JP2023034421A - 高異形断面ポリプロピレン繊維 - Google Patents

高異形断面ポリプロピレン繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】嵩高性を兼ね備え、風合いに優れ、繊維構造体として好適に採用できるポリプロピレン繊維を提供する。【解決手段】繊維横断面において、異形度M値が1.2~3.0であることを特徴とするポリプロピレン繊維【選択図】図1

Description

本発明は、ポリプロピレン繊維に関するものである。
ポリオレフィンの一種であるポリプロピレンは、汎用樹脂の中で比重が軽く、比較的高い強度を有すると共に、優れた耐薬品性を有しており、通常の溶融押出機で簡易に成形可能といった、優れた成形性を有することから、自動車部品から家電製品、文房具、更には医療材料まで幅広い用途で使用されている。また、この優れた特性を活用した繊維製品も存在し、マスクやおむつといった衛材用途や、タイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途やロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途で展開がなされているものの、衣料用途での事例は少ない。
これは、ポリプロピレン繊維が極性官能基を持たず、染色が困難であるという衣料における問題を有していることが要因である。
一方で、ポリプロピレン繊維の軽量性や撥水性といった機能性に注目し、衣料用展開を可能とすべく、該繊維の着色を試みる取り組みがなされており、顔料や染色可能なポリマーの添加等による着色に関する提案として、特許文献1では、鮮やかで深みのある発色性を付与するために、染色可能なポリマーであるシクロヘキサンジカルボン酸を共重合した共重合ポリエステルをポリプロピレンへブレンドしたポリマーアロイ繊維である、可染性ポリプロピレン繊維に関する技術開示がなされている。
特許文献1のような衣料用テキスタイルとしての発色性を担保する技術が提案されることにより、衣料用展開も可能となったポリプロピレン繊維は、ポリマー特性を活用したさらなる高度化による快適衣料繊維としての活用が期待される。ポリプロピレン繊維のポリマー特性を活用した高度化としては、例えば、異形断面化による風合いや嵩高・軽量性、撥水性の向上への取り組みが考えられる。
繊維の異形断面化による高度化について、特許文献2では、風合いや、嵩高・軽量性、白色性、遮光性、保温性を向上させ、さらに微細空隙を有するものの製造工程通過性や、製品の耐久性を保持するために、繊維断面の異形断面化と、内包する微細空隙を制御した技術が開示されている。
特許文献3では、十分な捲縮性を有し、優れた嵩高・軽量性、保温性をも兼ね備える、中空潰れの無い中空異形断面を得るために、中空部を有するコア部とフィン部から成る異形断面と、異方冷却による捲縮発現について技術が開示されている。
国際公開2017/154665号 特開2006-161218号公報 特開2020-70530号公報
繊維の異形断面化により触感や機能性を高める試みについては、比較的古くから開示されるものの、いずれもポリエステルやポリアミドといった衣料用テキスタイルとして使用される合成繊維に関するものが多く、ポリプロピレン繊維で異形断面化を達成した事例はない。これは、ポリプロピレンのポリマー特性として、比熱が非常に大きく、更には、融点やガラス転移点が低いことが理由である。すなわち、繊維の異形断面化に関しては、異形孔が具備された紡糸口金から吐出した後、速やかに、固化点まで冷却し、高異形断面を維持した状態で、形態を固化させる必要がある。しかし、ポリプロピレンの場合には、上記した熱的特性を有しているため、ポリエステルやポリアミド等の比較的固化が早いポリマーと比較して、口金から吐出され、繊維として固化するまでの時間が長く、溶融状態から半溶融状態で、表面張力が強く作用するので、繊維の異形度が大きく低下してしまうことが、ポリプロピレン繊維の高異形断面化を困難にしているためである。
このため、特許文献1では、染料が固定化されないポリプロピレン繊維に易染色成分をブレンドすることで、染色後の発色性を担保する可染色なポリプロピレン繊維を達成するものであるが、異形断面化による機能性を訴求する技術思想はなく、これを達成するための手段についての開示もなされていない。
また、特許文献2や特許文献3においては、ポリエステルもしくはポリエステルを主体とした繊維において、紡糸口金の異形吐出孔のスリット孔を一定の幅で穿設することにより、異形断面や中空異形断面を有した繊維を達成したことの開示がある。しかしながら、特許文献2や特許文献3においても、ポリプロピレン繊維の高異形断面化に関する記載やその達成手段に関する開示はない。更には、ポリプロピレン繊維を高異形断面化することによる機能性の向上や技術思想に関する記載もない。
以上のように、染色が可能となり、衣料用として必要とする機能性の高度化がなされたポリプロピレン繊維が要望されており、したがって、本発明の目的は、上記のポリプロピレン繊維に関わる技術課題を解決し、衣料用途から産業資材用途までの幅広い繊維素材に展開が可能な高異形断面ポリプロピレン繊維を提供することにある。
上記課題は、繊維横断面において、異形度M値が1.2~3.0であることを特徴とするポリプロピレン繊維によって解決することができる。
本発明によれば、従来繊維には無い嵩高性・軽量性に加え、ポリプロピレン特有の撥水性の高さ、ならびに異形断面化することでロータス効果による長期的な高撥水性が発現し、風合いに優れ、繊維構造体として好適に採用できるポリプロピレン繊維を提供することができる。本発明により得られるポリプロピレン繊維は、繊維構造体とすることで、優れた軽量性と撥水性が要求される用途で好適に用いることができる。
図1は、本発明の中空部を有さない場合のポリプロピレン繊維の断面形状の一例を示す図である。 図2は、本発明の中空部を有する場合のポリプロピレン繊維の断面形状の一例を示す図である。
本発明は、繊維横断面において、異形度M値が1.2~3.0のポリプロピレン繊維である。
本発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンを主成分とするのであれば、ポリプロピレン単独で構成されても、さらに他の熱可塑性樹脂を含有する複数の成分から構成されるポリマーアロイ繊維であってもよい。
本発明のポリプロピレンは、プロピレン単独重合体であっても、他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。他のα-オレフィン(以下、単にα-オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上を共重合してもよい。
α-オレフィンの炭素数は2~20であることが好ましく、α-オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α-オレフィンの具体例として、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
α-オレフィンの共重合率は20mol%以下であることが好ましい。α-オレフィンの共重合率が20mol%以下であれば、力学特性や耐熱性が良好なポリプロピレン繊維が得られるため好ましい。
本発明におけるポリマーアロイ繊維とは、島成分が不連続に分散して存在する繊維のことである。ここで、島成分が不連続とは、島成分が繊維長手方向に適度な長さを有して存在しており、その長さは数十nm~数十万nmであり、同一単繊維内の任意の間隔において観察した2つの、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態であることである。本発明における島成分の不連続性は、実施例記載の方法で確認することができる。島成分が不連続に分散して存在する場合、海島界面の比界面積を十分大きくすることができるため、界面剥離を抑制することができ、力学特性ならびに耐摩耗性に優れるポリマーアロイ繊維を得ることができる。また、界面剥離が抑制されているため、染色した場合には、界面剥離に起因する散乱光の増加に伴う発色性の低下を抑制することができ、鮮明で深みのある発色が得られる。以上より、本発明におけるポリマーアロイ繊維は、1つまたは複数の島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なるものである。かかるポリマーアロイ繊維は、例えば、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において、ポリプロピレンと熱可塑性樹脂を混練して形成したポリマーアロイ組成物から成形することで得ることができる。
本発明におけるポリマーアロイ繊維は、主成分であるポリプロピレンが海成分である。また、島成分としてはポリエステルやポリアミド、ポリオレフィンなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリプロピレン繊維の発色性を向上させる場合、染色可能なポリマーが島成分として用いられるが、ポリエステルを島成分として用いることが好ましく、特に共重合ポリエステルを用いることがより好ましい。
発色性を向上させる場合、共重合ポリエステルの結晶性を低くすること、共重合ポリエステルの屈折率を低くすることが挙げられるが、共重合ポリエステルの屈折率を低くすることの方がより高い効果を得ることができる。
染料は結晶部分には吸尽されにくく、非晶部分に吸尽されやすいため、発色性を向上させるには、共重合ポリエステルの結晶性は低ければ低いほど好ましく、非晶性であることがより好ましい。
また、共重合ポリエステルの屈折率を低くした場合には、共重合ポリエステル表面における反射光が少なくなり、共重合ポリエステル内部まで十分に光が浸透し、鮮やかで深みのある発色性を付与することができる。共重合ポリエステルの屈折率を低くするには、共重合ポリエステルの芳香環濃度を低くすることが有効である。
本発明の共重合ポリエステルは、主成分がテレフタル酸とエチレングリコールであり、共重合成分を有していることが好ましい。共重合ジカルボン酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、共重合ジオール成分として、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどの芳香族ジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられる。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるポリマーアロイ繊維は、繊維組成の合計100重量部に対し、共重合ポリエステルを5.0~20.0重量部含有していることが好ましい。共重合ポリエステルの含有量が5.0重量部以上であれば、海成分に対して多数存在する島成分を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。一方、共重合ポリエステルの含有量が20.0重量部以下であれば、屈折率が低く、発色性の高い共重合ポリエステルが、屈折率の低いポリプロピレンに散在しているため、鮮やかで深みのある発色を実現できる。加えて、ポリプロピレンの軽量性、均染性、品位を損なわないため好ましい。
本発明におけるポリマーアロイ繊維において、海成分のポリプロピレンへの島成分の分散性の向上や分散状態の制御、海成分のポリプロピレンと島成分の界面接着性の向上を目的として、必要に応じて相溶化剤を添加してもよい。また、溶融紡糸によって海島構造を形成させる際には、口金直下においてバラスと呼ばれる膨らみが発生し、繊維の細化変形が不安定になる傾向があるため、このバラスに伴う糸切れの抑制などの製糸操業性の改善や、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることを目的として、相溶化剤を用いてもよい。
本発明における相溶化剤は、海成分のポリプロピレンと島成分の組成、海のポリプロピレンと島成分との複合比率などに応じて適宜選択することができる。なお、相溶化剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
相溶化剤を添加する場合、本発明のポリプロピレン繊維は、組成の合計100重量部に対し、相溶化剤を0.1~10.0重量部含有することが好ましい。相溶化剤の含有量が0.1重量部以上であれば、海成分のポリプロピレンと島成分との相溶化効果が得られるため、島成分の分散径が小さくなり、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、糸切れの抑制など製糸操業性が改善されるとともに、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。一方、相溶化剤の含有量が10.0重量部以下であれば、ポリプロピレン繊維を構成する海成分のポリプロピレンや島成分に由来する繊維特性や外観、風合いを維持することができるため好ましい。また、過度の相溶化剤による製糸操業性の不安定化を抑制できるため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面において、異形度M値が1.2~3.0である。異形断面については、線対称や点対称などの対称性を有していても、非対称であってもよいが、均一な繊維物性を得るため、対称性を有していることが好ましい。異形度M値とは、単繊維横断面における外接円R1の直径r1と、内接円R2の直径r2の比(r1/r2)である。外接円R1とは、単繊維横断面において、単繊維横断面の外周の形状の少なくとも2点以上と接し、単繊維横断面の外周の形状に対し内側を通過しない真円のなかで最小直径の真円である。内接円R2とは、単繊維横断面において、単繊維横断面の外周の形状に対し内側に存在し、単繊維横断面の外周の形状に対し外部を通過しない真円のなかで最大直径の真円である。この内接円R2において、単繊維横断面の外周の形状に対し内側に存在し、単繊維横断面の外周の形状に対し外部を通過しなければ、単繊維横断面中の中空部を通過しても良い。異形度M値が1.2以上であれば、単繊維間に十分な空隙を有することができ嵩高くなる。また、十分な空隙を有することで、ロータス効果により撥水性も向上する。異形度M値が1.5以上であれば、より撥水性が向上するため好ましい。一方、異形度M値が3.0以下であれば、摩擦が加えられた際に異形度の変化が小さく、嵩高性、撥水性が保持される、また、繊維強度や工程通過性が良好となる。異形度M値が2.0以下であれば、撥水性が優れるのみでなく、耐摩耗性も保持されるため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維横断面中心に対して放射状に突出した突起部を有し、突起部において、突起形状a/bが1.5以上3.0以下である断面形状であることが好ましい。aとは、単繊維横断面において、突起部が内接円R2と接する底辺の最大長さである。bとは、突起部が外接円R1に接する頂点から内接円R2と接する最大長さを有する底辺へ下した垂線において、底辺に平行な直線を垂線の中央に引いた際の突起部の幅である。突起形状a/bが1.5以上であれば、突起部間に十分な空隙を有することができ、嵩高くなるため好ましく、十分な空隙を有することで、ロータス効果により撥水性も向上するため好ましい。一方、突起形状a/bが3.0以下であれば、突起部が他単繊維の突起部間空隙に入り込む確立が低くなり、嵩高性の低減が抑制されるため好ましい。また、摩擦が加えられた際の突起部の変形や剥離が抑制され、嵩高性、撥水性が保持されるため好ましい。突起形状a/bは、2.0以下であることがより好ましい。また、突起部において、a/cが0.5以上3.0以下である断面形状であることが好ましい。cとは、突起部が外接円R1に接する頂点から内接円R2と接する最大長さを有する底辺へ下した垂線の長さである。突起形状a/cが0.5以上であれば、摩擦が加えられた際の突起部の変形や剥離が抑制され、嵩高性、撥水性が保持されるため好ましい。一方、突起形状a/cが3.0以下であれば、突起部間に十分な空隙を有することができ、嵩高くなるため好ましく、十分な空隙を有することで、ロータス効果により撥水性も向上するため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維横断面中心に対して放射状に突出した突起部を複数箇所有する場合、繊維横断面の外周において等間隔に同形状の突起部を有していることが好ましい。同形状の突起部を等間隔に有することで対称性を有した断面となり、均一な繊維物性を得ることができるため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維横断面中心に対して放射状に突出した5カ所以上の突起部を有していることが好ましい。4カ所以下の場合、突起部同士の間隔が広い際に繊維表面に平坦部を形成してしまい、突起部が無い場合の繊維表面に曲面を有する丸断面と比較し、水との接触面が増加してしまい、空気層の形成量が減少し撥水性が低下することから好ましくない。また、繊維表面に平坦部が増加することにより、単繊維同士がより近傍に配置可能となり、嵩高性も低下するため好ましくない。5カ所以上の突起部を有していれば、同単繊維中に存在する突起部同士の間隔が十分に狭く、他単繊維の突起部が入り込み嵩高性が低減することが少ないため好ましい。また、単繊維表面において平坦部が形成されることなく、水滴を滴下した際に突起部同士の間隔に水滴が入り込みにくくなり、空気層の形成量が増えることから撥水性が向上するため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、少なくとも1か所以上の中空部を有し、該中空部の中空率が10%~50%であることが好ましい。中空率が10%以上であれば、軽量性、嵩高性が発現し、中実の繊維と比べ軽量となるため好ましい。また、中空率が50%以下であれば、製糸性の悪化や繊維物性の低下、耐摩耗性の低下が防げるため好ましい。
発明のポリプロピレン繊維は、酸化防止剤を含有していることが好ましい。酸化防止剤を含有することにより、長期保管やタンブラー乾燥によるポリプロピレンの酸化分解を抑制するだけではなく、機械的特性などの繊維特性の耐久性が向上するため好ましい。
本発明における酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒンダードアミン系化合物のいずれかであることが好ましい。これらの酸化防止剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリプロピレン繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよいが、異形断面による嵩高性等の特性を生かすためにもマルチフィラメントやステープルなどの形態であることが好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5~20dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、実施例記載の方法で測定される繊度を単繊維数で除した値を指す。ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が20dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい
本発明のポリプロピレン繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~3000dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。ポリプロピレン繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、ポリプロピレン繊維の繊度が3000dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維の伸度は、用途や要求特性に応じて後述する製造方法によって調整して使用することが好適である。ここで、本発明の伸度とは、実施例記載の方法で測定される値を指し、伸度は高いほど、急激な変形を加えても繊維が伸長変形して、破断することがなくなるものの、成形加工時に伸長変形することで、繊維製品の特性が不安定になる可能性もあるため、この繊維の取扱性を鑑みると、本発明の繊維の伸度は、30~60%であることがより好ましい。特に、伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好適ある。
また、本発明のポリプロピレン繊維は、その使用に必要となる伸度にあわせて調整すると良く、衣料用途で使用する場合には、30~50%、非衣料用途で使用する場合には、20~40%に調整することが特に好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、その少なくとも一部を用いて繊維構造体とした場合、繊維構造体の見かけ比重が1.0以下であることが好ましい。繊維構造体の見かけ比重が1.0以下であれば、本発明のポリプロピレン繊維の嵩高性、軽量性が十分に発揮されており、軽量性繊維構造体として使用できるため好ましい。ここで、繊維構造体の形体については特に制限はなく、編地であっても、織物であっても、または不織布やバインダー繊維を介した構造体であっても良い。
次に、本発明のポリプロピレン繊維の製造方法を以下に示す。
本発明のポリプロピレン繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法、延伸方法を用いることができる。
本発明では、溶融紡糸を行う前に原料の含水率を0.3重量%以下としておくことが好ましいため、必要に応じて原料を乾燥させることが好ましい。含水率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸の際に水分によって発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となるため好ましい。また、熱可塑性樹脂を含有する場合、その種類によっては加水分解による機械的特性の低下や色調の悪化が抑制されるため好ましい。含水率は0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましい。
ポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法として、以下に示す例が挙げられるが、これらに限定されない。第一の例として、海成分と島成分をエクストルーダーなどで事前に溶融混練して海島構造を均一化した複合チップを必要に応じて乾燥した後、溶融紡糸機へチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第二の例として、必要に応じてチップを乾燥し、チップの状態で海成分と島成分を混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第三の例として、最終的な繊維の組成よりも島成分の重量%を多くした複合チップを必要に応じて乾燥した後、複合チップと海成分のチップを別々に供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第四の例として、最終的な繊維の組成よりも島成分の重量%を多くした複合チップを必要に応じて乾燥した後、複合チップと海成分のチップをチップの状態で混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。
紡糸口金は、スリット状であることが好ましく、異形度M値を上げるためには、吐出孔外周に向かうにつれて、スリット幅が広がることが好ましい。吐出孔中心に最も近いスリット幅に対し、最外部のスリット幅が1.2~2.0倍に広がっていくことが好ましい。最外部のスリット幅が1.2倍以上であれば、比熱が高いポリプロピレンが紡糸口金から吐出してからも繊維温度が高く変形が進行してしまう場合でも、異形度M値が十分な値となるため好ましい。一方、最外部のスリット幅が2.0倍以下であれば、異形度M値が十分な値となり、かつ突起部の繊維中央部側が細くなり耐摩耗性が低下することを防ぐことができるため好ましい。
紡糸口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、巻き取り時の張力は、0.05~0.10cN/dtexであることが好ましい。巻き取り時の張力は0.05cN/dtex以上であれば、第2ゴデットローラーとワインダー間の張力が十分となり、安定した巻き取りが行えるため好ましい。一方、巻き取り時の張力が0.10cN/dtex以下であれば、第2ゴデットローラーとワインダー間の張力が高いことによる糸の擦過過剰による操業性の悪化や、巻取糸の経時での収縮による巻取糸の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、繊維中の各成分の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、220~300℃であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は240℃以上であることがより好ましい。一方、紡糸温度が300℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、得られるポリプロピレン繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は260℃以下であることがより好ましい。
溶融紡糸における紡糸速度は、繊維中の各成分の複合比率、紡糸温度などに応じて適宜選択することができるが、二工程法の場合は1000~3000m/分であることが好ましい。二工程法の場合の紡糸速度が1000m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。一方、二工程法の場合の紡糸速度が3000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができ、また紡糸後に巻き取った糸が収縮することのよる巻取糸の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを1000~3000m/分、高速ローラーを2500~6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。
延伸を行う場合の延伸温度は、繊維中の各成分のガラス転移温度や融点、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、30~120℃であることが好ましい。延伸温度が30℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。一方、延伸温度が120℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は90℃以下であることがより好ましい。また、120~150℃の熱セットを行うことが好ましい。120℃以上で熱セットを行えば、熱セットで繊維が十分に結晶化し、経時で収縮することによる延伸後の繊維の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。一方、熱セット温度が150℃以下であれば、繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02~5.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましい。一方、延伸倍率が5.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は3.5倍以下であることがより好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、100~1000m/分であることが好ましい。延伸速度が100m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
本発明の繊維構造体の製造方法は特に制限がなく、公知の方法を用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.異形度M値
得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB-2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、繊維横断面出しを行った包埋ブロックを作製し、白金-パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S-4000型を用いて、倍率1000~10000倍の任意の倍率で横断面観察を行い、顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に10本の繊維を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、全ての繊維横断面の外接円の直径と、内接円の直径を測定後、10本の平均値を算出し、繊維横断面の外接円R1の直径r1(μm)と、内接円R2の直径r2(μm)とした。
異形度M値は、上記で算出した外接円R1の直径r1と、内接円R2の直径r2を用いて、下記式
異形度M値=r1/r2
によって算出した。
B.突起形状a/b、a/c
上記Aにおいて写真から抽出した10本の繊維の繊維横断面において、突起部が内接円R2と接する底辺の最大長さa(μm)、突起部が外接円R1に接する頂点から内接円R2と接する最大長さを有する底辺へ下した垂線において、底辺に平行な直線を垂線の中央に引いた際の突起部の幅b(μm)、突起部が外接円R1に接する頂点から内接円R2と接する最大長さを有する底辺へ下した垂線の長さc(μm)を測定し、a/b、a/cをそれぞれ算出し、その平均値を算出した。
C.中空率
上記Aにおいて写真から抽出した10本の繊維の繊維横断面における断面の全面積(S1)と中空部の面積(S2)を測定し、下記式によって中空率(%)を算出した。
中空率(%)=(S2/S1)×100
ただし、繊維横断面に複数の中空部が存在する場合は、全ての中空部の面積の総和を中空部の面積(S2)とし、その平均値を中空率(%)とした。
D.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100
なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
E.強度、伸度
強度および伸度は、得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM-III-100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。
伸度(%)={(L1-L0)/L0}×100
なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
F.見かけ比重
見かけ比重は、中空部を有さない繊維については、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.17.1(比重(浮沈法))に準じて算出した。重液には水を用い、軽液にはエチルアルコールを用いて比重測定液を調製した。温度20±0.1℃の恒温槽中において、試料約0.1gを比重測定液に30分間放置した後、試料の浮沈状態を観察した。浮沈状態に応じて重液または軽液を添加して、さらに30分間放置した後に試料が浮沈平衡状態となったのを確認して、比重測定液の比重を測定し、試料の比重を算出した。
中空部を有する繊維は、中空部を有さない同組成の繊維の見かけ比重(d1)を上記浮沈法より算出し、上記Dより算出した中空率(h(%))を用い、下記式を用いて中空部を有する場合の見かけ比重(d2)を算出した。
d2=d1×(100-h)÷100
なお、実施例25~30、比較例3の編地の見かけ比重については、編地を構成する撥水性繊維、親水性繊維の見かけ比重を上記条件より算出し、混率を基に算出した。
G.耐摩耗性
得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR-BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤”グランアップ“US-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みを試料とし、JIS0849(2013)に記載された摩擦試験機II形(学振形)法に準じ、2Nの荷重で100回往復摩擦させた後、上記A.繊維横断面形状観察に従って断面形状の変化を確認し、S、A、B、Cの4段階で評価した。評価は、Sが最も良く、Aがその次、Bがさらにその次、Cが最も劣ることを示す。「断面形状の変化なし」をS、「若干の断面形状の変化有り」をA、「明確な断面形状の変化有り」をB、「断面形状の変化が激しい」をCとした。
H.撥水性
得られた繊維を、英光産業製整列巻評価装置(model SAW-S05-60)を用いて巻取ピッチ0.3mm、トラバース8回でプレート巻を作製したのち、エタノールに24時間浸漬させ油剤を除去したプレート巻を試料とし、協和界面化学製接触角計DropMaster(DMo-501SA)を用いて撥水性の評価を行った。
接触角は、カメラ目線に対し水平方向に繊維が巻き取られているようにプレート巻を固定し、2μLの水滴を滴下し測定した。測定は1試料に対し5回行い、その平均値を接触角とした。
滑落角は、カメラ目線に対し垂直方向に繊維が巻き取られているようにプレート巻を固定し、7μLの水滴を滴下し、傾斜角度を1°/秒の割合で0°から90°まで稼働させ、液滴が滑落しカメラ画像上から消える角度を測定した。測定は1試料に対し5回行い、その平均値を滑落角とした。
I.島成分の不連続性
得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB-2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を同一単繊維内において単繊維直径の少なくとも10000倍以上の任意の間隔で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を5枚撮影した。撮影された写真について、それぞれの繊維横断面における島成分の数および海島構造の形状が異なる場合、島成分が不連続であるとし、島成分が不連続である場合を「Y」、島成分が不連続でない場合を「N」とした。
J.L
上記Gで得られた乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料としてHuntsman製TERATOP Blue NFBを3.0重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:30、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤“グランアップ”US-20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:30、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みを試料とし、ミノルタ製分光測色計CM-3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL値とした。
K.吸水性
得られた編地に対して、撥水性繊維の面積占有率が多い面を表面とし、表面の吸水性をJIS L1907:2010(繊維製品の吸水試験方法)7.1.1(滴下法)に準じて評価した。
さらに洗濯100回後についても、同様に吸水性を評価した。洗濯方法は、JIS L0217:1995(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)103法に準じた。
(実施例1)
ポリプロピレン(PP)(ExxonMobil製PP3155E5、融解ピーク温度163℃、MFR36g/10分)をエクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃、吐出量28.0g/分で紡糸口金(吐出スリット幅(中心部)0.07mm、吐出スリット幅(外周部)0.10mm、吐出孔長0.35mm、孔数48、六葉孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を、風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取り140dtex-48fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度30℃、第2ホットローラー温度140℃、延伸倍率2.5倍の条件で延伸し、56dtex-48fの延伸糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。得られたポリプロピレン繊維は耐摩耗性、撥水性ともに優れていた。
(実施例2~4、比較例1、2)
M値を表1に示す通りの断面形状となる口金に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。比較例1では丸断面であるために撥水性が劣り、比較例2では耐摩耗性に劣るものであった。
(実施例5~12)
突起形状a/b、a/cの値を表2に示す通りの断面形状となる口金に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。実施例8では突起形状a/bの値が大きく、つまり突起形状が先細りとなっているために、耐摩耗性が低下した。
(実施例13~16)
突起数を表3に示す通りの断面形状となる口金に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。突起数が増えるにつれ、撥水性が向上した。
(実施例17~21)
中空率を表3に示す通りの断面形状となる口金に変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。中空率が増えるにつれ、より軽量となっているものの、強度と耐摩耗性が低下した。
(実施例22~24)
ポリマー種を、海成分としてPP(ExxonMobil製PP3155E5)を89.0重量%、島成分として1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を35mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%、相溶化剤として官能基としてアミノ基を有するスチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(旭化成製タフテックMP10)を1.0重量%の配合に変更した以外は、実施例22は実施例1、実施例23は実施例18、実施例24は実施例19と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表4に示す。この結果から、染色可能な高異形断面ポリプロピレン繊維が作製できたことが確認された。
(実施例25)
実施例1で得られたポリプロピレン繊維を撥水性繊維として、編地重量中の撥水性繊維の重量比率を百分率で示した際の混率が50%となるようにし、撥水性繊維がニードル面に、親水性繊維として84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート糸がシンカー面に配されるように、リバーシブル天竺組織の編地を編成した。編地を炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤“グランアップ”US-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、精練後の編地を135℃で1分間乾熱セットした。
得られた編地の特性を表5に示す。吸水性について、初期、洗濯100回後ともに60秒以上と、撥水性に優れており、洗濯耐久性もあることがわかる。
(実施例26~30)
使用した撥水性繊維とその混率を表5に示す通りに変更した以外は、実施例25と同様に編地を編成した。
得られた編地の特性を表5に示す。中空繊維を用いることで、見かけ比重が1.0以下と軽く、かつ撥水性に優れた編地が編成できたことがわかる。
(比較例3)
使用した撥水性繊維を、84dtex-48fの撥水性ポリエチレンテレフタレート糸に変更した以外は、実施例25と同様に編地を編成した。ここで、撥水性ポリエチレンテレフタレート糸とは、チーズ染色機で撥水剤を浴中吸尽させ撥水加工したポリエチレンテレフタレート繊維であり、撥水剤としては環境面に配慮したパーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0~5ng/g以下の弗素系撥水剤が2.0wt%のものを使用した。
得られた編地の特性を表5に示す。見かけ比重が1.4と重く、また初期では吸水性が60秒以上と撥水性に優れているものの、洗濯100回後の吸水性が1秒と、洗濯を行うことで撥水性が低下していることがわかる。
Figure 2023034421000002
Figure 2023034421000003
Figure 2023034421000004
Figure 2023034421000005
Figure 2023034421000006
本発明のポリプロピレン繊維は、嵩高性を兼ね備え、風合いに優れ、繊維構造体として好適に採用できるポリプロピレン繊維を提供する。

Claims (6)

  1. 繊維横断面において、異形度M値が1.2~3.0であることを特徴とするポリプロピレン繊維。
    ※異形度M値 = r1/r2
    但し、r1:単繊維の横断面の外接円R1の直径(μm)、r2:単繊維の横断面の内接円R2の直径(μm)
  2. 繊維横断面中心に対して放射状に突出した突起部を有し、突起部において、突起形状a/bが1.5以上3.0以下である請求項1に記載のポリプロピレン繊維。
    ただし、a:単繊維横断面おいて、突起部が内接円R2と接する底辺の最大長さ(μm)、b:突起部が外接円R1に接する頂点から内接円R2と接する最大長さを有する底辺へ下した垂線において、底辺に平行な直線を垂線の中央に引いた際の突起部の幅(μm)
  3. 繊維横断面中心に対して放射状に突出した5カ所以上の突起部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維。
  4. 少なくとも1か所以上の中空部を有し、該中空部の中空率が10%~50%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリプロピレン繊維。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のポリプロピレン繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
  6. 見かけ比重が1.0以下である、請求項5に記載の繊維構造体。
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