JP3714787B2 - 成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形用のポリアミド樹脂組成物に関する。詳しくは、広範囲の射出成形条件における離型性および可塑化性等の加工性に優れたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂、特にナイロン66樹脂はその優れた機械的特性のために、コネクターや結束バンド等の用途に広く使用されている。
近年、ますます成形品の形状が複雑になり、かつ幅広い成形条件で生産が行われるようになってきた。例えば、300℃を超える溶融温度で成形が行われたり、金型温調器により室温以下の低温にした金型温度でも成形が行われる例が見られる。これらの成形条件に対応し、かつ生産性を上げるためには、射出成形における金型からの成形品の離型性を向上させることおよび可塑化時間を短縮することが重要な手段の一つである。
【0003】
離型性を向上させるために、ポリアミド樹脂ペレットに種々の滑剤を添加する方法が一般的に行われている。ポリアミドの離型性を向上させる滑剤としては、高級脂肪酸を添加する例、ビスアミドを添加する例、高級脂肪酸の金属塩を添加する例、高級脂肪酸エステルを添加する例が見られる。
しかし、これらの滑剤を単独で使用したのでは特定の狭い温度範囲の離型性が向上するのみで、低型温から高型温までの種々の成形における広範囲の型温度の離型性をカバーすることは困難である。
【0004】
特開平7−228770号公報には、高級脂肪酸金属塩と高級脂肪酸エステルの組み合わせをペレット表面に付着させる例が見られる。これらの滑剤を組み合わせることにより、単独の滑剤使用の場合よりも離型性は向上するが、この例のように滑剤をペレット表面に付着させる方法では、表面付着量のムラや脱落による離型性能のバラツキを生じ易いという悪影響があり、また特に高温溶融での成形において、射出成形時の可塑化時間が長くなって生産性が低下する等の問題が発生する。
【0005】
これらの問題を解決するためには、滑剤を樹脂組成物内部に含有させることが有効であるが、特公平6−19016号公報の例に見られるように押出機等でペレットに滑剤を練り込んでペレット内部に滑剤を含有させる方法では、離型性能のバラツキや高温可塑化性の問題は解決できるが、一旦重合したペレットを再溶融押出しするために、工程が新たに増えることによりエネルギーコストの増加や生産性の低下が生じるとともに、押出機で再溶融することによりポリマーが余分に熱量を受けるために、劣化が進み色調が悪化する問題を有する。
【0006】
低型温から高型温までの幅広い金型温度での離型性を向上させるためには、単一の滑剤では対応することは困難であり、複数の滑剤を組み合わせて始めて目的とする離型性能が得られる。
この時、高級脂肪酸金属塩や高級脂肪酸エステル化物等の組み合わせの滑剤をポリアミドペレットに添加する場合、通常行われているようにペレット表面に付着添加した場合には、ナイロン66の例では290℃以上の高温のシリンダー温度で成形する条件では、可塑化時間が極端に延びてしまい、生産性が低下する問題が発生する。これは、滑剤をペレット表面に付着させた場合には、成形において高温のシリンダー内に供給されたペレットの表面の滑剤が溶融して、ペレット同士の融着を引き起こし、シリンダー内でのペレットのスムーズな移動を妨げるためと考えられる。さらに、ペレット表面に粉末状の滑剤をブレンドによりまぶしたり、またコーティングしたりする方法では滑剤の付着ムラや脱落は避けることができず、この結果、離型等の成形性能のバラツキが生じ易い。
【0007】
重合ポリマーを一旦ペレット化した後に、押出機等を使用して滑剤をペレット内部に練り込み含有させる方法では、前述の可塑化性への悪影響や滑剤添加のバラツキはある程度なくなるが、新たに押出工程が必要になり、生産性およびエネルギーコスト的に不利であり、かつポリマーの再溶融工程での劣化着色という重要問題が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、近年のポリアミド樹脂の成形性能向上のニーズに対応できるように、幅広い金型温度での離型性を向上させてそのバラツキもなくし、かつ可塑化性能にも優れたポリアミド樹脂組成物を、高い生産性で提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、高級脂肪酸金属塩と高級脂肪酸エステル化物の組み合わせの滑剤をポリマーの重合時に溶融添加してポリマーに含有させることによって、前記の問題が解決できることを見出し、本発明に完成した。
すなわち、本発明は、次の通りである。
(1) 高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物の混合物を、この混合物の融点以上の温度で加熱融解して混合融解物とした後、ポリアミドの溶融重合工程において、重縮合が進行して溶融ポリアミド中の水分が10%以下になった段階において、上記混合融解物を溶融ポリアミド中に注入添加し、分散させることを特徴とする成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(2) 溶融ポリアミド中に注入添加する、高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物の混合融解物が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物、各々0.01〜1.0重量部の混合融解物であることを特徴とする(1)記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(3) ポリアミドの溶融重合工程が、バッチ式重合方法の溶融重合工程であることを特徴とする(1)又は(2)記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(4) ポリアミドの溶融重合工程が、連続式重合方法の溶融重合工程であることを特徴とする(1)又は(2)記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【0010】
以下に具体的に本発明の詳細説明を行う。
本発明に適用されるポリアミド樹脂としては、公知のものを用い得る。たとえば、ラクタムの重縮合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物の重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種タイプのポリアミド樹脂で例えばナイロン6、66、610、6I、6Tなどがあり、またはそれらの共重合ポリアミド樹脂で例えばナイロン66/6、66/610、66/6I、66/6T等があり、またこれらの相互ブレンド物が挙げられる。
【0011】
これらのポリアミドの製造方法は、一般に行われているポリアミドの溶融重合方法でよく、バッチ式重合でもまた連続式重合でもよい。
本発明の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物は、重合で得られたポリアミド樹脂に以下の二つの滑剤を含有している樹脂組成物である。
本発明に適用される滑剤1は、高級脂肪族カルボン酸の金属塩である。炭素数は10〜30であるものが好ましい。具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等のカルシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられ、好ましくはステアリン酸カルシウム塩、ステアリン酸アルミウム塩等が挙げられる。
【0012】
滑剤2としては、高級脂肪族カルボン酸と高級アルコールとのエステル化物である。高級アルコールの炭素数は10〜30であるものが好ましい。具体的には、高級脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等があり、高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等があり、これらの脂肪酸とアルコールの組み合わせのエステルが使用される。好ましくは、ステアリン酸とステアリルアルコールのエステルであるステアリルステアレートやベヘン酸とベヘニルアルコールのエステルであるベヘニルベヘネート等が挙げられる。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記の滑剤1、2を組み合わせることによって、目的とする低型温から高型温までの広い型温領域で良好な離型性が得られる。必要に応じて、これら二種類の滑剤の中から3つ以上を組み合わせて使用することも出来る。
滑剤1、2は、添加量が、いずれもポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部である。いずれも添加量が0.01重量部未満では十分な離型効果を示さず、また1.0重量部より多いと成形品の粘度が低下したり、またシルバーが発生し易い等の問題が起こる。好ましくは、いずれも0.03〜0.5重量部の範囲である。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、滑剤1、2がそれぞれ単独で添加されていても、混合されて添加されていてもよい。好ましくは、混合されて融解物とされていることが好ましい。これらの混合した滑剤が、滑剤の融点以上の温度に加熱され融解させて融解物とされ、この融解物がポリアミドの重合工程において溶融ポリマー中に注入添加され、製造される。
【0015】
注入添加は、ギアポンプ、プランジャーポンプ等のフィードポンプを使用して、液体状になった滑剤の融解物をポリマーの重合ラインの溶融ポリアミド中にサイド注入添加を行う。
通常、原料ナイロン塩水溶液からポリマーの重合を行うポリアミドの重合においては、重合の初期の工程では水分が多いため、この工程に滑剤の融解物を添加すると、塩およびオリゴマー水溶液と滑剤とが分離してしまう。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、重縮合が進行し溶融ポリアミド中の水分が10%以下になった段階で滑剤を注入添加して製造する必要がある。好ましくはポリマー中の水分が1%以下になった段階で添加するのがよい。
滑剤を加熱溶融し液体状とすることによって、二種類の滑剤が均一に混合され、また上記のフィードポンプを使用することにより、ペレット表面に付着させたり、押出機でペレットと滑剤とを混合練り込みを行う場合に比べて、格段に添加精度が高くなり、含有量にバラツキのない、品質の安定した均一な樹脂組成物が得られる。
【0017】
なお、本発明のポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて次亜リン酸塩、亜リン酸エステル、フェニルホスホン酸塩等のリン化合物等の重合触媒や、酢酸銅、ヨウ化銅等の銅化合物等の熱安定剤、またタルク等の充填剤、ガラスファイバー等の補強材等の公知の物質を含有させることができる。また、必要に応じて、ペレットにした後、高級脂肪酸金属塩などの従来の滑剤をさらにペレット表面に添加付着させることも可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。なお、物性評価の方法は下記の通りに実施した。
(1)離型性能
図1に示すように、成形品の突き出しピン(エジェクターピン)にロードセルを設置した離型力測定装置を取り付けた金型を用いて、下記の成形条件で成形を行い、50ショットの離型力の測定値より、平均値およびバラツキを計算した。バラツキは測定した離型力の最大値と最小値の差として求めた。
射出成形機:東芝機械(株)製、IS−90B
金型:カップ状成形品
シリンダー温度設定:280℃
金型温度:高型温評価は100℃、低型温評価は30℃
射出圧力:400kg/cm2
射出速度:30%
射出時間:7秒
冷却時間:20秒
(2)可塑化性能
下記の条件以外は上記の離型性能の評価と同様に成形を行ない、可塑化時にスクリューが後退するのに要する時間を測定し、50ショットの可塑化時間の平均値を求めた。
シリンダー温度設定:320℃
金型温度:100℃
(3)成形品品質(色調)
上記離型性評価(型温100℃)で成形した成形品の色調を測定した。
測色器:日本電色(株) ND−300A
反射測定で成形品底面部のL、a、b値の測定を実施し、黄色度をb値で評価した。
b値が絶対値+で大きい方が色調が黄色いことを示す。
【0019】
【実施例1】
滑剤1、2としてステアリン酸カルシウム(ST−Ca)と、ステアリルステアレート(ステアリン酸とステアリルアルコールとのエステル化物)(ST−ST)とを同重量ずつ混合した滑剤の混合物を作成した。この滑剤の混合物の融点は160℃であった。この滑剤の混合物を180℃に加熱して、均一な融解物を作成した。
【0020】
この融解物を、ナイロン66(N66)の連続重合工程において注入添加を行った。
まず、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるAH塩の50%水溶液を80%に予備濃縮してから、重合槽において250℃に加熱し、17気圧に加圧しながら縮合水を除去してプレポリマー化させた。この後、大気圧にまで減圧して280℃に加熱し、さらに縮合水を除去して重縮合を完結させ、硫酸相対粘度(1g/100cc−98%硫酸,25℃)ηr=2.8のナイロン66ポリマーを得た。この段階でのポリマー中の水分率は1%以下であった。
【0021】
このナイロン66の溶融ポリマーの排出ラインに、加熱融解した滑剤の融解物をプランジャーポンプを用いて、ポリマー100重量部に対して0.3重量部の量を注入添加し、滑剤を含有したポリアミド樹脂組成物を作成した。次いで、ストランドに形成し、カットした後に乾燥して、滑剤を内部に含有したナイロン66樹脂ペレットを作成した。
【0022】
得られたペレットを用いて射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した(表1中で、N66はナイロン66、ST−Caはステアリン酸カルシウム、ST−STはステアリルステアレートを表す)。
【0023】
【実施例2】
滑剤1、2としてステアリン酸モノアルミニウム(ST−Al)と、ステアリルステアレートとを同重量ずつ混合した滑剤の混合物を作成した。この滑剤の混合物の融点は180℃であった。この滑剤の混合物を200℃に加熱して、均一な融解物を作成した。
【0024】
これを実施例1と同様の方法によって、ナイロン66ポリマーの重合工程においてポリマー100重量部に対し、0.3重量部の量を注入添加して、滑剤を含有したナイロン66樹脂組成物を作成した。次いで、ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した(表1中で、ST−Alはステアリン酸モノアルミニウムを表す)。
【0025】
【実施例3】
滑剤1、2としてステアリン酸カルシウムと、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸とベヘニルアルコールとのエステル化物)(Be−Be)とを同重量ずつ混合した滑剤の混合物を作成した。この滑剤の混合物の融点は170℃であった。この滑剤の混合物を190℃に加熱して、均一な融解物を作成した。
【0026】
これを実施例1と同様の方法によって、ナイロン66ポリマーの重合工程においてポリマー100重量部に対し、0.3重量部の量を注入添加して、滑剤を含有したナイロン66の樹脂組成物を作成した。次いで、ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した(表1中で、Be−Beはベヘニルベヘネートを表す)。
【0027】
【実施例4】
滑剤1、2としてステアリン酸カルシウムとステアリルステアレートを1:2の重量比で混合した滑剤の混合物を作成した。この滑剤の混合物の融点は140℃であった。この滑剤の混合物を160℃に加熱して、均一な融解物を作成した。
【0028】
これを実施例1と同じ方法によって、ナイロン66ポリマーの重合工程においてポリマー100重量部に対し、0.3重量部の量を注入添加して、滑剤を含有したナイロン66の樹脂組成物を作成した。次いで、ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した。
【0029】
【実施例5】
AH塩50%水溶液に対し、次亜リン酸ナトリウム(リン*a)を生成ポリマーの重量に対して100ppmになるように添加した以外は実施例1と同様の方法によってナイロン66の樹脂組成物を作成し、ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した(表1中で、リン*aは次亜リン酸ナトリウムを表す)。
【0030】
【実施例6】
AH塩50%水溶液に対し、ヨウ化銅とヨウ化カリウム(銅*b)を生成ポリマーの重量に対してそれぞれ0.03%および0.5%になるように添加した以外は実施例1と同様の方法によってナイロン66樹脂組成物を作成し、ペレットを作成した。
【0031】
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した(表1中で、銅*bはヨウ化銅とヨウ化カリウムを表す)。
【0032】
【比較例1】
ポリマーの重合のみを実施例1と同様に行い、滑剤は添加しなかったナイロン66樹脂組成物を作成し、ペレットを作成した。得られたペレット100重量部に対し、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.15重量部、ステアリルステアレートを0.15重量部の割合で混合し、コーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に滑剤を付着させたナイロン66樹脂ペレットを作成した。
【0033】
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した。
【0034】
【比較例2】
ポリマーの重合のみを実施例1と同様に行い、滑剤は添加しなかったナイロン66樹脂組成物を作成し、ペレットを作成した。得られたペレット100重量部に対し、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.15重量部、ステアリルステアレートを0.15重量部の割合で混合し、押出機(東芝機械(株)製、TEM35)で280℃に加熱して50kg/hrの吐出量で再溶融練り込みを行い、得られたポリマーのストランドをカットして滑剤を含有したナイロン66樹脂ペレットを作成した。
【0035】
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した。
【0036】
【比較例3】
比較例1において、滑剤としてステアリン酸カルシウムのみを0.3重量部の割合で混合した以外は、比較例1と同様にして滑剤を付着させたナイロン66樹脂ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した。
【0037】
【比較例4】
比較例1において、滑剤としてステアリルステアレートのみを0.3重量部の割合で混合した以外は、比較例1と同様にして、ペレット表面に滑剤を付着させたナイロン66樹脂ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて実施例1と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表1に示した。
【0038】
【実施例7】
滑剤1、2としてステアリン酸カルシウムと、ステアリルステアレートとを同重量ずつ混合した滑剤の混合物を作成し、この滑剤の混合物を180℃に加熱して、均一な融解物を作成した。
この融解物を、ナイロン6(N6)の連続重合工程において注入添加した。
【0039】
まず、ε−カプロラクタムをメルターで溶融し、水と重合度調整剤とを添加した後、常圧重合塔にて260℃に加熱して10時間の反応の後、硫酸相対粘度ηr=2.4のナイロン6ポリマーを得た。この段階でのポリマー中の水分率は1%以下であった。
このナイロン6の溶融ポリマーの排出ラインに、加熱融解した滑剤の融解物をプランジャーポンプを用いて、ポリマー100重量部に対して0.3重量部の量を注入添加し、ナイロン6の樹脂組成物を作成した。
【0040】
これをストランドに形成しカットして得られたペレットを、熱水処理して未反応のオリゴマーを抽出除去した後に乾燥して、滑剤を内部に含有したナイロン6樹脂ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて、下記の成形条件を変更した以外は実施例1と同様に射出成形を行い、離型性と可塑化性の成形加工性の評価および成形品色調の品質評価を行った結果を表2に示す(表2中で、N6はナイロン6を表す)。
シリンダー温度設定:290℃
射出時間:15秒
冷却時間:40秒
【0041】
【比較例5】
ポリマーの重合のみを実施例7と同様に行い、滑剤は添加しなかったナイロン6樹脂ペレット100重量部に対し、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.3重量部の割合で混合し、コーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に滑剤を付着させたナイロン6樹脂ペレットを作成した。
【0042】
得られたペレットを用いて実施例7と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、成形品色調の品質評価およびプロセス生産性の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0043】
【実施例8】
滑剤1、2としてステアリン酸カルシウムと、ステアリルステアレートとを同量ずつ混合した滑剤の混合物を作成し、この滑剤の混合物を180℃に加熱融解して、均一な融解物を作成した。
この融解物を、ナイロン66/6I(N66/6I)のバッチ式重合工程において注入添加を行った。
まず、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるAH塩の50%水溶液100重量部に対し、ヘキサメチレンジアミンを5重量部およびイソフタル酸を7重量部混合し、80%に予備濃縮してから、重合槽において250℃に加熱し、17気圧に加圧しながら縮合水を除去してプレポリマー化させた。この後、大気圧にまで減圧して280℃に加熱し、さらに縮合水を除去して重縮合を完結させ、ナイロン66とナイロン6Iとの比率が8:2で硫酸相対粘度ηr=2.3のナイロン66/6I共重合ポリマーを得た。この段階でのポリマー中の水分率は1%以下であった。
【0044】
この溶融ポリマーの排出ラインに、加熱融解した滑剤の融解物をプランジャーポンプを用いて、ポリマー100重量部に対して0.3重量部の量を注入添加し、これをストランドに形成し、カットした後に乾燥して、滑剤を内部に含有したナイロン66/6I共重合樹脂ペレットを作成した。
得られたペレットを用いて、下記の成形条件を変更した以外は実施例1と同様に射出成形を行い、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、成形品色調の品質評価およびプロセス生産性の評価を行い、その結果を表2に示した(表2中で、N66/6Iはナイロン66/6Iを表す)。
シリンダー温度設定:290℃
射出時間:20秒
冷却時間:60秒
【0045】
【比較例6】
ポリマーの重合のみを実施例8と同様に行い、滑剤は添加しなかったナイロン66/6I共重合樹脂組成物を作成し、ペレットを作成した。ペレット100重量部に対し、滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.3重量部の割合で混合し、コーン型ブレンダーでブレンドして、ペレット表面に滑剤を付着させたペレットを作成した。
【0046】
得られたペレットを用いて実施例8と同様に、射出成形により、離型性と可塑化性の成形加工性の評価、および成形品色調の品質評価を行い、その結果を表2に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物は、従来のものに比較して、射出成形における幅広い成形条件での離型性能および可塑化性能に優れるため、成形サイクルを短縮することができ、また成形品外観品質にも優れる。さらに、本発明の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物は、高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で離型性能の測定に用いた金型の断面図
【符号の説明】
1;スプルランナー
2;カップ状成形品
3:エジェクターピン
4;エジェクタープレート
5;ロードセル
6;エジェクターロッド
Claims (4)
- 高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物の混合物を、この混合物の融点以上の温度で加熱融解して混合融解物とした後、ポリアミドの溶融重合工程において、重縮合が進行して溶融ポリアミド中の水分が10%以下になった段階において、上記混合融解物を溶融ポリアミド中に注入添加し、分散させることを特徴とする成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- 溶融ポリアミド中に注入添加する、高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物の混合融解物が、ポリアミド樹脂100重量部に対し、高級脂肪酸の金属塩、および高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル化物、各々0.01〜1.0重量部の混合融解物であることを特徴とする請求項1記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- ポリアミドの溶融重合工程が、バッチ式重合方法の溶融重合工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
- ポリアミドの溶融重合工程が、連続式重合方法の溶融重合工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形特性に優れるポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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