JP7268365B2 - 吸湿性芯鞘型複合繊維および繊維構造体 - Google Patents

吸湿性芯鞘型複合繊維および繊維構造体 Download PDF

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Description

本発明は、衣料用途に好適に使用できる芯鞘型複合繊維に関するものである。
ポリエステル繊維は、安価でかつ機械的特性やドライ感に優れているため、衣料用途をはじめ幅広い用途において用いられている。しかし、吸湿性に乏しいため、夏場の高湿時には蒸れ感の発生、冬場の低湿時には静電気の発生など、着用快適性の観点において解決すべき課題を有している。
上記の欠点を改善するため、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与する方法について、これまでに種々の提案がなされている。吸湿性を付与するための一般的な方法として、ポリエステルへの親水性化合物の共重合や親水性化合物の添加などが挙げられる。
例えば、特許文献1では、ポリエステルに対し、ポリエチレングリコールが共重合されたポリエステルを吸湿性ポリマーとして用いた繊維が提案されている。この提案では、吸湿性ポリマーを単独で繊維化し、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特許文献2では、芯にポリエーテルエステルアミド、鞘に塩基性染料可染型ポリエチレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に吸湿性ポリマーを、鞘に高鮮明発色性ポリエステル系ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性と高鮮明発色性を付与している。
特許文献3では、芯にポリアルキレンオキサイド変性物、鞘にポリプロピレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に吸湿性ポリマーを、鞘にソフトポリエステル系ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性とソフト性を付与している。
特開2006-104379号公報 特開平5-214612号公報 特開2000-96343号公報
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、吸湿性ポリマーが繊維表面全体に露出しており、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの共重合成分であるポリエチレングリコールが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。また、機械的特性も不十分であった。
特許文献2記載の方法では、染色等の熱水処理時に芯成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤することに伴い、芯成分と鞘成分の界面に応力が集中した結果、鞘成分の割れが生じ、この割れた部分を起点として芯成分の吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。
特許文献3記載の方法では、染色等の熱水処理時に吸湿性を担う芯成分のポリアルキレンオキサイド変性物が処理液へ溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。また機械的特性が不十分という課題もあった。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、織物や編物などの繊維構造体とした際に染め斑や毛羽の発生が少なく品位に優れるとともに、機械的特性に優れかつ高吸湿性であり、さらに触感が柔らかいことから、衣料用途に好適に採用できる吸湿性芯鞘型複合繊維を提供することにある。
上記課題は、下記(1)~(4)の特徴を有する吸湿性芯鞘型複合繊維。
(1)芯成分が吸湿性を有するポリマー
(2)鞘成分がポリブチレンテレフタレート
(3)熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0~10.0%
(4)130℃での貯蔵弾性率が100~1500MPa
本発明で得られる吸湿性芯鞘型複合繊維は、吸湿性に優れかつ機械的特性と高品位を両立し、さらには繊維構造体にした時の触感が柔らかいことから、特に衣料用途において好適に用いることができる。
本発明における吸湿率差(△MR)とは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差であり、実施例の欄に記載の方法で測定される値を表す。本明細書において吸湿性を有するとは△MRが2.0%以上のことであり、△MRの値が高いほど吸湿性が高く着用快適性が向上する。
本発明における熱水処理後の吸湿率差(△MR)とは、精練処理した試料を高温の熱水で処理し、その後の測定した吸湿率差(△MR)の値のことである。
本発明における130℃での貯蔵弾性率とは、染色等の熱水処理の温度に相当する130℃における複合繊維の貯蔵弾性率のことであり、実施例の欄に記載の方法で測定される値を表す。130℃における貯蔵弾性率が低いほど、染色等の熱水処理において吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘成分の変形追従性が良好であることを表す。
本発明における芯成分を構成する吸湿性を有するポリマーと鞘成分を構成するポリエステル系ポリマーのHSP距離とは、2種ポリマーのHansenの溶解度パラメータ値(HSP値)の差のことであり、実施例の欄に記載の方法で測定される値を表す。芯成分を構成する吸湿性を有するポリマーと鞘成分を構成するポリエステル系ポリマーのHSP距離が低いほど、2種ポリマーの親和性が良好であることを表す。
本発明における鞘厚みとは、単繊維の半径と芯成分の半径との差のことであり、鞘成分の厚みを表す。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の芯成分は、吸湿性を有するポリマー(吸湿性ポリマー)である。吸湿性を有するポリマーとは、吸湿率差(△MR)が2.0%以上のポリマーのことである。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の芯成分の吸湿性を有するポリマーの好ましい態様については製造方法の説明部分で詳細に記載するが、中でも、共重合ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。共重合ポリブチレンテレフタレートであれば、ポリマーの色調が良好であるため、得られる吸湿性芯鞘型複合繊維の色調が優れる。また、結晶性が高いため熱水流動しにくく、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても高い吸湿性を発現する。また、本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の芯成分の吸湿性を有するポリマーは、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーであることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリマーであれば、吸湿性に優れかつ耐熱性も良好であるため、得られる吸湿性芯鞘型複合繊維の機械的特性や色調が良好になる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の鞘成分は、ポリエステル系ポリマーである。ポリエステル系ポリマーであれば、機械的特性に優れ、また繊維構造体にして使用する際、毛羽の発生が少なく耐久性に優れる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の熱水処理後の吸湿率差(△MR)は、2.0~10.0%である。熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0%以上であれば、吸湿性に優れ衣服内の蒸れ感が抑制される。一方、熱水処理後の吸湿率差(△MR)が10.0%以下であれば、吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘成分の割れが抑制され、品位を維持できる。吸湿性と品位の観点から熱水処理後の吸湿率差(△MR)は3.0~8.0%であることが好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の130℃での貯蔵弾性率は100~1500MPaである。130℃での貯蔵弾性率が100MPa以上であれば、機械的特性に優れ、また繊維構造体にして使用する際、毛羽の発生が少なく耐久性に優れる。一方、130℃での貯蔵弾性率が1500MPa以下であれば、吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘成分の変形追従性が良好であり、鞘成分の割れが抑制され品位を維持できる。さらに繊維構造体にした際の触感が柔らかく風合いにも優れる。機械的特性と品位の観点から130℃での貯蔵弾性率は300~1200MPaであることが好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の芯成分を構成する吸湿性ポリマーと鞘成分を構成するポリエステル系ポリマーのHSP距離は1.0~4.0MPa1/2であることが好ましい。芯成分を構成する吸湿性ポリマーと鞘成分を構成するポリエステル系ポリマーのHSP距離が1.0~4.0MPa1/2であれば、芯成分と鞘成分の親和性が良好であるため界面剥離が抑制され、耐摩耗性が良好となり、機械的特性を維持したまま摩耗による白化が抑制されるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の鞘成分/芯成分の複合比率(重量比)は、50/50~90/10であることが好ましい。鞘成分の複合比率が50重量%以上であれば、鞘成分によるハリ、コシ感やドライな感触が得られるため好ましい。一方鞘成分の複合比率が90重量%以下、すなわち芯成分の複合比率が10重量%以上であれば、吸湿性に優れ、衣服内の蒸れ感が抑制されるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の鞘厚みは、2.5~5.0μmであることが好ましい。鞘厚みが2.5μm以上であれば、耐摩耗性が良好となり摩耗による白化が抑制されるため好ましい。一方、鞘厚みが5.0μm以下であれば、吸湿性ポリマーの体積膨潤が損なわれず、吸湿性に優れ衣服内の蒸れ感が抑制されるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維のマルチフィラメントとしての繊度(総繊度)は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~500dtexであることが好ましい。総繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、総繊度が500dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.50~4.0dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.50dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、単繊維繊度が4.0dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の強度は2.0~5.0cN/dtexであることが好ましい。複合繊維の強度が2.0cN/dtex以上であれば、工程通過性が良好で、また繊維構造体にして使用する際、毛羽の発生が少なく耐久性に優れる。一方、複合繊維の強度が5.0cN/dtex以下であれば、繊維構造体にした時に柔らかな風合いが得られる。耐久性と風合いの観点から2.5~4.5cN/dtexであることがより好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の伸度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10~60%であることが好ましい。複合繊維の伸度が10%以上であれば、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、摩耗による白化が抑制されるため好ましい。一方、複合繊維の伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維は、繊維横断面における芯成分の形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
次に本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造方法について述べる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維は、吸湿性を有するポリマーを芯成分に、ポリエステル系ポリマーを鞘成分にして公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚などの捲縮加工方法を用いて得ることができる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造で用いられる鞘成分は、ポリエステル系ポリマーである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、芳香族ポリエステルは、機械的特性や耐久性に優れるため好ましく、ポリブチレンテレフタレートは結晶性が高く、また吸湿性ポリマーの体積膨潤による変形追従性が良好であることから鞘成分の割れが抑制され品位を維持でき、さらに繊維構造体にした時の触感が柔らかくなるためより好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造で用いられる芯成分は、吸湿性を有するポリマーであり、ポリエステルと親水性高分子との共重合体からなるポリマーが好ましい。具体的には、ポリエーテルエステル、5-スルホイソフタル酸金属塩共重合ポリエステルなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。中でもポリエーテルエステルは吸湿性に優れるため好ましい。機械的特性の観点からはポリエーテル共重合ポリエステルがより好ましく、結晶性が高く熱水流動しにくくする観点からポリエーテル共重合ポリブチレンテレフタレートがさらに好ましく、耐熱性の観点からはポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合したポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
ポリエステルと親水性高分子との共重合体からなる吸湿性を有するポリマーとしては、吸湿性、耐熱性および機械的特性の観点から、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸の具体例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、5-(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、脂肪族ジオールの具体例として、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールは、製造時ならびに使用時の取り扱い性が良好であるため好ましく、結晶性が高く熱水流動しにくくする観点においては1,4-ブタンジオールが好適に採用できる。
芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルにおいて、共重合成分であるポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量は、2000~30000g/molであることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量が2000g/mol以上であれば、吸湿性に優れるため好ましい。一方、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の数平均分子量が30000g/mol以下であれば、重縮合反応性が高く、未反応のポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を低減することができ、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても吸湿性が維持できるため好ましい。
また、共重合成分であるポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率は、15~60重量%であることが好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率が15重量%以上であれば吸湿性が高く、芯成分として用いた場合に吸湿性に優れた複合繊維が得られるため好ましい。一方、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の共重合率が60重量%以下であれば、未反応のポリエチレングリコールおよびその誘導体を低減することができ、染色等の熱水処理時に吸湿性ポリマーの熱水への溶出が抑制され、熱水処理後においても吸湿性が維持できるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造で芯成分として好ましく用いられる、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールを主たる構成成分とし、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合成分とするポリエーテルエステルの製造方法は、通常、次のいずれかのプロセスである。すなわち、(A)ジメチルテレフタレートと脂肪族ジオールを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、更にその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス、(B)テレフタル酸と脂肪族ジオールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、更にその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスである。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の添加方法は特に制限はない。ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体の添加時期は、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体とポリエステルとの重縮合反応性を高め未反応のポリエチレングリコール/またはその誘導体の量を少なくする観点から、エステル交換反応、またはエステル化反応後、重縮合反応が開始するまでに添加する。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造で用いられる鞘成分および/または芯成分は、本発明の効果を損ねない範囲内で副次的添加物を加えて種々の改質が行われてもよい。副次的添加剤の具体例として、酸化防止剤、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造では、溶融紡糸を行う前に、それぞれの成分のポリマー(チップ)を乾燥させ、含水率を300ppm以下としておくことが好ましい。含水率が300ppm以下であれば、溶融紡糸の際に加水分解による分子量低下や水分による発泡が抑制され、安定して紡糸を行うことができるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造では、事前に乾燥したチップをエクストルーダー型やプレッシャーメルター型などの溶融紡糸機へ供給して、各成分を別々に溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過し、公知の芯鞘型複合口金で合流後、吐出して繊維糸条とする。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造において、複合口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化され、第1ゴデットローラーで引き取られ、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取られ、巻取糸となる。なお、紡糸操業性、生産性、繊維の機械的特性を向上させるために、必要に応じて複合口金下部に2~20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置してもよい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造における溶融紡糸の紡糸温度は、各成分の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、240~320℃であることが好ましい。紡糸温度が240℃以上であれば、複合口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。一方、紡糸温度が320℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造における溶融紡糸の紡糸速度は、各成分のポリマー組成、紡糸温度などに応じて適宜選択することができる。一旦溶融紡糸を行って巻き取った後、別途、延伸または仮撚を行う二工程法の場合の紡糸速度は、500~6000m/分であることが好ましい。紡糸速度が500m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましく、一方、紡糸速度が6000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを500~5000m/分、高速ローラーを2500~6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造において、一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。加熱方法の具体例として、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水や熱水などの液体浴、熱空やスチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの加熱方法は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。加熱方法としては、加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬を好適に採用できる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造において、延伸を行う場合の延伸温度は、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、50~150℃であることが好ましい。延伸温度が50℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。一方、延伸温度が150℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、必要に応じて60~150℃の熱セットを行ってもよい。
また、延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02~7.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。一方、延伸倍率が7.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
さらに、延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、30~1000m/分であることが好ましい。延伸速度が30m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造において、仮撚加工を行う場合には、1段ヒーターのみ使用する、いわゆるウーリー加工以外に、1段ヒーターと2段ヒーターの両方を使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。仮撚加工機の具体例として、フリクションディスク式、ベルトニップ式、ピン式などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造において、仮撚加工を行う場合のヒーター温度は、120~210℃であることが好ましい。ヒーター温度が120℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制でき、染め斑や毛羽が少なく、品位が良好となるため好ましい。一方、ヒーター温度が210℃以下であれば、加熱ヒーターとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解が抑制されるため、糸切れや加熱ヒーター等の汚れが少なく、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。
また、仮撚加工を行う場合の延伸倍率は、仮撚加工前の繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.01~2.5倍であることが好ましい。延伸倍率が1.01倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。一方、延伸倍率が2.5倍以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。
さらに、仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200~1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維の製造で採用する繊維の形態に関しては特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。また、一般の繊維と同様に撚糸などの加工が可能であり、製織や製編についても一般の繊維と同様に扱うことができる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維を用いた繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布や紡績糸、詰め綿などにすることができる。織物や編物の場合は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維は、繊維構造体にする際に交織や交編などによって他の繊維と組み合わせてもよく、他の繊維との混繊糸とした後に繊維構造体としてもよい。
本発明の吸湿性芯鞘型複合繊維は、繊維または繊維構造体のいずれの状態において染色してもよい。また染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。染料濃度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。また、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄やソーピング処理を行ってもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例・比較例の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.ポリエチレングリコールまたはその誘導体の数平均分子量
使用するポリエチレングリコールまたはその誘導体500mgを0.1M塩化ナトリウム水溶液5mLに溶かし、0.45μmのセルロース製フィルターで濾過して得られた濾液をGPC測定用試料とした。この試料を用いて、以下の条件にてGPC装置(Waters製Alliance2690)で測定を行い、数平均分子量を算出した。
検出器:Waters製2410示差屈折率検出器、感度 128x
カラム:東ソー製TSKgelG3000PWXLI
溶媒:0.1M 塩化ナトリウム水溶液
注入量:200μL
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール(エーエムアル株式会社製 Mw106~10100) 。
B.鞘ポリマーと芯ポリマーのHSP距離
HSP値の異なる25種類の溶媒6mLに試料ペレット0.12gをそれぞれ投入し、室温で3日間静置後、試料液の状態を観察した。試料ペレットが消失している場合を「溶媒に溶解」、試料ペレットに状態変化が見られない場合を「溶媒に不溶」と判定した。判定結果をHSP計算ソフトウェア(HSPiP ver. 5.0.04)に入力し、HSP距離を算出した。
C.鞘/芯複合比率(重量比)
実施例・比較例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S-4000型を用いて単繊維の全体像が観察できる最も高い倍率で観察した。得られた写真において繊維横断面積に対する芯成分および鞘成分の面積比率を算出し、複合繊維の原料として用いた鞘成分の密度と芯成分の密度から、鞘/芯複合比率(重量比)を算出した。
D.鞘厚み
実施例・比較例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を観察し、単繊維の全体像が観察できる最も高い倍率で顕微鏡写真を撮影した。得られた写真において、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、単繊維の半径と芯成分の半径を求めた。得られた写真から無作為に単繊維10本を抽出し、単繊維の半径および芯成分の半径を同様に求め、それぞれの単繊維において単繊維の半径と芯成分の半径の差を算出し、その平均値を鞘厚みとした。なお、繊維横断面は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には、繊維横断面および芯成分の断面積から円相当半径を算出しそれぞれ単繊維の半径および芯成分の半径として採用した。
E.130℃での貯蔵弾性率
エー・アンド・デイ製レオバイブロンDDV-01-GPを用い、チャック間距離30mmにて、実施例・比較例によって得られた繊維(マルチフィラメント)2本をタルミのないように挟み試料を固定した。0.15cN/dtexの張力をかけ、温度130℃、周波数110Hzの条件で測定し、貯蔵弾性率(MPa)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を130℃での貯蔵弾性率とした。
F.総繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例・比較例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式(I)を用いて総繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を採用とした。
総繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 ・・・(I) 。
G.強度、伸度
実施例・比較例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック製テンシロンUTM-III-100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を総繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式(II)によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。強度が2.0(cN/dtex)以上であれば良好と判断し、2.5(cN/dtex)以上であればより良好とした。
伸度(%)={(L1-L0)/L0}×100 ・・・(II) 。
H.タフネス
上記Gで算出した強度(cN/dtex)と伸度(%)を用いて下記式(III)によりタフネスを算出した。タフネスが16.5以上であれば良好と判断した。
タフネス=強度×(伸度)1/2 ・・・(III) 。
I.試料の吸湿率差(△MR)
(1)精練後、熱水処理後の布帛の吸湿率差(△MR)
実施例・比較例によって得られた繊維を原料とし、英光産業製丸編機NCR-BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム(和光純薬工業製)を2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20を含む水溶液に投入し、80℃で20分間精練後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、精練後の筒編みとした。また、精練後の筒編みを浴比1:100、処理温度130℃、処理時間60分の条件で熱水処理した後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥し、熱水処理後の筒編みとした。
吸湿率(%)は、精練後および熱水処理後の筒編みを試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.10の水分率に準じて算出した。始めに、筒編みを60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU-123内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に筒編みを24時間静置し、筒編みの重量(W2)を測定した。その後、筒編みを105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後の筒編みの重量(W3)を測定した。筒編みの重量W1、W3を用いて下記式(IV)により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、筒編みの重量W2、W3を用いて下記式(V)により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式(VI)によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。△MRが2.0(%)以上であれば吸湿性を有すると判断し、3.0(%)以上であればより良好とした。
MR1(%)={(W1-W3)/W3}×100 ・・・(IV)
MR2(%)={(W2-W3)/W3}×100 ・・・(V)
吸湿率差(△MR)(%)=MR2-MR1 ・・・(VI) 。
(2)芯ポリマーの吸湿率差(ΔMR)
芯ポリマー3gを凍結粉砕し、測定サンプルとした。60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU-123内にサンプルを24時間静置し、サンプルの重量(W1)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内にサンプルを24時間静置し、サンプルの重量(W2)を測定した。その後、サンプルを105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後のサンプルの重量(W3)を測定した。サンプルの重量W1、W3を用いて上記式(IV)により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、サンプルの重量W2、W3を用いて上記式(V)により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、上記式(VI)によって吸湿率差(ΔMR)を算出した。
J.鞘成分の割れ
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みを白金-パラジウム合金で蒸着し、日立製走査型電子顕微鏡(SEM)S-4000型を用いて1000倍で観察し、無作為に10視野の顕微鏡写真を撮影した。得られた10枚の写真において、鞘成分が割れている箇所の合計を鞘成分の割れ(箇所)とし、5(箇所)以下であれば鞘成分の割れが抑制されていると判断し、3(箇所)以下であればより良好とした。
K.均染性
実施例・比較例によって得られた繊維を原料とし、英光産業製丸編機NCR-BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約10gを作製した後、炭酸ナトリウム(和光純薬工業製)の濃度が2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20の濃度が1g/Lの水溶液に浴比1:40となるように投入し、80℃で20分間精練後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。180℃で3分間熱セットした後、日本化薬製分散染料Kayalon Polyester Black ECX300の濃度が2.9重量%、明成化学工業製均染剤イオネットRAP-250の濃度が0.5g/L、pHを5.0に調整した染色液に浴比1:30となるように投入し、130℃で30分間染色した。染色した試料を、水酸化ナトリウム(和光純薬工業製)の濃度が0.5g/L、ハイドロサルファイトナトリウム(和光純薬工業製)の濃度が2.0g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20の濃度が0.5g/Lの水溶液に浴比1:30となるように試料を投入し、80℃で20分間還元洗浄後、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。最後に160℃で3分間熱セットした。
得られた筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の多数決によって、「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」をS、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」をA、「均一に染色されており、うっすらとしか染め斑が認められない」をB、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」をCとし、A、Sを合格とした。なお、同数票だった場合、2階級に選択肢を絞り、再度多数決により判定した。
L.品位
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の多数決によって、「毛羽が全くなく、品位に極めて優れる」をS、「毛羽がほとんどなく、品位に優れる」をA、「毛羽が少しあるものの、品位は良好である」をB、「毛羽が多数あり、品位に極めて劣る」をCとし、A、Sを合格とした。なお、同数票だった場合、2階級に選択肢を絞り、再度多数決により判定した。
M.曲げ剛性B値
酸化チタンを0.3重量%含有した56dtex-18fのポリエチレンテレフタレート丸断面仮撚糸を経糸とし、実施例・比較例によって得られた繊維を密度85本/inch(2.54cm)となるように平組織で緯打ち込みして織物を作製した。
カートテック製KES-FB2純曲げ試験機を用いて得られた緯打ち込み織物を緯糸方向に曲げ、曲げ剛性B値(gf・cm/cm)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を曲げ剛性B値とした。曲げ剛性B値が0.11(gf・cm/cm)以下であれば触感が柔らかく風合いに優れると判断し、0.090(gf・cm/cm)以下であればより良好とした。
N.蒸れ感改善
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の多数決によって、「蒸れ感が全くない」をS、「蒸れ感がほとんどない」をA、「蒸れ感を感じる」をB、「蒸れ感が極めて強い」をCとし、A、Sを合格とした。なお、同数票だった場合、2階級に選択肢を絞り、再度多数決により判定した。
O.耐久性
上記Iで作製した熱水処理後の筒編みをJIS L0217:2010(繊維製品の取扱いに関する表示記号およびその表示方法)に規定する付表1 103法に準じて洗濯処理を100回行った試料について、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の多数決によって、「亀裂や目ずれが全くない」をS、「亀裂や目ずれがほとんどない」をA、「亀裂や目ずれがある」をB、「亀裂や目ずれが多数ある」をCとし、A、Sを合格とした。なお、同数票だった場合、2階級に選択肢を絞り、再度多数決により判定した。
P.摩耗後の変退色
上記Kで作製した染色後の筒編みを試料とし、直径10cmおよび17.5cmとなるように試料を採取して、試験片を大栄科学精器製作所製アピアランス・リテンションテスター(ART形試験機)の上下ホルダーにセットした。上部試験片を蒸留水で湿潤させたガーゼで完全に湿らせた後、押圧7.36Nで10分間摩耗した。摩耗後、上部の試験片を標準状態で4時間放置したのち、変色の程度を変退色グレースケールで等級判定した。4級以上であれば耐摩耗性良好と判断し、5級であればより良好とした。
(製造例1)共重合ポリブチレンテレフタレート組成物
1,4-ブタンジオール(東京化成製)1.0kgを100℃に加熱後、テトラ-n-ブトキシチタネート(東京化成製)を250g混合して触媒溶液を得た。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(東京化成製)45.3kg、ジオール成分として1,4-ブタンジオール44.2kg、エステル化反応触媒として上記方法により得られた触媒溶液135gを、精留塔の付いたエステル化反応槽に仕込んだ。温度160℃、圧力93kPaの減圧下にてエステル化反応を開始した後、徐々に昇温し、最終的に温度235℃の条件下でエステル化反応を270分間行った。
数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を60.0kg、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、エステル化反応槽で得られた反応物を移行した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、上記方法により得られた触媒溶液300gを添加し、温度250℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を行い、所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングして、ポリエチレングリコールを50重量%共重合したポリブチレンテレフタレートのペレットを得た。
この共重合ポリブチレンテレフタレートポリマーに対して、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’ ジイル=ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ5-メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO-80)を6.0重量%、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P-EPQ)2.3重量%を配合し、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施し、共重合ポリブチレンテレフタレート組成物を得た。
(製造例2)共重合ポリエチレンテレフタレート組成物
予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート100kgが仕込まれ、温度250℃に保持されたエステル化反応槽に高純度テレフタル酸(三井化学製)51.9kgとエチレングリコール(日本触媒製)23.3kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行った。
数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)60.0kg、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製、IRGANOX1010)を180g、重合槽に投入し、重合槽温度が180℃以上となったときに、エステル化反応槽で得られた反応物63.9kgを重縮合槽に移送した。重合槽温度が250℃到達後、重縮合反応触媒として、リン酸トリメチル30.0gを添加し、10分後に酢酸コバルト4水和物24.0g、三酸化アンチモン30.0g添加した。さらに5分後に酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.3重量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度および最終圧力の到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、口金からストランド状に押出して水槽冷却、カッティングして、ポリエチレングリコールを50重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。
この共重合ポリエチレンテレフタレートポリマーに対して、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’ ジイル=ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ5-メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO-80)を6.0重量%、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P-EPQ)2.3重量%を配合し、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度280℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施し、共重合ポリエチレンテレフタレート組成物を得た。
(実施例1)
製造例1に従い作製した数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を50重量%共重合したポリブチレンテレフタレートを芯成分とし、ポリブチレンテレフタレートを鞘成分とした。鞘ポリマーと芯ポリマーのHSP距離は3.5MPa1/2であった。それぞれのポリマーを150℃で12時間真空乾燥した後、芯成分を20重量%、鞘成分を80重量%の配合比でエクストルーダー型複合紡糸機へ供給して別々に溶融させ、紡糸温度270℃において、吐出孔数が36の芯鞘型複合口金を組み込んだ紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出量32g/分で吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速20m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2700m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って118dtex-36fの未延伸糸を得た。その後、延伸仮撚機(加撚部:フリクションディスク式、ヒーター部:接触式)を用いて、得られた未延伸糸をヒーター温度140℃、倍率1.4倍の条件で延伸仮撚し、84dtex-36fの仮撚糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。130℃での貯蔵弾性率は760MPaであった。強度は3.1cN/dtexと良好であり、タフネスは19.6と良好であった。熱水処理後の吸湿率差(△MR)は4.1%であった。また、鞘成分の割れは0箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.081gf・cm/cmと良好であった。摩耗後の変退色は4級と良好であり、均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
Figure 0007268365000001
(実施例2~5)
製造例1においてポリエチレングリコールの数平均分子量および共重合率を変更して作製した共重合ポリブチレンテレフタレートを芯成分とし、芯鞘複合比率を変更することで、熱水処理後の吸湿率差(△MR)を変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。いずれも、130℃での貯蔵弾性率は760MPaであり、強度は2.5cN/dtex以上と良好であった。また、鞘成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されており、曲げ剛性B値はいずれも0.081gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
(実施例6~7)
鞘成分として、数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)を共重合したポリブチレンテレフタレートを用いることで、130℃での貯蔵弾性率を変更したこと以外は実施例1と同様に仮撚糸を作製した。実施例6では、数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコールを20重量%共重合したポリブチレンテレフタレートを、実施例7では数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコールを15重量%共重合したポリブチレンテレフタレートを用いた。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。いずれも、130℃での貯蔵弾性率は100~1500MPaであった。強度はいずれも2.0cN/dtex以上と良好であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)はいずれも2.0~10.0%であった。また、鞘成分の割れはいずれも1箇所以下と割れが抑制されており、曲げ剛性B値はいずれも0.090gf・cm/cm以下と良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
(実施例8~9)
鞘成分として、数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いることで、130℃での貯蔵弾性率を変更したこと以外は実施例1と同様に仮撚糸を作製した。実施例8では、数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコールを12重量%共重合したポリエチレンテレフタレートを、実施例9では数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコールを8重量%共重合したポリエチレンテレフタレートを用いた。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。いずれも、130℃での貯蔵弾性率は100~1500MPaであった。強度はいずれも2.5cN/dtex以上と良好であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)はいずれも2.0~10.0%であった。また、鞘成分の割れはいずれも5箇所以下と割れが抑制されており、曲げ剛性B値はいずれも0.11gf・cm/cm以下と良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
Figure 0007268365000002
(実施例10)
鞘成分として、数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を10重量%共重合したポリブチレンテレフタレートに変更したこと以外は実施例1と同様に仮撚糸を作製した。鞘ポリマーと芯ポリマーのHSP距離は1.0MPa1/2であった。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。130℃での貯蔵弾性率は260MPaであった。強度は2.6cN/dtexと良好であり、タフネスは16.6と良好であった。熱水処理後の吸湿率差(△MR)は5.1%であった。また、鞘成分の割れは1箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.076gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。摩耗後の変退色は5級と良好であった。
(実施例11)
製造例1において数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)に変更し、50重量%共重合となるように作製した共重合ポリブチレンテレフタレートを芯成分に用いたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。鞘ポリマーと芯ポリマーのHSP距離は4.0MPa1/2であった。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。130℃での貯蔵弾性率は760MPaであった。強度は2.9cN/dtexと良好であり、タフネスは18.3と良好であった。熱水処理後の吸湿率差(△MR)は3.3%であった。また、鞘成分の割れは1箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.081gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。摩耗後の変退色は4級と良好であった。
(実施例12)
製造例2において数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)が50重量%共重合となるよう作製した共重合ポリエチレンテレフタレートを芯成分としたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。130℃での貯蔵弾性率は760MPaであった。強度は2.2cN/dtexと良好であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は3.2%であった。また、鞘成分の割れは4箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.10gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
(実施例13)
製造例1において数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)が16重量%共重合となるよう作製した共重合ポリブチレンテレフタレートを芯成分とし、芯成分を80重量%、鞘成分を20重量%にしたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。130℃での貯蔵弾性率は760MPaであった。強度は2.1cN/dtexと良好であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は2.9%であった。また、鞘成分の割れは1箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.081gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
(実施例14)
芯成分をポリエーテルエステルアミド(東レ製PAS-40N)に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。130℃での貯蔵弾性率は760MPaであった。強度は2.2cN/dtexと良好であり、熱水処理後の吸湿率差(△MR)は5.2%であった。また、鞘成分の割れは4箇所と割れが抑制されており、曲げ剛性B値は0.081gf・cm/cmと良好であった。均染性、品位、風合い、蒸れ感改善、耐久性については全て合格レベルであった。
(比較例1)
製造例1において数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を20重量%共重合となるように作製した共重合ポリブチレンテレフタレートを芯成分に用いて、熱水処理後の吸湿率差(△MR)を1.9%に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。精練後、熱水処理後ともに吸湿性が低く、蒸れ感を感じるものであった。
Figure 0007268365000003
(比較例2)
製造例1において数平均分子量20000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG20000)に変更し、50重量%共重合となるように作製した共重合ポリブチレンテレフタレートを芯成分に用い、芯成分を40重量%、鞘成分を60重量%に変更し、熱水処理後の吸湿率差(△MR)を11.0%に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う鞘成分の割れが極めて多く、鞘成分の割れに起因する染め斑(均染性)や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。
(比較例3)
鞘成分として、数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)を30重量%共重合したポリブチレンテレフタレートに変更し、130℃での貯蔵弾性率を90MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。強度が1.2cN/dtexと機械的特性に劣るものであり、また耐久性にも劣るものであった。
(比較例4)
5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩を1.5mol%および数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)を2.0重量%共重合したポリエチレンテレフタレートを鞘成分に用い、130℃での貯蔵弾性率を2000MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘ポリマーの変形追従性が低いため鞘成分の割れが極めて多く、鞘成分の割れに起因する染め斑(均染性)や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。また、触感も硬く風合いに劣るものであった。
(比較例5)
鞘成分をナイロン6に変更したこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。強度が1.1cN/dtexと機械的特性に劣るものであり、また耐久性にも劣るものであった。
(比較例6)
25℃でのオルトクロロフェノール溶液における極限粘度が0.70のポリエチレンテレフタレートを鞘成分に用いたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘ポリマーの変形追従性が低いため鞘成分の割れが極めて多く、鞘成分の割れに起因する染め斑(均染性)や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。また、触感も硬く風合いに劣るものであった。
(比較例7)
製造例1に従い作製した数平均分子量4000g/molのポリエチレングリコール(SIGMA-ALDRICH製)を80重量%共重合したポリブチレンテレフタレートを芯成分としたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。熱水処理による吸湿性ポリマーの溶出が多く、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、吸湿性が低く蒸れ感を感じるものであった。
(比較例8)
ポリブチレンテレフタレートペレットと数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を50重量%と50重量%の比率で、L/D=45(Lはスクリュー長、Dはスクリュー直径を表す)のベント部を一箇所有するベント式二軸押出機を用い、シリンダー温度250℃、回転数110rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施し、ポリエチレングリコールを50重量%混練したポリブチレンテレフタレートのペレットを得た。このペレットを再溶融し、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’ ジイル=ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ5-メチルフェニル)プロパノアート](ADEKA製、アデカスタブAO-80)を6.0重量%、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス[亜ホスホン酸ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)](クラリアントケミカルズ製、HOSTANOX P-EPQ)2.3重量%を配合し、シリンダー温度250℃、回転数200rpm、圧力10kPaの条件にて溶融混練を3分間実施しポリエステル組成物を得た。このようにして得たポリエステル組成物を芯成分に用いたこと以外は、実施例1同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。熱水処理によるポリエチレングリコールの溶出が多く、熱水処理後に吸湿性が大きく低下し、吸湿性が低く蒸れ感を感じるものであった。
(比較例9)
エステル反応性シリコーン(JNC製サイラプレーンFM-4411)を5.0重量%添加したポリブチレンテレフタレートを鞘成分に用いたこと以外は、実施例1と同様に仮撚糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤による鞘ポリマーの変形追従性が低いため鞘成分の割れが極めて多く、鞘成分の割れに起因する染め斑(均染性)や毛羽が多数見られ、均染性、品位に極めて劣るものであった。また、触感も硬く風合いに劣るものであった。
本発明で得られる吸湿性芯鞘型複合繊維は、吸湿性に優れかつ機械的特性と高品位を両立し、さらには繊維構造体にした時の触感が柔らかいことから、快適性や品位が要求される用途において好適に用いることができる。具体的には、一般衣料用途、スポーツ衣料用途、寝具用途、インテリア用途、資材用途などが挙げられる。

Claims (5)

  1. 下記(1)~(4)の特徴を有する吸湿性芯鞘型複合繊維。
    (1)芯成分が吸湿性を有するポリマー
    (2)鞘成分がポリブチレンテレフタレート
    (3)熱水処理後の吸湿率差(△MR)が2.0~10.0%
    (4)130℃での貯蔵弾性率が100~1500MPa
  2. 芯成分を構成する吸湿性を有するポリマーと鞘成分を構成するポリエステル系ポリマーのHSP距離が1.0~4.0MPa1/2であることを特徴とする請求項1に記載の吸湿性芯鞘型複合繊維。
  3. 吸湿性を有するポリマーが共重合ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の吸湿性芯鞘型複合繊維。
  4. 吸湿性を有するポリマーがポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体を共重合していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の吸湿性芯鞘型複合繊維。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の吸湿性芯鞘型複合繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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