JP3720394B2 - 楕円偏光板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はSTN型液晶ディスプレイの着色防止等に用いられる楕円偏光板に関し、更に詳しくは、耐久性が改善された粘着剤層を有する楕円偏光板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
STN(Super Twisted Nematic)型液晶の複屈折性を利用した高コントラストな液晶ディスプレイはパーソナルコンピューターやワードプロセッサー等に用いられている。かかるディスプレイは液晶の複屈折性に基づくため表示が一般に青色系統ないし黄色系統に着色する。そのためSTN型液晶の複屈折による位相差を補償し、楕円偏光を直線偏光に戻して着色を打ち消す手段が講じられている。その手段として偏光板と複屈折性フィルムからなる位相差板とからなる楕円偏光板を用いる方式が提案されている。この方式はFTN方式等と呼ばれており、単層セルによる白黒表示を可能にして、それまでの別途の液晶セルを重ね合わせるD−STN方式の崇高や高重量問題を解消している。
【0003】
位相差板用の原材料には透明度、耐熱性、光学的な均質性、加工性等を備えたポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリエステル系、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の樹脂が用いられており、特に単体透過率、加工性及び白表示等に優れた性質を有し、又、コストが安価であるポリビニルアルコール系位相差フィルムが広く用いられている。
【0004】
しかしながら、かかるポリビニルアルコール系位相差フィルムは耐湿性に劣り、高湿度雰囲気下において位相差板の性質(リターデーション値(R値)、フィルム又はシートの重量、寸法等)が大きく変動するため、位相差フィルムの片面又は両面には三酢酸セルロース、二酢酸セルロース等のセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリメチルメタクリレート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリサルホン系フィルム等の高分子フィルムを保護層として形成することが試みられており、楕円偏光板として用いられる際には、離型フィルム/粘着剤層/保護層/接着剤層/ポリビニルアルコール系位相差フィルム/接着剤層/保護層/粘着剤層/偏光板を積層した構成を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、該積層体の場合、該保護層により位相差フィルムに対する外部からの悪影響はある程度妨げるものの、該粘着剤層に用いられている粘着剤の特性により楕円偏光板の物性が大きく影響を受けることは言うまでもないことである。
その影響の一つに該積層体の寸法安定性が挙げられる。
つまり、該積層体を液晶セル等のガラス板に実装した場合により、温度、湿度等の条件により位相差フィルムと偏光フィルムがそれぞれ異なった挙動を示し、その結果フィルム同士のズレが生じる危険性がある。
【0006】
又、長時間の比較的湿度の高い環境下での使用においては、保護層となるセルロース系フィルムが分解劣化したり、又、高温、高湿環境下での使用において粘着剤層の発泡や剥離等の外観欠点が発生する等の問題が生じる。
これら問題点について本出願人が詳細に検討した結果、粘着剤塗工時あるいは塗工後の乾燥条件により粘着物性が大きく左右することが判明した。
又、最近では、楕円偏光板用途の多様化に伴って、一般のラベル用等の粘着剤に比べてより高度な粘着性能を示し、かつ、光学特性についても優れた粘着剤層を有する楕円偏光板の出現が望まれているのが実状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層(1)/位相差フィルム/粘着剤層(2)/偏光板からなる楕円偏光板において、粘着剤層(1)と粘着剤層(2)の少なくとも一方が、12〜220ppmの溶剤を含有したアクリル系樹脂粘着剤層である楕円偏光板が上記の性能を満足することを見いだし本発明を完成した。
【0009】
更に、本発明においては、10000ppm以上の有機溶剤を含有したアクリル系樹脂粘着剤を、位相差フィルム又は保護層、偏光板あるいは離型フィルムに塗工後、50〜200℃、好ましくは50〜150℃、更に好ましくは60〜130℃の温度にて乾燥させて溶剤含有量を上記範囲にコントロールした時、特に優れた耐久性及び光学特性を示すものである。かかる乾燥においては、粘着剤を塗工した上記フィルムを縦、横それぞれ任意のサイズに切断し、その縦、横を各々3等分、合計9等分した各切断片をサンプルとし、各サンプルの溶剤含有量を測定したときに、各サンプルでの溶剤含有量がその平均値から±25%以内の範囲となるように制御することが好ましい。
【0010】
尚、本発明でいうアクリル系樹脂粘着剤層の溶剤含有量とは、上記の如き9サンプルでの溶剤含有量の平均値のことである。
又、本発明において偏光板とは、通常偏光フィルムの片面あるいは両面に保護層を設けた積層体のことであるが、本発明では必ずしもこれに限られることなく偏光フィルムのみでも使用可能であり、それ故、本発明では保護層の有無に関わらず、特に断ることなく偏光板と称する。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0011】
本発明のアクリル系樹脂の構成成分としては、ガラス転移温度の低く柔らかいモノマー成分やガラス転移温度の高く硬いコモノマー成分、更に必要に応じて少量の官能基含有モノマー成分が挙げられる。
【0012】
前記の主モノマー成分としては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数2〜12程度のアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアルキル基の炭素数4〜12程度のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、前記のコモノマー成分としては、アクリル酸メチルやメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等のアルキル基の炭素数1〜3のメタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。又、アルキル基が芳香環基、複素環基、ハロゲン原子等で置換されているアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル等、一般にアクリル系樹脂の合成に用いられるモノマーを、本発明の粘着剤アクリル系樹脂の合成にも用いることもできる。
【0013】
前記以外に、官能基含有モノマー成分としては、例えばカルボキシル基含有モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸等の多価カルボン酸、及びこれらの無水物等があり、ヒドロキシル基含有モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等やN−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等がある。
【0014】
3級アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等があり、アミド基、N−置換アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等がある。ニトリル基含有モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、フマロニトリル等がある。
【0015】
かかる官能基含有モノマー成分のうちで、特にカルボキシル基含有モノマーの使用が好ましい。
かかる主モノマー成分の含有量は、他に含有させるコモノマー成分や官能基含有モノマー成分の種類や含有量により一概には規定できないが、一般的には上記主モノマーを50重量%以上含有させることが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂は主モノマー、コモノマー、更に必要に応じて官能基含有モノマーを有機溶剤中でラジカル共重合させる如き、当業者周知の方法によって容易に製造される。
【0016】
前記重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
前記ラジカル重合に使用する重合触媒としては、通常のラジカル重合触媒であるアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が具体例として挙げられる。
【0017】
本発明において、かかるアクリル系樹脂粘着剤は単独でも勿論使用可能であるが、必要に応じて0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%程度の硬化剤が併用される。硬化剤の代表的なものはイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、アミン系化合物、金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物、アンモニウム塩及びヒドラジン化合物等が例示される。
【0018】
硬化剤のうちイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等、及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物等が挙げられる。
【0019】
エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ又はトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0020】
アルデヒド系化合物としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0021】
金属塩としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属の塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩、例えば塩化第二銅、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、酢酸銅、酢酸クロム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネート等が挙げられる。
【0022】
金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル配位化合物等が挙げられる。アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム等が挙げられる。
ヒドラジン化合物としては、ヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、及びそれらの塩基塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩類、ギ酸、シュウ酸等の有機酸塩類が挙げられる。
【0023】
本発明において、位相差フィルムとしては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタアクリレート、液晶ポリマー、トリアセチルセルロース系樹脂、環状ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル等が挙げられるが、主としてポリカーボネート、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが用いられる。
【0024】
ポリビニルアルコール系樹脂としては通常酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。又ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えばポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアルコール誘導体が挙げられる。
【0025】
平均重合度は1000以上、好ましくは1000〜5000、ケン化度は90モル%以上、好ましくは99.0モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上のものであることが望ましく、該樹脂水溶液はキャスト法、押出法等の公知の方法に従ってシート又はフィルム状に製膜される。製膜された原反フィルム又はシートは120〜200℃の温度で30秒〜5分予熱し、続いて150〜230℃、好ましくは170〜200℃で一軸方向に1.01〜4倍、好ましくは1.01〜3.8倍、更に好ましくは1.1〜3.5倍程度延伸され、次いで延伸温度以下〜130℃の範囲で1〜5分熱固定されたものが用いられる。又、必要に応じて、濃度0.5〜2モル/l程度のホウ素化合物水溶液又は水−有機溶媒混合液の形で50〜70℃程度、5〜20分程度の耐水化処理を施されたものが用いられる。
【0026】
かくして得られた位相差フィルムは厚さ30〜100μm程度、好ましくは40〜80μm程度のものであり、物性的にはレターデーション値が25〜700nm程度である。
光学主軸が一定で、かつ光学的色斑が少ない位相差フィルムを得るためには原反フィルム又はシートは、厚さ精度が良好であり、できるだけ光学的に均質なものであるのが好ましい。フィルム又はシートに製膜時にダイライン等が発生することは好ましくない。本発明において光学的に色斑が小さい位相差フィルムを得るためには、延伸前のフィルム幅Aと延伸後のフィルム幅Bとから定義されるネックイン率(100×(A−B)/A)を20%以下に抑えることが好ましい。
【0027】
前記一軸延伸する方法としては、例えば多数のロールの間をフィルムを通過させることによってフィルムの予熱を行い、次いで2対の延伸ロールにより所定の倍率に延伸する方法、多数のロール間をフィルムを通過させる間に予熱と段階的な延伸を併行して行いながら、所定の倍率にまでもっていく方法、テンター法により巾方向に延伸する横一軸延伸法等の方法が採用され得る。
【0028】
延伸は目的とする位相差フィルムの用途に応じて適宜に行われる。即ち、レターデーション値とは主延伸方向(MD方向)及びこれに垂直な方向(TD方向)における屈折率差(IIMD−IITD)と位相差フィルム又はシートの厚さ(d)との積で定義され、直交関係にある直線偏光が同位相で入射した場合の透過光の位相差を意味するレターデーション値(R値)が、使用光線の波長(λ)の例えば1/4の値となるように延伸処理を行った場合には、1/4波長板が得られ、1/2の値となるように延伸処理を行った場合には、1/2波長板が得られることとなる。使用光線が可視光線である場合、1/4波長板としてのレターデーション値は95〜170nmの範囲となる。従ってこの範囲にある1/4波長板と直線偏光子とを組み合わせることによって、ある可視光線における正確な円偏光が得られることになる。
【0029】
又、本発明における偏光板を構成する偏光フィルムとしては、位相差フィルムと同様、主としてポリビニルアルコール系樹脂に一軸延伸フィルム又はシートが用いられる。平均重合度は1500〜5000、好ましくは2600〜5000、ケン化度は85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%のものであることが望ましく、該樹脂水溶液はキャスト法、押出法等の公知の方法に従ってシート又はフィルム状に製膜され、製膜された原反フィルム又はシートは40〜130℃で一軸方向に2.0〜10倍、好ましくは2.5〜7.0倍、更に好ましくは3.0〜6.0倍程度延伸され、ヨウ素−ヨウ化カリの水溶液あるいは二色性染料により染色され、濃度0.5〜2モル/l程度のホウ素化合物水溶液又は水−有機溶媒混合液の形で50〜70℃程度、5〜20分程度の耐水化処理を施されたものが用いられる。
【0030】
本発明の楕円偏光板は、上記の如き粘着剤、位相差フィルム、偏光板を用いた、粘着剤層(1)/位相差フィルム/粘着剤層(2)/偏光板からなる層構成であるが、本発明においては、位相差フィルムの両面、即ち粘着剤層(1)と位相差フィルム及び粘着剤(2)と位相差フィルムの間にそれぞれ保護層を設けて、粘着剤層(1)/保護層/位相差フィルム/保護層/粘着剤層(2)/偏光板からなる層構成にすることがより好ましく、本発明の効果を顕著に発揮する。
【0031】
保護層としては従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルムが挙げられるが、好適には三酢酸セルロースフィルム等のセルロースアセテート系フィルムが用いられ、保護層と位相差フィルムとの接着に際しては、特に制限されることなくポリビニルアルコール系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、スピラン系接着剤等が採用され得るが、特に好ましいのはポリビニルアルコール系樹脂接着剤である。
【0032】
本発明においては、上記粘着剤層(1)と粘着剤層(2)の少なくとも一方に、好ましくは粘着剤層(1)にトルエン、酢酸エチル等の前記溶剤を12〜220ppm含有させなければならない。
【0033】
粘着剤層中の溶剤含有量が上記範囲内であれば良く、偏光板、位相差フィルム、又は保護層あるいは離型フィルムに塗工する前にあらかじめ溶剤含有量を調整しておいたアクリル系樹脂粘着剤を用いても良いが、好ましくは上記アクリル系樹脂粘着剤をトルエン、酢酸エチル等の前記溶剤で10000ppm以上、好ましくは100000ppm以上に希釈し、上記フィルムに塗工した後、50〜200℃、好ましくは50〜150℃、更に好ましくは60〜130℃で0.5〜10分間、好ましくは1〜5分間乾燥することにより、溶剤含有量をコントロールすることが望ましい。
【0034】
かかる乾燥においては、粘着剤を塗工した上記フィルムを縦、横それぞれ任意のサイズに切断し、その縦、横を各々3等分、合計9等分した各切断片をサンプルとし、各サンプルの溶剤含有量を測定したときに、各サンプルでの溶剤含有量がその平均値から±25%以内の範囲となるように精密に制御することが好ましく、本発明の効果を顕著に発揮する。詳細には、溶剤含有量を上記範囲にコントロールするために粘着剤の希釈の均一性を高め、又、乾燥機中の温度分布、風量分布、吸排気、温風循環等の均一性を高める必要がある。粘着剤層中の該溶剤含有量が12ppm未満では耐久時の浮きといった粘着特性の低下や端部の色がわりといった光学性能の低下等が起こり、又、220pmを越えると耐久時の発泡といった粘着特性の低下が起こり、本発明の効果を発揮しない。かかる溶剤含有量が上記範囲に限り、本発明の優れた耐久性及び光学特性が発現されるのである。
【0035】
尚、上記アクリル系樹脂粘着剤を上記フィルムに塗工し、乾燥した後の溶剤含有量は、例えばヘッドスペースガスクロマトグラフィー(日立製作所社製)により測定される。具体的にはアクリル系樹脂粘着剤層を設けたフィルムを縦、横各々3等分し、合計9等分した各切断片をサンプルとし(サンプルの大きさは最大3cm×3cm程度までが好ましい)、それぞれのサンプルに真空状態で100〜150℃の熱をかけてその揮発分を測定し、この9サンプルの平均値として求められる。
尚、該切断片が大きい場合は、3cm×3cm程度になる様に縁部を切除して中心部に相似形サンプルを作製し測定を行えば良い。
又、粘着剤層(1)の厚みは0.1〜500μm、好ましくは1〜100μm、粘着剤層(2)の厚みは0.1〜700μm、好ましくは1〜500μmが好適に選択される。
【0036】
本発明の楕円偏光板は、粘着剤層(1)の更に外側に離型フィルムが設けられて、離型フィルム/粘着剤層(1)/位相差フィルム/粘着剤層(2)/偏光板、あるいは離型フィルム/粘着剤層(1)/保護層/位相差フィルム/保護層/粘着剤層(2)/偏光板の積層体とされる。
かかる離型フィルムとしては、高分子フィルム、金属フィルム、セルロース系フィルムにポリジメチルシロキサン等のシリコン系あるいはフッ素系の離型剤で処理したものが挙げられるが、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートフィルムを離型処理したものである。
【0037】
このようにして得られた楕円偏光板は液晶ディスプレイ等に貼り付ける場合には適当に切断され、離型フィルムを剥がし、粘着剤層(1)を相手基材であるガラスあるいは他の基材と貼り付ける。
かくして本発明の楕円偏光板はSTN型液晶セル等の複屈折性液晶セルを用いたディスプレイにおける位相差による着色の打ち消しに好ましく用いられる。
【0038】
【作用】
本発明の楕円偏光板は、アクリル系樹脂粘着剤層の溶剤含有量を特定の範囲にコントロールした粘着剤層を設けているため、粘着剤層の発泡や剥離を起こさないといった耐久性に優れるばかりでなく、高温、高湿環境下で長時間放置してもその光学特性が低下しないという効果も奏する。かかる特性を利用してSTN型液晶セル等の複屈折性液晶セルを用いたディスプレイに大いに有用である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
実施例1
アクリル系樹脂粘着剤(A)(樹脂成分;アクリル酸n−ブチル:アクリル酸=100:5、コロネートL(日本ポリウレタン社製);3%)をトルエンで希釈し2000000ppmとした後、該溶液を、予め離型剤(ポリジメチルシロキサン)を塗工したポリエチレンテレフタレートフィルム(膜圧38μm)に塗工し、熱風循環乾燥機により90℃で3分間乾燥して、溶剤含有量201ppm(9cm×9cmの粘着剤層付きフィルムを縦、横に各々3等分、合計9等分し、その各切断片をサンプルとしてその溶剤含有量を測定したところ、200ppm、210ppm、192ppm、220ppm、195ppm、209ppm、195ppm、209ppm、180ppmであり、その平均値が201ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。)の離型フィルム付き粘着剤層(1)(粘着剤層の厚み25m)を得た。
【0040】
かかる離型フィルム付き粘着剤層(1)を、膜厚75μmのポリビニルアルコール位相差フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99.8モル%、1.1倍延伸)の両面を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した位相差板の片面に積層し、ローラーで押圧して離型フィルム積層位相差板を得た。
【0041】
一方、上記と同様の粘着剤を用いて、同様に離型フィルム付き粘着剤層(2)(95℃、2分間の乾燥、9サンプルの平均溶剤含有量は199ppm(200ppm、205ppm、201ppm、190ppm、209ppm、189ppm、200ppm、181ppm、220ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。))を得た。これを、膜厚25μmのポリビニルアルコール偏光フィルム(平均重合度1700、平均ケン化度99モル%、4倍延伸)の両面を厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムで積層した偏光板の片面に積層し、ローラーで押圧して離型フィルム積層偏光板を得た。
【0042】
次いで、上記離型フィルム積層偏光板の離型フィルムを剥がし、これを離型フィルム積層位相差板に、偏光板と位相差板の光軸が45度となるように貼合して、離型フィルム積層楕円偏光板を得、その後200mm×200mmに切断され、離型フィルムが剥がされ、厚さ1.1mmのガラス板上に転写された後、そのガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0043】
尚、耐久性、光学特性の評価方法は以下の通りである。
(耐久性)
上記の如くガラス板状に転写された楕円偏光板を60℃×90%RHで48時間放置した後に、更に60℃で48時間乾燥するのを1サイクルとして、10サイクル行った後の楕円偏光板の外観検査、即ち、偏光板と位相差板のずれ(mm)で評価した。
【0044】
(光学特性)
上記の如くガラス板状に転写された楕円偏光板において、60℃×90%RHで48時間放置した後に60℃で48時間乾燥するのを1サイクルとして、10サイクル行った後のR値(nm)を測定した。
【0045】
実施例2
実施例1において、アクリル系樹脂粘着剤(B)(樹脂成分;アクリル酸n−ブチル:アクリル酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル=100:5:1、コロネートL(日本ポリウレタン社製);2.0%)を用い、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を201ppm(95℃、2分間の乾燥、9サンプルの溶剤含有量は200ppm、209ppm、220ppm、195ppm、180ppm、192ppm、195ppm、209ppm、210ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を169ppm(95℃、5分間の乾燥、9サンプルの溶剤含有量は170ppm、170ppm、167ppm、171ppm、168ppm、172ppm、173ppm、168ppm、166ppmであった。)にした以外は同様に行い、ガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0046】
実施例3
実施例1において、アクリル系樹脂粘着剤(C)(樹脂成分;アクリル酸n−ブチル:アクリル酸:メタクリル酸ヒドロキシエチル:メタクリル酸n−ブチル:アクリル酸メチル=100:3:1:20:5、コロネートL(日本ポリウレタン社製);2.5%)を用い、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を50ppm(100℃、5分間の乾燥、9点の溶剤含有量は43ppm、49ppm、47ppm、53ppm、55ppm、45ppm、50ppm、57ppm、51ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を190ppm(100℃、3分間の乾燥、9サンプルの溶剤含有量は200ppm、182ppm、190ppm、197ppm、195ppm、191ppm、179ppm、190ppm、187ppmであった。)にした以外は同様に行い、ガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0047】
実施例4
実施例1において、アクリル系樹脂粘着剤(C)を用い、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を2009ppm(80℃、2分間の乾燥、9点の溶剤含有量は2000ppm、2040ppm、1980ppm、2030ppm、2020ppm、2001ppm、2030ppm、1990ppm、1993ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を50ppm(100℃、5分間の乾燥、9サンプルの溶剤含有量は43ppm、49ppm、47ppm、55ppm、50ppm、57ppm、51ppm、53ppm、45ppmであった。)にした以外は同様に行い、ガラス積層偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0048】
実施例5
実施例1において、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を14ppm(220℃、1分間の乾燥、9点の溶剤含有量は15ppm、14ppm、16ppm、14ppm、14ppm、15ppm、12ppm、13ppm、16ppm(各測定値は平均値から25%以内)であった。)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を17ppm(200℃、1分間の乾燥、9サンプルの溶剤含有量は16ppm、17ppm、19ppm、18ppm、18ppm、18ppm、19ppm、15ppm、16ppmであった。)にした以外は同様に行い、ガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0049】
比較例1
実施例1において、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を2ppm(150℃、5分間の乾燥)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を3ppm(130℃、5分間の乾燥)にした以外は同様に行い、ガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
【0050】
比較例2
実施例1において、粘着剤層(1)の平均溶剤含有量を7000ppm(55℃、3分間の乾燥)、粘着剤層(2)の平均溶剤含有量を6000ppm(50℃、2分間の乾燥)にした以外は同様に行い、ガラス積層楕円偏光板の耐久性及び光学特性を評価した。
尚、実施例1〜5、比較例1〜2のそれぞれの評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
本発明の楕円偏光板は、アクリル系樹脂粘着剤層の溶剤含有量を特定の範囲にコントロールした粘着剤層を設けているため、粘着剤層の発泡や剥離を起こさないといった耐久性に優れるばかりでなく、高温、高湿環境下で長時間放置してもその光学特性が低下しないという効果も奏する。
Claims (8)
- 粘着剤層(1)/位相差フィルム/粘着剤層(2)/偏光板からなる楕円偏光板において、粘着剤層(1)と粘着剤層(2)の少なくとも一方が、12〜220ppmの溶剤を含有したアクリル系樹脂粘着剤層であることを特徴とする楕円偏光板。
- 粘着剤層(1)/位相差フィルム/粘着剤層(2)/偏光板からなる楕円偏光板において、粘着剤層(1)と位相差フィルム、粘着剤層(2)と位相差フィルムの間に、それぞれ保護層を設けたことを特徴とする請求項1記載の楕円偏光板。
- 粘着剤層(1)の更に外側に離型フィルムを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の楕円偏光板。
- 偏光板がポリビニルアルコール系フィルムからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の楕円偏光板。
- 位相差フィルムがポリビニルアルコール系フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の楕円偏光板。
- 保護層が酢酸セルロース系フィルムであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載の粘着剤層を有する楕円偏光板。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の楕円偏光板を製造するにあたり、10000ppm以上の有機溶剤を含有したアクリル系樹脂粘着剤を、位相差フィルムあるいは偏光板に塗工し、50〜200℃の温度にて乾燥してなることを特徴とする楕円偏光板の製造方法。
- 請求項3記載の楕円偏光板を製造するにあたり、10000ppm以上の有機溶剤を含有したアクリル系樹脂粘着剤を位相差フィルムあるいは離型フィルムのいずれか一方に塗工し、50〜200℃の温度にて乾燥した後、位相差フィルムあるいは離型フィルムの残りの一方に設けることを特徴とする楕円偏光板の製造方法。
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