JP2022092736A - 可染性ポリプロピレン繊維 - Google Patents

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【課題】ポリプロピレンとポリエステルの特性を兼ね備え、かつ耐摩耗性が向上しており、風合いに優れ、繊維構造体として好適に採用できる可染性ポリプロピレン繊維を提供する。【解決手段】ポリプロピレン(A)が海成分、共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、糸-糸間の動摩擦係数が0.15~0.20であることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。【選択図】なし

Description

本発明は、可染性ポリプロピレン繊維に関するものである。
ポリオレフィン繊維の一種であるポリプロピレン繊維は、軽量性や耐薬品性に優れるものの、極性官能基を有さないため染色が困難であるという欠点を有している。そのため、衣料用途には適さず、現状ではタイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途やロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などの限られた用途において利用されている。
ポリオレフィン繊維の簡便な着色方法として、顔料の添加が挙げられる。しかし、顔料では染料のような鮮明な発色性や淡い色合いを安定して発現させることが難しく、また、顔料を用いた場合には繊維が硬くなる傾向があり、柔軟性が損なわれるという欠点があった。
顔料に代わる染色方法として、ポリオレフィン繊維の表面改質が提案されている。
例えば、特許文献1では、オゾン処理や紫外線照射によるビニル化合物のグラフト共重合によって、ポリオレフィン繊維の表面改質を行い、染色性の改善を試みている。
また、染色性の低いポリオレフィンに対して、染色可能なポリマーを複合化する技術が提案されている。例えば、特許文献2では、染色可能なポリマーとしてポリエステルまたはポリアミドをポリオレフィンへブレンドした可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。
さらに、特許文献3、特許文献4、特許文献5では、ポリオレフィンへブレンドする染色可能なポリマーを非晶性とすることで、発色性の向上を試みている。具体的には、特許文献3ではシクロヘキサンジメタノールを共重合した共重合ポリエステル、特許文献4ではイソフタル酸とシクロヘキサンジメタノールを共重合した共重合ポリエステル、特許文献5ではシクロヘキサンジカルボン酸を共重合した共重合ポリエステルを染色可能な非晶性ポリマーとして、ポリオレフィンへブレンドした可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。
特開平7-90783号公報 特開平4-209824号公報 特表2008-533315号公報 特表2001-522947号公報 国際公開2017/154665号
特許文献1記載の方法では、オゾン処理や紫外線照射に長時間を要するため、生産性が低く、工業化への障壁が高いものであった。
また、特許文献2の方法では、染色可能なポリマーによりポリオレフィン繊維へ発色性を付与することはできるものの、染色可能なポリマーが結晶性のため、発色性は不十分であり、鮮やかさや深みに欠けるものであった。
特許文献3、4の方法では、染色可能なポリマーを非晶性にすることにより、発色性は向上するものの、鮮やかさや深みは未だ不十分であった。
その後、特許文献5の方法において鮮やかさや深みに優れる、可染性ポリオレフィン繊維が創造された。しかしながら、比較的強い負荷が付与されながら、擦過が繰り返されるアウトドア用途等での展開を想定した場合には、耐摩耗性や堅牢度を維持するために、使用する環境、雰囲気によっては繊維製品の組織を工夫する必要があるなど、製品形態に制約が生まれる場合があった。そのため、さらに耐摩耗性に優れ、かつ発色性に優れる可染性ポリプロピレン繊維が望まれており、本発明では、上記従来技術の問題点を解決し、繊維構造体として好適に採用できる、耐摩耗性がさらに向上した可染性ポリプロピレン繊維を提供することにある。
上記課題は、ポリプロピレン(A)が海成分、共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、糸-糸間の動摩擦係数が0.15~0.20であることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維によって解決することができる。
本発明によれば、ポリプロピレンとポリエステルの特性を兼ね備え、かつ耐摩耗性が向上しており、風合いに優れる可染性ポリプロピレン繊維を提供することができる。本発明により得られる可染性ポリプロピレン繊維は、繊維構造体とすることで、従来のポリプロピレン系繊維やポリエステル系繊維が使用されている用途において、特に優れた耐摩耗性と発色性が要求される用途で好適に用いることができる。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン(A)が海成分、共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、糸-糸間の動摩擦係数が0.15~0.20である。
本発明におけるポリマーアロイ繊維とは、島成分が不連続に分散して存在する繊維のことである。ここで、島成分が不連続とは、島成分が繊維長手方向に適度な長さを有して存在しており、その長さは数十nm~数十万nmであり、同一単繊維内の任意の間隔において観察した2つの、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態であることである。本発明における島成分の不連続性は、実施例記載の方法で確認することができる。島成分が不連続に分散して存在する場合、海島界面の比界面積を十分大きくすることができるため、界面剥離を抑制することができ、力学特性ならびに耐摩耗性に優れるポリマーアロイ繊維を得ることができる。また、界面剥離が抑制されているため、染色した場合には、界面剥離に起因する散乱光の増加に伴う発色性の低下を抑制することができ、鮮明で深みのある発色が得られる。以上より、本発明におけるポリマーアロイ繊維は、1つの島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される芯鞘複合繊維や、複数の島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なるものである。かかるポリマーアロイ繊維は、例えば、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において、ポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)を混練して形成したポリマーアロイ組成物から成形することで得ることができる。
本発明の可染ポリプロピレン繊維の海島構造を構成する海成分はポリプロピレン(A)である。
本発明のポリプロピレン(A)は、プロピレン単独重合体であっても、他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。他のα-オレフィン(以下、単にα-オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上を共重合してもよい。
α-オレフィンの炭素数は2~20であることが好ましく、α-オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α-オレフィンの具体例として、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
α-オレフィンの共重合率は20mol%以下であることが好ましい。α-オレフィンの共重合率が20mol%以下であれば、力学特性や耐熱性が良好な可染性ポリプロピレン繊維が得られるため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の海島構造を構成する島成分は共重合ポリエステル(B)である。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の発色性を向上させる方法として、共重合ポリエステル(B)の結晶性を低くすること、共重合ポリエステル(B)の屈折率を低くすることが挙げられるが、共重合ポリエステル(B)の屈折率を低くすることの方がより高い効果を得ることができる。
染料は結晶部分には吸尽されにくく、非晶部分に吸尽されやすいため、発色性を向上させるには、共重合ポリエステル(B)の結晶性は低ければ低いほど好ましく、非晶性であることがより好ましい。
また、共重合ポリエステル(B)の屈折率を低くした場合には、共重合ポリエステル(B)表面における反射光が少なくなり、共重合ポリエステル(B)内部まで十分に光が浸透し、鮮やかで深みのある発色性を付与することができる。共重合ポリエステル(B)の屈折率を低くするには、共重合ポリエステル(B)の芳香環濃度を低くすることが有効である。
本発明の共重合ポリエステル(B)は、主成分がテレフタル酸とエチレングリコールであり、共重合成分を有している。共重合ジカルボン酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、共重合ジオール成分として、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどの芳香族ジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオールなどが挙げられる。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、繊維組成の合計100重量部に対し、共重合ポリエステル(B)を5.0~20.0重量部含有していることが好ましい。共重合ポリエステル(B)の含有量が5.0重量部以上であれば、海成分に対して多数存在する島成分を染色することによって、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。一方、共重合ポリエステル(B)の含有量が20.0重量部以下であれば、屈折率が低く、発色性の高い共重合ポリエステル(B)が、屈折率の低いポリプロピレン(A)に散在しているため、鮮やかで深みのある発色を実現できる。加えて、ポリプロピレン(A)の軽量性、均染性、品位を損なわないため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、糸-糸間の動摩擦係数が0.15~0.20である。糸-糸間の動摩擦係数が0.15以上であれば、摩擦が十分に発生しており、糸の巻き取り時や布帛形成時に糸同士がばらけることがない。一方で、糸-糸間の動摩擦係数が0.20以下であれば過度に摩擦が発生することなく、繊維表面において摩擦力が過度に生じないため繊維表面のポリマー剥離を抑制することができることで耐摩耗性がさらに向上し、また工程通過性が良く、製品形態の制約が生まれることなくアウトドア用途への展開が可能となる。なお、本発明における糸-糸間の動摩擦係数は、実施例記載の方法で測定される糸-糸間の動摩擦係数を指す。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、さらなる耐摩耗性の向上を主目的としてシリコーン(C)を含有することが好ましい。耐摩耗性を向上させるための滑剤としては、シリコーンやN,N‘-エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸化合物などが知られているが、このうち高分子量体であるシリコーンを含有することで、水洗濯による成分の流出が抑制でき、また可染性ポリプロピレン繊維の摩擦係数が下がり、耐摩耗性がさらに向上するため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、繊維組成の合計100重量部に対し、シリコーン(C)を0.5~10.0重量部有することが好ましい。シリコーン(C)の含有量が0.5重量部以上であれば、繊維の摩擦係数が下がり耐摩耗性がさらに向上し、また溶融紡糸中のポリプロピレン(A)と共重合ポリエステル(B)、さらに配管との間における摩擦による電荷の偏りを樹脂間にとどめることができ、口金から吐出後の樹脂としては電荷の偏りが無く、生産性が向上するため好ましい。シリコーン(C)の含有量は1.0重量部以上であることが好ましい。一方、シリコーン(C)の含有量が10.0重量部以下であれば、可染性ポリプロピレン繊維の軽量性、均染性、品位、強度を損なわないため好ましい。シリコーン(C)の含有量は、5.0重量部以下であることがより好ましい。
本発明のシリコーン(C)は、ポリシロキサン化合物である。ポリシロキサン化合物の側鎖としては、メチル基やエチル基などの炭化水素基や、アミノ基やエポキシ基などで修飾された炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。ポリシロキサン化合物の末端基としては、未修飾の場合や、アミノ基やエポキシ基、カルボキシル基、フェノール基、カルビノール基で修飾することが考えられるが、これらに限定されない。ポリシロキサン化合物の末端を修飾する場合、片末端のみの修飾でも良く、両末端の修飾でも良い。ここで、本発明の可染性ポリプロピレン繊維はポリプロピレン(A)と共重合ポリエステル(B)からなるポリマーアロイ繊維であり、比較的強い負荷が付与されながら、擦過が繰り返されるアウトドア用途等での展開を想定した場合に摩耗するのはポリプロピレン(A)である。そのため、耐摩耗性をさらに向上させるためにはシリコーン(C)を効率的にポリプロピレン(A)に局在化させることが求められる。共重合ポリエステル(B)よりもポリプロピレン(A)に局在化させるためには、官能基によって修飾されていないメチル基やエチル基などの炭化水素基を側鎖とし、末端基は未修飾であるポリシロキサン化合物が好ましい。なかでも、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
本発明におけるシリコーン(C)の添加方法としては、布帛形成後に後加工として処理し添加する方法や、紡糸前に添加し原料ポリマー中に混練しておく手法が考えられる。このうち、ポリマー中に混練しておく方が水洗濯に対する耐久性があるため好ましい。また、本発明の可染性ポリプロピレン繊維はポリマーアロイ繊維であるため、溶融紡糸時にポリプロピレン(A)と共重合ポリエステル(B)が微分散化しており、ポリプロピレン(A)と共重合ポリエステル(B)の間で摩擦が発生し電荷の偏りが発生、さらに配管との間で電荷の偏りが生じ、金属製配管側の電荷がプラスに、口金から吐出された繊維は電荷がマイナスに偏ってしまう。この溶融紡糸の際、溶融樹脂中にシリコーン(C)を含有していると、シリコーン(C)が金属製配管よりも電荷がプラスに偏りやすいため、溶融樹脂中でのみ電荷の偏りが発生し、口金から吐出された繊維の中でのみ電荷の偏りが生じているため、単繊維一本一本でとらえた場合その電荷の偏りは無く、単繊維間で反発しあうことが無いため収束性の悪化に伴う生産性が向上する観点からも、シリコーン(C)はあらかじめ糸中に混練しておく手法が好ましい。
本発明では、海成分のポリプロピレン(A)への島成分の共重合ポリエステル(B)の分散性の向上や分散状態の制御、海成分と島成分の界面接着性の向上を目的として、必要に応じて相溶化剤(D)を添加してもよい。また、溶融紡糸によって海島構造を形成させる際には、口金直下においてバラスと呼ばれる膨らみが発生し、繊維の細化変形が不安定になる傾向があるため、このバラスに伴う糸切れの抑制などの製糸操業性の改善や、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることを目的として、相溶化剤(D)を用いてもよい。
本発明における相溶化剤(D)は、共重合ポリエステル(B)の共重合成分の共重合率、海成分のポリプロピレン(A)と島成分の共重合ポリエステル(B)との複合比率などに応じて適宜選択することができる。なお、相溶化剤(D)は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
相溶化剤(D)を添加する場合、本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、糸組成の合計100重量部に対し、相溶化剤(D)を0.1~10.0重量部含有することが好ましい。相溶化剤(D)の含有量が0.1重量部以上であれば、ポリプロピレン(A)と共重合ポリエステル(B)との相溶化効果が得られるため、島成分の分散径が小さくなり、染料化合物の凝集を抑制して単分散に近づけることができ、発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色が得られるため好ましい。また、糸切れの抑制など製糸操業性が改善されるとともに、繊度斑が小さく、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。一方、相溶化剤(D)の含有量が10.0重量部以下であれば、可染性ポリプロピレン繊維を構成するポリプロピレン(A)や共重合ポリエステル(B)に由来する繊維特性や外観、風合いを維持することができるため好ましい。また、過度の相溶化剤による製糸操業性の不安定化を抑制できるため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、酸化防止剤を含有していることが好ましい。酸化防止剤を含有することにより、長期保管やタンブラー乾燥によるポリプロピレンの酸化分解を抑制するだけではなく、機械的特性などの繊維特性の耐久性が向上するため好ましい。
本発明における酸化防止剤は、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒンダードアミン系化合物のいずれかであることが好ましい。これらの酸化防止剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
次に、本発明の可染性ポリプロピレン繊維について説明する。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルなどのいずれの形態であってもよい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~3000dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。可染性ポリオレフィン繊維の繊度が10dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、可染性ポリオレフィン繊維の繊度が3000dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の伸度は、用途や要求特性に応じて後述する製造方法によって調整して使用することが好適である。ここで、本発明の伸度とは、実施例記載の方法で測定される値を指し、伸度は高いほど、急激な変形を加えても繊維が伸長変形して、破断することがなくなるものの、成形加工時に伸長変形することで、繊維製品の特性が不安定になる可能性もあるため、この繊維の取扱性を鑑みると、本発明の繊維の伸度は、30~60%であることがより好ましい。特に、伸度が60%以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の寸法安定性が良好となるため好適ある。
また、本発明の繊維は、その使用に必要となる伸度にあわせて調整すると良く、衣料用途で使用する場合には、30~50%、非衣料用途で使用する場合には、20~40%に調整することが特に好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、C字形、H字形、S字形、T字形、W字形、X字形、Y字形、田字形、井桁形、中空形などが挙げられるが、これらに限定されない。
次に、本発明の可染性ポリプロピレン繊維の製造方法を以下に示す。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5~20dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、実施例記載の方法で測定される繊度を単繊維数で除した値を指す。可染性ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。一方、可染性ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が20dtex以下であれば、繊維ならびに繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法を用いることができる。
本発明では、溶融紡糸を行う前にポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)、シリコーン(C)相溶化剤(D)を乾燥させ、含水率を0.3重量%以下としておくことが好ましい。含水率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸の際に水分によって発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となるため好ましい。また、加水分解による機械的特性の低下や色調の悪化が抑制されるため好ましい。含水率は0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましい。
ポリマーアロイ型紡糸を行う場合には、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法として、以下に示す例が挙げられるが、これらに限定されない。第一の例として、海成分と島成分をエクストルーダーなどで事前に溶融混練して海島構造を均一化した複合チップを必要に応じて乾燥した後、溶融紡糸機へチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーを濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第二の例として、必要に応じてチップを乾燥し、チップの状態で海成分と島成分を混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第三の例として、最終的な繊維の組成よりも島成分の重量%を多くした複合チップを必要に応じて乾燥した後、複合チップと海成分のチップを別々に供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。第四の例として、最終的な繊維の組成よりも島成分の重量%を多くした複合チップを必要に応じて乾燥した後、複合チップと海成分のチップをチップの状態で混合した後、溶融紡糸機へ混合したチップを供給して溶融し、計量ポンプで計量する。その後、紡糸ブロックにおいて加温した紡糸パックへ導入して、紡糸パック内で溶融ポリマーの海島成分を混練し濾過した後、紡糸口金から吐出して繊維糸条とする方法が挙げられる。
紡糸口金から吐出された繊維糸条は、冷却装置によって冷却固化し、第1ゴデットローラーで引き取り、第2ゴデットローラーを介してワインダーで巻き取り、巻取糸とする。なお、巻き取り時の張力は、0.05~0.10cN/dtexであることが好ましい。巻き取り時の張力は0.05cN/dtex以上であれば、第2ゴデットローラーとワインダー間の張力が十分となり、安定した巻き取りが行えるため好ましい。一方、巻き取り時の張力が0.10cN/dtex以下であれば、第2ゴデットローラーとワインダー間の張力が高いことによる糸の擦過過剰による操業性の悪化や、巻取糸の経時での収縮による巻取糸の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。また、給油装置を用いて繊維糸条へ給油してもよく、交絡装置を用いて繊維糸条へ交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、ポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)、シリコーン(C)、相溶化剤(D)の融点や耐熱性などに応じて適宜選択することができるが、220~300℃であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため吐出が安定し、さらには、紡糸張力が過度に高くならず、糸切れを抑制することができるため好ましい。紡糸温度は240℃以上であることがより好ましい。一方、紡糸温度が300℃以下であれば、紡糸時の熱分解を抑制することができ、得られる可染性ポリオレフィン繊維の機械的特性の低下や着色を抑制できるため好ましい。紡糸温度は260℃以下であることがより好ましい。
溶融紡糸における紡糸速度は、ポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)、シリコーン(C)、相溶化剤(D)の複合比率、紡糸温度などに応じて適宜選択することができるが、二工程法の場合は1000~3000m/分であることが好ましい。二工程法の場合の紡糸速度が1000m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れを抑制することができるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は1500m/分以上であることがより好ましい。一方、二工程法の場合の紡糸速度が3000m/分以下であれば、紡糸張力の抑制により糸切れなく、安定した紡糸を行うことができ、また紡糸後に巻き取った糸が収縮することのよる巻取糸の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。二工程法の場合の紡糸速度は2500m/分以下であることがより好ましい。また、一旦巻き取ることなく紡糸と延伸を同時に行う一工程法の場合の紡糸速度は、低速ローラーを1000~3000m/分、高速ローラーを2500~6000m/分とすることが好ましい。低速ローラーおよび高速ローラーが上記の範囲内であれば、走行糸条が安定するとともに、糸切れを抑制することができ、安定した紡糸を行うことができるため好ましい。
一工程法または二工程法により延伸を行う場合には、一段延伸法または二段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱方法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱できる装置であれば、特に限定されない。
延伸を行う場合の延伸温度は、ポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)、シリコーン(C)、相溶化剤(D)のガラス転移温度や融点、延伸後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、30~120℃であることが好ましい。延伸温度が30℃以上であれば、延伸に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れる高品位の繊維を得ることができるため好ましい。延伸温度は50℃以上であることがより好ましい。一方、延伸温度が120℃以下であれば、加熱ローラーとの接触に伴う繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。また、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好となるため、糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸温度は90℃以下であることがより好ましい。また、120~150℃の熱セットを行うことが好ましい。120℃以上で熱セットを行えば、熱セットの繊維が十分に結晶化し、経時で収縮することによる延伸後の繊維の内層と外層の物性変化を抑制できるため好ましい。一方、熱セット温度が150℃以下であれば、繊維同士の融着や熱分解を抑制することができ、工程通過性や品位が良好であるため好ましい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸前の繊維の伸度や、延伸後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択することができるが、1.02~5.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸によって繊維の強度や伸度などの機械的特性を向上させることができるため好ましい。延伸倍率は、1.2倍以上であることがより好ましい。一方、延伸倍率が5.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。延伸倍率は3.5倍以下であることがより好ましい。
延伸を行う場合の延伸速度は、延伸方法が一工程法または二工程法のいずれであるかなどに応じて適宜選択することができる。一工程法の場合には、上記紡糸速度の高速ローラーの速度が延伸速度に相当する。二工程法により延伸を行う場合の延伸速度は、100~1000m/分であることが好ましい。延伸速度が100m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。一方、延伸速度が1000m/分以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸を行うことができるため好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.複合比率
可染性ポリプロピレン繊維の原料として用いた海成分(A)、島成分(B)、シリコーン(C)、相溶化剤(D)の合計を100重量部とし、複合比率として海成分(A)/島成分(B)/シリコーン(C)/相溶化剤(D)[重量部]を算出した。
B.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100
なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
C.強度、伸度
強度および伸度は、実施例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM-III-100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。
伸度(%)={(L1-L0)/L0}×100
なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
D.タフネス
上記Cで算出した強度(cN/dtex)、伸度(%)を用いて下記式によってタフネスを算出した。
タフネス=強度×{伸度0.5} 。
E.糸-糸間の動摩擦係数
英光産業製糸走行摩擦係数測定装置ME-TM1を用いて糸-糸の交差回数を1回とし、糸速55m/分で30秒間測定し算出した。
F.島成分の不連続性
実施例によって得られた繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB-2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を同一単繊維内において単繊維直径の少なくとも10000倍以上の任意の間隔で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を5枚撮影した。撮影された写真について、それぞれの繊維横断面における島成分の数および海島構造の形状が異なる場合、島成分が不連続であるとし、島成分が不連続である場合を「Y」、島成分が不連続でない場合を「N」とした。
G.L
実施例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR-BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、黒色分散染料としてHuntsman製TERASIL BLACK WW-KSNを8重量%、均染剤として三洋化成工業製イオネットRAP-250を1g/Lを加え、かつpHを5.0に調整した染色液中、浴比1:40、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム0.6g/Lを含む水溶液中、浴比1:40、80℃で20分間アルカリ洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。アルカリ洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みを試料とし、ミノルタ製分光測色計CM-3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL値とした。
H.発色性
上記Gで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、S、A、B、Cの4段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなり、Cが最も劣ることを示す。「鮮やかで深みのある発色が十分ある」をS、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分ある」をA、「鮮やかで深みのある発色がほとんどない」をB、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」をCとし、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分ある」のA以上を合格とした。
I.均染性
上記Gで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によってS、A、B、Cの4段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなり、Cが最も劣ることを示す。「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」をS、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」をA、「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」をB、「均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる」をCとし、「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」のA以上を合格とした。
J.品位
上記Gで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、S、A、B、Cの4段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなり、Cが最も劣ることを示す。「鮮やかで深みのある発色が十分であり、品位に極めて優れる」をS、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分であり、品位に優れる」をA、「鮮やかで深みのある発色がほとんどなく、品位に劣る」をB、「鮮やかで深みのある発色がなく、品位に極めて劣る」をCとし、「鮮やかで深みのある発色が概ね十分であり、品位に優れる」のA以上を合格とした。
K.耐摩耗性(フロスティング評価、フィブリル化の有無)
上記Gで作製した仕上げセット後の筒編みについて、JIS1076(2012)に記載されたアピアランス・リテンション形試験機の上下にセットし、押し付け圧7.4Nで10分間摩耗させた後、変退色の程度を1~5級(9段階)によって評価し、併せて単糸の毛羽立ち(フィブリル化)の有無を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX-2000にて50倍で観察し、S、A、Bの3段階で評価した。評価は、Sが最も良く、Aがその次、Bが最も劣ることを示す。「変化なし(フィブリル化無し)」をS、「若干のフィブリル化有り」をA、「明確なフィブリル化有り」をBとした。
(実施例1)
海成分(A)としてポリプロピレン(PP)(ExxonMobil製PP3155E5、融解ピーク温度163℃、MFR36g/10分)を87.0重量%、島成分(B)として1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を35mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを10.0重量%、シリコーン(C)として、ポリジメチルシロキサン(信越化学工業製X-22-2101、マトリックスがPPであるシリコーンマスターペレット、50重量部がポリジメチルシロキサン、残る50重量部のPPは表中ポリプロピレン(A)の複合比率に含める)を1.0重量%、相溶化剤(D)として官能基としてアミノ基を有するスチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(旭化成製タフテック(登録商標)MP10)を1.0重量%の配合比とし、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、複合チップを得た。得られた複合チップを90℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度240℃、吐出量28.0g/分で紡糸口金(吐出孔径0.20mm、吐出孔長0.50mm、孔数48、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を、風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取り140dtex-48fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度60℃、第2ホットローラー温度140℃、延伸倍率2.5倍の条件で延伸し、56dtex-48fの延伸糸を得た。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。得られたポリプロピレン繊維は発色性、均染性、品位、耐摩耗性ともに合格レベルであった。
(実施例2~6、比較例1、2)
ポリプロピレン(A)、共重合ポリエステル(B)、シリコーン(C)相溶化剤(D)の複合比率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。比較例1、2では糸-糸間動摩擦係数が高く、強い摩擦に対する耐摩耗性に劣るものであった。
(実施例7~10)
シリコーン(C)の種類を実施例7では両末端アミン変性ポリジメチルシロキサン、実施例8では両末端カルボン酸変性ポリジメチルシロキサン、実施例9では両末端フェノール変性ポリジメチルシロキサン、実施例10では両末端カルボン酸無水物変性ポリジメチルシロキサンに変更した以外は、実施例1と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表2に示す。いずれのシリコーンを用いた場合でも、未変性のポリジメチルシロキサンを用いた実施例1と比較し耐摩耗性が低下していたが、いずれも合格レベルであった。
(実施例11~15)
共重合ポリエステル(B)を、イソフタル酸を25mol%とアジピン酸を10mol%共重合したポリエチレンテレフタレートに変更した以外は、実施例11は実施例1と、実施例12は実施例2と、実施例13は実施例3と、実施例14は実施例4と、実施例15は実施例5と同様に延伸糸を作製した。
得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表3に示す。共重合ポリエステル(B)を、イソフタル酸を25mol%とアジピン酸を10mol%共重合したポリエチレンテレフタレートに変更した場合でも、共重合ポリエステル(B)が1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を35mol%共重合したポリエチレンテレフタレートの場合と同様、得られたポリプロピレン繊維は耐摩耗性が優れ、また発色性、均染性、品位ともに合格レベルであった。
Figure 2022092736000001
Figure 2022092736000002
Figure 2022092736000003
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンとポリエステルの特性を兼ね備え、かつ耐摩耗性が向上しており、風合いに優れ、繊維構造体として好適に採用できる可染性ポリプロピレン繊維を提供する。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン(A)が海成分、共重合ポリエステル(B)が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、糸-糸間の動摩擦係数が0.15~0.20であることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。
  2. 繊維組成の合計100重量部に対し、シリコーン(C)を0.5~10.0重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の可染性ポリプロピレン繊維。
  3. シリコーン(C)がポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項2に記載の可染性ポリプロピレン繊維。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の可染性ポリプロピレン繊維を少なくとも一部に用いることを特徴とする繊維構造体。
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