に記載の方法で測定することができる。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面における島成分の形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
次に本発明の海島型複合繊維の製造方法について述べる。
本発明の海島型複合繊維は、吸湿性を有するポリマーを島成分に、熱可塑性ポリマーを海成分にして公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚などの捲縮加工方法を用いて得ることができる。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられる海成分は、熱可塑性ポリマーである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、芳香族ポリエステルは、機械的特性や耐久性に優れるため好ましく、ポリエチレンテレフタレートはポリエステル繊維特有のハリ、コシ感が得られるためより好ましく、カチオン可染性ポリエチレンテレフタレートは鞘割れ抑制効果が大きく、また鮮明な発色性を示すとともにポリウレタン繊維との混用において染料汚染を防止できるため特に好ましい。カチオン可染性ポリエチレンテレフタレートとは、カチオン染料との相互作用可能な成分を共重合したポリエチレンテレフタレートのことである。カチオン染料との相互作用可能な共重合成分の具体例として、5−スルホイソフタル酸金属塩があり、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、リチウム塩、ナトリウム塩が好適に採用できる。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられる島成分は、疎水性高分子と親水性高分子との共重合体からなる吸湿性を有するポリマーである。具体的には、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、5−スルホイソフタル酸金属塩共重合ポリエステルなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの吸湿性ポリマーは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの吸湿性ポリマーと、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどをブレンドしたものを、吸湿性ポリマーとして用いてもよい。中でも、ポリエーテルを共重合したポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドは吸湿性に優れるため好ましい。耐熱性の観点からポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーがより好ましく、機械的特性の観点からポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリエステルがさらに好ましく、結晶性が高く熱水流動しにくくする観点からポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
疎水性高分子と親水性高分子との共重合体からなる吸湿性を有するポリマーとしては、吸湿性、耐熱性および機械的特性の観点から、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸の具体例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、脂肪族ジオールの具体例として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールは、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましく、結晶性が高く熱水流動しにくくする観点においては1,4−ブタンジオールが好適に採用できる。
芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルにおいて、共重合成分であるポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量は、7000〜30000g/molであることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量が7000g/mol以上であればポリエステルとの共重合により相分離構造が発現するため、吸湿性に優れかつタフネスが良好な海島型複合繊維が得られるため好ましい。一方、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量が30000g/mol以下であれば、重縮合反応性が高く、未反応のポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を低減することができ、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても吸湿性が維持できるため好ましい。
また、共重合成分であるポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率は、35〜65重量%であることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率が35重量%以上であれば吸湿性が高く、島成分として用いた場合に吸湿性に優れた海島型複合繊維が得られるため好ましい。一方、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率が65重量%以下であれば、タフネスが良好であり、また未反応のポリエチレングリコールおよびその誘導体を低減することができ、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても吸湿性が維持できるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造で島成分として好ましく用いられる芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルの製造方法は、通常、次のいずれかのプロセスである。すなわち、(A)ジメチルテレフタレートと脂肪族ジオールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、更にその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(B)テレフタル酸と脂肪族ジオールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、更にその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の添加方法は特に制限はない。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の添加時期は、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体とポリエステルとの重縮合反応性を高め未反応のポリエチレングリコール/またはその誘導体の量を少なくする観点から、エステル交換反応、またはエステル化反応後、重縮合が開始するまでに添加する。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられる海成分および/または島成分は副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、酸化防止剤、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明の海島型複合繊維の製造では、溶融紡糸を行う前に、海成分及び島成分のポリマー(チップ)を乾燥させ、含水率を300ppm以下としておくことが好ましい。含水率が300ppm以下であれば、溶融紡糸の際に加水分解による分子量低下や水分による発泡が抑制され、安定して紡糸を行うことができるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造では、事前に乾燥したチップをエクストルーダー型やプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機へ供給して、海成分と島成分を別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、後述する海島複合口金で海成分と島成分を合流させて海島構造として、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられる海島複合口金として、例えば、特開2007−100243号公報に開示されているパイプ群が配置された従来公知のパイプ型海島複合口金を用いて製造してもよい。しかしながら、従来のパイプ型海島複合口金では、最外層の海成分の厚みは150nm程度が技術の限界であり、本発明の必須要件である繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を満たすことが困難である。そのため、本発明では、特開2011−174215号公報に記載の海島複合口金を用いた方法が好適に用いられる。
本発明の海島型複合繊維の製造で用いられる海島複合口金の一例として、図2〜4に示す部材で構成される海島複合口金について説明する。図2(a)〜(c)は、本発明に用いる海島複合口金の一例を模式的に説明するための説明図であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの一部の横断面図である。図2(b)および図2(c)は図2(a)を構成する分配プレートおよび吐出プレートであって、図3は分配プレートの平面図、図4は本発明における分配プレートの一部の拡大図であり、それぞれが一つの吐出孔に関わる溝および孔として記載したものである。
本発明の海島型複合繊維の製造では、複合ポリマー流が計量プレート、分配プレートを経て形成され、吐出プレートの吐出孔から吐出される。具体的には、紡糸パック上流からポリマーA(島成分)とポリマーB(海成分)が、図2の計量プレートのポリマーA用計量孔(10−(a))およびポリマーB用計量孔(10−(b))に流入し、下端に穿設された孔絞りによって計量された後、分配プレートに流入される。分配プレートでは、計量孔10から流入したポリマーを合流するための分配溝11(図3:11−(a)、11−(b))とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔12(図4:12−(a)、12−(b))が穿設されている。また、複合ポリマー流の最外層に海成分であるポリマーBから構成される層を形成するため、図3に示すような分配孔を底面に穿設した環状溝16が設置される。この分配プレートから吐出されたポリマーAおよびポリマーBによって構成された複合ポリマー流は、吐出導入孔13から吐出プレート9に流入される。次に、複合ポリマー流は、所望の径を有した吐出孔に導入する間に縮小孔14によって、ポリマー流に沿って断面方向に縮小され、分配プレートで形成された断面形態を維持して、吐出孔15から吐出される。
本発明の海島型複合繊維の製造において、海島複合口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化され、第1ゴデットローラーで引き取とられ、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取られ、巻取糸となる。なお、紡糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて紡糸口金下部に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
本発明の海島型複合繊維の製造における溶融紡糸の紡糸温度は、海成分及び島成分の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、240〜320℃であることが好ましい。紡糸温度が240℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造における溶融紡糸の紡糸速度は、海成分及び島成分の組成、紡糸温度などに応じて適宜選択することができる。一旦溶融紡糸を行って巻き取った後、別途、延伸または仮撚を行う二工程法の場合の紡糸速度は、500〜6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましく、一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500〜5000m/分、高速ローラーを2500〜6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造において、一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水、熱水などの液体浴、熱空、スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
本発明の海島型複合繊維の製造において、延伸を行う場合の延伸温度は、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、50〜150℃であることが好ましい。延伸温度が50℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、必要に応じて60〜150℃の熱セットを行ってもよい。
また、延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02〜7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
さらに、延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30〜1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造において、仮撚加工を行う場合には、1段ヒーターのみ使用する、いわゆるウーリー加工以外に、1段ヒーターと2段ヒーターの両方を使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。仮撚加工機の具体例として、フリクションディスク式、ベルトニップ式、ピン式などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維の製造において、仮撚加工を行う場合のヒーター温度は、120〜210℃であることが好ましい。ヒーター温度が120℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。一方、ヒーター温度が210℃以下であれば、加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解が抑制されるため、糸切れや加熱ヒーター等の汚れが少なく、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。
また、仮撚加工を行う場合の延伸倍率は、仮撚加工前の繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.01〜2.5倍であることが好ましい。延伸倍率が1.01倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。一方、延伸倍率が2.5倍以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。
さらに、仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200〜1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の製造で採用する繊維の形態に関しては特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。また、一般の繊維と同様に仮撚や撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の海島型複合繊維を用いた繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。織物や編物の場合は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の海島型複合繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよく、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。また染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量、分子量分布
使用するポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体500mgを0.1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶かし、0.45μmのセルロース製フィルターで濾過して得られた濾液をGPC測定用試料とした。この試料を用いて、以下の条件にてGPC装置(Waters製Alliance2690)で測定を行い、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
検出器:Waters製2410示差屈折率検出器、感度 128x
カラム:東ソー製TSKgelG3000PWXLI
溶媒 :0.1M 塩化ナトリウム水溶液
注入量 :200μL
カラム温度:40℃
標準物質 :ポリエチレングリコール(エーエムアル株式会社製 Mw106〜10100) 。
B.海/島複合比率(重量比)
海島型複合繊維の原料として用いた海成分の重量と島成分の重量から、海/島複合比率(重量比)を算出した。
C.繊維横断面における島成分の島総面積に対する分散相総面積の割合、分散相の最大直径及び円相当径の変動係数(CV)
得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB−2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を固体の四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、島成分の全体像が観察できる最も高い倍率で繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察した画像を画像解析ソフトImage−Jに取り込み、二値化して分散相領域のみを抽出した。この際、二値化の閾値は分散相領域のみが抽出されるように画像を見ながら手動で調整し、設定した。このようにして分散相領域を抽出した後、全ての分散相の総面積の割合から島総面積に対する分散相総面積の割合を算出した。また、各分散相の面積より円相当径(直径)をそれぞれ算出し、最大値を繊維横断面における島成分の分散相の最大直径(nm)とした。また、標準偏差と分散相の円相当径の平均値より、下記式(II)を用いて分散相の円相当径の変動係数(CV)を算出した。
分散相の円相当径の変動係数(%)=標準偏差/分散相の円相当径の平均値 ・・・(II) 。
D.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式(III)を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 ・・・(III) 。
E.強度、伸度
得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック製テンシロンUTM−III−100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式(IV)によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1−L0)/L0}×100 ・・・(IV) 。
F.タフネス
上記Eで算出した強度(cN/dtex)と伸度(%)を用いて下記式(V)によりタフネスを算出した。タフネスが15以上であれば良好と判断し、18以上であればより良好とし、20以上であればさらに良好とした。
タフネス=強度×(伸度)1/2 ・・・(V) 。
G.繊度変動値U%(hi)
得られた繊維を試料とし、ツェルベガーウースター製ウースターテスター4−CXを用いて、測定速度200m/分、測定時間1分、測定繊維長200m、撚り数12000/m(S撚り)の条件で、繊度変動値U%(half inert)を測定した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度変動値U%(hi)とした。
H.繊維直径R
得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)H−7100FA型を用いて1000倍で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に単繊維10本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、抽出した全ての単糸の繊維直径を測定し、その平均値を繊維直径R(nm)とした。繊維横断面は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には、繊維横断面の外接円の直径を繊維直径として採用した。
I.最外層厚みT
上記Hに記載の繊維直径と同様の方法で繊維横断面を観察し、単繊維の全体像が観察できる最も高い倍率で顕微鏡写真を撮影した。得られた写真において、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、繊維横断面の輪郭に2点以上で接する真円の半径を繊維の半径として求め、さらに図1(a)中の4のように海島構造の外周に配置された島成分と2個以上接するように外接する真円(外接円)の半径を求めた。得られた写真から無作為に単繊維10本を抽出し、繊維の半径および海島構造部分の外接円の半径を同様に求め、それぞれの単繊維において繊維の半径と海島構造部分の外接円の半径の差を算出し、その平均値を最外層厚みT(nm)とした。
J.最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)
T/Rは、上記Iで算出した最外層厚みT(nm)を、上記Hで算出した繊維直径R(nm)で除して算出した。
K.精練後、熱水処理後の吸湿率差(△MR)
得られた繊維を原料とし、英光産業製丸編機NCR−BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS−20を含む水溶液に投入し、80℃で20分間精練後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、精練後の筒編みとした。また、精練後の筒編みを浴比1:100、処理温度130℃、処理時間60分の条件で熱水処理した後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、熱水処理後の筒編みとした。
吸湿率(%)は、精練後および熱水処理後の筒編みを試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.10の水分率に準じて算出した。始めに、筒編みを60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU−123内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W2)を測定した。その後、筒編みを105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後の筒編みの重量(W3)を測定した。筒編みの重量W1、W3を用いて下記式(VI)により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、筒編みの重量W2、W3を用いて下記式(VII)により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式(VIII)によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。△MRが2.0%以上であれば吸湿性を有すると判断し、3.0%以上であればより良好、4.0%以上であればさらに良好とした。
MR1(%)={(W1−W3)/W3}×100・・・(VI)
MR2(%)={(W2−W3)/W3}×100・・・(VII)
吸湿率差(△MR)(%)=MR2−MR1 ・・・(VIII)。
L.海成分の割れ
上記Kで作製した熱水処理後の筒編みを白金−パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S−4000型を用いて1000倍で観察し、無作為に10視野の顕微鏡写真を撮影した。得られた10枚の写真において、海成分が割れている箇所の合計を海成分の割れ(箇所)とし、5個以下であれば海成分の割れが抑制されていると判断し、3個以下であればさらに良好とした。
M.均染性
上記Kで作製した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」をS、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」をA、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」をB、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」をCとし、A、Sを合格とした。
N.品位
上記Kで作製した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「毛羽が全くなく、品位に極めて優れる」をS、「毛羽がほとんどなく、品位に優れる」をA、「毛羽があり、品位に劣る」をB、「毛羽が多数あり、品位に極めて劣る」をCとし、A、Sを合格とした。
O.蒸れ感改善
上記Kで作製した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「蒸れ感が全くない」をSS、「蒸れ感がほとんどない」をS「蒸れ感があまりない」をA、「蒸れ感を感じる」をB、「蒸れ感極めて強い」をCとし、A、S、SSを合格とした。
P.耐久性
上記Kで作製した熱水処理後の筒編みをJIS L0217:2010(繊維製品の取扱いに関する表示記号およびその表示方法)に規定する付表1 103法に準じて洗濯処理を100回行った試料について、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、「亀裂や目ずれが全くない」をSS、「亀裂や目ずれがほとんどない」をS「亀裂や目ずれがあまりない」をA、「亀裂や目ずれがある」をB、「亀裂や目ずれが多数ある」をCとし、A、S、SSを合格とした。
(実施例1)
1,4−ブタンジオール(東京化成製)1.0kgを100℃に加熱後、テトラ−n−ブトキシチタネート(東京化成製)を250g混合して触媒溶液を得た。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(東京化成製)45.3kg、ジオール成分として1,4−ブタンジオール44.2kg、エステル化反応触媒として上記方法により得られた触媒溶液135gを、精留塔の付いたエステル化反応槽に仕込んだ。温度160℃、圧力93kPaの減圧下にてエステル化反応を開始した後、徐々に昇温し、最終的に温度235℃の条件下でエステル化反応を270分間行った。
数平均分子量8300g/mol、分散度が1.09のポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を60.0kg、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、エステル化反応槽で得られた反応物を移行した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、上記方法により得られた触媒溶液300gを添加し、温度250℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を行い、所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングして、ポリエチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートのペレットを得た。
このポリエチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに対して、2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’ ジイル=ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ5−メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO−80)を6.0重量%、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P−EPQ)2.3重量%を配合し、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施しポリエステル組成物を得た。
このポリエステル組成物を島成分とし、海成分を5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩を1.5mol%および数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)2.0重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートとした。それぞれを150℃で12時間真空乾燥した後、島成分を20重量%、海成分を80重量%の配合比でエクストルーダー型複合紡糸機へ供給して別々に溶融させ、紡糸温度275℃において、図2(a)に示した海島複合口金を組み込んだ紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出量32g/分で吐出させて紡出糸条を得た。なお、吐出プレート直上の分配プレートには、島成分用として1つの吐出孔当たり6の分配孔が穿設されており、図3の16に示される海成分用の環状溝には円周方向1°毎に分配孔が穿設されたものを使用した。また、吐出導入孔長は3.7mm、縮小孔の角度は60°、吐出孔径0.18mm、吐出孔長/吐出孔径は2.2、吐出孔数は36のものである。この紡出糸条を風温20℃、風速20m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2700m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って118dtex−36fの未延伸糸を得た。その後、延伸仮撚機(加撚部:フリクションディスク式、ヒーター部:接触式)を用いて、得られた未延伸糸をヒーター温度140℃、倍率1.4倍の条件で延伸仮撚し、84dtex−36fの仮撚糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。島総面積に対する分散相総面積の割合は48%で、最大分散径は53nm、円相当径の変動係数(CV)は15%であった。T/Rは0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は4.1%であった。タフネスは19.6と良好であった。また、海成分の割れは1箇所と割れが抑制されていた。熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性については合格レベルであった。
(実施例2〜5)
口金の吐出孔数を変更させ、フィラメント数を変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。いずれも、島総面積に対する分散相総面積の割合は48%であった。T/Rはいずれも0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は2.0〜10.0%であった。タフネスはいずれも15以上と良好であった。また、海成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されていた。いずれも熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性についてはいずれも合格レベルであった。
(実施例6〜9)
島成分のポリエチレングリコールの共重合率を変更することで、島総面積に対する分散相総面積の割合を変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。いずれも、T/Rはいずれも0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は2.0〜10.0%であった。タフネスはいずれも15以上と良好であった。また、海成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されていた。いずれも熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性についてはいずれも合格レベルであった。
(実施例10〜13)
最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を表1に示すとおり変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。いずれも、島総面積に対する分散相総面積の割合はいずれも48%であった。熱水処理後の吸湿率差(△MR)はいずれも2.0〜10.0%であった。タフネスはいずれも15以上と良好であった。また、海成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されていた。いずれも熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性についてはいずれも合格レベルであった。
(実施例14〜17)
島成分のポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率、および海島複合比率を変更することで、熱水処理後の吸湿率差(△MR)を変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。いずれも、島総面積に対する分散相総面積の割合はいずれも25〜60%であり、T/Rは0.050〜0.250であった。タフネスはいずれも15以上と良好であった。また、海成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されていた。いずれも熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性についてはいずれも合格レベルであった。
(実施例18)
数平均分子量8300g/molで分散度が1.09のポリエチレングリコールを50重量%、エチレンオキサイド付加量4molのビスフェノール−A−エチレンオキサイド付加物(三洋化成工業製ニューポールBPE−40)19重量%共重合したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。島総面積に対する分散相総面積の割合は54%であり、分散相の最大直径は1nmであった。T/Rは0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は4.3%であった。タフネスはいずれも21.1と良好であった。また、海成分の割れが1箇所と割れが抑制されていた。熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性については合格レベルであった。
(実施例19)
数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコールのかわりに数平均分子量が10000のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(SIGMA−ALDRICH製)に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。島総面積に対する分散相総面積の割合は58%であり、分散相の最大直径は100nmであった。T/Rは0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は6.9%であった。タフネスはいずれも20.1と良好であった。また、海成分の割れが3箇所と割れが抑制されていた。熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性については合格レベルであった。
(実施例20)
数平均分子量8300g/molで分散度が2.12のポリエチレングリコール(ナカライテスク製)に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。島総面積に対する分散相総面積の割合は50%であり、円相当径の変動係数(CV)は40%であった。T/Rは0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は4.1%であった。タフネスは19.0と良好であった。また、海成分の割れが1箇所と割れが抑制されていた。熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性については合格レベルであった。
(実施例21)
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート100kgが仕込まれ、温度250℃に保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学製)51.9kgとエチレングリコール(日本触媒製)23.3kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行った。
数平均分子量8300g/mol、分散度が1.09のポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)60.0kg、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、エステル化反応槽で得られた反応物63.9kgを重縮合槽に移送した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、リン酸トリメチル30.0gを添加し、10分後に酢酸コバルト4水和物24.0g、三酸化アンチモン30.0g添加した。さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3質量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度および最終圧力の到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングしてポリエチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。
このポリエチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレートに対して、2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’ ジイル=ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ5−メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO−80)を6.0重量%、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P−EPQ)2.3重量%を配合し、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度280℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施しポリエステル組成物を得た。
このポリエステル組成物を島成分としたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。島総面積に対する分散相総面積の割合は48%であった。T/Rは0.152であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は3.7%であった。タフネスは19.7と良好であった。また、海成分の割れが1箇所と割れが抑制されていた。熱水処理による吸湿性の低下はほとんどなく、均染性、品位、蒸れ感改善、耐久性については合格レベルであった。
(比較例1)
数平均分子量3400g/molで分散度が1.07のポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)を用いたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。島成分は相分離構造を有しておらず、タフネスは13.9と不良であり、耐久性に極めて劣るものであった。
(比較例2、3)
島成分のポリエチレングリコールの共重合率を変更することで、島総面積に対する分散相総面積の割合を変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。比較例2では島総面積に対する分散相総面積の割合は24%であり、精練後、熱水処理後ともに吸湿性が低く、蒸れ感を感じるものであった。比較例3では総面積に対する分散相総面積の割合は62%であり、タフネスは14.4と不良であり、耐久性に劣るものであった。
(比較例4)
特開2007−100243号公報に記載の従来公知のパイプ型海島複合口金(1つの吐出孔当たりの島数6個)を用いて最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を0.017としたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。従来公知のパイプ型海島複合口金を用いたため、得られた繊維において最外層の厚みが薄く、熱水処理における島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが極めて多く、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、吸湿性が低く蒸れ感を感じるものであった。また、海成分の割れに起因する染め斑や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。
(比較例5)
最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を0.251変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。T/Rが大きいため、島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤が抑制された結果、精練後、熱水処理後ともに吸湿性が低く、蒸れ感を感じるものであった。
(比較例6)
島成分のポリエチレングリコール共重合率を5重量%に変更することで、島総面積に対する分散相総面積の割合を変更し、さらに熱水処理後の吸湿率差(△MR)を0.1%と変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。精練後、熱水処理後ともに吸湿性が低く、蒸れ感を感じるものであった。
(比較例7)
島成分のポリエチレングリコールの数平均分子量、共重合率、および海島複合比率を変更することで、熱水処理後の吸湿率差(△MR)を11%に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが極めて多く、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、吸湿性が低く蒸れ感を感じるものであった。また、海成分の割れに起因する染め斑(均染性)や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。
(比較例8)
ポリブチレンテレフタレートペレットと数平均分子量8300g/mol、分散度が1.09のポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を50重量%と50重量%の比率で、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数110rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施し、ポリエチレングリコールを50重量%混練したポリブチレンテレフタレートのペレットを得た。このペレットを再溶融し、2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’ ジイル=ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ5−メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO−80)を6.0重量%、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P−EPQ)2.3重量%を配合し、シリンダー温度250℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施しポリエステル組成物を得た。このようにして得たポリエステル組成物を島成分に用いたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。熱水処理によりポリエチレングリコールの熱水への溶出が多く、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、吸湿性が低く蒸れ感を感じるものであった。
本発明で得られる海島型複合繊維は、染色等の熱水処理においても高品位かつ吸湿性に優れ、さらには、機械的特性が良好であることから、快適性や品位が要求される用途において好適に用いることができる。具体的には、一般衣料用途、スポーツ衣料用途、寝具用途、インテリア用途、資材用途などが挙げられる。
1.海成分
2.島成分
3.繊維直径
4.最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円
5.最外層厚み
6.島成分の直径
7.計量プレート
8.分配プレート
9.吐出プレート
10−(a).計量孔1
10−(b).計量孔2
11−(a).分配溝1
11−(b).分配溝2
12−(a).分配孔1
12−(b).分配孔2
13.吐出導入孔
14.縮小孔
15.吐出孔
16.環状溝

Claims (6)

  1. 下記(1)〜(5)の特徴を有する吸湿性海島型複合繊維。
    (1)島成分が吸湿性を有するポリマー
    (2)島成分が相分離構造による連続相と分散相を有する
    (3)繊維横断面における島成分の分散相の総面積が島成分の総面積の25〜60%を占める
    (4)繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.050〜0.250
    (5)熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0〜10.0%
    なお、最外層厚みTとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
  2. 繊維横断面における島成分の分散相の最大直径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の吸湿性海島型複合繊維。
  3. 繊維横断面における島成分の分散相の円相当径の変動係数(CV)が20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸湿性海島型複合繊維。
  4. 吸湿性を有するポリマーがポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸湿性海島型複合繊維。
  5. 吸湿性を有するポリマーが共重合ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸湿性海島型複合繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸湿性海島型複合繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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